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2017 年 12 月 15 日 報道機関各位 国立大学法人東北大学大学院医学系研究科国立大学法人九州大学生体防御医学研究所国立研究開発法人日本医療研究開発機構 ヒト胎盤幹細胞の樹立に世界で初めて成功 - 生殖医療 再生医療への貢献が期待 - 研究のポイント 注 胎盤幹細胞 (TS 細胞 ) 1 は

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図 B 細胞受容体を介した NF-κB 活性化モデル

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前立腺癌は男性特有の癌で 米国においては癌死亡者数の第 2 位 ( 約 20%) を占めてい ます 日本でも前立腺癌の罹患率 死亡者数は急激に上昇しており 現在は重篤な男性悪性腫瘍疾患の1つとなって図 1 います 図 1 初期段階の前立腺癌は男性ホルモン ( アンドロゲン ) に反応し増殖します そ

のと期待されます 本研究成果は 2011 年 4 月 5 日 ( 英国時間 ) に英国オンライン科学雑誌 Nature Communications で公開されます また 本研究成果は JST 戦略的創造研究推進事業チーム型研究 (CREST) の研究領域 アレルギー疾患 自己免疫疾患などの発症機構

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別紙 < 研究の背景と経緯 > 自閉症は 全人口の約 2% が罹患する非常に頻度の高い神経発達障害です 近年 クロマチンリモデ リング因子 ( 5) である CHD8 が自閉症の原因遺伝子として同定され 大変注目を集めています ( 図 1) 本研究グループは これまでに CHD8 遺伝子変異を持つ

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の感染が阻止されるという いわゆる 二度なし現象 の原理であり 予防接種 ( ワクチン ) を行う根拠でもあります 特定の抗原を認識する記憶 B 細胞は体内を循環していますがその数は非常に少なく その中で抗原に遭遇した僅かな記憶 B 細胞が著しく増殖し 効率良く形質細胞に分化することが 大量の抗体産

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11 月 16 日午前 9 時 ( 米国東部時間 ) にオンライン版で発表されます なお 本研究開発領域は 平成 27 年 4 月の日本医療研究開発機構の発足に伴い 国立研究開発法人科学 技術振興機構 (JST) より移管されたものです 研究の背景 近年 わが国においても NASH が急増しています

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論文題目  腸管分化に関わるmiRNAの探索とその発現制御解析

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平成24年7月x日

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解禁日時 :2019 年 2 月 4 日 ( 月 ) 午後 7 時 ( 日本時間 ) プレス通知資料 ( 研究成果 ) 報道関係各位 2019 年 2 月 1 日 国立大学法人東京医科歯科大学 国立研究開発法人日本医療研究開発機構 IL13Rα2 が血管新生を介して悪性黒色腫 ( メラノーマ ) を

報道関係者各位 平成 26 年 1 月 20 日 国立大学法人筑波大学 動脈硬化の進行を促進するたんぱく質を発見 研究成果のポイント 1. 日本人の死因の第 2 位と第 4 位である心疾患 脳血管疾患のほとんどの原因は動脈硬化である 2. 酸化されたコレステロールを取り込んだマクロファージが大量に血

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学位論文の内容の要旨 論文提出者氏名 小川憲人 論文審査担当者 主査田中真二 副査北川昌伸 渡邉守 論文題目 Clinical significance of platelet derived growth factor -C and -D in gastric cancer ( 論文内容の要旨 )

法医学問題「想定問答」(記者会見後:平成15年  月  日)

1. 背景血小板上の受容体 CLEC-2 と ある種のがん細胞の表面に発現するタンパク質 ポドプラニン やマムシ毒 ロドサイチン が結合すると 血小板が活性化され 血液が凝固します ( 図 1) ポドプラニンは O- 結合型糖鎖が結合した糖タンパク質であり CLEC-2 受容体との結合にはその糖鎖が

遺伝子の近傍に別の遺伝子の発現制御領域 ( エンハンサーなど ) が移動してくることによって その遺伝子の発現様式を変化させるものです ( 図 2) 融合タンパク質は比較的容易に検出できるので 前者のような二つの遺伝子組み換えの例はこれまで数多く発見されてきたのに対して 後者の場合は 広範囲のゲノム

