資料3 クモテナガコガネ属及びヒメテナガコガネ属に関する情報(案)

Similar documents
<4D F736F F D2093AF92E88E D836A B5F8DA9928E97DE E C838A97DE816A955C8E >

Microsoft Word - 表紙・奥付

アマミノクロウサギ保護増殖事業計画 平成 27 年 4 月 21 日 文部科学省 農林水産省 環境省

防除実施計画(表紙、目次)

参考資料1 マルハナバチに関する調査の結果概要(前回資料)


untitled

どんな問題がおきているの? 外来生物はどのような問題を起こしているのでしょうか? 生態系への影響 地域の生態系は 長い歴史をへてそれぞれの場所に応じた自然のバランスにより成り立っています そこに外来生物が侵入すると 捕食や交雑等によって 在来の生き物の減少や絶滅 地域の植生等のバランスがくずれるなど

73 p p.152

Microsoft Word - 田中亮太郎.doc

_Print

122011pp

2

A p A p. 224, p B pp p. 3.

スラヴ_00A巻頭部分

Microsoft Word - 映画『東京裁判』を観て.doc

9

() L () 20 1

308 ( ) p.121

広報かみす 平成28年6月15日号

.

戦後の補欠選挙

日経テレコン料金表(2016年4月)

B


p

Microsoft Word - 【セット版】別添資料2)環境省レッドリストカテゴリー(2012)

兵庫のカブトクワガタ配布資料.indd

920P-1




広報しもつけp01ol

ONPRESS190


本文(B5×40)0614三校責了.indd

1 アライグマの 分布と被害対策 1 アライグマの分布 1977 昭和52 年にアライグマと少年のふれあいを題材とし たテレビアニメが全国ネットで放映されヒット作となった それ 以降 アライグマをペットとして飼いたいという需要が高まり海 外から大量に輸入された しかしアライグマは気性が荒く 成長 す



レッドリストの基本的な考え方

爬虫類 カミツキガメハナガメハナガメ ニホンイシガメハナガメ ミナミイシガメハナガメ クサガメスウィンホーキノボリトカゲアノリス アルグロスアノリス アルタケウスアノリス アングスティケプスグリーンアノールアノリス ホモレキスブラウンアノールミナミオオガシラタイワンスジオタイワンハブ (Chelyd

資料 2 セイヨウオオマルハナバチの代替種の利用方針 について 環境省農林水産省


データの概要と利用上の注意(チョウ類)

豊田ホタルの里ミュージアム研究報告書第 6 号 : 頁, 2014 年 3 月 Bull. Firefly Museum of Toyota town. (6): , Mar 報告 下関市のイソジョウカイモドキの生態と分布 松田真紀子 1) 2) 川野敬介

イ繁殖キョンのメスは早ければ生後半年前後で妊娠し 生後 1 年 ~1 年 2ヶ月程度で初出産し 1 産 1 子です 千葉県においては 出産は年間を通して行われており 5~10 月の出産が多い状況です また 妊娠期間は約 210 日であり 交尾の多くは10~3 月に行われていると推定されます ウ寿命と

〈資料〉春日山常緑広葉樹林内におけるオオチャイロハナムグリの記録

西表島2009表紙.indd

海外森林 林業講座 図 1 図 3 東ネパールのムツボシシロカミキリの上翅斑紋変 異 図 4 東カリマンタンのムツボシシロカミキリ A と PNG B と東カリマンタン C のミツボシシ ロカミキリ 日本産ムツビシロカミキリ A と Fauna de Madagascal の表紙 B かった やはり

輸出国3 5-3 指定港における特定外来生物等の流れ 保税地域 外国貨物 内国貨物 < 外来生物法以外の他法令の検査が必要な外来生物 > 施行規則第 31 条第 1 号の種類名証明書に係る外来生物 < 厚生労働省検疫所 > 輸入動物の届出 < 動物検疫所 > 輸入動物の検査 < 植物防疫所 > 検疫

ダークレディと呼ばれて

特定外来生物同定マニュアル(甲殻類)


Microsoft Word - 世界のエアコン2014 (Word)

