資料 1 税財政制度を通じた論点 Ⅰ 現状と課題 1. 地方財政の財政の概要 地方財政の平成 23 年度決算は 歳入約 兆円 歳出 97.0 兆円となっている なお 借入金残高は約 兆円と依然と高い水準にある 国と地方における最終支出ベースにおける比率は 42:58 となって

Similar documents
Taro-★【2月Ver】01~05. ⑲計

Ⅳ 地方交付税

地方税法等の一部を改正する法律案の概要 総務省 1 地方法人課税における新たな偏在是正措置 平成 31 年 10 月 1 日施行 都市 地方の持続可能な発展のための地方税体系の構築の観点から 特別法人事業税及び特別法人事業譲与税に関する法律案 において特別法人事業税 ( 国税 ) を創設することに併

2007財政健全化判断比率を公表いたします


鷲巣君 地方自治制度演習A02-2.docx

(2) 消費税率 10% への引上げ時に導入が予定されている軽減税率制度については 消費税 地方消費税の引上げ分のうち地方交付税原資分も含めると 約 3 割が地方の社会保障財源であり 仮に減収分のすべてが確保されない場合 地方の社会保障財源に影響を与えることになることから 確実に代替財源を確保するこ

目 次 (1) 財政事情 1 (2) 一般会計税収 歳出総額及び公債発行額の推移 2 (3) 公債発行額 公債依存度の推移 3 (4) 公債残高の累増 4 (5) 国及び地方の長期債務残高 5 (6) 利払費と金利の推移 6 (7) 一般会計歳出の主要経費の推移 7 (8) 一般会計歳入の推移 8

9 地方歳入中に占める地方税収入の割合の推移 ( その 1) 区 都道府県 分 昭和 2 年度昭和 5 年度昭和 10 年度昭和 15 年度 金額比率 % 金額比率 % 金額比率 % 金額比率 % 地方税

<4D F736F F D20819A89FC90B38A E937D91E58D6A816A BC78B638CE381A8835A E646F63>

2 都市的税目に乏しい市町村税 市町村税は 法人所得課税 消費 流通課税といった経済活動を反映する都市的税目に乏しいため 増大する都市的財政需要に市税収入が対応しきれない大きな要因となっています 都市的税目の割合比較 ( 平成 22 年度 ) 100% 80% 37.7% 34.9% 60% 資産課

図 4-1 総額 と 純計 の違い ( 平成 30 年度当初予算 ) 総額ベース で見た場合 純計ベース で見た場合 国の財政 兆円兆 国の財政 兆円兆 A 特会 A 特会 一般会計 B 特会 X 勘定 Y 勘定 一般会計 B 特会 X 勘定 Y 勘定

一般会計 特別会計を含めた国全体の財政規模 (1) 国全体の財政規模の様々な見方国の会計には 一般会計と特別会計がありますが これらの会計は相互に完全に独立しているわけではなく 一般会計から特別会計へ財源が繰り入れられているなど その歳出と歳入の多くが重複して計上されています また 各特別会計それぞ

<4D F736F F F696E74202D C8E8693FC A F F95BD90AC E937889E482AA8D9182CC8DE090AD8E968FEE816990AD957B88C4816A2E >

目 次 (1) 財政事情 1 (2) 一般会計税収 歳出総額及び公債発行額の推移 2 (3) 公債発行額 公債依存度の推移 3 (4) 公債残高の累増 4 (5) 国及び地方の長期債務残高 5 (6) 利払費と金利の推移 6 (7) 一般会計歳出の主要経費の推移 7 (8) 一般会計歳入の推移 8

平成 27 年度高浜町の健全化判断比率及び資金不足比率 地方公共団体の財政の健全化に関する法律 が平成 21 年 4 月から全面施行され この法律により地方公共団体は 4 つの健全化判断比率 ( 実質赤字比率 連結実質赤字比率 実質公債費比率 将来負担比率 ) と公営企業ごとの資金不足比率を議会に報

貝監第  号

その 1 の財政状況は? 平成 28 年度一般会計決算からの財政状況を説明します 1 平成 28 年度の主なお金の使い道は? その他の経費 212 億 93 万円 扶助費 82 億 3,606 万円 16.7% 43.0% 義務的経費 219 億 7,332 万円 人件費 44.5% 79 億 8,

