66 条の 6 改正のねらい 果通知 第 第 1 章改正労働安全衛生法 逐条解説 第 5 節 すべての健康診断結果の労働者への通知 特殊健康診断結果の追加 ( 第 66 条の 6 関係 ) 労働安全衛生法において 一般健康診断については 健康診断の実施後にその結果を本人へ通知する義務が規定されている

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雇用管理分野における個人情報のうち健康情報を取り扱うに当たっての留意事項 第 1 趣旨 この留意事項は 雇用管理分野における労働安全衛生法 ( 昭和 47 年法律第 57 号 以下 安衛法 という ) 等に基づき実施した健康診断の結果等の健康情報の取扱いについて 個人情報の保護に関する法律についての

きっかわ法律事務所 企業法務研究会(平成22年2月15日)資料            

事業者が行うべき措置については 匿名加工情報の作成に携わる者 ( 以下 作成従事者 という ) を限定するなどの社内規定の策定 作成従事者等の監督体制の整備 個人情報から削除した事項及び加工方法に関する情報へのアクセス制御 不正アクセス対策等を行うことが考えられるが 規定ぶりについて今後具体的に検討

者が負う民事上の安全配慮義務の履行であり そのために必要な心身の状態の情報を適正に収集し 活用する必要がある 一方 労働者の個人情報を保護する観点から 現行制度においては 事業者が心身の状態の情報を取り扱えるのは 労働安全衛生法令及びその他の法令に基づく場合や本人が同意している場合のほか 労働者の生

基発第 号 「健康診断結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針の一部を改正する指針」の周知等について

個人情報の保護に関する規程(案)

特定個人情報の取扱いの対応について

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MR通信H22年1月号

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( 内部規程 ) 第 5 条当社は 番号法 個人情報保護法 これらの法律に関する政省令及びこれらの法令に関して所管官庁が策定するガイドライン等を遵守し 特定個人情報等を適正に取り扱うため この規程を定める 2 当社は 特定個人情報等の取扱いにかかる事務フロー及び各種安全管理措置等を明確にするため 特

特定個人情報の取扱いの対応について

個人情報保護規定

個人情報保護規程

か? 歳未満の者に対する胸部エックス線検査の省略はど のようになっていますか? 歳未満の者に対する血液検査などが省略できるので すか? 21 他の健康診断で受診した項目がある場合は省略するこ とができますか? 22 特定業務健康診断特定業務に従事する者に対する健康診断とは何で

四独立行政法人労働者健康福祉機構法 ( 平成十四年法律第百七十一号 ) 第十二条第一項第七号に規定するリハビリテーション施設の中に設けられた診療所五老人福祉法 ( 昭和三十八年法律第百三十三号 ) 第二十条の四に規定する養護老人ホームの中に設けられた診療所六老人福祉法第二十条の五に規定する特別養護老

個人情報管理規程

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Ⅰ バイタルリンク 利用申込書 ( 様式 1-1)( 様式 ) の手続 バイタルリンク を利用する者 ( 以下 システム利用者 という ) は 小松島市医師会長宛に あらかじ め次の手順による手続きが必要になります 新規登録手続の手順 1 <システム利用者 ( 医療 介護事業者 )>

個人情報保護規程 株式会社守破離 代表取締役佐藤治郎 目次 第 1 章総則 ( 第 1 条 - 第 3 条 ) 第 2 章個人情報の利用目的の特定等 ( 第 4 条 - 第 6 条 ) 第 3 章個人情報の取得の制限等 ( 第 7 条 - 第 8 条 ) 第 4 章個人データの安全管理 ( 第 9

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Microsoft Word - ○指針改正版(101111).doc

14個人情報の取扱いに関する規程

個人情報保護規程例 本文

(2) 電子計算機処理の制限に係る規定ア電子計算機処理に係る個人情報の提供の制限の改正 ( 条例第 10 条第 2 項関係 ) 電子計算機処理に係る個人情報を国等に提供しようとする際の千葉市情報公開 個人情報保護審議会 ( 以下 審議会 といいます ) への諮問を不要とし 審議会には事後に報告するも

