道徳科の授業を構成する手立て 1 教育課程編成の一般方針道徳教育は, 学校や児童生徒の実態などを踏まえ設定した目標を達成するために, あらゆる教育活動を通じて, 適切に行われなくてはならない その中で, 道徳科は, 各活動における道徳教育の要として, それらを補ったり, 深めたり, 相互の関連を考え

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資料3 道徳科における「主体的・対話的で深い学び」を実現する学習・指導改善について

第4章 道徳

2 研究の歩みから 本校では平成 4 年度より道徳教育の研究を学校経営の基盤にすえ, 継続的に研究を進めてきた しかし, 児童を取り巻く社会状況の変化や, 規範意識の低下, 生命を尊重する心情を育てる必要 性などから, 自己の生き方を見つめ, 他者との関わりを深めながらたくましく生きる児童を育てる

(3) 資料について本資料は混雑したお店で孫が積んである段ボールを崩してしまい困っているおばあさんの代わりに わたし とその友達の友子が 整理していると 事情の知らない店員に叱られてしまう その後 おばあさんにお礼を言われたが わたし と友子はすっきりしないで帰る 数日後 店員からお詫びの手紙が来た

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課題研究の進め方 これは,10 年経験者研修講座の各教科の課題研究の研修で使っている資料をまとめたものです 課題研究の進め方 と 課題研究報告書の書き方 について, 教科を限定せずに一般的に紹介してありますので, 校内研修などにご活用ください

4 研究主題との関連 自分を見つめ 友達の思いを大切にする子供の育成 道徳授業の充実を通して 研究主題に迫るために 4 年生では子供たちの目指すべき児童像を 自分の思いを見つめる子 友達の思いに気付く子とした また 目指すべき具体的な児童像を 資料の世界観に浸り 登場人物に自分を重ねながら登場人物の

平成29年度 小学校教育課程講習会 総合的な学習の時間

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1. 研究主題 学び方を身につけ, 見通しをもって意欲的に学ぶ子どもの育成 ~ 複式学級における算数科授業づくりを通して ~ 2. 主題設定の理由 本校では, 平成 22 年度から平成 24 年度までの3 年間, 生き生きと学ぶ子どもの育成 ~ 複式学級における授業づくり通して~ を研究主題に意欲的

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7 本時の指導構想 (1) 本時のねらい本時は, 前時までの活動を受けて, 単元テーマ なぜ働くのだろう について, さらに考えを深めるための自己課題を設定させる () 論理の意識化を図る学習活動 に関わって 考えがいのある課題設定 学習課題を 職業調べの自己課題を設定する と設定する ( 学習課題

2年生学級活動(性に関する指導)指導案

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Taro-小学校第5学年国語科「ゆる

平成 28 年度全国学力 学習状況調査の結果伊達市教育委員会〇平成 28 年 4 月 19 日 ( 火 ) に実施した平成 28 年度全国学力 学習状況調査の北海道における参加状況は 下記のとおりである 北海道 伊達市 ( 星の丘小 中学校を除く ) 学校数 児童生徒数 学校数 児童生徒数 小学校

7 月の 人の心にふれて では, 人に素直に親切にできた経験をふり返る ぼく の気持ちを考えることを通して, だれに対しても相手の立場に立って温かな心で接していこうとする心情を育てることをねらいとして取り組んだ 授業後には, 親切にしたいと心では思っていても行動に移すのは難しい でも思っているだけで

エコポリスセンターとの打合せ内容 2007

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ICTを軸にした小中連携

平成 年度佐賀県教育センタープロジェクト研究小 中学校校内研究の在り方研究委員会 2 研究の実際 (4) 校内研究の推進 充実のための方策の実施 実践 3 教科の枠を越えた協議を目指した授業研究会 C 中学校における実践 C 中学校は 昨年度までの付箋を用いた協議の場においては 意見を出

平成 29 年度全国学力 学習状況調査の結果の概要 ( 和歌山県海草地方 ) 1 調査の概要 (1) 調査日平成 29 年 4 月 18 日 ( 火 ) (2) 調査の目的義務教育の機会均等とその水準の維持向上の観点から 全国的な児童生徒の学力や学習状況を把握 分析し 教育施策の成果と課題を検証し

とができる児童が増えてきている 総合的な学習の時間の 私たちにできることは何だろう では 調べ学習や実際の車いす体験の学習を通して 相手の気持ちを考えて親切な行動をすることの大切さを学んできている 一方で 仲の良い友達には親切にできるが そうでない友達には同じように親切にできない児童がいる また 困

