法 政 大 学 情 報 メディア 教 育 研 究 センター 研 究 報 告 Vol.6 01 年 7 htt://hdl.handle.net/10114/7184 完 全 固 体 の 熱 力 学 計 算 法 hermodynamics on Perfect Solid by Equation of State 片 岡 洋 右 山 田 祐 理 Yosuke Kataoka and Yuri Yamada 法 政 大 学 生 命 科 学 部 環 境 応 用 化 学 科 Equation of state on erfect solid is used to obtain thermodynamics roerties. Sublimation ressure, isothermal comressibility and exansion coefficient are studied by the equations of state. he results are comared with molecular dynamics simulations. Keywords: Equation of State on Perfect Solid, Sublimation Pressure, Exansion, isothermal comressibility, exansion coefficient, Molecular Dynamics 1. はじめに 固 体 を 理 想 化 した 完 全 固 体 の 状 態 方 程 式 に 基 づく 熱 力 学 量 の 計 算 方 法 を 具 体 的 に 示 す 式 は 複 雑 ではな いが 相 平 衡 点 を 決 めるときなどでは 非 線 形 の 方 程 式 をなるためここではエクセルのグラフを 用 いる 簡 単 な 方 法 を 示 した 情 報 メディア 教 育 研 究 センターの 研 究 報 告 ではエク セルファイルの 例 などが 添 付 される. 完 全 固 体 完 全 固 体 とは 固 体 を 次 のように 大 幅 に 単 純 化 し た 理 想 固 体 モデルである 状 態 方 程 式 を 簡 単 な 式 で 書 くことができる 特 徴 がある 次 のレナード ジョーンズ 関 数 [1]で 分 子 間 の 相 互 作 用 が 書 ける と 仮 定 する 1 6 ur () 4, r r (1) この 関 数 では 距 離 r が 次 の r0 において 最 小 値 -0 を 持 つ ur ( ) () 0 r () 1/6 0 固 体 で 最 も 重 要 なエネルギーは 最 近 接 分 子 間 の 相 互 作 用 エネルギーであるから この 値 を N 個 の 球 形 分 子 からなる FCC 結 晶 について 求 めると 次 のようになる ペアポテンシャルの 最 小 値 で 書 い ているので 0 K の 温 度 での 値 である 4 E (,0 ) V K 1 V 1, v. N v v N (4) ここで1 分 子 あたりの 体 積 v を 導 入 した また 結 晶 は 体 積 を 変 えるとき 一 様 に 膨 張 収 縮 すると 仮 定 している [] 内 部 エネルギー Uは 運 動 エネルギーEk の 平 均 値 を 加 えて 次 のように 得 られる ここで k はボルツ マン 定 数 である Ek Nk, (5) UV (, ) Nk E( V,0 K). (6) 完 全 固 体 の 圧 力 は 次 の 熱 力 学 的 状 態 方 程 式 [1]を 満 たすように 定 める U V V. (7) 圧 力 の 状 態 方 程 式 (EOS)は 次 のように 第 1 項 の 分 子 間 相 互 作 用 を 含 まない 完 全 気 体 項 と 温 度 に 依 存 しない 相 互 作 用 項 からなる 原 稿 受 付 01 年 月 日 発 行 01 年 7 月 6 日 Coyright 01 Hosei University
