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区間を頻度の低い通勤線が非電化路線として運行しているのみであり 十分な公共交通手段が確保されていないため 同エリアと周辺に住む住民はバスや自動車等により通勤しているが 道路の混雑により 通勤に大きな支障が出ている 加えて 南北鉄道事業南線 ( 通勤線 ) ( 以下 本事業 という ) の対象区間には

欠であり 運輸交通分野を中心に膨大なインフラ投資が必要になると見込まれる これらのインフラ整備にあたっては 案件ごとにマスタープランから工事まで段階を踏んで検討 建設が進められるが 対象地の地形などを確認 把握するため 検討段階に応じた精度の地図が必要となる 現在 同国では基本的な測地基準点網が整備

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架鉄道三路線 ( うち 二路線は軽量 ) の総延長は 50km にとどまっている 首都圏南方については マニラ市ツツバンからカブヤオ市ママティッドまでの区間を頻度の低い通勤線が非電化路線として運行しているのみである 首都圏北方は 居住エリアが拡大しているものの 十分な公共交通手段が確保されていないた

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事業事前評価表 国際協力機構社会基盤 平和構築部 運輸交通 情報通信グループ第二チーム 1. 案件名国名 : バングラデシュ人民共和国案件名 : 和名国際空港保安能力強化プロジェクト英名 The Project for Security Improvement of International Ai

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ており 公共交通機関の拡充等のインフラ整備を通じて大都市圏を中心とした混雑緩和 物流改善が必要であるとしている 本事業はこれら方針及び分析に合致する なお 我が国はこれまで対フィリピン円借款による旅客輸送 システム整備として LRT1 号線増強事業 (I) (II) (L/A 調印 :1994 年

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2008年6月XX日

事業事前評価表 国際協力機構社会基盤 平和構築部運輸交通 情報通信グループ 1. 案件名国名 : バングラデシュ国案件名 : 和名橋梁維持管理プロジェクト 有償勘定技術支援 英名 Bridge Management Capacity Development Project 2. 事業の背景と必要性

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国 アメリカ ロシアに次いで世界第 4 位の電力消費国となっている (2014 年 ) 国内の電力供給に関しては 1,114,408GWh の需要に対して供給量は 1,090,851GWh と 2.1% の不足 供給能力もピーク時 153,366MW の需要に対して 148,463MW と 3.2%

と衝突して沈没し 147 人が死亡 2014 年 8 月にはパドマ川で約 250 人を乗せたフェリーが荒天のため転覆し 110 人が死亡等の大事故が発生している また 同国は 雨季には大型サイクロンが度々ベンガル湾から来襲し 沿岸部で遭難事故が多発するなど 地理的に自然災害の影響を受けやすい地域であ

無償資金協力 案件概要書 2017 年 8 月 29 日 1. 基本情報 (1) 国名 : カンボジア王国 (2) プロジェクトサイト / 対象地域名 : シハヌークビル特別市 プノンペン (3) 案件名 : 港湾近代化のための電子情報処理システム整備計画 (The Project for Port

新JICAにおける事前評価(技協・無償)について

ファクトシート : モルプレ B(5&6 号機 ) 石炭火力発電事業 2017 年 10 月 13 日 環境 持続社会 研究センター (JACSES) 1. 事業の概要 1 モルプレ B 石炭火力発電所 (5&6 号機 ) 建設事業は ボツワナ共和国のパラピエ地区おいて 既存のモルプレ B 発電所

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( 別紙 ) 中国電力株式会社及び JFE スチール株式会社 ( 仮称 ) 蘇我火力 発電所建設計画計画段階環境配慮書 に対する意見 1. 総論 (1) 石炭火力発電を巡る環境保全に係る国内外の状況を十分認識し 本事業を検討すること 本事業を実施する場合には 本事業に伴う環境影響を回避 低減するため

Microsoft PowerPoint - 【資料2-4-1】大阪港0927.pptx

4 予測結果では 海側で少し環境目標値を超えているのですけれども 対岸の東海市のところは 新日鐵住金の工場等でしょうか 東海市側も臨港地区になりまして ご指摘の通り新日鐵住金等があるエリアです なお 対岸までの距離は約 1km ですが 住宅地までは約 3.5km です 5 煙源が地面に近く 施工区域

