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架鉄道三路線 ( うち 二路線は軽量 ) の総延長は 50km にとどまっている 首都圏南方については マニラ市ツツバンからカブヤオ市ママティッドまでの区間を頻度の低い通勤線が非電化路線として運行しているのみである 首都圏北方は 居住エリアが拡大しているものの 十分な公共交通手段が確保されていないた

区間を頻度の低い通勤線が非電化路線として運行しているのみであり 十分な公共交通手段が確保されていないため 同エリアと周辺に住む住民はバスや自動車等により通勤しているが 道路の混雑により 通勤に大きな支障が出ている 加えて 南北鉄道事業南線 ( 通勤線 ) ( 以下 本事業 という ) の対象区間には

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事業事前評価表 国際協力機構社会基盤 平和構築部 運輸交通 情報通信グループ第二チーム 1. 案件名国名 : バングラデシュ人民共和国案件名 : 和名国際空港保安能力強化プロジェクト英名 The Project for Security Improvement of International Ai

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ており 公共交通機関の拡充等のインフラ整備を通じて大都市圏を中心とした混雑緩和 物流改善が必要であるとしている 本事業はこれら方針及び分析に合致する なお 我が国はこれまで対フィリピン円借款による旅客輸送 システム整備として LRT1 号線増強事業 (I) (II) (L/A 調印 :1994 年

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欠であり 運輸交通分野を中心に膨大なインフラ投資が必要になると見込まれる これらのインフラ整備にあたっては 案件ごとにマスタープランから工事まで段階を踏んで検討 建設が進められるが 対象地の地形などを確認 把握するため 検討段階に応じた精度の地図が必要となる 現在 同国では基本的な測地基準点網が整備

新JICAにおける事前評価(技協・無償)について

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事業事前評価表 国際協力機構社会基盤 平和構築部運輸交通 情報通信グループ 1. 案件名国名 : バングラデシュ国案件名 : 和名橋梁維持管理プロジェクト 有償勘定技術支援 英名 Bridge Management Capacity Development Project 2. 事業の背景と必要性

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事業事前評価表 1. 案件名 ( 国名 ) 国際協力機構南アジア部南アジア第四課 国名 : バングラデシュ人民共和国案件名 : 貧困削減戦略支援無償 ( 教育 ) (Poverty reduction efforts) 2. 事業の背景と必要性 (1) 当該国における初等教育セクターの現状と課題バン

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新JICAにおける事前評価(技協・無償)について

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JICA 事業評価ガイドライン ( 第 2 版 ) 独立行政法人国際協力機構 評価部 2014 年 5 月 1

2008年6月XX日

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無償資金協力 案件概要書 2017 年 8 月 29 日 1. 基本情報 (1) 国名 : カンボジア王国 (2) プロジェクトサイト / 対象地域名 : シハヌークビル特別市 プノンペン (3) 案件名 : 港湾近代化のための電子情報処理システム整備計画 (The Project for Port

0528事業事前評価表(円借款+附帯技プロ)final.doc

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は Blue Print for Air Transportation にて民間航空長期計画を作成 アクションプラン DGCA 5-Year Strategic Plan を作成した上 航空安全に係る総合的な対策の強化を図っており 本事業はこれに寄与するもので

国 アメリカ ロシアに次いで世界第 4 位の電力消費国となっている (2014 年 ) 国内の電力供給に関しては 1,114,408GWh の需要に対して供給量は 1,090,851GWh と 2.1% の不足 供給能力もピーク時 153,366MW の需要に対して 148,463MW と 3.2%

事業事前評価表 国際協力機構農村開発部農業 農村開発第一グループ第二チーム 1. 案件名国名 : インドネシア共和国案件名 : 和名農業保険実施能力向上プロジェクト英名 The Project of Capacity Development for the Implementation of Agr

ジャカルタ大都市圏空港整備計画調査の必要性については JICA が 2008 年 1 月に実施した 次世代航空保安システム整備に係るフィージビリティー調査 でも提言がなされており 既存空港の拡張及び効率的運用を含めたジャカルタ首都圏周辺の適切な空港整備に係る長期的な計画を策定する必要性は高い インド

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事業事前評価表 国際協力機構産業開発 公共政策部法 司法チーム 1. 案件名国名 : ブラジル連邦共和国案件名 : ( 和文 ) 地域警察活動普及プロジェクト ( 英文 )Project on Nationwide Dissemination of Community Policing 2. 事業の