1 巡目調査 ( 平成 3~7 年度 ) 2 巡目調査 ( 平成 8~12 年度 ) ゲンジボタルの確認された調査地区 (1 巡目調査 2 巡目調査 ) 6-61

地域別世界のエアコン需要の推定について 年 月 一般社団法人 日本冷凍空調工業会 日本冷凍空調工業会ではこのほど 年までの世界各国のエアコン需要の推定結果を まとめましたのでご紹介します この推定は 工業会の空調グローバル委員会が毎年行 なっているもので 今回は 年から 年までの過去 ヵ年について主

橡kaikei_QA_2001_05_11.PDF

ハナガメ (Mauremys sinensis) に関する情報 評価 特定外来生物 生態系被害防止外来種リストその他の定着予防外来種 原産地 台湾 中国南部 ベトナム北部 定着実績 定着はしていないが 逸出個体の確認例が各地にある 評価の理由今のところ野外での確実な繁殖例はないものの 日本各地の野外

PowerPoint プレゼンテーション

小笠原諸島における海岸漂着物対策推進計画


アライグマ防除マニュアル 平成 24 年 7 月 栃木県環境森林部自然環境課

Microsoft PowerPoint - H30 俚喨儻å�¦ã†¨é⁄”çfl�å‰Łç›©å�¦ï¼™ã••çµ¶æ»–哱慧種ㆮ俚喨

untitled

地域別世界のエアコン需要の推定について 2018 年 4 月一般社団法人日本冷凍空調工業会日本冷凍空調工業会ではこのほど 2017 年までの世界各国のエアコン需要の推定結果をまとめましたのでご紹介します この推定は 工業会の空調グローバル委員会が毎年行なっているもので 今回は 2012 年から 20

鹿児島県立博物館研究報告第 35 号 :67 71,2016 薩摩半島西部におけるオキナワキンケビロウドカミキリの分布 金井賢一 * 福元正範 ** 入田隼一 ** 榊俊輔 ** 東哲治 ** Distribution of Acalolepta permutans okinawana (Coleo

untitled

第1部 わかやまの貴重な動植物 1 選定の考え方 (1) 対象種 県内域に生息 生育する陸産 淡水産及び汽水産の野生動植物とする ただし 海域を生息域とするウミガメ類については 産卵地が県内域で確認されている種を 選定の範疇に含めた 原則として外来種や飼育種 栽培種は除外するが これらに該当する種で

経済論集 46‐2(よこ)(P)☆/2.三崎

cbj855-honbun indd


(別記様式第1号)

福岡大学人文論叢47-3

,255 7, ,355 4,452 3,420 3,736 8,206 4, , ,992 6, ,646 4,

(1) (2)

P.5 P.6 P.3 P.4 P.7 P.8 P.9 P.11 P.19

さやばね5+.indd

外来生物の侵入が生態系に及ぼすリスクを 事前に正確に予想することは困難であることを意味しています 本研究成果は国際科学雑誌 Scientific Reports 電子版に掲載されました 図 1. ハゴロモの 1 種を捕えた外来陸生ヒモムシ 母島 乳房山にて ( 撮影 : 森英章 )

(1) (2) (3) (4) (5) 2.1 ( ) 2

PowerPoint プレゼンテーション

untitled

国際数学・理科教育動向調査(TIMSS)結果の推移

所報

やんばる.indd

1 図 1- A: メダカの群れの写真 川那部浩哉 水野信彦編 監修 (1989) 日本の淡水魚 ( 山渓カラー名鑑 ) より引用 図 1-B: 生き物調査で ビオトープのメダカを映した写真


日本赤十字看護学会誌 第7巻第1号 「病院勤務の女性看護職の年令,経験年数,職業アイデンティティ,看護専門職的自律性,バーンアウトの関連」

日本赤十字看護学会誌 第7巻第1号 若年妊婦の妊娠・分娩・育児期におけるケアニーズの分析-ドゥーラの役割の検討に向けて-

untitled

1 P2 P P3P4 P5P8 P9P10 P11 P12

東京都アライグマ・ハクビシン防除実施計画

本組よこ/根間:文11-029_P377‐408

< F2D D F97D18F57978E B8367>

被害の現状 いま ニホンジカとイノシシが どのような問題をもたらしているのでしょうか? ニホンジカが日本の自然を食べつくす!? 日本に昔から生息しているニホンジカやイノシシは 近年 急速に生息数が増加し 全国で分布を広げています 増えすぎたニホンジカやイノシシが いま 日本全国で生態系や農林業 さら



