公共建築改善プロジェクト(仮)

Similar documents
表紙1_4

プレゼンテーションタイトル

山形県県土整備部資材単価及び歩掛等決定要領

スライド 1

1

福井県建設リサイクルガイドライン 第 1. 目的資源の有効な利用の確保および建設副産物の適正な処理を図るためには 建設資材の開発 製造から土木構造物や建築物等の設計 建設資材の選択 分別解体等を含む建設工事の施工 建設廃棄物の廃棄等に至る各段階において 建設副産物の排出の抑制 建設資材の再使用および

中央建設業審議会による提言について ( 平成 24 年 3 月 14 日 ) 建設産業における社会保険の徹底について ( 提言 ) 建設産業においては 下請企業を中心に 雇用 医療 年金保険について 法定福利費を適正に負担しない企業 ( すなわち保険未企業 ) が存在し 技能労働者の医療 年金など

働き方改革実現に向けた週休二日の取得に関する取組について 直轄工事における週休二日取得の取り組み 施工時期の平準化適正な工期設定 週休二日算定が可能な 工期設定支援システム の導入 工事着手準備期間 後片付け期間の見直し 余裕期間制度の活用週休二日を考慮した間接費の補正 < 週休二日対象工事 > 対

事務連絡 平成 29 年 10 月 25 日 建設業団体の長殿 国土交通省土地 建設産業局建設業課長 平成 28 年熊本地震の被災地域での建設工事等における 予定価格の適切な設定等について 公共工事の予定価格の設定については 市場における労務及び資材等の最新の実勢価格を適切に反映させつつ 実際の施工

法定福利費の明示について 1 社会保険等未加入対策 建設業者の社会保険等未加入対策として 社会保険等への加入を一層推進していくためには 必要な法定福利費が契約段階でも確保されていることが重要です 建設工事における元請 下請間では 各専門工事業団体が法定福利費を内訳明示した 標準見積書 を作成しており

(2) 共通費 第 3 編共通費 2 第 1 章共通事項 1 共通費算定に関する数値の取り扱い (1) 率による算定共通費基準の率により算定した金額は 一円未満切捨てとする (2) 積み上げによる算定積み上げによる算定は第 4 編 1に準ずる (3) 一般管理費等イ. 算出された金額の範囲内で 原則

BIM/CIM 活用における 段階モデル確認書 作成マニュアル 試行版 ( 案 ) 平成 31 年 3 月 国土交通省 大臣官房技術調査課

1, H H17 4.2H17

<4D F736F F D A6D92E8817A89BF8A CC8CF08FC28C8B89CA81698A C5816A>

Ⅱ 取組み強化のためのアンケート調査等の実施 (1) 建設技能労働者の賃金水準の実態調査国土交通省から依頼を受けて都道府県建設業協会 ( 被災 3 県及びその周辺の7 県を除く ) に対し調査を四半期ごとに実施 (2) 適切な賃金水準の確保等の取組み状況のアンケート調査国は 平成 25 年度公共工事

Microsoft PowerPoint - 【資料6】業務取り組み

二重床下地 という 参考図参照) として施工する方法がある 二重床下地は 支持脚の高さを一定程度容易に調整することができること また コンクリートスラブと床パネルとの間には給排水管等を配置できる空間があることから 施工が比較的容易なものとなっている 2 本院の検査結果 ( 検査の観点 着眼点 対象及

営繕積算システムの構成 システムの種別 営繕積算システム (RIBC2) は 標準単価作成システムと内訳書作成システムから構成されています 標準単価作成システム 内訳書作成システム 建築工事の設計積算に必要な 公共建築工事標準単価 ( 複合 市場 ) を計算し 単価表を作成します 改修や撤去の単価

目次 1. はじめに... 1 (1) 静岡市電子納品実施マニュアル入門編 工事 の位置づけ... 1 (2) 電子納品とは... 1 (3) 静岡市の電子納品導入計画 電子納品のフロー 準備... 2 (1) 電子納品の適用範囲... 2 (2) 対象となる電子成果