別添資料 1 日本再興を支える地方税財政の確立に向けて 都市からの提言 真の地方自治は 地方自治体が自らの権限とそれに見合う財源により 主体的に行財政運営を行うことで初めて実現できるものである 一方で 地方財政は 年間約 10 兆円に上る巨額の財源不足が生じているほか 国と地方の歳出比率と税収比率が

さぬき市普通会計決算状況 普通会計決算状況及び財政指標等 1P 普通会計歳入決算状況 普通会計歳出決算状況 主な一般財源の推移 ( 市税及び地方交付税 ) 普通建設事業費と義務的経費の推移 基金 市債及び元利償還金等の状況 2P 3P 4P 5P 6~8P

障財源化分とする経過措置を講ずる (4) その他所要の措置を講ずる 2 消費税率の引上げ時期の変更に伴う措置 ( 国税 ) (1) 消費税の軽減税率制度の導入時期を平成 31 年 10 月 1 日とする (2) 適格請求書等保存方式が導入されるまでの間の措置について 次の措置を講ずる 1 売上げを税

<4D F736F F D20819A819A81798B4C8ED294AD955C817A30315F967B95B >

< CA8CF C58E5A92E88C8B89CA C8E3993FA8CF6955C816A2E786C73>

PowerPoint プレゼンテーション

スライド 1

(1) 市税 1 個人市民税 12,, 12, 1,, 1, 8,, 8, 6,, 6, 4,, 4, 2,, 2, 4,425,177 4,542,579 4,451,591 4,548,613 4,83,99 5,245,539 6,124,689 6,342,477 6,436,251 6,1

< CA8CF C58E5A92E88C8B89CA C8E8CF6955C816A2E786C73>

市場と経済A

< CA8CF C58E5A92E88C8B89CA C8E8CF6955C816A2E786C73>

<4D F736F F D BC817A E937888D38CA C482C682EA816A>

税源配分及び財政調整 < 税源配分 > 特別区と大阪府の事務分担に応じて財源を配分するとともに 特別区間の税源偏在の解消を図るために必要な税財源を大阪府の税源として配分 特別区税 大阪府が賦課徴収する税を除く市町村税( 個人市町村民税 市町村たばこ税 軽自動車税等 ) 大阪府税 市町村税のうち法人市

1. 財政状況の年度推移 ( 一般会計 ) (1) 決算概況 ( 単位 : 億円 ) グラフの解説 一般会計の歳入 歳出の規模は増加傾向にあり 平成 27 年度の決算規模は 歳入 歳出ともに過去最大規模となっています 実質収支は 黒字を継続しており 27 年度は約 49 億円 前年度と比べると約 1

< CA8CF C58E5A92E88C8B89CA C8E8CF6955C816A2E786C73>

報告事項     平成14年度市町村の決算概要について

<4D F736F F D A6D92E8817A95BD90AC E937895EF8A87944E8E9F8DE096B195F18D908F912E646F63>

1. 復興基本法 復興の基本方針 B 型肝炎対策の基本方針における考え方 復旧 復興のための財源については 次の世代に負担を先送りすることなく 今を生きる世代全体で連帯し負担を分かち合うこととする B 型肝炎対策のための財源については 期間を限って国民全体で広く分かち合うこととする 復旧 復興のため

歳入総額 区分 平成 年度の財政フレーム ( 単位 : 百万円 ) 30 年度 31 年度 合計 構成比 構成比 構成比 263, % 265, % 529, % 一般財源特別区税特別区交付金その他特定財源国 都支出金繰入金特別区債 167

市場と経済A

2 決算収支 実質収支は 59 億 63 百万円の黒字で 11 年連続で全団体黒字となった 単収支は 9 億 92 百万円の黒字となった また 赤字団体は35 団体中 15 団体となり 前と比べて8 団体減少した 実質単収支は 189 億 82 百万円の赤字となり 前と比べて41 億 47 百万円赤

<87542D DCE93FC82CC8FF38BB52E786C73>

15 小郡市 将来負担比率の状況と推移 将来負担比率 平成 21 年度 118.0% 平成 22 年度 102.9% 平成 23 年度 平成 24 年度 81.4% 92.7% 81.4% 平成 25 年度 76.4% 将来負担比率は 地方公社や損失補償を行っている出資法人等に係るものも含め その地

健全化比率及び資金不足比率の状況について 地方公共団体の財政の健全化に関する法律 により 藤枝市の健全化判断比率及び資金不足比率につい て 以下のとおり算定しました これは 平成 19 年 6 月に公布された上記法律に基づき 毎年度 監査委 員の審査に付した上で 議会に報告及び公表するものです 本市

