電界放射型走査型電子顕微鏡 (FE-SEM) 操作マニュアル 第 5 版 2017 年 4 月東京工業大学創造研究棟メカノマイクロプロセス室 ( 遠西 5036) 本装置の操作に必要な条件 : 入室講習を受講していること 装置利用講習を受講していること
1. はじめに電界放射型走査型電子顕微鏡 (FE-SEM:Field Emission Scanning Electron Microscope) は高性能な電子銃を用いており一般的な SEM よりも分解能が高く より微細な構造物の観察が可能である しかし 高性能である一方で使用に注意を要する面もあり 使用方法を誤ると重大な故障を招く恐れがあるため使用上の注意点を十分に理解したうえで使用する必要がある また メカノマイクロプロセス室の FE-SEM は 画像処理装置や自動機能が搭載され 簡便な取り扱いに配慮されている 装置の外観と各部の名称を図 1 に表す 電子銃室 左画面 (SEM 像 ) 右画面 ( 各種データ ) 中間室 V7G 試料室真空計 試料室 画像取り込み用 PC V7G 開閉ボタン 図 1 FE-SEM の外観と各部の名称 2. 装置の主な仕様 形式 :JSM-6300F, 日本電子 製 分解能 : 2 次電子 1.5nm(30kV),7.0nm(1kV) 反射電子 3.0nm(30kV) 倍率 :10 倍 ~50 万倍 加速電圧 :0.5~5kV(100V ステップ ),5~30kV(1kV ステップ ) 照射電流 :10-12 ~10-10 A 試料寸法 :φ100mm( 最大 ) 10mm 電子銃 : 冷陰極電界放射型電子銃 電源 : 単相 200V,6kVA 質量 : 鏡筒部 570kg, 操作部 450kg その他 : バルブ開閉用圧縮空気 (0.4~0.5Mpa), および冷却水 ( 最大 5.0L/min) が必要
3. 重要 装置の使用における注意 3-1) 電子銃室の真空を悪化させない本装置の電子銃は電界放射型電子銃であるため電子銃室は 10-8 Pa オーダーの超高真空が必要となる 超高真空は一度でも真空度を悪化さると真空層内が汚染されて元の真空度に回復できなくなる場合がある そのため電子銃室の真空度を悪化させないために以下の点に注意する 試料や試料ホルダの取り扱い試料や試料ホルダは絶対に汚してはならない 特に水や油の付着には十分注意すること 人の汗や油脂なども付着させてはならないため 取り扱いをする時は必ず手袋を着用すること また 清浄なベンコットやアルミホイルなどを敷いてその上で作業を行うこと テーブルの上に直接置いてはならない 試料の脱ガス水や油は真空層に重大な汚染をもたらすためこれらを含む試料の観察は禁止とする また レジスト等の有機物を観察する場合はベークや真空乾燥などで十分に脱気してから観察すること V7G バルブの開閉電子銃室へ流入するガスはほとんどの場合試料室から流れ込む V7G バルブは電子銃室と試料室を仕切るバルブであり このバルブが閉じられている限り電子銃室は汚染から守られるため非常に重要なバルブである V7G バルブは観察時以外は必ず閉じておくよう十分心がける また V7G を開ける際は必ず試料室の真空度が規定値 (1 10-3 Pa) 以下であることを確認してから開けること 3-2) 仕切弁の操作における注意仕切弁は試料ホルダを試料室へ搬入する入口となるバルブであるが このバルブは手動操作でインターロックがないため試料交換室が大気状態でも開けることができる その場合 試料室に大気が流入して試料室の真空ポンプに重大なダメージを与えてしまう さらに V7G が空いている状態では電子銃室を含めた真空系統全体に回復不可能な著しいダメージを与えてしまう 仕切弁の操作は V7G が閉じていることと試料交換室が真空引きされていることを必ず確認してから行うこと 3-3) 対物レンズを傷つけない走査型電子顕微鏡は何段もの電磁レンズが入っており それにより高い分解能が得られている その中で最も重要なレンズが対物レンズである この対物レンズは均一な磁界を発生させるために極めて高い加工精度で製作されている