発展途上国の分散型 エネルギーシステムについて 2013/09/26 二次電池社会システム研究会第 16 回分科会 工学系研究科修士 1 年 松村直樹
目次 1. 蓄電池付帯自然エネルギーシステムの導入について 2. ケニアの電力事情 3. バングラデシュの電力事情 4. システム導入の提案
発展途上国へのエネルギーシステムの導入 先進国では集中的な電力生産 + 送電網による配電 途上国では 再生可能エネルギー (RE) による 分散的なエネルギーシステムが有効 太陽電池の価格は急速に下落している 定置利用型蓄電池も価格下落が見込まれている
途上国での分散型エネルギーの提案 1. ソーラー発電所の建設 2. 公共施設への 発電 蓄電 IT を組み合わせたシステム導入 3. 太陽電池 + 蓄電池による 自給自足可能な分散型の家屋の普及 今回は これらを提案いたします
ケニアの電力事情 ケニアの首都で最大都市 人口約 300 万人 南緯 1, 東経 36 ナイロビ 多くの国際機関がある 年平均日射量 2.13MWh/m 2 ( 仙台市 1.20MWh/m 2 )
ケニアの電力事情 人口増加と経済成長 ケニアの人口は 3,750 万人 (2008) GDP の成長率は 2030 年までで年率 7.8% と予想されている ピーク時電力需要も 推定 1,180MW(2010) から 2,263MW(2018) と毎年約 7% の伸び率で推移 大幅な電力需要が見込まれる が 現状供給不足 出典 JETRO BOP ビジネス潜在ニーズ調査報告書ケニアのエネルギー分野 hcp://www.jetro.go.jp/jfile/report/07000375/kenya_bop_energy_all.pdf ケニアの GDP の推移
ケニアの電力事情 不安定な電力供給 ケニアの電化率は 10% 未満 都市部では照明の 85% が電気だが 地方では燃料ランプ 煙を吸うことによる健康被害の深刻な原因となる 未電化地域においては 電気のニーズが非常に大きい 様々なプロジェクトや事業が活発に行われている 出典 JETRO BOP ビジネス潜在ニーズ調査報告書ケニアのエネルギー分野 hcp://www.jetro.go.jp/jfile/report/07000375/kenya_bop_energy_all.pdf ケニアにおける 照明のエネルギー源
ケニアの電力事情 - その他 現状 JICA の分散型再生可能エネルギーの導入支援事業が活発 学校施設への太陽電池導入プロジェクト 分散型電源に関する技術研修 行政機関への地方電化モデルの啓蒙活動など 石炭開発等と平行して 再生可能エネルギーへの期待 地熱 潜在的発電容量推定 4,000MW( うち 160MW が開発ずみ ) 太陽光発電 赤道直下で日射量が大きい
ケニアにおける JICA の電化プロジェクト例 再生可能エネルギーによる地方電化モデル構築プロジェクト 対象地域 ケニア国内地方都市 10 か所 プロジェクト時期 2012.3.1 ~ 2015.2.28 目的 主体 プロジェクト内容 RE によるオフグリッド電化の推進 JICA ケニア地方電化庁 尚 ここでの RE は風力 小水力 バイオガス 太陽光 ケニア概要 人口 3980 万人 学校施設への PV システム導入分散型電源の技術研修行政機関を対象とした地方電化モデルの啓蒙活動など 電化率全国平均 10% 未満 (2009 年時点 ) 上 : 風力タービンサイト視察下 : 太陽光発電の技術研修 JICA ホームページ hcp://gwweb.jica.go.jp/km/projectview.nsf/84c265727d6be3b149256bf300087d01/ cd4ca6d42753bef2492579210079f469?opendocument
バングラデシュの電力事情 バングラデシュの首都 人口約 1,200 万人 ( 市域 ) 北緯 23, 東経 90 ダッカ 世界一急激な人口増加都市 年平均日射量 1.67MWh/m 2 ( 仙台市 1.20MWh/m 2 )
バングラデシュの電力事情 国内概観 電化率は全国平均 55%(2012) 都市部は 90% 農村部は 42% 人口増に伴う電力需要の急増に 供給が追いついていない 発電能力は 4,995MW(2004) から 5,823MW(2010) に増加 都市部に電力需要が集中するため 東西で供給格差も 出典 JETRO BOP ビジネス潜在ニーズ調査報告書バングラデシュのエネルギー分野 hcp://www.jetro.go.jp/jfile/report/07000735/bd_bop_energy.pdf バングラデシュにおける 東西電力差