)各 職場復帰前 受入方針の検討 () 主治医等による 職場復帰可能 との判断 主治医又はにより 職員の職場復帰が可能となる時期が近いとの判断がなされる ( 職員本人に職場復帰医師があることが前提 ) 職員は健康管理に対して 主治医からの診断書を提出する 健康管理は 職員の職場復帰の時期 勤務内容

資料 4 医療等に関する個人情報 の範囲について 検討事項 医療等分野において情報の利活用と保護を推進する観点から 医療等に関する個人情報 の範囲をどのように定めるべきか 個別法の対象となる個人情報としては まずは 医療機関などにおいて取り扱われる個人情報が考えられるが そのほかに 介護関係 保健関

社会福祉法人○○会 個人情報保護規程

個人情報の取り扱いに関する規程


別紙 常勤医師等の取扱いについて 1. 一日平均患者数の計算における診療日数 (1) 入院患者数ア通常の年は 365 日である イ病院に休止した期間がある場合は その期間を除く (2) 外来患者数ア実外来診療日数 ( 各科別の年間の外来診療日数で除すのではなく 病院の実外来診療日数で除すこと ) イ

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チェックを受けるときは 正直に回答することが重要であること 四本人が面接指導を申し出た場合や ストレスチェックの結果の会社への提供に同意した場合に 会社が入手した結果は 本人の健康管理の目的のために使用し それ以外の目的に利用することはないこと 第 2 章ストレスチェック制度の実施体制 ( ストレス

第 4 条 ( 取得に関する規律 ) 本会が個人情報を取得するときには その利用目的を具体的に特定して明示し 適法かつ適正な方法で行うものとする ただし 人の生命 身体又は財産の保護のために緊急に必要がある場合には 利用目的を具体的に特定して明示することなく 個人情報を取得できるものとする 2 本会

基発 第 16 号 平成 30 年 12 月 28 日 都道府県労働局長殿 厚生労働省労働基準局長 ( 公印省略 ) 働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律による改正後の 労働安全衛生法及びじん肺法関係の解釈等について 働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法

社会福祉法人春栄会個人情報保護規程 ( 目的 ) 第 1 条社会福祉法人春栄会 ( 以下 本会 という ) は 基本理念のもと 個人情報の適正な取り扱いに関して 個人情報の保護に関する法律 及びその他の関連法令等を遵守し 個人情報保護に努める ( 利用目的の特定 ) 第 2 条本会が個人情報を取り扱

一公職の候補者となる労働者の雇用の継続の確保のための立候補休暇に関する法律案目次第一章総則 ( 第一条 第二条 ) 第二章立候補休暇 ( 第三条 第六条 ) 第三章雑則 ( 第七条 第九条 ) 附則第一章総則 ( 目的 ) 第一条この法律は 立候補休暇の制度を設けることにより 公職の候補者となる労働

privacypolicy

特定個人情報の取扱いに関する管理規程 ( 趣旨 ) 第 1 条この規程は 特定個人情報の漏えい 滅失及び毀損の防止その他の適切な管理のための措置を講ずるに当たり遵守すべき行為及び判断等の基準その他必要な事項を定めるものとする ( 定義 ) 第 2 条 この規定における用語の意義は 江戸川区個人情報保

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財団法人日本体育協会個人情報保護規程

防犯カメラの設置及び運用に関するガイドライン

東レ福祉会規程・規則要領集

の病床数及び新たに併設する介護保険施設の入所定員 ( 病院から転換した病床 ( 以下 転換病床 という ) を活用するものに限る ) の合計が転換前の病院の病床数以下である場合には 実態として 転換後の施設 ( 病院と介護保険施設を併せた全体をいう 以下同じ ) 全体の医療提供の内容は 転換前の病院

第 1 ガイドライン策定の目的及び対象 1 ガイドライン策定の目的美濃加茂市では犯罪のない安全で安心できる住みよい地域社会を実現するため 平成 21 年 10 月に 美濃加茂市防犯活動推進条例 を施行するとともに 同条例に基づく防犯計画を策定し 市民 事業者及び市が一体となって 犯罪のないまちづくり