もし対物レンズに傷が付くと均一な磁界が得られなくなるため解像度が著しく低下する その一方で 走査型電子顕微鏡で高い解像度を得るためには作動距離を短くする必要がある 作動距離とは対物レンズと試料の距離であるため 不可避的に試料と対物レンズの距離は近くなる 実際 本装置を通常に使用する場合の差動距離は 15mm である したがって 試料の取り付け方が悪い場合 2 や試料ステージを許容範囲以上に動かした場合 3 は試料が対物レンズに衝突して対物レンズを傷つける恐れがある したがって 試料の取り付けや試料ステージを動かす際はその点を十分に注意しなければならない
4. 装置の立ち上げ 1 使用記録簿に日付 開始時刻 研究室名 氏名 観察試料を記入する 2 鏡筒裏側にある冷却水循環装置 ( 図 2) の電源が ON で あることを確認する また 上蓋を開けてタンク内の水量を確認し 少ない場合は水 ( 水道水でよい ) を足す 3 画像取り込み用 PC( 図 1) の電源を入れる 4 本体裏側にある操作系電源スイッチ ( 図 3 の白いトグルスイッチ ) をオン 5 電源キースイッチ ( 図 4) を車のイグニッションと同様に I から時計回りに START まで回し再び I に戻す ( バネの力で勝手に戻る ) 誤って O に回すと装置が停止してしまい 再立ち上げに 2 時間かかるので注意すること 6 MANUAL FLASH ボタン ( 図 4) を約 20 秒間 ( ボタンの点滅ランプが消灯するまで ) 押して強力フラッシング 1 を行う 右画面に 150 HOURS PASSES PUSH FLASH FOR 20SEC の表示が出ている場合は MANUAL FLASH ボタン下の CPU リセットボタン ( 図 4) を押して表示を消す 7 本体と鏡筒の間にあるイオンポンプ制御装置 ( 図 5) で真空度を確認して使用記録簿に記入する 電子銃室 (GUN CHAMBER) と中間室 (INTERNAL CHAMBER) の真空表示は真空表示切替スイッチで切り替える 以下の真空度であれば問題ない 電子銃室真空度 :2 10-8 Pa 以下中間室真空度 :7 10-6 Pa 以下 8 試料室真空計 ( 図 6) の電源を入れて真空度を確認して使用記録簿に記入する 以下の真空度であれば問題ない 試料室真空度 :1 10-3 Pa 以下 図 2 冷却水循環装置 図 3 操作系電源スイッチ MANUAL FLASH CPU リセット 電源キー スイッチ 図 4 電源スイッチとフラッシングスイッチ 真空計 真空表示切替 スイッチ 図 5 イオンポンプ制御装置 試料回転ドライバ 試料室真空計 図 6 試料室真空計と試料回転ドライバ 5. 試料の搬入 1 試料室真空計の電源を切る 2 V7G( 図 1) が閉じている (V7G ボタンランプ点灯 ) ことを確認する 3 Accel Voltage Ready ランプ ( 図 7) の点灯及び Accel Voltage ボタンのランプ ( 図 7) の消灯 ( 加速 / 引出電圧 Accel Voltage Ready ランプ Accel Voltage ボタン図 7 Accel Voltage ボタン
OFF) を確認する 4 試料台位置 ( 図 8) を初期位置 (X:25, Y:35, Z:39, Tilt:0, :0) にする は本体パネルの試料回転ドライバ (ESR UNIT)( 図 6) により操作する 試料交換位置復帰機構 (INITIAL SET) の電源を入れて START ボタンを押すと自動で初期位置に移動する RUN ランプ点灯中は動作中であり 消灯したら初期位置への復帰完了である 5 試料ホルダに試料を取り付ける 2 6 試料交換棒のアクリル窓と試料交換室の O リングをエタノールで拭く 但し 試料交換棒の棒部分はグリースが塗られているのでエタノール拭きをしてはならない 7 試料ホルダのネジ穴に試料交換棒先端のネジを締め込んで試料ホルダを試料交換棒に取り付ける 8 図 9-1 試料交換室に試料交換棒を取り付け 