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図 B 細胞受容体を介した NF-κB 活性化モデル

法医学問題「想定問答」(記者会見後:平成15年  月  日)

1.若年性骨髄単球性白血病の新規原因遺伝子を発見 2.骨髄異形症候群の白血病化の原因遺伝子異常を発見

解禁日時 :2019 年 2 月 4 日 ( 月 ) 午後 7 時 ( 日本時間 ) プレス通知資料 ( 研究成果 ) 報道関係各位 2019 年 2 月 1 日 国立大学法人東京医科歯科大学 国立研究開発法人日本医療研究開発機構 IL13Rα2 が血管新生を介して悪性黒色腫 ( メラノーマ ) を

遺伝子の近傍に別の遺伝子の発現制御領域 ( エンハンサーなど ) が移動してくることによって その遺伝子の発現様式を変化させるものです ( 図 2) 融合タンパク質は比較的容易に検出できるので 前者のような二つの遺伝子組み換えの例はこれまで数多く発見されてきたのに対して 後者の場合は 広範囲のゲノム

小児の難治性白血病を引き起こす MEF2D-BCL9 融合遺伝子を発見 ポイント 小児がんのなかでも 最も頻度が高い急性リンパ性白血病を起こす新たな原因として MEF2D-BCL9 融合遺伝子を発見しました MEF2D-BCL9 融合遺伝子は 治療中に再発する難治性の白血病を引き起こしますが 新しい

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前立腺癌は男性特有の癌で 米国においては癌死亡者数の第 2 位 ( 約 20%) を占めてい ます 日本でも前立腺癌の罹患率 死亡者数は急激に上昇しており 現在は重篤な男性悪性腫瘍疾患の1つとなって図 1 います 図 1 初期段階の前立腺癌は男性ホルモン ( アンドロゲン ) に反応し増殖します そ

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論文題目  腸管分化に関わるmiRNAの探索とその発現制御解析

るが AML 細胞における Notch シグナルの正確な役割はまだわかっていない mtor シグナル伝達系も白血病細胞の増殖に関与しており Palomero らのグループが Notch と mtor のクロストークについて報告している その報告によると 活性型 Notch が HES1 の発現を誘導

( 様式甲 5) 学位論文内容の要旨 論文提出者氏名 論文審査担当者 主査 教授 森脇真一 井上善博 副査副査 教授教授 東 治 人 上 田 晃 一 副査 教授 朝日通雄 主論文題名 Transgene number-dependent, gene expression rate-independe

( 図 ) IP3 と IRBIT( アービット ) が IP3 受容体に競合して結合する様子

報道発表資料 2006 年 4 月 13 日 独立行政法人理化学研究所 抗ウイルス免疫発動機構の解明 - 免疫 アレルギー制御のための新たな標的分子を発見 - ポイント 異物センサー TLR のシグナル伝達機構を解析 インターフェロン産生に必須な分子 IKK アルファ を発見 免疫 アレルギーの有効

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報道関係者各位 平成 26 年 1 月 20 日 国立大学法人筑波大学 動脈硬化の進行を促進するたんぱく質を発見 研究成果のポイント 1. 日本人の死因の第 2 位と第 4 位である心疾患 脳血管疾患のほとんどの原因は動脈硬化である 2. 酸化されたコレステロールを取り込んだマクロファージが大量に血

今後の展開現在でも 自己免疫疾患の発症機構については不明な点が多くあります 今回の発見により 今後自己免疫疾患の発症機構の理解が大きく前進すると共に 今まで見過ごされてきたイントロン残存の重要性が 生体反応の様々な局面で明らかにされることが期待されます 図 1 Jmjd6 欠損型の胸腺をヌードマウス

一次サンプル採取マニュアル PM 共通 0001 Department of Clinical Laboratory, Kyoto University Hospital その他の検体検査 >> 8C. 遺伝子関連検査受託終了項目 23th May EGFR 遺伝子変異検

新規遺伝子ARIAによる血管新生調節機構の解明

検体採取 患者の検査前準備 検体採取のタイミング 記号 添加物 ( キャップ色等 ) 採取材料 採取量 測定材料 P EDTA-2Na( 薄紫 ) 血液 7 ml RNA 検体ラベル ( 単項目オーダー時 ) ホンハ ンテスト 注 外 N60 氷 MINテイリョウ. 採取容器について 0

平成 30 年 2 月 5 日 若年性骨髄単球性白血病の新たな発症メカニズムとその治療法を発見! 今後の新規治療法開発への期待 名古屋大学大学院医学系研究科 ( 研究科長 門松健治 ) 小児科学の高橋義行 ( たかはしよしゆき ) 教授 村松秀城 ( むらまつひでき ) 助教 村上典寛 ( むらかみ