事業事前評価表

Trung Tâm Phát Triển Sáng Tạo Xanh

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RIETI Highlight Vol.66

ログラムの審査に産業界からも参画を得ることで 大学がエンジニア予備軍である学部学生に対し社会のニーズに即した教育を実践できるよう 促進する役割を果たしている かかる状況の下 エンジニアの量的拡大が質を伴う形で実現されるよう インドネシア政府は我が国に対し LAM-PS としての インドネシアエンジニ

事業事前評価表 国際協力機構農村開発部農業 農村開発第一グループ第二チーム 1. 案件名国名 : インドネシア共和国案件名 : 和名農業保険実施能力向上プロジェクト英名 The Project of Capacity Development for the Implementation of Agr

表1-4

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新JICAにおける事前評価(技協・無償)について

事業事前評価表 1. 案件名 ( 国名 ) 国際協力機構南アジア部南アジア第四課 国名 : バングラデシュ人民共和国案件名 : 貧困削減戦略支援無償 ( 教育 ) (Poverty reduction efforts) 2. 事業の背景と必要性 (1) 当該国における初等教育セクターの現状と課題バン

護ディプロマ課程を 3 年制看護ディプロマ課程に変更したのに加え ディプロマ課程看護師の現任研修により学士が取得できる 2 年制ポスト ベーシック課程とは別に大学教育として看護学士課程制度 (4 年制 ) を導入することを定めた 学術的に高度な 4 年制看護学士課程の卒業生は輩出されたばかりであるが

0528事業事前評価表(円借款+附帯技プロ)final.doc

投資環境整備プロジェクト及びベンガル湾産業成長ベルト構想 (BIG-B:Bay of Bengal Industrial Growth Belt) 2016 年 4 月 JICA 投資環境整備アドバイザー ( バングラデシュ ) 前川直行

熱効率( 既存の発電技術 コンバインドサイクル発電 今後の技術開発 1700 級 ( 約 57%) %)(送電端 HV 級 ( 約 50%) 1500 級 ( 約 52%

土地利用計画 土地利用計画面積表 土地利用の区分区分面積 ( m2 ) 比率 (%) 備考 発電施設用地パネル 19, パワーコンディショナー 緑地 5, 計画地面積 24, 太陽光パネル配置図 発電施設計画 発電施設の概要 発電設備規格

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事業事前評価表 1. 案件名国名 : ラオス人民民主共和国案件名 : ルアンパバーン世界遺産の持続可能な管理保全能力向上プロジェクト Project for Capacity Enhancement for Sustainable World Heritage Management and Pres

(CANACINTRA) 等と連携を図りつつ設置する案を有しており 国家中小企業コンサルタント養成 認定制度を具現化するためにいかにして事業を進めていくかが課題となっている (2) 相手国政府国家政策上の位置づけカルデロン大統領は 近代的かつ競争力のある経済の強化及び雇用の創出 を 治安 貧困撲滅

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JICA 事業評価ガイドライン ( 第 2 版 ) 独立行政法人国際協力機構 評価部 2014 年 5 月 1

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別添 表 1 供給力確保に向けた緊急設置電源 ( その 1) 設置場所 定格出力 2 発電開始 2 運転開始 公表日 3 姉崎火力発電所 約 0.6 万 kw (0.14 万 kw 4 台 ) 平成 23 年 4 月 24 日平成 23 年 4 月 27 日 平成 23 年 4 月 15 日 袖ケ浦

社会環境報告書2013

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事業事前評価表 国際協力機構産業開発 公共政策部法 司法チーム 1. 案件名国名 : ブラジル連邦共和国案件名 : ( 和文 ) 地域警察活動普及プロジェクト ( 英文 )Project on Nationwide Dissemination of Community Policing 2. 事業の

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電力事情 BOP 実態調査レポート 調査実施日 :2012 年 12 月 調査対象 ヒヤリング : ダッカ電力供給会社 (DESCO) ダッカ農村電化庁 (REB) アンケート : ダッカ ( 都市と農村の中間地にあるサバール地域 ) の 26 名 ( 男性 6 名 女性 20 名 ) バングラデシ

つがる市小形風力発電 (20kW 未満 ) 設備建設に関するガイドライン 平成 29 年 11 月 15 日公表 1 目的本ガイドラインは つがる市 ( 以下 市 という ) において小形風力発電 (20kW 未満 ) 設備及び設備建設に伴う送電線等の付帯設備 ( 以下 小形風力発電設備等 という

