12 1 体幹部定位放射線治療の技術的問題点 ~ 動体追跡照射における体幹部定位放射線治療 ~ 北里大学病院江川俊幸 KITASATO UNIVERSITY HOSPITAL 1 1

Similar documents
治療計画装置の品質管理

報告書

放射線治療の流れ (1) 診察 (2) CT* 撮像 ( 治療計画の元になる ) (3) 治療計画 ( 治療シミュレーション ) 放射線治療の目的 : 腫瘍にできるだけ 多くの線量を照射し, 正常組織には 線量を可能な限り減らすこと (4) 患者セットアップ ( 治療計画に従って, 患者さんを固定す

Microsoft PowerPoint UM.ppt [互換モード]

Microsoft Word - 01_巻頭言.docx

Microsoft Word - 01_巻頭言.docx

1 ガンマナイフにおけるQAガイドラインの必要性

untitled

<4D F736F F F696E74202D208BDF8B EF F837C814091E58AE22E >

0 21 カラー反射率 slope aspect 図 2.9: 復元結果例 2.4 画像生成技術としての計算フォトグラフィ 3 次元情報を復元することにより, 画像生成 ( レンダリング ) に応用することが可能である. 近年, コンピュータにより, カメラで直接得られない画像を生成する技術分野が生

0.45m1.00m 1.00m 1.00m 0.33m 0.33m 0.33m 0.45m 1.00m 2


PowerPoint プレゼンテーション

Ingenia と Achieva 北野病院井上秀昭 第 16 回関西ジャイロミーティング

加振装置の性能に関する検証方法 Verification Method of Vibratory Apparatus DC-X デジタルカメラの手ぶれ補正効果に関する測定方法および表記方法 ( 光学式 ) 発行 一般社団法人カメラ映像機器工業会 Camera & Imaging Pr

総論-Ⅱ.indd

XiO Inside

第01章-放射線治療計画ガイドライン.indd

標準計測法 12 の概要 名古屋大学大学院医学系研究科小口宏 始めに国の計量法においてグラファイトカロリーメータおよびグラファイト壁空洞電離箱が 平成 24 年 7 月 15 日の官報告示によって水吸収線量の特定標準器として指定された これを受けて日本医学物理学会では 外部放射線治療における水吸収線

cm H.11.3 P

陽子線治療における呼吸性移動標的内の深部線量分布評価

² ² ² ²

untitled

円筒面で利用可能なARマーカ

Fig. 6 Convolution 法と Superposition 法による KERNEL の相違 モデルベースアルゴリズムでは, 計算された TERMA と KERNEL を重畳積分することで人体内吸収線量分布を 算出する 5). 従って, モデルベースアルゴリズムは不均質領域における 1 次

平成 28 年 6 月 3 日 報道機関各位 東京工業大学広報センター長 岡田 清 カラー画像と近赤外線画像を同時に撮影可能なイメージングシステムを開発 - 次世代画像センシングに向けオリンパスと共同開発 - 要点 可視光と近赤外光を同時に撮像可能な撮像素子の開発 撮像データをリアルタイムで処理する

後抄録_CSFRT2013.indd

CSR レポート 2009

総論-Ⅴ.indd

Microsoft Word - 卒業論文 筒井final.docx

EP760取扱説明書

X 線 CT における らせん穴あきファントム を用いたスライス厚測定 鹿山清太郎 (1) 伊藤雄也 (1) 山際寿彦 (1) 丹羽正厳 (1), (2) 富田羊一 (1), (3) 辻岡勝美 (4) 加藤良一 (4) 1) 藤田保健衛生大学大学院保健学研究科医用放射線科学領域 2) 市立四日市病院

Step1 Excel Excel book TMR Excel TMR ( ) PDD TMR RTP RTP PDD TMR Excel RTP PDD TMR 10cm 5611cm TMR 1000 P089 Fig347 TMR 2

Microsoft PowerPoint - 発表II-3原稿r02.ppt [互換モード]

Taro13-芦北(改).jtd

放射線治療計画ガイドライン2016年版

線形システム応答 Linear System response

【○資料1-2】①アナログ式口外汎用歯科X線診断装置等基準

...J QX

Taro13-宇城(改).jtd

からだにeヘルシーレシピ 高血圧

【資料3-1】認証基準_認証基準改正の概要

連続講座 断層映像法の基礎第 34 回 : 篠原 広行 他 放射状に 線を照射し 対面に検出器の列を置いておき 一度に 1 つの角度データを取得する 後は全体を 1 回転しながら次々と角度データを取得することで計測を終了する この計測で得られる投影はとなる ここで l はファンビームのファンに沿った