工事費構成内訳書の提出について ~ 法定福利費の明示が必要になります ~ 平成 29 年 12 月 6 日 中日本高速道路株式会社

<4D F736F F D CF6955C A8E528C608CA78CA AE94F595948E918DDE925089BF8B7982D195E08A7C93998C8892E CC2E646F6378>

公共工事等における新技術活用システムについて 別添 公共工事等に関する優れた技術は 公共工事等の品質の確保に貢献し 良質な社会資本の整備を通じて 豊かな国民生活の実現及びその安全の確保 環境の保全 良好な環境の創出 自立的で個性豊かな地域社会の形成等に寄与するものであり 優れた技術を持続的に創出して

<81A68CF6955C D C A819A976C8EAE2D345F DA95575F8CF6955C977093E096F3976C8EAE81798EE688B5928D88D3817A81698BC696B195D2816A2E786C7378>

第三者による品質証明制度について 参考資料 Ministry of Land, Infrastructure, Transport and Tourism

KEN0109_施工技術の動向-三.indd

社会保険等加入及び法定福利費を内訳明示した見積書に関する実態調査について 1. 調査の目的 これまでに実施してきた各施策に関する各建設企業における取組状況および施策の現場への浸透状況等を総合的に把握し 社会保険等未加入対策の目標達成を見据えた加入徹底方策を検討することを目的とする 2. 調査の概要

PowerPoint プレゼンテーション

untitled

業務積算に関する問題意識 業務積算に関する問題意識 1. 現行積算基準の費目構成では 原価の概念が不明確である 2. 現行積算基準の費目構成は企業会計と乖離しており このことが積算の妥当性 説明性に影響を及ぼ している 3. 非定型業務の適正な対価を的確に算定することは難しい 4. 高度な技術力に基

< F2D A982E CA817A975C8E5A8C888E5A>

はじめに本資料は 工事請負契約書第 25 条第 6 項のインフレスライド条項について 賃金等の変動に対する工事請負契約書第 25 条第 6 項の運用について ( 以下 本通達 という ) に関するスライド額の算定方法や発注者及び受注者間における協議等についての運用の考え方を整理したものである 本資料

1 これまでの社会保険加入状況 2 社会保険の加入及び賃金の状況等に 関する調査結果 3 入札契約適正化法に基づく実施状況 調査結果 4 建設業許可業者の加入率 ( 推計値 ) 1

202000歩掛関係(151001) END.xls

スライド 1


JCM1211特集01.indd

スライド 1


PowerPoint プレゼンテーション

2 採用する受注者選定方式の検討について廃棄物処理施設整備事業で一般的に採用されている受注者選定方式は表 -2のとおりです 受注者選定方式の検討に際しての論点を下記に整理しましたので 採用する受注者選定方式について審議をお願いいたします 本施設に求められる5つの整備基本方針に合致した施設の整備運営に

< D92E8955C81698D488E968AC4979D816A2E786C73>

i-Construction型工事の概要 (素案)

2. 提出資料一覧表 落札予定者に求める提出資料は 要請書に示す調査区分 ( 基本調査または重点調査 ) に応じて下表に を付している内容とする なお 調査区分が 基本調査 の場合は 3 頁 ~4 頁に基づき作成すること 調査区分が 重点調査 の場合は 5 頁 ~7 頁に基づき作成すること 様式番号

資料 5 論点 2 CMR に求められる善管注意義務等の範囲 論点 3 CM 賠償責任保険制度のあり方 論点 2 CMR に求められる善管注意義務等の範囲 建築事業をベースに CMR の各段階に応じた業務内容 目的ならびに善管注意義務のポイントを整理 CM 契約における債務不履行責任において 善管注

untitled

定量的な成果目標の設定が困難な場合 定量的な目標が設定できない理由及び定性的な成果目標 事業の妥当性を検証するための代替的な達成目標及び実績 活動指標及び活動実績 ( アウトプット ) 単位当たりコスト 代替目標 各国賓客の招待外交の表舞台に相応しい施設としての機能を維持するため また 安定して一般