PowerPoint プレゼンテーション

1 はじめに 日本の原油輸入の 2 割を占める重要なパートナーである中東のアラブ首長国連邦 (UAE) 近年急激な経済成長を背景に 年平均 16 % 以上の電力需要増加が見込まれるこの国で 最近日本の総合商社が取組む大型電力案件の話題が相次いで報じられた 5 月 9 日 UAE のフジャイラ首長国に

( 仮称 ) 宇治川太閤堤跡歴史公園整備運営事業特定事業の選定 宇治市 ( 以下 市 という ) は 民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律 ( 平成 11 年法律第 117 号 以下 PFI 法 という ) 第 7 条の規定により ( 仮称 ) 宇治川太閤堤跡歴史公園整備運営事

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(1) プロジェクトの背景 必要性 インドネシア政府は 急増する電力需要に対応するために電力開発を急いでいるが 電源の多様化や再生可能エネルギーの開発にも重点を置いている 再生可能エネルギーの開発のために インドネシア政府は 10,000 MW 開発計画 Crash Program II を進めてい

Social Impacts of Japan-related Private Projects upon Local Peoples in the Philippines and Malaysia

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ベトナム ハイフォン石炭火力発電事業 グリーン イノベーション ディベロップメント センター (GreenID) (2015 年 4 月 17 日 ) 事業概要 2005 年 11 月 15 日 国際協力銀行 (JBIC) は ハイフォン市トゥイグエン県タムフン村でのハイフォン第 1 石炭火力発電所

は Blue Print for Air Transportation にて民間航空長期計画を作成 アクションプラン DGCA 5-Year Strategic Plan を作成した上 航空安全に係る総合的な対策の強化を図っており 本事業はこれに寄与するもので

受付番号 Panasonic NPO/NGO サポートファンド for SDGs [ 国内助成 ] 2019 年募集 新規助成応募企画書 ( 様式 1) パナソニック株式会社御中 応募要項に記載の 個人情報の取り扱い に同意の上 応募します 応募日 :2019 年月日 (1) 応募団体

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令 (2006 年 5 号 ) では 2025 年までの国家エネルギー政策の数値目標を設定し エネルギー供給量に対する新 再生可能エネルギーの目標値を 17%( うち地熱エネルギーは 5 %) に定めた また 2010 年の Vision 25/25 において 新 再生可能エネルギーの目標値を 25

4-(1)-ウ①

Microsoft Word - 1.B.2.d. 地熱発電における蒸気の生産に伴う漏出

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コミュニテイー経済への影響など, サイトの様々な事情によりプロジェクトの完成までは大変長い年月を必要とする場合が多い 特に大規模 (1,000MW 以上 ) 河川の本流での建設は環境社会に対する影響が大きいことから, 実現が困難な場合が多い 電力エネルギー省の計画リストに入っているプロジェクトでも,

資料1:地球温暖化対策基本法案(環境大臣案の概要)

Microsoft Word - PPPPFI手法導入における優先的検討に係る指針


RO ( 改修 Rehabilitate- 運営等 Operate) 方式ハ民間事業者が公共施設等の設計及び建 BT( 建設 Build- 移転 Transfer) 方式設又は製造を担う手法民間建設借上方式 2 優先的検討の対象とする事業及び検討開始時期一優先的検討の対象とする事業建築物の整備等に関

工期 : 約 8 ヶ月 約 11 ヶ月 1-3 工事名 : 大阪港北港南地区岸壁 (-16m)(C12 延伸 ) 埋立工事 ( 第 2 工区 ) 2) 工事場所 : 大阪市此花区夢洲東 1 丁目地先 3) 工期 : 約 9ヶ月 4) 工事概要 : 埋立工 1 式 ( 工事発注規模 )2 億 5,00

事業事前評価表

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JETRO 2016 年 3 月ジェトロ ヨハネスブルク事務所作成 EDM の改定電力マスタープラン (1) 1. 背景世界銀行 フランス開発庁 (AFD) 欧州投資銀行(EIB) アラブ基金の協調融資である National Energy Development and Access Progra

事業事前評価表

事業事前評価表 国際協力機構地球環境部環境管理第一チーム 1. 案件名 国名 : パキスタン国案件名 : 和名パンジャブ州上下水道管理能力強化プロジェクト英名 Project for Improving the Capacity of WASAs in Punjab Province 2. 事業の背