P.1P.3 P.4P.7 P.8P.12 P.13P.25 P.26P.32 P.33

クワガタムシの大顎を形作る遺伝子を特定 名古屋大学大学院生命農学研究科 ( 研究科長 : 川北一人 ) の後藤寛貴 ( ごとうひろき ) 特任助教 ( 名古屋大学高等研究院兼任 ) らの研究グループは 北海道大学 ワシントン州立大学 モンタナ大学との共同研究で クワガタムシの発達した大顎の形態形成に

mat02-1

目次.PDF

Transcription:

資料 3 クモテナガコガネ ( ドウナガテナガコガネ ) 属 (Euchirus) に関す る情報 ( 案 ) 原産地と分布 : インドネシアのスラウェシ島 マルク諸島のセラム島 マニパ島 アンボン島等に生息するチャイロクモテナガコガネ ( ドウナガテナガコガネ )E. longimanus とパラワン島を除くフイリピン全域に生息するセスジクモテナガコガネ ( セスジドウナガテナガコガネ )E. dupontianus の 2 種から構成される 定着実績 : 日本における侵入 定着実績はない 評価の理由日本にまだ定着していないが 侵入して定着すれば 特定外来生物であるテナガコガネ属と同様に 幼虫の食物であると考えられている腐植質や生息場所をめぐって 在来種で絶滅のおそれのあるヤンバルテナガコガネやマルバネクワガタ類等と競合するおそれがある 被害の実態 被害のおそれ生態系に係る被害 テナガコガネ属と同様の生態を有する可能性が高いため 沖縄本島北部のみに分布するヤンバルテナガコガネや南西諸島に分布するマルバネクワガタ類の生息地に侵入した場合 定着し 幼虫の餌である腐植質や生息場所を巡ってこれらと競合するおそれがある 被害をもたらす要因 (1) 生物学的要因 テナガコガネ属と同様の条件で飼育が可能であり 野外でも同様の生態を持っているものと考えられる 大型で幼虫の摂食量が多く 野外に逸出した際には幼虫の生息環境中での在来種との競合が懸念される 特徴ならびに近縁種 類似種について 日本には同属の種は生息しないが 同じテナガコガネ亜科のテナガコガネ属に属するヤンバルテナガコガネが沖縄本島に生息する テナガコガネ亜科の中では非常に大型で長い体形を有する属である 1

その他の関連情報 国内で流通 飼育されている例がある 主な参考文献 (1) Arrow, G. (1917) The fauna of British India. Lamellicornia 2. Rutelinae, Demonycinae, Euchirinae. Euchirinae - 1917 - xiii + 387 p - 77 figs - 5 pl (1 col.). Tailor and Francis, London. (2) 水沼哲郎 (1984) ヤンバルテナガコガネ. 104pp. 朝日出版社 (3) 水沼哲郎 (1999) コレクションシリーズ-テナガコガネ カブトムシ. 99pp. ESI (4) Young, R., M.(1989) Euchirinae (Coleoptera: Scarabaeidae) of the world: Distribution and taxonomy. Coleopt. Bull., 43: 205-236. 2