軽く手で押さえながら真空操作ボタン ( 図 10) を押して試料交換室内を真空排気する 真空操作ボタンを押すとボタンランプが点灯して真空排気が始まる 9 図 9-2 真空排気開始から 1,2 分で真空操作ボタンのランプが消灯して試料交換室真の真空排気が完了する ランプ消灯と同時に真空排気動作も停止するため試料交換室内の真空度は除々に悪くなる なるべく時間を置かずに速やかに次の手順に移ること 10 図 9-3 仕切弁つまみを手前に止まるところまで( 約 90 ) 回し 右側へ止まるところまで引き出して仕切弁を開ける ( 図 11) 仕切弁を開くと試料室内の照明ランプが点灯して中の様子が見えるようになる 11 図 9-4 試料交換棒のアクリル窓から試料室内部を覗きながらゆっくり試料交換棒を差し込んでいく 交換棒から手を離すと大気圧に押されて試料交換棒が勢いよく試料室に差し込まれるためホルダ等を破損させる危険がある 試料交換棒から絶対に手を離さないよう注意すること 試料ホルダを試料室内のホルダマウントにはめ込み ( 図 12) 止まるところまで押す 正しくセットされると試料交換棒が上下左右に動かなくなり また試料交換棒のテープの左端とアクリル窓の距離がテープ幅と同じくらいになる ( 図 13) そうでない場合は正常にセットされていないのでやり直すこと Y (35) Z (39) X (25) Tilt (0) 図 8 試料台動作 (X,Y,Z,Tilt) 試料室交換室 ステージ 仕切弁 ホルダ 交換棒 図 9 試料交換手順 アクリル窓 大気 真空 1 交換棒取り付け 2 交換室真空引き 3 仕切弁開 4 ホルダセット 5 交換棒引き抜き 6 仕切弁閉 7 交換室ベント 8 交換棒取り外し
何度やり直してもうまくセットできない場合は試料ステージが初期位置になっていない可能性があるので確認する 12 図 9-5 試料交換棒を反時計回りに回して試料交換棒先端のネジを試料ホルダから外し 試料交換棒をゆっくりと止まるところまで引き抜く 試料ホルダが一緒についてこないことを確認しながらゆっくり引き抜くこと ネジが一山でも噛んでいると試料ホルダも一緒に引き抜かれ 試料ホルダがホルダマウントから外れたときに試料室内に落ちてしまう 13 図 9-6 仕切弁つまみを止まるところまで押し込み 奥側に止まるところまで ( 約 90 ) 回して仕切弁を閉じる 14 図 9-7 試料交換棒を手で支えながら真空操作ボタンを押して試料交換室をベントする 15 図 9-8 試料交換棒を外す 16 Z 軸つまみの位置 ( 図 8) を観察位置 15mm にする 15mm 以外で観察する場合は電子線の軸調整を行わなければならないため装置管理者に相談すること 17 1 分後 試料室真空計の電源を入れる 18 さらに 5 分間真空引きをしてから次の手順に移る 6. 電子線照射 1 試料室真空計の針が緑色の領域に入っていることを確認する 2 キーボードの PF2(EOS) を押して右画面 ( 図 1) に EOS 画面 ( 図 14) を表示させる ここに表される種々の項目はキーボードで変更できる 理解していない項目をむやみに変えないこと 3 MANUAL FLASH ボタン ( 図 4) を押して通常フラッシング 1 を行う 4 電子銃の安定のため 2 分間待つ 5 EOS 画面 ( 図 14) の EOS1 : Accel Voltage が 0kV であることを確認する 6 Accel Voltage Ready ランプ ( 図 7) が緑色に点灯していることを確認する 7 Accel Voltage ボタン ( 図 7) を押して ( ボタン点灯 ) 試料交換室真空操作ボタン点灯 : 大気圧図 10 仕切弁の開け方ロック解除仕切弁 : 開図 11 仕切弁の開け方試料ホルダホルダマウント図 12 試料ホルダのセット図 13 試料ホルダセット時の試料交換棒の位置 EOS 番号加速電圧エミッション電流引出電圧 図 14 EOS 画面
