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ヒト脂肪組織由来幹細胞における外因性脂肪酸結合タンパク (FABP)4 FABP 5 の影響 糖尿病 肥満の病態解明と脂肪幹細胞再生治療への可能性 ポイント 脂肪幹細胞の脂肪分化誘導に伴い FABP4( 脂肪細胞型 ) FABP5( 表皮型 ) が発現亢進し 分泌されることを確認しました トランスク

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を行った 2.iPS 細胞の由来の探索 3.MEF および TTF 以外の細胞からの ips 細胞誘導 4.Fbx15 以外の遺伝子発現を指標とした ips 細胞の樹立 ips 細胞はこれまでのところレトロウイルスを用いた場合しか樹立できていない また 4 因子を導入した線維芽細胞の中で ips 細

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問い合わせ先など研究推進責任者 : 農研機構畜産草地研究所所長土肥宏志研究担当者 : 農研機構畜産草地研究所家畜育種繁殖研究領域主任研究員ソムファイタマス TEL 研究担当者 : 農研機構動物衛生研究所病態研究領域上席研究員吉岡耕治研究担当者 : 農業生物資源研究所動物科学

世界初!超低温保存した子豚の精巣をもとに子豚が誕生

遺伝子の近傍に別の遺伝子の発現制御領域 ( エンハンサーなど ) が移動してくることによって その遺伝子の発現様式を変化させるものです ( 図 2) 融合タンパク質は比較的容易に検出できるので 前者のような二つの遺伝子組み換えの例はこれまで数多く発見されてきたのに対して 後者の場合は 広範囲のゲノム

臨床評価とは何か ( 独 ) 医薬品医療機器総合機構医療機器審査第一部方眞美

Interview Zero bleedingeding -- ここ 10 年を振り返っても 血友病の治療は大きく進歩していますね 最も大きな進歩は 遺伝子組換え凝固因子製剤が普及したことでしょう これにより 安全性や安定供給に関する心配が大きく減りました そして昨年には 従来の製剤に比べて長時間作

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査を実施し 必要に応じ適切な措置を講ずること (2) 本品の警告 効能 効果 性能 用法 用量及び使用方法は以下のとお りであるので 特段の留意をお願いすること なお その他の使用上の注意については 添付文書を参照されたいこと 警告 1 本品投与後に重篤な有害事象の発現が認められていること 及び本品


ランゲルハンス細胞の過去まず LC の過去についてお話しします LC は 1868 年に 当時ドイツのベルリン大学の医学生であった Paul Langerhans により発見されました しかしながら 当初は 細胞の形状から神経のように見えたため 神経細胞と勘違いされていました その後 約 100 年

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図 B 細胞受容体を介した NF-κB 活性化モデル

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( 様式甲 5) 学位論文内容の要旨 論文提出者氏名 論文審査担当者 主査 教授 大道正英 髙橋優子 副査副査 教授教授 岡 田 仁 克 辻 求 副査 教授 瀧内比呂也 主論文題名 Versican G1 and G3 domains are upregulated and latent trans

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ごあいさつ バイオシミラーの課題 バイオ医薬品は 20 世紀後半に開発されて以来 癌や血液疾患 自己免疫疾患等多くの難治性疾患に卓抜した治療効果を示し また一般にベネフィット リスク評価が高いと言われています しかしその一方で しばしば高額となる薬剤費用が 患者の経済的負担や社会保障費の増大に繋がる

前立腺癌は男性特有の癌で 米国においては癌死亡者数の第 2 位 ( 約 20%) を占めてい ます 日本でも前立腺癌の罹患率 死亡者数は急激に上昇しており 現在は重篤な男性悪性腫瘍疾患の1つとなって図 1 います 図 1 初期段階の前立腺癌は男性ホルモン ( アンドロゲン ) に反応し増殖します そ

1治療 かっていたか, 予想される基礎値よりも 1.5 倍以上の増加があった場合,3 尿量が 6 時間にわたって 0.5 ml/kg 体重 / 時未満に減少した場合のいずれかを満たすと,AKI と診断される. KDIGO 分類の重症度分類は,と類似し 3 ステージに分けられている ( 1). ステー

く 細胞傷害活性の無い CD4 + ヘルパー T 細胞が必須と判明した 吉田らは 1988 年 C57BL/6 マウスが腹腔内に移植した BALB/c マウス由来の Meth A 腫瘍細胞 (CTL 耐性細胞株 ) を拒絶すること 1991 年 同種異系移植によって誘導されるマクロファージ (AIM