(1) 市税 1 個人市民税 12,, 9, 1,, 75, 8,, 6, 6,, 45, 4,, 3, 2,, 15, 4,518,685 4,345,532 4,24,78 4,425,177 4,542,579 4,451,591 4,548,613 4,83,99 5,245,539 6,1

市場と経済A

市場と経済A

平成26年版 特別会計ガイドブック

PowerPoint プレゼンテーション

1 北九州市 実質公債費比率の状況と推移 11.4% 10.8% 実質公債費比率 平成 21 年度 9.9% 平成 22 年度 11.7% 平成 23 年度 11.4% 平成 24 年度 10.8% 平成 25 年度 10.5% 実質公債費比率は その地方公共団体の一般会計等が負担する元利償還金等の

1 北九州市 実質公債費比率の状況と推移 11.8% 12.6% 実質公債費比率 平成 24 年度 10.8% 平成 25 年度 10.5% 平成 26 年度 11.8% 平成 27 年度 12.6% 平成 28 年度 13.7% 実質公債費比率は その地方公共団体の一般会計等が負担する元利償還金等

3. 同意要件との関係宿泊税について 不同意要件に該当する事由があるかどうか検討する (1) 国税又は他の地方税と課税標準を同じくし かつ 住民の負担が著しく過重となること 1 課税標準宿泊行為に関連して課税される既存の税目としては 消費税及び地方消費税がある 宿泊税は宿泊者の担税力に着目して宿泊数

1 北九州市 将来負担比率の状況と推移 将来負担比率 平成 20 年度 171.8% 平成 21 年度 173.5% 平成 22 年度 平成 23 年度 166.9% 166.0% 166.9% 平成 24 年度 170.3% 将来負担比率は 地方公社や損失補償を行っている出資法人等に係るものも含め

<4D F736F F D208DE090AD97708CEA82CC89F090E02E646F6378>

< C8E C8E DA8E9F C95742E786C73>

平成26年版 特別会計ガイドブック

29 那珂川町 実質公債費比率の状況と推移 4.6% 4.0% 実質公債費比率 平成 23 年度 5.6% 平成 24 年度 5.1% 平成 25 年度 4.6% 平成 26 年度 4.0% 平成 27 年度 3.6% 実質公債費比率は その地方公共団体の一般会計等が負担する元利償還金等の額を その

15 小郡市 13.9% 13.5% 比較する財政の規模 ( 分母 ) の内訳について 計算式 : 標準財政規模 (c) - 算入公債費等の額 (b) 標準財政規模 (c) の内訳 ( 単位 : 千円 %) H22 決算 H23 決算 H24 決算 H25 決算 標準税収入額等 7,265,856

各種財政分析指標の解説

平成 30 年 (2018 年 )9 月 20 日 財政局 平成 29 年度決算に基づく健全化判断比率等の状況について 地方公共団体の財政の健全化に関する法律 に基づき 平成 29 年度決算に基づく健全化判断比率及び資金不足比率を算定いたしましたのでお知らせします 健全化判断比率については すべての

地方公共団体財政健全化法

<4D F736F F F696E74202D208C888E5A8E518D6C B835E8F F4390B3817A205B8CDD8AB B83685D>

☆表紙・目次 (国会議員説明会用:案なし)

47 大木町 実質赤字比率及び連結実質赤字比率の状況と推移 22.96% 実質赤字比率は 地方公共団体の一般会計等を対象とした実質赤字額の標準財政規模に対する比率で 福祉 教育等を 行う地方公共団体の一般会計等の赤字の程度を指標化し 財政運営の悪化の度合いを示す指標ともいえます 連結実質赤字比率は

1. わたしたちと税のかかわりについて考えてみよう 1 わたしたちの身の回りには, さまざまな税とのかかわりがあります ( 注 ) 住民税とは 道府県民税と市町村民税を合わせた呼び方です みんなで調べてみよう! 他にはどんな税があるのだろう? これらの税は, だれが, どんな方法で, どこに納めるの

「経済政策論(後期)」運営方法と予定表(1997、三井)

2 主な歳入 ( 総合予算編成団体 ) 地方税は, 市町村民税の増加により10.2% の増 ( 地財計画では+15.7%) となっている 地方譲与税は, 所得譲与税の廃止により55.7% の減 ( 地財計画では 81. 0%) となっている 地方交付税は, 税収の伸び等により6.4% の減 ( 地財