Microsoft Word - H290324優先的検討規程(裁定).docx

手法 という ) を検討するものとする この場合において 唯一の手法を選択することが困難であるときは 複数の手法を選択できるものとする なお 本規程の対象とする PPP/PFI 手法は次に掲げるものとする イ民間事業者が公共施設等の運営等を担う手法ロ民間事業者が公共施設等の設計 建設又は製造及び運営

国立大学法人富山大学 PPP/PFI 手法導入優先的検討要項

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プロジェクト ( 年 ) 独 (KfW): 西ナイル地区に特化した配電網の拡充 小水力の開発 ( 年 ) 3. 事業概要 (1) 事業の目的ウガンダにおける産業活性化が期待できる地方において 長距離配電線 (33kV 配電線 ) の資機材の調達 据付を行うことによ

Transcription:

事業事前評価表国際協力機構南アジア部南アジア第四課 1. 基本情報国名 : バングラデシュ人民共和国 ( バングラデシュ ) 案件名 : マタバリ超々臨界圧石炭火力発電事業 (V) Matarbari Ultra Super Critical Coal-Fired Power Project (V) L/A 調印日 :2019 年 6 月 30 日 2. 事業の背景と必要性 (1) 当該国における電力セクターの開発の現状 課題及び本事業の位置付けバングラデシュでは 近年の安定した経済成長や工業化の進展による電力需要の急増に供給が追いついておらず 2020 年時点の推計電力需要 13,300MW に対し ( 電力エネルギー鉱物資源省 改訂電力 エネルギーマスタープラン (Power System Master Plan 2016) ( 2016 年 )) 最大発電実績は 10,084MW と需要の約 7 割に留まる ( バングラデシュ電力開発庁 (Bangladesh Power Development Board 以下 BPDB という ) 2018 年 ) 2016 年から 10 年間に亘り年率約 9.3% の電力需要の増加が見込まれる一方 発電の 6 割を依存する国内産天然ガスの産出量は頭打ちとなり 2018 年からは LNG の輸入が開始された そのため エネルギー安全保障上 国内産天然ガスに代わる新たなエネルギー源の確保が重要な課題となっている マタバリ超々臨界圧石炭火力発電事業 ( 以下 本事業 という ) は 輸入石炭を活用した高効率の超々臨界圧石炭火力発電所等を建設することにより バングラデシュにおいて急増する電力需要に対処し LNG に比べ経済性に優れる石炭を用いることでエネルギー源の多様化に対応するものである 第 7 次五か年計画 (2016/17~2020/21 年度 ) において 電力セクターは 2021 年までの中所得国化を目指すうえで最優先セクターの一つと位置付けられている また 改訂電力 エネルギーマスタープラン(Power System Master Plan 2016) においても 国内天然ガスに代わる新たなエネルギー源を輸入石炭 LNG 及び原子力により賄う方針が示されている なお 本事業は首相直轄のバングラデシュの最重要事業の一つに位置付けられている (2) 電力セクターに対する我が国及び国際協力機構 (JICA) の協力方針等と本事業の位置付け対バングラデシュ人民共和国 JICA 国別分析ペーパー (2014 年 5 月 ) では 電力安定供給 が重点課題であると分析し そのために石炭等のエネルギー輸入促進を支援するとしている また 対バングラデシュ人民共和国国別開発協力方針 (2018 年 2 月 ) では 経済成長の加速化が重点分野の一つとして掲げられてお

