EPA 農業ワーキンググループ第 5 回会合発表資料 アジア太平洋地域における FTA 網形成の現状と日本 慶應義塾大学経済学部木村福成 2007.02.27. F.K. 1
1. アジア太平洋地域の現状 東アジア地域 de facto econ. integ. のみならず de jure も進む 地域をまたぐ二国間 FTAs も急速に進行 多層的なプルリ FTA のアイデアが 競争的 に提案されつつある 経済外交に占める FTA の位置付け WTO ドーハラウンドの難航 スコープの限定 Speed scope sequencing 動機 内容はさまざま 2007.02.27. F.K. 2
T ab l e 2. Ma t r i x o f F T A s i nv o l v i n g C o u n t r i es in t h e A s i a - Pac ifi c Reg i o n ( A s o f Oc to b er 2006) R u s s ia Russia Chinese Taipei Hong Kong Japan Korea China Philippines Indonesia Malaysia Thailand Singapore Brunei Vietnam Laos Cambodia Myanmar India Australia New Zealand Papua New Guinea United States Canada Mexico Peru Chile C hinese T aipei H o n g K o n g J a p a n K o r e a C h in a P h ilip p in e s Indonesia M a la y s ia T h a ila n d S in g a p o r e B r u n e i V ie tn a m L a o s C am bodia M y a n m a r I n d ia A u s t r a lia N e w Z e a la n d Papua New G uinea U n ited States C a n a d a M e x ic o Peru C h ile 0 0 1 3 10 12 12 12 13 14 17 14 12 12 12 12 11 5 6 2 6 3 4 3 10 / 0 0 1 1 0 6 2 3 3 3 3 3 2 3 3 3 3 1 9 9 0 3 3 3 3 1 0 2 0 4 2 3 0 0 0 1 1 0 0 0 0 0 2 1 1 0 1 1 0 0 0 T o t a l 0 2 2 1 7 1 8 1 7 1 5 1 5 1 6 1 8 2 1 1 6 1 5 1 5 1 5 1 5 1 4 1 5 1 6 2 1 0 7 7 6 1 1 N o te : : E n tered in to force/sign ed : Un der negot iation/agreed to negotiate (bi lateral) : Un der negot iation/agreed to negotiate (pl urilateral) : Un d e r co n s i de r a t i on ( G- G ba s e ) /f ea s i bl e s t u d y i ni ti at e d 2007.02.27. F.K. 3
東アジアの FTA 締結状況 (2007 年 1 月現在 ) 日本 韓国 中国 日本 / 韓国 * 中国 アセアン / * / / インド 豪州 / NZ / : 交渉 ( 署名 ) 済 / 発効済 : 交渉中 / 交渉開始合意 : 共同研究 / 協議中 アセアン インド 豪州 N Z 2007.02.27. F.K. 4
アジア太平洋地域先進国の FTA 締結状況 (2007 年 1 月現在 日本 韓国 カナダ シンガポール アメリカ 豪州 メキシコ NZ チリ 2007.02.27. F.K. 5
2. これまでの日本の二国間 FTAs の評価 極めてプラグマティックなアプローチ 内容 東アジア (+ メキシコ ) における国際的生産 流通ネットワークのより一層の活性化に貢献 ビジネス環境整備 : 貿易 投資円滑化 経済制度整備 官民対話チャンネル設定 他政策分野とのリンク モノの貿易に関する自由化度に課題残す 特殊なバーゲニング構造による非対称な自由化度 国内の政治経済学を前面に出した交渉 cf. AFTA ACFTA AKFTA その他 地域大のプルリ構想の提示が求められている 2007.02.27. F.K. 6