14 中間市 実質赤字比率及び連結実質赤字比率の状況と推移 7.65% 実質赤字比率は 地方公共団体の一般会計等を対象とした実質赤字額の標準財政規模に対する比率で 福祉 教育等を 行う地方公共団体の一般会計等の赤字の程度を指標化し 財政運営の悪化の度合いを示す指標ともいえます 連結実質赤字比率は 地

Microsoft PowerPoint - 愛知県本命 2010[1].pptx

57 みやこ町 実質赤字比率及び連結実質赤字比率の状況と推移 9.49% 実質赤字比率は 地方公共団体の一般会計等を対象とした実質赤字額の標準財政規模に対する比率で 福祉 教育等を 行う地方公共団体の一般会計等の赤字の程度を指標化し 財政運営の悪化の度合いを示す指標ともいえます 連結実質赤字比率は

地方分権の推進に関する意見書 豊かな自治と新しい国のかたちを求めて 地方財政自立のための 7 つの提言 平成 18 年 6 月 7 日地方六団体 全国知事会全国都道府県議会議長会全国市長会全国市議会議長会全国町村会全国町村議会議長会

資料 2-2 財政制度等審議会財政投融資分科会 編成上の論点 地方公共団体 平成 26 年 11 月 28 日財務省理財局

平成19年度分から

<4D F736F F D208E9197BF FC90B38A E937D91E58D6A816A2E646F63>

消費税率引上げ時期の変更に伴う税制上の措置

1 地域主権改革 Q1-6 市町村の人口規模はどのぐらいが適正かについて どういう議論があるのですか A1-6. 市町村の適正な人口規模について 大阪府自治制度研究会 においては 次のような検証 とりまとめがされています 検証 効率的な行政運営 備えるべき組織体制 望ましい行政サービス提供の 3 つ

~ わかりやすい決算報告をめざして ~ 市ではさまざまな事業を行っています どのような事業を行うのか 資金調達はどうするか どのように支出するかを 歳入 歳出 という形でお金で表し とりまとめた計画が 予算書 です その予算に沿って事業を行った一年間の結果を報告したものが 決算書 です 決算書 には

PowerPoint プレゼンテーション

<30302D B4C8ED294AD955C8E9197BF2E786C73>

県医労.indd

54 赤村 実質赤字比率及び連結実質赤字比率の状況と推移 1.59% 実質赤字比率は 地方公共団体の一般会計等を対象とした実質赤字額の標準財政規模に対する比率で 福祉 教育等を 行う地方公共団体の一般会計等の赤字の程度を指標化し 財政運営の悪化の度合いを示す指標ともいえます 連結実質赤字比率は 地方

目 次 1. 作成の目的 P2 2. 推計方法 P2 3. 歳入の推移 P4 4. 歳出の推移 P5 5. 歳入歳出の比較 P6 6. 基金の状況 P7 7. 地方債残高の状況 P8 8. 経常収支比率の状況 P9 9. 実質公債費比率の状況 P まとめ P11-1 -

<4D F736F F F696E74202D20819A DC58F49819A32328C888E5A8E518D6C B835E8F572E B8CDD8AB B83685D>

道州制基本法案(骨子)

3 国 道州 基礎自治体の役割と権限 役割分担については 次のような意見があった 中間報告に国の役割として挙げられている16 項目については限定列挙とする意見と16 項目は例示であり さらに役割分担を考えていくべきとの意見があった 例えば 国土政策 農林政策 教育等は国 地方が協力して対処する問題が

16 筑紫野市 22.91% 実質赤字比率及び連結実質赤字比率の状況と推移 実質赤字比率は 地方公共団体の一般会計等を対象とした実質赤字額の標準財政規模に対する比率で 福祉 教育等を 行う地方公共団体の一般会計等の赤字の程度を指標化し 財政運営の悪化の度合いを示す指標ともいえます 連結実質赤字比率は

平成 24 年度国民健康保険税税率改定案 1 医療保険分 ( 基礎課税額 ) 現行 改定 増減 伸率 所得割額 4.30 % 4.63 % % 資産割額 % 9.80 % % 税率等 均等割額 17,100 円 18,000 円 900 円 5.3%

< E9197BF C CA794EF BB F582CC8B8B975E CC88DA8FF782C982C282A282C42E786477>

PrimoPDF, Job 20

市税収入額(人口推移)

