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第 2 問問題のねらい青年期と自己の形成の課題について, アイデンティティや防衛機制に関する概念や理論等を活用して, 進路決定や日常生活の葛藤について考察する力を問うとともに, 日本及び世界の宗教や文化をとらえる上で大切な知識や考え方についての理解を問う ( 夏休みの課題として複数のテーマについて調

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課題研究の進め方 これは,10 年経験者研修講座の各教科の課題研究の研修で使っている資料をまとめたものです 課題研究の進め方 と 課題研究報告書の書き方 について, 教科を限定せずに一般的に紹介してありますので, 校内研修などにご活用ください

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(2) 各学年の目標 ア 知識 に関する目標 社会生活についての総合的な理解 第 3 学年 身近な地域や市区町村の地理的環境 地域の安全を守るための諸活動や地域 の産業と消費生活の様子 地域の様子の移り変わりについて 人々の生活と の関連を踏まえて理解する 第 4 学年 県の地理的環境の特色 地域の

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たい 生徒は九州地方のイメージを漠然と 自然が多い 山がある 空気がおいしい というような自然や環境がよいことをあげていた そこで 九州地方の環境と産業の関わりや環境保全への取組 持続可能な社会を目指した活動についてなど 九州の地域的特色を捉えさせることが重要である そのために 環境保全には人々の積

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考え 主体的な学び 対話的な学び 問題意識を持つ 多面的 多角的思考 自分自身との関わりで考える 協働 対話 自らを振り返る 学級経営の充実 議論する 主体的に自分との関わりで考え 自分の感じ方 考え方を 明確にする 多様な感じ方 考え方と出会い 交流し 自分の感じ方 考え方を より明確にする 教師

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イ 各科目の特徴 < 公共 > 公共の目標 人間と社会の在り方についての見方 考え方を働かせ 現代の諸課題を追究したり解決したりする活動を通して 広い視野に立ち グローバル化する国際社会に主体的に生きる平和で民主的な国家及び社会の有為な形成者に必要な公民としての資質 能力を次のとおり育成することを目

7 本時の指導構想 (1) 本時のねらい本時は, 前時までの活動を受けて, 単元テーマ なぜ働くのだろう について, さらに考えを深めるための自己課題を設定させる () 論理の意識化を図る学習活動 に関わって 考えがいのある課題設定 学習課題を 職業調べの自己課題を設定する と設定する ( 学習課題

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福祉科の指導法 単位数履修方法配当年次 4 R 2 年以上 科目コード EC3704 担当教員佐藤暢芳 ( 上 ) 赤塚俊治 ( 下 ) 2017 年 11 月 20 日までに履修登録し,2019 年 3 月までに単位修得してください 2014 年度までの入学者が履修登録可能です 科目の内容 福祉科

人間科学部専攻科目 スポーツ行政学 の一部において オリンピックに関する講義を行った 我が国の体育 スポーツ行政の仕組みとスポーツ振興施策について スポーツ基本法 や スポーツ基本計画 等をもとに理解を深めるとともに 国民のスポーツ実施状況やスポーツ施設の現状等についてスポーツ行政の在り方について理

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(3) 指導観公民的分野は地理的分野と歴史的分野の学びの積み重ねによるところが大きい 用語や概念も高度化し 生徒の感想にも 難しい と感じるものが多くなっている そこで その難しいと感じる公民の用語などは積極的に用語集を活用し 難しい言葉に対する抵抗感を少しでも和らげるよう授業でも活用している また

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(2) 系統観 小学校社会科 ( 第 6 学年 ) 世界の中の日本の役割について, 我が国と経済や文化などでの面でつながりが深い国の人々の様子などを調査し, 外国の人々と共に生きていくためには異なる文化や習慣を理解し合うことが大切であることを考える 中学校社会科 ( 第 1 学年地理的分野 ) 世界

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Ⅰ 評価の基本的な考え方 1 学力のとらえ方 学力については 知識や技能だけでなく 自ら学ぶ意欲や思考力 判断力 表現力などの資質や能力などを含めて基礎 基本ととらえ その基礎 基本の確実な定着を前提に 自ら学び 自ら考える力などの 生きる力 がはぐくまれているかどうかを含めて学力ととらえる必要があ

