平成 31 年 2 月 28 日判決言渡同日原本領収裁判所書記官 平成 30 年 ( ワ ) 第 号発信者情報開示請求事件 口頭弁論終結日平成 30 年 12 月 20 日 判 決 5 原告 A 同訴訟代理人弁護士大熊裕司 被告ソフトバンク株式会社 10 同訴訟代理人弁護士五十嵐敦 同稲

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原告が著作権を有し又はその肖像が写った写真を複製するなどして不特定多数に送信したものであるから, 同行為により原告の著作権 ( 複製権及び公衆送信権 ) 及び肖像権が侵害されたことは明らかであると主張して, 特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律 ( 以下 プ ロ

情報の開示を求める事案である 1 前提となる事実 ( 当事者間に争いのない事実並びに後掲の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実 ) 当事者 ア原告は, 国内及び海外向けのモバイルゲームサービスの提供等を業とす る株式会社である ( 甲 1の2) イ被告は, 電気通信事業を営む株式会社である

( 以下 プロバイダ責任制限法 という )4 条 1 項に基づき, 被告が保有する発信者情報の開示を求める事案である 1 前提事実 ( 当事者間に争いのない事実並びに後掲の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実 ) (1) 当事者 原告は, 肩書地に居住する者である ( 甲 1) 被告は,

応して 本件著作物 1 などといい, 併せて 本件各著作物 という ) の著作権者であると主張する原告が, 氏名不詳者 ( 後述する本件各動画の番号に対応して, 本件投稿者 1 などといい, 併せて 本件各投稿者 という ) が被告の提供するインターネット接続サービスを経由してインターネット上のウェ

1 本件は, 別紙 2 著作物目録記載の映画の著作物 ( 以下 本件著作物 という ) の著作権者であると主張する原告が, 氏名不詳者 ( 以下 本件投稿者 という ) が被告の提供するインターネット接続サービスを経由してインターネット上のウェブサイト FC2 動画 ( 以下 本件サイト という )

平成 30 年 6 月 15 日判決言渡同日原本領収裁判所書記官 平成 30 年 ( ワ ) 第 5939 号発信者情報開示請求事件 口頭弁論終結日平成 30 年 5 月 9 日 判 決 5 当事者の表示別紙当事者目録記載のとおり 主 文 1 被告は, 別紙対象目録の 原告 欄記載の各原告に対し,

第 2 事案の概要本件は, 原告が, 被告に対し, 氏名不詳者が被告の提供するインターネット接続サービスを利用して, インターネット上の動画共有サイトに原告が著作権を有する動画のデータをアップロードした行為により原告の公衆送信権 ( 著作権法 23 条 1 項 ) が侵害されたと主張して, 特定電気

最高裁○○第000100号

被告に対し, 著作権侵害の不法行為に基づく損害賠償として損害額の内金 800 万円及びこれに対する不法行為の後の日又は不法行為の日である平成 26 年 1 月 日から支払済みまで年 % の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である 1 判断の基礎となる事実 ( 当事者間に争いのない事実又は後掲の各

最高裁○○第000100号

第 2 事案の概要本件は, レコード製作会社である原告らが, 自らの製作に係るレコードについて送信可能化権を有するところ, 氏名不詳者において, 当該レコードに収録された楽曲を無断で複製してコンピュータ内の記録媒体に記録 蔵置し, イン ターネット接続プロバイダ事業を行っている被告の提供するインター

平成 28 年 4 月 21 日判決言渡同日原本交付裁判所書記官 平成 27 年 ( ワ ) 第 号損害賠償請求事件 口頭弁論終結日平成 28 年 2 月 25 日 判 決 原告株式会社 C A 同訴訟代理人弁護士 竹 村 公 利 佐 藤 裕 紀 岡 本 順 一 石 塚 司 塚 松 卓

年 10 月 18 日から支払済みまで年 5 分の割合による金員を支払え 3 被控訴人 Y1 は, 控訴人に対し,100 万円及びこれに対する平成 24 年 1 0 月 18 日から支払済みまで年 5 分の割合による金員を支払え 4 被控訴人有限会社シーエムシー リサーチ ( 以下 被控訴人リサーチ

平成 29 年 2 月 20 日判決言渡同日原本交付裁判所書記官 平成 28 年 ( ワ ) 第 号損害賠償請求事件 口頭弁論終結日平成 29 年 2 月 7 日 判 決 原 告 マイクロソフトコーポレーション 同訴訟代理人弁護士 村 本 武 志 同 櫛 田 博 之 被 告 P1 主 文

令和元年 6 月 20 日判決言渡同日原本領収裁判所書記官 平成 31 年 ( ワ ) 第 2629 号発信者情報開示請求事件 口頭弁論終結日平成 31 年 4 月 16 日 判 決 5 原告日本コロムビア株式会社 原告株式会社バンダイナムコアーツ 10 原告キングレコード株式会社 原告ら訴訟代理人

告ツイッタージャパンの間では全て原告の負担とする 事実及び理由 第 1 請求 ( 主位的請求 ) 被告らは, 原告に対し, 別紙発信者情報目録 ( 第 1) 記載の各情報を開示せよ ( 予備的請求 ) 被告らは, 原告に対し, 別紙発信者情報目録 ( 第 2) 記載の各情報を開示せよ 第 2 事案の

平成 28 年 4 月 28 日判決言渡同日原本交付裁判所書記官 平成 27 年 ( ワ ) 第 号損害賠償等請求事件 口頭弁論終結日平成 28 年 3 月 22 日 判 決 原 告 A 同訴訟代理人弁護士 松 村 光 晃 中 村 秀 一 屋 宮 昇 太 被告株式会社朝日新聞社 同訴訟代

最高裁○○第000100号

事実 ) ⑴ 当事者原告は, 昭和 9 年 4 月から昭和 63 年 6 月までの間, 被告に雇用されていた ⑵ 本件特許 被告は, 次の内容により特定される本件特許の出願人であり, 特許権者であった ( 甲 1ないし4, 弁論の全趣旨 ) 特許番号特許第 号登録日平成 11 年 1

