平成 23 年 10 月 20 日判決言渡同日原本領収裁判所書記官 平成 23 年 ( 行ケ ) 第 号審決取消請求事件 口頭弁論終結日平成 23 年 9 月 29 日 判 決 原 告 X 同訴訟代理人弁護士 佐 藤 興 治 郎 金 成 有 祐 被 告 Y 同訴訟代理人弁理士 須 田 篤

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4 年 7 月 31 日に登録出願され, 第 42 類 電子計算機のプログラムの設計 作成 又は保守 ( 以下 本件役務 という ) を含む商標登録原簿に記載の役務を指定役 務として, 平成 9 年 5 月 9 日に設定登録されたものである ( 甲 1,2) 2 特許庁における手続の経緯原告は, 平

平成 25 年 3 月 25 日判決言渡 平成 24 年 ( 行ケ ) 第 号審決取消請求事件 口頭弁論終結日平成 25 年 2 月 25 日 判 決 原 告 株式会社ノバレーゼ 訴訟代理人弁理士 橘 和 之 被 告 常磐興産株式会社 訴訟代理人弁護士 工 藤 舜 達 同 前 川 紀 光

事実 ) ⑴ 当事者原告は, 昭和 9 年 4 月から昭和 63 年 6 月までの間, 被告に雇用されていた ⑵ 本件特許 被告は, 次の内容により特定される本件特許の出願人であり, 特許権者であった ( 甲 1ないし4, 弁論の全趣旨 ) 特許番号特許第 号登録日平成 11 年 1

平成年月日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官

平成 25 年 7 月 17 日判決言渡 平成 24 年 ( 行ケ ) 第 号審決取消請求事件 口頭弁論終結日平成 25 年 5 月 29 日 判 決 原 告 株式会社ファランクス 訴訟代理人弁護士 江 森 史麻子 同 呰 真 希 被 告 有限会社サムライ 訴訟代理人弁理士 小 谷 悦

情報の開示を求める事案である 1 前提となる事実 ( 当事者間に争いのない事実並びに後掲の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実 ) 当事者 ア原告は, 国内及び海外向けのモバイルゲームサービスの提供等を業とす る株式会社である ( 甲 1の2) イ被告は, 電気通信事業を営む株式会社である

平成 25 年 7 月 17 日判決言渡 平成 24 年 ( 行ケ ) 第 号審決取消請求事件 口頭弁論終結日平成 25 年 5 月 29 日 判 決 原 告 株式会社ファランクス 訴訟代理人弁護士 江 森 史麻子 同 呰 真 希 被 告 有限会社サムライ 訴訟代理人弁理士 小 谷 悦

審決取消判決の拘束力

控訴人は, 控訴人にも上記の退職改定をした上で平成 22 年 3 月分の特別老齢厚生年金を支給すべきであったと主張したが, 被控訴人は, 退職改定の要件として, 被保険者資格を喪失した日から起算して1か月を経過した時点で受給権者であることが必要であるところ, 控訴人は, 同年 月 日に65 歳に達し

平成 30 年 10 月 26 日判決言渡同日原本領収裁判所書記官 平成 30 年 ( ワ ) 第 号発信者情報開示請求事件 口頭弁論終結日平成 30 年 9 月 28 日 判 決 5 原告 X 同訴訟代理人弁護士 上 岡 弘 明 被 告 G M O ペパボ株式会社 同訴訟代理人弁護士

異議の決定 異議 東京都荒川区東日暮里 3 丁目 27 番 6 号商標権者株式会社エドウイン 東京都渋谷区広尾 商標異議申立人 EVISU JAPAN 株式会社 東京都港区西新橋 1 丁目 18 番 9 号西新橋ノアビル4 階朝比 増田特許事務所代理人弁理士朝比

1 本件は, 別紙 2 著作物目録記載の映画の著作物 ( 以下 本件著作物 という ) の著作権者であると主張する原告が, 氏名不詳者 ( 以下 本件投稿者 という ) が被告の提供するインターネット接続サービスを経由してインターネット上のウェブサイト FC2 動画 ( 以下 本件サイト という )

平成 28 年 10 月 11 日判決言渡 平成 28 年 ( 行ケ ) 第 号審決取消請求事件 口頭弁論終結の日平成 28 年 7 月 7 日 判 決 原 告 オーガスタナショナルインコーポレイテッド 同訴訟代理人弁護士 中 村 稔 同 松 尾 和 子 同 田 中 伸 一 郎 同訴訟代