02企画 林宏昭③.indd

「経済政策論(後期)《運営方法と予定表(1997、三井)

3 車体課税 自動車取得税の見直し 自動車取得税の税率 ( 一定税率 ) を以下のとおり引下げ ( 平成 26 年 4 月 1 日以降 ) 自家用自動車 ( 軽自動車を除く ) 5%( ) 3%( ) 営業用自動車 軽自動車 3%( ) 2%( ) いわゆる エコカー減税 について 環境性能に優れた

平成19年度税制改正.xls

平成21年度普通交付税交付基準額(※)について【概要】

第2回税制調査会 総2-2

参考 平成 27 年 11 月 政府税制調査会 経済社会の構造変化を踏まえた税制のあり方に関する論点整理 において示された個人所得課税についての考え方 4 平成 28 年 11 月 14 日 政府税制調査会から 経済社会の構造変化を踏まえた税制のあり方に関する中間報告 が公表され 前記 1 の 配偶

第6回税制調査会 総6-3

山形県庄内町平成 28 年 11 月 ( 訂正版 ) 平成 26 年度決算に基づく健全化判断比率 地方公共団体の財政の健全化に関する法律第 3 条第 1 項の規定により 健全化判断比率を公表 いたします 健全化判断比率は 自治体の財政が健全かどうかを表す指標です 地方公共団体の財政の健全化に関する法

P10 第 2 章主要指標の見通し 第 2 章主要指標の見通し 1 人口 世帯 1 人口 世帯 (1) 人口 (1) 人口 平成 32 年 (2020 年 ) までの人口を 国勢調査 ( 平成 7 年 ~22 年 ) による男女各歳人口をもとにコーホー 平成 32 年 (2020 年 ) までの人口

平成18年度地方税制改正(案)について

Transcription:

資料 1 税財政制度を通じた論点 Ⅰ 現状と課題 1. 地方財政の財政の概要 地方財政の平成 23 年度決算は 歳入約 100.1 兆円 歳出 97.0 兆円となっている なお 借入金残高は約 200.4 兆円と依然と高い水準にある 国と地方における最終支出ベースにおける比率は 42:58 となっているが 国民が負担する租税収入の配分の比率は 55:45 と逆転している 両者の間には乖離があり 国から地方へ地方交付税や国庫支出金等を通じた財政資金の移転がなされている 我が国の地方財政制度は 地方公共団体が標準的な行政水準を確保できるように 地方税のほかに 地方財政計画の策定と地方交付税制度 さらには地方債制度を通じて地方財源を保障する仕組みとなっている 2. 地方交付税制度 地方交付税制度には 自治体が行政サービスを行う財源を保障する財源保障機能と それを通じて自治体間の財政力格差を調整する財政調整機能がある 地方交付税交付金は いわば国が地方に代わって徴収する地方税 ( 地方の 固有財源 ) であり 地方自治体にとって 地方税と並んで重要な歳入 ( 一般財源 ) である しかし 自治体の財政需要の総額が膨らんでいるにもかかわらず 地方交付税の原資 ( 国税 5 税の一定割合 ) が不足しているため 近年では 国の一般会計からの加算や地方債 ( 臨時財政対策債 ) の増発によって穴埋めされている 所得税 酒税の 32% 法人税の 34% 消費税の 29.5% たばこ税の 25% ( 諸外国との比較 ) アメリカを除く主要国においては 自治体間の財政力格差や財政需要格差を調整するため財政調整制度が設けられている 日本 : 国による垂直調整により自治体間の収入格差のみならず需要格差も是正 イギリス フランス : 国が税源の大宗を持った上で 基本的に全ての団体を対象に した ( 不交付団体をつくらないかたちで ) 国による垂直調整 ドイツ スウェーデン : 地方が国と同程度の財源を持った上で 国による垂直調整 および自治体間の水平調整 諸外国では 財政調整目的で交付される一般交付金の総額は 法律により規定 ( ドイツ フランス ) または行政府の政策判断により毎年の額を決定 ( イギリス スウェーデン ) している 我が国では 法律に規定 ( 国税 5 税の一定割合 ) されている一方で 地方財政計