並びにそのコンサルタント業務等を営む株式会社である ⑵ 株式会社 CAは, 別紙著作物目録記載 1ないし3の映像作品 ( 以下 本件著作物 1 などといい, 併せて 本件各著作物 という ) の製作に発意と責任を有する映画製作者 ( 著作権法 2 条 1 項 号 ) であるところ, 本件各著作物の著

平成  年 月 日判決言渡し 同日判決原本領収 裁判所書記官

に表現したものということはできない イ原告キャッチフレーズ1は, 音楽を聞くように英語を聞き流すだけ/ 英語がどんどん好きになる というものであり,17 文字の第 1 文と12 文字の第 2 文からなるものであるが, いずれもありふれた言葉の組合せであり, それぞれの文章を単独で見ても,2 文の組合

最高裁○○第000100号

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指定商品とする書換登録がされたものである ( 甲 15,17) 2 特許庁における手続の経緯原告は, 平成 21 年 4 月 21 日, 本件商標がその指定商品について, 継続して3 年以上日本国内において商標権者, 専用使用権者又は通常使用権者のいずれもが使用した事実がないことをもって, 不使用に

平成年月日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官

1 前提となる事実等 ( 証拠の摘示のない事実は, 争いのない事実又は弁論の全趣旨から容易に認められる事実である ) (1) 当事者原告は, X1 の名称を使用してウエブサイトの制作請負を行っている者であり, 被告は, 不動産業を主な業務としている特例有限会社である (2) 原告によるプログラムの制

最高裁○○第000100号

とは, 原告に対する名誉毀損に該当するものであると主張して, 不法行為に基づき400 万円の損害賠償及びこれに対する不法行為日以降の日である平成 24 年 9 月 29 日から支払済みまで民法所定の年 5 分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である 1 前提事実 ( 当事者間に争いがないか,

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事実及び理由 第 1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す 2 被控訴人は, 原判決別紙被告方法目録記載のサービスを実施してはならない 3 被控訴人は, 前項のサービスのために用いる電話番号使用状況調査用コンピュータ及び電話番号使用状況履歴データが記録された記録媒体 ( マスター記録媒体及びマスター記録

平成22年5月12日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官

4 年 7 月 31 日に登録出願され, 第 42 類 電子計算機のプログラムの設計 作成 又は保守 ( 以下 本件役務 という ) を含む商標登録原簿に記載の役務を指定役 務として, 平成 9 年 5 月 9 日に設定登録されたものである ( 甲 1,2) 2 特許庁における手続の経緯原告は, 平

ア原告は, 平成 26 年 12 月 26 日に設立された, 電気機械器具の研究及び開発等を目的とする株式会社である イ合併前会社ワイラン インクは, 平成 4 年 (1992 年 ) に設立された, カナダ法人である 同社は, 平成 29 年 (2017 年 )6 月 1 日付けで, 他のカナダ法

平成 23 年 10 月 20 日判決言渡同日原本領収裁判所書記官 平成 23 年 ( 行ケ ) 第 号審決取消請求事件 口頭弁論終結日平成 23 年 9 月 29 日 判 決 原 告 X 同訴訟代理人弁護士 佐 藤 興 治 郎 金 成 有 祐 被 告 Y 同訴訟代理人弁理士 須 田 篤

発信者情報開示関係WGガイドライン

平成 27 年 12 月 9 日判決言渡同日原本交付裁判所書記官 平成 27 年 ( ワ ) 第 号損害賠償請求事件 口頭弁論終結日平成 27 年 11 月 6 日 判 決 東京都荒川区 < 以下略 > 原 告 株式会社オールビユーテイ社 同訴訟代理人弁護士 山 本 隆 司 同 植 田

2 被控訴人らは, 控訴人に対し, 連帯して,1000 万円及びこれに対する平成 27 年 9 月 12 日から支払済みまで年 5 分の割合による金員を支払え 第 2 事案の概要 ( 以下, 略称及び略称の意味は, 特に断らない限り, 原判決に従う ) 1 本件は, 本件意匠の意匠権者である控訴人が

同目録記載の番号により 本件著作物 1, 本件著作物 2 といい, 本件著作物 1 及び本件著作物 2を併せて 本件各著作物 という ) の著作権を有する株式会社 CAを吸収合併し, 同社の権利義務を承継したところ, 被告が本件各著作物のデータを動画共有サイトのサーバー上にアップロードした行為が公衆

上陸不許可処分取消し請求事件 平成21年7月24日 事件番号:平成21(行ウ)123 東京地方裁判所 民事第38部

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控訴人は, 控訴人にも上記の退職改定をした上で平成 22 年 3 月分の特別老齢厚生年金を支給すべきであったと主張したが, 被控訴人は, 退職改定の要件として, 被保険者資格を喪失した日から起算して1か月を経過した時点で受給権者であることが必要であるところ, 控訴人は, 同年 月 日に65 歳に達し

平成22年5月12日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官

平成年月日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官

判決【】

権 ) を侵害するとともに, 原告をプロデューサーとして表示しない点及び劇場用映画として制作された本件映画をインターネットで公表する点において, 本件映画につき原告が有する著作者人格権 ( 氏名表示権及び公表権 ) を侵害する行為であり, 被告が今後本件映画を上映, 複製, 公衆送信若しくは送信可能

平成 30 年 3 月 29 日判決言渡同日原本受領裁判所書記官 平成 28 年 ( ワ ) 第 号損害賠償請求事件 口頭弁論終結日平成 30 年 3 月 9 日 判 決 5 原告株式会社フィールドアロー 同訴訟代理人弁護士 青 山 友 和 被 告 ソ メ ヤ 株 式 会 社 同訴訟代理