汎発性膿疱性乾癬のうちインターロイキン 36 受容体拮抗因子欠損症の病態の解明と治療法の開発について ポイント 厚生労働省の難治性疾患克服事業における臨床調査研究対象疾患 指定難病の 1 つである汎発性膿疱性乾癬のうち 尋常性乾癬を併発しないものはインターロイキン 36 1 受容体拮抗因子欠損症 (

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ん細胞の標的分子の遺伝子に高い頻度で変異が起きています その結果 標的分子の特定のアミノ酸が別のアミノ酸へと置き換わることで分子標的療法剤の標的分子への結合が阻害されて がん細胞が薬剤耐性を獲得します この病態を克服するためには 標的分子に遺伝子変異を持つモデル細胞を樹立して そのモデル細胞系を用い

く 細胞傷害活性の無い CD4 + ヘルパー T 細胞が必須と判明した 吉田らは 1988 年 C57BL/6 マウスが腹腔内に移植した BALB/c マウス由来の Meth A 腫瘍細胞 (CTL 耐性細胞株 ) を拒絶すること 1991 年 同種異系移植によって誘導されるマクロファージ (AIM

研究の背景 ヒトは他の動物に比べて脳が発達していることが特徴であり, 脳の発達のおかげでヒトは特有の能力の獲得が可能になったと考えられています この脳の発達に大きく関わりがあると考えられているのが, 本研究で扱っている大脳皮質の表面に存在するシワ = 脳回 です 大脳皮質は脳の中でも高次脳機能に関わ

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するものであり 分子標的治療薬の 標的 とする分子です 表 : 日本で承認されている分子標的治療薬 薬剤名 ( 商品の名称 ) 一般名 ( 国際的に用いられる名称 ) 分類 主な標的分子 対象となるがん イレッサ ゲフィニチブ 低分子 EGFR 非小細胞肺がん タルセバ エルロチニブ 低分子 EGF

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1. 背景 NAFLD は非飲酒者 ( エタノール換算で男性一日 30g 女性で 20g 以下 ) で肝炎ウイルス感染など他の要因がなく 肝臓に脂肪が蓄積する病気の総称であり 国内に約 1,000~1,500 万人の患者が存在すると推定されています NAFLD には良性の経過をたどる単純性脂肪肝と

のと期待されます 本研究成果は 2011 年 4 月 5 日 ( 英国時間 ) に英国オンライン科学雑誌 Nature Communications で公開されます また 本研究成果は JST 戦略的創造研究推進事業チーム型研究 (CREST) の研究領域 アレルギー疾患 自己免疫疾患などの発症機構

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統合失調症発症に強い影響を及ぼす遺伝子変異を,神経発達関連遺伝子のNDE1内に同定した

報道発表資料 2006 年 8 月 7 日 独立行政法人理化学研究所 国立大学法人大阪大学 栄養素 亜鉛 は免疫のシグナル - 免疫系の活性化に細胞内亜鉛濃度が関与 - ポイント 亜鉛が免疫応答を制御 亜鉛がシグナル伝達分子として作用する 免疫の新領域を開拓独立行政法人理化学研究所 ( 野依良治理事

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報道発表資料 2007 年 10 月 22 日 独立行政法人理化学研究所 ヒト白血病の再発は ゆっくり分裂する白血病幹細胞が原因 - 抗がん剤に抵抗性を示す白血病の新しい治療戦略にむけた第一歩 - ポイント 患者の急性骨髄性白血病を再現する 白血病ヒト化マウス を開発 白血病幹細胞の抗がん剤抵抗性が

生物時計の安定性の秘密を解明

別紙 < 研究の背景と経緯 > 自閉症は 全人口の約 2% が罹患する非常に頻度の高い神経発達障害です 近年 クロマチンリモデ リング因子 ( 5) である CHD8 が自閉症の原因遺伝子として同定され 大変注目を集めています ( 図 1) 本研究グループは これまでに CHD8 遺伝子変異を持つ

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の感染が阻止されるという いわゆる 二度なし現象 の原理であり 予防接種 ( ワクチン ) を行う根拠でもあります 特定の抗原を認識する記憶 B 細胞は体内を循環していますがその数は非常に少なく その中で抗原に遭遇した僅かな記憶 B 細胞が著しく増殖し 効率良く形質細胞に分化することが 大量の抗体産

報道発表資料 2002 年 10 月 10 日 独立行政法人理化学研究所 頭にだけ脳ができるように制御している遺伝子を世界で初めて発見 - 再生医療につながる重要な基礎研究成果として期待 - 理化学研究所 ( 小林俊一理事長 ) は プラナリアを用いて 全能性幹細胞 ( 万能細胞 ) が頭部以外で脳

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研究の内容 結果本研究ではまず 日本人のクロザピン誘発性無顆粒球症 顆粒球減少症患者群 50 人と日本人正常対照者群 2905 人について全ゲノム関連解析を行いました DNAマイクロアレイを用いて 約 90 万個の一塩基多型 (SNP) 6 を決定し 個々の関連を検討しました その結果 有意水準を超