第 1 学年国語科学習指導案 日時 平成 27 年 11 月 11 日 ( 水 ) 授業 2 場所 八幡平市立西根中学校 1 年 2 組教室 学級 1 年 2 組 ( 男子 17 名女子 13 名計 30 名 ) 授業者佐々木朋子 1 単元名いにしえの心にふれる蓬莱の玉の枝 竹取物語 から 2 単元

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勝ちにこだわるあまり, 他人の気持ちを考えない言動をする生徒がいたため, 全体指導を行った経緯もある 以上の事から, 中学校生活で様々な活動に一生懸命に取り組む中で, 思うようにいかず, 悔しい思いをする経験をした生徒が多いことがわかる 本学級の生徒がこの経験を生かし, さらに成長するためには, 悔

中学校第 3 学年社会科 ( 公民的分野 ) 単元名 よりよい社会をめざして 1 本単元で人権教育を進めるにあたって 本単元は 持続可能な社会を形成するという観点から 私たちがよりよい社会を築いていくために解決すべき課題を設けて探究し 自分の考えをまとめさせ これらの課題を考え続けていく態度を育てる


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第 3 学年道徳学習指導案 1 主題名どうすることが正しいか 1-(3) 勇気 平成 27 年 9 月 11 日 ( 金 ) 第 3 学年 2 組 34 名 授業者久米亨 2 資料名 思いきって言ったらどうなるの? ( 出典 : 光文書院 ) 3 主題設定の理由 (1) ねらいとする価値について中学

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新しい幼稚園教育要領について

第 5 学年 社会科学習指導案 1 単元名自動車をつくる工業 2 目標 我が国の自動車工業の様子に関心を持って意欲的に調べ, 働く人々の工夫や努力によって国民生活を支える我が国の工業生産の役割や発展について考えようとしている ( 社会的事象への関心 意欲 態度 ) 我が国の自動車工業について調べた事

Ⅰ 評価の基本的な考え方 1 学力のとらえ方 学力については 知識や技能だけでなく 自ら学ぶ意欲や思考力 判断力 表現力などの資質や能力などを含めて基礎 基本ととらえ その基礎 基本の確実な定着を前提に 自ら学び 自ら考える力などの 生きる力 がはぐくまれているかどうかを含めて学力ととらえる必要があ

平成 30 年 6 月 8 日 ( 金 ) 第 5 校時 尾道市立日比崎小学校第 4 学年 2 組外国語活動 指導者 HRT 東森 千晶 JTE 片山 奈弥津 単元名 好きな曜日は何かな? ~I like Mondays.~ 本単元で育成する資質 能力 コミュニケーション能力 主体性 本時のポイント

「主体的・対話的で深い学び」の実現に向けて

平成 29 年度全国学力 学習状況調査の結果の概要 ( 和歌山県和歌山市 ) 1 調査の概要 (1) 調査日平成 29 年 4 月 18 日 ( 火 ) (2) 調査の目的義務教育の機会均等とその水準の維持向上の観点から 全国的な児童生徒の学力や学習状況を把握 分析し 教育施策の成果と課題を検証し

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持ちを更に考え 何故主人公はマネージャーを引き受けたのか クラス全体での討論から考えさせたい そして 第 3の話題として最後に 4 年もの長い間 苦しい気持ちを一言も言わずに献身的に働いた鈴木さんの姿から 自己の役割を受け止め責任を持って最後までやり遂げたことから 集団の一員としての役割を果たすこと

道徳学習指導案

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第 2 学年道徳学習指導案 平成 27 年 6 月 12 日 ( 金 ) 第 2 学年 2 組 34 名授業者川田聡子 1 主題名友達と助け合う心 2-(3) 信頼 友情 助け合い 2 資料名 森のともだち ( 出典 : 東京書籍 みんなたのしく ) 3 主題設定の理由 (1) ねらいとする価値につ

平成23年度全国学力・学習状況調査問題を活用した結果の分析   資料

< 心の中でおうえんしながらそっと見守ったぼく > ぼくの状況 家に用事があったけれど じっとおばあさんを見ていた < 最初に声をかけたぼく > ぼくの状況 お母さんのお手伝いをする約束を果たすため 下校を急いでいた おばあさんの状況 不自由な足を一生懸命動かして坂を上っている この間より足どりが重