(1) 本件は, 歯科医師らによる自主学習グループであり, WDSC の表示を使用して歯科治療技術の勉強会を主催する活動等を行っている法人格なき社団である控訴人が, 被控訴人が企画, 編集した本件雑誌中に掲載された本件各記事において WDSC の表示を一審被告 A( 以下, 一審被告 A という )

原告は, 被告に対し, 万円及びこれに対する平成 29 年 3 月 1 日から支払済みまで年 分の割合による金員を支払え 第 2 事案の概要本件は,1 原告が, 自らの作成に係る別紙 1( 甲 12の1 以下 本件本体部 分 という ) 及び別紙 2( 甲 12 の 2 以下 本件ライブラリ部分 と

達したときに消滅する旨を定めている ( 附則 10 条 ) (3) ア法 43 条 1 項は, 老齢厚生年金の額は, 被保険者であった全期間の平均標準報酬額の所定の割合に相当する額に被保険者期間の月数を乗じて算出された額とする旨を定めているところ, 男子であって昭和 16 年 4 月 2 日から同

た損害賠償金 2 0 万円及びこれに対する遅延損害金 6 3 万 9 円の合計 3 3 万 9 6 円 ( 以下 本件損害賠償金 J という ) を支払 った エなお, 明和地所は, 平成 2 0 年 5 月 1 6 日, 国立市に対し, 本件損害賠償 金と同額の 3 3 万 9 6 円の寄附 (

被告は,A 大学 C 学部英語専攻の学生である (2) 本件投稿等被告は, 大学 2 年生として受講していた平成 26 年 4 月 14 日の 言語学の基礎 の初回講義 ( 以下 本件講義 という ) において, 原告が 阪神タイガースがリーグ優勝した場合は, 恩赦を発令する また日本シリーズを制覇

日から支払済みまで年 分の割合による金員を支払え 第 2 事案の概要本件は, 歯科医師らによる自主学習グループであり, WDSC の表示を使用して歯科治療技術の勉強会を主催する活動等を行っている法人格なき社団であ る原告が, 被告株式会社シーエム ( 以下 被告シーエム という ) が企画, 編集

ない 4 訴訟費用は, 第 1,2 審とも被控訴人の負担とする 第 2 事案の概要 1 事案の要旨本件は, 原判決別紙 商標権目録 記載の商標権を有する控訴人が, 被控訴人に対し, 被控訴人が原判決別紙 被告標章目録 記載の標章をインターネットホームページのサイトで使用する行為が, 控訴人の商標権を

平成 31 年 1 月 29 日判決言渡平成 30 年 ( ネ ) 第 号商標権侵害行為差止等請求控訴事件 ( 原審東京地方裁判所平成 29 年 ( ワ ) 第 号 ) 口頭弁論終結日平成 30 年 12 月 5 日 判 決 控訴人 ジー エス エフ ケー シ ー ピー株式会

する 理 由 第 1 事案の概要 1 本件は, 平成 21 年 ( 受 ) 第 602 号被上告人 同第 603 号上告人 ( 以下 1 審原告 X1 という ) 及び平成 21 年 ( 受 ) 第 603 号上告人 ( 以下 1 審原告 X 2 といい,1 審原告 X 1と1 審原告 X 2を併せ

☆ソフトウェア特許判例紹介☆ -第31号-

像 記載の各画像が表示されるように設定した別紙アカウント目録記載アカウント1のアカウントの保有者, 2 ツイッターにおいて, クライアントコンピュータが, 別紙流通情報目録 1⑸ 記載の URL のウェブページにアクセスした際に, タイムラインに表示される自ら投稿した各短文投稿 ( 以下, ツイッタ

平成 27 年 2 月までに, 第 1 審原告に対し, 労働者災害補償保険法 ( 以下 労災保険法 という ) に基づく給付 ( 以下 労災保険給付 という ) として, 療養補償給付, 休業補償給付及び障害補償給付を行った このことから, 本件事故に係る第 1 審原告の第 1 審被告に対する自賠法

なお, 基本事件被告に対し, 訴状や上記移送決定の送達はされていない 2 関係法令の定め (1) 道路法ア道路管理者は, 他の工事又は他の行為により必要を生じた道路に関する工事又は道路の維持の費用については, その必要を生じた限度において, 他の工事又は他の行為につき費用を負担する者にその全部又は一

丙は 平成 12 年 7 月 27 日に死亡し 同人の相続が開始した ( 以下 この相続を 本件相続 という ) 本件相続に係る共同相続人は 原告ら及び丁の3 名である (3) 相続税の申告原告らは 法定の申告期限内に 武蔵府中税務署長に対し 相続税法 ( 平成 15 年法律第 8 号による改正前の

撮影を,3 株式会社 MONDESIGN Japan( 以下 モンデザイン という ) に対して全体的なデザインをそれぞれ依頼し, 上記 1につき平成 23 年 4 月頃,2につき同年 5 月頃,3につき同年 6 月頃, 各成果物を受領し, その際, 各成果物に係る著作権の譲渡を受けた ( 甲 9,

第 1 控訴の趣旨 控訴人は, 原判決取消しとともに, 被控訴人らの請求をいずれも棄却する判決を 求めた 第 2 事案の概要 被控訴人らは日本舞踊の普及等の事業活動をしている 控訴人はその事業活動に 一般社団法人花柳流花柳会 の名称 ( 控訴人名称 ) を使用している 被控訴人ら は, 花柳流 及び

めた事案である 1 前提事実 ( 当事者間に争いのない事実又は文中掲記した証拠及び弁論の全趣旨により容易に認定できる事実 ) (1) 当事者ア原告は, 映画プロデューサーである ( 甲 1,2) イ被告は, 新聞社であり, ウェブサイト 朝日新聞デジタルAJW を運営するものである (2) 原告の著

平成 25 年 3 月 25 日判決言渡 平成 24 年 ( 行ケ ) 第 号審決取消請求事件 口頭弁論終結日平成 25 年 2 月 25 日 判 決 原 告 株式会社ノバレーゼ 訴訟代理人弁理士 橘 和 之 被 告 常磐興産株式会社 訴訟代理人弁護士 工 藤 舜 達 同 前 川 紀 光

