第 352 回企業会計基準委員会 資料番号審議事項 (4)-5 日付 2017 年 1 月 10 日 プロジェクト 項目 税効果会計 米国会計基準における法人所得税に関する開示の動向 本資料の目的 1. 本資料では 今後の開示に関する項目を検討するにあたり 2016 年 7 月に米国財務会計基準審議

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第 298 回企業会計基準委員会 資料番号 日付 審議事項 (2)-4 DT 年 10 月 23 日 プロジェクト 項目 税効果会計 今後の検討の進め方 本資料の目的 1. 本資料は 繰延税金資産の回収可能性に関わるグループ 2 の検討状況を踏まえ 今 後の検討の進め方につ

用者の予測とは大きく異なった内容で突然開示されることがあり 繰延税金資産の回収可能性について事前に予測を行う観点からは 現行の税効果会計基準における繰延税金資産に関して開示されている情報では不十分である (3) 回収可能性に係る監査の指針を会計の指針に移管することから 会計処理だけでなく 開示につい

参考 企業会計基準第 25 号 ( 平成 22 年 6 月 ) からの改正点 平成 24 年 6 月 29 日 企業会計基準第 25 号 包括利益の表示に関する会計基準 の設例 企業会計基準第 25 号 包括利益の表示に関する会計基準 ( 平成 22 年 6 月 30 日 ) の設例を次のように改正

日本基準でいう 法人税等 に相当するものです 繰延税金負債 将来加算一時差異に関連して将来の期に課される税額をいいます 繰延税金資産 将来減算一時差異 税務上の欠損金の繰越し 税額控除の繰越し に関連して将来の期に 回収されることとなる税額をいいます 一時差異 ある資産または負債の財政状態計算書上の

リリース

企業結合ステップ2に関連するJICPA実務指針等の改正について⑦・連結税効果実務指針(その2)

Microsoft Word - 公開草案「中小企業の会計に関する指針」新旧対照表

目的 1. 本会計基準は 企業会計審議会が平成 10 年 10 月に公表した 税効果会計に係る会計基準 ( 以下 税効果会計基準 という ) 及び 税効果会計に係る会計基準注解 ( 以下 税効果会計基準注解 という ) のうち開示に関する事項を改正することを目的とする 会計基準 開示表示 2. 税効

平成30年公認会計士試験

改正法人税法により平成 24 年 4 月 1 日以後に開始する事業年度については法人税率が 30% から 25.5% に引き下げられ また 復興財源確保法により平成 24 年 4 月 1 日から平成 27 年 3 月 31 日までの間に開始する事業年度については基準法人税額の 10% が復興特別法人




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平成28年度 第144回 日商簿記検定 1級 会計学 解説

貸借対照表 (2019 年 3 月 31 日現在 ) ( 単位 : 千円 ) 科目 金額 科目 金額 ( 資産の部 ) ( 負債の部 ) 流動資産 3,784,729 流動負債 244,841 現金及び預金 3,621,845 リース債務 94,106 前払費用 156,652 未払金 18,745

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2. 基準差調整表 当行は 日本基準に準拠した財務諸表に加えて IFRS 財務諸表を参考情報として開示しております 日本基準と IFRS では重要な会計方針が異なることから 以下のとおり当行の資産 負債及び資本に対する調整表並びに当期利益の調整表を記載しております (1) 資産 負債及び資本に対する

業結合ステップ2に関連するJICPA実務指針等の改正について⑧・連結税効果実務指針(その3)

第 3 期決算公告 (2018 年 6 月 29 日開示 ) 東京都江東区木場一丁目 5 番 65 号 りそなアセットマネジメント株式会社 代表取締役西岡明彦 貸借対照表 (2018 年 3 月 31 日現在 ) 科目金額科目金額 ( 単位 : 円 ) 資産の部 流動資産 負債の部 流動負債 預金

念.pwd

貸借対照表 平成 28 年 3 月 31 日現在 ( 単位 : 千円 ) 科 目 金 額 科 目 金 額 資産の部 負債の部 流動資産 (63,628,517) 流動負債 (72,772,267) 現金及び預金 33,016,731 買掛金 379,893 売掛金 426,495 未払金 38,59

営業報告書

IFRS基礎講座 IFRS第1号 初度適用

「中小企業の会計に関する指針《新旧対照表

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サマリー

IFRSへの移行に関する開示

2019年年3月期 第2四半期(中間期)決算短信〔日本基準〕(連結)

平成 29 年度連結計算書類 計算書類 ( 平成 29 年 4 月 1 日から平成 30 年 3 月 31 日まで ) 連結計算書類 連結財政状態計算書 53 連結損益計算書 54 連結包括利益計算書 ( ご参考 ) 55 連結持分変動計算書 56 計算書類 貸借対照表 57 損益計算書 58 株主

包括利益の表示に関する会計基準第 1 回 : 包括利益の定義 目的 ( 更新 ) 新日本有限責任監査法人公認会計士七海健太郎 1. はじめに企業会計基準第 25 号 包括利益の表示に関する会計基準 ( 以下 会計基準 ) が平成 22 年 6 月 30 日に

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第1章 簿記の一巡

1. のれんを資産として認識し その後の期間にわたり償却するという要求事項を設けるべきであることに同意するか 同意する場合 次のどの理由で償却を支持するのか (a) 取得日時点で存在しているのれんは 時の経過に応じて消費され 自己創設のれんに置き換わる したがって のれんは 企業を取得するコストの一