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報道発表資料 2006 年 4 月 13 日 独立行政法人理化学研究所 抗ウイルス免疫発動機構の解明 - 免疫 アレルギー制御のための新たな標的分子を発見 - ポイント 異物センサー TLR のシグナル伝達機構を解析 インターフェロン産生に必須な分子 IKK アルファ を発見 免疫 アレルギーの有効

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様式 19 別紙 1 課題番号 LS040 先端研究助成基金助成金 ( 最先端 次世代研究開発支援プログラム ) 実施状況報告書 ( 平成 25 年度 ) 本様式の内容は一般に公表されます 研究課題名研究機関 部局 職名氏名 アディポネクチンの運動模倣効果のメカニズム解明による画期的糖尿病治療薬の開

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化を明らかにすることにより 自閉症発症のリスクに関わるメカニズムを明らかにすることが期待されます 本研究成果は 本年 京都において開催される Neuro2013 において 6 月 22 日に発表されます (P ) お問い合わせ先 東北大学大学院医学系研究科 発生発達神経科学分野教授大隅典

細胞老化による発がん抑制作用を個体レベルで解明 ~ 細胞老化の仕組みを利用した新たながん治療法開発に向けて ~ 1. ポイント : 明細胞肉腫 (Clear Cell Sarcoma : CCS 注 1) の細胞株から ips 細胞 (CCS-iPSCs) を作製し がん細胞である CCS と同じ遺

の活性化が背景となるヒト悪性腫瘍の治療薬開発につながる 図4 研究である 研究内容 私たちは図3に示すようなyeast two hybrid 法を用いて AKT分子に結合する細胞内分子のスクリーニングを行った この結果 これまで機能の分からなかったプロトオンコジン TCL1がAKTと結合し多量体を形

報道発表資料 2002 年 10 月 10 日 独立行政法人理化学研究所 頭にだけ脳ができるように制御している遺伝子を世界で初めて発見 - 再生医療につながる重要な基礎研究成果として期待 - 理化学研究所 ( 小林俊一理事長 ) は プラナリアを用いて 全能性幹細胞 ( 万能細胞 ) が頭部以外で脳

細胞老化による発がん抑制作用を個体レベルで解明 ~ 細胞老化の仕組みを利用した新たながん治療法開発に向けて ~ 1. 発表者 : 山田泰広 ( 東京大学医科学研究所システム疾患モテ ル研究センター先進病態モテ ル研究分野教授 ) 河村真吾 ( 研究当時 : 京都大学 ips 細胞研究所 / 岐阜大学

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解禁日時 :2018 年 8 月 24 日 ( 金 ) 午前 0 時 ( 日本時間 ) プレス通知資料 ( 研究成果 ) 報道関係各位 2018 年 8 月 17 日国立大学法人東京医科歯科大学学校法人日本医科大学国立研究開発法人産業技術総合研究所国立研究開発法人日本医療研究開発機構 軟骨遺伝子疾患

関係があると報告もされており 卵巣明細胞腺癌において PI3K 経路は非常に重要であると考えられる PI3K 経路が活性化すると mtor ならびに HIF-1αが活性化することが知られている HIF-1αは様々な癌種における薬理学的な標的の一つであるが 卵巣癌においても同様である そこで 本研究で

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Peroxisome Proliferator-Activated Receptor a (PPARa)アゴニストの薬理作用メカニズムの解明

統合失調症発症に強い影響を及ぼす遺伝子変異を,神経発達関連遺伝子のNDE1内に同定した

受精に関わる精子融合因子 IZUMO1 と卵子受容体 JUNO の認識機構を解明 1. 発表者 : 大戸梅治 ( 東京大学大学院薬学系研究科准教授 ) 石田英子 ( 東京大学大学院薬学系研究科特任研究員 ) 清水敏之 ( 東京大学大学院薬学系研究科教授 ) 井上直和 ( 福島県立医科大学医学部附属生