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平成  年(あ)第  号

して, 損害賠償金 330 万円及びこれに対する不法行為の後の日である平成 28 年 月 21 日 ( 原告が被告に本件請求の通知を送付した日の翌日 ) から支払済みまで民法所定の年 分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である 1 前提事実 ( 当事者間に争いのない事実及び弁論の全趣旨により容

平成 25 年 7 月 17 日判決言渡 平成 24 年 ( 行ケ ) 第 号審決取消請求事件 口頭弁論終結日平成 25 年 5 月 29 日 判 決 原 告 株式会社ファランクス 訴訟代理人弁護士 江 森 史麻子 同 呰 真 希 被 告 有限会社サムライ 訴訟代理人弁理士 小 谷 悦

平成 25 年 7 月 17 日判決言渡 平成 24 年 ( 行ケ ) 第 号審決取消請求事件 口頭弁論終結日平成 25 年 5 月 29 日 判 決 原 告 株式会社ファランクス 訴訟代理人弁護士 江 森 史麻子 同 呰 真 希 被 告 有限会社サムライ 訴訟代理人弁理士 小 谷 悦

任の下に表現され 掲載されるものであり ブログ投稿ユーザーは掲載した情報の信頼性 真実性 正確性 妥当性 適法性 完全性を当社及びブログ投稿ユーザーを含む閲覧ユーザー並びにあらゆる第三者に対して保証するものとします なお 当社は これらについて何ら保証するものではなく また 掲載された情報等が本規約

ト化して自らの作品に使用して販売した行為が, 原告の当該写真素材に係る著作権 ( 複製権, 翻案権及び譲渡権 ) を侵害すると主張して, 被告に対し, 不法行為に基づき, 損害賠償金 62 万 3000 円及びこれに対する不法行為後である平成 28 年 月 1 日から支払済みまで商事法定利率年 6

法第 20 条は, 有期契約労働者の労働条件が期間の定めがあることにより無期契約労働者の労働条件と相違する場合, その相違は, 職務の内容 ( 労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度をいう 以下同じ ), 当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して, 有期契約労働者にとって不合

淡路町知財研究会 (松宮ゼミ)

(2) ピュア型 / キャッシュ非作成型 (Limewire,Gnutella 等 ) 検索検索検索見つかると直接接続検索検索検索 図 Limewire の仕組み 1 情報管理サーバーを持たない 2ファイルの検索はバケツリレー方式で行う 3ファイルが見つかった後はピア ツー ピア通信でファイルの送受

裁判年月日 平成 20 年 11 月 27 日 裁判所名 東京地裁 裁判区分 判決 事件番号 平 20( ワ )9871 号 事件名 管理費等請求事件 裁判結果 認容 文献番号 2008WLJPCA 東京都足立区 以下省略 原告上記代表者理事長上記訴訟代理人弁護士同同東京都世田谷区

平成 24 年 8 月 24 日判決言渡 平成 23 年 第 284 号代議員会議決無効確認請求事件 判 主 決 文 1 原告が, 平成 23 年 1 月 18 日をもって被告の設立事業所でないことを確認する 2 被告は, 原告のために,A 厚生年金基金規約別表第 1から 株式会社 B, 長野県諏訪

人類の誕生と進化

ものであった また, 本件規則には, 貸付けの要件として, 当該資金の借入れにつき漁業協同組合の理事会において議決されていることが定められていた (3) 東洋町公告式条例 ( 昭和 34 年東洋町条例第 1 号 )3 条,2 条 2 項には, 規則の公布は, 同条例の定める7か所の掲示場に掲示して行

平成 30 年 8 月 17 日判決言渡同日原本領収裁判所書記官井上昌一朗 平成 29 年 ( ワ ) 第 号損害賠償請求事件 口頭弁論終結日平成 30 年 7 月 11 日 判 決 5 原告株式会社 LoiLo 同訴訟代理人弁護士 渡 邉 太 郎 被 告 株式会社ベネッセコーポレーショ

掲示板の閲覧 掲示板の閲覧 登録権または参照権のある掲示板グループの掲示版を閲覧することができます 各利用者の権限は 管理者によって設定されます 掲示板を閲覧する 1 掲示板画面を表示し 閲覧する掲示が含まれている掲示板グループ 掲示板の順にクリックします 掲示板画面の表示方法 ポータル画面の画面説

イ -3 ( 法令等へ抵触するおそれが高い分野の法令遵守 ) サービスの態様に応じて 抵触のおそれが高い法令 ( 業法 税法 著作権法等 ) を特に明示して遵守させること イ -4 ( 公序良俗違反行為の禁止 ) 公序良俗に反する行為を禁止すること イ利用規約等 利用規約 / 契約書 イ -5 (

あるあるシェアボード 使用マニュアル

平成  年(オ)第  号

主 文 1 本件控訴をいずれも棄却する 2 控訴費用は, 控訴人らの負担とする 事実及び理由 第 1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す 2 被控訴人 P3 及び被控訴人会社は, 大阪府内, 兵庫県内, 京都府内, 滋賀県内及び和歌山県内において, 千鳥屋という名称を使用して菓子類を販売してはならない

本教材の利用について 本教材は 平成 28 年度特許庁産業財産権制度問題調査研究 デザインの創作活動の特性に応じた実践的な知的財産権制度の知識修得の在り方に関する調査研究 ( 請負先 : 国立大学法人大阪大学知的財産センター ) に基づき作成したものです 本教材の著作権は 第三者に権利があることを表

App Store を開きます (iphone の場合 ) 検索に コインチェック と入力します 2

き本件営業秘密の使用又は開示の差止め及び物件の廃棄を求めるとともに ( 以下, これらの請求を併せて 差止請求等 という ),(2) 被告が本件営業秘密を持ち出した行為は原告と被告の間の秘密保持契約にも違反し, これにより原告は損害を被ったと主張して, 同法 4 条又は債務不履行に基づき 1136