4 本単元と情報リテラシーの関わり 課題設定担任による 説明会におけるデモンストレーションを見ることを通して 本単元を貫く言語活動としての これぞ和の文化! おすすめの 和の文化 を調べて説明会を開こう を知り 見通しを持たせ学校司書による関連図書紹介を通して 和の文化への関心を高め 進んで調べよう

人間関係を深めるとともに, 児童が自己の生き方についての考えを深め, 家庭や地域社会との連携を図りながら, 集団宿泊活動やボランティア活動, 自然体験活動などの豊かな体験を通して児童の内面に根ざした道徳性の育成が図られるよう配慮しなければならない その際, 特に児童が基本的な生活習慣, 社会生活上の

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PowerPoint プレゼンテーション

(2) 指導の実際 1 話すこと 聞くこと の実践ア協働による教材研究の柱 モデルの提示について対話のためのスキルの定着や対話の深まりを目指し, 教師や代表グループによる対話のモデルを提示し, 気付いたことや発見したことを基に自分たちの対話や話合いの様子を振り返らせ, 学びの充実を図るようにする 共

(4) 特別の教科道徳 としての位置付け平成 26 年 10 月 21 日に中央教育審議会は 道徳に係る教育課程の改善等について を答申 道徳の時間を 特別の教科道徳 ( 仮称 ) として位置付け 検定教科書を導入することなどを提言 中央教育審議会答申の概要 ( 平成 26 年 10 月 ) 1 道

指導内容科目国語総合の具体的な指導目標評価の観点 方法 読むこと 書くこと 対象を的確に説明したり描写したりするなど 適切な表現の下かを考えて読む 常用漢字の大体を読み 書くことができ 文や文章の中で使うことができる 与えられた題材に即して 自分が体験したことや考えたこと 身の回りのことなどから 相

られる 日常の生活場面でも, そのことを裏付けるような行動が時折見られることがある (3) 教材について 1 教材名 手品師 出典 : 新しい道徳 6 東京書籍 2 価値 A-(2) 正直, 誠実 3 教材について本教材は, あまり売れない手品師が大劇場のステージに立てるチャンスを捨て, 男の子と交

平成 30 年度なごや小学校努力点推進計画 1 研究主題なかまとともに感性輝くなごやっ子 (1 年次 ) 2 研究主題について本校では 昨年度までの努力点研究において 道徳や特別活動の時間を中心に 子ども一人一人の成長と互いの認め合いをめざすことで 子ども自らが なごや小でよかった と感じられるよう

座標軸の入ったワークシートで整理して, 次の単元 もっとすばらしい自分へ~ 自分向上プロジェクト~ につなげていく 整理 分析 協同的な学習について児童がスクラップした新聞記事の人物や, 身近な地域の人を定期的に紹介し合う場を設けることで, 自分が知らなかった様々な かがやいている人 がいることを知

必要性 学習指導要領の改訂により総則において情報モラルを身に付けるよう指導することを明示 背 景 ひぼう インターネット上での誹謗中傷やいじめ, 犯罪や違法 有害情報などの問題が発生している現状 情報社会に積極的に参画する態度を育てることは今後ますます重要 目 情報モラル教育とは 標 情報手段をいか

し, 定期的に評価することで 自己の考え を自覚する場面を意図的に設定している 本教材の学習においては, 様々な情報の中から必要な情報を取り出し, 整理 分析し, それに基づいた自分の考えを表現する活動を通して, 自己の考えの深まりや広がり を実感させることによって, 課題改善につなげたいと考えてい

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学習指導要領の趣旨を実現する授業づくりのポイント

H26関ブロ美術プレ大会学習指導案(完成版)

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主語と述語に気を付けながら場面に合ったことばを使おう 学年 小学校 2 年生 教科 ( 授業内容 ) 国語 ( 主語と述語 ) 情報提供者 品川区立台場小学校 学習活動の分類 B. 学習指導要領に例示されてはいないが 学習指導要領に示される各教科 等の内容を指導する中で実施するもの 教材タイプ ビジ

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各教科 道徳科 外国語活動 総合的な学習の時間並びに特別活動によって編成するものとする 各教科 道徳科 総合的な学習の時間並びに特別活動によって編成するものとする