と衝突して沈没し 147 人が死亡 2014 年 8 月にはパドマ川で約 250 人を乗せたフェリーが荒天のため転覆し 110 人が死亡等の大事故が発生している また 同国は 雨季には大型サイクロンが度々ベンガル湾から来襲し 沿岸部で遭難事故が多発するなど 地理的に自然災害の影響を受けやすい地域であ

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ログラムの審査に産業界からも参画を得ることで 大学がエンジニア予備軍である学部学生に対し社会のニーズに即した教育を実践できるよう 促進する役割を果たしている かかる状況の下 エンジニアの量的拡大が質を伴う形で実現されるよう インドネシア政府は我が国に対し LAM-PS としての インドネシアエンジニ

事業事前評価表 1. 案件名国名 : ラオス人民民主共和国案件名 : ルアンパバーン世界遺産の持続可能な管理保全能力向上プロジェクト Project for Capacity Enhancement for Sustainable World Heritage Management and Pres

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護ディプロマ課程を 3 年制看護ディプロマ課程に変更したのに加え ディプロマ課程看護師の現任研修により学士が取得できる 2 年制ポスト ベーシック課程とは別に大学教育として看護学士課程制度 (4 年制 ) を導入することを定めた 学術的に高度な 4 年制看護学士課程の卒業生は輩出されたばかりであるが

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(CANACINTRA) 等と連携を図りつつ設置する案を有しており 国家中小企業コンサルタント養成 認定制度を具現化するためにいかにして事業を進めていくかが課題となっている (2) 相手国政府国家政策上の位置づけカルデロン大統領は 近代的かつ競争力のある経済の強化及び雇用の創出 を 治安 貧困撲滅

事業事前評価表 国際協力機構地球環境部環境管理第一チーム 1. 案件名 国名 : パキスタン国案件名 : 和名パンジャブ州上下水道管理能力強化プロジェクト英名 Project for Improving the Capacity of WASAs in Punjab Province 2. 事業の背

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2-2 需要予測モデルの全体構造交通需要予測の方法としては,1950 年代より四段階推定法が開発され, 広く実務的に適用されてきた 四段階推定法とは, 以下の4つの手順によって交通需要を予測する方法である 四段階推定法将来人口を出発点に, 1 発生集中交通量 ( 交通が, どこで発生し, どこへ集中

新JICAにおける事前評価(技協・無償)について

プロジェクト ( 年 ) 独 (KfW): 西ナイル地区に特化した配電網の拡充 小水力の開発 ( 年 ) 3. 事業概要 (1) 事業の目的ウガンダにおける産業活性化が期待できる地方において 長距離配電線 (33kV 配電線 ) の資機材の調達 据付を行うことによ

事業事前評価表

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事業事前評価表

事業事前評価表

PFI YOKOTA, Shigeru KAJITANI, Toshio 1 CO 2 PFI Private Finance Initiative PPP Public Private Partnership PFI Veolia Transport Kor

事業事前評価表 ( 地球規模課題対応国際科学技術協力 SATREPS) 国際協力機構農村開発部農業 農村開発第一グループ第二チーム 1. 案件名国名 : インドネシア共和国案件名 : 和名 ( 科学技術 ) 食料安全保障を目指した気候変動対応策としての農業保険における損害評価手法の構築と社会実装英名

令 (2006 年 5 号 ) では 2025 年までの国家エネルギー政策の数値目標を設定し エネルギー供給量に対する新 再生可能エネルギーの目標値を 17%( うち地熱エネルギーは 5 %) に定めた また 2010 年の Vision 25/25 において 新 再生可能エネルギーの目標値を 25

研究は重要項目とされている 本事業は CERMEL と長崎大学の共同研究を通じて 1 対象地域におけるウイルス感染症の流行状況の解明 2 新規に同定されたウイルスの性状解析 3 公衆衛生対策上優先度の高いウイルスに対する診断法の開発を行い ガボン側研究機関のウイルス感染症研究開発の能力向上に貢献する

事業事前評価表

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の無償資金協力で整備されたニバンガⅢ 号 (2015 年 ) 及びマヌフォラウ号 (2002 年 ) が担っているが これら定期船 2 隻は 1 回の航海で複数の離島に寄港するため 限られた時間内での離島訪問等には対応できないため マナウイ号が補完的な役割を担っている しかしながら マナウイ号は現在

