イーター ITER 持続可能なエネルギーの探求 The Quest for Sustainable Energy 国立研究開発法人 量子科学技術研究開発機構

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100% % 60% 40% その他 火力発電 原子力発電 20% 0% 図 1: 電源別発電量構成比

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日程表 mcd

第 2 日 放射性廃棄物処分と環境 A21 A22 A23 A24 A25 A26 放射性廃棄物処分と環境 A27 A28 A29 A30 バックエンド部会 第 38 回全体会議 休 憩 放射性廃棄物処分と環境 A31 A32 A33 A34 放射性廃棄物処分と環境 A35 A36 A37 A38

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A23 A24 A25 A26 A27 A28 A38 A39 燃料再処理 A40 A41 A42 A43 第 3 日 休 憩 総合講演 報告 3 日本型性能保証システム 燃料再処理 A29 A30 A31 A32 A33 A34 A35 燃料再処理 A36 A37 燃料再処理 A44 A45 A4


会場 F 会場 (40 人 ) 日時北九州国際会議場 31 会議室 10:00 中性子源, 中性子工学 9 月27 日( 木 ) 12:00 13:00 14:30 17:00 F01~08 医療用原子炉 加速器 / 中性子源, 中性子工学 F09~13 中性子源, 中性子工学 F14~17 ~16

ITER TF コイル一体化含浸注入条件確認試験 仕様書 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構核融合エネルギー研究開発部門那珂核融合研究所 ITERプロジェクト部超伝導磁石開発グループ

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() 実験 Ⅱ. 太陽の寿命を計算する 秒あたりに太陽が放出している全エネルギー量を計測データをもとに求める 太陽の放出エネルギーの起源は, 水素の原子核 4 個が核融合しヘリウムになるときのエネルギーと仮定し, 質量とエネルギーの等価性から 回の核融合で放出される全放射エネルギーを求める 3.から

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1 海水 (1) 平成 30 年 2 月の放射性セシウム 海水の放射性セシウム濃度 (Cs )(BqL) 平成 30 年 平成 29 年 4 月 ~ 平成 30 年 1 月 平成 25 ~28 年度 ~0.073 ~ ~0.


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付属書Ⅰ 取引先様取組み評価書

Qfuel, ベースラインエネルギー使用量 GJ/ 年 Qheat, 事業実施後使用熱量 GJ/ 年 事業実施前のボイラーのエネルギー消費効率 4 % Fheat, ΔTheat, 事業実施後の設備で加熱された温水の使用量又は熱媒油の流量事業実施後の設備で加熱された温水又は熱媒油の熱利用前後の温度差

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別添 表 1 供給力確保に向けた緊急設置電源 ( その 1) 設置場所 定格出力 2 発電開始 2 運転開始 公表日 3 姉崎火力発電所 約 0.6 万 kw (0.14 万 kw 4 台 ) 平成 23 年 4 月 24 日平成 23 年 4 月 27 日 平成 23 年 4 月 15 日 袖ケ浦

( 裏 ) ( 注 )1 1 の欄は, 記入しないでください 2 核燃料等を取り扱う行為等 の欄は, 修正申告に係るものを で囲んでください 3 2 の欄は, 茨城県核燃料等取扱税条例付則第 4 条第 1 項の規定に該当する使用済燃料について記入してください 4 3 の欄は, 茨城県核燃料等取扱税条

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イーター ITER 持続可能なエネルギーの探求 The Quest for Sustainable Energy 国立研究開発法人 量子科学技術研究開発機構

持続可能なエネルギーの探求 ITER サイト 核融合エネルギーは 21世紀の持続可能な社会に調和する究極のエネルギーです 核融合エネルギーの優れた特徴には 次の3つがあります ITER Japan 公式キャラクター フュージョンくん & イーターちゃん 豊富な燃料資源 燃料のもとになる重水素とリチウムは海水中に広く豊富に存在します 優れた環境性 運転により二酸化炭素は発生しません 核融合で発生する放射性廃棄物は すべて低レベル放射性廃棄物です 高い安全性 核融合反応が暴走することはありません 燃料ガスとして放射性物質である トリチウムを使いますが その閉じ込めに万全を期した施設を作ります ITER 計画とは *ITER建設地については ITER機構の表記に合わせ これまでの"カダラッシュ"(地元の呼称) から"サン ポール レ デュラ ンス"(行政住所) へ変更しました パリ サン ポール レ デュランス ITER 計画は核融合エネルギーが利用可能であ ることを科学技術的に実証するため ITER 核融合実験炉 ) を国際協力で建設するメガサ イエンスプロジェクトです ITER 協定の下 加盟しているのは日本 米国 欧州 ロシア 韓国 中国 インドの 7 極で その規模は全世界の人口の半分以上 また 全世界の国内総生産 GDP の 8 割以上にも なります ITER 協定署名式典 (2006 年 パリ ) 南仏サン ポール レ デュランス*のITERサイトでは 2007年からITERの建設が進められています サイトの広さは180haあり 長さ1 km 幅400 mの広大なプラットフォームには トカマク建屋 高周 波加熱建屋 電源変換器建屋など ITERの運転に必要となる建屋のほか ポロイダル磁場コイル巻線棟 クライオスタット組立建屋など ITERを製作するための建屋が配置されています また プラット フォーム周辺の本部ビルなどの建屋では 800人を越えるITER機構職員のほか 国内機関などからの多く の技術者 研究者がITERを完成させるための作業を行っています マルセイユ マルセイユから 車で 1 時間くらい のところです ITER サイト全景 2017 年 8 月 多くの国が協力して 新しい科学技術に向かって ITER の 3 つの目的 挑戦しています ① 核融合燃焼の実証 実際の燃料で核融合反応を起こし 入力エネルギーの10倍以上の出力エネルギーを 400秒程度持続します ② 炉工学技術の実証 核融合による燃焼に必要な工学技術を実証します ③ 核融合エネルギーの取出し試験 核融合による燃焼で発生する核融合エネルギーから熱を取出す試験 を行います また 燃料であるトリチウムの自己補給を行うための試験を行います トカマク建設建屋 2018 年 3 月 組立建屋内部 2018 年 2 月 クライオスタット組立建屋 2018 年 2 月 PF コイル巻線棟 2018 年 1 月 ITER 機構 プロジェクト実施のための国際機関 ITER機構は 平成19年 2007年 10月24日にイーター協定の発効と同時に発足されました ITER機構はフランスのサン ポール レ デュランスに設置されており ITERを建設し それを運転する 主体となります 7極の国内機関と連携してITER計画を進めています 写真 ITER 機構提供

