資料 3 奄美基金の役割の検証 に関する WG 検討報告 の課題について 令和元年 7 月 12 日
目次 1. 検討趣旨 2. 農業 観光等の現状 (1)3 分野を重点化する理由 (2) 経済動向 3. 金融動向等 (1) 地元金融機関の貸出残高推移 (2) 奄美基金の財務状況 4. まとめ 1 2 2 3 11 11 12 15
1. 検討趣旨 昨年 5/17 の奄美審議会において 奄美群島振興開発基金の役割の検証に関するワーキンググループ検討結果 が報告され 融資枠の拡大 と 出資業務の創設 について 継続的な検討課題とされた 本日の審議会では 融資枠の拡大関連として 観光 農業 情報通信などの分野を取り巻く地域経済や他の金融機関の動向等 を報告 それ以外の検討課題は 引き続き検討 以下 検討報告書抜粋 (1) 融資枠の拡大について現行の制度において 政令によって認められている 小口業務ではない 融資の対象として 観光 農業 情報通信などの分野に対し 製糖業と同様の扱いを認めるかについては まずは奄美基金において地域経済や他の金融機関の動向等を踏まえた当該措置の妥当性 奄美基金の資産規模と融資枠拡大のバランス等を検証 整理すべきである (2) 出資業務の創設について出資業務については 平成元年 4 月に制度が創設されるも 活用事例のないまま 平成 18 年 3 月に廃止となった経緯がある 近年 地域振興やまちづくりのファンド等の動きが全国的に活発化するなど 社会 経済状況の変化は見られるものの かつて活用事例が出なかったことに対する総合的かつ真摯な検証が必要である 鹿児島県が今回の 総合調査 において 今後 5 年間の新たな取組として 奄美群島振興開発基金の出資制度等の機能充実検討 を掲げている 奄美基金としては 鹿児島県における今後の検討に対し 求められるデータを提供するなど必要な協力を行うとともに 自らの財務に与える影響等を慎重に検討する必要がある 1
2 2. 農業 観光等の現状 (1) 3 分野を重点化する理由 当基金が地域経済の動向を確認したところ 今後 農業 観光の成長が期待されること 次ページ以降整理 地元市町村が自らの手で 1 年後のビジョンを描いた 奄美群島成長戦略ビジョン の基本方針には 農業 観光 情報 が雇用の創出にとって重要と位置づけられ 引き続き産業振興の基軸とされていること 今年 5 月に国が策定した奄美群島振興開発基本方針にも以下の記述あり 奄美群島の特性を最大限に生かすものとして 平成 25 年 2 月に奄美群島内 12 市町村が同群島の自立的発展に向けて策定した 奄美群島成長戦略ビジョン も踏まえ 農業 観光 情報通信を雇用創出のため成長が期待される重点 3 分野として引き続き取組を進める
(2) 経済動向 国は H23 年度以降 奄美群島は H24 年度以降 総生産が拡大傾向 H27 年度は 3,226 億円と H24 年度比で 139 億円 (4.5%) 増加 1 総生産 1-1 郡内総生産と国内総生産の推移 ( 郡内 : 百万円 ) 35, 526,879 34, 34,78 ( 国内 :1 億円 ) 54, 531,319 53, 52, 33, 322,597 51, 32, リ ー マ ン シ ョ ッ ク ( H 2. 9 ) 5, 31, 489,51 東日本大震災 ( H 23. 3 ) 491,48 38,732 L C C 就 航 ( 成 田 ) ( H 26. 7 ) 49, 48, 3, 47, 29, 46, 郡内総生産日本 GDP( 実質 ) 3
4 郡内総生産のうち 農業 (H24 H27 年度 :+33 億円 (29.5% 増 )) 保健衛生 社会事業 (+22 億円 (4.9% 増 ) 公務 (+19 億円 (4.% 増 )) 宿泊 飲食サービス業 ( +18 億円 (21.8% 増 )) 卸売 小売業 (+18 億円 (5.8% 増 )) 情報通信業はほぼ横這い ( 百万円 ) 1-2 郡内総生産 (3 分野 ) の推移 15, 14,589 14, 13, 12,741 12,76 13,62 12, 11,675 11,27 11, 1, 9,984 9, 8, 8,764 8,195 7, 農業宿泊 飲食サービス業情報通信業
2 農業 畜産 ( 肉用牛 ) は 全国的な畜産農家の減少 子牛不足等による需要の高まりを受け価格が高値で推移 ( 産出額は 2 年連続で 1 億円超 ) 農産物 ( 特にさとうきび 野菜 ) は H23 以降増加傾向であったものの H29 は台風の影響により減少 ( 百万円 ) 2-1 主要作目の農業産出額の推移 12, 11,41 11,273 1,896 1,933 1, 9,117 8, 6,776 8,556 7,324 6, 5,775 4, 4,423 3,29 2, 1,298 1,441 H2 H21 H22 H23 H24 H25 H26 H27 H28 H29 さとうきび野菜畜産花き果樹 5