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( 様式甲 5) 学位論文内容の要旨 論文提出者氏名 論文審査担当者 主査 教授 大道正英 髙橋優子 副査副査 教授教授 岡 田 仁 克 辻 求 副査 教授 瀧内比呂也 主論文題名 Versican G1 and G3 domains are upregulated and latent trans


の活性化が背景となるヒト悪性腫瘍の治療薬開発につながる 図4 研究である 研究内容 私たちは図3に示すようなyeast two hybrid 法を用いて AKT分子に結合する細胞内分子のスクリーニングを行った この結果 これまで機能の分からなかったプロトオンコジン TCL1がAKTと結合し多量体を形

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学位論文の内容の要旨 論文提出者氏名 小川憲人 論文審査担当者 主査田中真二 副査北川昌伸 渡邉守 論文題目 Clinical significance of platelet derived growth factor -C and -D in gastric cancer ( 論文内容の要旨 )

再発小児 B 前駆細胞性急性リンパ性白血病におけるキメラ遺伝子の探索 ( この研究は 小児白血病リンパ腫研究グループ (JPLSG)ALL-B12 治療研究の付随研究として行われます ) 研究機関名及び研究責任者氏名 この研究が行われる研究機関と研究責任者は次に示す通りです 研究代表者眞田昌国立病院

脳組織傷害時におけるミクログリア形態変化および機能 Title変化に関する培養脳組織切片を用いた研究 ( Abstract_ 要旨 ) Author(s) 岡村, 敏行 Citation Kyoto University ( 京都大学 ) Issue Date URL http

本成果は 以下の研究助成金によって得られました JSPS 科研費 ( 井上由紀子 ) JSPS 科研費 , 16H06528( 井上高良 ) 精神 神経疾患研究開発費 24-12, 26-9, 27-

別紙 自閉症の発症メカニズムを解明 - 治療への応用を期待 < 研究の背景と経緯 > 近年 自閉症や注意欠陥 多動性障害 学習障害等の精神疾患である 発達障害 が大きな社会問題となっています 自閉症は他人の気持ちが理解できない等といった社会的相互作用 ( コミュニケーション ) の障害や 決まった手

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難病 です これまでの研究により この病気の原因には免疫を担当する細胞 腸内細菌などに加えて 腸上皮 が密接に関わり 腸上皮 が本来持つ機能や炎症への応答が大事な役割を担っていることが分かっています また 腸上皮 が適切な再生を全うすることが治療を行う上で極めて重要であることも分かっています しかし

< 研究の背景 > 肉腫は骨や筋肉などの組織から発生するがんで 患者数が少ない稀少がんの代表格です その一方で 若い患者にしばしば発生すること 悪性度が高く難治性の症例が少なくないこと 早期発見が難しいことなど多くの問題を含んでいます ユーイング肉腫も小児や若年者に多く 発見が遅れると全身に転移する

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記 者 発 表(予 定)

平成14年度研究報告

2. ポイント EGFR 陽性肺腺癌の患者さんにおいて EGFR 阻害剤治療中に T790M 耐性変異による増悪がみられた際にはオシメルチニブ ( タグリッソ ) を使用することが推奨されており 今後も多くの患者さんがオシメルチニブによる治療を受けることが想定されます オシメルチニブによる治療中に約

Microsoft Word - 【PRC確認2】110906(2) プレス原稿Nature.doc

界では年間約 2700 万人が敗血症を発症し その多くを発展途上国の乳幼児が占めています 抗菌薬などの発症早期の治療法の進歩が見られるものの 先進国でも高齢者が発症後数ヶ月の 間に新たな感染症にかかって亡くなる例が多いことが知られています 発症早期には 全身に広がった感染によって炎症反応が過剰になり

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10,000 L 30,000 50,000 L 30,000 50,000 L 図 1 白血球増加の主な初期対応 表 1 好中球増加 ( 好中球 >8,000/μL) の疾患 1 CML 2 / G CSF 太字は頻度の高い疾患 32

60 秒でわかるプレスリリース 2006 年 4 月 21 日 独立行政法人理化学研究所 敗血症の本質にせまる 新規治療法開発 大きく前進 - 制御性樹状細胞を用い 敗血症の治療に世界で初めて成功 - 敗血症 は 細菌などの微生物による感染が全身に広がって 発熱や機能障害などの急激な炎症反応が引き起

統合失調症モデルマウスを用いた解析で新たな統合失調症病態シグナルを同定-統合失調症における新たな予防法・治療法開発への手がかり-

2015 年 11 月 5 日 乳酸菌発酵果汁飲料の継続摂取がアトピー性皮膚炎症状を改善 株式会社ヤクルト本社 ( 社長根岸孝成 ) では アトピー性皮膚炎患者を対象に 乳酸菌 ラクトバチルスプランタルム YIT 0132 ( 以下 乳酸菌 LP0132) を含む発酵果汁飲料 ( 以下 乳酸菌発酵果