Microsoft Word - H290324優先的検討規程(裁定).docx

平成 26 年度公共事業事後評価調書 1. 事業説明シート (1) ( 区分 ) 国補 県単 事業名道路事業 [ 国道橋りょう改築事業 ( 国補 )] 事業箇所南巨摩郡身延町波高島 ~ 下山地区名国道 300 号 ( 波高島バイパス ) 事業主体山梨県 (1) 事業着手年度 H12 年度 (2) 事

資料1:地球温暖化対策基本法案(環境大臣案の概要)

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手法 という ) を検討するものとする この場合において 唯一の手法を選択することが困難であるときは 複数の手法を選択できるものとする なお 本規程の対象とする PPP/PFI 手法は次に掲げるものとする イ民間事業者が公共施設等の運営等を担う手法ロ民間事業者が公共施設等の設計 建設又は製造及び運営

事業事前評価表

RO ( 改修 Rehabilitate- 運営等 Operate) 方式ハ民間事業者が公共施設等の設計及び建 BT( 建設 Build- 移転 Transfer) 方式設又は製造を担う手法民間建設借上方式 2 優先的検討の対象とする事業及び検討開始時期一優先的検討の対象とする事業建築物の整備等に関

1 見出し1

国立大学法人富山大学 PPP/PFI 手法導入優先的検討要項

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資料 - 5 討議議事録 (M/D)

1 見出し1

政策目標 6-2: 開発途上国における安定的な経済社会の発展に資するための資金協力 知的支援を含む多様な協力の推進 1. 政策目標の内容自由かつ公正な国際経済社会の実現やその安定的発展に向け 開発途上国における貧困の問題や気候変動等の地球環境問題等の課題への対応を含む国際的な協力に積極的に取り組むこ

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援 GHGインベントリ策定にかかる技術移転等 気候変動対策を推し進めるための包括的な支援を実施した 同プロジェクトの成果として 国家気候変動緩和行動計画 (RAN-GRK) に基づき州気候変動緩和行動計画 (RAD-GRK) の策定が進められるとともに 国家気候変動適応行動計画 (RAN-API)

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( 様式 -2a 調査概要 ) Ⅰ 調査概要 1 調査名称 : 平成 26 年度神埼市総合都市交通体系調査 2 報告書目次 1. 業務概要 (1) 都市計画道路見直しの必要性 (2) 都市計画道路見直しのスキーム (3) 検討結果の分類 2. 路線の抽出 (1) 都市計画道路の整理 抽出 (2) 検

Microsoft PowerPoint - 【資料2-4-1】大阪港0927.pptx

1) 3 層構造による進捗管理の仕組みを理解しているか 持続可能な開発に向けた意欲目標としての 17 のゴール より具体的な行動目標としての 169 のターゲット 達成度を計測する評価するインディケーターに基づく進捗管理 2) 目標の設定と管理 優先的に取り組む目標( マテリアリティ ) の設定のプ

1 見出し1

Microsoft Word - 【291220】北千葉構想段階評価書

NITAS の基本機能 1. 経路探索条件の設定 (1) 交通モードの設定 交通モードの設定 とは どのような交通手段のネットワークを用いて経路探索を行うかを設定するものです NITASの交通モードは 大きく 人流 ( 旅客移動 ) 物流( 貨物移動 ) に分かれ それぞれのネットワークを用いた経路

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目次

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Microsoft Word 交通渋滞(有明アーバン)_181017

目的 予算の状況 資金の流れ 活動実績 成果実績 事業所管部局による点検 評価項目評価に関する説明 広く国民のニーズがあり 優先度が高い事業であるか 国が実施すべき事業であるか 地方自治体 民間等に委ねるべき事業となっていないか 不用率が大きい場合は その理由を把握しているか 支出先の選定は妥当か

News Release 2014 年 3 月 24 日 伊丹市と新関西国際空港株式会社が 伊丹市域におけるまちづくりの推進 について合意 伊丹市と新関西国際空港株式会社は 伊丹市域の生活環境の改善 地域コミュニティの再生等を図るためのまちづくりを連携して推進するため 2014 年 3 月 24 日

間を検討する 締約国が提出した 貢献 は 公的な登録簿に記録される 締約国は 貢献 ( による排出 吸収量 ) を計算する また 計算においては 環境の保全 透明性 正確性 完全性 比較可能性及び整合性を促進し 並びに二重計上の回避を確保する 締約国は 各国の異なる事情に照らしたそれぞれ共通に有して