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指導内容科目国語総合の具体的な指導目標評価の観点 方法 読むこと 書くこと 対象を的確に説明したり描写したりするなど 適切な表現の下かを考えて読む 常用漢字の大体を読み 書くことができ 文や文章の中で使うことができる 与えられた題材に即して 自分が体験したことや考えたこと 身の回りのことなどから 相

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第 1 章総則第 1 教育課程編成の一般方針 1( 前略 ) 学校の教育活動を進めるに当たっては 各学校において 児童に生きる力をはぐくむことを目指し 創意工夫を生かした特色ある教育活動を展開する中で 基礎的 基本的な知識及び技能を確実に習得させ これらを活用して課題を解決するために必要な思考力 判

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しかし 社会科については 嫌い どちらかといえば嫌い と答えている生徒の方が多く また 地理分野よりも歴史分野のほうに興味関心が高い傾向がある 資料の活用に関しては 地図や資料集を用いながら授業を進めている ほとんどの生徒は資料を読み取ることができるものの 読み取ったことを比較したり 関連付けたりす

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習う ということで 教育を受ける側の 意味合いになると思います また 教育者とした場合 その構造は 義 ( 案 ) では この考え方に基づき 教える ことと学ぶことはダイナミックな相互作用 と捉えています 教育する 者 となると思います 看護学教育の定義を これに当てはめると 教授学習過程する者 と

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り込んで獲得するものではなく 探究の過程を通して 自分自身で取捨 選択し 整理し 既にもっている知識や体験と結び付けながら 構造化され 身に付けていくものである そして こうした過程を経て獲得された知識は 実社会 実生活における様々な課題の解決に活用可能な生きて働く知識 すなわち概念として形成されて

(2) 授業者が学びの見通しを持つ ( 学習目標の明確化 ) 問題解決的な学習に取り組む際, どのような場面で, どのようにして, どのような力を子どもたちに付けるのか, 単元や授業における目標を明確にして学びを見通しておくことが大切です 目標が不明確であると, 作業や体験などの活動そのものに, 子

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2 本県の高等学校における消費者教育の現状について (1) 国 県 学校における現状 国 平成 24 年 12 月の 消費者教育の推進に関する法律 施行 県 平成 26 年 3 月に やまなし消費者教育推進計画 策定 平成 27 年度に 山梨県消費者基本計画 策定 この計画においては 4つの基本方針

Transcription:

日本学術会議 日本地理学会公開シンポジウム 2019.3.21 地理総合 における国際理解とは 岡橋秀典 ( 奈良大学文学部 地理学科 )

Ⅰ. はじめに 本報告に至る経緯 日本学術会議地理教育分科会 および同地誌 国際理解小委員会での議論をふまえて報告 地理総合 には 三つの大項目 A. 地図や地理情報システムと現代世界 ( 地図 +GIS) B. 国際理解と国際協力 ( ESD+SDGs?) C. 持続可能な地域づくりと私たち ( 防災 +ESD)

本報告の目的 B. 国際理解と国際協力の大項目については 2017 年の日本地理学会秋季学術大会の地理教育公開講座の成果 ( 新地理 65-7 2017 年に掲載 ) があるものの 他項目に比べ未だ検討が少ない 他方この項目は 現行 地理 A との接点がもっとも大きい部分である また 歴史分野との関係も強い したがって このパートの組み立てについて早急な検討を要する ここでは 学習指導要領の検討を基本として 筆者の海外地域研究の知見も加えて 地理総合 における国際理解とはどういうことなのかを検討したい

私の立ち位置 学習指導要領 地理教科書 高等学校での授業 研究分野 ; 海外地域研究 ( インド ) 日本の農山村研究 高等学校社会科地理 A 地理 B の執筆 日本学術会議地域研究委員会