う来なかった 翌々日の月曜日 あきらは じゅんに いいよ と返事をもらったのに どうしてこなかったのか と詰め寄った それに対して じゅんからは いいよ って 断ったじゃないか という返事が返ってきた という内容である ここでは 文字だけで思いを伝える難しさと 相手の立場をよく考えて情報を発信する大

41 仲間との学び合い を通した クラス全員が学習に参加できる 授業づくり自分の考えを伝え 友達の考えを聞くことができる子どもの育成 42 ~ペア グループ学習を通して~ 体育における 主体的 対話的で深い学び を実現する授業づくり 43 ~ 子どもたちが意欲をもって取り組める場の設定の工夫 ~ 4

第1学年5組 道徳学習指導案

自己決定の場を設定する 自己存在感を持たせる 共感的な人間関係を育成する準備活動のどの場面で どの子どもを生かすのか 見通しを持って授業に臨む 導入の場面する 深める場面り返りの場面2 確かな学力の育成 複雑で変化の激しい現代社会に子どもたちが主体的に関わり よりよい社会を創造していくためには 一人

H27 国語

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今年度の校内研究について.HP

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授業の構成要素 学び合う授業で育つ 3 つの力 資料 2 基礎 基本の力知識 理解 技能 問題解決力思考力 判断力 表現力 想像力 学ぼうとする力学習意欲 自己有用感 身に付けた知識 技能を活用したり その成果を踏まえた探究活動を行う中で学び合う授業を展開する 教師の役割 < 問題提示の工夫 > 多

いとする価値 生命の尊さ と自己の生き方との関わりについて, さらに考えを深める時間としたい これは, 内容項目 生命の尊さを知り, 生命あるものを大切にすること に関する学習を道徳の時間を要にし, 関連する各教科 領域または日常生活と組み合わせて作成したものである 導入では, 生命に関する価値を確

2、協同的探究学習について

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工業教育資料347号

3 各エキスパートグループを解体し 一人ずつ組み合わせて新たなグループを作り 意見を統合し問いに対する新たな答えを出す ( ジグソー活動 ) 4 最後に 各ジグソーグループで考えた自分達の答えを全体で交換し合い 一人一人が 様々な答えから自分で最も納得のいく 言い方 表現 を拾って 納得できる答えを

平成 30 年 1 月平成 29 年度全国学力 学習状況調査の結果と改善の方向 青森市立大野小学校 1 調査実施日平成 29 年 4 月 18 日 ( 火 ) 2 実施児童数第 6 学年 92 人 3 平均正答率 (%) 調 査 教 科 本 校 本 県 全 国 全国との差 国語 A( 主として知識

H30全国HP

Taro-【HP用】指導案.jtd

道徳の時間学習指導案 指導者 T1 長手英克 T2 浜井綾子 1 学年第 4 学年 15 名 2 主題名本当の友達 B 友情, 信頼 3 ねらいなつみに逆上がりを教えようと思うようになったてつおの気持ちを考えることを通して, 友達には自分とは違ったよさがあり, それぞれが力を発揮すると一人ではできな

た, 導入で扱うイメージキャラクターについて, デザインやネーミングの意図, 理由について疑問や関心を持つことにより, より北広島町に興味を持つことが可能となる その他, 調べる際に新聞記事を利用することにより, 記事をスクラップすることができる 記録性 に優れ, 疑問を解決するための手立て, 情報

生徒自身, 思いやりをもった行動ができたと感じていても, 相手の立場に立った行動になっていないこともあるこのキャストの心情を考えることで, 相手の気持ちや立場に共感し, 相手のことを考えた上でキャストがとった思いやりある行動, 親切な行為を学ばせたい (4) 生徒の実態と関わらせた指導の方策 ( 指

小学校道徳教育指導資料 総則編 1 学習指導要領改訂のポイント 1 2 道徳教育の目標のポイント 1 3 道徳教育の内容のポイント 2 4 道徳教育の指導体制と全体計画のポイント 3 5 指導内容の重点化のポイント 5 6 豊かな体験活動の充実といじめの防止について 5 7 家庭や地域社会との連携の

(1) 体育・保健体育の授業を改善するために

3 第 3 学年及び第 4 学年の評価規準 集団活動や生活への関心 意欲態度 集団の一員としての思考 判断 実践 学級の生活上の問題に関心 楽しい学級をつくるために を持ち 他の児童と協力して意 話し合い 自己の役割や集団と 欲的に集団活動に取り組もう してよりよい方法について考 としている え 判