り 本事業はこれら方針及び分析に合致する また 本事業はダッカ首都圏の交通の円滑化を図ることから 持続可能な開発目標 (Sustainable Development Goals 以下 SDGs という ) のゴール7( 万人のための利用可能で 安定した 持続可能で近代的なエネルギーへのアクセス ) ゴール9( 強靭なインフラの構築 包括的で持続可能な工業化の促進とイノベーションの育成 ) に貢献すると考えられる JICA はこれまで バングラデシュにおいて ハリプール新発電所建設事業 (2007 年度及び 2008 年度承諾 ) ベラマラ コンバインドサイクル火力発電所建設事業 (2010 年度及び 2013 年度承諾 ) 全国送電網整備事業 (2013 年度承諾 ) ダッカ地下変電所建設事業 (2017 年度承諾 ) 海外投融資 モヘシュカリ浮体式 LNG 貯蔵再ガス化設備運営事業 (2017 年度承諾 ) を実施した そのほか 電力政策アドバイザーを派遣 (2004 年度 -2016 年度 ) するとともに 技術協力 TQM の導入による電力セクターマネジメント強化プロジェクト (2006 年度 -2009 年度 ) 石炭火力発電マスタープラン調査 (2009 年度 -2010 年度 ) を実施している (3) 他の援助機関の対応世界銀行は 基幹送電網整備 電力セクター向け開発支援借款 電力セクター全体の財務改革 再建計画の策定 ガス火力発電所建設等を支援 アジア開発銀行は BPDB の経営効率化 バングラデシュエネルギー規制委員会 (Bangladesh Energy Regulatory Committee) 設立 ガス火力発電所建設等の支援 アジアインフラ投資銀行は配電網整備 ガス配送網強化の支援等を実施している 3. 事業概要 (1) 事業目的本事業は バングラデシュ南東部チッタゴン管区マタバリ地区に定格出力 1,200MW(600MW 2 基 ) の高効率の超々臨界圧石炭火力発電所及び石炭搬入用港湾 送電線等の関連設備を建設することにより バングラデシュにおける電力需要の急増やエネルギー転換ニーズへの対処とともに 温室効果ガスの排出の抑制を図り もってバングラデシュにおける経済全体の活性化及び気候変動の緩和に寄与するもの (2) プロジェクトサイト / 対象地域名チッタゴン管区コックスバザール県モヘシュカリ郡マタバリ地区 (3) 事業内容 1) 超々臨界圧石炭火力発電所建設 (600MW 2 基 ) 石炭搬入用港湾建設 2) 送電線建設 ( 送電線約 92km 鉄塔等)

3) アクセス道路整備 ( 橋梁約 675m 新規道路建設約 7.4km 既存道路補修約 5km 等 ) 4) 周辺地域電化 ( 送電線約 25km 変電所 配電設備) 5) 資機材調達 ( 大型車両 計器 防災設備等 ) 6) コンサルティング サービス ( 詳細設計 入札補助 施工監理 組織強化等 ) (4) 総事業費 915,567 百万円 ( うち 今次円借款対象額 :143,127 百万円 ) (5) 事業実施期間 2014 年 6 月 ~2027 年 1 月を予定 ( 計 152 か月 ) 施設供用開始時(2024 年 7 月 ) をもって事業完成とする (6) 事業実施体制 1) 借入人 : バングラデシュ人民共和国政府 (The Government of the People s Republic of Bangladesh) 3) 保証人 : なし 4) 事業実施機関 : バングラデシュ石炭火力発電会社 ( Coal Power Generation Company Bangladesh Limited:CPGCBL) バングラデシュ送電会社 (Power Grid Company of Bangladesh Limited:BPDB) 道路交通橋梁省道路 国道部 (Roads and Highways Department:RHD) 5) 運営 維持管理機関 : CPGCBL PGCB RHD アクセス道路の一部を成す堤防部分は水資源開発庁 (Bangladesh Water Development Board) が行う 航路 泊地 防波堤部分の運営 維持管理は CPA が行う なお 航路 泊地 防波堤部分の運営維持管理費は石炭搬入用港湾及び商業用港湾それぞれの初期投資額比率に応じて CPGCBL と CPA とで費用分担する予定である (7) 他事業 他援助機関等との連携 役割分担 1) 我が国の援助活動本事業で建設される石炭火力発電所は円借款 ダッカ-チッタゴン基幹送電線強化事業 (2015 年度承諾 ) において建設される送電線に接続され ダッカ首都圏に電力を供給する また 円借款 マタバリ港開発事業 (2019 年度承諾 ) にて建設予定の商業用港湾の完成後は 本事業にて整備され港湾施設の一部 ( 航路 泊地 防波堤 ) が同港と共同利用される予定 2) 他援助機関等の援助活動特になし