国土入企第 5 4 号 平成 31 年 2 月 22 日 建設業団体の長殿 国土交通省土地 建設産業局長 技能労働者への適切な賃金水準の確保について 技能労働者の確保 育成のためには 適切な賃金水準の確保等による処遇改善が極めて重要です 国土交通省においては これまでの 6 度にわたる公共工事設計労

<4D F736F F F696E74202D208E9197BF ED089EF95DB8CAF91CE8DF481698BC68A458CFC82AF816A2E >

表紙1_4

はじめに 平成 26 年に品確法 (*1) 及び同法に基づく基本方針 (*2) が改正され 新たに発注者の責務として 適切な工期を設定するよう努めること が規定されました 品確法では 公共工事は 国民生活及び経済活動の基盤となる社会資本を整備するものとして社会経済上重要な意義を有しており その品質は

第 3 章 : 内訳書ファイルとウィンドウの操作 以下の不具合を修正しております 名称欄 摘要欄等を編集した後に内訳書ファイルを保存すると エラーが発生する場合がある 第 4 章 : 作業環境の確認と変更 以下の不具合を修正しております [ ファイル ] [ プロパティ ] [ 編集 ] の 単価表

目次 1. はじめに... 1 (1) 静岡市電子納品実施マニュアル入門編 業務 の位置づけ... 1 (2) 電子納品とは... 1 (3) 静岡市の電子納品導入計画 電子納品のフロー 準備... 2 (1) 電子納品の適用範囲... 2 (2) 対象となる電子成果

Microsoft PowerPoint - (修正4)電子納品の手引き案新旧対照表H30.4.1

Microsoft PowerPoint - 04-検討プロセス及び検討体制

基本問題小委員会における提言 ( 平成 26 年 1 月 ) 社会保険等未加入対策関係 1. これまでの中央建設業審議会 社会資本整備審議会基本問題小委員会における提言 1 行政 元請企業による加入指導 法定福利費確保に向けた取組等の総合的な対策を推進すべき 2 平成 29 年度を目途に 事業者単位

スライド 1

国費投入の必要性 事業の効率性 事業の有効性 関連事業 事業所管部局による点検 改善 項目 評価 評価に関する説明 事業の目的は国民や社会のニーズを的確に反映しているか 被災者の資力やニーズを踏まえた効率的 効果的な住まいの確保策に関する調査等を行っている 地方自治体 民間等に委ねることができない事

働き方改革 魅力ある建設業の構築に向けて 特集 域によっても大きな差があり, 北陸地方や北海道 など一部の地方では平成 28 年 10 月調査の加入率が 80% を超えているのに対し, 大都市部のある関東 地方 (55%) や近畿地方 (60%) は低い加入率に 留まっている ( ) 建設マネジメン

untitled

Microsoft PowerPoint - HP用(説明資料).ppt

定量的な成果目標の設定が困難な場合 定量的な目標が設定できない理由及び定性的な成果目標 事業の妥当性を検証するための代替的な達成目標及び実績 定量的な目標が設定できない理由 迎賓施設としての機能を維持するため また 安定して一般公開等を行うために必要となる経年劣化等の不具合による改修工事等であるため

公共建築工事積算に資する調査・検討(08)業務

業界で躍進する 工事現場 の 要 登録基幹 技能者 登録基幹技能者制度推進協議会 一財 建設業振興基金

untitled

土木工事書類スリム化ガイドの発行にあたり 関東地方整備局では 平成 20 年度の 土木工事書類作成マニュアル 策定を契機に 工事書類の簡素化に努めています また 平成 27 年度より 工事書類の提出方法を事前協議で明確にすることで 紙媒体の提出に加えて電子データを提出する二重提出の防止に向けて取り組

<81A68CF6955C CA AD97DF8E73817A819A976C8EAE2D345F DA95575F8CF6955C977093E096F3976C8EAE81798EE688B5928D88D3817A81698BC696B195D2816A2E786C7378>