〈参考〉

事業事前評価表 国際協力機構産業開発 公共政策部資源 エネルギーグループ第二チーム 1. 案件名国名 : ザンビア共和国案件名 : 和名ザンビアにおける鉛汚染のメカニズムの解明と健康 経済リスク評価手法および予防 修復技術の開発英名 The Project for Visualization of

Transcription:

事業事前評価表国際協力機構南アジア部南アジア第四課 1. 基本情報国名 : バングラデシュ人民共和国案件名 : ダッカ都市交通整備事業 (5 号線 )(E/S) Dhaka Mass Rapid Transit Development Project (Line 5) (E/S) L/A 調印日 :2018 年 6 月 14 日 2. 事業の背景と必要性 (1) 当該国における都市開発セクターの開発の現状 課題及び本事業の位置付けバングラデシュ人民共和国 ( 以下 当国 という ) の首都ダッカは 1990 年から 2014 年にかけて人口が 662 万人から 1,698 万人まで増加しており ( 国際連合人口部 2014 年 ) 人口増に伴う急激な交通需要の増大が慢性的な交通渋滞や大気汚染等を引き起こしている これにより ダッカにおける車両の平均移動速度は時速 6.4 キロと東京都都心部 ( 時速 14.7 キロ )( 国土交通省関東地方整備局 2015 年 ) の半分以下に留まっており 大気汚染は PM10 濃度 ( 年間平均 ) が 158 μg/m 3 と世界保健機構の環境基準 (20 μg/m 3 ~70 μg/m 3 ) を上回る水準にある ( 世界保健機関 2016 年 ) これらの交通渋滞による経済損失は 年間 3,868 百万米ドルに上る等 ( バングラデシュ政府水資源開発庁他 2013 年 ) 当国の投資環境を悪化させ経済社会発展の大きなボトルネックとなっている 当国政府は 本課題の解決に向けて 国家計画である 第 7 次五か年計画 (2016/17~2020/21 年度 ) にて 経済成長と貧困削減の促進を大目標とし また 交通と通信 政策において都市圏における道路の交通渋滞を適切な投資によって緩和することが重要であると指摘している かかる目標の達成に向けて 当国は 2005 年に策定された都市交通マスタープラン ダッカ都市交通戦略計画 (Strategic Transport Plan 以下 STP という ) を JICA の支援の下 2016 年 8 月に改訂し その中で公共交通網として大量高速輸送システム (Mass Rapid Transit 以下 MRT という )5 路線及びバス高速輸送システム (Bus Rapid Transit 以下 BRT という )2 路線の整備を計画した ダッカ都市交通整備事業 (5 号線 )( 以下 本事業 という また ダッカ都市交通整備事業 (5 号線 )( E/S) を以下 本借款 という ) の対象である MRT5 号線は 改訂 STP において ダッカの南北と東部の新都市であるプルバチャール地区を繋ぐ MRT1 号線 及び円借款 ダッカ都市交通整備事業 を通じて整備中のダッカ市南北を繋ぐ MRT6 号線と並ぶ優先開発事業として位置付けられている 本事業は ダッカ県において ダッカを南北に接続する MRT1 号線と MRT6