安全衛生管理規程作成例

ください 5 画像の保存 取扱い防犯カメラの画像が外部に漏れることのないよう 一定のルールに基づき慎重な管理を行ってください (1) 取扱担当者の指定防犯カメラの設置者は 必要と認める場合は 防犯カメラ モニター 録画装置等の操作を行う取扱担当者を指定してください この場合 管理責任者及び取扱担当者

別紙(例 様式3)案

(2) 総合的な窓口の設置 1 各行政機関は 当該行政機関における職員等からの通報を受け付ける窓口 ( 以下 通報窓口 という ) を 全部局の総合調整を行う部局又はコンプライアンスを所掌する部局等に設置する この場合 各行政機関は 当該行政機関内部の通報窓口に加えて 外部に弁護士等を配置した窓口を

目 次 第 1 はじめに 2 1 ガイドライン策定の目的 2 2 ガイドラインの対象となる防犯カメラ 2 3 防犯カメラで撮影された個人の画像の性格 2 第 2 防犯カメラの設置及び運用に当たって配慮すべき事項 3 1 設置目的の設定と目的外利用の禁止 3 2 設置場所 撮影範囲 照明設備 3 3

第 1 章総則 ( 目的 ) 第 1 条本規程は 株式会社スマートバリュー ( 以下 当社 という ) が個人情報保護方針に基づく個人情報の取扱いの基本事項を定めたもので 個人情報の保護と適正な利用を図ることを目的とする ( 定義 ) 第 2 条本規程における用語の定義は 次の各号に定めるところによ

<433A5C C6B617A B615C B746F705C8E648E965C8D7390AD8F918E6D82CC8BB38DDE5C CC2906C8FEE95F195DB8CEC964082CC92808FF089F090E E291E88F575C95BD90AC E937894C55C D837A A CC2906C8FEE9

Microsoft Word - 個人情報保護規程 docx

しなければならない 2. 乙は プライバシーマーク付与の更新を受けようとするときは プライバシーマーク付与契約 ( 以下 付与契約 という ) 満了の8ヶ月前の日から付与契約満了の4 ヶ月前の日までに 申請書等を甲に提出しなければならない ただし 付与契約満了の4ヶ月前の日までにプライバシーマーク付

東京弁護士会個人情報保護規則

れている者 個人事業所で5 人以上の作業員が記載された作業員名簿において 健康保険欄に 国民健康保険 と記載され 又は ( 及び ) 年金保険欄に 国民年金 と記載されている作業員がある場合には 作業員名簿を作成した下請企業に対し 作業員を適切な保険に加入させるよう指導すること なお 法人や 5 人

本人に対して自身の個人情報が取得されていることを認識させるために 防犯カメラを設置し 撮影した顔画像やそこから得られた顔認証データを防犯目的で利用する際に講じることが望ましい措置の内容を明確化するため 更新しました ( 個人情報 ) Q 防犯目的のために 万引き 窃盗等の犯罪行為や迷惑行

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4 面接指導の実施に従事した者の秘密保持義務を規定する必要があること (104 条関係 ) 指導等第 1 章改正労働安全衛生法 逐条解説 改正等のポイント 1 長時間労働者に対する面接指導制度の整備 (66 条の 8) (1) 事業者は 1 週当たり 40 時間を超えて行う労働が 1 月当たりで 1

法第 20 条は, 有期契約労働者の労働条件が期間の定めがあることにより無期契約労働者の労働条件と相違する場合, その相違は, 職務の内容 ( 労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度をいう 以下同じ ), 当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して, 有期契約労働者にとって不合

Microsoft Word - 2 個人情報保護規程

平成 29 年度定期監査 ( 第 1 回 ) の結果報告に基づき講じた措置内容等 墨田区長 監査委員意見について 監 査 結 果 の 内 容 措 置 内 容 (1) 事務処理の適正化について今回の監査では指摘事項に該当する事例はなかったものの 指導 注意事項の事例については これまでの重ねての指摘に