IFRS基礎講座 IAS第21号 外貨換算

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1. 国際財務報告基準に準拠した財務諸表 ( 抜粋 翻訳 ) 国際財務報告基準に準拠した財務諸表の作成方法について当行の国際財務報告基準に準拠した財務諸表 ( 以下 IFRS 財務諸表 という ) は 平成 27 年 3 月末時点で国際会計基準審議会 (IAS B) が公表している基準及び解釈指針に

計算書類等

無断複写 転用 転記を禁じます 国際財務報告基準 (IFRS) 連結財務諸表シリーズ シリーズ <5>IAS 第 31 号 ジョイント ベンチャーに対する持分 ( 平成 22 年 7 月 31 日現在 ) 1. ジョイント ベンチャーの対する持分 ( 総論 ) 本シリーズでは ジョイント ベンチャー

第6期決算公告

設例 [ 設例 1] 法定実効税率の算定方法 [ 設例 2] 改正地方税法等が決算日以前に成立し 当該改正地方税法等を受けた改正条例が当該決算日に成立していない場合の法定実効税率の算定 本適用指針の公表による他の会計基準等についての修正 -2-

2. 訂正箇所 (1)36ページ 4. 連結財務諸表 (9) 連結財務諸表に関する注記事項 ( 税効果会計関係 ) 訂正前 前連結会計年度 当連結会計年度 繰越欠損金賞与引当金たな卸資産評価損未実現損益未払事業税退職金その他の合計 8,077 千円 37,550 千円 63,409 千円 11,94

国家公務員共済組合連合会 民間企業仮定貸借対照表 旧令長期経理 平成 26 年 3 月 31 日現在 ( 単位 : 円 ) 科目 金額 ( 資産の部 ) Ⅰ 流動資産 現金 預金 311,585,825 未収金 8,790,209 貸倒引当金 7,091,757 1,698,452 流動資産合計 3

受取利息及び受取配当金等に課される源泉所得税 35 外国法人税 36 適用時期等 38-2-

財務諸表 金融商品取引法第 193 条の 2 第 1 項の規定に基づき 当社の貸借対照表 損益計算書 株主資本等変動計算書及び附属明細表については 有限責任あずさ監査法人の監査証明を受けております 貸借対照表 科目 ( 資産の部 ) 流動資産 平成 27 年度末平成 28 年 3 月 31 日現在

Microsoft Word - 5. 税効果会計(2007)


別添質問に対する回答質問 1 Tax Basis( 税務基準額 ) 及び Temporary Difference( 一時差異 ) の定義について本公開草案では Tax Basis( 税務基準額 ) の定義を変更することを提案しており これにより Tax Basis が資産の回収や負債の決済について

3. その他 (1) 期中における重要な子会社の異動 ( 連結範囲の変更を伴う特定子会社の異動 ) 無 (2) 会計方針の変更 会計上の見積りの変更 修正再表示 1 会計基準等の改正に伴う会計方針の変更 無 2 1 以外の会計方針の変更 無 3 会計上の見積りの変更 無 4 修正再表示 無 (3)

旭情報サービス (9799) 平成 28 年 3 月期第 1 四半期決算短信 ( 非連結 ) 添付資料の目次 1. 当四半期決算に関する定性的情報 2 (1) 経営成績に関する説明 2 (2) 財政状態に関する説明 2 (3) 業績予想などの将来予測情報に関する説明 2 2. サマリー情報 ( 注記

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Microsoft Word - 決箊喬å‚−表紎_18年度(第26æœ�ï¼›

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野村アセットマネジメント株式会社 2019年3月期 個別財務諸表の概要 (PDF)

表紙 EDINET 提出書類 寺崎電気産業株式会社 (E0176 訂正有価証券報告書 提出書類 根拠条文 提出先 提出日 有価証券報告書の訂正報告書金融商品取引法第 24 条の2 第 1 項近畿財務局長平成 30 年 9 月 21 日 事業年度 第 38 期 ( 自平成 29 年 4 月 1 日至平

ご説明用資料 2018 年度決算概要 2019 年度業績予想 2019 年 5 月 15 日 Copyright (C) 2019 Toyo Business Engineering Corporation. All rights Reserved. 事業セグメント ソリューション事業 SAPを始め

2018 年 8 月 10 日 各 位 上場会社名 エムスリー株式会社 ( コード番号 :2413 東証第一部 ) ( ) 本社所在地 東京都港区赤坂一丁目 11 番 44 号 赤坂インターシティ 代表者 代表取締役 谷村格 問合せ先 取締役 辻高宏

税されるときは 給与等課税事由が生じた日 ( 権利行使日 ) に 法人において 当該役務提供に係る費用の額が損金に算入されますので ( 法人税法第 54 条第 1 項 ) ストック オプションの付与時において将来減算一時差異に該当し 税効果会計の対象となります Q3: 削除 Ⅱ 中間財務諸表等におけ

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新旧対照表(計算書類及び連結計算書類)

野村アセットマネジメント株式会社 平成30年3月期 個別財務諸表の概要 (PDF)

Report

科目 期別 損益計算書 平成 29 年 3 月期自平成 28 年 4 月 1 日至平成 29 年 3 月 31 日 平成 30 年 3 月期自平成 29 年 4 月 1 日至平成 30 年 3 月 31 日 ( 単位 : 百万円 ) 営業収益 35,918 39,599 収入保証料 35,765 3

【H 改正】株主資本等変動計算書.docx

IFRS第3号「企業結合」修正案及びIAS第27号「連結及び個別財務諸表」修正案に対する

2019 年 8 月 22 日 各位 インフラファンド発行者名 東京インフラ エネルギー投資法人 代表者名 執行役員 杉本啓二 ( コード番号 9285) 管理会社名 東京インフラアセットマネジメント株式会社 代表者名 代表取締役社長 永森利彦 問合せ先 取締役管理本部長 真山秀睦 (TEL: 03