号線に加え 東西に接続することにより 公共交通網のネットワーク化を通じてダッカにおける交通の円滑化を図り もってダッカ都市圏の交通渋滞の緩和や大気汚染による環境上の悪影響の軽減に資するものである (2) 都市開発セクターに対する我が国及び JICA の協力方針等と本事業の位置付け対バングラデシュ人民共和国 JICA 国別分析ペーパー (2014 年 5 月 ) において 都市開発が重点課題であると分析している また 対バングラデシュ国別開発協力方針 (2018 年 2 月 ) においても 全国民が受益可能な経済成長の加速化 を重点分野の一つに掲げ 質の高い運輸 交通インフラを整備し 人とモノの効率的な移動を促進するとしており 本事業はこれら方針 分析に合致している JICA は 過去に都市鉄道法や都市鉄道技術基準等の法制度整備を支援する目的で個別専門家 ダッカ都市高速鉄道実施体制強化支援 (2010 年度 2011 年度 ) 及び有償勘定技術支援 ダッカ都市交通法整備支援 (2013~2015 年度 ) を実施した その他 上述の改訂 STP の策定を有償勘定技術支援 ダッカ都市交通戦略計画改訂プロジェクト (2014~2016 年度 ) を通じて支援した (3) 他の援助機関の対応世界銀行は STP の策定 (2005 年 ) を支援した他 BRT3 号線 ( 空港 ジヒミール間 ) の詳細設計を支援する Clean Air and Sustainable Environment Project を 2009 年から 2016 年にかけて実施した アジア開発銀行 (Asian Development Bank 以下 ADB という ) は 2010 年より 2019 年中の開業に向け BRT3 号線 ( ガジプール 空港間 ) を整備する Greater Dhaka Sustainable Urban Transport Corridor Project を実施中 3. 事業概要 (1) 事業目的本事業は 急速な都市化と交通量の増加による交通渋滞と環境の悪化に直面する首都ダッカにおいて 東西に接続する都市高速鉄道 (MRT5 号線 ) を建設し 公共交通網のネットワークを形成することにより ダッカ都市圏の輸送需要への対応を図り もって交通混雑の緩和を通じた経済の発展及び都市環境の改善に寄与するもの 本借款は本事業の詳細設計 入札補助 環境社会配慮手続き支援等に係るエンジニアリング サービスを対象とし 本事業の円滑な実施促進を図るもの (2) プロジェクトサイト / 対象地域名ダッカ県 (3) 事業内容

1) 車両基地建設 ( 土地整備 車庫建設 引き込み線敷設等 )( 国際競争入札 ) 2) 鉄道構造物建設 ( 約 20 km)( 高架鉄道施設 地下鉄道施設 駅舎建設 軌道敷設等 )( 国際競争入札 ) 3) 電気 通信 信号システム敷設 ( 国際競争入札 ) 4) 車両調達 (180 両 (6 両 30 編成 ))( 国際競争入札 ) 5) コンサルティング サービス (F/S レビュー 詳細設計 入札補助 施工監理 環境社会配慮支援 運営 維持管理能力強化支援 組織開発支援 非鉄道事業開発支援 安全対策支援 )( ショート リスト方式 ) 本借款では本事業のためのコンサルティング サービスとして 上記 5) のうち F/S レビュー 詳細設計 入札補助 環境社会配慮支援 運営 維持管理能力強化支援 環境社会配慮支援 組織開発支援 非鉄道事業開発支援 安全対策支援を行う なお 本事業は ADB との協調融資により実施する予定 (4) 総事業費 519,850 百万円 ( うち 今次借款額 :7,358 百万円 ) (5) 事業実施期間 2018 年 6 月 ~2022 年 6 月を予定 ( 計 49 ヶ月 ) 貸付完了日(2022 年 6 月 ) をもって本借款を完成とする (6) 事業実施体制 1) 借入人 : バングラデシュ人民共和国政府 (The Government of the People s Republic of Bangladesh) 2) 保証人 : なし 3) 事業実施機関 : ダッカ都市交通会社 (Dhaka Mass Transit Company Limited 以下 DMTC という ) 4) 運営 維持管理機関本事業の運営 維持管理は DMTC が行う 先行する円借款 ダッカ都市交通整備事業 におけるコンサルタント及び各契約に含まれる技術指導や 現在案件形成中の技術協力 MRT 運営管理人材強化プロジェクト を通じ 6 号線の運営 維持管理に従事する DMTC 職員に必要な技術 知識を移転する予定 また かかる協力によって育成された指導人材を通じて MRT5 号線に従事する人材の育成を図る予定 一方で MRT6 号線には含まれない地下区間の運営 維持管理については本事業のコンサルティング サービスを通じて支援する予定 財務面については 基本的には運賃収入により運営 維持管理及び元利返済等に係る費用を賄う予定であるが 先行する円借款 ダッカ都市交通整備事業 では 運賃を貧困層に配慮して設定する必要があることから不足分について政府出資及び政府からの譲許的な条件による転貸で