教育講演 放射線治療における位置的不確かさの影響 ずれるとどうなる 都島放射線科クリニック / 大阪大学塩見浩也 放射線治療を確実に施行するためには, 安全なマージンの設定が不可欠である. ターゲットの設定は,ICRU report 50, 62 3) で規定されている肉眼的腫瘍体積 (GTV; g

本日話す内容

PowerPoint プレゼンテーション

ドローンを用いたほ場計測マニュアル (不陸(凹凸)編)


【資料1-2】脳神経外科手術用ナビゲーションユニット基準案あ

4DCTを用いたITV(internal target volume)の検討

untitled

連続講座 断層映像法の基礎第 32 回 : 篠原広行 他 断層映像法の基礎 第 32 回 ML-EM 法と OS-EM 法 篠原広行 1) 桑山潤 1) 小川亙 1) 2) 橋本雄幸 1) 首都大学東京人間健康科学研究科放射線科学域 2) 横浜創英短期大学情報学科 はじめに第 31 回では繰り返しを

と 測定を繰り返した時のばらつき の和が 全体のばらつき () に対して どれくらいの割合となるかがわかり 測定システムを評価することができる MSA 第 4 版スタディガイド ジャパン プレクサス (010)p.104 では % GRR の値が10% 未満であれば 一般に受容れられる測定システムと

多摩のかけはしNo98 表1表4色

PISA

untitled

橡07第1章1_H160203_.PDF

放射線照射により生じる水の発光が線量を反映することを確認 ~ 新しい 高精度線量イメージング機器 への応用に期待 ~ 名古屋大学大学院医学系研究科の山本誠一教授 小森雅孝准教授 矢部卓也大学院生は 名古屋陽子線治療センターの歳藤利行博士 量子科学技術研究開発機構 ( 量研 ) 高崎量子応用研究所の山

スライド 1

tottori2013-print.key

豪雨・地震による土砂災害の危険度予測と 被害軽減技術の開発に向けて


) km 200 m ) ) ) ) ) ) ) kg kg ) 017 x y x 2 y 5x 5 y )

スライド タイトルなし

505_切削オーバーレイ

XiO ベーシックトレーニング II

デントモード TMJ 撮影だけにとどまらない 3D を次のステージへ オーラルモード ( 上下合成 ) 自然咬合 X-era Smart F+ は 3D 診断による 安心 を提供します 3D

臨床画像技術学Ⅱ

Microsoft PowerPoint - H24全国大会_発表資料.ppt [互換モード]

直樹卒業論文

スライド 1

Microsoft Word - NJJ-105の平均波処理について_改_OK.doc

Microsoft PowerPoint - pr_12_template-bs.pptx

スライド 1

108

Transcription:

体幹部定位放射線治療の技術的問題点 ~ 動体追跡照射における体幹部定位放射線治療 ~ 北里大学病院江川俊幸 1 1

動体追跡照射 RTRT Real-time Tracking Radio Therapy Gold Marker 1.5mm RTRT SYSTEM MITSUBISHI LINAC MHCL-15TP MITSUBISHI 位置確認透視装置 SHIMADZU 2 2

動体追跡照射とは? 病巣の近傍に金属 ( 金 ) マーカを埋め込み 呼吸による病巣の動きをマーカで捕らえ照射 病巣の動きとマーカの動きが同じであることが前提に成り立つ照射 病巣に対しての位置精度が優れる 3 3

原理 ( 迎撃照射 ) 病巣 照射時マーカ位置 計画時マーカ位置 Beam on Beam off 4

動体追跡照射の流れ QA,QC シミュレーション 患者診察 気管支鏡 No Yes RTRT 適応か否か? Yes Yes 金マーカ挿入 マーカ同士の重なりに配慮し 4 個挿入 40 分 ~50 分 位置決め CT 1 日後 MDCT にて撮影 呼気停止 吸気停止撮影 20 分 ~30 分 治療計画 No 不可により No 他の治療 呼吸停止照射 3D 原体照射 分割照射 など No レーザ 治療装置 RTRT システム ビーム方向の確認 線量検証など 60 分 Yes GTV(CTV) 及びマーカ位置の設定 40 分 ~60 分脱落により No マーカ位置確認 SDCT 10 分 RTRT リニアックグラフィーによる位置照合 20 分 RTRT 20 分 ~40 分 5

