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図1 INA の主要な任務 2 種類のコレクションの収集と保存 有料 無料 商用アーカイブズ テレビ 650,000 1,350,000 時間 ina.fr. INAmédia 2006 年 4 月一般公開 10,000 時間 事業者向け ラジオ 700,000 テレビ ラジオの法定保管 テレビ 700,000 1,650,000 時間 ラジオ 950,000 INAthèque 研究者向け 1940 年以来 TV 放送開始 (1949) 以後の番組に加え それ以前のニュース映画も INA が著作者にかかる諸権利を保有 あらゆる種類の資料を所蔵 フィルム ビデオ 60% がオリジナル 原本 資料 大部分に劣化 退色の危機 は テレビ放送会社へサービスを提供する業 務 商用アーカイブの活用は INA 本体が 1995 年以来 1992 年 法律によって実施義務化 デジタル形式によるライブ 直接録画 録音 2005 年 TV48局 ラジオ17局 INAthèque は 商業的 権利を保有しない 学術研究者 調査目的専用 である つまり1995 年以後 フランス国内の殆どの 実施している この業務は 要求に応じて テレビおよびラジオ局は 全番組をINAthèque 保存資料を放送のために再利用することを目 に納入している それらの資料は2005 年にお 的とする これら 2 種類の業務 使命に応じ いて計 165 万時間を数えている ラジオ95 万時 て 法定納品テレビ ラジオ番組 と 商用 間 テレビ 70 万時間 また INAthèqueは アーカイブ という 2 つのコレクションを収 その納品義務法によって収集された資料の他 集 保存 活用することになる に 1995 年以前を対象とするINAの 商用アー INAthèque : 法定納品のアーカイブ カイブ 資料 後述 も使えるので 合計 300 万 1992 年 6 月 20 日に放送番組の納品義務 Le 時間以上のテレビ ラジオ番組を収集している Dépôt Légal de la télévision et de la Radio ただし 納品義務法に基づいて INA が保 に関する法律が制定され 1993 年 12 月 31 日 存した番組は 商業的な利用を禁じられてお 付で実施令が施行されたのを受けて INA り 新国立図書館内に置かれた INAthèque 内の主要部門である INAthèque は 国内で で研究目的に限定して公開されている 放送されるテレビ ラジオ番組をすべて記録 INA : 商用アーカイブ し それらを研究に役立てる業務を行ってい INA は 納品義務法が施行される 1995 年 る 納品義務法によって INAthèque へ納入 以前に放送された テレビ ラジオ番組の権 されているのは 利を持っている その資料は INA 所蔵資 1994 年 1 月 すべてのラジオ公共放送 料の商業的利用を目的としたインターネット 1995 年 1 月 国内すべてのテレビ放送 のデータバンク INAmédia で扱っている 2002 年 1 月 ケーブル TV と衛星放送の 番組 一部の商業放送のラジオ番組 1945 年以後 INAの事業者向けアーカイブ は 国営の無線ラジオ テレビチャンネルか 65
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番組を視聴できる利用者は 基本的に修士 レベル以上に限定されているが テレビと関 連する研究をしていれば 利用許可を与え られる 利用許可を得るためには 面接を 受ける 1995 年以来 利用許可を得た者は 1 万人以上に上る うち 8% は外国人の研究者 で 20% はパリ以外の地方から来た研究者等 である 2000 年から 2004 年までの 4 年間で JMB-Inathèque de France INAthèque の利用頻度は 2 倍に増加し 2000 INAthèque 利用の必要性について質問があ 年の 46,893 利用セッション 時間 が 2004 年 る この面接は同時に 新規の訪問者に対し には 98,405 利用セッションになった て INAthèque のシステムや利用方法の細部 図2 年以前の番組についてはすべてを閲覧可能で 人類学 1 科学 1 哲学 心理学 3 経済 経営 3 言語学 4 芸術 音楽 9 建築学 2 社会学 6 に注意を喚起するものである 例えば 1995 利用者の割合 記号学など 2 メディアコミュニケーション 23 フランス国立図書館のドキュメンタリストに 分野別の 利用者 歴史 20 オーディオビジュアル 映画 7 政治 法律 9 文学 11 よる面接である これは INAthèque が国立 図書館の中にあるために 