PowerPoint プレゼンテーション

Microsoft PowerPoint - COBRIS版CREDAS画面イメージ.pptx

スライド 1

<4D F736F F D B4B92F6976C8EAE A6D92E894C5816A2E646F63>

<4D F736F F D BC696B195F18F568AEE8F808CA992BC82B582C982C282A282C42E646F63>

< F2D8B5A8F708ED290A E342E31>

標準見積書に計上する 法定福利費 の算出は次の2つの方法とし 手順は以下の通り 1 施工見積の取付費総額から労務費を算出し それに法定福利費の保険料率を乗じる 2 これまでの施工実績をもとに施工従事者に支払った正味労務費から各商品の単位当りの法定福利費をあらかじめ算出した上で 法定福利費を簡便に算出

<4D F736F F D2092CA D89BF8C5F96F BF8D8788D395FB8EAE82CC8EC08E7B2E646F63>

公共工事における予定価格設定時の 歩切り に関する調査の結果について 平成 27 年 4 月 28 日総務省国土交通省 昨年 6 月の公共工事の品質確保の促進に関する法律 ( 平成 17 年法律第 18 号 以下 公共工事品質確保法 という ) の改正により 予定価格の適正な設定が発注者の責務として

建築積算士更新講習

JCM1401特集01.indd

ÿþ

Microsoft Word - 第0.00章 表紙.doc

Microsoft Word - 【本省技術調査課】インフレスライド運用マニュアル_140131地整送付 (140204改)

開発者 Q1 への登録申請はどうすればいいの? ( 回答はP2) Q2 開発技術を活用してもらうにはどうすればいいの?( 回答はP3) Q3 への登録ってお金がかかるの? ( 回答はP5) Q4 に登録したらどんな良いことがあるの? ( 回答はP6) 施工者 Q1 新技術を活用すると良いことがあるの

平成 29 年 6 月 1 日 ( 木 ) 国土交通省関東地方整備局企画部 記者発表資料週休 2 日の達成を目指す試行工事をスタートします ~ 建設業が取り組む 週休 2 日の定着 を発注者としてサポート ~ 関東地方整備局においては 平成 27 年度から 週休 2 日確保試行工事 ( 以下 試行工

1-1 SPC の経営理念 方針 本事業を長期にわたり運営していくにあたってのSPCの経営理念 方針について記載してください なお 以下の事項については必ず記載してください ( 統括マネジメント業務全体でA4 判 60 枚以内で記載してください なお 各業務における 4 業務の実施費用 の項について

Microsoft Word - 文教センター・仕様書

(2) 法定福利費の基本的な算出方法 法定福利費 = 労務費総額 法定保険料率 法定福利費は 通常 年間の賃金総額に各保険の保険料率を乗じて計算します しかし 各工事の見積りでは 労働者の年間賃金を把握することは不可能です そのため 見積額に計上した 労務費 を賃金とみなして それに各保険の保険料率

事務連絡 平成 30 年 11 月 9 日 建設業団体の長殿 国土交通省土地 建設産業局建設業課長 公共工事の円滑な施工確保について 公共工事の適正な入札及び契約を通じて建設業の健全な発達を図るとともに 平成 30 年 7 月豪雨や平成 30 年北海道胆振東部地震等の大規模災害からの復旧 復興の加速

(案)

<4D F736F F D C966B926E90AE817A C837D836A B815E D836A B88EA95948F4390B32E646F63>

標準請負契約約款の概要 標準請負契約約款は 請負契約の片務性の是正と契約関係の明確化 適正化のため 当該請負契約における当事者間の具体的な権利義務関係の内容を律するものとして 中央建設業審議会が公正な立場から作成し 当事者にその実施を勧告するもの 建設業法第 34 条第 2 項 建設業法 ( 昭和

事務連絡 平成 27 年 3 月 31 日 各都道府県消防防災主管課 東京消防庁 各指定都市消防本部 御中 消防庁予防課 認知症高齢者グループホーム等の火災対策の充実のための介護保険部 局 消防部局及び建築部局による情報共有 連携体制の構築に関するガイドラインに係る執務資料の送付 認知症高齢者グルー

018QMR 品質計画書作成規程161101

A4 経営事項審査の受審状況により確認方法が異なります なお 適用除外は 労働者の就業形態等によって適用除外とならない場合もあることから 元請負人は 年金事務所等に適用除外となる要件を確認した上で判断してください 経営事項審査を受審している場合 有効期間にある経営規模等評価結果通知書総合評定値通知書