最高裁○○第000100号

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応して 本件著作物 1 などといい, 併せて 本件各著作物 という ) の著作権者であると主張する原告が, 氏名不詳者 ( 後述する本件各動画の番号に対応して, 本件投稿者 1 などといい, 併せて 本件各投稿者 という ) が被告の提供するインターネット接続サービスを経由してインターネット上のウェ

平成  年(オ)第  号

平成  年 月 日判決言渡し 同日判決原本領収 裁判所書記官

平成 29 年 2 月 20 日判決言渡同日原本交付裁判所書記官 平成 28 年 ( ワ ) 第 号損害賠償請求事件 口頭弁論終結日平成 29 年 2 月 7 日 判 決 原 告 マイクロソフトコーポレーション 同訴訟代理人弁護士 村 本 武 志 同 櫛 田 博 之 被 告 P1 主 文

被告に対し, 著作権侵害の不法行為に基づく損害賠償として損害額の内金 800 万円及びこれに対する不法行為の後の日又は不法行為の日である平成 26 年 1 月 日から支払済みまで年 % の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である 1 判断の基礎となる事実 ( 当事者間に争いのない事実又は後掲の各

平成 31 年 1 月 29 日判決言渡平成 30 年 ( ネ ) 第 号商標権侵害行為差止等請求控訴事件 ( 原審東京地方裁判所平成 29 年 ( ワ ) 第 号 ) 口頭弁論終結日平成 30 年 12 月 5 日 判 決 控訴人 ジー エス エフ ケー シ ー ピー株式会

(1) 被告は, 次の商標 ( 以下 本件商標 という ) に係る商標権 ( 以下 本件商標権 という ) を有している ( 甲 25) 商標登録第 号商標の構成千鳥屋 ( 標準文字 ) 登録出願日平成 23 年 12 月 21 日設定登録日平成 25 年 2 月 8 日指定商品第

丙は 平成 12 年 7 月 27 日に死亡し 同人の相続が開始した ( 以下 この相続を 本件相続 という ) 本件相続に係る共同相続人は 原告ら及び丁の3 名である (3) 相続税の申告原告らは 法定の申告期限内に 武蔵府中税務署長に対し 相続税法 ( 平成 15 年法律第 8 号による改正前の

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原告が著作権を有し又はその肖像が写った写真を複製するなどして不特定多数に送信したものであるから, 同行為により原告の著作権 ( 複製権及び公衆送信権 ) 及び肖像権が侵害されたことは明らかであると主張して, 特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律 ( 以下 プ ロ

平成  年(行ツ)第  号

本件は, 商標登録取消審判請求に対する審決の取消訴訟である 争点は,1 被告又は通常実施権者による標章使用の有無及び2 使用された標章と登録商標との同一性の有無である 1 本件商標商標登録第 号商標 ( 以下, 本件商標 という ) は, 下記の構成からなり, 第 25 類 運動靴,

第 1 控訴の趣旨 控訴人は, 原判決取消しとともに, 被控訴人らの請求をいずれも棄却する判決を 求めた 第 2 事案の概要 被控訴人らは日本舞踊の普及等の事業活動をしている 控訴人はその事業活動に 一般社団法人花柳流花柳会 の名称 ( 控訴人名称 ) を使用している 被控訴人ら は, 花柳流 及び

平成 28 年 4 月 21 日判決言渡同日原本交付裁判所書記官 平成 27 年 ( ワ ) 第 号損害賠償請求事件 口頭弁論終結日平成 28 年 2 月 25 日 判 決 原告株式会社 C A 同訴訟代理人弁護士 竹 村 公 利 佐 藤 裕 紀 岡 本 順 一 石 塚 司 塚 松 卓

事実及び理由 第 1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す 2 被控訴人は, 原判決別紙被告方法目録記載のサービスを実施してはならない 3 被控訴人は, 前項のサービスのために用いる電話番号使用状況調査用コンピュータ及び電話番号使用状況履歴データが記録された記録媒体 ( マスター記録媒体及びマスター記録

同法 46 条 1 項 1 号により, 無効とすることはできない, というものである 第 3 当事者の主張 1 審決の取消事由に関する原告の主張 (1) 取消事由 1( 商標法 3 条 1 項柱書該当性判断の誤り ) 審決は, 本件商標に関し, 願書に記載された指定商品又は指定役務に使用していること