6 果樹は 亜熱帯気候の有利性を活かし たんかん ぽんかん及び奄美特産のすももを重点作物としているほか 営農用ハウスの整備によりマンゴー パッションフルーツも定着し 生産額が増加 ( 百万円 ) 2-2 果樹の種類別農業産出額の推移 7 奄美大島においてミカンコミバエ発生 6 584 5 4 431 3 2 1 259 237 24 15 53 5 3 33 H2 H7 H12 H17 H22 H27 H28 H29 たんかんぽんかんすももマンゴーパッションフルーツ
3 観光 H26 の成田 奄美のバニラエア就航を皮切りに H29.3 は関西 奄美も就航 H3 にはスカイマークが鹿児島 奄美便を就航し 羽田や名古屋への乗り継ぎ便も利用できることから利便性が格段に向上 参考 H7 からの推移 ( 万人 ) 9 3-1 奄美群島の入込客数の推移 H3.8 スカイマーク就航 ( 鹿児島 - 奄美便 ) 88.5 85 H29.3 バニラ エア就航 ( 関西 - 奄美便 ) 82.6 8 75 79.1 76.9 76.6 H26.7 バニラ エア就航 ( 成田 - 奄美便 ) 75.8 77.6 7 66.6 65 6 H7 H8 H12 H17 H22 H27 H28 H29 H3 7
8 宿泊施設は 入込客に比例して増加 特に奄美大島 ( 本島 ) の宿泊施設の増加が顕著 (H3 は H26 に比して 81% 増 ) ( 軒 ) 3-2 宿泊施設の推移 ( 千人 ) 3-3 入込客の推移 ( 島別 ) 35 1, 3 9 8 25 2 15 1 5 194 158 118 118 16 124 121 12 113 17 17 16 16 15 14 35 14 33 35 33 15 17 16 16 35 3 35 23 24 24 32 23 26 28 22 21 17 16 18 2 25 25 24 23 31 31 38 4 45 48 H21 H22 H23 H24 H25 H26 H27 H28 H29 H3 7 6 5 4 3 2 1 53 474 423 432 372 355 357 361 37 394 56 54 55 52 52 55 58 61 6 53 125 125 127 125 126 124 13 128 129 137 8 78 8 81 81 83 87 86 89 89 57 54 53 54 56 55 63 72 73 69 H21 H22 H23 H24 H25 H26 H27 H28 H29 H3 大島本島喜界島徳之島沖永良部島与論島 奄美大島喜界島徳之島沖永良部島与論島
9 4 その他の産業 KL 2, 4-1 黒糖焼酎移出額と製成数量の推移 (S5~) 16,694 ( 百万円 ) 15, 1, 7,318 1,583 5, 6,523 3,532 1,434 S5 年度 S6 年度 H7 年度 H12 年度 H16 年度 H17 年度 H22 年度 H25 年度 H26 年度 H27 年度 H28 年度 H29 年度 製成数量 移出額 ( 百万円 ) 4-2 大島紬生産額と生産反数 3, 2,5 ( 千反 ) 15 ( 百万円 ) 4-3 建設業総生産 29, 28,36 28, 2, 1,5 1,128 1 27, 26, 26,71 1, 5 25, 5 357 24, 24,197 2 年度 21 年度 22 年度 23 年度 24 年度 25 年度 26 年度 27 年度 28 年度 29 年度大島紬生産額生産反数 23, 22, 2 年度 21 年度 22 年度 23 年度 24 年度 25 年度 26 年度 27 年度
1 5 地元の動き 名瀬港 ( 本港地区 ) 公有水面埋立事業 ( 以下 マリンタウン事業 ) みなと を核とした観光振興を目指すとともに 海 と まち との連携を図り 奄美市の市民生活と産業活動の向上を目的として開始 平成 19 年度から開始し 現在埋立工事は終了 今後 分譲の公募要領等が定められ 公募 分譲 ( 公用以外 ) が行われる予定 公募予定地区には観光関連 娯楽サービス 流通関連などの施設用地が整備される見込み 世界遺産登録を見据えた動き 徳之島空港利用促進協議会では 奄美 沖縄の世界自然遺産登録を見据え 遺産登録決定後に関西から直行便就航実現を目指し JAL や LCC のジェットスタージャパンへの要望活動を行う予定 このほか ジェットチャーター便就航時に向けた受入体制強化 充実などを計画している ( 参考 ) 奄美基金の融資メニュー ( 単位 :% 百万円) 区 分 貸付期間 貸付利率 限度額 農 林 業 振 興 資 金 15 年以内.2.35 1~15 水 産 業 振 興 資 金 1 年以内.35.95 3~5 観 光 関 連 産 業 振 興 資 金 2 年以内 1.51~2.51 15~1 製 糖 企 業 合 理 化 資 金 1 年以内 1.51 1.91 所要資金の8% 流 通 加 工 業 等 振 興 資 金 2 年以内 1.51~2.51 15~1 地 域 資 源 等 振 興 資 金 2 年以内 1.51~2.51 15~1 地域 活性 化 雇用 促進 資金 2 年以内 1.51~2.51 15~1 貸付期間と限度額は対象事業 ( 運転 設備など ) により異なる