入札説明書

設 機能の見直しハード面の効率化財源確保1-3. 再配置パターン ( 手法 ) の考え方 再配置計画の検討に向けて 公共施設の再配置を う場合の基本的なパターン ( 手法 ) について整理し それらの効果についても確認していきます 施設の再配置にあたっては 厳しい財政状況の中 人口が減少傾向にあるこ

< F2D30318C9A927A8D488E968AD68C5790CF8E5A8AEE8F808F FC92E82E6A7464>


<4D F736F F F696E74202D EF8B638E9197BF82CC B A6D92E894C5816A E >

別紙 1 提出書類一覧様式番号 様式 1 様式 2-1 様式 2-2 様式 3 様式 4 様式名 施工体制確認調査報告書積算内訳書内訳明細書工程計画配置予定技術者名簿 次に該当する場合は 様式 4を提出する必要はありません 一般競争入札の場合 ( 開札後に提出のある 配置予定技術者の資格 工事経歴報

( 選定提案 ) は 利用者に貸与しようと福祉用具の種目の候補が決まった後で 具体的な提案品目 ( 商品名 ) を検討する際に用いる つまり ( 選定提案 ) に記載されるのは 候補となる福祉用具を利用者に対して提案 説明を行う内容である 平成 30 年度の制度改正では 提案する種目 ( 付属品含む

4. 施工者とは 当該工事の受注者をいう ( 品質証明者 ) 5. 品質証明者とは 一定の資格及び実務経験を有し 施工者と品質証明業務について契約した組織又は個人で 以下の要件に該当しないものをいう 1 組織においては 以下のいずれかに該当する者 (1) 当該工事の施工者 (2) 当該工事の施工者と

Transcription:

資料 4 公共建築事業の発注フローにおける課題 事例等について Ministry of Land, Infrastructure, Transport and Tourism

公共建築事業の発注までのフロー 段階 企画 基本設計 実施設計 積算 概算工事費算出 1 概略工期算出 1 概算工事費算出 2 概略工期算出 2 概算工事費算出 3 概略工期算出 3 工期設定 実施内容 企画立案予算措置 諸条件把握発注条件とりまとめ 基本設計図書作成 実施設計図書作成 数量算出書作成 実施者 発注者 ( 事業部局 ) 発注者設計事務所やコンサル等へ外注の場合もある 設計者 ( 設計事務所 ) 設計者 ( 設計事務所 ) 設計者 ( 積算事務所へ外注の場合もある ) 積算 予定価格設定 メーカー等見積収集 見積単価設定 積算者による積算システムデータ入力 発注者による積算システムデータ入力 設計図書確定 公告 入札 設計者 ( 設計事務所 ) 発注者 ( 発注部局 ) 設計者 ( 積算事務所へ外注の場合もある ) 発注者 ( 発注部局 ) 発注者 ( 発注部局 ) 公共建築事業の一例 1

発注フローの各段階における課題等 1 企画段階 企画立案予算措置 諸条件把握発注条件とりまとめ 具体的な実施内容 建築物の機能 規模 敷地 設計 工事の工程 設計費 工事費 事業手法等を企画立案 工事費は 過去の事例や延べ面積当たりの単価等で大まかに見積もり 発注者 ( 事業部局 ) は この企画立案内容 ( 基本構想や基本計画等 ) に基づいて予算を確保 実施者 : 発注者 事業部局 ( 設計事務所やコンサル等へ 外注の場合もある ) 求められる機能などが十分に整理されず 設計業務の発注条件が明確となっていない場合がある 古い事例が参考にされていること 構造の差異 ( 吹抜の有無等 ) や付帯工事費が考慮されていないこと 工事発注までの間が長く物価変動など生じること等が 後に工事費が予算から乖離する要因 工事発注までの間に設計の精度向上や物価変動があっても この段階で措置した予算の範囲内で対応 しなければならないことが多い 2