( 以下 プロバイダ責任制限法 という )4 条 1 項に基づき, 被告が保有する発信者情報の開示を求める事案である 1 前提事実 ( 当事者間に争いのない事実並びに後掲の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実 ) (1) 当事者 原告は, 肩書地に居住する者である ( 甲 1) 被告は,

平成 28 年 4 月 28 日判決言渡同日原本交付裁判所書記官 平成 27 年 ( ワ ) 第 号損害賠償等請求事件 口頭弁論終結日平成 28 年 3 月 22 日 判 決 原 告 A 同訴訟代理人弁護士 松 村 光 晃 中 村 秀 一 屋 宮 昇 太 被告株式会社朝日新聞社 同訴訟代

令和元年 5 月 30 日判決言渡 平成 30 年 ( 行ケ ) 第 号審決取消請求事件 口頭弁論終結日平成 31 年 4 月 23 日 判 決 原告ジー エス エフ ケー シー ピー株式会社 被告ケーシーピーヘビーインダスト リーズカンパニーリミテッド 訴訟代理人弁護士 小 林 幸 夫

(1) 本件は, 歯科医師らによる自主学習グループであり, WDSC の表示を使用して歯科治療技術の勉強会を主催する活動等を行っている法人格なき社団である控訴人が, 被控訴人が企画, 編集した本件雑誌中に掲載された本件各記事において WDSC の表示を一審被告 A( 以下, 一審被告 A という )

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7 という ) が定める場合に該当しないとして却下処分 ( 以下 本件処分 という ) を受けたため, 被控訴人に対し, 厚年法施行令 3 条の12の7が上記改定請求の期間を第 1 号改定者及び第 2 号改定者の一方が死亡した日から起算して1 月以内に限定しているのは, 厚年法 78 条の12による

並びにそのコンサルタント業務等を営む株式会社である ⑵ 株式会社 CAは, 別紙著作物目録記載 1ないし3の映像作品 ( 以下 本件著作物 1 などといい, 併せて 本件各著作物 という ) の製作に発意と責任を有する映画製作者 ( 著作権法 2 条 1 項 号 ) であるところ, 本件各著作物の著

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REPORT あいぎ特許事務所 名古屋市中村区名駅 第一はせ川ビル 6 階 TEL(052) FAX(052) 作成 : 平成 27 年 4 月 10 日作成者 : 弁理士北裕介弁理士松嶋俊紀 事件名 入金端末事件 事件種別 審決取消

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を構成し, その結果, 本願意匠が同法 3 条 1 項柱書の 工業上利用することができる意匠 に当たるか否かである 1 特許庁における手続の経緯原告は, 平成 27 年 3 月 16 日, 意匠法 14 条 1 項により3 年間秘密にすることを請求し, 物品の部分について意匠登録を受けようとする意匠

1 前提となる事実等 ( 証拠の摘示のない事実は, 争いのない事実又は弁論の全趣旨から容易に認められる事実である ) (1) 当事者原告は, X1 の名称を使用してウエブサイトの制作請負を行っている者であり, 被告は, 不動産業を主な業務としている特例有限会社である (2) 原告によるプログラムの制

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年 10 月 18 日から支払済みまで年 5 分の割合による金員を支払え 3 被控訴人 Y1 は, 控訴人に対し,100 万円及びこれに対する平成 24 年 1 0 月 18 日から支払済みまで年 5 分の割合による金員を支払え 4 被控訴人有限会社シーエムシー リサーチ ( 以下 被控訴人リサーチ

に表現したものということはできない イ原告キャッチフレーズ1は, 音楽を聞くように英語を聞き流すだけ/ 英語がどんどん好きになる というものであり,17 文字の第 1 文と12 文字の第 2 文からなるものであるが, いずれもありふれた言葉の組合せであり, それぞれの文章を単独で見ても,2 文の組合

達したときに消滅する旨を定めている ( 附則 10 条 ) (3) ア法 43 条 1 項は, 老齢厚生年金の額は, 被保険者であった全期間の平均標準報酬額の所定の割合に相当する額に被保険者期間の月数を乗じて算出された額とする旨を定めているところ, 男子であって昭和 16 年 4 月 2 日から同