画上の財源不足額を基礎として加算額が決定されてきており 法律と政策判断の両方により決定している 財政調整の手法は 一人当たりの税収等の財政力 ( 歳入面 ) を考慮する手法 ( ドイツ フランス カナダ ) と 行政コスト ( 需要面 ) を考慮する手法 ( イギリス スウェーデン 日本 ) に大別できる なお イギリスやスウェーデンでは 自治体間の相対的なコスト差を基準に交付金額を算定しており 日本のように 社会経済情勢の変化に伴い必要となる 標準的な行政水準 が変化すれば各自治体の基準財政需要を増加する仕組みではない 3. 地方税制度 ( 地方税の構成等 ) 我が国の地方税の構成は 道府県で所得課税 61.1% 消費課税 36.5% 資産課税等 2.4% 市町村で所得課税 42.7% 消費課税 5.4% 資産課税等 51.9% となっている ( 平成 23 年度決算額 ) 諸外国の地方税は 資産課税を中心としているイギリス フランス アメリカ カナダと 個人所得課税を中心としているスウェーデン ドイツとに大きく二分されている なお 連邦制国家の州税 ( ドイツ アメリカ カナダ ) は 個人所得課税に加え消費課税の比重も大きくなっている 我が国の租税制度では 国税と地方税で課税ベースがかなり重複しているのが特徴となっている 諸外国では 中央政府と地方政府での課税ベースの棲み分けが進んでいるが 我が国では課税ベースが重複しているにもかかわらず ドイツやカナダのような一体徴収は殆どなされていない * 我が国では 消費税と地方消費税は国が 個人住民税は市町村が道府県税分を一体 徴収している 我が国における地方税の一人当たりの税収額の格差は 最大の東京都と最小の沖縄県との間で 2.5 倍となっており 税目別では個人住民税で 2.9 倍 地方法人二税で 5.3 倍 地方消費税 ( 清算後 ) で 1.8 倍 固定資産税で 2.3 倍の格差がある ( 平成 23 年度決算額 ) ( 税率の設定等 ) 我が国では 国が地方税率について制限税率と標準税率を設定しているが 地方債発行を巡る枠組みや地方交付税制度における基準財政収入額が標準税率をベースに算出されるため 標準税率が事実上の下限として機能している こうした仕組みは 過度な地方債の発行を通じて将来の住民や他の地域の住民に税負担を転嫁することを避けるためとされている また 自治体間の税率引き下げによる租税競争が激化すれば公共サービスの過小化をまねきかねないとの指摘もある なお 諸外国では 上位政府が法令等で地方税率の下限を設定している国は少なくないが 我が国のように政府による起債制限と財政調整の仕組みにより地方税率に下方硬直性が生じやすくなっている例は 他の主要国には見

当たらない 連邦制国家であるアメリカ カナダの州は 単一制国家の地方自治体に比べ 広範な課税権が付与されており 州税は州自らが州法により定めている 但し 輸出入税や間接税の禁止など一部に憲法の制限がある また ドイツの州税は連邦法で規定されているが 州税に関する連邦法の制定には州の代表からなる連邦参議院の同意が必要とされている 税率設定権は ドイツの州を除く全ての国で 主要税目について認められているが 税率は自治体毎に異なる 特にイギリス スウェーデンの全ての自治体と アメリカ カナダの地方政府の多くは 一般会計の収支を地方税率の調整によって均衡させることが義務付けられており 自治体の歳出水準に応じ 税率は毎年変更される ただし イギリスは国が自治体に対し税率制限を行う権限を有しており 制限を受けた自治体は歳出削減して収支を均衡させる必要がある また アメリカやカナダの地方政府も一部の州で州法による税率制限が課されている 4. 地方債制度 地方債の元利償還金は 国において各年度の地方財政計画に計上され 地方交付税制度を通じて償還財源が保障される仕組みとなっている 地方債の発行は 地方分権一括法の施行に伴い平成 18 年度に 許可制 から 事前協議制 へ移行し 公的資金の借り入れや元利償還金の地方財政計画への算入は同意が得られた地方債についてのみ認められている なお 国は 毎年度 協議における同意基準及び地方債計画を作成し公表している 国による関与の特例として 赤字団体 実質公債比率の高い団体 標準税率未満の団体などは許可を受けなければならないことになっている なお 地方公共団体の財政状況を統一的な指標で明らかにし 財政の健全化や再生が必要な場合に迅速な対応を取るために 地方公共団体の財政の健全化に関する法律 が平成 21 年に施行された 地方財政における借入金残高は 平成 25 年度末で 201 兆円と見込まれている その内訳は 交付税特別会計借入金残高 ( 地方負担分 )33 兆円 公営企業債残高 ( 普通会計負担分 )22 兆円 地方債残高 145 兆円 ( うち臨時財政対策債 45 兆円 ) となっている 減税による減収の補填 景気対策等のための地方債の増発等により 平成 3 年度から 2.9 倍 131 兆円の増となっている 諸外国では フランスは事前許可制度 イギリスは中央政府による起債許可制度 連邦制国家であるドイツ アメリカ カナダは州政府が市町村等の地方債発行を許可の対象としている しかし これらの国における中央政府や州政府による起債許可の条件には 市町村等が地方税率を一定水準以上に維持することは含まれておらず 我が国のように標準税率制度が地方債制度と連動したかたちにはなっていない