(イ係)

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の補正書 において, 審査請求の趣旨を この開示請求は本人の給与のみずましにかかわる書面である為 としているが, 原処分を取り消し, 本件対象保有個人情報の開示を求めている審査請求として, 以下, 原処分の妥当性について検討する 2 原処分の妥当性について (1) 給与所得の源泉徴収票について給与所

別紙(例 様式3)案

(2) 訴訟費用は 被告らの負担とする 2 被告国 (1) 本案前の答弁ア原告の被告国に対する訴えを却下する イ上記訴えに係る訴訟費用は 原告の負担とする (2) 被告国は 本案について 原告の被告国に対する請求を棄却する旨の裁判を求めるものと解する 3 被告 Y1 市 (1) 本案前の答弁ア原告の

11総法不審第120号

政令で定める障害の程度に該当するものであるときは, その者の請求に基づき, 公害健康被害認定審査会の意見を聴いて, その障害の程度に応じた支給をする旨を定めている (2) 公健法 13 条 1 項は, 補償給付を受けることができる者に対し, 同一の事由について, 損害の塡補がされた場合 ( 同法 1

資料 10-1 海外事業者を相手方とした発信者情報開示 差止請求について ( 神田弁護士ヒアリングメモ ) 平成 30 年 8 月 6 日 1. クラウドフレアに対する発信者情報開示請求について 自分が弁護士として権利者から海賊版サイトに関する相談を受けた場合 まず, サイト管理者の連絡先を調査し,

本件は, 商標登録取消審判請求に対する審決の取消訴訟である 争点は,1 被告又は通常実施権者による標章使用の有無及び2 使用された標章と登録商標との同一性の有無である 1 本件商標商標登録第 号商標 ( 以下, 本件商標 という ) は, 下記の構成からなり, 第 25 類 運動靴,

により容易に認められる事実 ) (1) 当事者等ア原告は,Aの子である イ Aは, 大正 年 月 日生まれの男性であり, 厚生年金保険の被保険者であったが, 平成 年 月 日, 死亡した ( 甲 1) (2) 老齢通算年金の受給 Aは, 昭和 年 月に60 歳に達し, 国民年金の納付済期間である18

Transcription:

平成 31 年 2 月 28 日判決言渡同日原本領収裁判所書記官 平成 30 年 ( ワ ) 第 19731 号発信者情報開示請求事件 口頭弁論終結日平成 30 年 12 月 日 判 決 原告 A 同訴訟代理人弁護士大熊裕司 被告ソフトバンク株式会社 同訴訟代理人弁護士五十嵐敦 同稲葉大輔 同近藤翔太 主 文 1 1 被告は, 原告に対し, 別紙発信者情報目録記載の各情報を開示せよ 2 訴訟費用は被告の負担とする 事実及び理由第 1 請求主文同旨 第 2 事案の概要 本件は, 原告が, 自身の両脚を撮影した2 枚の写真について著作権及び著作者人格権を有するところ, 氏名不詳者により, インターネット上の電子掲示板に, 当該 2 枚の写真を複製した画像のアップロード先であるURLが無断で投稿されたことにより, 原告の著作権 ( 複製権及び公衆送信権 ) 及び著作者人格権 ( 同一 2 性保持権 ) が侵害されたことが明らかであると主張して, 特定電気通信役務提供 者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律 ( 以下 プロバイダ 1

責任制限法 という )4 条 1 項の開示関係役務提供者である被告に対し, 同項に基づき, その保有する発信者情報の開示を求める事案である 1 前提事実 ( 証拠 ( 枝番を付さないものは全ての枝番を含む 以下同じ ) を掲げない事実は当事者間に争いがない ) (1) 当事者 原告は, B という芸名で活動する女性である ( 甲 1,2,3の1, ) 被告は, インターネット接続サービスの提供を含む電気通信事業を営む株式会社であり, プロバイダ責任制限法 4 条 1 項の開示関係役務提供者に当た る ( 弁論の全趣旨 ) (2) 原告による写真の撮影原告は, 平成 30 年 3 月頃, 別紙写真目録 1 及び2のとおり, 自身の両脚をスマートフォンにより写真撮影した ( 以下, 同目録 1の写真を 本件写真 1 と, 同目録 2の写真を 本件写真 2 といい, 併せて 本件写真 とい 1 うことがある ) ( 甲 8 ないし ) (3) 本件画像の投稿ア別紙投稿画像目録記載の画像 ( 以下 本件画像 という ) は, 平成 3 0 年 3 月 22 日午後 11 時 3 分 41 秒に, up@vpic( 省略 ) 宛てにメール送信され,URL(URLは省略)( 以下 本件画像 URL とい う ) 上にアップロードされた ( 以下 本件画像アップロード という ) ( 甲 3の1,,11ないし13) イ本件画像 URLは, 同日午後 11 時 4 分 46 秒に, 被告の提供するインターネット接続サービスを利用して, V 系初代たぬきの掲示板 のスレッドタイトル ( 省略 ) ( 閲覧用 U R L:(URLは省略 ))( 以 2 下 本件掲示板 という ) に投稿された ( 以下 本件投稿 という ) ( 甲 3,,6) 2