8 Nk E V,0 K V V V (, ). (8) V,0 K 6 Nk E Nk V V V,ext (, ), V (14) 以 上 の 式 (6)(8)で 定 義 される 状 態 方 程 式 を rimitive model と 呼 ぶ この 式 では 固 体 におけ るポテンシャルネエルギーE の 平 均 値 の 温 度 依 存 性 を 一 切 無 視 しているため ごく 低 温 でのみ 有 効 である そこで 次 のように 圧 力 のビリアル 項 []の 温 度 変 化 を 取 り 入 れる V Nk Virial, Virial Virial Virial (9) 1 Virial 0K 0 N ri fi. i ここで r は 分 子 i の 位 置 ベクトルであり fi は i 分 子 が 受 ける 力 である また<>は 熱 平 均 を 意 味 する 平 衡 位 置 からの 微 小 振 動 を 調 和 振 動 で 近 似 し このような 運 動 は 密 度 が / v 1において 実 現 することから 次 の 式 を 得 る [] V,0 K 6 Nk E Nk. V V V (10) さらにポテンシャルエネルギーの 平 均 値 につい て 次 のような 改 良 を 行 ったものが 拡 張 版 EOS (Equation of State)である つまり 固 体 の 密 度 が0に 近 づくと 気 体 に 漸 近 するように 気 体 の エネルギー E( v) と 固 体 のエネルギー Es( v) にそ 以 上 の EOS から 熱 力 学 の 通 常 の 計 算 [1,4]により 体 積 と 温 度 が 変 化 したときのエントロピー 変 化 を 計 算 できる それに 基 づいて 拡 張 EOS にお けるエントロピー は 次 のように 書 くことができ る [] V N k Sext Nkln 6 Nkln. (15) N V / k. 固 相 と 気 相 の 相 平 衡 上 の 状 態 方 程 式 は 固 相 部 分 と 気 相 部 分 を 持 つの で これらの 間 の 圧 力 と 化 学 ポテンシャル G/N が 釣 り 合 った 相 平 衡 を 与 える いま 熱 力 学 量 はす べて(V,)の 関 数 で 与 えられているので 温 度 を 選 んだ 後 次 の 式 を 満 たす 解 が 相 平 衡 点 を 与 え る ( V, ) ( V, ), G( V, )/ N G( V, )/ N. (16) s g s g この 計 算 をエクセルのワークシートを 用 いて 行 った 例 のファイルを 添 付 した [5] 得 られた 表 で 横 軸 に を 縦 軸 に G/N を 選 んで 散 布 図 を 描 くと 交 点 の 存 在 が 確 かめられる (Fig.1 参 照 ) 交 点 を 精 度 よく 求 めるためには 交 点 付 近 の 計 算 の 刻 みを 細 かく 選 ぶ 必 要 がある (Fig. 参 照 ) [5] れぞれ 重 み 関 数 w ( v), w ( v) をかけて 加 える s w( v) 1, ws v. v v 4 N E( v), Es( v) E( V,0 K). v 4 E (,0 ) V K 1 V 1, v. N v v N (11) (1) (1) Fig.1 G/N vs. lot E ( V,0 K) w V / N E ( V / N) w ( V / N) E ( V / N).,ext s s この 時 圧 力 は 次 の 式 で 与 えられる ビリアル 項 の 温 度 依 存 性 の 項 にも 固 体 の 重 み 関 数 がすでに 掛 けられている Fig. G/N vs. lot (details) Coyright 01 Hosei University 法 政 大 学 情 報 メディア 教 育 研 究 センター 研 究 報 告 Vol.6
9 4. 膨 張 率 などの 熱 力 学 量 5 圧 力 の 値 が 与 えられた 場 合 膨 張 率 は 次 の 式 で 定 義 される 量 である 1 V V (17) 状 態 方 程 式 が 与 えられているから ファンデルワ ールスの 式 のとき[4]と 同 様 に 膨 張 率 は 次 の 量 か ら 計 算 できる Nk 6 Nk V V V Nk E V,0 K *6 Nk V V V 等 温 圧 縮 率 も 次 の 量 から 計 算 できる (18) 先 の 状 態 方 程 式 は(V,)の 関 数 になっている 圧 力 が 与 えられた 時 の 体 積 を 求 める 方 法 の 一 つは エクセ ルのゴールシークを 利 用 する 方 法 である 使 用 する エクセルファイルの 例 としてゴールシーク 法.xlsm[8] を 添 付 する この 方 法 の 例 を Fig.4~Fig.6 に 示 した まずエクセルのオプション から 数 式 を 選 択 し 変 化 の 最 大 値 などを 指 定 する (Fig.4)つぎに 圧 力 の 計 算 式 が 入 っている AF 列 の セルを 指 定 する そのうえでデータメニューから Fig. 5 のようにゴールシークを 選 ぶ ゴールシーク