Ⅱ 論点 ( 役割分担 税体系 ) 国 道州 基礎自治体における税財政制度の検討にあっては 財源と権限はセットで考えるべきであり それぞれの役割と権限に見合った財源を確保できるよう まずは役割分担を明確にした上で 受益と負担の関係にも着目し 税源配分すべきではないか ナショナルミニマムの確保など国が最終的に責任をもつべき制度については その財源保障は税源移譲ではなく 国からの負担金 交付金によるべきか また 財政の所得再分配機能や景気対策の役割をどこが担うかによって 国 道州 基礎自治体への税目の割り振りが変わりうるのではないか 住民に身近な行政サービスを提供する基礎的自治体や広域行政を担う道州が財政的に自立し必要な財源を確保するために 消費税を地方の基幹税にするなど 偏在性が小さく安定性を備えた税体系の構築が必要ではないか 我が国では 国税 地方税で課税ベースがかなり重複していることから その再構築の検討とあわせて 地方歳入庁の創設や国税 地方税の一体徴収 特別徴収の推進など国 地方を通じた徴税組織 徴収方法を検討することで 納税者利便の向上とともに 徴税コストの効率化を図るべきではないか [ 参考 ] 税務職員数 (H23 年度 ): 国税庁 56,293 都道府県 18,170 市町村 53,734 国 地方を通じて税収が不足するなかで 単純に道州に税源を移譲するだけで必要な財源が確保できるか 道州 基礎自治体が自立した自治体となるためには 国 道州 基礎自治体の望ましい税体系 ( 基幹税目 ) はどのようなものが考えられるか ( 課税自主権 ) 道州 基礎自治体において自主性 自立性を発揮するため 税率設定など課税自主権をどこまで認めるのか 課税自主権を拡大した場合 税制の仕組みが混乱し 国と地方 道州や基礎自治体の間で 租税競争や二重課税の調整など課税権を巡る争いが生じる恐れはないか また 課税自主権の尊重と公平な財政調整の仕組みのあり方についてどう考えるか なお 租税法定主義のもとにおいて 地方分権や地方自治の観点から地方の課税自主権の拡大を制度的に保障するためには 関係法令の抜本的な見直しが必要ではないかとの意見がある ( 参考26 神奈川県臨時特例企業税に係る訴訟判決 参照 ) ( 財政調整 ) 都市部に税源が偏在している現状を踏まえ 道州間および道州内の財政調整制度はどのようなものにすべきか 我が国のように一人当たりの税収に大きな地域間格差がある場合は 道州

間の水平的な財政調整制度は 道州間での争いが生じるおそれがあるが 上手く機能するか また 道州内の基礎自治体に対する財政調整は 道州による垂直調整または大都市を中心とする水平調整で上手く機能するか もしくは 国による全国的な財政調整が必要か ( 国債 地方債等 ) 道州 基礎自治体における地方債発行の仕組みはどのようにすべきか また 現在のような事実上の国の保障がなくても 市場からの安定的な資金調達は果たして可能か 国から道州に 都道府県から市町村に その事務 権限のほとんど移譲した場合に 1,000 兆円 ( うち国債残高約 830 兆円 ) を超える国の債務や都道府県の地方債償還の取扱いはどうするのか 道州が国の資産を買い取り その債務を償還するとの意見があるが果たして可能か その場合は 都道府県と市町村においても同様とするのか 逆に 債権者保護の観点から国が引き続き償還事務を行う場合には 国に安定的な償還財源を残す必要があると思われ 道州への財源移譲が進まないのではないか 国から事務 権限の大幅な移譲に応じて それに係る特別会計のあり方について見直しが必要ではないか