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1. Caov-3 細胞株 A2780 細胞株においてシスプラチン単剤 シスプラチンとトポテカン併用添加での殺細胞効果を MTS assay を用い検討した 2. Caov-3 細胞株においてシスプラチンによって誘導される Akt の活性化に対し トポテカンが影響するか否かを調べるために シスプラチ

記 者 発 表(予 定)

報道発表資料 2006 年 6 月 21 日 独立行政法人理化学研究所 アレルギー反応を制御する新たなメカニズムを発見 - 謎の免疫細胞 記憶型 T 細胞 がアレルギー反応に必須 - ポイント アレルギー発症の細胞を可視化する緑色蛍光マウスの開発により解明 分化 発生等で重要なノッチ分子への情報伝達

汎発性膿庖性乾癬の解明

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共同研究チーム 個人情報につき 削除しております 1

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細胞外情報を集積 統合し 適切な転写応答へと変換する 細胞内 ロジックボード 分子の発見 1. 発表者 : 畠山昌則 ( 東京大学大学院医学系研究科病因 病理学専攻微生物学分野教授 ) 2. 発表のポイント : 多細胞生物の個体発生および維持に必須の役割を担う多彩な形態形成シグナルを細胞内で集積 統

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2017 年 12 月 15 日 報道機関各位 国立大学法人東北大学大学院医学系研究科国立大学法人九州大学生体防御医学研究所国立研究開発法人日本医療研究開発機構 ヒト胎盤幹細胞の樹立に世界で初めて成功 - 生殖医療 再生医療への貢献が期待 - 研究のポイント 注 胎盤幹細胞 (TS 細胞 ) 1 は

平成 29 年 6 月 9 日 ニーマンピック病 C 型タンパク質の新しい機能の解明 リソソーム膜に特殊な領域を形成し 脂肪滴の取り込み 分解を促進する 名古屋大学大学院医学系研究科 ( 研究科長門松健治 ) 分子細胞学分野の辻琢磨 ( つじたくま ) 助教 藤本豊士 ( ふじもととよし ) 教授ら

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報道発表資料 2007 年 4 月 30 日 独立行政法人理化学研究所 炎症反応を制御する新たなメカニズムを解明 - アレルギー 炎症性疾患の病態解明に新たな手掛かり - ポイント 免疫反応を正常に終息させる必須の分子は核内タンパク質 PDLIM2 炎症反応にかかわる転写因子を分解に導く新制御メカニ

血漿エクソソーム由来microRNAを用いたグリオブラストーマ診断バイオマーカーの探索 [全文の要約]

がん登録実務について

いることが推測されました そこで東京大学医科学研究所の氣駕恒太朗特任研究員 三室仁美 准教授と千葉大学真菌医学研究センターの笹川千尋特任教授らの研究グループは 胃がんの発 症に深く関与しているピロリ菌の感染現象に着目し その過程で重要な役割を果たす mirna を同定し その機能を解明しました スナ

急性骨髄性白血病の新しい転写因子調節メカニズムを解明 従来とは逆にがん抑制遺伝子をターゲットにした治療戦略を提唱 概要従来 <がん抑制因子 >と考えられてきた転写因子 :Runt-related transcription factor 1 (RUNX1) は RUNX ファミリー因子 (RUNX1

上原記念生命科学財団研究報告集, 30 (2016)

られる 糖尿病を合併した高血圧の治療の薬物治療の第一選択薬はアンジオテンシン変換酵素 (ACE) 阻害薬とアンジオテンシン II 受容体拮抗薬 (ARB) である このクラスの薬剤は単なる降圧効果のみならず 様々な臓器保護作用を有しているが ACE 阻害薬や ARB のプラセボ比較試験で糖尿病の新規

平成24年7月x日

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平成 28 年 12 月 12 日 癌の転移の一種である胃癌腹膜播種 ( ふくまくはしゅ ) に特異的な新しい標的分子 synaptotagmin 8 の発見 ~ 革新的な分子標的治療薬とそのコンパニオン診断薬開発へ ~ 名古屋大学大学院医学系研究科 ( 研究科長 髙橋雅英 ) 消化器外科学の小寺泰

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なお本研究は 東京大学 米国ウィスコンシン大学 国立感染症研究所 米国スクリプス研 究所 米国農務省 ニュージーランドオークランド大学 日本中央競馬会が共同で行ったもの です 本研究成果は 日本医療研究開発機構 (AMED) 新興 再興感染症に対する革新的医薬品等開発推進研究事業 文部科学省新学術領

結果 この CRE サイトには転写因子 c-jun, ATF2 が結合することが明らかになった また これら の転写因子は炎症性サイトカイン TNFα で刺激したヒト正常肝細胞でも活性化し YTHDC2 の転写 に寄与していることが示唆された ( 参考論文 (A), 1; Tanabe et al.