研究背景 糖尿病は 現在世界で4 億 2 千万人以上にものぼる患者がいますが その約 90% は 代表的な生活習慣病のひとつでもある 2 型糖尿病です 2 型糖尿病の治療薬の中でも 世界で最もよく処方されている経口投与薬メトホルミン ( 図 1) は 筋肉や脂肪組織への糖 ( グルコース ) の取り

新規遺伝子ARIAによる血管新生調節機構の解明

( 様式甲 5) 学位論文内容の要旨 論文提出者氏名 論文審査担当者 主査 教授 大道正英 髙橋優子 副査副査 教授教授 岡 田 仁 克 辻 求 副査 教授 瀧内比呂也 主論文題名 Versican G1 and G3 domains are upregulated and latent trans

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この研究成果は 日本時間の 2018 年 5 月 15 日午後 4 時 ( 英国時間 5 月 15 月午前 8 時 ) に英国オンライン科学雑誌 elife に掲載される予定です 本成果につきまして 下記のとおり記者説明会を開催し ご説明いたします ご多忙とは存じますが 是非ご参加いただきたく ご案

Microsoft Word - 運動が自閉症様行動とシナプス変性を改善する

生物時計の安定性の秘密を解明

汎発性膿疱性乾癬のうちインターロイキン 36 受容体拮抗因子欠損症の病態の解明と治療法の開発について ポイント 厚生労働省の難治性疾患克服事業における臨床調査研究対象疾患 指定難病の 1 つである汎発性膿疱性乾癬のうち 尋常性乾癬を併発しないものはインターロイキン 36 1 受容体拮抗因子欠損症 (

別紙 自閉症の発症メカニズムを解明 - 治療への応用を期待 < 研究の背景と経緯 > 近年 自閉症や注意欠陥 多動性障害 学習障害等の精神疾患である 発達障害 が大きな社会問題となっています 自閉症は他人の気持ちが理解できない等といった社会的相互作用 ( コミュニケーション ) の障害や 決まった手

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神経細胞での脂質ラフトを介した新たなシグナル伝達制御を発見

を行った 2.iPS 細胞の由来の探索 3.MEF および TTF 以外の細胞からの ips 細胞誘導 4.Fbx15 以外の遺伝子発現を指標とした ips 細胞の樹立 ips 細胞はこれまでのところレトロウイルスを用いた場合しか樹立できていない また 4 因子を導入した線維芽細胞の中で ips 細

平成24年7月x日

ただ太っているだけではメタボリックシンドロームとは呼びません 脂肪細胞はアディポネクチンなどの善玉因子と TNF-αや IL-6 などという悪玉因子を分泌します 内臓肥満になる と 内臓の脂肪細胞から悪玉因子がたくさんでてきてしまい インスリン抵抗性につながり高血糖をもたらします さらに脂質異常症


細胞外情報を集積 統合し 適切な転写応答へと変換する 細胞内 ロジックボード 分子の発見 1. 発表者 : 畠山昌則 ( 東京大学大学院医学系研究科病因 病理学専攻微生物学分野教授 ) 2. 発表のポイント : 多細胞生物の個体発生および維持に必須の役割を担う多彩な形態形成シグナルを細胞内で集積 統

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( 様式甲 5) 氏 名 渡辺綾子 ( ふりがな ) ( わたなべあやこ ) 学 位 の 種 類 博士 ( 医学 ) 学位授与番号 甲 第 号 学位審査年月日 平成 27 年 7 月 8 日 学位授与の要件 学位規則第 4 条第 1 項該当 学位論文題名 Fibrates protect again

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今後の展開現在でも 自己免疫疾患の発症機構については不明な点が多くあります 今回の発見により 今後自己免疫疾患の発症機構の理解が大きく前進すると共に 今まで見過ごされてきたイントロン残存の重要性が 生体反応の様々な局面で明らかにされることが期待されます 図 1 Jmjd6 欠損型の胸腺をヌードマウス

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( 図 ) IP3 と IRBIT( アービット ) が IP3 受容体に競合して結合する様子

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平成 29 年 6 月 9 日 ニーマンピック病 C 型タンパク質の新しい機能の解明 リソソーム膜に特殊な領域を形成し 脂肪滴の取り込み 分解を促進する 名古屋大学大学院医学系研究科 ( 研究科長門松健治 ) 分子細胞学分野の辻琢磨 ( つじたくま ) 助教 藤本豊士 ( ふじもととよし ) 教授ら