説明会資料 IFRSの導入について

Microsoft Word - Q&A 第22回 2892号2008年11月08日.doc

3. 平成 31 年 3 月期の連結業績予想 ( 平成 304 年月 1 日 ~ 平成 313 年月 31 日 ) 売上高営業利益経常利益 (% 表示は 通期は対前期 四半期は対前年同四半期増減率 ) 親会社株主に帰属する当期純利益 1 株当たり当期純利益 百万円 % 百万円 % 百万円 % 百万円

株 主 各 位                          平成19年6月1日

計算書類等

連結貸借対照表 ( 単位 : 百万円 ) 当連結会計年度 ( 平成 29 年 3 月 31 日 ) 資産の部 流動資産 現金及び預金 7,156 受取手形及び売掛金 11,478 商品及び製品 49,208 仕掛品 590 原材料及び貯蔵品 1,329 繰延税金資産 4,270 その他 8,476

第 21 期貸借対照表 平成 29 年 6 月 15 日 東京都千代田区一番町 29 番地 2 さわかみ投信株式会社 代表取締役社長澤上龍 流動資産 現金及び預金 直販顧客分別金信託 未収委託者報酬 前払費用 繰延税金資産 その他 固定資産 ( 有形固定資産 ) 建物 器具備品 リース資産 ( 無形

7. 我が国の場合 第 4 項に示される政府が企業に課す賦課金の例としては 固定資産税 特別土地保有税 自動車取得税などが挙げられる 8. 日本基準において諸税金に関する会計処理については 監査 保証委員会実務指針第 63 号 諸税金に関する会計処理及び表示に係る監査上の取り扱い があるが ここでは

財務諸表 金融商品取引法第 193 条の 2 第 1 項の規定に基づき 当社の貸借対照表 損益計算書 株主資本等変動計算書及び附属明細表については 有限責任あずさ監査法人の監査証明を受けております 貸借対照表 科目 ( 資産の部 ) 流動資産 2017 年度末 2018 年 3 月 31 日現在 (

独立行政法人会計基準改定(案)

営業活動によるキャッシュ フロー の区分には 税引前当期純利益 減価償却費などの非資金損益項目 有価証券売却損益などの投資活動や財務活動の区分に含まれる損益項目 営業活動に係る資産 負債の増減 利息および配当金の受取額等が表示されます この中で 小計欄 ( 1) の上と下で性質が異なる取引が表示され

築地魚市場 (8039) 平成 31 年 3 月期第 3 四半期決算短信 添付資料の目次 1. 当四半期決算に関する定性的情報 2 (1) 経営成績に関する説明 2 (2) 財政状態に関する説明 2 (3) 連結業績予想などの将来予測情報に関する説明 2 2. 四半期連結財務諸表及び主な注記 3 (

連結の補足 連結の 3 年目のタイムテーブル B/S 項目 5つ 68,000 20%=13,600 のれん 8,960 土地 10,000 繰延税金負債( 固定 ) 0 利益剰余金期首残高 1+2, ,120 P/L 項目 3 つ 少数株主損益 4 1,000 のれん償却額 5 1,1

注記事項 (1) 期中における重要な子会社の異動 ( 連結範囲の変更を伴う特定子会社の異動 ) : 無 新規 社 ( 社名 ) 除外 社 ( 社名 ) (2) 会計方針の変更 会計上の見積りの変更 修正再表示 1 会計基準等の改正に伴う会計方針の変更 : 有 2 1 以外の会計方針の変更 : 無 3

第101期(平成15年度)中間決算の概要

第4期 決算報告書


085 貸借対照表の純資産の部の表示に関する会計基準 新株予約権 少数株主持分を株主資本に計上しない理由重要度 新株予約権を株主資本に計上しない理由 非支配株主持分を株主資本に計上しない理由 Keyword 株主とは異なる新株予約権者 返済義務 新株予約権は 返済義務のある負債ではない したがって

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新旧対照表(計算書類及び連結計算書類)

第4期電子公告(東京)

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図表 1 将来減算一時差異とは 課税所得の計算上 差異が生じたときに加算され 将来解消するときに減算されるものです 税効果会計の適用において最も取り扱う機会が多いのが将来減算一時差異です 貸倒引当金の損金算入限度超過額 賞与引当金及び退職給付引当金の額 減価償却費の損金算入限度超過額 棚卸資産等に係

3. 基本財産及び特定資産の財源等の内訳 基本財産及び特定資産の財源等の内訳は 次のとおりです 科目当期末残高 ( うち指定正味財産からの充当額 ) ( うち一般正味財産からの充当額 ) ( うち負債に対応する額 ) 基本財産投資有価証券 800,000,000 (662,334,000) (137

西川計測 (7500) 2019 年 6 月期第 2 四半期決算短信 ( 非連 添付資料の目次 1. 当四半期決算に関する定性的情報 2 (1) 経営成績に関する説明 2 (2) 財政状態に関する説明 2 (3) 業績予想などの将来予測情報に関する説明 2 2. 四半期財務諸表及び主な注記 3 (1

スライド 1

2017 年度第 1 四半期業績の概要 年 8 月 9 日 日本生命保険相互会社

(2) サマリー情報 1 ページ 1. 平成 29 年 3 月期の連結業績 ( 平成 28 年 4 月 1 日 ~ 平成 29 年 3 月 31 日 ) (2) 連結財政状態 訂正前 総資産 純資産 自己資本比率 1 株当たり純資産 百万円 百万円 % 円銭 29 年 3 月期 2,699 1,23