2 争点本件投稿による原告の権利侵害の明白性 (1) 本件写真の著作物性の有無 ( 争点 1) (2) 公衆送信権 複製権侵害の成否 ( 争点 2) (3) 同一性保持権侵害の成否 ( 争点 3) 3 争点に関する当事者の主張 (1) 争点 1( 本件写真の著作物性の有無 ) ( 原告の主張 ) 本件写真 1は, 自宅内で白いマット上に素足で座っている原告の太ももか ら爪先までの部分が写っており, 内股にして足を曲げた状態で足の爪には赤 いマニキュアが塗られていて, 右太ももの内側に左の手のひらを添えたカラー写真である 本件写真 2は, 自宅内の床上に素足で座っている原告の太ももから爪先までの部分 ( 及びショートパンツの一部 ) が写っており, 足先には白いスリッ 1 パを履いており, 右太ももの内側に左の手のひらを添えたカラー写真である 原告は, ダイエットで自分の足が細くなったことを記録するために本件写真 2を撮影したが, その後, 転んで足にあざができたのでそれを記録するために同じようなポーズで本件写真 1を撮影した このように, 原告は, 本件写真 1 及び2の撮影に当たり, 被写体の選択や 配置, シャッターチャンスの捕捉, アングル, 構図等に工夫を加えて撮影し ており, 撮影者の思想 感情が創作的に表現されているから, 本件写真 1 及び2は写真の著作物として著作物性が認められる ( 被告の主張 ) 著作物とは, 思想又は感情を創作的に表現したものであって, 文芸, 学 2 術, 美術又は音楽の範囲に属するもの をいうが ( 著作権法 2 条 1 項 1 号 ), 写真が著作物と認められるためには, 被写体の選択, 構図, カメラアングル 3

の設定, シャッターチャンスの捕捉, 絞り, 明るさ等において撮影者の個性が現れていること, すなわち創作性が認められることが必要である しかしながら, 本件写真は, 人物の脚のみを被写体とし, その構図も脚を中心に据えるという極めてありふれたものである また, カメラアングルについても, 撮影者が自らの脚全体を撮影する際に一般的に用いられる, 座って撮影する というありふれた方法で撮影されたにすぎない その他, 本件写真には撮影者の個性が現れていると認められる部分は全く存在しない したがって, 本件写真には著作物の要件である創作性は認められず, そもそも本件写真は著作物であることが明らかであるとはいえない (2) 争点 2( 公衆送信権 複製権侵害の成否 ) ( 原告の主張 ) ア本質的特徴を感得できること本件投稿をした者は, 平成 30 年 3 月 22 日, 本件写真を複製し, 公衆送信した 1 本件画像は, 本件写真 1 及び 2 を結合した写真であるところ, 本件画像 の左側の写真は, 白いマット上に素足で座っている女性の太ももから爪先までの部分が写っており, 内股にして足を曲げた状態で足の爪には赤いマニキュアが塗られていることが覚知できる また, 本件画像の右側の写真は, 床上に素足で座っている女性の太ももから爪先までの部分 ( 及びショ ートパンツの一部 ) が写っており, 足先には白いスリッパを履いているこ とが覚知できる なお, 本件画像は, スマートフォンで閲覧可能であり, ピンチアウト ( 二本の指の間を広げるように動かすことで, 画面表示を拡大すること ) によって, 本件画像を拡大して閲覧することが可能であり, そのような閲 2 覧方法によると, 印刷した画像 ( 甲 3 の 2) に比べて, より一層, 本件写 4

真 1 及び2の表現の本質的特徴が本件画像に反映されていることを覚知できる 以上のことから, 本件画像には, 本件写真 1 及び2の表現の本質的特徴が利用されているといえる イ本件画像アップロードと本件投稿の関係 ( ア ) たぬピク とは,V 系初代たぬきの掲示板,V 系こたぬき掲示板等のV 系専用のアップローダーであり, 本件掲示板等に画像を投稿するにあたっては たぬピク を使用する必要がある ( 甲 12,13) 本件掲示板に画像を投稿する場合は, up@vpic( 省略 ) 宛てに画像を添 付したメールを送信すると, 公開用 URL が送信したメールアドレス宛 てに送信される ( 甲 11) そして, 当該公開用 URLを投稿することで, 本件掲示板へ画像を投稿することができる 原告は, 本件写真を たぬピク に送信することを一切許諾していないのであるから, 上記の行為は, 原告の公衆送信権を侵害する 1 そして, たぬピク に本件画像がメール送信された 1 分 0 秒後に 本件投稿がされているところ, 本件画像 URLは, たぬピク に本件画像を送信したメールアドレス宛てに送信されるのであるから, 上記 1 分 0 秒の間に, 本件画像アップロードをした者以外の者が本件画像 U RLを入手して, 本件投稿をすることは通常考えられず, 本件画像アッ プロードをした者と本件投稿をした者は同一人物であることは明らかで ある ( イ ) たぬき掲示板では, たぬピク のURLが投稿された場合,URL を掲載するのではなく, 当該画像自体が掲載される仕組みになっており ( 甲 11), 本件投稿をスマートフォンで表示すると, 甲 3の2のよう 2 に, 本件画像がそのまま表示される すなわち, 本件掲示板では, リン ク先の URL が記載され, 当該 URL をクリックするとリンク先のウェ

ブサイト ( 画像 ) が表示されるハイパー リンクではなく, インラインリンクが設定されている したがって, このような たぬピク のシステムからも, 本件投稿は本件画像のデータを投稿したものであり, 本件投稿がURLを記載したにすぎないとか, リンクを設定したにすぎない ので著作権侵害が成立しないとの反論は成り立たず, 本件投稿により, 複製権侵害, 公衆送信権侵害が成立する なお, たぬピク はパソコン非対応なので, 甲 3の1で表示されている本件投稿にはURLのみが記載されているようにみえるにすぎないが, 本件投稿に投稿されたURLをクリックしても, パソコンでは た ぬピク の画像は閲覧できない このことからも, 本件投稿がリンクを 設定したものとはいえない ( ウ ) 仮に, 本件アップロードをした者と本件投稿をした者が同一人物でなかったとしても, 本件画像 URLを受信してから約 1 分後に本件記事が投稿されていることから, 両者が全く無関係の者同士ということは考え 1 られず, 本件投稿をした者は, 少なくとも たぬピク に本件画像を送 信した者と共同して ( 意思を通じて ), 原告の公衆送信権を侵害したことは明らかである したがって, 仮に, 本件投稿をした者に公衆送信権侵害が成立しないとしても, 公衆送信権侵害の幇助が成立する ( 被告の主張 ) ア本質的特徴を感得できないこと本件画像は, 本件写真を他の写真と合わせて一つの小さい画像として掲載しているにすぎず, 本件写真を利用していると思われる部分の大きさはかなり小さく, 画像も不鮮明となっている ( 甲 3の2, 訴状別紙対比表 ) 2 したがって, 本件画像における本件写真と思われる写真が表示されている 部分からは, 本件写真の全体の構成がかろうじて認識できるにすぎず, 一 6