5 児童の実態と主題に迫るための手だて (1) 児童の実態本学級の児童は明るく 男女の仲もよい いろいろな場面で声を掛け合ったり 仕事を手伝ったりできる児童も多い 話し合い活動では 友達の意見のいいところを取り上げて考えをまとめることができたり 人の意見を聞いて自分の考えを変えることができたりする児

平成 年度言語活動の充実促進モデル校事業の研究より 豊かな表現力を培う 各教科等における言語活動の充実 伝え合う力 の育成

彩の国埼玉県 埼玉県のマスコット コバトン 科学的な見方や考え方を養う理科の授業 小学校理科の観察 実験で大切なことは? 県立総合教育センターでの 学校間の接続に関する調査研究 の意識調査では 埼玉県内の児童生徒の多くは 理科が好きな理由として 観察 実験などの活動があること を一番にあげています

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<小学校 生活科>

○年○組 □□科学習指導略案

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けて考察し, 自分の考えを表現している 3 電磁石の極の変化と電流の向きとを関係付けて考え, 自分の考えを表現している 指導計画 ( 全 10 時間 ) 第 1 次 電磁石のはたらき (2 時間 ) 知 1, 思 1 第 2 次 電磁石の強さが変わる条件 (4 時間 ) 思 2, 技 1, 知 2

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道徳科の授業を構成する手立て 1 教育課程編成の一般方針道徳教育は, 学校や児童生徒の実態などを踏まえ設定した目標を達成するために, あらゆる教育活動を通じて, 適切に行われなくてはならない その中で, 道徳科は, 各活動における道徳教育の要として, それらを補ったり, 深めたり, 相互の関連を考えて発展させたり統合させたりする役割を果たす 学校教育全体を通して行う道徳教育 各教科 外国語活動 特別活動 日常の学級や学校生活 総合的な学習の時間 深める補う 発展させる統合させる 道徳科 小学校の時期においては,6 年間の発達の段階を考慮するとともに, 幼児期の発達の段階を踏まえ, 中学校の発達の段階への成長の見通しをもつ 中学校の時期においては 3 年間の発達段階を考慮するとともに, 特に中学校に入学して間もない時期には小学校高学年段階における指導との接続を意識しつつ, また学年が上がるにつれて高等学校等における人間としての在り方生き方に関する教育への見通しをもつ 道徳科においては, 発達の段階を前提としつつも, 指導内容や指導方法を考える上では, 個々人としての特性等から捉えられる個人差に配慮することも重要となる 児童生徒の実態を把握し, 指導内容, 指導方法を決定してこそ, 適切に指導を行うことが可能となる 2 道徳科の指導 (1) 道徳科の授業に取り組む基本的な構え道徳科の目標を達成するために, 下図のような検討を踏まえ, 授業の構想を立てる必要がある その際には, 道徳教育推進教師や他の教師と相談したり協力したりして授業に取り組むことも大切である ねらいの明確化 児童生徒の実態把握 教材の選定と活用の工夫 (2) ねらいの明確化年間指導計画に示されている主題名とねらいを確認し, そのねらいを基に, 学級の児童生徒の内面を見つめ直し, 各教科等での指導との関連を検討して, 何を指導していくのかを明確にしていくことが重要である (3) 児童生徒の実態把握道徳科の授業を行う際に, 学級担任として, 児童生徒一人一人のよさを発見し, その道徳性の発達段階について正確に把握しておくことが肝要である 実態を把握する方法としては, 道徳 -8 指導過程の構想 発問 話合い 書く活動 板書等の工夫等