ITER 日本国内機関 中心ソレノイド CS コイル ITERに必要な機器の約9割は 加盟極が国内機関を通じて調達し 建設サイトに納めることが イーター協定で定められています 量子科学技術研究開発機構は ITER計画における日本の国内 機関としての指定を受け 日本が分担する超伝導コイルなどの 機器 装置を製作してサイトに物納するとともに ITER計画に 対する日本からの人的貢献の窓口としての役割を果たします CS導体 100% プラズマに電流を流すために必要な磁束を発生する超伝導コイル テストブランケットモジュール TBM 核融合炉の実用化を目指して 各加盟極がITERを 用いてブランケットの試験を行う装置 日本が分担する調達機器 トロイダル磁場 TF コイル 日本は ITER機構や他の加盟極と協力してITERの主要機器 いわゆるハイテク機器 を調達し ITER建設に関して 重要な役割を担っています 日本は主要な機器を 担当しています 高温のプラズマを閉じ込めるための磁場を発生する 超伝導コイル TF導体 25% TF巻線 一体化 47% TF 構造物 100% ブランケット遠隔保守装置 遮蔽ブランケットの保守 交換作業を遠隔操作で行う機器 100 約 2m ブランケットモジュール 遮蔽ブランケット 真空容器 核融合で発生する中性子を遮蔽し 熱を取り出す機器 レール マニピュレータ ビークル ダイバータ 計測装置 核融合で発生するヘリウムや不純物粒子を排出する装置 外側ターゲット 100% プラズマ中のイオンと電子の密度や温度 不純物等の分布 及び中性子発生率を測定する機器 180cm の人とくらべると 全計測装置の14 ITER はこんなに大きい 中性粒子入射加熱装置 高電圧(HV) ブッシング 100% 高エネルギーの中性粒子をプラズマに入射して 1 MV 電源 高電圧部 100% 1 MeV 加速器 33% プラズマを加熱する装置 180cm m 3300 m トリチウム除去装置 燃料であるトリチウムの分離回収 精製 処理を行うための設備 50 ITER の主要諸元 主半経 6.2m 本体重量 2 万 3 千トン 熱出力 50 万キロワット 高周波加熱装置 電子レンジの原理を用いて電磁波で プラズマを加熱する装置 ジャイロトロン 33 水平ランチャー 71

日本で開発中の ITER 機器 トロイダル磁場 (TF) コイル 中性粒子入射加熱装置 製作がどんどん ITER 中性粒子入射加熱装置実機試験施設 NBTF/ イタリア パドバ 用の高電圧 (HV) ブッシング の調達活動が完了 また NBTF 用 1MV 高電圧電源機器の日本の調達分全 14 台の製作と輸送が完了 現地での据付工事の約 90% が完了 進んでいます TF コイル用巻線部 WP 第 1 号機が完成 また TF コイル用構造物第 1 号機が完成 巻線作業 熱処理 巻線機 DP 積層 ラジアル プレート RP) の挿入 650,200h 巻線トランスファー ダブルパンケーキ DP) の完成 RP の製作 WP 完成 コイル一体化 DP 7 個 BU 巻線部 中心ソレノイド (CS) コイル AP AU BP 16.5m WP 含侵 5.6m 3.4m AU 外側容器 AP AU の蓋 BU 内側容器 BP BU の蓋 日本の調達分である 49 本すべての超伝導導体の製作と 米国 (CS コイル製作を担当 ) への輸送完了 計画どおり 完遂 高周波加熱装置 高出力マイクロ波源ジャイロトロンの 1 2 号機が完成 大電力 長パルス試験を開始 右下図 大電力ダミーロード 7m導波管伝走路

那珂核融合研究所 ITER 研究開発棟 2018 年撮影 国立研究開発法人 ITER 日本国内機関 HP SNS 随時更新中 量子科学技術研究開発機構 核融合エネルギー研究開発部門 那珂核融合研究所 311-0193 茨城県那珂市向山 801 番地 1 電話 代表 029 270-7213 FAX 029 270-7219 http://www.fusion.qst.go.jp/ iterjapan iterjapan iterjapan_qst ITER 計画をわかりやすく解説したマンガ 地上につくる小さな太陽 ITER イーター HP に掲載中 http://www.fusion.qst.go.jp/iter/comic/page1_1.html ITER 日本国内機関 http://www.fusion.qst.go.jp/iter/ 那珂研 イーター マンガ QR コードはこちら 2018.4