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表1-4

Transcription:

ポーランド インフラマップ ( エネルギー分野 ) 2014 年 3 月 ジェトロ ワルシャワ事務所

本報告書に関する問い合わせ先 : ジェトロ ワルシャワ事務所住所 :METRON Office Center 1st floor,al. Niepodleglosci 69, 02-626 Warszawa, POLAND TEL:48-22-322-7500 インフラ プラントビジネス支援課 住所 : 107-6006 東京都港区赤坂 1-12-32 アーク森ビル TEL:03-3582-5542 本報告書の利用についての注意 免責条項 本報告書は 日本貿易振興機構 ( ジェトロ ) ワルシャワ事務所が KPMG に 2013 年 11 月現在入手している情報に基づき作成委託したものであり その後の動向等によって内容が現状と異なる場合があります ジェトロおよび KPMG は 本報告書の記載内容に関して生じた直接的 間接的 あるいは懲罰的損害および利益の喪失については 一切の責任を負いません これは たとえ ジェトロがかかる損害の可能性を知らされていても同様とします

概況 発電と電力消費 ポーランドの発電事業部門は 容量 生産量において中 東欧地域最大規模であり 2012 年には約 160TWh に達している 卸電力価格に基づいたポーランド電力事業の 2012 年の評価額は およそ 69 億 EUR 2010 年 2011 年の高い伸びの後 ポーランドの発電量は景気減速の影響を受け 2012 年に 2% 低下した 電力消費量は 2011 年が 145TWh で 2009 年以外は 2007 年以降毎年伸びを見せている 電力消費の構造は過去 5 年間比較的安定しており 製造業 建設業が最大のシェアを占め 家庭部門を上回っている 主な使用燃料 2012 年の電力生産量のおよそ 88% は 主に石炭と褐炭を燃料とする発電所で発電された ポーランドでは 2013 年時点で 30 以上の石炭と褐炭の炭鉱があり 政府は採炭業を国家のエネルギー安全保障にとって不可欠だと考えている 電力生産における再生可能エネルギーの割合は 近年順調に増加し 2005 年 ~2012 年には年間生産量が年率 20% 水準で増加し 2012 年には 14TWh の水準まで成長している これは主にバイオマス混合燃焼と風力が牽引している 輸出入 ポーランドの電力部門は国内の石炭資源に大幅に依存しているが 石油 ガスの輸入 ( その大部分をロシアから ) によってポーランドは燃料の純輸入国となっている ポーランドは 電力では純輸出国で 2012 年の電力の貿易収支は 2.9TWh 最大の輸出先はチェコ スロバキアでそれぞれ 8.8TWh 3.5TWh となっており 一方最大の輸入元はドイツとなっている ポーランドの輸入事情に関する当報告書のコメントは 本報告書 14,15 ページを参照のこと ポーランドの電力市場はスウェーデン ドイツ チェコ スロバキア ウクライナと接続しており 現在は国際的な送電ネットワークが徐々に向上してきている 熱エネルギーの生産と消費 ポーランドの家庭の暖房の主なエネルギー源は 固体燃料による独立型ボイラー (51% の家庭 ) と自治体による暖房網 (40%) で 石炭が主な燃料として使用されている 商用の熱生産は 生産量および CHP の割合 (58~60%) の両方で過去 5 年間比較的安定していた 発電所容量 発電所容量は 近年は年率で約 2% 上昇し 主に褐炭と再生可能エネルギーの容量の増加が牽引 した しかし 容量は中期的には十分ではない可能性がある 1