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統合失調症といった精神疾患では シナプス形成やシナプス機能の調節の異常が発症の原因の一つであると考えられています これまでの研究で シナプスの形を作り出す細胞骨格系のタンパク質 細胞同士をつないでシナプス形成に関与する細胞接着分子群 あるいはグルタミン酸やドーパミン 2 系分子といったシナプス伝達を

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血漿エクソソーム由来microRNAを用いたグリオブラストーマ診断バイオマーカーの探索 [全文の要約]

学位論文の内容の要旨 論文提出者氏名 佐藤雄哉 論文審査担当者 主査田中真二 副査三宅智 明石巧 論文題目 Relationship between expression of IGFBP7 and clinicopathological variables in gastric cancer (

( 続紙 1 ) 京都大学 博士 ( 薬学 ) 氏名 大西正俊 論文題目 出血性脳障害におけるミクログリアおよびMAPキナーゼ経路の役割に関する研究 ( 論文内容の要旨 ) 脳内出血は 高血圧などの原因により脳血管が破綻し 脳実質へ出血した病態をいう 漏出する血液中の種々の因子の中でも 血液凝固に関

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背景 私たちの体はたくさんの細胞からできていますが そのそれぞれに遺伝情報が受け継がれるためには 細胞が分裂するときに染色体を正確に分配しなければいけません 染色体の分配は紡錘体という装置によって行われ この際にまず染色体が紡錘体の中央に集まって整列し その後 2 つの極の方向に引っ張られて分配され

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汎発性膿庖性乾癬の解明

平成 30 年 2 月 5 日 若年性骨髄単球性白血病の新たな発症メカニズムとその治療法を発見! 今後の新規治療法開発への期待 名古屋大学大学院医学系研究科 ( 研究科長 門松健治 ) 小児科学の高橋義行 ( たかはしよしゆき ) 教授 村松秀城 ( むらまつひでき ) 助教 村上典寛 ( むらかみ

報道発表資料 2006 年 8 月 7 日 独立行政法人理化学研究所 国立大学法人大阪大学 栄養素 亜鉛 は免疫のシグナル - 免疫系の活性化に細胞内亜鉛濃度が関与 - ポイント 亜鉛が免疫応答を制御 亜鉛がシグナル伝達分子として作用する 免疫の新領域を開拓独立行政法人理化学研究所 ( 野依良治理事

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疫学研究の病院HPによる情報公開 様式の作成について

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小児の難治性白血病を引き起こす MEF2D-BCL9 融合遺伝子を発見 ポイント 小児がんのなかでも 最も頻度が高い急性リンパ性白血病を起こす新たな原因として MEF2D-BCL9 融合遺伝子を発見しました MEF2D-BCL9 融合遺伝子は 治療中に再発する難治性の白血病を引き起こしますが 新しい

ヒト脂肪組織由来幹細胞における外因性脂肪酸結合タンパク (FABP)4 FABP 5 の影響 糖尿病 肥満の病態解明と脂肪幹細胞再生治療への可能性 ポイント 脂肪幹細胞の脂肪分化誘導に伴い FABP4( 脂肪細胞型 ) FABP5( 表皮型 ) が発現亢進し 分泌されることを確認しました トランスク

難病 です これまでの研究により この病気の原因には免疫を担当する細胞 腸内細菌などに加えて 腸上皮 が密接に関わり 腸上皮 が本来持つ機能や炎症への応答が大事な役割を担っていることが分かっています また 腸上皮 が適切な再生を全うすることが治療を行う上で極めて重要であることも分かっています しかし

く 細胞傷害活性の無い CD4 + ヘルパー T 細胞が必須と判明した 吉田らは 1988 年 C57BL/6 マウスが腹腔内に移植した BALB/c マウス由来の Meth A 腫瘍細胞 (CTL 耐性細胞株 ) を拒絶すること 1991 年 同種異系移植によって誘導されるマクロファージ (AIM