第 4 条公共の場所に向けて防犯カメラを設置しようとするもので次に掲げるものは, 規則で定めるところにより, 防犯カメラの設置及び運用に関する基準 ( 以下 設置運用基準 という ) を定めなければならない (1) 市 (2) 地方自治法 ( 昭和 22 年法律第 67 号 ) 第 260 条の2

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劇場演出空間技術協会 個人情報保護規程

学校法人金沢工業大学個人情報の保護に関する規則

第 1 はじめに 1 ガイドライン策定の目的安全で安心なまちづくりを進める上で 近年 防犯カメラの設置は広く有用であると認められており 市内においても防犯カメラの設置が進んでいます しかし その一方で 知らないうちに自分の姿が撮影され 目的外に利用されること等に不安を感じる市民の方もいます そこで

安全衛生規程

2. ストレスチェック及び面接指導の実施 常時使用する労働者に対して 医師 保健師等による心理的な負担の程度を把握するための検査 ( ストレスチェック ) の実施を事業者に義務付け ( 労働者 50 人未満の事業場については当分の間努力義務 ) 検査の結果 一定の要件に該当する労働者から申出があった

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【別紙】リーフレット①

株式会社フロンティアビジネス 別紙 1 1 処分内容 (1) 労働者派遣法第 21 条第 2 項に基づく労働者派遣事業停止命令 ( 労働者派遣事業停止命令の内容は 3 のとおり ) (2) 労働者派遣法第 49 条第 1 項に基づく労働者派遣事業改善命令 ( 労働者派遣事業改善命令の内容は 4 のと

法律 出典 医薬品 医療機器等の品質 有効性及び安全性の確保等に関する法律 ( 昭和 35 年 8 月 10 日法律第 145 号 ) 政令 医薬品 医療機器等の品質 有効性及び安全性の確保等に関する法律施行令 ( 昭和 36 年 1 月 26 日政令第 11 号 ) 省令 医薬品 医療機器等の品質

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指針に関する Q&A 1 指針の内容について 2 その他 1( 特許を受ける権利の帰属について ) 3 その他 2( 相当の利益を受ける権利について ) <1 指針の内容について> ( 主体 ) Q1 公的研究機関や病院については 指針のどの項目を参照すればよいですか A1 公的研究機関や病院に限ら

Microsoft Word - 退院後生活環境相談員

の業務について派遣先が九の 1 に抵触することとなる最初の日 六派遣先への通知 1 派遣元事業主は 労働者派遣をするときは 当該労働者派遣に係る派遣労働者が九の 1の ( 二 ) の厚生労働省令で定める者であるか否かの別についても派遣先に通知しなければならないものとすること ( 第三十五条第一項関係

社長必見≪ここがポイント≫マイナンバーガイドライン(事業者編)

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取扱いに特に配慮を要するものとして政令第 2 条で定める記述等が含まれる個人情報をいう (4) 個人情報データベース等 とは 個人情報を含む情報の集合物であって 次のいずれかに該当するもの ( 利用方法からみて個人の権利利益を害するおそれが少ないものとして政令第 3 条第 1 項で定めるものを除く

る として 平成 20 年 12 月に公表された 規制改革推進のための第 3 次答申 において 医療機器開発の円滑化の観点から 薬事法の適用範囲の明確化を図るためのガイドラインを作成すべきであると提言したところである 今般 薬事法の適用に関する判断の透明性 予見可能性の向上を図るため 臨床研究におい

2) 社内外相談窓口についてまた ストレスチェック制度に基づく医師の面接指導以外にも 社内外に以下のような相談窓口が用意されています 今回のストレスチェックの結果に関わらず どなたでも利用できますので 体調面で何か気になることがあればご相談ください [ 社内相談窓口 ] 会社 部健康管理室保健師 連

の病床数及び新たに併設する介護保険施設の入所定員 ( 病院から転換した病床 ( 以下 転換病床 という ) を活用するものに限る ) の合計が転換前の病院の病床数以下である場合には 実態として 転換後の施設 ( 病院と介護保険施設を併せた全体をいう 以下同じ ) 全体の医療提供の内容は 転換前の病院