補填することで元利返済の負担を軽減している 本事業においても同様の措置について詳細設計で検討することを当国政府と合意している (7) 他事業 他援助機関等との連携 役割分担円借款 ダッカ都市交通整備事業 では 先行路線である MRT6 号線の整備を支援している他 実施機関であるダッカ都市交通会社の設立を支援している 加えて 円借款 ダッカ都市交通整備事業 (1 号線 )(E/S) では 本事業と交差する予定である MRT1 号線の詳細設計及び入札補助を支援している また 本事業は IC カード料金システムを導入見込みであり 技術協力 ダッカ市都市交通料金システム統合のためのクリアリングハウス設立プロジェクト ( 2014 年 ~2018 年 ) により IC カードによる決済システムの制度設計及び決済処理するためのクリアリングハウスの組織体制の整備を支援中 かかる制度設計に基づき IC カード普及の恒久的な実施体制の整備をめざし 2018 年度から開始予定の技術協力 ダッカ都市交通料金統合のためのクリアリングハウス設立プロジェクトフェーズ 2 を形成中 これらの協力で制度設計及び体制整備を行う IC カードの決済システムは本事業でも導入される予定 (8) 環境社会配慮 貧困削減 社会開発 1) 環境社会配慮 1 カテゴリ分類 : カテゴリ A 2 カテゴリ分類の根拠本事業は 国際協力機構環境社会配慮ガイドライン (2010 年 4 月公布 )( 以下 JICA ガイドライン ) に掲げる鉄道セクター及び影響を及ぼしやすい特性に該当するため 3 環境許認可本事業に係る環境影響評価 (EIA) 報告書は 2017 年 11 月にバングラデシュ環境森林省環境局 (Department of Environment) により承認済 4 汚染対策工事中の大気質 騒音 振動については 定期的な散水 仮囲いの設置 建設機材に対する消音機の装備 遮音壁の設置 定期的な機材の維持管理等の対策により影響を最小化する 供用時の地上 高架部分の鉄道騒音については 事業対象地域の騒音は当国の騒音基準を超過しているが 遮音壁の設置等により騒音は現状より悪化せず 日本の在来鉄道の鉄道騒音基準を満たす見込み 供用時の駅 車両基地からの排水は 排水処理設備により適切に処理することにより 水質の悪化は回避される見込み 地下水については 地下水の水位が地下構造物よりも深いことから特段の影響は想定されていないが 定期的なモニタリングを行う また 本事業では大量の地下トンネル掘削による建設残土 ( 約 150 万m3 )

が発生するが かかる建設残土についてはダッカ首都圏開発公社 (RAJUK) 及び民間企業による埋立 盛土用に再利用される予定 詳細設計において 具体的な使用用途 保管方法 処理方法等について当国政府内で調整され 決定される 5 自然環境面事業対象地域は国立公園等の影響を受けやすい地域またはその周辺に該当せず 自然環境への望ましくない影響は最小限であると想定される 6 社会環境面本事業は 施設建設の大半が既設道路幅上及びその地下を利用するが 約 23.6 ha( うち車両基地約 22 ha 地上 高架区間約 1.6 ha) の用地取得を伴う見込み 本事業による被影響住民 1,107 世帯 4,660 名のうち 29 世帯 135 人の住民移転が発生する予定である 当国国内手続きと JICA ガイドラインに沿って作成された住民移転計画に従って これらの用地取得及び住民移転の手続きが進められる 本事業に係る住民協議では 本事業実施に対する特段の反対は確認されていない 7 その他 モニタリング本事業では 工事中は大気質 騒音 振動 水質 廃棄物等についてコントラクター及び実施機関がモニタリングし 供用時は大気質 騒音 振動 水質等について実施機関がモニタリングする また 用地取得 住民移転等の進捗状況について実施機関がモニタリングする 2) 横断的事項 1 気候変動対策関連案件 : 本事業により 概算で約 39,491 トン / 年 (CO2 換算 ) の気候変動の緩和効果 (GHG 排出削減量 ) が期待される 2 貧困対策 貧困配慮 : 特になし 3 エイズ /HIV 等感染症対策 : 後述のジェンダーアクションプランにおいて 施工時におけるエイズ /HIV 等感染症予防策が検討される予定 4 参加型開発 / 障害配慮等 : バングラデシュの都市鉄道技術基準に基づき 視覚障害者誘導用ブロックや車いす等のための斜路 ( スロープ ) 等を含むバリアフリー設計を本事業において採用する予定 3) ジェンダー分類 : ジェンダー案件 GI (S) ( ジェンダー活動統合案件 ) < 活動内容 / 分類理由 > 当国の公共交通機関においてはセクシャルハラスメント防止策等がとられておらず 女性の安全性が十分に確保されていないため