生活場面での観察, 道徳授業での観察, 日記や作文等の生活記録の読み取り, 調査, カウンセリング, 検査などが考えられる (4) 教材を吟味する教科用図書や副読本等の教材について, 授業者が児童生徒に考えさせたい道徳的価値に関わる事項がどのように含まれているかを検討する 道徳科においても, 主たる教材として教科用図書を使用しなければならないことは言うまでもないが, 道徳教育の特性を鑑みれば, 多様な教材を併せて活用することが重要となる 教材は, 児童生徒の考えを深めさせるための手がかりとなるものであり, 児童生徒と指導のねらいを結び付ける媒体となる 教材を選択する際には道徳科の目標を踏まえ, 児童生徒が問題意識をもって多面的 多角的に考えたり, 感動を覚えたりするような充実した教材開発や活用も大切である 教材について, ねらいとのかかわりで道徳的価値がどのように含まれているかについて検討する際には, 指導者自身が, 教材の構造や表現の意図, そこに含まれる道徳的価値や人間性を深く理解することが大切である 道徳科に用いられる教材の具備する要件 児童生徒の発達の段階に即し, ねらいを達成するのにふさわしいものであること 人間尊重の精神にかなうもの 悩みや葛藤等の心の揺れ, 人間関係の理解等の課題も含め, 児童生徒が深く考えることができるもの 人間としてよりよく生きる喜びや勇気を与えられるもの 多様な見方や考え方のできる事柄を取り扱う場合には, 特定の見方や考え方に偏った取扱いがなされていないものであること 教材開発と活用の視点 ( 例 ) 生命の尊厳を題材にした教材生命ある全てのものをかけがえのないものとして尊重し, 大切にすることを考えられるようなもの 中学校ではさらに, 人間としての生き方と関わらせながら考えられるもの 社会参画を題材とした教材 個 から 公 に視点を広げていく背景として 他者 への思いやりの心に触れたもの 自然を題材にした教材自然の美しさや偉大さ, 不思議さなど, 感性に訴えるもの 中学校ではさらに, 人間の力を超えたものを謙虚に受け止める心を育てるもの 伝統と文化を題材とした教材有形無形の美しさに国や郷土への誇り, 愛情を感じさせるもの 先人の伝記を題材とした教材多様な生き方が織り込まれ, 生きる勇気や知恵などを感じることができるとともに, 人間としての弱さを吐露する姿などにも接し, 生きることの魅力や意味の深さについて考えを深めるもの スポーツを題材とした教材オリンピックやパラリンピックなど, 世界を舞台に活躍している競技者やそれを支える人々のチャレンジ精神や力強い生き方, 苦悩などに触れて道徳的価値の理解やそれに基づいた自己を見つめる学習を深められるもの 情報化への対応等の現代的な課題などを題材とした教材単に情報機器の操作や活用など, その注意点を扱うのではなく, 活用するのは人間であるからこそ, 例えば 節度, 節制 や 規則の尊重, 自主, 自律, 自由と責任 など関わりのある道徳的価値について考えを深められるもの 道徳 -9

~ ~ (5) 学習指導過程の構想 ( 読み物教材を使った基本的な指導過程 ) 導入 5 段階ねらいと指導内容指導上の留意事項 展開前段 25 30 展開後段 10 15 終末 5 方向付け 価値の追求 把握 価値の自覚 まとめ ねらいへの方向付けをする 価値への方向付け 教材への方向付け 学習への興味, 関心を高める 教材を通してねらいとする価値を追求し把握させる 簡潔に あらすじ を確認する 教材をもとに, 主人公等の思いや考え方に共感させる 級友の価値観と照らし合わさせることで, 自分の感じ方や考え方の位置を知らせ, 自分の価値観を深化させる 価値の内面的自覚を図る 展開前段で資料を用い多様な価値観にふれ, 高められた価値観で自分の在り方や生き方と関連させて見つめさせる ねらいとする価値について整理してまとめをする (6) 読み物教材を活用する場合の考え方 1 活用類型読み物教材の活用を図る一つの考え方として活用類型がある 活用類型と活用の方法は, 以下の表のようになる いずれの活用類型においても, 児童生徒が主人公等の行為を第三者的に客観的な視点から批判したり, 気付いたりしたことや読み物教材に書いてある表面的な内容だけを話し合うような授業になることのないよう, 十分な配慮が必要である そのためには, 批判的活用をする場合でも, 主人公等の思いや考え方に十分共感することを通して生まれた児童生徒の心の揺れや対立を引き出すことが大切である [ 資料の活用類型と発問のかたち ] 道徳 -10 価値への方向付けと教材の方向付けのどちらか一つを行えばよい 教材によっては, 方向付けを必要としないものもある 経験の話し合いやアンケートの活用, 視聴覚教材の提示などの工夫もある 中心教材の提示を工夫する [ 教材を提示する工夫 ] 読み聞かせ, 範読, 紙芝居, 影絵, 人形やペープサートを生かした劇, ビデオ映像など 教材は一度に見せて, 全体を見通ことを原則とする 価値の把握の段階は, 本時のねらいとする道徳的価値観に対する児童生徒の道徳的心情について評価しやすい 教材から離れて, 自分の過去及び現在を素直に振り返らせたい 教材から離れる際には, スムーズに移行させたい 価値の自覚の段階は, 児童生徒の道徳的実践意欲 態度や道徳的判断力について評価しやすい場面である ねらいとする価値について, 本時の話し合いだけでは十分でない点についての補足をするときもある 活用類型活用の方法発問のかたち 共感的活用 感動的活用 主人公等の考え方, 感じ方に共感させることによって, 自分の現在の価値観に気付かせ自覚を促す 教材が深い感銘を与える場合, 生徒の感動を特に重視しながら, ねらいとする価値把握を図る そのとき主人公はどのような気持ちだっただろう そのとき主人公は何を考えていただろう そのとき主人公は何を悩んでいただろう 心に残ったところはどこだろう なぜそこが心に残ったのだろう なぜみんなを感動させるのだろう 範例的活用主人公等の行った道徳的行為を, 手本にしたいところはどのようなと