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62 第 2 章 法令の適用範囲 ない点が通常の個人情報の取扱いとは異なります これまでは特に区別されることのなかった情報であることから 今後は法改正に応じた適切な対応が求められます 具体的な要配慮個人情報個人情報保護法上の要配慮個人情報の定義は 本人の人種 信条 社会的身分 病歴 犯罪の経歴 犯罪

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個人情報保護に関する規定 ( 規定第 98 号 ) 第 1 章 総則 ( 目的 ) 第 1 条学校法人トヨタ学園および豊田工業大学 ( 以下, 総称して本学という ) は, 個人情報の保護に関する法律 ( 平成 15 年法律第 57 号, 以下, 法律という ) に定める個人情報取り扱い事業者 (

はじめに 厳しい経済情勢の中 職業生活等において強い不安 ストレス等を感じる労働者は約 6 割に上っており また メンタルヘルス上の理由により連続 1 カ月以上休業し 又は退職した労働者がいる事業場は 7.6% となっています こうした状況の中で 心の健康問題により休業する労働者への対応は 多くの事

Taro-別紙2

て 労働者派遣契約書に休業手当等の支払いに要する費用を確保するための費用負担等に関する事項を記載していないもの (1 派遣元事業所 ) ウ派遣料金額の明示派遣労働者に対して 書面の交付 ファクシミリを利用してする送信又は電子メールの送信の方法により労働者派遣に関する料金の額を明示していないもの (5

財団法人吊古屋都市整備公社理事長代理順位規程

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66 条の 6 改正のねらい 果通知 第 第 1 章改正労働安全衛生法 逐条解説 第 5 節 すべての健康診断結果の労働者への通知 特殊健康診断結果の追加 ( 第 66 条の 6 関係 ) 労働安全衛生法において 一般健康診断については 健康診断の実施後にその結果を本人へ通知する義務が規定されているが ( 同法第 66 条の 6) 特殊健康診断の結果についても 労働者の権利として同様の通知義務を規定すべきであるとの指摘がなされていたところである (*) (*) 健康診断結果の通知についての位置付けが 労働者の健康情報を取り扱うに際しての事業者の義務 としての 本人への情報開示 であることに留意しなければならない 改正のポイント 特殊健康診断の結果について 現行の一般健康診断の通知と同様 労働者への通知を義務付けたこと なお 法 66 条の 6 改正とともに 健康診断結果の通知に係る労働安全衛生規則第 51 条の 4 の改正が行われており その結果 平成 18 年 4 月 1 日以降については 雇入れ時の健康診断 定期健康診断 特定業務従事者の健康診断 海外派遣労働者の健康診断 結核健康診断に加え 労働衛生指導医の意見に基づく臨時の健康診断 給食従業員の検便 歯科医師による健康診断 の結果の通知についても 遅滞なく行わなければならないこととされた 健診結 施行通達 ( 本条の改正に関しての H18.2.24 付施行通達 ) 本条の改正に関して施行通達は つぎのような留意事項を示している (1) 従来から健康診断結果の通知が義務付けられている定期健康診断等に加えて 特殊健康診断等についてもその結果の通知を義務づけたこと (2) 通知は 総合判定結果だけではなく 各健康診断の項目ごとの結果も通知する必要があること (3) 通知の方法としては 健康診断を実施した医師 健康診断機関等から報告された個人用の結果報告書を各労働者に配布する方法 健康診断個人票のうち必要な部分の写しを各労働者に示す方法等があること (4) 今回の改正により新たに通知の対象となる健康診断は 法の施行の日 ( 以下 施 55