般的には創作性の根拠となり得る本件写真の表現形式が全く再現されていないため, 一般人が通常の注意力をもって見た場合に, 本件画像が, 本件写真の本質的特徴を感得できるものであるとは到底いえない イ本件画像アップロードと本件投稿の関係 ( ア ) まず, 原告も認めるとおり ( 甲 ), 本件掲示板に画像を投稿する には, たぬピク というシステムを使って画像をアップロードする仕組みとなっているところ, 本件投稿においてはURLのみが記載され ( 甲 3の1), 本件投稿に記載されたURL 先のファイルのアップロードは, 本件投稿に使用されたIPアドレスとは異なるIPアドレスを使用して なされたと考えられる ( 甲 ) そして, 本件投稿は, アップロードさ れた本件画像ファイルのURLを転記したにすぎず, 当該画像ファイルそのものを投稿したものではないから, そもそも本件投稿によって著作権侵害は成立し得ない すなわち, 本件投稿をした者は, 本件掲示板に本件画像 URLを記載 1 したまでであり, 文字データにすぎない URL が流通するのみで権利侵 害が生じるとはいえない 本件投稿をした者は, 単に同人が確認したU RL 先の画像ファイルの存在とその所在を示すためにそのURLの記載をしたにすぎず,URLを投稿することによってURL 先の画像ファイルの内容を公開しているわけではないと考えるのが経験則に合致する また,URL 先を訪れるか否かの選択は, 個々のインターネットユーザ ーにより異なるのであり,URLをクリックすることによってコンピュータウイルス等に感染するおそれがあることも考慮すれば, 個々のユーザーが安易にこれをクリックするとは考えられない これらを踏まえると, 本件投稿をした者は本件投稿において単にリンクを設定しただけに 2 すぎず, ユーザーが当該リンク部分をクリックすることで URL 先サイ トを開くことができるからといって, 当該リンク先の表現内容を本件投 7

稿の表現内容と認定することはできない よって, 本件投稿は原告の権利を侵害していない なお, 本件画像アップロード ( 甲 の4の投稿 ) においては, up@v pic( 省略 ) に対して, 本件画像を添付したメールが送信されたにすぎ ず, 事実上, いまだ本件画像のデータの所在 (URL) は公衆に対して 明らかにされていない そのため, 本件画像アップロード, すなわち, up@vpic( 省略 ) に宛てて本件画像を添付したメールを送信しただけでは, 自動的に, 公衆によって直接受信されることを目的とした送信を行える状況にあるとはいえず, 公衆送信権侵害に該当しない ( イ ) 本件画像アップロードと本件投稿では, 異なる IP アドレスが使用さ れていることは明らかであるところ, 原告の主張は, 同一人物が本件画像アップロードと本件投稿を行ったと考えられると主張するものであるが, そもそも異なるIPアドレスが利用されており, 本件画像アップロードと本件投稿の時間差が約 1 分存在する以上, 同一人物によってなさ 1 れたと考えるのが合理的であるとはいえない また, 万が一, 同一人物 であることが推認されたとしても, 本件投稿により原告に対する権利侵害が発生しているといえるかという点との関連性は明らかでない ( ウ ) 本件画像アップロードは公衆送信権侵害には当たらないから, 本件投稿が公衆送信権侵害の幇助に該当するとはいえない 仮に, 本件画像ア ップロードが公衆送信権侵害であると考える場合であっても, 本件投稿 が本件画像アップロードによる送信可能化, 自動公衆送信行為自体を容易にしたとはいい難い 特に, リンクは, コンテンツをシェアし拡散するためのインターネットにおける必要不可欠な技術であり, その社会的影響の大きさに鑑みれば, 安易に拡大的な解釈がされるべきではない 2 よって, 本件投稿が公衆送信権侵害の幇助であることは明らかではない (3) 争点 3( 同一性保持権侵害の成否 ) 8

( 原告の主張 ) 本件画像は, 本来別々の著作物である本件写真 1 及び2を合成して一つの写真にしたものであり, その結果, 本件写真 1 及び2にある原告の右太ももの内側に左の手のひらを添えた部分が切れて表示されていない よって, 本 件投稿は, 原告の同一性保持権を侵害 ( 幇助を含む ) する ( 被告の主張 ) 争う 第 3 争点に対する判断事案に鑑み, 本件投稿による本件写真 2に係る公衆送信権侵害の成否について 判断する 1 争点 1( 本件写真 2の著作物性の有無 ) 写真は, 被写体の選択 組合せ 配置, 構図 カメラアングルの設定, シャッターチャンスの捕捉, 被写体と光線との関係 ( 順光, 逆光, 斜光等 ), 陰影の付け方, 色彩の配合, 部分の強調 省略, 背景等の諸要素を総合してなる一 1 つの表現であり, そこに撮影者等の個性が何らかの形で表れていれば創作性が 認められ, 著作物に当たるというべきである これを本件についてみると, 本件写真 2は, 別紙写真目録 2 記載のとおりであるところ, フローリング上にスリッパを履いて真っすぐに伸ばした状態の両脚とテーブルの一部を主たる被写体とし, 大腿部の上方から足先に向けたアン グルで, 右斜め前方からの光を取り入れることで陰影を作り出すとともに脚の 一部を白っぽく見せ, また, 当該光線の白色と, テーブル, スリッパ及びショートパンツの白色とが組み合わさることで, 脚全体が白っぽくきれいに映るように撮影されたカラー写真であり, 被写体の選択 組合せ, 被写体と光線との関係, 陰影の付け方, 色彩の配合等の総合的な表現において, 撮影者の個性が 2 表れているものといえる 9