バングラデシュの電力事情 未電化地域 未電化地域では ケロシンなどの燃料を使用している 未電化地域では 再生可能エネルギーを活用した電化率向上プログラムが実施されている バングラデシュにおける 照明の電源 ( 世帯所得別 ) 出典 JETRO BOP ビジネス潜在ニーズ調査報告書バングラデシュのエネルギー分野 hcp://www.jetro.go.jp/jfile/report/07000735/bd_bop_energy.pdf
バングラデシュの RE 活用電化プロジェクト事例 対象地域 目的 主体 プロジェクト内容 病院におけるシステム導入状況 バングラデシュ RE 活用による電化率向上 金融機関 : バングラデシュ政府系金融機関 グラミングループなどメーカー : 京セラ (PV) ラヒマフルーズ ( 電池 ) など 非電化地域における蓄電池併設 PV 発電システムの設置 ( 主流デバイスの定格出力は 20~60W) ユーザー負担のコストは 400USD, うち頭金 60 ドル 月賦 10 ドル 全国 150 ヶ所の全病院に蓄電池併設 PV 発電システムを設置し 系統受電力と併せて活用している病院に設置されるデバイスの出力は主に 80~120W 左 : コントロールパネル製造場右 : 設置された PV JETORO hcp://www.jetro.go.jp/jfile/report/07000735/bd_bop_energy.pdf 13
提案 1. 送電網のある都会の病院へのシステム
対象地域の日射量データ算出方法 1. シミュレーション対象地域の月別日次平均日射量データ (A) を下記サイト 1 より取得 ナイロビの月別日射量 2. 1 日の日射量変動パターン (B) を下記サイト 2 より取得 ( 沖縄県波照間島 ( 緯度 24 ) の変動パターンを使用 ) 波照間島の日射量変動 (1 月 3 日 ) 3. B に比例して A を分割し 対象地域の 365 日分の日射量変動パターンを算出 1Solar Electricity Handbook hcp://solarelectricityhandbook.com/solar- irradiance.html 15 2NEDO 日射量データベース hcp://app7.infoc.nedo.go.jp/
両国首都の月別日射量 ナイロビ ダッカ kwh/m2/day kwh/m2/day 8 6 4 2 0 6 4 2 0 Jan Feb Mar Apr May Jun Jul Aug Sep Oct Nov Dec Jan Feb Mar Apr May Jun Jul Aug Sep Oct Nov Dec 両都市ともに 良好な日射量 ( ナイロビは仙台の約 2 倍 ) 日射量は hcp://solarelectricityhandbook.com/solar- irradiance.html より取得 16
診療所の需要データの作成方法 1. 以下の数式を用いて診療所の 1 日あたり電力需要 (A) を算出 対象病院の日次電力需要 6000 kwh/day 病床あたり病床数 = 電力使用量 200( 仮定 ) 60 kwh/day ナイロビ ダッカ / 日本の電力使用量比率 0.5( 仮定 ) 2. 東京大学付属病院の1 日の電力需要の変動パターンに比例してAを分割し 対象地域における病院の電力需要変動パターンを作成 kwh/30min 3000 2500 2000 1500 1000 500 0 東大病院の電力需要変動 (07.1.1) 1 4 7 10 13 16 19 22 hour 1 東京都環境局東京都地球温暖化防止活動推進センター 病院の省エネルギー対策 hcp://www.tokyo- co2down.jp/documents/doc_jigyou/byouin_syouene.pdf 17
ナイロビの病院の系統供給量削減効果 ( 太陽電池 500kW, 蓄電池 900kWh) 蓄電池を効率的に 6 活用し 系統供給量を月 1 日 ~7 日削減できている 12 月 1 日 ~7 日 18
ダッカの病院の系統供給電力平滑化効果 ( 太陽電池 600kW, 蓄電池 800kWh) ( 若干の逆潮流が出ているものの ) 6 月蓄電池を効率的に 1 日 ~7 日活用し 系統供給量を削減できている 12 月 1 日 ~7 日 19