加速 / 引出電圧の電源入れる EOS 画面 ( 図 14) の引出電圧とエミッション電流が徐々に上がり エミッション電流が 12 A になった時点で両者の値は止まる この時の引出電圧の値を使用記録簿に記入する なお 記入するのは最初の 1 回だけでよく 2 回目以降は記入する必要はない 8 加速電圧を設定する 設定方法はキーボードの キーで EOS 画面 ( 図 14) のカーソルを動かし EOS1 : Accel Voltage にカーソルを合せる キーボードで INS 数値 ENTER の順に押すと入力した 数値 kv の電圧を印加できる なお 加速電圧はいきなり上げるのではなく 0kV 1 kv 5 kv 9 kv 13 kv 15 kv のように徐々に上げていく 各段階で電子銃室の真空度が悪化していないことを確認し 3,4 秒の間を置きながら上げ 最終的に 15kV にする 9 試料室真空計の針が緑色の領域に入っていることを再度確認してから鏡筒下の V7G スイッチ ( 図 1) を押して V7G バルブを開ける バルブを開けるとボタンが出っ張り 緑ランプが消灯する 7. 観察観察手順はまず低倍率観察で大まかな像調整を行い 徐々に倍率を上げながら高精度に像調整をしていく 最終的に目的の観察倍率より高い倍率まで上げて像調整をしてから目的の観察倍率に戻して観察を行う 1 MAGNIFICATION つまみ ( 図 15) で倍率を 20 倍にする 倍率表示は左画面 ( 図 1) に表示される 2 PROBE CURRENT つまみ ( 図 15) を回して EOS 画面 EOS1 : CL COARSE の値を 7 にす る 3 FOCUS つまみ ( 図 15) を回して EOS 画面 EOS1 : WD の値を 15 にする 4 CONTRAST, BRIGHTNESS つまみ ( 図 15) を回してコントラストと明るさを調整する 5 試料台動作の X,Y 移動つまみ ( 図 8) で試料の端など見つけやすい観察対象を画面中央に持ってくる CONTRAST PHOTO: STIGMATOR LEFT MAGNIFI CATION FOCUS PROBE CURRENT BRIGHT NESS 図 15 観察用操作パネル 6 FOCUS つまみでフォーカスを合せ コントラストと明るさを調整して見やすい像にする 7 フォーカス コントラスト 明るさを調整しながら徐々に倍率を上げていく 細かいフォーカス調整が必要な場合は COSRSE/FINE ボタンでファインフォーカス ( ボタンが点灯した状態 ) にして調整を行う 8 目的の観察倍率の 2~5 倍の倍率にして適当な大きさの像を探してフォーカス コントラスト ブライトネスを調整し 目的の観察倍率に戻して観察を行う 9 数 m 以下の微細なものの観察には STIGMATOR( 図 15) つまみで非点収差補正 4 を行う 10 必要に応じて試料台動作の回転や傾斜を使って観察する なお傾斜について最大傾斜角度は 45 であり それを超えて傾斜させると試料ホルダが対物レンズに衝突 3 してしまうので注意する
時間経過における像質の悪化について 見えにくい場合のみの参考電界放射型電子銃は原理的に時間経過とともに放出電子流が減少し像質が悪化 ( 輝度やコントラストの低下 ) していくものである 時間経過に伴う像質悪化を定量的に判断できる指標はエミッション電流である エミッション電流も時間経過とともに減少し 概ね 6 を下回ると見づらい像になっていく それを改善する方法は エミッション電流のリセット フラッシング の 2 通りの方法があり エミッション電流のリセットを優先して行ってそれができない場合はフラッシングを行う 1) エミッション電流のリセットエミッション電流のリセットを行うことによりエミッション電流が 12 に回復して高輝度 高コントラストの見やすい像になる EMISSION CURRENT-RSET ボタン( 図 16) を押すことでエミッション電流のリセットができる 但し リセット後は引出電圧が高くなる問題がある 引出電圧が高いまま使用すると電子銃に負担がかかるため引出電圧は 7kV 以下で使用すること 引出電圧が 7kV を超えた場合はフラッシングを行う 2) フラッシング注釈のフラッシング 1 を参照のこと EMISSION CURRENT -RSET ボタン 図 16 エミッション電流のリセット 8. 