行日 という ) 以降に行われたものであること (5) 通知した旨の事実は 記録しておくことが望ましいこと 労働者の健康情報保護と労働者の健康情報を把握する義務健康診断結果に限らず 個人情報保護に係る過剰反応が取りざたされている昨今 労働者の健康情報保護と労働者の健康情報を把握する義務 について どのように考えればよいのか この点については 平成 16 年 9 月 6 日労働者の健康情報の保護に関する検討会報告書 に示された 労働者の健康情報保護についての基本的な考え方 (56 ページ参照 ) などが 現時点でのコンセンサスに近いものと考えられます また 健康情報においてそのなかでも特別な配慮が要求されるケースの多いメンタヘルスに関する健康情報の取扱いについて メンタルヘルスに関する健康情報とその保護に関する行政指針等の概要 (57 ページ参照 ) をまとめてみた 一般的な健康情報の取扱においても参考になるものと思われる 労働者の健康情報保護についての基本的な考え方 健康情報は 個人情報の中でも特に機微な情報であり 労働者の権利として 特に厳格に保護されるべきものであることから 事業者は 情報提供する範囲を必要最小限にするなどの配慮を行い その適正な取扱いが図られなければならない しかし 事業者は 安衛法やその他の関係法令により 労働者の安全と健康の確保のために必要な措置を講ずる責任を有するとともに 裁判における判例等によれば 民事上の安全配慮義務を果たすことを期待されているため 法の許す範囲で 労働者の健康状態 病歴に関する情報など医療上の個人情報を幅広く収集し 必要な就業場所の変更 労働時間の短縮等の措置 作業環境測定の実施や施設 設備の設置 整備等の措置を講ずるために活用することが求められている 事業者は 以上のように労働者の健康を確保するために 健康診断等を実施し 労働者の健康情報を取得するだけでなく その結果に基づき適切な措置を講じるために その健康情報を医師等のほか 必要に応じて関係者に対して提供し 対応を協議することが求められる場合もあり その際に労働者のプライバシーに抵触する可能性がある 以上のことから明らかなように 事業者が健康情報を取り扱う際には 労働者の健康保持のために健康状態を把握する義務と 不必要に労働者個人のプライバシーが侵害されないように保護する義務との間での均衡を図ることが求められている 56

メンタルヘルスに関する健康情報とその保護に関する行政指針等の概要 ( 参考 ) 果通知第 1 章改正労働安全衛生法 逐条解説 メンタルヘルスに関する健康情報は 健康診断の数値情報とも違ったいささか機微な情報 ( 職場情報 家族に関する情報を含む生活情報 精神疾患を示す病名など ) を含み さらに その一部には 産業医等がメンタルヘルス対策として本人面談をしない限り本人の口から語られることのない情報が含まれることもある 健康情報の取扱いには 法律と信義則に照らして 適切な対応が求められる 以下 法律 ガイドライン等のポイントを説明する 個人情報保護法 ( 平成 15 年法律第 57 号 ) は 法令に基づく場合等を除いては あらかじめ本人の同意を得ないで 個人データを第三者に提供したり 目的外に使用することを禁止している 個人情報保護法のほかには 健康情報の保護に関する行政指針等に留意すべきである 第一に 医療 介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイドライン ガイドラインでは 本人同意を得る手段について 個人情報の利用範囲を施設内への掲示により明らかにしておき 患者から特段明確な反対 留保の意思表示がない場合には これらの範囲内での個人情報の利用について同意が得られているものと考えられる ( 黙示の同意 ) とする見解を示している 第二に 雇用管理に関する個人情報のうち健康情報を取り扱うに当たっての留意事項 ( 平成 16 基発第 1029009 号 ) この中では 1 診断名や検査値等の生データの取扱いは 産業医や産業看護職に行わせることが望ましい2 産業保健の専門職以外に健康情報を提供する際は 適切に加工すること3 健康情報の取扱いについて規程を定めるときは衛生委員会で審議することなどを推奨している 第三に 健康診断結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針 ( 平成 18.3.31) ここでは 事業者は 個々の労働者の健康に関する情報が 個々のプライバシーであることから 関係者へ提供する情報の範囲は必要最小限とする必要がある とし また 産業保健業務従事者 ( 産業医 保健師等 衛生管理者その他の労働者の健康管理に関する業務に従事する者をいう ) 以外の者に健康情報を取り扱わせる時は これらの者が取り扱う健康情報が利用目的の達成に必要な範囲に限定されるよう 必要に応じて健康情報の内容を適切に加工した上で提供する等の措置を請ずる必要がある としている 第四に 事業場における労働者の健康づくりのための指針 ( 平成 12.8.9) 指針 2(2) では メンタルヘルスケアを進めるに当たっては 労働者のプライバシーの保護及び労働者の意思の尊重に留意することが重要である 心の健康に関する情報の収集及び利用に当たっての 個人のプライバシー等への配慮は 労働者が安心して心の健康づくり対策に参加できること ひいては事業場の心の健康づくり対策がより効果的に推進されるための条件である としている 第五に 労働者の健康情報の保護に関する検討会報告書 ( 平成 16.9.6) 健診結57