再生可能エネルギー 2012 年の再生可能エネルギー市場規模は 15 億 EUR と推定された 2012 年のポーランドの再生可能エネルギーの主要なエネルギーは バイオマス燃焼およびバイオマス混合燃焼 (50%) となっており 続いて風力発電であった (32%) 再生可能エネルギー部門は非常に速いペースで成長しているが ポーランドは 2020 年までに最低でも発電量全体の 15% を RES で発電するという目標達成に向けて努力する必要がある (2011 年の RES のシェアの公式数値は 2011 年の中間目標をわずかに上回っただけ ) 政府は 様々な方策で RES を支援している RES 発電を行う事業体は電源証明書 ( グリーン証書 ) の交付を受ける これはポーランド電力取引所での取引が可能で 事業者にとっての追加的な収入源となるかもしれない RES 電力を オフテイク契約により DSO が最低保証価格で購入 RES 発電の生産者はまた 追加的なインセンティブを提供される 特に税制上の優遇措置 電力網への優先的な接続 ( 小規模事業者に対しては割引料金を適用 ) しかし 本報告書 20 ページで取り上げているように 政府は現在 RES の新たなインセンティブ制度に取り組んでいる 現段階の案は グリーン証書からリバースオークション ( 競り下げ ) 制度への動きに移行している ( 新しい施設は後者が義務化 ) また 政府は支援制度のコスト全体を抑制する意向があるようだ 最新の案は 既存のシステムと比較して また使用される技術によっては 再生可能エネルギープロジェクトの経済面を大きく変更している可能性がある 提案された支援制度の 2013 年 11 月時点での注目点を 本報告書の本文に示す 最終的にどのような形になるかは現在も判明しておらず エネルギー部門では先行きの不透明感が強く残っている 市場のキープレーヤー ポーランドの電力部門は 地域の総合企業 4 社の PGE Tauron Energa Enea および送電運営者 (PSE Operator) が支配的な地位を占め 高度に集中が進んでいる 近年 数多くの民営化と M&A が実施されており エネルギー部門では国営企業の数がさらに減少に向かうとみられている この 20 年間 多くの企業によるポーランドの電力市場への参入の動き または既に参入がみられるが 地域の電力市場のいくつかの例外はあるものの 既存の市場シェアには大きな影響を及ぼしてはいない 電力の需給予想 ポーランドの電力分野は 年率 1.4% から 1.8% と 2022 年まで緩やかながらも安定的な成長を遂げると予想されている ポーランドは エネルギー燃料の多様化を進めていて 再生可能エネルギー分野では大幅な伸びを目指しており 2022 年までに石炭の割合が 75% に低下するのは必至である 長期的には シェールガスと原子力エネルギーが石炭の割合の削減に貢献するかもしれない 大半の発電施設がかなり老朽化しており 大規模な投資が必要である したがって ポーランドの将来の発電能力は 老朽化した発電施設への投資に拠るところが大きい ポーランドはま 2

た EU の要求事項のため 数多くの既存の発電所の閉鎖や 現代的な施設への改良を余儀なくされている 重大な電力不足は 2017 年以降から問題となる可能性がある しかし 不透明な経済および規制環境のため 最近複数の投資プロジェクトが再検討されている 2030 年までのポーランドのエネルギー政策 ポーランドのエネルギー政策の主たる目標は 特に エネルギー効率の改善 RES の開発 エネルギーミックスの多様化 業界全体での環境への影響の削減が含まれる 2007 年 EU は気候変動 エネルギー政策パッケージを示した これは 2020 年までに EU 全体で多くの目標を達成することを要求している 中でも エネルギー生産における RES シェアの 20% 増加 温室効果ガス排出量を 1990 年のレベルから 20% 削減 エネルギー利用の効率化 20% 向上などが挙げられる 各国の経済発展段階の差異を考慮し ポーランドは 2020 年までエネルギー生産の RES シェアを 15% 増加させなくてはならないが 一方で 一定の条件の下で 温室効果ガスの排出量 14% 増が認められている 国内の法令をエネルギー分野における EU 指令の要求事項に適合させる手続きが 現在進行中である さらに ポーランドのエネルギー情勢はエネルギー 3 法に拠るところが大きい この法案は現在準備中で 最終的な形が不透明となっている 法整備の不透明性は 内外の投資家にとって大きな阻害要因となっている エネルギー生産 ポーランドの発電は 主に石炭と褐炭を使用している (2012 年総発電量の約 88%) 石炭は今後も主要燃料として期待されているが RES のシェアは上昇すると予想されている 政府は ポーランドのエネルギーミックスの多様化の促進および海外供給の燃料 ( 主に天然ガスと石油をロシアから輸入 ) に対する安全策として 石炭液化とクリーン コール テクノロジーを進めると同時に シェールガス採掘を推進し 原子力発電所も支持している 2008 年 政府は バルト海でポーランド初の LNG 基地の建設を決議した 基地の初期容量は 50 億 m 3 ( 国の 1 年間の天然ガス消費量の 1/3 に相当 ) で その後 75 億 m 3 に増加する可能性がある 現時点では 初期投資は 2014 年 12 月までに完了すると発表されている エネルギー効率 エネルギー効率化における政府の主たる目的は ゼロエネルギーの経済成長を達成することである これは 経済が成長状態で初期のエネルギー燃料に追加的な需要が発生しないことを指す 近代的な発電所には数多くの種類 (CHP CCGT CCS IGCC 廃熱回収などを含む) が存在するが これらはポーランドにおける炭素排出の抑制とエネルギー効率の向上につながる可能性がある これに対する現政府の政策は 次のような状況にある 政府は 2030 年までの達成目標として 電力生産全体の CHP のシェアを 2010 年の 17% から 22% に引き上げるとしている しかし 2013 年 3 月 31 日に政府の CHP 支援プログラムの期 3