連結会計入門 ( 第 6 版 ) 練習問題解答 解説 練習問題 1 解答 解説 (129 頁 ) ( 解説 ) S 社株式の取得に係るP 社の個別上の処理は次のとおりである 第 1 回取得 ( 平成 1 年 3 月 31 日 ) ( 借 )S 社株式 48,000 ( 貸 ) 現預金 48,000

[2] 株式の場合 (1) 発行会社以外に譲渡した場合株式の譲渡による譲渡所得は 上記の 不動産の場合 と同様に 譲渡収入から取得費および譲渡費用を控除した金額とされます (2) 発行会社に譲渡した場合株式を発行会社に譲渡した場合は 一定の場合を除いて 売却価格を 資本金等の払戻し と 留保利益の分

2 事業活動収支計算書 ( 旧消費収支計算書 ) 関係 (1) 従前の 消費収支計算書 の名称が 事業活動収支計算書 に変更され 収支を経常的収支及び臨時的収支に区分して それぞれの収支状況を把握できるようになりました 第 15 条関係 別添資料 p2 9 41~46 82 参照 消費収入 消費支出

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第 352 回企業会計基準委員会 資料番号 日付 2017 年 1 月 10 日 プロジェクト 項目 税効果会計 米国会計基準における法人所得税に関する開示の動向 本資料の目的 1. 本資料では 今後の開示に関する項目を検討するにあたり 2016 年 7 月に米国財務会計基準審議会 (FASB) から公表された 会計基準更新書案 法人所得税 ( トピック 740): 開示に関する取組み 法人所得税に関する開示要求の変更 ( 以下 本公開草案 という ) の内容を確認することを目的としている 本公開草案の概要経緯 2. FASB は 2009 年 7 月以降 財務諸表の利用者にとって最も重要な情報を明確に伝達することにより 財務諸表注記の有効性の改善を図る目的で 開示フレームワーク プロジェクトに取り組んでいる 3. 当該取組みとして FASB は 2014 年 3 月に 公開草案 財務報告に関する概念フレームワーク第 8 章 : 財務諸表注記 ( 以下 概念 ED という ) を公表している 概念 ED では FASB が注記情報を要求すべきかを決定する際に考慮する可能性がある情報を識別しており 1 この概念 ED を用いて 棚卸資産 公正価値測定 退職後給付 法人所得税の開示要求事項の検証を行っている 4. この開示フレームワーク プロジェクトの一環として FASB は 2016 年 7 月 26 日に 法人所得税に関する本公開草案を公表した 本公開草案の提案の内容 ( 繰延税金資産及び負債に関する開示項目の取扱い ) 5. 本公開草案は 次の開示を要求することを提案している (1) 評価性引当額に関連する開示報告期間において認識した又は取り崩した評価性引当金に関する説明及び金額 ( 本公開草案 740-10-50-6B) (2) 繰越控除に関連する開示従来 繰越控除については 税務上の損失及び税額控除の繰越額の金額及び繰越期限を開示することとされていたが (ASC740-10-50-3a) 詳細については 1 FASB が会計基準の開発を行う等において 各表示科目についてどのような情報が提供されるべきかを検討するにあたって 利用することができる 意思決定に関する質問 を公表している -1-

定められていなかった これに関し 本公開草案では 公開事業会社とそれ以外の会社に分けて 以 下の開示項目が提案されている ( 公開事業会社 ) 1 連邦 州及び国外の繰越控除の金額 ( 税金考慮前 ) について 報告書日後 の最初の 5 年間の各会計期間の金額及び残りの期間の合計 ( 本公開草案 740-10-50-6Aa) 2 連邦 州及び国外の繰越控除に係る評価性引当額控除前の繰延税金資産の 額 ( 税金額 ) について 報告書日後の最初の 5 年間の各会計期間の金額及 び残りの期間の合計 ( 本公開草案 740-10-50-6Ab) 3 繰延税金資産を相殺する未認識の税務上の便益の総額 ( 本公開草案 740-10-50-6Ac) ( 公開事業会社以外 ) 1 連邦 州及び国外の繰越控除の金額 ( 税金考慮前 ) 及びその繰越期限 ( 本 公開草案 740-10-50-8A) (3) 税引前利益に国内の連邦法定税率を乗じて算出された額と法人所得税の計上 額との差額の調整表に関連する開示 従来 公開事業会社については 年度の継続事業に関する税引前利益に国内 の連邦法定税率を乗じて算出された額と法人所得税の計上額との調整表を パ ーセンテージ又は金額により開示することとされていたが 詳細については定 められていなかった これに関し 米国証券取引委員会の規則 ( 以下 SEC 規則 という ) と整合 するように 規定を見直している 具体的には 主に継続事業からの法人所得 税の計上額と 税引前利益に国内の連邦法定税率を乗じて算出された額との差 額を報告通貨で開示すること 仮に連邦法定税率と税負担率との差異が 5% 以内 であれば 開示は不要とすること 各会計期間において変動があればその調整 項目の内容を開示することを提案している ( 本公開草案 740-10-50-12) 2 (4) 税務上のポジションに関連する開示 2 繰延税金資産又は負債には直接的には関連しないが 税務上のポジションに関連する開示として 従来開示されていた 1 向こう 12 か月における合理的に起こり得る未認識の税務上の便益残高の変動の範囲の性質及び見積りを開示するか 2 当該範囲の見積りはできない旨を記述する要求事項 (ASC 740-10-50-15d) を削除することが提案されている -2-