Ⅱ. 地理総合 で大きく変わったこと 地理総合 ー 2 単位 ( 年間 70 時間 ) の必修科目 地歴 公民科の基本科目 地理基礎 ではない 地理を通じて事象や課題を総合的に捉える科目? オープンマインドが重要 科目の目標社会的事象の地理的な見方 考え方を働かせ 課題を追究したり解決したりする活動を通して 広い視野に立ち グローバル化する国際社会に主体的に生きる平和で民主的な国家及び社会の有為な形成者に必要な公民としての資質 能力を育成する 知識及び技能 に加え 思考力 判断力 表現力等 を身につけることが要請されている 特に 地理教育国際憲章の地理学研究の中心概念をその基礎として取り入れている

目標 (1) 知識及び技能 に関わるねらい 世界の生活文化の多様性や 防災 地域や地球的課題への取組などを理解するとともに ------ 理解する 概念などを活用して多面的 多角的に考察したり 地理的な課題の解決に向けて構想したりする 学習過程を前提に 世界の生活文化や 防災 地域や地球的課題への取組などを理解することを意味する 目標 (2) 思考力 判断力 表現力等 に関わるねらい 地理に関わる事象の意味や意義 特色や相互の関連を 位置や分布 場所 人間と自然環境との相互依存関係 空間的相互依存作用 地域などに着目して 概念などを活用して多面的多角的に考察したり 地理的な課題の解決に向けて構想したりする力や 考察 構想したことを効果的に説明したり それらを基に議論したりする力を養う これら 5 つの視点は 具体的な授業の中で主要な問いとして用いられる

これらの概念は 地理教育国際憲章において地理学研究の中心概念として示される 特に国際理解にとって重要と思われるのは (5) 地域についての説明 地理学者は 地域をいろいろと異なった規模 つまり地域社会 国家 大陸 地球規模で研究の対象とする 地域の持つ統合的システムは 一つの地球的生態系の概念へと導かれる 地球システムの中の異なる地域の構造と発展過程の理解は 人々の地域的 国家的アイデンティティ及び国際的立場を明らかにするための基礎となる

地理総合 における地誌 現行 地理 A では 世界地誌 ( 諸地域の生活 文化 ) が大きな位置を占める 教科書のページ数では 40% 程度 しかし 地理総合 では 繰り返しを避ける必要も明記 ここでの学習は国際理解を主なねらいとしており 学習対象はあくまで 世界の人々の特色ある生活文化 であって すでに中学校社会科地理的分野において州ごとに 世界の諸地域 を学習していることを踏まえれば ここでの学習がその繰り返しとならないよう また 地理探究 における 現代世界の諸地域 の学習とも重複することのないよう 厳に留意する必要がある 現行 地理 A 教科書でも 様々な発問の工夫はなされていたが 現行の網羅的地誌のままでは対応できない 問題志向的地誌?

Ⅲ. 地理総合 の 生活文化 と国際理解 生活文化 ー地理的環境との関わりにおいて育まれる人間の生活の営み 衣食住を中心とする暮らし 慣習や規範 宗教などの主に生活様式に関わる事柄 H21 の地理 A の 生活 文化 ー衣食住を中心とした生活様式だけでなく 生産様式に関わる内容も含み 広く人間の諸活動から生みされるもの 地理総合 の生活文化では経済活動などが含まれず 文化の概念がより狭くなっている 松井 (2017) が指摘するように 文化の多様性 ( 差異 ) に注目するばかりでなく 文化のもつ普遍的性格を地理的に理解させること が要請されている このことからすれば 地理学だけでなく 文化人類学からの寄与も必要とされよう

内容とその取り扱い B 国際理解と国際協力

知識を身に着ける 1 多様な生活文化 地理的環境

知識を身に着ける 2 特色ある生活文化 自他の文化を尊重 国際理解

国際理解とはー異文化理解と地球理解 ここでの国際理解の概念は 異文化理解に力点を置いている 広い視野を持ち 異文化を理解するとともに これを尊重する態度や異なる文化を持った人々と共に生きていく資質や能力の育成を図ること (21 世紀を展望した我が国の教育の在り方について ( 中央教育審議会第一次答申 第 2 章国際化と教育 1996 年 ) UNESCO の国際理解 世界の人々が 国を越えて理解しあい 協力し 世界平和を実現すること を理念とした教育 人権 環境 開発なども含む 他方 地球理解という考え方もある (Global Understanding)IYGU2016