位置決め 治療計画画像取得 6

計画画像取得 ( 位置決め CT 撮影 ) MDCT(16 列 ) にて撮影安静呼気停止時で全肺野撮影 実際の RTRT 照射時を想定 呼吸性移動評価安静吸気停止時で全肺野撮影 ( 吸気時 呼気時での呼吸性移動を確認 ) 7 7

アイソセンター位置の変化 治療計画時のアイソセンター位置と照射時のアイソセンター位置の比較 ( テーブルポジションより算出 ) 左右方向 頭尾方向 前後方向 A 0.5 6.5 1.3 B 0.7 2.3 5.0 C 5.4 1.9 0.3 D 4.8 17.2 14.5 E 4.3 2.2 11.0 位置決め時は照射時に比べ呼吸性移動が大きい声かけによる合図が原因? 8

呼吸性移動を考慮した位置決め撮影 吸気 呼気 吸気時撮影息を吐いて止めてくださいではなく 赤い所で止めましょうと合図 呼吸量モニタリング装置を使用 照射時の呼吸状態を想定した呼吸管理 患者自らが呼吸量をコントロールできる ( 患者参加型装置 ) 9

治療計画 planning 10

治療計画 基本ビーム 5 門照射 (coplanar3 門 non-coplanar2 門 ) 1200cGy/day 4 回 Total 4800cGy 患側側でビーム処方を基本 例 coplanar ビーム non-coplanar ビーム スターを形成するように計画 11

治療計画 治療計画 : 安静呼気停止時の CT 画像にて Plan 病巣 = GTV (CTV) GTV (CTV) + IM + SM = PTV (IM + SM =1.0cm) PTV+ リーフマージン (5.0mm)= 照射野 PTV の辺縁線量を確保 12 12

治療計画 治療計画装置 Pinnacle 不均質補正にて線量計算 線量計算アルゴリズム CC Convolution 法 (Convolution/Superposition) 計算グリッドサイズ 2.0~2.5mm 13 13

Pinnacle の線量計算アルゴリズム Pinnacle における Convolution はすべて Convolution Superposition 法 1 次線の密度補正と 1 次線が入射した後に発生する散乱線 (2 次散乱 ) の密度補正を考慮して線量計算をおこなう 通常の Convolution 法は 1 次線の密度補正は考慮しているが 散乱線の密度補正が厳密に考慮されていない 散乱線の寄与を考慮する散乱カーネルが密度変化に対して変形されず 水中における均一カーネルを使用する 例えば肺野などのように組織 空気のような密度変化における線量計算が厳密に成されていない Fast Convolve 1 次線および 2 次散乱の密度補正を考慮したコンボリューション スーパーポジション法 Adaptive Convolve に比べ 散乱線を計算する上で考慮する放射線の方向が少ないため Adaptive Convolve に比べて線量計算の精度が落ちる Adaptive Convolve ( 通常の治療計画に使用 ) Fast Convolve に比べ 散乱線を計算する上で考慮する放射線の方向も多く計算され 重畳積分線量計算中において 線量グリッドが 4 点ごとにサンプリングされることで 計算時間が短縮される しかし 4 点ごとのサンプリングでは十分に補間しきれない部分 ( 密度変化が激しい部分など ) に関しては 自動的に CC Convolution に切り替えて 4 点ごとのサンプリングではなく 線量グリッドすべての点がサンプリングされ 線量計算をおこなう CC Convolution 重畳積分線量計算において線量グリッドの補間によるサンプリングではなく 線量グリッドすべての点をサンプリングした線量計算となる 従って すべての線量グリッドをサンプリングすることから 最も精度よく演算されるが 線量計算時間も伸びる 日立メディコ加藤哲裕氏から提供 14 14

動体追跡照射 RTRT 15

RTRT 照射 ( 照射前確認 ) CT 撮影で基準となるマーカ位置を確認 計画時 1 日目 2 日目 3 日目 4 日目 基準金マーカ マーカ位置に変動及び脱落があった場合 基準となるマーカを変更する必要がある 16

マーカ位置の変位やマーカの脱落 治療計画時治療初日治療最終日 4 個 2 個 1 個 17 17

照射直前確認 ( セットアップ位置 ) リニアックグラフィにより アイソセンター位置 ( 骨格系位置 ) の確認をおこなう ( 正面 側面の LG を基準とする ) アイソセンター位置確認後 透視システムにて病巣位置 ( 照射位置 ) を確認をおこなう 18