1 未認識の税務上の便益に関する期首及び期末の調整開示において 現金で決済した又は決済されるものと 既存の繰延税金資産の使用により決済されるものとに区分して開示する ( 本公開草案 740-10-50-15A a3) 2 未認識の税務上の便益が表示される貸借対照表の表示科目及び当該未認識の税務上の便益の金額 ( 貸借対照表に未認識の税務上の便益が表示されない場合には 当該金額を別個に開示 )( 本公開草案 740-10-50-15A c) ( 当期税金に関する開示項目の取扱い ) 6. 本公開草案は すべての企業に対して 法人所得税に関する現行の開示要求を修正し 次の追加の開示を要求することを提案している (1) 国内及び国外に区分した次の項目の金額 法人所得税費用 ( 便益 ) 控除前の継続事業からの利益 ( 損失 )( 本公開草案 740-10-50-10A) 継続事業からの法人所得税費用 ( 便益 )( 本公開草案 740-10-50-10B) 法人所得税の支払額 ( 本公開草案 740-10-50-25) (2) 法人所得税総額に対して重要である法人所得税の特定国への支払額 ( 本公開草案 740-10-50-25) (3) 未分配国外利益を無期限に再投資するという主張の変更を引き起こした状況の説明及び関連する利益の金額 ( 本公開草案 740-10-50-1A) (4) 国外子会社が保有する現金 現金等価物及び市場性のある有価証券の合計 ( 本公開草案 740-10-50-24) (5) 将来の期間において 企業に影響を与える可能性のある場合 制定された税法の改正に関する記述 ( 本公開草案 740-10-50-22) (6) 事業体に政府との法的に強制可能な契約の内容 ( 契約の期間及び当該契約の下での政府とのコミットメントを含む ) 及び法人所得税負担を軽減する又は削減する可能性がある便益の金額 ( 本公開草案 740-10-50-23) 提案内容の背景及び理由 ( 繰延税金資産又は負債に関する開示項目の取扱い ) 7. 米国会計基準において 公開事業会社に対して第 5 項の開示項目を追加した背景は下記のとおりである -3-

3 (1) 評価性引当額に関連する開示 SEC 規制 S-X210.12-09 では 他に開示していない場合 評価性引当額とその 取崩しの情報を開示するように要求しており 実際に 財務諸表の注記として 評価性引当額とその取崩しの情報を開示している企業がある ( 本公開草案 BC78) これに関連し 多くの利用者からは 評価性引当額の変動要因を理解したい との意見が聞かれた また 一部の利用者からは 現在開示されている情報は 統合しすぎているとして 報告期間において認識又は取り崩した評価性引当の 変動に関する詳細な情報を要望する意見が聞かれた 一方で 作成者側からは そのような情報を開示する負担をかけるべきでは ないとの意見もあり 評価性引当金に関する説明及び金額を提案している ( 本 公開草案 BC80) (2) 繰越控除に関連する開示 従来 繰越控除については 税務上の損失及び税額控除の繰越額の金額及び 繰越期限を開示することとされていたが (ASC740-10-50-3a) 詳細については 定められていなかったため 企業により開示の情報が多様である ( 例えば 一 部の企業は税金額で表示し 他の企業は課税所得ベースで表示している等 ) と の意見が聞かれ 利用者からは 繰越控除の金額 ( 税金考慮前 ) 及びこれに係 る繰延税金資産の金額を要望する意見が聞かれた ( 本公開草案 BC82) このため FASB は 公開事業会社に繰越控除の金額 ( 税金考慮前 ) 繰越控 除に係る評価性引当額控除前の繰延税金資産の情報を開示することを提案し ている ( 第 5 項 (2)1 及び 2) また FASB は 利用者にとって有用な情報として 連邦 州及び国外の上述 した情報を検討し 作成者からはそれらを開示するコストはそれほど負担にな らないとの意見が示され ( 本公開草案 BC85) 当該情報の開示が提案されてい る ( 第 5 項 (2)1 及び 2) なお 第 5 項 (2)3 に関し 未認識の税務便益を期限切れの年度ごとに区分 することは複雑でコストがかかるとの指摘があった点に関して 未認識の税務 上の便益と繰越控除は本来的に性質が異なり 異なって測定されるため 相殺 した未認識の税務便益の総額を開示することが提案されている 4 ( 本公開草案 3 この提案は 概念 ED の 意思決定に関する質問 における質問 L7( 報告企業の資産, 負債又は資本性商品に関する表示科目の変動の原因は, 容易には理解されないか ) に関連するものである 4 この提案は 概念 ED の 意思決定に関する質問 における質問 L14( 表示科目の簿価は 合理的に異な -4-