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平成 25 年 12 月 17 日判決言渡 平成 25 年 ( 行ケ ) 第 号審決取消請求事件 口頭弁論終結日平成 25 年 10 月 17 日 判 決 原告エイトマイハートイン コーポレイテッド 訴訟代理人弁護士 五十嵐 敦 出 田 真樹子 弁理士 稲 葉 良 幸 石 田 昌 彦 右

平成 30 年 6 月 15 日判決言渡同日原本領収裁判所書記官 平成 30 年 ( ワ ) 第 5939 号発信者情報開示請求事件 口頭弁論終結日平成 30 年 5 月 9 日 判 決 5 当事者の表示別紙当事者目録記載のとおり 主 文 1 被告は, 別紙対象目録の 原告 欄記載の各原告に対し,

政令で定める障害の程度に該当するものであるときは, その者の請求に基づき, 公害健康被害認定審査会の意見を聴いて, その障害の程度に応じた支給をする旨を定めている (2) 公健法 13 条 1 項は, 補償給付を受けることができる者に対し, 同一の事由について, 損害の塡補がされた場合 ( 同法 1

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平成 29 年 5 月 15 日判決言渡 平成 28 年 ( 行ケ ) 第 号審決取消請求事件 口頭弁論終結日平成 29 年 3 月 6 日 判 決 原 告 BERNARD FRANCE SERVICE 合同会社 訴訟代理人弁護士笹本摂 向多美子 訴訟代理人弁理士木村高明 被 告 ラボラ

第 2 事案の概要本件は, 原告が, 被告に対し, 氏名不詳者が被告の提供するインターネット接続サービスを利用して, インターネット上の動画共有サイトに原告が著作権を有する動画のデータをアップロードした行為により原告の公衆送信権 ( 著作権法 23 条 1 項 ) が侵害されたと主張して, 特定電気

原告は, 平成 26 年 12 月 9 日, 指定役務を第 35 類 市場調査又は分析, 助産師のあっせん, 助産師のための求人情報の提供, 第 41 類 セミナーの企画 運営又は開催, 電子出版物の提供, 図書及び記録の供覧, 図書の貸与, 書籍の制作, 教育 文化 娯楽 スポーツ用ビデオの制作

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認められないから, 本願部分の画像は, 意匠法上の意匠を構成するとは認めら れない したがって, 本願意匠は, 意匠法 3 条 1 項柱書に規定する 工業上利用する ことができる意匠 に該当しないから, 意匠登録を受けることができない (2) 自由に肢体を動かせない者が行う, モニター等に表示される

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年 1 月 9 日に第 40 類 布地 被服又は毛皮の加工処理 ( 乾燥処理を含む ), 裁縫, ししゅう, 木材の加工, 竹 木皮 とう つる その他の植物性基礎材料の加工 ( 食物原材料の加工を除く ), 食料品の加工, 廃棄物の再生, 印刷 を指定役務 ( 以下 本件指定役務 という ) とし

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の商標権者である ( 甲 1,45) 登録商標 : 別紙 1 本件商標目録記載のとおり登録出願 : 平成 26 年 3 月 14 日登録査定日 : 平成 26 年 8 月 22 日設定登録 : 平成 26 年 9 月 26 日指定役務 : 第 35 類 広告業, 経営の診断又は経営に関する助言, 市

2 控訴費用は, 控訴人らの負担とする 事実及び理由第 1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す 2 被控訴人株式会社バイオセレンタック, 同 Y1 及び同 Y2は, 控訴人コスメディ製薬株式会社に対し, 各自 2200 万円及びこれに対する平成 27 年 12 月 1 日から支払済みまで年 5 分の割

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算税賦課決定 (5) 平成 20 年 1 月 1 日から同年 3 月 31 日までの課税期間分の消費税及び地方消費税の更正のうち還付消費税額 6736 万 8671 円を下回る部分及び還付地方消費税額 1684 万 2167 円を下回る部分並びに過少申告加算税賦課決定 (6) 平成 20 年 4 月