発注フローの各段階における課題等 2 基本設計段階 実施設計段階 基本設計図書作成 実施設計図書作成 実施者 : 設計者 設計事務所 具体的な実施内容 発注者 ( 発注部局 ) が発注条件 ( ) をとりまとめ 内容に応じた設計期間を設定し 設計業務を設計事務所へ発注 設計事務所は発注条件に整合した設計図書を作成し 発注者 ( 発注部局 ) は発注条件と整合した設計図書となっているかを確認 発注条件 : 企画立案内容に加え 政策や現場状況等の諸条件を適切に反映したもの 発注条件と整合しない基本設計図書となっていると後段階の積算が予算と乖離する可能性があるため 精度を高めることが重要だが その認識が受発注者ともに不足している場合がある 実施設計段階での予算管理には 官庁施設の設計段階におけるコスト管理ガイドライン ( 官庁営繕部作成 ) を活用することも有効 3

発注フローの各段階における課題等 3 積算段階 1 数量算出書作成 具体的な実施内容 積算の基礎となる数量を 設計図書を基に算出 実施者 : 設計者 多くの都道府県 政令市で 公共建築工事積算基準 ( 国の統一基準 ) 等を数量算出の根拠に指 設計事務所 ( 積算事務所へ 定し 営繕工事積算チェックマニュアル ( 官庁営繕部作成 ) を活用しているが 独自のマニュアル等を 外注の場合もある ) 作成しているところもある 積算段階に入ってからも建築確認手続き等により設計図書の修正が生じる場合があり 数量の算出に手戻りが発生する可能性がある 実施設計後にも概算の確認を行う観点からは 数量計算を容易に行えるBIMの普及が望まれている 地方では積算事務所が非常に少なく 設計事務所に積算能力が求められている 4

発注フローの各段階における課題等 4 積算段階 2 メーカー等見積収集 実施者 : 設計者 設計事務所 見積単価設定 実施者 : 発注者 発注部局 具体的な実施内容 建築工事は 工種が多岐にわたり 刊行物掲載の単価等だけでは適正に工事費を算出できないことから 多くの工種において 見積単価の設定が必要 見積単価は 工事ごとに 設計者がメーカー等から収集した見積書を参考に 発注者が設定 見積書の価格と 施工者とメーカー等との取引価格である実勢価格とは異なることが多く 発注者におい て 市中における取引状況を把握し 見積書の価格を補正して単価を設定 地方ではメーカー等が少ないほか 最近では見積に応じない又は有料とするメーカー等が増えている 企画段階又は設計段階の予算内に収めるために厳しい補正率を設定し 実勢価格と乖離してしまう場 合がある 5

発注フローの各段階における課題等 5 積算者による積算システムデータ入力実施者 : 設計者 積算事務所 ( 積算事務所へ 発注者による積算システムデータ入力 積算段階 3 外注の場合もある ) 実施者 : 発注者 発注部局 設計図書確定 実施者 : 発注者 発注部局 その他 具体的な実施内容 発注者の使用する積算システムに単価と数量を入力する システムは ( 一財 ) 建築コスト管理システム研究所が提供している営繕積算システム RIBC( 内訳書 の作成機能 公共単価データ 共通費の計算機能等を装備 ) が主流 単価や見積が最新のものであるか 共通費が妥当であるか等について 適切に確認する必要がある この段階での予算超過による修正設計が生じた場合 大きな手戻りが発生 以下のような実態が生じているとの指摘がある 工期が短く適正でない 数量書の細目において 1 式として数量が提示されないものもある 現場の施工数量と積算数量との相違 発注方式によって設計内容が異なることがあり それに応じてコストも変わる可能性があることを踏まえ 発注方式を選定することが必要 発注者の体制確保が難しい場合は 適切に外部支援を活用することが必要 発注者支援にあたっては 発注者が何に対する支援を求めるかを明確にし 各段階においてそれぞれふさわしい能力を有する者を支援 者に選定する必要がある 6