国際地球理解年 (IYGU)2016 とは 国際地球理解年 (IYGU)2016 の目的 人々の身近な行動がどのように地球規模の影響をもつかについての理解を深め 深刻な地球規模の問題に対するより良い改善策に資すること 地球の持続可能性のための地球理解 (Global Understanding for Global sustainability) 地球規模の思考と身近な行動に橋をかける 14

国際地球理解年 (IYGU)2016 のメッセージ 国際地球理解年 (IYGU) は 我々がますますグローバル化した世界に暮らしている そのあり方に関心をもっている われわれはどのように自然を変化させているのか 我々は出現するグローバルな現実に対してどのように新たな社会的政治的関係を築くべきなのか 社会と文化は 我々が自然と共に生き また自然を形づくる そのあり方を規定している 社会と文化は 我々が日々の行動のグローバルな結果をどのようにとらえるのか に影響を与える 我々は 我々の日々の行動がグローバルな課題を克服するのに世界全体に対してもつ意味を理解する必要がある ESD も同様の問題意識をもつと思われる 阪上弘彬 (2018) ドイツ地理教育改革と ESD の展開 古今書院

思考力 判断力 表現力等 生活文化の多様性や変容に関わる主題 場所の特徴自然条件社会的条件

内容とその取り扱い B 国際理解と国際協力中項目 (1) 生活文化の多様性と国際理解 場所や人間と自然環境とその相互依存関係などに関わる視点に着目して 世界の人々の生活文化を多面的 多角的に考察し 表現する力を育成するとともに 世界の人々の生活文化の多様性や変容 自他の文化を尊重し 国際理解を図ることの重要性などを理解することができるようにすることが求められている 場所に関わる視点ー例えば 特色ある生活文化を それが見られる場所の地理的環境の共通点や相違点 歴史的背景との関わりから捉える 人間と自然環境との相互依存関係に関わる視点ー例えば 特色ある生活文化の多様性や変容の要因をそれが見られる場所の人間活動と自然環境との関わりから捉える

地理的環境 とは 場所の自然環境と社会環境を意味 社会環境も含まれることに留意 H21 年改訂の地理 A では 世界諸地域の生活 文化を地理的環境や民族性と関連付けてとらえる この 民族性 の概念は消失 自然環境ー地形 気候などの主な要素が相互に関係しながら生活文化に影響 社会環境ー世界の人々の生活文化は歴史的背景や産業の営みなどを反映したものであることを理解するとともに 時代に応じて変化する部分があることに気づくことが大切 世界人々の生活文化は ( 中略 ) 地域ごとに独自性をもち 多様性に富むこと また現代ではグローバル化や情報化の進展などにより変容していることなどに留意して 主題を設定し学習できるよう 学習内容の構成 展開を工夫する必要がある

地理的環境 の図解 地形 自然環境 気候など 地理的環境 社会環境 ( 時代に応じて変化 ) 歴史的背景 産業の営みなど

地理的環境 の問題点 社会環境は 自然環境に比べてその内容が不明瞭である グローバルな制度 政治 経済など非地理的な環境をどう考えるか グローバル化の進む今日 社会環境をどう構成するかが大きな課題となる 場所の人間活動と自然環境との関わりから捉えることが先行すると 環境決定論的な説明に傾きやすい

主題 : 地理的環境を踏まえた生活文化の理解と尊重 問の例 地理的環境 生活文化 世界各地で様々な食文化が育まれてきたのはなぜだろうか 生活文化 地理的環境 私たちの先人たちは 身の回りの環境とどのように接し どのように守ってきたのだろうか 生活文化は地理的環境との相互の関わりにおいてと のように変容しているのか また その変容の要因は何かについて考察することも大切 問の例 人々の衣服か 時代や地域を越えて 変化したり変化しなかったりするのはなぜだろうか

Ⅳ. 実際の授業のためにー方法をめぐって 地理総合 の科目の性格に立ち戻ると 持続可能な社会づくり グローバルな視座からの国際理解に資することがここでも課題となる それに応え得る方法は何か? 一つの答としての システム思考