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平成 23 年 10 月 20 日判決言渡同日原本領収裁判所書記官 平成 23 年 ( 行ケ ) 第 10188 号審決取消請求事件 口頭弁論終結日平成 23 年 9 月 29 日 判 決 原 告 X 同訴訟代理人弁護士 佐 藤 興 治 郎 金 成 有 祐 被 告 Y 同訴訟代理人弁理士 須 田 篤 主 文 原告の請求を棄却する 訴訟費用は原告の負担とする 事実及び理由 第 1 請求特許庁が無効 2010-890060 号事件について平成 23 年 5 月 10 日にした審決を取り消す 第 2 事案の概要本件は, 原告が, 被告の下記 1のとおりの本件商標に係る商標登録を無効にすることを求める原告の下記 2の本件審判請求について, 特許庁が同請求は成り立たないとした別紙審決書 ( 写し ) の本件審決 ( その理由の要旨は下記 3のとおり ) には, 下記 4のとおりの取消事由があると主張して, その取消しを求める事案である 1 本件商標商標登録番号 : 第 5235047 号商標の構成 : 堤人形 の文字と つつみのおひなっこや の文字を2 段に横書きしてなる 指定商品 : 第 28 類 堤人形 - 1 -

出願日 : 平成 18 年 11 月 10 日設定登録日 : 平成 21 年 5 月 29 日 2 特許庁における手続の経緯審判請求日 : 平成 22 年 8 月 5 日 ( 無効 2010-890060 号 ) 審決日 : 平成 23 年 5 月 10 日審決の結論 : 本件審判の請求は, 成り立たない 原告に対する審決謄本送達日 : 平成 23 年 5 月 19 日 3 本件審決の理由の要旨 (1) 本件審判の理由は, 要するに,1 本件審判の請求は, 商標法 56 条 1 項において準用する特許法 167 条の規定に違反したものとはいえない, 本件商標は, 商標法 4 条 1 項 16 号に違反して登録されたものではないから, 同法 46 条 1 項の規定により無効とすることはできない, というものである (2) なお, 被告は, 平成 17 年 9 月 29 日, 本件商標と同様に, 堤人形 の文字と つつみのおひなっこや の文字を2 段に横書きしてなる商標について, 第 28 類 土人形および陶器製の人形 を指定商品として登録出願し, 同年 12 月 9 日に設定登録されたが ( 登録第 4914397 号, 以下 先願商標 という ), 特許庁において, 平成 18 年 10 月 18 日, 先願商標に係る商標登録を無効とすることを求める原告の審判請求 ( 無効 2006-89031 号 ) について, 商標法 4 条 1 項 16 号違反を理由として, 先願商標の登録を無効にすべき旨の審決がされ, 同審決は同年 11 月 29 日に確定している 4 取消事由 (1) 本件審判の請求が商標法 56 条 1 項において準用する特許法 167 条の規定に違反しないとした判断の誤り ( 取消事由 1) (2) 本件商標の無効理由に係る判断の誤り ( 取消事由 2) 第 3 当事者の主張 1 取消事由 1( 本件審判の請求が商標法 56 条 1 項において準用する特許法 1-2 -

67 条の規定に違反しないとした判断の誤り ) について 原告の主張 本件審決は, 本件商標の指定商品が第 28 類の 堤人形 とするのに対し, 無効審決が確定している先願商標の指定商品は第 28 類の 土人形および陶器製の人形 であり, 両者の指定商品は相違するとして, 先願商標に対する無効審決の効力は本件商標には及ばないとした しかし, 本件商標は, 先願商標に対する無効審決の確定直後に, 同じ第 28 類を指定商品とし, 先願商標を構成する 堤人形 自体を小分類の指定商品とすることにより, 無効とされた先願商標の再生と無効審決を潜脱する不正な目的で出願されたものであり, 本件審決の上記判断は, 確定審決の一事不再理を定めた商標法 56 条 1 項において準用する特許法 167 条に反し, 同時に, 信義則違反と権利の濫用の無視も許されるものではなく, 取り消されるべきである 被告の主張 本件審判と同一の事実及び同一の証拠に基づいてされた無効審判はない 原告が主張する無効審決 ( 甲 1) は, 先願商標に対するものであり, 本件商標についてされたものではない また, 先願商標の指定商品は, 土人形および陶器製の人形 であり, 本件商標の指定商品とは異なる したがって, 本件審決の判断は, 商標法 56 条 1 項において準用する特許法 16 7 条に反するものではない 2 取消事由 2( 本件商標の無効理由に係る判断の誤り ) について 原告の主張 (1) 本件商標は, 商品の品質の誤認を生ずるおそれがあるから, 商標法 4 条 1 項 16 号に違反する また, 本件商標は, 原告の業務に係る商品と混同を生ずるおそれがあるから, 商標法 4 条 1 項 15 号に違反し, さらに, 原告の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標と同一又は類似の商標であって, 不正の目 - 3 -