批判的活用 児童生徒に一つの手本や範例として受け取らせる 主人公等の行為や考え方を児童生徒に批判させ, 互いの意見を交わすことにより道徳的な考え方, 感じ方を深めさせる 道徳科の授業では, 教材を使って, 自己を見つめさせ, 内面から自覚させることが基本である つまり, 読み物教材の場合, 登場人物に自分を重ねて語ることができる発問が原則である 特に小学校段階では共感的活用が中心となる 発達段階に応じ, 批判的な見方を含めた展開にするような指導の工夫もあるが, 展開前段では そのときの登場人物はどんな気持ちだっただろう そのときの登場人物はどんなことを考えているか という発問を基本とする また, 読み物教材の活用の工夫として, ねらいにせまるために時間や児童生徒の実態を考慮した付け加え, 削除, 修正や難解な部分や場面の解説などについても準備する必要がある 2 発問の工夫と構成ア道徳の授業の流れと発問の構成 イ発問の工夫発問を構成する場合には, 授業のねらいに深く関わる中心的な発問をまず考え, 次にそれを生かすためにその前後の発問を考え, 全体を一体的に捉えるようにするという手順が有効な場合が多い 考える必然性や切実感のある発問 自由な思考を促す発問 物事を多面的 多角的に考えたりする発問などウ発問の種類 基本発問 人間関係を確認したり状況を把握したりする, 中心発問の一助とする補助的な発問である 基本発問は, 発達段階や教材の複雑さにもよるが,1~2 問とする 中心発問 本時のねらいとする価値に迫るための多様な価値観を引き出す発問である 中心発問では, 一人一人の児童生徒に教材の主人公等に自己を映し出させ, 多様な感じ方や考え方を引き出す 中心発問は, 主人公等が ねらい とする価値を十分把握しきれずに, 悩み, 苦しむ場面に設定する場合が多い 補助発問 中心発問における児童生徒の反応は多様であっても思いつきであったり, きれいごとやたてまえであったりすることが少なくない また, 類型化された価値観に出会うことによって, 新たに価値観の変化が生じてくることもある こうしたタイミングをとらえ, 本時のねらいにせまるために, 本音を引き出し, 考え方を深めるためにする, 掘り起こしや切り返しの発問である 価値の把握の発問 本時のねらいを把握することができる発問である 中心発問と補助発問に対する話し合いで価値観を高め価値を把握させるのが望ましい しかし, 容易ではないので価値の把握の発問を用意する 道徳 -11 ころか 見習いたいところはどのようなところか どうしてこんな立派な行為ができたのだろう このときの主人公の考えをどう思うか この主人公の行為をどう思うか この行為をした主人公をどう思うか 方向付け 教材の範読 ( あらすじの確認 ) 提示 基本発問 中心発問 ( 補助発問 ) 価値の把握の発問 価値の自覚の発問 価値の自覚の発問 まとめ