11 3. 金融動向等 (1) 地元金融機関の貸出残高の推移 地元金融機関 ( 信金 信組 ) の事業資金の貸出残高は減少傾向 H29 年度末で総残高に占める第一次産業向けの割合は 2.5%( うち奄美基金の割合は 27%) 地元金融機関の産業別貸出割合 ( 事業資金 ) 1% 43,241 ( 百万円 ) 4, 8% 6% 64.1 65.5 68.2 71.6 71.9 73.5 72.2 71.5 71.5 7.8 72.5 72.6 33,38 3, 4% 2, 2% 34.3 32.9 3.1 26.7 26.4 24.7 26. 26.5 26.2 27. 25. 24.8 1, % 1.6 1.6 1.7 1.7 1.7 1.7 1.8 2. 2.3 2.1 2.6 2.5 第一次産業第二次産業第三次産業計
12 (2) 奄美基金の財務状況 H25 年 12 月の独立行政法人改革等に関する基本的な方針において リスク管理債券比率及び繰越欠損金の削減が指示され リスクを抑制するため 資産の健全化に努めた結果 保証 融資共に残高が減少 ( 億円 ) 1 95 保証残高と融資残高の推移 86 8 77 68 6 4 37 57 31 55 26 5 23 45 57 4 2 17 26( 実績 ) 27( 実績 ) 28( 実績 ) 29( 実績 ) 3( 実績 ) 保証残高融資残高合計残高
13 H26 H27 は一部の大口事業者の倒産等による引当金の積み増しによって赤字計上 H28 H29 は倒産等がなかったため連続で黒字を計上したが H3 はこれまでのリスク抑制の方針により新規の保証 貸付が伸び悩んだ結果 残高が減少し それに伴う経常収益の落ち込みが赤字の主な要因 単年度損益及び繰越欠損金の推移 ( 億円 ) ( 億円 ) 1. 51.5.7.5 52 53. 54 55.5 56.6 57 1. 58 58 1.5 2. 59 59 6 6 1.8 1.8 26( 実績 ) 27( 実績 ) 28( 実績 ) 29( 実績 ) 3( 実績 ) 59 6 61 単年度損益 繰越欠損金
H29 年度のリスク管理債権割合は 47.9%( 保証 融資 ) と他機関に比して高い水準 ( そのうち建設業が 2.1% 第一次産業が 17.% 大島紬業が 5.8% を占める ) リスク管理債権の削減に努めており 金額及び割合ともに減少傾向 平成 3 年度は 分子のリスク管理債権の削減割合以上に 分母の保証 融資の総残高が減少したためリスク管理債権割合が増加 リスク管理債権 割合推移 ( 総括 ) ( 百万円 ) 12, 1, 57.6% 56.2% 52.7% 5.8% 47.9% 8, 6,576 6, 5,87 4,728 4, 3,785 3,391 2, 26 年度 27 年度 28 年度 29 年度 3 年度 リスク合計 リスク割合 7.% 6.% 5.% 4.% 3.% 2.% 1.%.% リスク管理債権割合の他法人との比較 奄美基金 鹿児島銀行 南日本銀行 奄美大島信金 奄美信組 日本公庫 ( 国民 ) 日本公庫 ( 農林水産 ) 日本公庫 ( 中小企業 ) 沖縄公庫 鹿児島県信農連 (JAバンク鹿児島) 鹿児島県信漁連 (JFマリン) 2.4% 2.% 1.8% 6.1% 6.9% 4.5% 7.5% 6.1% 9.8% 26.3% 47.9%.% 1.% 2.% 3.% 4.% 5.% 6.% 奄美基金のリスク管理債権割合は保証 融資業務合算 奄美基金 奄美大島信金 奄美信組以外の法人又は事業においては 奄美地域のみの数値が不明であるため法人又は事業全体のもので比較している ( 数値出所 : 法人 HP のディスクロ誌 ) 14
15 4. まとめ 成長分野への投資による地域経済への寄与及び財務内容の改善 これまで奄美基金の融資 保証の中心であった 大島紬業 建設業 が衰退 一方 現在は農業 ( 畜産 果樹 ) 及び観光業が地域経済の発展に寄与 特に観光業は 他の産業への波及効果が高い総合産業であり 今後 奄美市のマリンタウン事業による設備投資や世界自然遺産登録を見据えた投資拡大が見込まれる 農業は 生産農家の高齢化 兼業化 農用地の利用集積による経営規模の拡大に対応するため 国全体として農作業の省力化や高品質生産を実現するスマート農業の導入が進められている また 情報通信業は キャッシュレスや観光コンテンツの情報発信など 農業 観光 情報通信の 3 分野連携の相乗効果が期待される 以上を踏まえ 奄美基金としては これまでの小口融資のほか 地域に精通した政策金融機関として 奄美振興の重点分野でもある農業や観光業の大口案件にも参画し 地元金融機関等と協調しながら事業者の経営支援を行うことにより 地域経済へ寄与するとともに 財務内容の改善を図ることとしたい 今後の検討課題について 奄美基金の資産規模と融資枠拡大のバランス や 奄美基金と他の金融機関の役割分担 を整理し 融資枠の拡大の妥当性を検証するなど 必要に応じて奄美審議会に報告