1. Caov-3 細胞株 A2780 細胞株においてシスプラチン単剤 シスプラチンとトポテカン併用添加での殺細胞効果を MTS assay を用い検討した 2. Caov-3 細胞株においてシスプラチンによって誘導される Akt の活性化に対し トポテカンが影響するか否かを調べるために シスプラチ

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液中に存在する AIM が活性化し 尿中に移行してゴミを掃除する役目を果たす それにより迅速に尿細管の詰まりが解消され その結果 腎機能は速やかに改善することを明らかにしていた 今回本研究グループは ネコの AIM はマウスやヒトの AIM と異なる特徴を持ち 急性腎障害が生じても活性化せず尿中に移

動物性集合胚を用いた研究の 意義と倫理的課題

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Yamaton K Project, collaborating with Jikei Medical University & Meiji University Eiji kobayashi Department of Organ Fabrication Kieo University School of Medicine, 背景現在 我が国における末期腎不全治療は 血液透析 腹膜透析 そして腎移植の3 本の柱からなる 諸外国に比べ血液透析が多く 医療経済的観点から問題が指摘されていが 腎移植自体も生体ドナーからの移植に依存しておりその体制は十分とは言えない 著者は 2005 年厚労科学特別研究事業 渡航移植の実態把握及びリスク解析に関する調査研究 を行ない 我が国の腎不全に悩む患者が海外で非倫理的移植に巻き込まれている現状を報告した この日本移植学会を中心としたアカデミアの活動は 国際移植学会 (TTS) ならびに国際腎臓病学会 (ISN) と協力して 2008 年臓器売買や渡航移植に反対する国際宣言であるイスタンブール宣言の一翼をになった そして2009 年の我が国の臓器移植法案改正に大きく影響した しかし その後 脳死移植の普及と生体ドナーの安全性のさらなる向上に注力される一方で 献腎 ( 心停止後腎移植 ) 数が極端に減っている状態である ( 図 ) したがって本方面での研究の方向は 心停止ドナーがら腎臓が摘出された場合に その善意に最大限こたえることが重要である すなわち いかなる場合でも摘出した腎臓が 安全に移植できるようにすることである

心停止ドナーの善意を生かす最大なる努力 ( 図 ) 著者は 心停止腎臓を移植に全てを使う考え方として 新しい方法論を提唱してきた 移植 患者 心停止ドナー 蘇生液 (Iwai S 2012) (Yamaoka I 2012) 非侵襲的診断 (Kaimori J 2013) Tx 患者 MSC による移植臓器障害防止 (Iwai S 2014) 患者 Tx 脱細胞グラフトによる臓器の作り直し (Kobayashi E 2014) 図 1 心停止ドナーからの腎臓移植を推進するための提案プロトコール

心停止ドナーの臓器は 極度の低酸素状態に陥り 内在するATPの枯渇が生じている 従来の低温保存法では 臓器を摘出した時点でそのバイアビリテーの低下速度を落とすのみで 改善の方向に転じ得ない 近年 臨床において心停止臓器を移植まで常温化 (20 度以上 ) させる試みがなされ始めた (Hosgood 2011) 著者はラットモデルを用いて 保存液の温度は20-22 度での維持では トレハロース含有の細胞外液型保存液が適すること (IwaiS,2012) また保存液のバブリングによる酸素化は活性酸素が発生するため有害であり ヘモグロビンなどの酸素運搬体が必須であることを示した (YamaokaI, 2012) そして マージナルとなった移植候補となりえる腎臓は MRIによる非侵襲的画像診断法で 移植後の予後を判定できることを明らかにした (KaimoriJ,2013) さらに間葉系幹細胞を追加移植することで移植されたマージナル腎臓の機能改善される可能性 (IwaiS, 2014) さらに還流式脱細胞法を用いて死細胞となった腎臓の細胞外マトリックスを作り これに新たに作製したヒトの腎臓細胞を充填する研究を展開している (KobayashiE,2014) 全く新しい腎臓を作り上げる新たに人腎臓を作りだすプロジェクトを Yamaton K と称して 慈恵医科大学の横尾教授 明治大学の長嶋教授らと10 年の歳月をかけて進めてきた ここで言う Yamato とは日本の古い名称 大和で ton とは 日本語でブタの意味である Kとは Kidney の頭文字である (2014 年チーム Yamaton K)