ヒメテナガコガネ属 (Propomacrus) に関する情報 ( 案 ) 原産地と分布 : 中国江西省中部に生息するダヴィドヒメテナガコガネ ( シナヒメテナガコガネ )P. davidi とユーゴスラビア南部からギリシャ イスラエル トルコ シリア イラン キプロス等に分布するヒメテナガコガネ ( トルコヒメテナガコガネ )P. bimucronatus の 2 種から構成される 定着実績 : 日本における侵入 定着実績はない 評価の理由日本にまだ定着していないが 侵入して定着すれば 特定外来生物であるテナガコガネ属と同様に 生息場所である樹洞や幼虫の餌となる腐植質をめぐって 在来種で絶滅のおそれのあるヤンバルテナガコガネ等と競合するおそれがあり また 本土にも定着し 樹洞の腐植質を利用する昆虫と競合するおそれがある 被害の実態 被害のおそれ生態系に係る被害 テナガコガネ属と同様の生態を有しており ヤンバルテナガコガネ等との競合が懸念される 被害をもたらす要因 (1) 生物学的要因 ヒメテナガコガネはブナ科やムラサキ科の樹木の樹洞で腐植物を食べて生活しており ヤンバルテナガコガネと同様の生態的地位を占める可能性が高い ヒメテナガコガネはイランからギリシャまで幅広い緯度の間で生息しており また1000m を超える高標高地にも生息していることから 沖縄島のみでなく本土でも定着する可能性があり 樹洞を利用する種との競合が懸念される ダヴィドヒメテナガコガネは その生息地 ( 中国中南部 確実な情報は江西省 ) からも 日本で広く定着する可能性を有し 樹洞を利用する種との競合が懸念される 特徴ならびに近縁種 類似種について 日本には同属の種は生息しないが テナガコガネ属の国内希少野生動植物種であるヤンバルテナガコガネが沖縄本島に生息する テナガコガネ亜科の中では最も小型の属である 3

その他の関連情報 国内で流通 飼育されている例がある 主な参考文献 (1) Abai, M. & M. Zairi (1976) A new record of Propomacrus bimuctonatus (Pall.) from Iran. J. entmol. Soc. Iran, 3: 107-115 (2) Arrow, G. (1917) The fauna of British India. Lamellicornia 2. Rutelinae, Demonycinae, Euchirinae. Euchirinae - 1917 - xiii + 387 p - 77 figs - 5 pl (1 col.). Tailor and Francis, London. (3) Heller, K. M. (1889) Bemerkung uber die Labensweise von Propomacrus bimucronatus Pall. Entomol. Nachrichten., 6: 96-99. (4) Heyden C. H. G. von (1851) Zur Naturgeschichte des Propomacrus (Euchirus) bimucronatus (Pall.). Stettin. Entomol. Ztg. 12: 240-241. (5) 水沼哲郎 (1984) ヤンバルテナガコガネ. 104pp. 朝日出版社 (6) 水沼哲郎 (1999) コレクションシリーズ-テナガコガネ カブトムシ. 99pp. ESI (7) Young, R. M. (1989) Euchirinae (Coleoptera: Scarabaeidae) of the world: Distribution and taxonomy. Coleopt. Bull., 43: 205-236. 4

( 参考 ) ヒメテナガコガネ属 クモテナガコガネ属の分類学上の位置づけ種類名証明書添付生物コガネムシ上科昆虫 (13 科 ) クロツヤムシ科 Passalidae クワガタムシ科 Lucanidae 等コガネムシ科 (11 亜科 )Scarabaeidae タマオシコガネ亜科 Scarabaeinae マグソコガネ亜科 Aphodiinae ニセマグソコガネ亜科 Aegialiinae カブトムシ亜科 Dynastinae スジコガネ亜科 Rutelinae コフキコガネ亜科 Melolonthinae ハナムグリ亜科 Cetoniinae トラハナムグリ亜科 Trichinae ヒラタハナムグリ亜科 Valginae Orphninae 亜科テナガコガネ亜科 (3 属 ) Euchirinae テナガコガネ属 (9 種 )Cheirotonus 特定外来生物ヤンソンテナガコガネ C. jansoni パリーテナガコガネ C. parryi マレーテナガコガネ C. peracanus マクレィテナガコガネ C. macleayi ゲストロテナガコガネ C. gestroi バターレルテナガコガネ C. battareli フジオカテナガコガネ C. fujiokai タイワンテナガコガネ C. formosanus ヤンバルテナガコガネ ( 在来種 ) C. jambar 未判定外来生物クモテナガコガネ属 (2 種 )Euchirus チャイロクモテナガコガネ ( ドウナガテナガコガネ ) E. longimanus セスジクモテナガコガネ ( セスジドウナガテナガコガネ ) E. dupontianus ヒメテナガコガネ属 (2 種 ) Propomacrus ヒメテナガコガネ ( トルコヒメテナガコガネ ) P. bimucronatus ダヴィドヒメテナガコガネ ( シナヒメテナガコガネ ) P. davidi 5