エネルギー代謝に関する調査研究

共同研究チーム 個人情報につき 削除しております 1

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界では年間約 2700 万人が敗血症を発症し その多くを発展途上国の乳幼児が占めています 抗菌薬などの発症早期の治療法の進歩が見られるものの 先進国でも高齢者が発症後数ヶ月の 間に新たな感染症にかかって亡くなる例が多いことが知られています 発症早期には 全身に広がった感染によって炎症反応が過剰になり

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肥満症の治療標的として期待される 褐色脂肪組織 の新規制御因子を同定 1. 発表者 : 門脇孝 ( 東京大学医学部附属病院糖尿病 代謝内科教授 ) 山内敏正 ( 東京大学医学部附属病院糖尿病 代謝内科准教授 ) 脇裕典 ( 東京大学医学部附属病院糖尿病 代謝内科 / 東京大学大学院医学系研究科分子糖尿病科学講座特任准教授 ) 油谷浩幸 ( 東京大学先端科学技術研究センターゲノムサイエンス分野教授 ) 堤修一 ( 東京大学先端科学技術研究センターゲノムサイエンス分野特任准教授 ) 平池勇雄 ( 東京大学医学部附属病院糖尿病 代謝内科特任研究員 ) 2. 発表のポイント : 熱産生によりエネルギーを消費し また BMI や年齢とその活性が負に相関することから肥満症の治療標的として期待される 褐色脂肪組織 の新規主要制御因子 NFIA(Nuclear factor I-A) を DNA 上のオープンクロマチン領域の解析から同定しました NFIA を欠損させると褐色脂肪の遺伝子プログラムが著しく障害される一方 NFIA を導入すると筋芽細胞やエネルギーの貯蔵を担う白色脂肪細胞においても褐色脂肪の遺伝子プログラムが活性化されました エネルギー摂取の抑制 ではなく エネルギー消費の促進 に基づく肥満症 メタボリックシンドローム 肥満 2 型糖尿病の新しい治療につながる可能性があります 3. 発表概要 : 肥満症とそれに起因するメタボリックシンドロームや肥満 2 型糖尿病は 心血管疾患 腎疾患や悪性腫瘍のリスクを高めることから 健康寿命の延伸を目指す上で大きな障害です 近年 エネルギーの貯蔵を担う 白色脂肪組織 以外に 熱産生を介してエネルギーを消費する 褐色脂肪組織 がヒト成人にも存在することが分かり 褐色脂肪組織の数や働きを高めることが肥満症の新しい治療法につながり得るとして期待されています このたび東京大学医学部附属病院糖尿病 代謝内科門脇孝教授 山内敏正准教授 脇裕典特任准教授 平池勇雄特任研究員及び東京大学先端科学技術研究センターゲノムサイエンス分野油谷浩幸教授 堤修一特任准教授らの研究グループは 褐色脂肪組織に特異的な DNA 上のオープンクロマチン領域の解析から 褐色脂肪組織の新規の主要制御因子として NFIA を同定しました NFIA を欠損させたマウスでは褐色脂肪の遺伝子プログラムが著しく障害されていた一方 NFIA を導入した場合には 筋芽細胞や白色脂肪細胞においても褐色脂肪の遺伝子プログラムが活性化されました 更に ヒト成人の褐色脂肪組織でも白色脂肪組織と比較して NFIA 遺伝子が高発現していました この結果は NFIA の働きを高めることで エネルギー摂取の抑制 ではなく エネルギー消費の促進 に基づく肥満症 メタボリックシンドローム 肥満 2 型糖尿病の新しい治療につながる可能性があると期待されます 本研究は国立研究開発法人日本医療研究開発機構の革新的先端研究開発支援事業 (AMED CREST) エピゲノム研究に基づく診断 治療へ向けた新技術の創出 研究開発領域における研究開発課題 2 型糖尿病 肥満における代謝制御機構とその破綻のエピゲノム