細胞老化による発がん抑制作用を個体レベルで解明 ~ 細胞老化の仕組みを利用した新たながん治療法開発に向けて ~ 1. ポイント : 明細胞肉腫 (Clear Cell Sarcoma : CCS 注 1) の細胞株から ips 細胞 (CCS-iPSCs) を作製し がん細胞である CCS と同じ遺

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解禁時間 ( テレヒ ラシ オ WEB): 平成 21 年 7 月 21 日 ( 火 ) 午前 2 時 ( 新聞 ) : 平成 21 年 7 月 21 日 ( 火 ) 付朝刊 平成 21 年 7 月 17 日 科学技術振興機構 (JST) Tel:03-5214-8404( 広報ポータル部 ) 東京大学医学部附属病院 Tel:03-5800-9188( パブリック リレーションセンター ) 骨髄異形成症候群の新たな分子メカニズムの発見 - がん抑制遺伝子ががん遺伝子に変化する仕組みを解明 - JST 目的基礎研究事業 および東京大学医学部附属病院が推進する 大規模ゲノミクスによるオーダーメイドがん診療技術の開発 事業の一環として 東京大学医学部附注属病院キャンサーボードの小川誠司特任准教授と真田昌特任助教らは CBL 1) と呼ばれるがん抑制遺伝子の異常が 骨髄異形成症候群と呼ばれる血液がんの発症原因の 1つとなっていることを突き止めました 骨髄異形成症候群 (MDS) は 血球形態の異常と治療抵抗性の貧血を特徴とし しばしば急性骨髄性白血病へと進展する難治性の血液がんの一種です 近年日本でも増加の傾向にありますが 現時点では骨髄移植以外に有効な治療法が知られていません 本研究グループは SNP アレイ注 2) と呼ばれる解析装置を用いて 200 例を超える MDS およびその関連疾患由来のゲノムの異常を網羅的に解析しました その結果 11 番染色体長腕に存在する CBL 遺伝子が MDS ではしばしば変異していることを見いだしまし注 3) た 遺伝子変異が起きると C-CBL が本来有する酵素活性 ( ユビキチンリガーゼ活性 ) が損なわれた異常な CBL たんぱくが生成されます C-CBL たんぱくは本来 細胞内のさま 4) ざまなチロシンキナーゼ注たんぱくを分解調節することにより 細胞の増殖を抑制する働きを持ちますが 異常な C-CBL はこの働きを失った結果 本来のがん抑制遺伝子から造血細胞の増殖を促進するがん遺伝子へと変化し これが MDS の発症に関わっていることを明らかにしました 本研究結果は がん抑制遺伝子が遺伝子変異によってがん遺伝子に変化するという巧妙なメカニズムによって造血器腫瘍が誘発されることを明らかにしたユニークな研究です また CBL が変異してしまったために活性が抑えられなくなったチロシンキナーゼを特異的に阻害する薬剤が将来開発された場合 CBL 変異を有する難治性 MDS の有効な治療薬剤となる可能性も示唆されます 今回の発見は MDS に対する新たな治療薬剤の開発 という観点からも興味深く 今後の研究成果が期待されます 本研究成果は 2009 年 7 月 20 日 ( 英国時間 ) に英国科学雑誌 Nature のオンライン速報版で公開されます 本成果は 以下の事業によって得られました (1)JST 戦略的創造研究推進事業チーム型研究 (CREST) 研究領域 : テーラーメイド医療を目指したゲノム情報活用基盤技術 ( 研究総括 : 笹月健彦国立国際医療センター名誉総長 ) 研究課題名 :Whole Genome Association 解析による GVHD の原因遺伝子の探索研究代表者 : 小川誠司 ( 東京大学医学部附属病院キャンサーボード特任准教授 ) 研究期間 : 平成 16 年 10 月 ~ 平成 22 年 3 月 JST はこの領域で ゲノム情報を活用した創薬 個々人の体質に合った疾病の予防と治療 テーラーメイド医療 の実現を目指し その基盤となる研究に取り組んでいます 上記研究課題では 疾患の原因となる遺伝変異を 50 万個の遺伝子マーカーを用いた全ゲノム関連解析により明らかにすることで上記医療の実現に貢献することを目的としています (2) 文部科学省特別教育研究推進経費 がん大規模ゲノミクスによるオーダーメイドがん診療技術の開発 研究代表者 : 武谷雄二 ( 東京大学医学部附属病院病院長 ) 1