女性が公共交通機関を利用する際の障害となっている そのため 車両及び駅施設における女性の安全やジェンダー理解促進を図る必要があることから ピーク時における女性専用車の運行や車両及び駅構内の監視カメラの設置等を含んだジェンダーアクションプランに合意しており 本事業のプログレスレポートの中でモニタリングされる予定 (9) その他特記事項特になし 4. 事業効果 (1) 定量的効果 1) アウトカム ( 運用 効果指標 ) 基準値目標値 (20 〇〇年 ) 指標名 (20 〇〇年実績値 ) 事業完成〇年後 乗客輸送量 ( 千人 km/ 日 ) 運行数 ( 列車本数 / 日 ) 稼働率 (%) 本体借款検討時に設定予定車両キロ (km) 特定区間の所要時間 ( 分 ) (2) 定性的効果ダッカ都市圏内の輸送需要への対応 公共輸送の促進を通じた大気汚染の抑制及び温室効果ガス削減による気候変動の緩和 (3) 内部収益率本体借款検討時に設定予定 5. 前提条件 外部条件 (1) 前提条件 : 特になし (2) 外部条件 : 特になし 6. 過去の類似案件の教訓と本事業への適用 (1) 類似案件からの教訓インド カルカッタ地下鉄建設事業 の事後評価 (2002 年 ) 等から 用地取得や施設移転が生じる事業では 計画 実施段階において積極的に住民 関係者の意見を取り入れることが重要との教訓が得られている また 上下水道等の地下埋設物が工期の遅延及びコストオーバーランの要因になりうるとの教訓が得られている また インド デリー高速輸送システム建設事業 (Ⅰ)~( Ⅳ)

の事後評価等において 水道公社等ではなく実施機関 ( デリーメトロ公社 ) が全ての地下埋設物の移設を行うことで工期の遅れを防いだと評価されている 先行する円借款 ダッカ都市交通整備事業 においては 他機関により計画された高架道路橋 ( フライオーバー ) の建設により 当該事業の平面線形の変更を余儀なくされた事から 計画段階において関係機関との調整を十分に行う必要があるとの教訓が得られている さらに インド デリー高速輸送システム建設事業 (Ⅰ)~(Ⅵ) 等 過去の都市鉄道案件の事後評価からは 収益性確保の前提が十分に確保されているかどうかを確認し 不十分な場合はそれを促す必要があると指摘されている (2) 本事業への教訓の活用本事業では 上記の教訓を踏まえ 環境社会配慮支援コンサルティング サービス等を通じて 本借款の詳細設計の段階から用地取得の規模及び移転先を特定し 各ステークホルダーとの協議を開始する予定 また 詳細設計の段階で地質調査 地下埋設物調査 埋設支障物調査及び文化財調査を実施する他 本事業の実施機関である DMTC が地下埋設物の移設 地下埋設物除去及びそれに伴う関係機関との調整等を行うことで 当該事由による工期の延伸やコストオーバーラン等を予防する予定 計画段階における他機関との調整に関しては 改訂 STP の中で計画されている開発事業のみが事業実施可能であるとされており 他機関の事業により本事業の計画変更を行うことは想定されないものの DMTC を含む関係機関が出席する省庁間協議を通じて必要な調整が行われる予定 財務面においては バングラデシュ政府からの譲許的な財政措置を確保するほか 運賃収入に加え非鉄道収入を確保するために 沿線開発 (Transit-oriented Development, TOD) による開発収入 駅構内の売店設置によるテナント収入 広告収入等のビジネスプランの作成をコンサルティング サービスを通じて支援する予定 7. 評価結果本事業は 急速な都市化と交通量の増加による慢性的な交通渋滞と環境の悪化に直面する首都ダッカにおいて 東西に接続するMRT5 号線を建設することにより 公共交通網のネットワーク化を通じてダッカにおける交通の円滑化を図り 地域経済の発展及び都市環境の改善に寄与するものである 本事業はバングラデシュ政府の開発政策 我が国及びJICA の援助方針 分析に合致しており また SDGsゴール11( 包摂的 安全 強靭で 持続可能な都市と人間住居の構築 ) に貢献すると考えられることから JICA が本事業の実施を支援する必要性は高い

8. 今後の評価計画 (1) 今後の評価に用いる指標本体借款検討時に設定予定 (2) 今後の評価スケジュール本体借款検討時に設定予定 以上