(8) 環境社会配慮 横断的事項 ジェンダー分類 1) 環境社会配慮 1 カテゴリ分類 :A 2 カテゴリ分類の根拠 : 本事業は 国際協力機構環境社会配慮ガイドライン (2010 年 4 月公布 ) に掲げる火力発電セクターに該当するため 3 環境許認可 : 発電所及び港湾の建設 整備に係る EIA は 2013 年 10 月に 送電線及びアクセス道路の建設 整備に係る EIA は 2013 年 11 月に バングラデシュ国環境森林省環境局 (Department of Environment 以下 DOE という ) により承認済み その後 変更された送電線ルートについては ダッカーチッタゴン基幹送電線強化事業 の中にて一括で EIA 報告書が作成され 2016 年 6 月に DOE により承認済み 周辺地域電化事業 ( 送配電網の建設 ) に係る EIA は 2015 年 10 月に DOE より承認されている さらに 港湾設計変更による本事業の EIA の改訂は不要であることを DOE と確認済み 同部分における環境影響評価結果及び緩和策については マタバリ港開発事業 の EIA として承認済み 4 汚染対策 : 本事業の発電所から排出される排ガス中の硫黄酸化物 (SOx) 窒素酸化物 (NOx) のいずれも 海水式排煙脱硫装置 低 NOx 燃焼方式を採用することでバングラデシュ及び国際基準 (IFC EHS ガイドライン ) の基準値を満たす見込み また 同様に大気中の濃度もバングラデシュ及び EHS ガイドラインの基準値を満たす見込み 煤塵 (PM) に関して EHS ガイドライン基準値は満たすものの PM10( 年間値 ) 濃度推定結果 (42.4 ~62.4μg/m 3 ) の上限値は唯一バングラデシュの基準値を超過する結果が出ているが これは事業実施前の濃度 (42~62μg/m 3 ) の影響によるものと考えられ 本事業の寄与は僅か 0.4μg/m 3 と推定されている PM に関して 高煙突 (275m) 電気集塵機を採用することで影響を最小限に抑える 本事業は海水を冷却水として使用するが 排水時は取水時の温度から 7 以内の上昇に抑え バングラデシュの工業排水の基準値 (40 未満 ) を遵守することにより 生態系への影響は軽減される 騒音は工事中 供用後共にバングラデシュ及び EHS ガイドラインの基準値を満たす見込み 5 自然環境面 : 事業対象地域は国立公園等の影響を受けやすい地域又はその周辺に該当しない 事業対象地から南方に約 15km の地点にバングラデシュ政府が Ecologically Critical Area と指定するソナディア島があるが 事業対象地からは十分な距離があることに加え 汚染対策に記載の緩和策が講じられることで 同地域への影響は軽減される見込み ウミガメ類の繁殖への悪影響を避けるため 産卵期及び孵化期には 建設工事に伴う海面及びその周辺に灯火される光源の明るさの削減 及び騒音 振動の軽減等の

対策をとる また 労働者によるヘラシギ等の希少種の採取 捕獲 狩猟行為を禁止する 加えて 港事業との一体工事により追加となる泊地 航路の拡幅部分における追加的な環境影響としては 浚渫土の海洋投棄による影響が想定されるが 底生生物 魚類などの生物への影響を最小限とするため 沖から十分な距離 水深を有する海域を海洋投棄の候補地点を選定し投棄することによる汚濁拡散の最小化 及び汚濁拡散防止膜の設置等の緩和策を講じることで 周辺環境への影響は軽微となる見込み 6 社会環境面 : 発電所 港湾に係る用地取得面積は約 572ha であり 当該地域は 乾季は塩田 雨季はエビの養殖場として利用されている 発電所 港湾の建設 整備により 48 世帯の非正規居住者の住民移転が必要であった また 被影響住民は 2,381 名である また アクセス道路の新設及び補修 ( 橋梁約 700m 新規道路建設約 7.4km 既存道路補修 5km 部分 ) に係る用地取得面積は約 41 ha であり 93 世帯 545 人の住民移転を伴う ( 非正規居住者は 0 名 ) バングラデシュ国内手続きと JICA 環境社会配慮ガイドラインに沿って作成された住民移転計画 (RAP) に従い 用地取得および補償や支援の手続きが進められる 送電線建設及び周辺地域電化については実施機関所有地又は政府所有地を活用するため 用地取得は発生しない なお 現地ステークホルダー協議を実施したところ 参加者から本事業に対する反対意見は確認されなかったが 適切な環境管理や周辺インフラ開発への要望が出された 要望に関して実施機関から適切に対応する旨回答し 参加者からの理解を得た 7 その他 モニタリング : 住民移転 生計回復状況については 実施機関による内部モニタリングと第三者機関による外部モニタリングが実施される 環境面では 工事中は実施機関及びコントラクターが 供用後は実施機関が大気質 水質 騒音 振動 生態系等をモニタリングする 2) 横断的事項 : コンサルタントの支援を得つつ建設労働者に対する HIV/ エイズ予防に係る啓発 教育活動等を実施予定 また 高効率な超々臨界圧技術の採用により 亜臨界圧技術による同規模の石炭火力発電と比較して温室効果ガス排出を約 40 万トン / 年 (CO2 換算 ) 抑制し 気候変動の緩和に資する 3) ジェンダー分類 対象外 :GI( ジェンダー主流化ニーズ調査 分析案件 ) < 分類理由 > 協力準備調査にて 環境社会配慮に関連して 男女別の意見聴取やジェンダーバランスに配慮したステークホルダーミーティングを実施済み よって ジェンダー主流化ニーズ調査 分析案件に分類