< 研究の背景と経緯 > 骨髄異形成症候群 (MDS) は 血球形態の異常を伴う治療抵抗性の貧血を呈し しばしば急性骨髄性白血病へ進展する難治性の造血器疾患です 実際には表 1に示すような臨床病態の異なるさまざまな疾患群 亜型の総称です これらに共通するのは 血液をつくる元になる造血細胞に次々と遺伝子の変化 ( 変異 ) が生じた結果 正常に血液を作る機能が障害され 血球の減少や異常な増殖が引き起こされ ついには急性白血病に至たります 現在までにMDSの発症に関わるさまざまな遺伝子の変化が報告されていますが 未だにこれらの遺伝子変化の全体像は分かっていません 現時点では 副作用の強い骨髄移植以外にMDS を根治する手段は知られていませんが しばしば移植が行えない高齢者で発症します そのため MDSの原因となっている遺伝子の変異を明らかにして MDS 特異的に作用する副作用の少ない薬剤を開発することが望まれています < 研究の内容 > 本研究グループは今回 こうした MDS の原因となっている遺伝子の異常を解明することを目的として SNP アレイと呼ばれる先端的なゲノム解析の技術を用いて MDS 検体のゲノムの異常を詳細に解析しました その結果 以下のことが明らかになりました (1)MDS はゲノム異常の観点から特徴的ないくつかの亜系に分類できる ( 図 1) (2) こうした亜系のうち 11 番染色体長腕の異常を特徴とする一群の病型では C-CBL ひしゅと呼ばれる遺伝子が変異している ( 図 2) 変異は 白血球の異常な増加や脾腫を特徴とする慢性骨髄単球性白血病 (CMML) と呼ばれる病型にしばしば認められる (3) これらの腫瘍細胞では ほとんどの場合 2つある正常 C-CBL 遺伝子のコピーがともに変異 C-CBLで置き換わっており 正常 C-CBL 遺伝子がなくなってしまっている C-CBL は マウスにリンパ腫を生じさせる発がんウィルスに含まれるがん遺伝子 v-cbl の相同遺伝子として見いだされた遺伝子で ヒトを含むほ乳類は 共通の祖先から枝分かれした C-CBL, CBL-B, CBL-C という互いによく似た3つの遺伝子を持っています 造血細胞の増殖は サイトカインと呼ばれるさまざまな因子の刺激によって チロシンキナーゼ という酵素が活性化されることによって生じます C-CBL はこのようにして活性化されたさまざまなチロシンキナーゼに結合してそのシグナルを下流に伝達します 一方 C-CBL は ユビキチンリガーゼ ( ユビキチンをくっつける酵素 ) と呼ばれる機能を持っていて この作用によってこれらのチロシンキナーゼをユビキチン化することにより 活性化されたチロシンキナーゼが速やかに分解されるのを促進しています ( 図 3) つまり C-CBL はチロシンキナーゼのシグナルの伝達に携わると同時に その分解も促して 過剰なシグナルの伝達が起こらないように調節しているわけです 実際 C-CBL 遺伝子がなくなったマウスを作製すると 造血細胞が増加し 加えて他のがん遺伝子による白血病化が促進され 観察したすべてのマウスが悪性腫瘍を発症しました ( 図 4) このことから 正常の C-CBL は がん抑制遺伝子として機能するということが分かりました 一方 今回見いだした 変異 C-CBL を細胞に導入すると 細胞はがん化してマウスに腫瘍を形成するようになります ( 図 5) すなわち 変異した C-CBL はがん抑制遺伝子としての機能がないばかりか 細胞のがん化を促進するがん遺伝子として作用するということが明らかになりました さらに これに続く一連の変異 C-CBL の機能の解析を通じて本研究グループは 以下のことを実験的に示しました 2