的をもって使用するものであるから, 同項 19 号にも違反する (2) また, 本件商標の指定商品は, 第 28 類 7 号に定める人形 ( 一 ) の日本人形の大分類に属しているところ, その小分類には, おすわり人形, 五月人形及びその付属品等が記載されているが, 本件商標の指定商品である 堤人形 は記載されておらず, 本件商標は, 無効とされた先願商標の主要部分を指定商品に盗用し, また, 盗用に係る指定商品それ自体を本件商標に持ち込むことにより, 先願商標と同一の商標を出願したものである したがって, 本件商標の出願は, およそ普通名称による指定商品の分類を定める商標法 6 条に違反する (3) さらに, 堤人形 は, 原告の父 A が, 昭和期に入り, 自己の創作人形の製作販売に初めて用いた商品名であり, これが 人形の東の横綱 の名声を得て広く全国に周知され, 自他商品識別力を確立した商標である 原告は, これを伝承し, さらなる創作に精進した結果, 宮城県知事より 宮城県伝統工芸品 堤人形 の指定を受けるなどして, 堤人形 の周知性と自他識別力を不動のものとした結果, この人形の定冠詞である 堤 と つゝみ について商標登録を得たのである したがって, 堤人形 は, 商品区分としての指定商品自体ではなく, まさに原告の商標権の要をなすものであり, 本件審決がこれを単なる指定商品と解したのは, 商標法 4 条,6 条はもとより,36 条以下の商標権侵害の規定の解釈適用を誤ったものである 被告の主張 (1) 商標法 4 条等違反について本件商標に関連する商標である つつみのおひなっこや ( 登録第 479835 8 号 ) は, 上告審 ( 最高裁平成 19 年 ( 行ヒ ) 第 223 号同 20 年 9 月 8 日第二小法廷判決 ) 及びその差戻し審 ( 知財高裁 ( 平成 20 年 ( 行ケ ) 第 10348 号同 2 1 年 1 月 27 日判決 ) を経て, 登録の維持が確定している 本件商標のうち 堤人形 の部分は本件商標の指定商品と同一であり, 本件商標のうち つつみのおひな - 4 -

っこや の部分は上記商標と同一である また, 堤人形 は, 本件商標の出願時及び査定時には, 仙台市堤町で製造される堤焼の人形として, 土人形および陶器製の人形 の販売業者等の取引者にはよく知られていた普通名称である したがって, 本件商標は, 商標法 4 条又はその他の無効理由に反して登録されたものではない (2) 商標法 6 条違反について原告は, 本件審決の取消事由として, 商標法 6 条違反を主張しているが, 同条は, 同法 46 条に列挙されている登録商標の無効理由に含まれない また, 本件商標は, 堤人形 を指定商品としているところ, 前記のとおり, 本件商標の出願時及び査定時には, 堤人形 は, 土人形および陶器製の人形 の販売業者等の取引者にはよく知られていた普通名称であったから, 本件商標は, 商標法 6 条に反して登録されたものでもない (3) 本件商標の周知性について被告の本家の B 家は, かつて堤人形を製作していた C 家の最後の継承者から古型の保存とその再興を託され, 被告の曾祖父が B 家を分家してからは, 分家の Y 家が本家の型を受け継ぎ, 堤人形を制作している つつみのおひなっこや の名称は, 曾祖父の代から屋号として使用してきたものであり,Y 家の屋号や商標として知れ渡っている 第 4 当裁判所の判断 1 取消事由 1( 本件審判の請求が商標法 56 条 1 項において準用する特許法 1 67 条の規定に違反しないとした判断の誤り ) について (1) 被告は, 先願商標について商標登録を受けたが, 先願商標については, 前記第 2の3(2) のとおり, 平成 18 年 10 月 18 日, その商標登録を無効にすべき旨の審決を受け, 同審決は同年 11 月 29 日に確定しているところ, これに対し, 被告が本件商標について登録出願をしたのは, この審決を受けてから確定するまでの間の前記平成 18 年 11 月 10 日である - 5 -