撮影観察した SEM 像は本体右側のデジカメ撮影装置により SEM 画像をファイル化している カメラは適正な位置に設置し 適正な設定にしてあるので不用意に動かしたり設定を変えないこと 撮影した画像ファイルはカメラのメモリカードに保存される メモリカードは容量が小さいので撮影が終わったらファイルを PC の HDD に移し メモリカードは空にすること メモリカードに前回使用者のファイルが残っている場合は断りなしに削除してよい また PC での保存場所は USER フォルダ ( デスクトップのショートカットから開く ) に研究室名フォルダを作成して保存すること それ以外の場所にあるファイルは断りなしに削除する 1 画像取り込み用 PC のデスクトップ上のアイコン D90 をダブルクリックして D90 フォルダ ( カメラ内メモリカード ) を開く 2 撮影したい像を左画面に映し 撮影に適したコントラスト ブライトネスに調整する 3 PHOTO : LEFT ボタン ( 図 15) を押す カメラで カシャ と音がしてシャッターが開き SEM 画面でスロースキャンが始まる 画面のスキャンが終わると再度カメラで カシャ と音がしてシャッターが閉じ D90 フォルダに SEM 像の画像ファイルが現れる 9. 電子線停止 1 V7G ボタンを押して V7G バルブを閉じる ボタンが押し込まれ 緑ランプが点灯する 2 加速電圧を 0kV にする EOS1 : Accel Voltage の 15kV にカーソルを合わせ キーボードで INS 0 ENTER の順に押す 3 Accel Voltage ボタンを押して ( ボタン消灯 ) 引出電圧を落とし エミッション電流を 0 にする
10. 試料の取り出し 5. 試料搬入 の手順 1~15 に従って試料の取り出しを行う 11. 装置の立ち下げ 1 試料室真空計の電源を入れ 真空度を使用記録簿に記入する 記入したら電源を切る 2 電子銃室 中間室の真空度を使用記録簿に記入する 3 撮影した画像 ( D90 フォルダ内のファイル) を [USER フォルダ ]>[ 研究室名 フォルダ ]>[ 各人のフォルダ ] に移す 4 D90 フォルダを空にする 5 アプリケーションやフォルダを全て閉じて画像取り込み用 PC をシャットダウンする 6 本体裏側にある操作系電源スイッチをオフにする 7 使用記録簿にフラッシング回数 終了時刻を記入する また PC に取り込んだファイルを USB メモリに移した場合は USB メモリの差し込み 欄の 有 に丸を付ける 1 フラッシング電界放射型電子銃は原理的にガス吸着により放出電子流が減少していく 放出電子流が減少すると像の輝度が下り像質が悪くなる そこで電子銃を加熱して表面に吸着したガス分子を飛ばし 電子銃を清浄化して像質を改善させる これをフラッシングという フラッシングには 通常フラッシング と 強力フラッシング の 2 種類がある 1. 通常フラッシング : 電子線照射前と観察中に像質が悪化した時に行う通常のフラッシングである MANUAL FLASH ボタンを押して行う 2. 強力フラッシング : 通常よりも強いフラッシングであり 装置立ち上げ後に 1 回だけ行う MANUAL FLASH ボタンを 20 秒間押し続けると強力フラッシングになる 観察中に像質が悪化した場合のフラッシングの手順は以下の通りである 1 V7G ボタンを押して V7G バルブを閉じる ボタンが押し込まれ 緑ランプが点灯する 2 加速電圧を 0kV にする EOS1 : Accel Voltage の 15k にカーソルを合わせ キーボードで INS 0 ENTER の順に押す 3 Accel Voltage ボタンを押して ( ボタン消灯 ) 引出電圧を落とす 4 手順 6-3 より続ける 2 試料ホルダへの試料の取り付け SEM は真空装置であるため試料と試料ホルダには シリンダ及び 高さ調整ねじ 断面観 察用治 埃や汗 油脂などの汚れを付着させてはならない したがって これらを取り扱う時は必ず手袋をすること また ワイプやアルミホイルを敷いてその上で作業を行うこと ホルダ等必要道具一式は図 16 の通りである 試料は高さ調整ネジに貼り付け 貼り付けには導電性カーボンテープを用 試料ホルダ導電性カーボンテープ図 16 試料取り付け道具一式と組み立て図