同報告書には 特に配慮が必要な健康情報の取扱いの留意点 として つぎのように記述されている 1 メンタルヘルスに関する健康情報のうち 精神疾患を示す病名は誤解や偏見を招きやすいことから 特に 慎重な取扱いが必要である 2 周囲の 気付き情報 の場合 当該提供者にとっても個人情報であり 当該提供者との信頼関係を維持する上でも慎重な取扱いが必要となる 3 メンタルヘルスに関する情報の取扱い方が不適切であると 本人 主治医 家族などからの信頼を失い 健康管理を担当する者が必要な情報を得ることができなくなるおそれがある したがって メンタルヘルスに関する健康情報の収集や利用等その取扱いについては 産業医等がその健康情報の内容を判断し 必要に応じて 事業場外の精神科医や主治医等とともに検討することが重要である 4 メンタルヘルス不調の者への対応にあたって 職場では上司や同僚の理解と協力が必要であるため 産業医 産業看護職 衛生管理者等の産業保健スタッフは 本人の同意を得て 上司やその職場に適切な範囲で情報を提供し その職場の協力を要請することも必要であると考えられる 以上が メンタルヘルスに係る健康情報の取扱いについての整理である 58

説明 (H18.2.24 付施行通達の引用 ) 果通知法令 第 1 章改正労働安全衛生法 逐条解説 逐条解説 法第 66 条の 6 関連 安衛則 51 条の 4 有機溶剤 鉛 四アルキル鉛 特定化学物質 高気圧 電離 石綿 じん肺の各規則中 健康診断の結果通知条項 労働安全衛生法 第 六十六条の六事業者は 第六十六条第一項から第四項までの規定により行う健康診断を受けた労働者に対し 厚生労働省令で定めるところにより 当該健康診断の結果を通知しなければならない 労働安全衛生規則 第 五十一条の四事業者は 法第六十六条第四項又は第四十三条 第四十四条若しくは第四十五条から第四十八条までの健康診断を受けた労働者に対し 遅滞なく 当該健康診断の結果を通知しなければならない 有機溶剤中毒予防規則 第 三十条の二の二事業者は 第二十九条第二項 第三項又は第五項の健康診断を受 I 6 特殊健康診断の結果の通知 ( 第 66 条の 6 関係 ) (1) 従来から健康診断結果の通知が義務付けられている定期健康診断等に加えて 特殊健康診断等についてもその結果の通知を義務づけたこと (2) 通知は 総合判定結果だけではなく 各健康診断の項目ごとの結果も通知する必要があること (3) 通知の方法としては 健康診断を実施した医師 健康診断機関等から報告された個人用の結果報告書を各労働者に配布する方法 健康診断個人票のうち必要な部分の写しを各労働者に示す方法等があること (4) 今回の改正により新たに通知の対象となる健康診断は 法の施行の日 ( 以下 施行日 という ) 以降に行われたものであること (5) 通知した旨の事実は 記録しておくことが望ましいこと IV 第 2 11 健康診断の結果の通知 ( 第 51 条の 4 関係 ) (1) 雇入れ時の健康診断 定期健康診断 特定業務従事者の健康診断 海外派遣労働者の健康診断 結核健康診断に加え 労働衛生指導医の意見に基づく臨時の健康診断 給食従業員の検便 歯科医師による健康診断の結果の通知についても 遅滞なく行わなければならないものとしたこと (2) 遅滞なく とは 事業者が 健康診断を実施した医師 健康診断機関等から結果を受け取った後 速やかにという趣旨であること 健診結59