(2) 原告は, 以上の経緯を前提に, 先願商標に対する無効審決の効力が本件商標には及ばないとした本件審決の判断は, 商標法 56 条 1 項において準用する特許法 167 条に違反する旨主張するが, そもそも, 特許法 167 条は, 何人も, 特許無効審判の確定審決の登録があったときは, 同一の事実及び同一の証拠に基づいてその審判を請求することができない 旨を規定し, 特許無効審判等について無効審判の確定の登録があったときは, 同一の事実等に基づいて審判の請求をすることを禁止したものにとどまるものであって, 無効と判断された登録商標と構成を同じくする商標について, 指定商品を異なるものとした上で再度出願することそれ自体を禁止するものではない もっとも, 原告が本件において特許法 167 条違反をいうのは, 併せて, 信義則違反と権利の濫用とに言及していることに鑑みると, 本件商標の登録出願は, 先願商標を無効にすべき旨の審決を受けた後であることから, 本件商標の出願は無効と判断された先願商標の再生と無効審決を潜脱する不正な目的でされたものであって, そのような商標の登録は認められるべきでないという趣旨に解されなくもない しかしながら, 先願商標の商標登録を無効と判断した審決の理由 ( 甲 1) は, 普通名称であるという 堤人形 の文字を含む先願商標をその指定商品中, 堤人形 以外の 土人形 及び 陶器製の人形 について使用するときは, これに接する需要者は, 該商品があたかも堤人形であるかのように, 商品の品質について誤認を生ずるおそれがあるとして, 商標法 4 条 1 項 16 号に該当するというのである その出願人である原告において, 先願商標の指定商品を 堤人形 に限定した上で, 先願商標と同じ構成に係る本件商標の登録出願をすることそれ自体は, 止むを得ない措置であったというべきであって, それが当該商標登録の無効理由に当たる場合は格別, そうでない以上, 本件商標の登録出願を直ちに不正な行為であるということはできないし, 原告に対する関係でみても, これを信義則違反や権利の濫用に当たるものということもできない (3) したがって, 原告主張の取消事由 1は, 理由がないというほかない - 6 -

2 取消事由 2( 本件商標の無効理由に係る判断の誤り ) について (1) 商標法 4 条違反についてア商標法 4 条 1 項 16 号違反について原告は, 本件商標は商品の品質の誤認を生ずるおそれがあるとして, 商標法 4 条 1 項 16 号に違反すると主張しているが, その具体的な理由については何ら主張, 立証しておらず, これを採用することはできない イ商標法 4 条 1 項 15 号及び同項 19 号違反についてまた, 原告は, 本件商標は商標法 4 条 1 項 15 号及び同項 19 号に違反するとも主張している しかしながら, 本件審決は, 本件商標の無効理由として, 本件商標が商標法 4 条 1 項 15 号及び同項 19 号に違反するか否かは判断していないから, これらの各号に関する事項は, 本件訴訟の審理の対象とはならないというべきである したがって, 原告の主張は失当である (2) 商標法 6 条違反についてまた, 原告は, 本件商標の出願は普通名称による指定商品の分類を定める商標法 6 条に違反するなどとも主張する しかしながら, 商標法 46 条 1 項は, 商標登録を無効とする審判を請求することができる事由を定めているところ, 同項の定める無効理由に同法 6 条違反は含まれていないから, 同法 6 条違反を理由として, 本件商標の無効を求めることはできず, 原告の主張は失当といわなければならない (3) その他の主張についてまた, 原告は, 堤人形 は, 商品区分としての指定商品自体ではなく, 原告の商標権の要をなすものであり, 本件審決がこれを単なる指定商品と解したのは, 商標法 4 条,6 条はもとより,36 条以下の商標権侵害の規定の解釈適用を誤ったものであるなどとも主張する しかしながら, 本件商標に対する原告の無効審判請求について, 本件商標の指定 - 7 -

商品が 堤人形 であることを前提としてその無効理由の有無を判断した本件審決それ自体にこれを取り消すべき違法があるとは認められないから, 原告の主張は採用することができない (4) 小括したがって, 原告主張の取消事由 2も, 理由がないといわざるを得ない 3 結論以上の次第であるから, 原告の請求は棄却されるべきものである 知的財産高等裁判所第 4 部 裁判長裁判官滝澤孝臣 裁判官髙部眞規子 裁判官齋藤巌 - 8 -