BC87) (3) 税引前利益に国内の連邦法定税率を乗じて算出された額と法人所得税の計上 額との調整表に関連する開示 SEC 規制 S-X210.4-08(h)(2) では 継続事業からの法人所得税の計上額と 税引前利益に国内の連邦法定税率を乗じて算出された額との差額をドルで開 示することが要求されている また 仮に連邦法定税率からの差異が 5% 以内で あれば この開示を求めていない また 当該情報は 金額ではなく率で開示 されることもある ( 本公開草案 BC91) 多くの作成者及び利用者は この税率差異に関する開示を最も有用な開示の 1 つと認めている このため FASB は この SEC 規制で要求されている税率差 異の開示を会計基準にも要求する提案をした これは SEC 規制ではすでに要 求されており 追加的なコストはかからないためである ( 本公開草案 BC92) これに加え FASB は 税率差異の項目について重要な変動がある場合にその 説明を求めることを提案している 重要な変動があれば作成者はその理由を把 握しており 多くのコストはかからないためである ( 本公開草案 BC93) 5 (4) 税務上のポジションに関連する開示 第 5 項 (4)1 に関し 財務諸表利用者と税務の専門家からは 未認識の税務 便益の現金決済及び非現金決済を個別に開示することは 企業の税務戦略の結 果を説明するため有益であるとの指摘を受けている この点に関して 作成者 からは 企業は税金を現金で決済した場合 その証跡が残ることから 現金決 済と非現金決済を別々に開示することはコストがかからないとの意見が示さ れている したがって 公開事業会社において 現金で決済したもの又は決済 されるものと 既存の繰延税金資産の使用による決済を区別して開示するとの 提案がなされている ( 本公開草案 BC58) また 第 5 項 (4)2 に関し 未認識の税務上の便益は財政状態計算書におけ る債務や繰延税金に対して影響を与える可能性があるとされている さらに 未認識の税務上の便益は 財政状態計算書に表示されないことがある そのた め 財務諸表の利用者からは そのような開示がなければ 未認識の税務上の 便益によってどのような影響を受けるか判別することができないとの意見が る可能性がある仮定 判断又はその他の内部的インプットを必要とする見積りであるか ) に関連するものである 5 この提案は 概念 ED の 意思決定に関する質問 における質問 L7( 報告企業の資産, 負債又は資本性商品に関する表示科目の変動の原因は, 容易には理解されないか ) 及び L16( 表示科目では明確ではないが 他の計算書における他の表示科目と直接的な関係があるか ) に関連するものである -5-

聞かれ 本公開草案では 未認識の税務上の便益の総額の開示が提案されてい る ( 本公開草案 BC59) ( 当期税金に関する開示項目の取扱い ) ( 省略 ) 以上 -6-

( 別紙 1) 開示 ( 注記 ) に関する国際的な会計基準の取扱い ( 第 8 回専門委員会資料の抜粋 ) 日本基準における注記事項 1. 税効果会計基準においては 以下の事項が注記事項として要求されている (1) 繰延税金資産及び繰延税金負債の発生原因別の主な内訳 ( 注 8 繰延税金資産の発生原因別の主な内訳を注記するに当たっては 繰延税金資産から控除された額を併せて記載するものとする ) (2) 税引前当期純利益又は税金等調整前当期純利益に対する法人税等 ( 法人税等調整額を含む ) の比率と法定実効税率との間に重要な差異があるときは 当該差異の原因となった主要な項目別の内訳 (3) 税率の変更により繰延税金資産及び繰延税金負債の金額が修正されたときは その旨及び修正額 (4) 決算日後に税率の変更があった場合には その内容及びその影響 IFRS における注記事項 2. IAS 第 12 号 法人所得税 において 以下の項目についての開示が要求されている (1) 税金費用の主要な内訳 ( 第 79 項 ) (2) 資本に直接借方計上又は貸方計上した項目に係る当期税金及び繰延税金の合計額 ( 第 81 項 (a)) (3) その他の包括利益の各内訳項目に係る法人所得税の金額 ( 第 81 項 (ab)) (4) 税金費用 ( 収益 ) と会計上の利益との関係の説明 ( 第 81 項 (c)) 6 (5) 前期と比較した適用税率の変動の説明 ( 第 81 項 (d)) (6) 財政状態計算書に繰延税金資産を認識していない将来減算一時差異 税務上の繰越欠損金 及び繰越税額控除の額 ( 及び もしあれば失効日 )( 第 81 項 (e)) (7) 繰延税金負債を認識していない 子会社 支店及び関連会社に対する投資並びに共同支配の取決めに対する持分に係る一時差異の総合計額 ( 第 81 項 (f)) (8) 各タイプの一時差異並びに各タイプの税務上の繰越欠損金及び繰越税額控除について ( 第 81 項 (g)) 6 税金費用と会計上の利益との関係の説明は 以下のいずれか又は両方によるとされている (i) 会計上の利益に適用税率を乗じて得られる額と税金費用 ( 収益 ) との間の数字的調整 ( 適用税率の計算根拠も併せて開示 ) (ii) 平均実際負担税率と適用税率との間の数字的調整 ( 適用税率の計算根拠も併せて開示 ) -7-

表示する各期間の財政状態計算書に認識した繰延税金資産及び負債の額 包括利益計算書に認識した繰延税金収益又は費用の額 (9) 非継続事業に関して 廃止に伴う利得又は損失に係る税金費用 非継続事業の当期中の経常的活動からの純損益に係る税金費用 ( 第 81 項 (h)) (10) 財務諸表の発行が承認される前に提案又は宣言したが 財務諸表に負債として認識していない 企業の株主への配当の法人所得税への影響の金額 ( 第 81 項 (i)) (11) 企業が取得企業である企業結合により 取得前の繰延税金資産について認識した金額の変動が生じた場合には その変動の金額 ( 第 81 項 (j)) (12) 企業結合で取得した繰延税金便益を取得時の時点では認識しなかったが 取得日後に認識する場合には 繰延税金便益を認識する原因となった事象又は状況変化の説明 ( 第 81 項 (k)) (13) 以下の場合における 繰延税金資産の金額とその認識の根拠となる証拠の内容 ( 第 82 項 ) 当該繰延税金資産を活用できるかどうかが 現存の将来加算一時差異の解消により生じる所得を上回る将来の課税所得の有無に依存しており かつ 企業が 当該繰延税金資産に関係する課税法域において 当期又は前期に損失を生じている (14) 留保利益が株主に対する配当として支払われると 税率や税額が変更になる場合の 配当支払いの結果もたらされる潜在的な法人所得税上の性質及び影響の金額 3. また 上記の他 会計方針の開示において 経営者が当該企業の会計方針を適用する仮定で行った判断のうち 財務諸表に計上されている金額に最も重要な影響を与えているものを開示することが要求されている (IAS 第 1 号第 122 項 ) 米国会計基準における注記事項 ( 現行の取扱い ) 4. 米国会計基準においては 主に以下の開示が要求されている (1) 貸借対照表上認識した繰延税金資産又は負債の純額について その構成部分として 繰延税金資産の総額 繰延税金負債の総額 評価性引当額の総額を開示しなければならない 年度中における評価性引当額の変動額の純額は開示を要する (ASC740-10-50-2) (2) 税務上の損失及び税額控除の繰越額の金額及び繰越期限 (ASC740-10-50-3a) (3) 繰延税金資産の評価性引当額のうち 後に取り崩す場合に資本勘定に直入される金額 (ASC740-10-50-3b) (4) ( 公開企業 ) 一時差異及び繰越額の各項目で 繰延税金資産 ( 評価性引当額 -8-

