湿気させない粉薬の保管方法 北療育医療センター -31-
テーマ名北療育医療センター湿気させない粉薬の保管方法サークル名しけるくんとかわい太くんと仲間たちメンバー名薬剤検査科 大越すみ江倉本敦夫木内智香子村上恵美子田中香保里助清佳加代稲垣彩子池田あゆみ五十嵐玲子 1. テーマ選定理由湿度の高い夏季に服薬中止のため病棟から返却された 分包後一週間の漢方エキス顆粒製剤が変色 変質していた 利用者への内服薬が保存状態により変質することは重大な問題である そこで変質を防止するために 散薬の適切な分包方法並びに利用者に提案できる保管方法について検討を行うこととした 2. 現状と問題点漢方エキス顆粒製剤の多くは 成人の 1 回量がアルミ包装されて販売されている しかし 当院の利用者は小児並びに成人であっても体重が少なく 成人量よりも少量で処方されることが多い このため入所 入院の利用者については アルミ包装を外し 秤量 再分包をして 病棟に払い出している 入所者 入院患者の薬については1~2 週間程度の比較的短期間で使用されるため 従来 問題になることはなかった また 当院の外来患者 利用者は漢方薬以外でも散薬の長期処方を受けていることが多く 薬の保存方法については必要に応じ服薬指導を行ってきた しかし 薬は極めてデリケートなものであり 適切な空調が施されている院内でさえ 高温 多湿の夏季においては上記のような事態も起こりうることがわかった さらに外来の利用者においては 分包した散薬が自宅で保管している間に変質する可能性が高いと考えられる そこで 漢方エキス顆粒製剤を含めた散薬の適切な分包方法と 利用者に提案できる保管方法について検討を行い 安全で効果的な服薬のための情報提供を行えるようにしていく必要があると判断した 3. 改善策今回 (1)1 分包方法の比較 2 乾燥剤の有効性 3 保管容器と乾燥剤の比較 の三点について調査 検討を行った (2) これらの情報をもとに 1くすりの保存に関するパンフレット作成 2 散薬の保管袋 ( おくすり保管袋 ) の作成 を行い 散薬の変質を防止できるような保管方法について啓発活動を行った 4. 今後の取り組み ( 結果 ) パンフレットを活用した説明と 漢方エキス顆粒の小分け分包品を払い出す際に使用するための おくすり保管袋 の提供により 利用者が 自宅での薬の保管をより適切にできるようになったのではないかと考える 今後は更にホームページ上や動画等の媒体においても 薬の保管方法について広く周知できるように取り組んでいく -33-
テーマ名北療育医療センター湿気させない粉薬の保管方法サークル名しけるくんとかわい太くんと仲間たちメンバー名薬剤検査科 大越すみ江倉本敦夫木内智香子村上恵美子田中香保里助清佳加代稲垣彩子池田あゆみ五十嵐玲子 1. テーマ選定理由湿度の高い夏季に服薬中止のため病棟から返却された 分包後一週間の漢方エキス顆粒製剤が変色 変質していた 利用者への内服薬が保存状態により変質することは重大な問題である そこで変質を防止するために 散薬の適切な分包方法並びに利用者に提案できる保管方法について検討を行うこととした 2. 現状と問題点漢方エキス顆粒製剤の多くは 成人の 1 回量がアルミ包装されて販売されている しかし 当院の利用者は小児並びに成人であっても体重が少なく 成人量よりも少量で処方されることが多い このため入所 入院の利用者については アルミ包装を外し 秤量 再分包をして 病棟に払い出している 入所者 入院患者の薬については1~2 週間程度の比較的短期間で使用されるため 従来 問題になることはなかった また 当院の外来患者 利用者は漢方薬以外でも散薬の長期処方を受けていることが多く 薬の保存方法については必要に応じ服薬指導を行ってきた しかし 薬は極めてデリケートなものであり 適切な空調が施されている院内でさえ 高温 多湿の夏季においては上記のような事態も起こりうることがわかった さらに外来の利用者においては 分包した散薬が自宅で保管している間に変質する可能性が高いと考えられる そこで 漢方エキス顆粒製剤を含めた散薬の適切な分包方法と 利用者に提案できる保管方法について検討を行い 安全で効果的な服薬のための情報提供を行えるようにしていく必要があると判断した 3. 改善策今回 (1)1 分包方法の比較 2 乾燥剤の有効性 3 保管容器と乾燥剤の比較 の三点について調査 検討を行った (2) これらの情報をもとに 1くすりの保存に関するパンフレット作成 2 散薬の保管袋の作成 を行い 変質を防止できるような保管方法について啓発活動を行った (1) 調査 検討 調査 1: 分包方法の比較 漢方エキス顆粒を以下のように分包して紙箱に入れ 4 週間保管した その間 1 週ごとに外観と重量を記録した 調査の対象は 実際に変質が認められた抑肝散エキス顆粒および当院で汎用される六君子湯エキス顆粒の 2 種類とした 1ポリセロ紙を使用し 散薬分包機で分包する ( 一般的な調剤方法 ) 2 片面グラシン紙 片面ポリエチレンでパイルパッカーを用いて分包する -34-