(9) その他特記事項 特になし 4. 事業効果 (1) 定量的効果 1) アウトカム ( 運用 効果指標 ) 指標名 単位 基準値 (2013 年実績値 ) 目標値 (2026 年 ) 事業完成 2 年後 [ 運用指標 ] 発電所最大出力 MW - 1,200 利用率 % - 80 稼働率 % - 85 所内率 % - 6.48 発電端熱効率 % - 41.29 ユニット停止時間 人為ミス 時間 / 年 - 0 機械故障 時間 / 年 - 218 定期点検 時間 / 年 - 1,096 ユニット停止回数 回 / 年 - 10 送電線送電ロス % - 0.4 港湾バース稼働率 % - 60 総貨物量 千トン / 年 - 4,000 [ 効果指標 ] 送電端発電量 GWh/ 年 - 7,865 CO 2 排出 千トン / 年 - 3,416 NO X 排出 千トン / 年 - 6.1 SO X 排出 千トン / 年 - 10.9 煤塵排出 千トン / 年 - 0.7 燃料消費 千トン / 年 - 1,863 1 基当たり (2) 定性的効果 バングラデシュ経済全体の活性化及び気候変動の緩和 (3) 内部収益率 以下の前提に基づき 本事業の経済的内部収益率 (EIRR) は 12.8% 財務的 内部収益率 (FIRR) は発電コンポーネントが 2.5% 送電コンポーネントが 11.7% となる EIRR 費用 : 総事業費 燃料費 運営 維持管理費 ( いずれも税金を除く ) 便益 : 本事業による発電 (with ケース ) と民間の発電企業からの買電コスト (without ケース ) との差額 ( 維持管理費等含む ) プロジェクトライフ :36 年

FIRR ( 発電 港湾 道路建設コンポーネント ) 費用 : 事業費 ( 発電所 港湾 道路建設分 ) 燃料費 運営 維持管理費便益 : 売電収入 (PPA) プロジェクトライフ :36 年 ( 送電コンポーネント ) 費用 : 事業費 ( 送電線分 ) 維持管理費便益 : 送電料金プロジェクトライフ :34 年 5. 前提条件 外部条件 (1) 前提条件同地域において バングラデシュ政府予算により道路建設が計画されており 本事業アクセス道路整備コンポーネントのうち バングラデシュ政府事業計画と重複する 31.5km の既存道改修を事業対象外とした 本事業の効果発現には 同道路の完成が必要 (2) 外部条件サイクロン等の自然災害による土木工事等の遅延が発生しない 6. 過去の類似案件の教訓と本事業への適用ケニア共和国 モンバサディーゼル発電プラント建設事業 の事後評価結果 ( 評価年度 :2005 年 ) 等から メーカーによる適切なサポートは 発電事業の持続性を高めるとの教訓が得られている 本事業ではコンサルタントによる運営維持管理に係る技術移転及びメーカーによる長期保守契約 (Long Term Service Agreement) の締結により 維持管理体制の構築と定着を図る予定 長期保守契約分の入札評価上の取り扱い 契約条件については入札書類において明確化されている 7. 評価結果本事業は バングラデシュの開発課題 開発政策並びに我が国及び JICA の協力方針 分析に合致し 発電所及び関連設備として石炭搬入用港湾 送電線等の建設を通じてバングラデシュにおける電力安定供給やエネルギー転換に資するものであり SDGs ゴール 7( 万人のための利用可能で 安定した 持続可能で近代的なエネルギーへのアクセス ) 及びゴール 9( 強靭なインフラの構築 包摂的で持続可能な工業化の促進とイノベーションの育成 ) にも貢献すると考え

られることから事業の実施を支援する必要性は高い 8. 今後の評価計画 (1) 今後の評価に用いる指標 4.(1)~(3) のとおり (2) 今後の評価スケジュール事後評価事業完成 2 年後 以上