照射位置確認 ( ファントム例 ) 病巣 位置合わせ 基準マーカ位置 計画時マーカ位置 セットアップ完了! ズレ値の計算 テーブル移動量 19

RTRT の照射位置確認 照射毎ごとに位置を確認 ( 位置合わせ ) をおこなうため セットアップエラーを小さくできる 但し 三次元的な位置合わせは困難 20

QA,QC シミュレーション 21

QA,QC 位置精度に関する QA,QC アイソセンター位置の確認 RTRT の計算精度 線量精度に関する QA,QC 手計算 実測による評価 ( 不均質 均質 ) 出力の変動 照射シミュレーション 22 22

回転中心位置と透視システム中心位置の確認 1 2 1 X X X I.I Gantry Gantry I.I Gantry 2 X 金マーカ I.I I.I X 3 I.I I.I X 4 管球位置 1,2 管球位置 1,3 管球位置 2,4 23

回転中心位置と透視システム中心位置の確認 アイソセンター位置に直径 1.5mm の金球を正確に配置し 全ての透視方向にて撮像し 位置計測機能によって計られる金球の三次元座標が 0±1mm であることを確認 単位 :mm X Y Z 共通垂線 透視位置 12 0.3-0.8 0.1 0.2 透視位置 13-0.2 0.6 0.5 0.4 透視位置 24-0.6 0.0 0.1 0.4 24

透視システムのキャリブレーション 校正用キュービックファントム三次元座標のキャリブレーションをおこない 透視装置から得られる金球の三次元座標が ±1mm 以内であることを確認する 25

線量評価 手計算よる MU 値の評価 測定ベース手計算シート使用し RTPS 算出 MU と比較 不均質補正時 不均質時の effect depth で計算 均質補正変換時不均質から均質に変換し 体厚の depth で線量計算 実測による MU 値の評価 均質 depth および不均質 depth で測定 26 26

線量評価 ( 手計算との比較 ) 任意 5 門 (coplanar3 門 non-coplanar2 門 ) 1200cGy(240cGy 5 門 )/day 4 回 不均質 深さ (cm) AP LPO45 RPO45 IROT90 INF30 5.04 5.15 IROT90 SUP40 4.97 5.01 4.58 Total 4800cGy 計画 MU 288 280 279 294 288 手計算 MU 279 280 278 279 274 線量差 3.1% 0.0% 0.4% 5.1% 4.9% 均質 AP LPO45 RPO45 IROT90 INF30 深さ (cm) 14.78 5.95 5.66 17.28 IROT90 SUP40 14.29 計画 MU 409 283 280 456 401 手計算 MU 411 288 285 458 404 線量差 0.5% 1.7% 1.8% 0.4% 0.7% 27 27

1 門あたり 240cGy 不均質 線量評価 ( 実測との比較 ) AP LPO45 RPO45 IROT90 INF30 IROT90 SUP40 深さ (cm) 5.04 5.15 4.97 5.01 4.58 実測 cgy 250 241 242 255 254 線量差 3.9% 0.5% 0.9% 5.9% 5.5% 均質 AP LPO45 RPO45 深さ (cm) 14.78 5.95 5.66 IROT90 INF30 IROT90 SUP40 17.28 14.29 実測 cgy 239 237 236 241 240 線量差 -0.4% -1.4% -1.5% 0.4% 0.1% 実測は RTPS にて決定した不均質での depth を使用例 :Effect depth3.0cm なら水 3.0cm で測定 28 28

出力の変動評価 動体追跡照射時の出力検証 マーカ マーカの付いた円盤を回転させ 動体追跡照射時の出力をチェックする 29

体幹部定位放射線治療のKey point 動体追跡照射における呼吸性移動の対策治療時の呼吸状態を再現した 治療計画画像の取得( 位置決めCT 撮影 ) 治療計画( 標的設定 ) 患者さまの協力が絶対不可欠 どんな高精度で高額な機器を使用しても 患者さまの協力がなければ体幹部定位放射線治療は成立しない!! 30 30

動体追跡照射における体幹部定位放射線治療 固定具 特に必要なし照射毎に位置の確認ができる 位置決め CT 照射時の呼吸状態を想定し撮影 安静呼気停止時 治療計画 IM と SM を合わせ 1.0cm 照射マージンは 5.0mm 毎回のセットアップと呼吸性移動に合わせた照射 線量計算不均質補正 Convolution/Superposition 法 照射 QA QC 多門照射 (3D) 当院では 5 門にて照射 アイソセンター中心と RTRT システム ( 透視システム ) 中心の一致確認 MU 値の評価 31 31

ご清聴ありがとうございました! E-mail t-egawa@kitasato-u.ac.jp 32 32