解析 ( 研究開発代表者 : 山内敏正 ) の一環で行われました なお 本研究開発領域は 2015 年 4 月の日本医療研究開発機構の発足に伴い 国立研究開発法人科学技術振興機構 (JST) より移管されたものです その成果は日本時間 2017 年 8 月 15 日午前 0 時 ( 英国時間 2017 年 8 月 14 日 16 時 ) に英国科学雑誌 Nature Cell Biology オンライン版に掲載されました 4. 発表内容 : < 研究の背景 > 肥満症とそれに起因するメタボリックシンドロームや肥満 2 型糖尿病は 心血管疾患 腎疾患や悪性腫瘍のリスクを高めることから その克服は個々人が健康寿命を全うするうえで また医療経済学的にも大きな課題です 現在 肥満症の治療は食事療法や運動療法といった生活習慣の改善が主体です エネルギーの摂取や吸収を抑制する薬剤はいくつか開発されていますが 副作用等の懸念から十分には活用されていません また 高度肥満例に対する減量手術の有効性は確立されつつあるものの すべての方に適応できる治療ではないことは明らかです 近年 エネルギーの貯蔵を担う 白色脂肪組織 以外に ミトコンドリアにおける UCP1 (Uncoupling protein-1) タンパク質による熱産生を介してエネルギーを消費する 褐色脂肪組織 がヒト成人にも存在することが分かってきました 既に BMI(Body mass index 肥満度の指標 ) と褐色脂肪組織の活性が負に相関すること また加齢に伴い褐色脂肪組織の活性が低下することが報告されています 褐色脂肪組織の数や働きを高めることが肥満症の新しい治療法につながり得るとして期待されています また発生学的な観点において 褐色脂肪組織は白色脂肪組織よりもむしろ骨格筋組織に近い可能性が報告されている一方で 白色脂肪組織も寒冷刺激や交感刺激に応じて褐色脂肪組織に近い機能を持ち得ることが示されており 褐色脂肪組織の分化の全体像には未解決の部分が多く残されています ヒトを含む多細胞生物は 同一の DNA を有するにも関わらず形態や機能が異なる様々な細胞の集団として成り立っています DNA は通常 ヒストン と呼ばれるタンパク質に巻き付いた状態で存在しており ヒストンと DNA の複合体は クロマチン と呼ばれます 同一の DNA を有するにも関わらず全身の様々な細胞がそれぞれ異なる機能を発揮できるのは DNA の異なる部分から情報を読み出しているためです DNA のうち 情報として読み出される部分が 遺伝子 であり 読み出す現象は 転写 と呼ばれます DNA から情報を読み出す際 DNA はヒストンからほどけて 遺伝子の転写に必要な因子の結合を許すような オープンクロマチン 構造を取ることが知られています < 研究内容 > 研究グループはまず マウス褐色 白色脂肪組織において DNA 上のオープンクロマチン領域を網羅的に同定できる FAIRE-seq(Formaldehyde-Assisted Isolation of Regulatory Elements coupled with high-throughput sequencing) を行いました 褐色脂肪組織に特異的なオープンクロマチン領域には 転写因子 NFIA の結合配列が最も強く濃縮していました 転写因子と DNA の結合を網羅的に解析できる ChIP-seq(Chromatin immunoprecipitation coupled with high-throughput sequencing) と呼ばれる手法により 研究グループは NFIA が褐色脂肪組織のオープンクロマチン領域へ結合し情報の読み出しを促進することで 褐色脂肪の遺伝子プログラムを活性化していることを明らかにしました また 脂肪細胞においては