許可を得た場合は 必要に応じて INAthèque 以外にも国立図書館 の資料を利用できるからである 教員 1 個人研究 4 研究員 11 放送業者 21 はないことを理解してもらう等 2 回目は 許 可 を 得 て 写 真 付 き ID カ ー ド を 受 職業別の 利用者 学生 63 け 取 れ ば や っ と 入 館 で き る が 初 め て INAthèque を訪ねた研究者の第一印象は 資 料のエルドラド に分け入った気持ちで 資 料の膨大さに圧倒されることになる 一度も INAthèque を訪ねる 使われたことのない数千件のソースを目前に 実際に INAthèque を訪ね 何が どのよう するのは 研究者にとって夢のような話であ に利用できるのか体験してみた INAthèque るのはいうまでもない 一方 選択できる資 の利用を申請するには まず 基本的に修士 料があまりにも多いので その選択は予想以 レベル以上であることと テレビやラジオ等 上に困難である 例えば 利用可能な所蔵資 メディアに関する具体的な研究プロジェクト 料には ばらつきがある 資料の分類が 各 を証明しなければならない 指導教官の推薦 時代で異なってきた経緯ゆえだ そのため 状などが必要 最終的には フランス国立 70 名も在籍するドキュメンタリストから 1 図書館を訪ねて 2 回の面接を受ける 1 回目 回目の利用時に細かい案内を受け その後も は INAthèque のドキュメンタリスト 資料 サポートを受けることができる 管理官 から 自分の研究プロジェクト趣旨と 1995 年以来すべてのラジオ テレビ放送番 69
組が コマーシャル 予告編 番組宣伝 番 MédiaCorpus ③番組の鑑賞と自動分析の 組内の広告場面等 やビデオクリップも含め ツール : Médiascope を使用できる INAthèqueのデータベースにある 各局のタ Hyperbaseは INAのデータベースを概観 イムテーブルなどの番組関連資料も保管され するためのソフトだ 資料の説明文に書かれ ている 全番組は放送から3 ヶ月以内にコピー た言葉に 検索する語が一致すれば 必要な して資料化され INAthèqueの所蔵品として 番組を選択できる 放送日時 局 タイトル キー 閲覧することができる データベースには 資 ワードだけではなく テーマや分野などでも細 料館で閲覧可能な文字資料もリストアップさ かくリサーチできる 横断検索も可能である れており 放送局から寄贈されたり 資料館 MédiaCorpusと呼ばれるソフトでは 研究対 が収集したモノグラフ 雑誌や書類等がある 象になる番組のコーパス Corpus コンピュー 視聴覚ワークステーション SLAV Station de Lecture Audiovisuelle タで検索可能な言語データの集積 を作って INAthèque内のパソコンで記録と保存ができ る これはSLAVの大きな特徴である 選んだ番組のコーパスのデータを元に 自動 的に計算 図表作成ができる機能も便利である Médiascope は 番組を分析するためのマ ルチメディア ツールだ 見たい番組を再生 JMB-Inathèque de France しながら その画面上に 番組全体のカット INAthèque が独自に開発した視聴覚ワー 割りとタイムコードが並ぶ 各カットやタイ クステーション SLAV を使えば INAthèque ムコードの長さも自由に選択できる 各カッ 法定納品資料 と INA 商業利用資料 の トの画像をクリックすれば 元データのフォー データベースを検索したり 番組を視聴する マットがデジタル CD-ROM DVD かアナ 他 番組を質量的に分析することもできる ログ VHS かを問わず 自由に閲覧できる INAthèque には 60 を超える SLAV がある また 分析したい場面の画像をイマジェット SLAV はマルチメディア調査分析システ ム で 1 台 の コ ン ピ ュ ー タ で 3 つ の 目 的 の イ ン タ ー フ ェ ー ス ① INA の デ ー タ ベ ー 小さなイメージ 形式に保存でき 同時にそ の右側に分析コメントを書くこともできる 番組は INAthèque の外へ持ち出せないが ス の 検 索 :Hyperbase ② 研 究 に 必 要 な 番 研究目的のイマジェットなら CD-R に保存し 組データの集積 コーパス の記録と管理 : て持ち出せる 適切な分量で 研究目標に合 図3 SLAV のマルチメディア調査分析システム ①Hyperbase INA のデータベースの検索 ②MédiaCorpus 研究に必要な番組データの集積 コーパス の記録と管理 ③Médiascope 番組の鑑賞と自動分析のツール 70 利用者フォルダ