けた労働者に対し 遅滞なく 当該健康診断の結果を通知しなければならない 鉛中毒予防規則 第 五十四条の三事業者は 第五十三条第一項又は第三項の健康診断を受けた労働者に対し 遅滞なく 当該健康診断の結果を通知しなければならない 四アルキル鉛中毒予防規則 第 二十三条の三事業者は 第二十二条の健康診断を受けた労働者に対し 遅滞なく 当該健康診断の結果を通知しなければならない 特定化学物質障害予防規則 第 四十条の三事業者は 第三十九条第一項から第三項までの健康診断を受けた労働者に対し 遅滞なく 当該健康診断の結果を通知しなければならない 高気圧作業安全衛生規則 第 三十九条の三事業者は 第三十八条の健康診断を受けた労働者に対し 遅滞なく 当該健康診断の結果を通知しなければならない 電離放射線障害防止規則 第 五十七条の三事業者は 第五十六条第一項の健康診断を受けた労働者に対し 遅滞なく 当該健康診断の結果を通知しなければならない 石綿障害予防規則 第 四十二条の二事業者は 第四十条第一項から第三項までの健康診断を受けた労働者に対し 遅滞なく 当該健康診断の結果を通知しなければならない じん肺法施行規則 ( じん肺健康診断の結果の通知 ) 第 二十二条の二事業者は 法第七条から第九条の二までの規定により行うじん肺健康診断を受けた労働者に対し 遅滞なく 当該じん肺健康診断の結果を通知しなければならない 60

16 年 9 月労働者の健康情報の保護に関する検討会報告書 果通知 平成 第 1 章改正労働安全衛生法 逐条解説 平成 16 年 12 月 27 日付今後の労働安全衛生対策について ( 建議 ) の元となった 平成 16 年 9 月 6 日労働者の健康情報の保護に関する検討会報告書 において 本条 (66 条の 6) に関連する記述として 次のような箇所が認められる 編注 2 労働者の健康情報保護についての基本的な考え方 健康情報は 個人情報の中でも特に機微な情報であり 労働者の権利として 特に厳格に保護されるべきものであることから 事業者は 情報提供する範囲を必要最小限にするなどの配慮を行い その適正な取扱いが図られなければならない しかし 事業者は 安衛法やその他の関係法令により 労働者の安全と健康の確保のために必要な措置を講ずる責任を有するとともに 裁判における判例等によれば 民事上の安全配慮義務を果たすことを期待されているため 法の許す範囲で 労働者の健康状態 病歴に関する情報など医療上の個人情報を幅広く収集し 必要な就業場所の変更 労働時間の短縮等の措置 作業環境測定の実施や施設 設備の設置 整備等の措置を講ずるために活用することが求められている 事業者は 以上のように労働者の健康を確保するために 健康診断等を実施し 労働者の健康情報を取得するだけでなく その結果に基づき適切な措置を講じるために その健康情報を医師等のほか 必要に応じて関係者に対して提供し 対応を協議することが求められる場合もあり その際に労働者のプライバシーに抵触する可能性がある 以上のことから明らかなように 事業者が健康情報を取り扱う際には 労働者の健康保持のために健康状態を把握する義務と 不必要に労働者個人のプライバシーが侵害されないように保護する義務との間での均衡を図ることが求められている こうした基本的考え方を具体化するため 検討会は 事業者が労働者の健康情報を取り扱う際に遵守すべき事項や方向性について引き続き検討を行った 健診結3. 労働者の健康情報を取り扱うに際しての事業者の義務等 (5) 本人への開示 安衛法上 一般健康診断については 健康診断の実施後にその結果を本人へ通知する義務が規定されているが ( 同法第 66 条の 6) 特殊健康診断の結果についても 労働者の権利として同様の通知義務を規定するべきである 61