% 80 70 Philippines Singapore Figure 7 Machinery goods and parts and components: shares in total exports and imports in 2005 Japan Hong Kong Korea 60 50 Malaysia Thailand China 40 Indonesia 30 20 10 0 Philippines Singapore Hong Kong Malaysia Japan Hungary Korea USA Costa Rica Czech Mexico Thailand Germany China Poland Slovakia France UK Estonia Canada Honduras Brazil Indonesia Lithuania India Latvia Argentina Colombia Russia Chile Ecuador Guatemala Venezuela Peru Exports: machinery goods Imports: machinery goods Exports: parts and components in machinery goods Imports: parts and components in machinery goods Data source: Authors' calculation, based on UN COMTRADE. Source: Ando and Kimura (2007). 2007.02.27. F.K. 7
フラグメンテーション : サービス リンク コストと生産ブロックの効率性のかけあわせ フラグメンテーション前 Old big factory フラグメンテーション後 PB SL PB SL PB SL PB SL PB SL 2007.02.27. F.K. 8
図 1 二次元のフラグメンテーション ディスインテグレーション 競争的なスポット入札 インターネットオークション 国内の企業間フラグメンテーション 国際的な企業間フラグメンテーション EMS ( 企業の境界 ) 下請 OEM 契約 外注 国内の企業内フラグメンテーション 国際的な企業内フラグメンテーション 原点 ( 国境 ) ディスタンス 出所 :Kimura and Ando (2005a). 2007.02.27. F.K. 9
表 1 2 次元のフラグメンテーションと政策課題 生産ブロックを結ぶサービスリンク コスト 生産ブロック内の生産コスト 第 1 種フラグメンテーション 地理的距離から生ずるコストの軽減 立地の優位性から生ずるコスト節減のさらなる実現 [ 地理的距離の次元 ] 関連政策 : 輸送 電気通信インフラの整備 流通の効率化 貿易円滑化 コーディネーション コストの節減など 関連政策 : 賃金水準 資源へのアクセスなどの強みを生かす生産環境整備 電力その他エネルギー 工業団地等インフラサービス投入コストの軽減 技術許容能力の向上など 第 2 種フラグメンテーション 企業のコントロールが失われることから生ずるコストの軽減 反 内部化から生ずるコスト節減のさらなる実現 [ 企業のコントロール力の次元 ] 関連政策 : 潜在的取引相手に関する情報収集コスト モニタリングコストの節減 契約の公正性 安定性の確保 紛争解決メカニズムの整備 その他一般的な法制 経済制度の整備など 関連政策 : 外資系 地場系企業を含む多様な潜在的取引相手の誘致 育成 サポーティングインダストリーの強化 多様な契約形態の許容 情報の不完全性の克服など 2007.02.27. F.K. 10
3. 東アジアを超える FTAs の姿 直接的経済効果のみならず 理念のプレゼンテーションも重要に 東アジアとアジア太平洋の戦略上のバランス 食料 資源へのアクセスの確保 将来の巨大市場へのアクセスの確保 経済外交上の地位の強化 確立 少なくとも建前上 国内の政治経済学を前面に出したプラグマティックなアプローチは改める必要あり まず 世界大の自由な貿易 投資促進の哲学 を語る体制を構築すべき 2007.02.27. F.K. 11
4. バイからプルリへの道程 FTAs と関税同盟の違い 域内貿易における原産地規則の要不要 より深い統合への発展可能性 vs. 政治的コスト モノの貿易 :ROO の複雑化による スパゲティ ボウル現象 (Bhagwati)?? コスト : 関税率表の複雑化 FTA 交渉コスト しかし 既存の貿易を阻害 することはない 貿易円滑化 プルリ化は当然必要 それ以外の分野 :path-finder としての役割を果たすのはどの国か? プルリ FTA のデザインをめぐる競争 2007.02.27. F.K. 12
5. 日本の 進路と戦略 現状 発効 署名済み : シンガポール メキシコ マレーシア フィリピン 条文確定 : タイ 大筋合意 : チリ インドネシア ブルネイ 交渉中 :ASEAN 湾岸諸国 (GCC) ベトナム インド 交渉開始決定 : オーストラリア スイス 交渉中断 : 韓国 諮問会議 進路と戦略 今後 2 年間で EPA 締結国が少なくとも 3 倍に増加 (12 カ国以上 ) していることが期待される 周辺諸国の動向からさらなる加速が必要に 2007.02.27. F.K. 13
現在の交渉 いずれも重要だが 特にオーストラリアと韓国との FTA/EPA が今後を占う試金石 モノの貿易の自由化達成度に問題あり 90% ルール?? 貿易額ベース vs. 関税品目数ベース? 90% で十分? 非対称? 交渉への入り方 Bottom-up vs. top-down プルリ FTA 構想への戦略的参加が必要 国内外のスピード感覚の違いをよく認識すべき 国内対応についても短期 (1 3 年 ) 中長期 (3 10 年 ) の戦略的政策設計が求められる 2007.02.27. F.K. 14