提案 1. 病院への導入規模 シミュレーションの結果から さらに事業継続性を考慮して ナイロビの病床数 200 の大規模病院 太陽電池 350kW, 蓄電池 300kWh 病院の電力需要の 31% を太陽光発電で賄う 同時に 26% の系統供給ピークを削減 電力が遮断時 6% の需要に押さえて自給自足可能 費用 ( システムのみ ) 1 億 5000 万円
ダッカの病床数 200 の大規模病院 太陽電池 450kW, 蓄電池 300kWh 停電時 需要を 6% に抑えることで自給自足が可能 費用 ( 工事費 輸送費含まず ) 1 億 7500 万円
提案 2. 未電化地域の公共施設への提案 ケニア都市部の大規模病院の 10% 程度の需要の公共施設 電力使用量の 30% を RE で供給 太陽電池 35kW, 蓄電池 30kW 費用 ( 工事費 輸送費含まず ) 1,550 万円 バングラデシュの大規模病院の 10% 程度の需要の公共施設 電力使用量の 30% を RE で供給 太陽電池 45kW, 蓄電池 30kW 費用 ( 工事費 輸送費含まず ) 1,850 万円
提案 3. エネルギーを自給自足する家屋モデル 送電網がなく 未電化の家屋に分散型エネルギーシステムの導入を提案します 太陽電池 1kW, 蓄電池 3kWh を組み合せた簡易システム 先進国の約半分の需要を 24 時間まかなえ 当面は十分 費用 1 家屋あたり 70 万円 燃料使用による健康被害からの解放 夜間作業が出来ることによる経済性の向上など 生活レベルが改善される
まとめ ケニア バングラデシュにおける電力事情を概観しました 地方部は未電化解消 都市部は電力供給安定化 国全体では供給能力増強という課題を抱えています 都市部の診療所に 蓄電池を併設した太陽光発電システムの導入を提案しました 未電化地域の公共施設へのシステム導入を提案しました エネルギーを自給自足する家屋のモデルを提案しました
appendix
ナイロビの病院の電力量に関する効果 太陽電池 500kW 蓄電池 900kWh 電力量に関する項目 単位 ケース0( 未導入 ) ケース1 総需要量 MWh 2,207 2,207 太陽電池導入量 kw - 500 蓄電池導入量 kwh - 900 太陽光発電量 MWh - 1000 総系統供給量 MWh 2,207 1,300 系統供給量削減量 MWh - 907 系統供給量削減率 % - 41.1 系統電力ピーク kw 336 228 系統電力ピークカット量 kw - 108 系統電力ピークカット率 % - 32.2 総逆潮流量 MWh - 93.18 PV 発電量に対する逆潮流量比率 % - 9.3 充電回転率 % - 74.1 放電回転率 % - 74.1 26
ダッカの病院の電力量に関する効果 太陽電池 600kW 蓄電池 800kWh 電力量に関する項目 単位 ケース0( 未導入 ) ケース1 総需要量 MWh 2,207 2,207 太陽電池導入量 kw - 600 蓄電池導入量 kwh - 800 太陽光発電量 MWh - 941 総系統供給量 MWh 2,207 1,348 系統供給量削減量 MWh - 859 系統供給量削減率 % - 38.9 系統電力ピーク kw 336 229 系統電力ピークカット量 kw - 107 系統電力ピークカット率 % - 31.7 総逆潮流量 MWh - 82.01 PV 発電量に対する逆潮流量比率 % - 8.7 充電回転率 % - 76.0 放電回転率 % - 76.0 27
ナイロビの病院における系統供給電力断絶時の自給自足シミュレーション 電力の自給自足達成率 [%] 電力使用量を 82% 削減すると電力を自給自足可能 100 90 80 70 60 50 40 30 20 10 0 77% 78% 79% 80% 81% 82% 節電による電力需要削減率 電力の自給自足達成率 = 自然エネルギー活用により電力を自給自足できた時間 / 全シミュレーション時間 28
ダッカの病院における系統供給電力断絶時の自給自足シミュレーション 電力使用量を 84% 削減すると電力を自給自足可能 電力の自給自足達成率 [%] 100 90 80 70 60 50 40 30 20 10 0 80% 81% 82% 83% 84% 節電による電力需要削減率 電力の自給自足達成率 = 自然エネルギー活用により電力を自給自足できた時間 / 全シミュレーション時間 29