改修のポイント 3 洗面手洗いの選定 洗面手洗いの高さと大きさ車イスでの使用には 立位で使用するよりも低く設置する必要がありますが 高さは個人差が大きいので使用するご本人に模擬動作を行ってもらって決めるのが良いでしょう 洗面のサイズは 小さすぎると洗面の下のスペースも狭くなって足が入らず 洗面に手が届きにくくなります 逆に大きすぎると洗面が上体に当たり 前に手が伸ばしにくい方の場合には水栓のレバーに手が届きにくくなります ご本人の状況を観察し 判断するようにしてください 水栓自動水栓はレバーを操作することなく水を出すことができるので 一般的には便利ですが 認知症の方の中には自動水栓が理解できず 水を出すレバーを探して混乱してしまう方もいます ご本人の特性に合わせて選定しましょう 冬期に温かいお湯でしっかり手を洗うようにするには 電気温水器の設置が有効です 以前は電気で温めたお湯をためておくタイプが主流でしたが 最近では安全な温度で連続使用できるタイプのものも発売されています 改修のポイント 4 収納スペースの確保 ~ 整理整頓が大切 ~ 排泄は副交感神経優位の際に活性化すると言われています 排泄促進のためにはリラックスできる環境の提供が必要です トイレは機能的なスペースであるべきですが 同時に居心地の良いスペースにする必要もあるのです トイレには清掃用具 洗剤類 トイレットペーパーなどの消耗品 それに交換用のおむつや使用後のおむつなど関連するさまざまなものが置かれます これらが雑多に置かれている状況で リ ラックスを求めてもそれは難しいと言わざるを得ません 気持ちよく利用できるトイレにするために まずは整理整頓が大切で そのためには 物品類を収納できる場所の確保が必要です 消耗品類 ゴミ類 清掃用具類をそれぞれ収納できるスペースを確保しましょう さらに 内装の素材や色などにも配慮し より快適なトイレとなるように工夫してみてください 快適に使用できるように収納を豊富に設けたトイレ 撮影鈴木文人 リハ職が住宅改修で知っておきたいポイント は今回で最終回となります 間瀬先生 ご執筆いただきありがとうございました 112 リハージュ Vol. 4
歩行能力の 維持 改善につながる リハビリのすすめ方 最終回 転倒予防のためのアプローチ 連載第 1~3 回 そして特集 1-1 疾患別に見る歩行障害へのアプローチ (vol.2の12 ページ~ 参照 ) を通じて 歩行障害に対する足底感覚からのアプローチについて解説しました 本稿では 転倒に関する要因を外的要因と内的要因に分け 評価と介入のポイントを解説します 一般社団法人動きのコツ協会代表理事 理学療法士 生野達也 転倒における原因追求の重要性 ~ 外的要因と内的要因を区別する ~ 歩行障害に対するアプローチでは 転倒を予防することが重要です しかし 転倒を予防することに重きを置いてしまうと 活動性の低下につながる危険性もあります そのため 転倒の原因となる要素を評価し 歩行改善へ向けたアプローチを行いながらも 日々の生活で安全な歩行が可能となるマネジメントを行うことが重要です 転倒の原因には 生活環境の要因が主となる外的要因と 身体的な要因が主となる内的要因に分け られます これらは複雑にからみあっていることも多く 明確に区別することはできませんが 外的要因と内的要因について ある程度区別して評価と介入を進めていきましょう 外的要因 ( 生活環境 ) 内的要因 ( 身体機能面 ) 屋内 : 段差や手すりの有無加齢や疾患に伴う床の状況筋力やバランスの低下屋外 : 斜面や歩道の段差の有無注意力の低下人通りの多さ 外的要因における評価と介入 転倒の原因となる外的要因として 屋内 : 玄関や風呂場などの段差や手すりの有無フローリングやカーペットなど床の状況屋外 : 斜面や歩道の段差の有無人通りの多さなどが挙げられ わずかな違いで転倒のリスクは変化します 転倒を予防するためには 段差の高さや地面の状況が身体能力に合っているか評価を行い 必要であれば段差の解消や手すりの設置などの対策を行います しかし 手すりのつけすぎなど 身体能力に合っていない過剰な対策にならないよう注意が必要です 手すりのつけすぎは 両上肢に頼った生活となってしまい 本来持っている体幹や両下肢の能力を活かすことができなくなります 結果として体幹や両下肢の機能低下につながるリスクにもなります 転倒を予防するためには 外的要因だけではなく身体的な要因が主となる内的要因に関する評価と介入を同時に進めることが重要です 転倒における内外的要因例 : 段差 筋力やバランス感覚の低下 Vol.4 リハージュ 113