限が到来したものの 新たな支援体制はまだ導入されていない 支援システムの期限切れが CHP 技術を利用した熱供給者の収益率に大きな影響を与えている CCGT と廃熱回収技術の利用は現在限定的であり ポーランド中央鉱業研究所による実験的な開発以外 IGCC の発電所はない ポーランドの主な投資プロジェクト 昨今のエネルギー市場のトレンドや政府の支援プログラムの最終形が不透明であることから数多くのプロジェクトが延期または中断しているにもかかわらず ポーランドは 今後 10~20 年にエネルギー部門でかなりの数の投資プログラムを予測している RMR によれば 既存のエネルギー容量 ( 除く RES) への投資プロジェクトは 2013 年から 2024 年の間で 330 億 EUR と見積もられており うち 70 億 EUR 相当のプロジェクトが最近計画を延期している PMR のいう中断されたプロジェクトのうち 最大規模の 1 つには PGE のオポレ発電所の総発電容量 1.8GW の石炭火力発電施設 2 ブロックが含まれる だが 昨今の不確実なプロジェクト経済性にもかかわらず 国営の巨大エネルギー会社によるこのような大型プロジェクトの存続に大きな政治的支援がある模様で この結果として 最近オポレ発電所が再開されることとなった ポーランドの国家エネルギー戦略に基づき 計画され現在開発中の投資プロジェクトは政府の目標とするエネルギーミックスの多様化を広く下支えしているが 石炭と褐炭は依然として重要な燃料となっている 環境要求事項の増加により 数多くの廃棄物焼却施設付属の発電プロジェクトもまた 現在開発中または近い将来計画されている 現在進行中の投資 ポーランドの投資プログラムには合計 20 の主要プロジェクトが進行中であることを 確認した 内訳は ガス燃焼発電施設 6 件 地方の廃棄物焼却施設が 6 件 石炭火力発電プロジェクト 5 件 大規模 RES プロジェクト 3 件 本報告書で選定した現段階で実現しているプロジェクトに関する CAPEX 総額の見積もりは 88 億 EUR である 進行中または建設中のうち最大規模の投資プロジェクトには 大規模石炭火力発電施設のオポレ発電所 (0.9GW が 2 基 ) コジェニツェ発電所(1.1GW の第 11 基の建設 ) ヤヴォジュノ発電所 (0.9GW の新区画の建設 ) がある これら 3 プロジェクトに関する CAPEX は見積もりで それぞれおよそ 27 億 EUR 15 億 EUR 13 億 EUR に上るとみられている 投資の入札 また 本報告書は 入札段階 ( または入札事前段階 ) にある 15 の主要エネルギー投資を選定した 内訳は ガス燃焼発電施設 8 件 石炭火力発電所 3 件 褐炭火力発電所 2 件 廃棄物焼却場 1 件 RES プロジェクト 1 件 入札段階にある最大規模のプロジェクトは 2 か所の石炭火力発電所 Kulczyk Investments による 2.1GW のプウノツ発電所 (CAPEX 推定 29 億 EUR) および Kompania Węglowa による 1.0GW のチェチョット発電所 (CAPEX 推定 15 億 EUR) である 4

計画中の投資 石炭 褐炭 天然ガス燃料による発電ユニットに加え 原子力発電プラントや数多くの再生可能エネルギープロジェクトを含む 様々な種類のエネルギーによる発電機能に対して 多数の投資が計画されている ポーランド初の原子力発電所は エネルギー複合企業体である Tauron Enea 銅の鉱山業者である KGHM という 3 社の国営企業の支援を受けて PGE( プロジェクトシェア 70%) が建設計画を進めている 3.0GW の第 1 号基に関連するプロジェクトの CAPEX 概算はおよそ 146 億 EUR で 2026 年の完全稼働を目指す 再生可能エネルギーに対するさらなる大型投資計画は 3 件のバルト海沿岸の風力発電所プロジェクトからなる 内訳は PGE が 3.5GW ポーランドの石油精製会社 PKN Orlen が 2.0GW PEP (Kulczyk Investments 子会社 ) が 0.6GW これら 3 件の投資価値の総額は およそ 228 億 EUR と推定される 5