価値の把握の発問では, 主人公等が本時のねらいとする価値に気付き, よりよく生きていこうとする気持ちに共感させ, 児童生徒一人一人の中でその価値観が高まるようにする 価値の自覚の発問 本時に学んだことを通し, 今までの自分自身を振り返る発問である 展開前段で教材を用いて多様な価値観にふれ, 高められた価値観で自分の在り方や生き方と関連させて見つめさせる エ発問例 導入 展開前段 段階発問例 方向付け 価値の追求 把握 ( 導入例 ) 価値への方向付け どんなときに礼儀の大切さを感じますか 教材への方向付け この写真の人たちは何をしているところでしょう ( 基本発問の例 ) 児童生徒に人間関係を把握させたいとき 主人公が友達に誘われたとき, どんな気持ちでしたか 児童生徒に状況を把握させたいとき そのとき主人公は, どんなことを考えましたか ( 中心発問の例 ) 多様な価値観を引き出す そのとき主人公は何を悩んでいたと思いますか このとき主人公はどんな気持ちだったでしょう 主人公は家に帰ったあと, 一人になってどんなことを考えていますか ~の心の中はどんなだったかな ( 補助発問の例 ) 同じような意見や考えが続くとき だれもがそんな気持ちになれるのかな 児童生徒の感じ方や考え方を一層深めるとき そういう思いだけかな 本当にそれでよかったのかな 表面的な意見を掘り下げたいとき 先生を相手だと思って実際に謝ってごらん 児童生徒の視点を変えたいとき でもそのとき, 主人公の母親はどう感じていたでしょう 話し合いを焦点化させたいとき なぜそんなことをしたと思いますか 児童生徒が今まで意識していなかった感じ方や考え方を引き出すとき じゃあ, どんな気持ちから主人公は~をしたのでしょう 学級全体で議論したり練り上げたりしたいとき ~さんの言ったことについて, みんなはどう思いますか ( 価値の把握の発問の例 ) ねらいとする価値に気付き前向きに行動している主人公等に共感させる 主人公は黙って荷物を持ちながら, どんなことを考えていたでしょう ( 発問で注意したいこと ) 基本的には主人公の心情を問う 一問一答的な発問は避ける 登場人物の心情を問うことばかりの繰り返しにならない 登場人物に対して共感することなく, 第三者的に批判させない 道徳 -12

展開後段 終末 価値の自覚 まとめ ( 価値の自覚の発問の例 ) 成功体験を想起させるとき 進んで仕事をしたことが, 他人や社会のために役立ったと思えたことはありませんか 失敗体験を想起させるとき きまりを考えずに行動し, 周りに迷惑をかけたことはありませんか じっくり考えさせたいとき 自分の経験を交えながら, 主人公へ手紙を書いてみよう ( 発問で注意したいこと ) 決意表明を促すのではなく, 自己を深く見つめることができるように導く 教師の説話 体験談, 視聴覚資料, 詩や格言などを活用し, 余韻が残るようにまとめる 失敗談や心の葛藤, 感動したことなど教師自身のことについて語ることは, 児童生徒との人間関係を築く上でも, 共に悩み学ぶ姿勢を示す上でも有効である (7) その他, 道徳科に生かす指導方法の工夫 1 話合いの工夫 児童生徒相互の考えを深める中心的な学習活動であり, 道徳科においても重要な役割を果たす 考えを出し合う, まとめる, 比較するなどの目的に応じて効果的に話合いが行われるよう工夫する 話すことと聞くことが並行して行われ, 友達の考え方についての理解を深めたり, 自分の考えを明確にしたりすることができる 2 書く活動の工夫 児童生徒が自ら考えを深めたり, 整理したりする機会として, 重要な役割をもつ 自分自身とじっくりと向き合ったり自分なりにじっくりと考えたりすることができる 1 冊のノートなどを活用することによって, 学習を継続的に深めていくことができ, 児童生徒の成長の記録として活用したり, 評価に生かしたりすることもできる 3 動作化, 役割演技等の表現活動の工夫 児童生徒に特定の役割を与えて即興的に演技する役割演技の工夫 動きやせりふ, 言葉を模倣して理解を深める動作化の工夫 音楽, 所作, その場に応じた身のこなし, 表情などで自分の考えを表現する工夫など 4 板書を生かす工夫 教師の伝えたい内容を示したり, その順序や構造を示したり, 内容の補足や補強をしたりするなど, 板書は多様な機能をもっている 思考の流れや順序を示すような順接的な板書, 違いや多様さを対比的, 構造的に示す板書, 中心部分を浮き立たせる板書などの工夫が大切である 5 説話の工夫 説話とは, 児童生徒がねらいの根底にある道徳的価値を一層主体的に考えられるようにするものである 教師の体験談や願い, 様々な事象についての所感, 日常生活における問題や身近な話題, 関心や視野を広げる時事問題, ことわざや格言, 心に残る標語, 地域の自然や伝統文化に関することなどが考えられる 道徳 -13