の配分前 ) 及び繰延税金負債の重要な部分を構成する税効果額の概算額 (ASC740-10-50-6) (5) 継続事業に係る法人税等の重要な構成 7 (ASC740-10-50-9) (6) ( 公開企業 ) 損益計算書表示年度の継続事業に起因する法人税等の報告額と継続事業に係る税引前利益に国内の連邦法定税率を適用して計算した法人税等との金額のパーセンテージ又は金額による調整表 重要な調整項目の内容と見積額は開示しなければならない (ASC740-10-50-12) 5. また 上記の他 リスクと不確実性の説明に関する開示の一部として 将来の課税所得を基礎にした繰延税金の評価性引当額の見積りに関する記載が求められている (ASC275-10-50-15) 7 下記が注記すべき構成の例としてあげられている (i) 法人税等 (ii) 法人税等調整額 (iii) 投資税額控除額 (iv) 政府の交付金 ( 法人税等の減額として認識した範囲に限る ) (v) 繰越欠損金の控除による軽減額 (vi) ある税の軽減額を資本勘定に直接配分したこと係る税金費用 (vii) 税法あるいは税率の変更又は企業の税務上の身分の変更による繰延税金資産又は負債の修正額 (viii) 将来の繰延税金資産に関する実現可能性についての判断の変更をもたらした状況の変化による評 価性引当額期首残高の修正額 -9-

( 別紙 2) 日本基準 IFRS 及び米国会計基準における注記の主な相違 ( 第 8 回専門委員会資料の抜粋 ) 1. ( 別紙 1) をもとに 各基準の注記の主なものについて 各基準の相違をまとめる と以下のようになる 日本基準 IFRS 米国会計基準 三者共通 1 一時差異及び繰越欠損金等の項目ごとの繰延税金資産及び繰延税金負債の金額 (*) 2 会計上の利益に対する税金負担率と法定実効税率との差異の調整 3 適用税率の変更による影響の説明 IFRS 及び米国共通 IFRS のみ 米国のみ (*) ただし 日本基準及び米国会計基準では繰延税金資産から控除する評価性引当額と控除前の繰延税金資産をそれぞれ注記 ( いわゆるグロス表示 ) するのに対して IFRS では認識した控除後の繰延税金資産のみを項目ごとに注記 ( いわゆるネット表示 ) する点で 差異がある 1 税金費用の主な内訳 1 繰延税金資産を認識していない将来減算一時差異 税務上の繰越欠損金及び繰越税額控除の額 ( もしあれば失効日 ) 2 繰延税金資産を認識しているが その回収可能性が将来加算一時差異の解消による所得を上回る将来の課税所得に依存し かつ当期又は前期に損失を計上している場合 その認識の根拠となる証拠の内容 3 会計方針の開示において 経営者が当該企業の会計方針を適用する過程で行った判断のうち 財務諸表に計上されている金額に最も重要な影響を与えているもの 4 企業が取得企業である企業結合により 取得前の繰延税金資産について認識した金額の変動が生じた場合には その変動の金額 5 企業結合で取得した繰延税金便益を取得時の時点では認識しなかったが 取得日後に認識する場合には 繰延税金便益を認識する原因となった事象又は状況変化の説明 1 税務上の繰越欠損金及び繰越税額控除 の金額及び繰越期限 2 リスクと不確実性の説明に関する開示の一部として 将来の課税所得を基礎にした繰延税金資産の評価性引当額の見積りに関する記載 3 繰延税金資産の評価性引当額のうち 後に取り崩す場合に資本勘定に直入される金額 -10-