いる 導電性や真空中での脱ガスの問題があるため他のテープや接着剤を使ってはならない 試料を取 り付けた後 試料の観察面とシリンダの縁が同じ高さになるよう高さ調整ねじで調節する 試料ホルダ 等の組み立ては図 16 の通りである シリンダや高さ調整ねじを固定するネジは強く締め過ぎないよう 注意すること 基板の平面観察 ( 図 17 (a)) 基板を高さ調整ネジに貼り付け て高さ合わせをする 基板の断面観察 ( 図 17 (b)) 基板の断面を観察する場合は基 板を立てた状態で固定する必要が あるため断面観察用治具を用い る 試料を断面観察用治具に貼り 付け 断面観察用治具を高さ調整 ねじに貼り付けて高さ合わせをす る 凹凸のある試料 ( 図 17 (c)) 試料 凹凸のある試料でも高さ調整ねじに貼り付けて高さを合わせることは変わりないが 試料がその位置 より上に飛び出している場合は十分に注意する必要がある シリンダ縁から対物レンズまでの距離は 15mm であり 飛び出し部分の高さ h が 15mm より大きいと試料が対物レンズに衝突して対物レンズ を傷つけてしまう したがって h<15mm であることが絶対条件であるが 安全マージンを考慮し て h<10mm の条件で使用すること 高さ調整ねじ 高さを揃える (a) シリンダ 試料 高さを揃える 断面観察用治具 (b) 15mm 図 17 試料ホルダへの試料の固定と注意点 h 対物レンズ 試料 (c) 高さを揃える 3 試料ステージ傾斜に関する注意試料ホルダと対物レンズの距離は 15mm と短いため 試料台を傾斜させるとこの両者が衝突 ( 図 18 (a)) して対物レンズを傷つける恐れがある 対物レンズが傷つくと解像度が低下するため高解像度な観察装置としては致命的なダメージである 対物レンズと試料ホルダが衝突しない試料台の最大傾斜角度は 45 であるのでこの制限は必ず守ること なお これは試料が試料ホルダから飛び出していない場合に限り 試料が試料ホルダから飛び出している場合 ( 図 18 (b),(c)) は最大傾斜角度がさらに小さくなるので注意すること 対物レンズ 対物レンズ 対物レンズ 衝突注意!! 15mm 衝突注意!! 15mm 衝突注意!! 15mm 試料 ホルダ ホルダ (a) (b) (c) 図 18 試料ステージ傾斜における注意 試料ホルダ
4 非点収差補正非点収差とは真円の電子線スポットが楕円形となる収差であり これにより正焦点位置でも像がぼける 非点収差の特徴はフォーカスをデフォーカス ( フォーカスを正焦点位置から過焦点または不足焦点にずらすこと ) するとある方向でボケが大きくなる一方でそれと直行する方向ではボケは小さいため像が伸びる この像の伸びがなくなるように調整すれば非点収差はなくなる 非点収差補正の手順は以下の通りである 1 観察対象を画面中央に移動する. 2 倍率を 1,000 倍にする 3 フォーカス コントラスト ブライトネスを調整して見やすい像にする 4 倍率を 20,000 倍にする 5 観察対象にできるだけフォーカスを合わせる 6 像のボケ方が最も少なくなるように STIGMATOR(X) を調整する 7 像のボケ方が最も少なくなるように STIGMATOR(Y) を調整する 8 フォーカスを合わせる. 9 ➄~8 項の操作を繰り返して最も明瞭に見えるようにする. 焦点がずれている時正しい焦点位置の時焦点がずれている時 非点収差なし 正しい焦点位置で鮮明な像が得られる 鮮明な像 (A) (B) (C) 非点収差あり 正しい焦点位置でも像がぼける ボケた像 図 19 非点収差とデフォーカスの関係 (c)