これまでに 核内受容体の一つである PPARγ(Peroxisome Proliferator-Activated Receptor γ) と呼ばれる転写因子がその分化に必要十分であると知られており 脂肪細胞分化の マスター転写因子 と考えられていました 研究グループは NFIA が PPARγ に先行して DNA へ結合し かつ PPARγ の DNA への結合を促進することで NFIA と PPARγ が協調的に褐色脂肪の遺伝子プログラムを活性化することを見出しました すなわち 褐色脂肪特異的な遺伝子プログラムの活性化は PPARγ のみでは達成できず NFIA の存在が必須であると考えられました NFIA を欠損させたマウスでは 熱産生を担う UCP1 のみならず褐色脂肪の遺伝子プログラム全体が著しく障害されており 反対に骨格筋の遺伝子プログラムは活性化されていました 一方で NFIA を導入すると筋芽細胞や白色脂肪細胞においても褐色脂肪の遺伝子プログラムが活性化されました 更に ヒト成人の褐色脂肪組織でも白色脂肪組織と比較して NFIA 遺伝子が高発現しており その発現は褐色脂肪に特異的な遺伝子の発現と正に相関していることがわかりました 以上から NFIA はクロマチンの制御を介して PPARγ と協調的に褐色脂肪の遺伝子プログラムを活性化する転写因子と考えられました < 社会的意義 > 今後は NFIA の発現を欠損させたり 増やしたりしたマウスにおける体重や脂質 血糖値等を解析して肥満症 メタボリックシンドローム 肥満 2 型糖尿病の発症への影響について研究を進める予定です また NFIA の発現を制御する上流因子についても探索を進めていきます 現存する肥満症の薬物治療及び外科治療はすべて エネルギー摂取の抑制 という考え方に基づく治療法です 今回の研究成果は NFIA の制御を介して褐色脂肪組織を活性化することで エネルギー摂取の抑制 ではなく エネルギー消費の促進 に基づく肥満症 メタボリックシンドローム 肥満 2 型糖尿病の新しい治療につながる可能性があると期待されます 5. 発表雑誌 : 雑誌名 :Nature Cell Biology( オンライン版に日本時間 8 月 15 日に掲載 ) 論文タイトル :NFIA co-localizes with PPARγ and transcriptionally controls the brown fat gene program 著者 :Yuta Hiraike, Hironori Waki*, Jing Yu, Masahiro Nakamura, Kana Miyake, Gaku Nagano, Ryo Nakaki, Ken Suzuki, Hirofumi Kobayashi, Shogo Yamamoto, Wei Sun, Tomohisa Aoyama, Yusuke Hirota, Haruya Ohno, Kenji Oki, Masayasu Yoneda, Andrew P. White, Yu-Hua Tseng, Aaron M. Cypess, Therese J. Larsen, Naja Z. Jespersen, Camilla Scheele, Shuichi Tsutsumi, Hiroyuki Aburatani*, Toshimasa Yamauchi* and Takashi Kadowaki*(* 責任著者 ) DOI 番号 :10.1038/ncb3590

6. 問い合わせ先 : < 研究内容に関するお問い合わせ先 > 東京大学医学部附属病院糖尿病 代謝内科教授門脇孝 ( かどわきたかし ) 電話 : 03-5800-8815( 直通 ) FAX: 03-5800-9797 E-mail: kadowaki-3im@h.u-tokyo.ac.jp 東京大学医学部附属病院糖尿病 代謝内科准教授山内敏正 ( やまうちとしまさ ) 電話 : 03-3815-5411( 代表 ) 内線 :36638 E-mail: tyamau-tky@umin.net 東京大学先端科学技術研究センターゲノムサイエンス分野教授油谷浩幸 ( あぶらたにひろゆき ) 電話 : 03-5452-5352( 直通 ) FAX: 03-5452-5259 E-mail: haburata-tky@umin.ac.jp < 広報担当者連絡先 > 東京大学医学部附属病院パブリック リレーションセンター ( 担当 : 渡部 小岩井 ) 電話 :03-5800-9188( 直通 ) E-mail:pr@adm.h.u-tokyo.ac.jp 東京大学先端科学技術研究センター広報 情報室 ( 担当 : 村山 ) 電話 :03-5452-5424( 直通 ) E-mail:press@rcast.u-tokyo.ac.jp < 事業に関すること> 国立研究開発法人日本医療研究開発機構 (AMED) 基盤研究事業部研究企画課電話 :03-6870-2224 FAX:03-6870-2243 E-mail:kenkyuk-ask@amed.go.jp

7. 添付資料 : 本研究の概念図 NFIA は褐色脂肪特異的なオープンクロマチン領域において PPARγと協調して働く 褐色脂肪組織の新規かつ主要な制御因子であり NFIA の働きを高めることで エネルギー摂取の抑制 ではなく エネルギー消費の促進 に基づく肥満症の新しい治療につながる可能性がある (Nature Cell Biology 本論文より引用 改変 )