2. 上記のように 現在日本基準において要求されている開示は IFRS や米国会計基準においても要求されている一方 IFRS や米国会計基準独自の開示要求項目がそれぞれ数項目ある 日本基準では要求されていないが IFRS 又は米国会計基準で要求されている注記は 大きく以下に分類できると考えられる (1) 定性的な情報の開示経営者が会計方針を適用するうえで行った判断 (IFRS) や 見積に関するリスクと不確実性の情報 ( 米国会計基準 ) (2) 繰延税金資産の認識の根拠に関する注記繰延税金資産を認識しているが その回収可能性が 将来加算一時差異の解消による所得を上回る将来の課税所得に依存し かつ当期又は前期に損失を計上している場合 その根拠となる証拠の内容 (IFRS) (3) 繰延税金資産を認識していない将来減算一時差異の額 (IFRS) (4) 繰延税金資産を認識していない税務上の繰越欠損金及び繰越税額控除の額 ( もしあれば失効日 )(IFRS) や 税務上の損失及び税額控除の繰越額の金額及び繰越期限 ( 米国会計基準 ) 3. 以下では 前項に示したそれぞれの開示例を記載する ( 定性的な情報の開示 ) 4. IFRS では 会計方針の開示において 経営者が当該企業の会計方針を適用する仮定で行った判断のうち 財務諸表に計上されている金額に最も重要な影響を与えているものの開示が要求されている 例えば 以下のような開示が行われている ( 例 ) 法人所得税当期税金は 税務当局に対する納付又は税務当局からの還付が予想される金額で測定しております ( 中略 ) 繰延税金資産は 一時差異を利用できるだけの課税所得が生じる可能性が高い範囲内においてのみ認識しております 子会社又は関連会社に対する投資から生じる将来加算及び減算一時差異について繰延税金を計上しておりますが 当社グループが一時差異を解消する時期をコントロールしており かつ予測可能な期間内に一時差異が解消しない可能性が高い場合は繰延税金を認識しておりません なお のれんの当初認識時における一時差異については 繰延税金負債を認識しておりません ( 以下略 ) -11-

5. また 米国会計基準においては リスクと不確実性の説明に関する開示の一例として 将来の課税所得を基礎にした繰延税金の評価性引当額に関する記載が求められている 例えば 以下のような繰延税金資産の取り崩しのリスクに関する開示が行われている ( 例 ) 繰延税金資産の実現可能性については 将来減算一時差異が解消する期間及び繰越欠損金が利用可能な期間において課税所得を生み出すか否かによることとなります 当社は この検討において 予想される将来の課税所得水準 タックスプランニング及び繰延税金負債の取崩予定時期を考慮しております 繰延税金資産の実現可能性については 主に将来の課税所得に依存しており 当社は 継続的に十分な課税所得が発生するものと考えております 当社は 評価性引当金を差し引いた繰延税金資産については 実現が確定していないまでも実現する可能性が高いものと考えております ただし 繰越可能期間における将来の課税所得見積額が減少した場合には 実現可能と認められる繰延税金資産の純額が減少する場合があります ( 繰延税金資産の認識の根拠に関する注記 ) 6. IFRS においては IAS12 第 82 項において (a) 当該繰延税金資産を活用できるかどうかが 現存の将来加算一時差異の解消により生じる所得を上回る将来の課税所得の有無に依存しており かつ (b) 企業が 当該繰延税金資産に関係する課税法域において 当期又は前期に損失を生じている場合には 繰延税金資産の金額とその認識の根拠となる証拠の内容の開示が要求されている 例えば 以下のような繰延税金資産の認識の根拠に関する開示が行われている ( 例 ) 前連結会計年度又は当連結会計年度において 損失を計上しており かつ繰延税金資産の回収可能性が将来の課税所得の有無に依存している一部の子会社について 前連結会計年度末及び当連結会計年度末において 繰延税金資産をそれぞれ XXX 百万円及び XXX 百万円を認識しています これは 当社の経営陣が 繰越欠損金及び将来減算一時差異を控除可能な課税所得の発生可能性を 過去の業績 承認された将来の事業計画 タックスプランニングの機会等に基づき慎重に評価した結果 繰延税金資産を認識したものです ( 繰延税金資産及び負債のより詳細な内訳 ) 7. 一方 IFRS においては IAS12 第 81 項 (e) において 財政状態計算書に繰延税金資産を認識していない将来減算一時差異 税務上の繰越欠損金 及び繰越税額控除の額 ( 及び もしあれば失効日 ) の開示が要求されており 繰延税金資産を認識しなかった部分 すなわち評価性引当額の内訳が開示される 例えば 以下のように 評価性引当額の内訳及び評価性引当額を計上した繰越欠損金の繰越期限についての開示が行われている -12-

( 例 ) 連結財政状態計算書において繰延税金資産を認識していない将来減算一時差異 税務上 の繰越欠損金 ( 繰越期限別内訳 ) は次のとおりであります ( 単位 : 百万円 ) 前連結会計年度末 (20X3 年 3 月 31 日 ) 当連結会計年度末 (20X4 年 3 月 31 日 ) 将来減算一時差異 XXXX XXXX 税務上の繰越欠損金繰越期限 1 年以内 XXX XXX 繰越期限 1 年超 5 年以内 XXX XXX 繰越期限 5 年超 XXX XXX 税務上の繰越欠損金合計 XXXX XXXX 8. また 米国会計基準においては 税務上の損失及び税額控除の繰越額の金額及び繰越期限 (ASC740-10-50-3a) についての注記が要求されており 繰越欠損金及び繰越税額控除のスケジューリングの状況の開示が行われている 例えば 以下のような繰越欠損金の金額及び繰越期限の開示が行われている ( 例 ) 20X4 年 3 月 31 日現在の税務上の繰越欠損金に対する繰延税金資産の総額は XXXX 百万円であり その繰越欠損金は 様々な税務管轄で申告される予定の将来課税所得と相殺することが可能です 繰越可能期間が無期限の XXXX 百万円を除き 繰越欠損金の大部分は 20X4 年度から 2022 年度まで繰越すことができます その他の繰越欠損金については 税務管轄により最長 20 年まで繰越すことができます 20X4 年 3 月 31 日現在の繰越税額控除に対する繰延税金資産の総額は XXXX 百万円です これらの繰越税額控除は 繰越可能期間が無期限の XXXX 百万円を除いて 主として 9 年まで繰越すことができます 以上 -13-