図4 Médiascope の画面 番組のカット表 イマジェット 選択した映像 研究用のコメントを記入 再生バー うコーパスを作るのは INAthèque を訪れ る研究者にとって欠かせない作業である 図5 コーパスから自動的に計算 図表を作成 番組再生画面 パリの観光番組 INAthèque を支える技術の対応の柔軟さ INAthèque を 支 え る 技 術 シ ス テ ム で は プロ仕様ではなく 民生用 DVD 技術を使っ ている INAthèque 代表のジャン = ミッシェ ル ローズ Jean-Michel RHODES によれば この選択により 急激な技術発達への適応と コーパス INA における 情報番組 一部 管理システムのコストダウンに繋がったとい う ローズの話では 使いたい保存再生方式 素材ベース DVD など の値段が下がるタイ ミングに 簡単に切り替えられるよう心がけ ているそうだ 民生用技術フォーマットの選 択やコスト意識にもとづく柔軟な対応 資料 管理の専門家と共に技術系の専門家を参加さ せたシステムも INAthèque の実績に大き く貢献したと考えられる 利用に残る課題 元々 INA の資料は ラジオやテレビ業界 に携わる制作者向けに分類されていたが 1992 年以後は研究者や教員向けのサービス 年数とコーパスをクロスした図表 を取り入れた そこで 法定納品以前のバラ 71
バラの資料と法制定後の資料が 異なる層の うになったことから映像の理論的な研究が可 ように存在している システマティックに分 能となった テレビコンテンツ分析に必要な 類 管理されているのは 法定納品番組だけ 論理的な理念も作られてきた で 1995 年以前の番組のすべてが所蔵され 番組 ジャンル サブジャンルの多様性 ているわけではないので 1995 年以前の番 テレビ の形成過程における視聴者の役割 組を対象にした研究は 困難な場合もある テレビによる解説や教育の方法 法定納品 1995 年以降 と INA 資料 1995 などを個別の番組で確認し それらが明らか 年以前 という資料の基盤の不均一によって にするテレビ自体の特質を研究できるように 当然 研究者が混乱しうる なった また ドキュメンタリスト 資料管理官 が ②歴史的な研究 : 作成して資料に付してきた細かい註釈 番組の ド ゴール時代のテレビや 70 年代のテレ 紹介文 は 研究の大きな手がかりになるのだ ビ番組研究など 膨大な番組の映像資料を扱 が インデックスとしての表記法や それを資 えることで 歴史的な研究が可能になった 料の取り扱い時にどう用いるかは ドキュメン 歴史を専門とする研究者は INAthèque の タリストの間でも 意見が完全には一致してい 利用者の 20% を占め コミュニケーション ない場合がある ドキュメンタリストの判断で を専門にする研究者に続いて 2 番目に多い 資料の管理方法が変わることもある 残る課 特定テーマ 例えば女性 家族 移民族など 題を解決するために 今でもアトリエが開催さ から読み解く研究も行われている れ 実際に利用者に接した様々な分野の専門 ③番組ジャンルの研究 : 家とドキュメンタリストたちは 情報を取り扱 20 年程前に比べて ドラマ Dallas のシリー う手段をいかに構築していくかを議論し 常に ズなど やニュースだけでなく バラエティー システムの改良に努めている ゲーム リアリティー ショーなどを含むすべ また現在では パリの INAthèque でしか ての放送番組が研究対象とされるようになっ 閲覧できないことから 地方との格差が課題 た パリ第 3 大学において1995 年 音声や映 として残っている そのことから 2009 年を 像番組コンテンツを研究する研究所 CEISME 目標に INA は フランス全国の 6 ヶ所に新 Centre d'études sur les images et les sons センターを開設する予定である INAthèque とフランスの放送研究の発展 フランスにおけるテレビ ラジオの研究は médiatiques が 設 置され た が 今 年 のこの 図 6 INAthèque を利用したテレビに関する博士論文の数 INAthèque の設立によって大きく発展したと 190 いわれる ジョスト教授によると 過去 10 年 間の INAthèque の活動によって放送研究にも たらされた変化は 以下のようなものである ①テレビの理論的な研究 : 研究対象の大きなコーパスを分析できるよ 72 201 164 188 207 233 224 117 51 本 67 77 88 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 年
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