予算変動の主な原因の例 コスト推移のイメージ 企画 基本設計 実施設計 積算 予定価格 入札 工事 事業部局にて予算決定 当初予算 要求内容の精査 変更等 コストの変動幅が大きい 設計見直し追加予算措置 実勢価格の高騰等 設計見直し 地中埋設物の対応等 基本構想 予算変動の原因 基本計画 基本計画時に事業予算を決定 算出根拠 他庁舎の事例の延べ面積当たりの単価 民間企業へのヒアリング 国交省官庁営繕の新営予算単価 官積算 基実本 ( 基施設見本設計直設計し計 ) 発注部局の事業への参画期間 基本 実施設計時の予算の変動要因 予算決定時の計画における機能等の未確定 実勢価格の高騰 要求の変更による当初予定水準以上の設計 ( 実見施直設し計 ) 入札価格 予定価格と実勢価格の乖離の要因 実勢価格の高騰 現場の施工数量と積算数量との相違 見積単価の実勢価格との乖離 施工段階 施工時の予算追加 予見できない事象の発生 ( 地中埋設物 アスベスト等 ) 多くの地方公共団体では 企画段階において基本計画を基に予算決定した後 基本設計段階以降を進めていく中で 要求内容の精査や変更に伴い 予算規模と設計内容の不均衡が明らかとなり 設計の見直しや予算の増額等 対応に苦慮しているケースが多く見られる その要因としては 1 企画段階において 必要な機能等が未確定で 予算決定の根拠に用いる延べ面積当たり単価の適切な設定が困難 ( 構造等が異なる事例を参考にした予算決定等が発生 ) 2 設計段階において 機能等を確定又は変更するにあたり 予算規模との調整が不十分 3 予算決定から入札までの期間において 労務や資材の価格変動が発生等が挙げられる 国土交通省 多様な入札契約方式モデル事業 の事例を参考に作成 7

予算と設計内容の不均衡の事例 (A 市 ) 予算上限額をベースに入札を行った結果 不落となり 設定した設計価格 ( 予定価格 ) に市場の実勢価格との乖離が生じていたことが明らかになったケース 入札不落の原因分析 発注者の予算と設計者の設計内容の不均衡 市民ニーズの反映を含め 専門性をもって設計価格 ( 予定価格 ) のチェックをすることが困難 実勢価格の高騰による積算単価の乖離 発注者の明示条件と入札参加者の見込みの相違 今後の対応 他事例比較と入札結果検証の双方からの事業規模再検討 予算レベルと市民ニーズの両方を見据えた仕様の見直し 支援事業者も活用した事業費の管理体制の構築 明示した条件に基づく適切な積算 今後の対応 ( 予算に応じた仕様等の見直しの例 ) ( 税別 ) 60 億円 50 億円 40 億円 30 億円 52.0 億 6,900m2 44.9 億 7,995m2 設置可能面積 1,095m2 ギャラリー 小ホール 48.0 億 7,475m2 52.2 億ギャラリー 6,876m2 6,139m2 設置可能面積 ギャラリー 575m2 小ホール ギャラリー 小ホール 小ホール ターゲットレベル 58.4 億 20 億円 10 億円 大ホール 大ホール 大ホール 外観形状の見直し 大 小ホール形状見直し 小ホール仕様見直し 仕様全体見直し 大ホール 2,150 千円 / 坪 比較事例 2,300 千円 / 坪 2,500 千円 / 坪 2,800 千円 / 坪 減額検討案 1 減額検討案 2 入札仕様 8

予算と設計内容の不均衡の事例 (B 市 ) 基本設計が完了した時点で 設計者の概算事業費が発注者の予算を超過していることが明らかになったケース コスト乖離の主な要因 設備機器購入費等 設備機器購入費等 設備機器購入費等 発注者の予算と設計者の設計内容の不均衡 発注者 ( 運用者 ) の要望による設備仕様のアップグレード 基本設計の途中段階で設計者から提示された参考見積と事業計画費の乖離が発覚 支援事業者において 基本設計成果に基づき概算見積を算出 他事例との設備機器等のコストを比較 今後の対応 支援事業者による概算金額でも発注者の予算より数 % 高い 基本設計に対する VE 検討が必要 建屋本体のスペックは建屋内の設備機器等設備のスペックやレイアウトに影響を受ける 建屋本体の構造やコストも見据えて 設備機器等設備の実施設計を進めることが重要 第三者による技術的な観点から コストの課題について検証し 基本設計を修正中 9