内的要因における評価と介入 転倒の原因となる内的要因は 加齢や疾患に伴う筋力やバランス感覚の低下 注意力の低下といった身体機能面の問題が挙げられます こうした問題点を改善させるように介入を行い 転倒しにくい身体能力を身につけることが転倒の予防につながります 筋力やバランス感覚に対する介入を行っても改善しない場合 これまでの連載や特集で解説してきた 可能性があります そこで今回は 方向転換時 患側へ倒れそうになる という場合 患側における立脚相と遊脚相のどち らに問題が生じているか評価を行います また しながら改善の可能性を探っていきましょう それぞれの動きにおいて共通した問題点が多い傾向にあります 動作の難易度設定に着目した介入 高 ( 難易度 ) 低 体性感覚への注意 方向転換 (1) 立位足踏み (2) 立位重心移動 (3) 起立 改善しない場合 より難易度の低い動作で介入 (1) 立位足踏み ( 難易度 : 高 ) まずは 方向転換より難易度が低い回転なしの立位での足踏みから進めます 方向転換時に 患側中殿筋の筋緊張低下などによって外側へ動揺してしまうのは 足底内側の触圧覚に注意が向いていないことが原因となっている傾向があります 足踏みをしてもらい 足の裏の親指側と小指側全体が重たくてしっかり支えている感じがするように注意してください といった声かけをしてみます 中殿筋の筋緊張低下 114 リハージュ Vol. 4
遊脚相の評価と介入 患側足趾屈筋の筋緊張亢進などによってつま先がひっかかってしまうのは 遊脚相直前に患側下肢への荷重が残存しており 足底の触圧覚に注意が向いていないことが原因となっている傾向があります 足踏みをしてもらい 健側の足に体重をのせて 患側の足の裏が軽くなる感じに注意してください といった声かけをしてみます 足趾屈筋の筋緊張亢進 患側に荷重が残存していることに注意が向いていない 健側へ体重をのせる (2) 立位重心移動 ( 難易度 : 中 ) 立位足踏みでの介入で改善がみられない場合 より難易度の低い両下肢支持での立位重心移動へと進みます 足踏みの際に患側中殿筋の筋緊張低下などによって外側へ動揺してしまう場合 両下肢支持での立位から患側へ荷重を開始する段階から 足底内側の触圧覚に注意が向いていない傾向があります 中殿筋の筋緊張低下 立位重心移動を行い 両足で立った姿勢で患側へ体重をかけ始める時から足の裏の親指側と小指側全体が重たくてしっかり支えている感じがするように注意してください といった声かけをしてみます Vol.4 リハージュ 115
遊脚相の評価と介入 足踏みの際に 患側足趾屈筋の筋緊張亢進などによってつま先がひっかかってしまうのは 両下肢支持での立位から患側へ荷重を開始する段階から 足底後部の触圧覚に注意が向いておらず 両側ともにつま先重心になっている傾向があります 患側 健側 足趾屈筋の筋緊張亢進 立位重心移動を行い 両足で立った姿勢で健側へ体重をかけ始める時から つま先だけではなく 踵も重くてしっかり支えている感じがするように注意してください といった声かけをしてみます 支持側 / 健側 振り出し側 / 患側 支持側 / 健側 つま先だけでなく 踵 も重くてしっかり支え ている感じがするよう 後部触圧覚に注意が向いていない 荷重が残存していることに注意が向いていない に注意する (3) イスからの起立 ( 難易度 : 低 ) 立位重心移動での介入で改善がみられない場合 より難易度の低いイスからの立ち上がりへと進みます 立位重心移動の際に 患側中殿筋の筋緊張低下などによって外側へ動揺してしまう場合 イスから立ち上がろうとおじぎをする段階から 足底内側の触圧覚に注意が向いていない傾向があります 中殿筋などの筋緊張低下 イスからの立ち上がりで おじぎをする時から足の裏の親指側と小指側全体が 重たくてしっかり支えている感じがするように注意してください といった声かけをしてみます 116 リハージュ Vol. 4