(1)MDS で認められる変異は C-CBL のユビキチンリガーゼとしての活性に重要な領域に集中して生じている ( 図 2 右パネル ) そして実際 変異 C-CBL ではユビキチンリガーゼの活性が著しく低下している そればかりか 変異 C-CBL は正常 C-CBL のユビキチンリガーゼの活性を抑制する ( 図 6) その結果 変異 C-CBL を導入した細胞では 導入していない細胞に比べて種々のサイトカイン刺激によるチロシンキナーゼの活性が長時間持続する ( 図 7) (2) その結果として 正常の造血幹細胞に変異 C-CBL を発現させることにより これらの造血細胞のサイトカイン刺激による増殖が促進される この効果は C-CBL 遺伝子を欠落させた造血幹細胞で特に増強して表れる また この増強効果は 正常の C-CBL を発現させることにより 顕著に抑制される ( 図 7) 正常な C-CBL を持つ造血細胞に変異 C-CBL を導入した場合 変異 C-CBL によって正常な C-CBL によるユビキチン化が抑制されますから その結果としてチロシンキナーゼの活性化が長時間持続し これによって細胞の増殖を促進する これは期待されたとおりです しかし 変異 C-CBL の効果は正常の C-CBL を欠落させた造血細胞でずっと顕著に観察されるというのは意外な結果です これらの細胞では変異 C-CBL が抑制する正常 C-CBL がそもそも存在しないからです このことは C-CBL の変異を有する MDS では ほとんどの場合 2つある正常 C-CBL 遺伝子のコピーがともに変異 C-CBL に置き換わっており これによって正常 C-CBL 遺伝子がなくなってしまっているという観察結果をよく説明します 正常な C-CBL の無い細胞に変異 C-CBL を導入することによって認められるこのようなサイトカイン感受性の増強効果は 変異 C-CBL の機能の喪失や正常 C-CBL を抑制する効果では説明ができません つまり 変異した C-CBL はもともとの C-CBL にはない機能を新たに獲得しているということになります 一般に がん抑制遺伝子はその機能が消失するとがん化を促進してしまう遺伝子であり C-CBL はこの意味で明確ながん抑制遺伝子です しかし 変異した C-CBL は単に正常の C-CBL の機能を失うのみならず 新たな機能が加わってこれが MDS の発症に重要な役割を担っていると考えられます 今回は その分子メカニズムの詳細については割愛いたしましたが こうした がん抑制遺伝子の変異による新たな機能獲得 という概念は これまで p53 というがん抑制遺伝子でだけ知られていたものですが 今回の研究によって C-CBL も変異によって機能獲得が生ずるがん抑制遺伝子であることが明らかとなりました < 今後の展開 > 白血病や MDS のみならず 肺がん 乳がん 脳腫瘍をはじめとする多くのヒトのがんでは チロシンキナーゼ自体の遺伝子増幅や変異によるチロシンキナーゼの活性の上昇が 発がんの重要な原因となっていることが知られています 今回の研究によって MDS におけるチロシンキナーゼの異常な活性化の新たなメカニズムが明らかになりました また 診断と治療という観点からは SNP アレイによる解析が MDS の詳細な病型の診断に有効であること そして C-CBL 変異が生じている11 番染色体の異常を有する MDS では 活性化されたチロシンキナーゼに対する阻害剤の投与が有効な可能性が示唆されました 一方 今回のマイクロアレイの解析からは MDS では11 番染色体に異常を有する病型のほかにも さまざまな病型があると分かりましたが 今後こうした病型を特徴づけるゲノム異常の解析を通じて新たな診断 治療の標的分子が明らかにされることが期待されます 3

< 参考図 表 > 表 1 SNP アレイで解析した MDS の病型分類 図 1 SNP アレイ解析に基づく MDS におけるゲノムの異常 SNP アレイで同定されたゲノム解析の結果に基づいて MDS を共通するゲノム異常を有する複数の亜型に分類できます オレンジはゲノムの増加 緑はゲノムの減少をあらわします また 青で示したゲノムの領域では2つのゲノムのコピーが一方の親に由来するアレルだけになっていることを示しています 各症例ごと ( 右 左 ) に認められたゲノムの異常を 1 番染色体から 22 番染色体 ( 上 下 ) の順に色分けして示しています 4

図 2 MDS で認められる C-CBL の遺伝子変異 11 番染色体長腕の異常を有する MDS のほとんどの症例で C-CBL 遺伝子の変異が生じています これらの症例では1つの変異を有するアレルが正常アレルに置き換わることによって 2つの遺伝子のコピーがともに変異した C-CBL に置き換わっています 変異は 左の図の色をつけて示した進化上極めてよく保存されたアミノ酸で生じており (* の付いたアミノ酸 ) これらは赤で示したユビキチンリガーゼの活性に重要な分子とインターフェイスを構成する部分に集中的に生じています 図 3 C-CBL は活性化されたチロシンキナーゼの分解に携わるサイトカイン受容体にサイトカインが結合すると受容体のキナーゼがリン酸化され 増殖シグナルが細胞内に伝達されます C-CBL はリン酸化された受容体チロシンキナーゼに結合し シグナルを伝達するとともに リン酸化された受容体をユビキチン化して その分解を促進し 増殖シグナルが過剰に伝達され続けないように抑制します 5

図 4 C-CBL のがん抑制作用 C-CBL を欠失したマウス (c-cbl -/- ) では 脾臓の腫大 (a) 骨髄および脾臓での造血細胞 (LSK 細胞やもっと未熟な CD34-LKS 細胞 ) の増加 (b) および他の遺伝子による白血病発症の促進が認められ (c,d) さらに これらのマウスは全例 浸潤性の悪性腫瘍を発症します (e) このことから C-CBL はがん化の抑制に作用するがん抑制遺伝子であることが分かります dは死亡したマウスの骨髄の標本 ( 拡大率 600 倍 ) でほぼすべて一様な白血病細胞でしめられています e( 拡大率 200 倍 ) の下段は腫瘍の検鏡写真で異型性の強いがん細胞の浸潤を認めます 図 5 変異 C-CBL の発がん活性変異 C-CBL を導入した細胞は免疫不全マウスに腫瘍を形成します 下の数字は腫瘍のできた割合を示しています このことから 変異した C-CBL はがん遺伝子であることが分かります 6