地理教育におけるシステム思考への注目 2018 年度地理科学学会秋季学術大会シンポジウムから テーマ : システム思考をはぐくむ地理学習 -ESD で問われているもの - 趣旨説明 人間活動と自然環境 空間的相互依存関係と深く関わる システム という考え方に着目して 多様な視点から考察し 持続可能な社会の形成に向けて 諸問題の解決に取り組むことのできる資質 能力 ( コンピテンシー ) の育成が 地理総合 では示されている またシステムの考え方 ( システム思考 ) は すでに世界の多くの地理教育で取り入れられている 特に ESD 先進国であるドイツでは 地理学習で育むべき資質 能力の中核として 地理システムコンピテンシー が開発され 授業実践がなされている このように持続可能な社会にむけた学習や SDGs の実践に当たって システムの考えは欠かすことのできないものとして位置付けることができるだろう その一方でシステムが本来もつ構造性 (systematic) や全体性 (systemic) という特性が日本では十分に周知 理解されているとは言い難い 本シンポジウムでは 今後の地理教育 ESD 実践のカギとなるシステムについて その考え方を整理し 授業実践の提案を通じて 地理学習におけるシステムの意義について示すことを目的とする

システムアプローチで考える地理教育 雑誌 地理 で連載された システムアプローチで考える地理教育 の一連の論文 システム思考を用いた授業 - 地球的課題 アラル海の縮小 開発コンパスを活用したシステム思考を育む地理授業 関係構造図による比較地誌と熱帯林の縮小 : 東南アジア アフリカの熱帯地域 ソマリアの海賊問題で 昨日の解決策が今日の問題を生む を考える など多数

システムの図解 関係構造図は有用だが 複雑すぎないか システムアプローチのいくつかの課題 1 項目 ( 要素 ) の抽出 2 項目のレベルの統一性 3 関係の表示の仕方 4 主体の問題 どのような図解がよいのか 宮崎 (2019) 社会構造やパラダイムに気づくことの重要性 地理 64-2.

事例 : 複合的国家イ ンドをどう理解するか 多様性を地理的 民族的 社会的 宗教的 に分けて捉える 最後に 多様性を統一するものはなにか 考える

インドの地理と様々な図解表現 桜田潤 (2017) 図で考える シンプルになる ダイヤモンド社 思考を磨き上げる 7 つの図を使って 右の 1 から 7 までを表現する 1 中心と周辺の関係 2 文化の地域区分 3 緑の革命の評価 4 州間の地域格差 5 独立後の発展のプロセス 6 メガリージョン 7 カーストの構成

海外地域研究の成果の活用 ; 広島大学現代インド研究センターのウェブサイトの事例から設立 :2010 年度 なぜ設立されたのか? 人間文化研究機構 (NIHU) の 現代インド地域研究 事業の拠点として, 同機構と本学により共同設置 現代インド地域研究はまだまだ層が薄い 広島大学の半世紀にわたるインド研究の実績が評価 広島大学総合地誌研究資料センターの活動 (1986-2006) 研究ネットワーク 京都大学 ( 中心拠点 ), 東京大学, 国立民族学博物館, 東京外国語大学, 龍谷大学の 5 拠点で形成

GIS によるインド主題図の作成と公開

インド地理写真コレクション 30

日本学術会議地理教育分科会の会議での松本隆夫先生 ( 木更津高等学校教諭 ) の指摘から 現在から未来を予測するものに興味 どうすべきか, どうあるべきか, どうかかわれるかという視点の育成 歴史教師の思考傾向 : 系統地理は苦手, 人間が登場しないものは苦手 市民性 : 外国人が増えていく中で, どうしていくかを考える どのように社会 世界と関わり, よりよい人生を送るか SDGs: 教師と生徒が共通の目標を持てるのでは?SDGs の 18 番目の目標を考えよう 今後の取り組み : 新聞活用,SDGs を参考にして課題解決, すべての学問に通じる. 知る 判断する 行動するというサイクルを盛り込みたい