したがって, 本件写真 2は, 創作的表現として, 写真の著作物であると認められる これに反する被告の主張は採用できない 2 争点 2( 公衆送信権侵害の成否 ) (1) 本質的特徴を感得できるかについて 著作物の公衆送信権侵害が成立するためには, これに接する者が既存の著 作物の表現上の本質的な特徴を直接感得することができることを要する これを本件についてみると, 証拠 ( 甲 3の2,9) 及び弁論の全趣旨によれば, 本件画像には, 本件写真 2の下側の一部がほんの僅かに切り落とされているほかは, 本件写真 2がそのまま用いられていることが認められる そ して, 本件画像は, 解像度が低く, 本件写真と比較して全体的にぼやけたも のとなっているものの, 依然として, 上記 1で説示した, 本件写真 2の被写体の選択 組合せ, 被写体と光線との関係, 陰影の付け方, 色彩の配合等の総合的な表現の同一性が維持されていると認められる したがって, 本件画像は, これに接する者が, 本件写真 2の表現上の本質 1 的な特徴を直接感得することができるものであると認められる これに反す る被告の主張は採用できない (2) 本件画像アップロードと本件投稿の関係についてア前記前提事実 (3), 証拠 ( 甲 3,,6,11ないし13) 及び弁論の全趣旨によれば, 以下の事実が認められる ( ア ) たぬピク は, up@vpic( 省略 ) 宛てに画像を添付したメール を送信すると, 当該画像がインターネット上にアップロードされたUR Lが, 送信元のメールアドレス宛てに返信され, 当該 URLを第三者に送るなどして, 当該画像を第三者と共有することができるサービスである 2 ( イ ) 本件掲示板を含むたぬき掲示板 (2ch2( 省略 )) をスマートフォンで 表示する場合には, たぬピク により取得した, 画像の URL が投稿

されると, 当該 URLが表示されるのではなく, 当該 URLにアップロードされている画像自体が表示される仕組みとなっている これにより, 当該 URLをクリックしなくても, たぬき掲示板上において, 他の利用者と画像を共有することが可能となっている ( ウ ) 本件画像は, 平成 30 年 3 月 22 日午後 11 時 3 分 41 秒に, up @vpic( 省略 ) 宛てにメール送信され, 本件画像 URL 上にアップロードされた ( 本件画像アップロード ) ( エ ) 本件画像 URLは, 同日午後 11 時 4 分 46 秒に, 被告の提供するインターネット接続サービスを利用して, 本件掲示板に投稿された ( 本 件投稿 ) イ以上の事実関係を前提に, 本件投稿によって公衆送信権の侵害が成立するか検討する まず, 本件画像は, 前記ア ( ウ ) のとおり, 本件投稿に先立って, インターネット上にアップロードされているが, この段階では, 本件画像 URLは 1 up@vpic( 省略 ) にメールを送信した者しか知らない状態にあり, いま だ公衆によって受信され得るものとはなっていないため, 本件画像を up @vpic( 省略 ) 宛てにメール送信してアップロードする行為( 本件画像アップロード ) のみでは, 公衆送信権の侵害にはならないというべきである もっとも, 本件においては, 前記ア ( ウ ) 及び ( エ ) のとおり, メール送信に よる本件画像のアップロード行為 ( 本件画像アップロード ) と, 本件画像 URLを本件掲示板に投稿する行為 ( 本件投稿 ) が1 分 0 秒のうちに行われているところ, 本件画像 URLは本件画像をメール送信によりアップロードした者にしか返信されないという仕組み ( 前記ア ( ア )) を前提とすれば,1 分 0 秒というごく短時間のうちに無関係の第三者が当該 URLを 2 入手してこれを本件掲示板に書き込むといったことは想定し難いから, 本 件画像アップロードを行った者と本件投稿を行った者は同一人物であると 11

認めるのが相当である そして, 前記ア ( イ ) のとおり, 本件画像 URLが本件掲示板に投稿されることにより, 本件掲示板をスマートフォンで閲覧した者は, 本件画像 URL 上にアップロードされている本件画像を本件掲示板上で見ることができるようになる そうすると, 本件投稿自体は,UR L を書き込む行為にすぎないとしても, 本件投稿をした者は, 本件画像を アップロードし, そのURLを本件掲示板に書き込むことで, 本件画像のデータが公衆によって受信され得る状態にしたものであるから, これを全体としてみれば, 本件投稿により, 原告の本件写真 2に係る公衆送信権が侵害されたものということができる 以上の認定に反する被告の主張は採 用できない 3 小括以上からすれば, 本件投稿により, 原告の本件写真 2に係る著作権 ( 公衆送信権 ) が侵害されたことが明らかであると認められる また, 原告がかかる著作権侵害の不法行為による損害賠償請求権を行使するためには, 被告が保有す 1 る別紙発信者情報目録記載の情報が必要であると認められる 第 4 結論 よって, その余の点について判断するまでもなく, 原告の請求は理由があるか らこれを認容することとして, 主文のとおり判決する 東京地方裁判所民事第 47 部 裁判長裁判官沖中康人 2 裁判官奥俊彦 12

裁判官髙櫻慎平 13

( 別紙 ) 発信者情報目録 別紙投稿記事目録記載のアイ ピー アドレスを, 同目録記載の投稿日時に被告 から割り当てられていた契約者に関する以下の情報 1 氏名または名称 2 住所 以上 14

( 別紙 ) 投稿記事目録 スレッドタイトル :( 省略 ) 投稿記事番号 : 6 9 0 閲覧用 U RL:(URLは省略 ) 投稿日時 : 18/03/22 23: 4:46 アイ ピー アドレス : 126.7.186.3 1

( 別紙 ) 写真目録 1 16

( 別紙 ) 写真目録 2 17

( 別紙 ) 投稿画像目録 18