3 ポリエチレン製のチャック付き袋に直接入れる 4 ポリセロ紙で分包したものをポリエチレン製チャック付き袋に入れる 5 漢方エキス顆粒製剤製品の包装に入れて口を折り曲げる 結果 1 いずれの製剤も どの分包方法においても 4 週間後には色が濃くなり 明らかな外観変化がみられたが 5の製品の包装は他の方法に比べて変化が少なかった ( 図 1) 重量変化についても同様で 5は重量増加が小さかった ( 図 2) このことより 短期間であれば 製品包装を用いて保管することで問題がないと考えられた 0 週 1 週後 2 週後 3 週後 4 週後 1 週後 2 週後 3 週後 4 週後 図 1:4 週間の外観変化 ( 左側 : 抑肝散エキス顆粒 右側 : 六君子湯エキス顆粒 ) 図 2:2 週後の重量変化 (g) 調査 2: 乾燥剤の有効性 変化の原因が空気中の水分によるものと仮定し 小分け分包した場合の保管時における乾燥剤の有効性を検討した ポリセロ紙で分包した漢方エキス顆粒製剤を A B の乾燥剤と共に以下の容器に3 週間保管し 重量の変化を調査した 1ポリエチレン製のチャック付き袋 ( 厚さ 0.04mm) 2ポリエチレン製のチャック付き袋 ( 厚さ 0.08mm) 3ポリエチレン製のチャック付き袋 ( 遮光タイプ ) 4スチール製の缶 -35-
5 容器 乾燥剤なし A. 生石灰 B. シリカゲル 結果 2 乾燥剤と共に保管したものは使用しなかったものに比べて重量の増加が抑えられた ( 図 3) このことから 薬剤保管時に乾燥剤を使用することは有効である 図 3:3 週後の漢方エキス製剤の重量変化 (g) 調査 3: 保管容器と乾燥剤の比較 適切な保管容器と乾燥剤を提案するための検討を行った ポリセロ紙で分包した漢方エキス顆粒製剤を以下の1~5の容器で乾燥剤とともに 4 週間保管し 変化を調査した 乾燥剤は以下の A B の2 種類を使用して比較した この期間中 実際の使用に近い状態で保管するために 容器を開閉して中の薬剤を取り出したのち元に戻す という作業を 1 日 2 回ずつ行った 12のチャック付き袋は 中の空気をできるだけ排除した状態で口を閉じるようにした 1ポリエチレン製のチャック付き袋 2アルミ+ナイロンフィルム製のチャック付き袋 3スチール製の缶 ( 大 ) 4スチール製の缶 ( 小 ) 5ポリスチレン製の気密容器 A. 生石灰 B. シリカゲル 結果 3 最も変化を抑えられる容器と予想された3スチール製の缶 ( 大 ) で保管した場合の変化が最も大きかった これは容器の開閉により容器内の空気が入れ替わるためだと考えられる このことより 保管中に接触する空気は少ないほうがよいことがわかった また チャック付き袋では 1のポリエチレン製のものは 3 週後に急な重量増加がみられたが 2のアルミ+ナイロンフィルム製では変化が小さかった 1では開閉を繰り返すことにより袋のチャック部分が破損してしまい 効果が低下したと推測される これにより 2のほうがより丈夫で 保管容器として適していると考えられる ( 図 4) -36-
図 4: 薬剤の重量変化 (g) 乾燥剤の重量変化については 生石灰 シリカゲルともにいずれの容器でも重量が増加していた ( 図 5) 容器の容量が大きいものほど変化も大きかった 今回の検討では生石灰とシリカゲルの吸水量に大きな差はみられなかった 4 週間後の外観は 生石灰は膨張し シリカゲルの青色の粒は全てピンク色に変化しており 乾燥効果が期待できない状態となっていた 図 5:4 週後の乾燥剤の重量変化 (g) (2) 啓発活動ここまでの検討結果より ポリセロ紙で分包した散薬は 気密容器に乾燥剤と共に入れて保管すると最も変質が抑えられることが明確となった 毎日服用の都度容器の開閉が行われるので 缶よりもチャック付き袋を使用し空気を排除して気密状態で保管すること チャック付き袋はできればアルミ+ナイロンフィルム製のものがよいこと 乾燥剤は多めに使うこと チャック付き袋も乾燥剤も永久に使用できるわけではなく 1 ヶ月を目安に定期的に交換することなど 具体的な注意事項も明らかとなった これらの内容をまとめたパンフレットを作成して薬局窓口に配置し 散薬を多く服用している利用者に対し服薬指導の際に渡して説明するようにした ( 図 6) その他 利用者 家族向けの勉強会等でも 保管方法に関する情報提供を行った 更に やむをえず小分け分包した漢方エキス顆粒製剤をお渡しする際に使用するための おくすり保管袋 ( アルミ+ナイロンフィルム製のチャック付き袋 ) を作成した ( 図 7) おくすり保管袋 の表面には 上手な保管方法 として 今回の調査で明らかになった注意事項を記載し 効果的な使用方法を伝えている -37-
図 6: パンフレット ( 表 裏 ) 図 7: おくすり保管袋 4. 今後の取り組み ( 結果 ) パンフレットを活用した説明と 漢方エキス顆粒の小分け分包品を払い出す際に使用するための おくすり保管袋 の提供により 利用者が 自宅での薬の保管をより適切にできるようになったのではないかと考える 今後は 通園部門での利用者家族向けの勉強会などでの情報提供を定期的に行い 更にホームページや動画等の媒体においても 薬の保管方法について広く周知できるように取り組んでいく -38-