Y371S 変異体 Q367P 変異体 Y371S 変異体 図 6 変異 C-CBL は正常 C-CBL のユビキチン活性を抑制する正常 C-CBL を導入するとチロシンキナーゼ ( ここでは上皮細胞増殖因子 (EGF) 受容体 ) のユビキチン化が増強しますが 変異 C-CBL を同時に導入すると この活性が著明に抑制されます (a b) このことから 変異 C-CBL は正常 C-CBL のユビキチン活性を阻害することが分かります また 同様の結果が他のチロシンキナーゼ (c-kit JAK2 FLT3) でも認められました 図 7 変異 C-CBL を導入した造血幹細胞のサイトカイン感受性の増強変異 C-CBL を正常なマウスの造血幹細胞に導入すると さまざまなサイトカイン刺激による細胞増殖が促進されます ( 青色 ) C-CBL をもともと欠失した造血幹細胞でも このような増殖の促進が認められますが C-CBL を欠失した細胞に変異 C-CBL を導入するとサイトカイン刺激による細胞増殖は著しく促進されます 7

< 用語解説 > 注 1)CBL 造血細胞の増殖を促進するチロシンキナーゼと呼ばれる酵素の働きを調節するユビキチンリガーゼ ( 注 3 参照 ) と呼ばれる酵素をコードする遺伝子で 通常は細胞増殖の抑制に働く がん抑制遺伝子と考えられている 注 2)SNP アレイ SNPは一塩基多型 (Single Nucleotide Polymorphism) を略したもの 個人によって異なるヒトゲノムの配列は多型と呼ばれるが SNPはヒトゲノムの多型の中で最も普通に認められる多型 SNPはある程度共通に認められるものに限っても1,000 万個以上あることが知られているが こうしたSNPを解析することによって 個々人における病気のかかりやすさなどを予測することができるようになった 国際 HapMap 計画は このSNPのカタログを作ることによって SNPの研究基盤を構築する一大プロジェクトである 近年のゲノム解析の技術の格段の進歩によって マイクロアレイと呼ばれる微小なチップを用いて1 回の解析で百万個以上のSNPを解析することができる こうしたチップはSNPアレイと呼ばれるが その測定原理からSNPだけではなく がんのゲノムに生じているゲノムのコピー数を解析することができる 正常のゲノムでは どの遺伝子も通常 2コピーだが がんのゲノムでは しばしばコピー数に変化が生じる これががんの重要な原因となっていることから ゲノムのどの部分が変化を起こしているかを調べることによって がんの原因となっている遺伝子を見いだすことができる 本研究グループは CRESTの一連の研究を通じて がんゲノムのSNPアレイ解析から得られるデータを用いてがんゲノムにおけるコピー数の変化を高精度に解析することを可能にするソフトウェアを開発した これは現在世界的にも汎用されているプログラムの1つだが 今回の研究はこの解析技術を用いて悪性リンパ腫のゲノムを解析することによって得られた研究成果 注 3) ユビキチンリガーゼユビキチンリガーゼは標的となるたんぱく質に結合し これにユビキチンと呼ばれる小さなたんぱく質を付加する ( ユビキチン化 ) ユビキチン化されたたんぱく質はプロテオソームなどの働きにより 速やかに分解される ユビキチン化とその後の分解の過程は 細胞内において不要になったたんぱく質の除去や たんぱく質の量の調整に大変重要な役割を担っている 注 4) チロシンキナーゼ基質をリン酸化する酵素を一般に キナーゼ と呼び その中でも基質のチロシン残基を特異的にリン酸化する酵素を チロシンキナーゼ と呼ぶ チロシンキナーゼは一般に細胞の増殖を正に誘導する役割を果たしており 正常細胞内においてはその活性は厳密にコントロールされている しかし がん細胞においては 他のたんぱく質と融合したり あるいは配列の突然変異によって常に活性化された状態となり がん化 を導いてしまう 8

< 論文名 > Gain-of-function of mutated C-CBL tumour suppressor in myeloid neoplasms ( 骨髄系腫瘍におけるがん抑制遺伝子 C-CBL の機能獲得変異 ) <お問い合わせ先 > < 研究に関すること> 小川誠司 ( オガワセイシ ) 東京大学医学部附属病院キャンサーボード特任准教授 113-8655 東京都文京区本郷 7-3-1 Tel:03-3815-5411 Fax:03-5804-6261 E-mail:sogawa-tky@umin.ac.jp 取材申し込みは 下記 < 報道担当 >の東京大学医学部附属病院パブリック リレーションセンターまでお願いします <JSTの事業に関すること> 廣田勝巳 ( ヒロタカツミ ) 科学技術振興機構イノベーション推進本部研究領域総合運営部 102-0075 東京都千代田区三番町 5 三番町ビル Tel:03-3512-3524 Fax:03-3222-2064 E-mail:crest@jst.go.jp < 報道担当 > 科学技術振興機構広報ポータル部 102-8666 東京都千代田区四番町 5 番地 3 Tel:03-5214-8404 Fax:03-5214-8432 E-mail:jstkoho@jst.go.jp 東京大学医学部附属病院パブリック リレーションセンター Tel:03-5800-9188 Fax:03-5800-9193 E-mail:pr@adm.h.u-tokyo.ac.jp 9