胎児の臓器が出来上がる仕組みを理解してそれを利用するこの原理を理解する手法として動物の胎児に人の幹細胞を打ちこんでキメラ臓器ができる現象がある In vivo bioreactor( 動物工場 ) と呼ばれている すなわち免疫機能ができていないうちにヒト幹細胞等を異種動物の胎仔に打ちこみ 動物胎仔の発育過程を利用してヒト幹細胞の臓器への分化を誘導する手法である 古くは Mackenzie らが ヒト MSC を羊の胎仔に経子宮的に注入して分化誘導かけて仕事がある (Mackenzie 2001) この動物胎仔へのヒト MSC 注入し腎臓のオルガノイドを作製させる手法は Yokoo らの人工子宮装置実験で直接証明された (Yokoo T, 2005) さらに最近では Nakauchi らによる胚盤胞置換術により異種動物の受精卵へ ips/es 細胞を打ちこむことと異種動物側の腎臓発生に関わる遺伝子 ( この場合は Sall 1) をノックアウトすることで打ちこまれる幹細胞側の遺伝子が補完し 臓器発生するする研究が小動物でなされた (Usui 2012) 本手法は 現在のところ動物 ヒト間の胚を作製しなければならないことから倫理的問題を整理する必要が求められている 次に 出来上がりつつある臓器の芽を患者に移植し 患者の中で育て上げる治療法が注目される Organ But Transplantation( 臓器の芽の移植 ) という ヒト臓器の芽を試験管で作り上げ これを患者に移植して患者体内で育て上げようとする手法である Osafune らは マウスの胎仔腎臓細胞とヒト ips 細胞から誘導した中間中胚葉細胞の共培養からヒト遠位尿管を作り上げた (Mae, 2013) また Nishinakamura らはヒト ips 細胞から体軸幹細胞 さらに腎臓前駆細胞作り この細胞とマウスの胎仔脊髄を接触培養することでヒト糸球体と尿細管を作った (Sakaguchi, 2013) いずれの仕事も腎臓発生のメカニズムを明らかにし 3 次元の腎臓の構造を作り上げる一歩である この臓器の芽の移植は 古くは Hammerman らがブタ胎仔を用いて腎臓や膵臓の臓器の芽を使って行なってきている (Takeda S, 2006) 大型動物への挑戦 Yamaton K チームのこれまで これまで Yokoo らと Kidney Bud Transplantation の実用化のために 非臨床試験を行 なってきた チームは 2008 年ブタの腎臓原基をネコに移植する実験に着手した

AA B C D A:2008 年チーム Yamaton K B: 実験ネコへのブタ腎臓原基移植 C: 手術を受けた猫の体網内で発育する腎臓原基 D: 移植 1 カ月後の移植腎臓原基 患者への応用は 従来の異種移植と同等の手続が必要であるために むしろペット猫での有効性と安全性の検証を進めた 2009 年には小林は大塚製薬工場の特別顧問となり 大型予算を投じ人を外挿して ブターブタ間での検証に進んだ

AA B C D A:2010 年チーム Yamaton K B C: ブターブタ間での移植で発育し尿を蓄積 した腎臓原基 D: 尿の蓄積により水腎症化した移植腎臓原基 免疫制御により腎臓原基は育つことが判明し 尿管を伸ばす移植腎臓原基を得ることができた ( 上図 B) 一方 動物の腎臓の芽にヒトの体幹細胞である MSC を中に入れてヒトキメラ化を強める手法の研究を進めた このヒトの MSC を持ったブタの腎臓の芽が患者体内で発育を起こさせるためには免疫抑制薬が一時的に必要であるが ある程度ヒト幹細胞が腎臓の細胞に分化誘導がかかった段階でブタ組織が薬剤で消滅できれば 完全なヒト化組織が出来上がる可能性を示した (Matsumoto, 2012) 新たなブレイクスルー上記の手法での現在の乗り越えなければいけない壁は 腎臓が発育し始め産生される尿を一時的にレザーブできる組織をどのように作るかであった さらにその尿を本来の尿管と接合して 体外に誘導するルートを作ることであった 2013 年それまでの腎臓原基グラフトを膀胱 尿路と一塊にして採取するクロアカグラフトを開発した A cloaca in zoological anatomy, is known to be the posterior opening that serves as the only such opening for the intestinal, reproductive, and urinary tracts of certain animal species. また クロアカ マキシマ (Cloaca Maxima) は 古代ローマの下水システムの名称である

AA C metanephroi B Ureter Bladder A:2012-3 年チーム Yamaton K C: 猫に移植され発育した豚クロアカグラフト B: 新開発された豚クロアカグラフト 我々は 今このクロアカグラフトを持って腎臓再生の実現の夢にまた一歩進んでいる