の 中 では 目 標 の 圧 力 の 値 と 変 数 のセル(このワーク シートでは F 列 のセル)を 指 定 する V 1 E V,0 K Nk *6 Nk V V V (19) 1 V V (0) こうした 式 に 基 づいて 温 度 が 与 えられた 時 圧 力 などの 通 常 の 熱 力 学 量 を 体 積 の 巻 子 として 計 算 するワークシートの 例 を 添 付 ファイル v1.xlsm で 示 した [7] このワークシートの 結 果 の 例 を Fig. に 示 した この 図 では 臨 界 温 度 を 探 している = 1.6 /k は 臨 界 温 度 近 くであることが 分 かる エクセルのワークシートに 数 式 を 入 力 するとき 注 意 すべき 点 をあげる エクセルでは =-x^ と いう 数 式 は =(-x)^ と 評 価 される 数 学 の -x^ を 計 算 したかったら =(-1)*x^ のように 書 く Fig.4 Excel otion Fig.5 Goal seek Fig. Goal seek (details) Fig. vs. V/N lot. Coyright 01 Hosei University そのほかゴールシークを 使 用 するときは 変 数 の 初 期 値 を 適 切 に 選 ばなければならない 点 である 圧 力 の 値 を 与 えて 体 積 を 求 める 問 題 では 現 在 の 状 態 方 程 式 では 低 温 において 解 がつ 存 在 する 法 政 大 学 情 報 メディア 教 育 研 究 センター 研 究 報 告 Vol.6
10 からである もう 一 つは 添 付 ファイル (V,)=0.xlsm[9]のよう な 非 線 形 方 程 式 を 数 値 的 に 解 くプログラムを 利 用 するものである 分 法 で 解 く 例 が 示 されている このファイルの 使 用 方 法 も 別 ファイルで 示 される (V,)=0.df[10] Excel VBA によるプログラムに ついては 文 献 [11],[1]を 参 考 にした ここでは, = 0.001 と = 0.01 のとき の 結 果 を 示 す Fig. 7 には 体 積 V/N を 示 した Fig. 9 G/N vs. lot. 6 分 子 動 力 学 計 算 との 比 較 Fig. 7 V/N vs. lot at = 0.001 e/s. エントロピー S/N とギブズエネルギーG/N をそ れぞれ Fig. 7 と Fig. 8 に 示 した Fig.9 からそれ ぞれの 圧 力 のもとでの 固 相 と 気 相 が 熱 平 衡 とな る 温 度 を 読 み 取 ることができる その 温 度 は 圧 力 が 高 い 方 が 高 温 であることも 分 かる なお 固 相 のギブズエネルギー G が 温 度 とともに 増 加 する のは ここで 選 ばれているエントロピー S の 原 点 では 固 相 のエントロピー S が Fig.7 のように 負 の 値 をとるためである 状 態 方 程 式 の 結 果 と 分 子 動 力 学 シミュレーショ ンの 結 果 を 次 に 比 較 する 分 子 動 力 学 シミュレー ションにおけるはアルゴン 分 子 数 864, ステップ 数 は 100 万 アンサンブルは NP, カットオフ 距 離 は 基 本 セルの 辺 の 長 さである Materials Exlorer v4 を 使 用 した 初 めに = 0.001 / において 固 相 の 膨 張 率 を 示 す (Fig. 10 参 照 ) 圧 縮 率 の 計 算 は 分 子 動 力 学 法 では 加 圧 による 体 積 変 化 が 小 さいため 必 ずしも 容 易 ではない この 計 算 例 では 加 圧 前 の 圧 力 が = 0.001, 加 圧 後 の 圧 力 は = 0.18 である この 例 では 分 子 動 力 学 法 による 結 果 が 状 態 方 程 式 による 曲 線 の 付 近 に 分 布 しており 両 者 はお 互 いにほぼ 一 致 していると 見 られる この Fig. 10 から EOS による 膨 張 率 は 若 干 分 子 動 力 学 法 による 値 と 比 べて 若 干 小 さいものの 全 体 として 大 きさの 程 度 と 温 度 変 化 の 傾 向 は 良 く 対 応 していることが 分 かる 次 に Fig. 11 には 等 温 圧 縮 率 を 示 した Fig. 8 S/N vs. lot. Fig. 10 Exansion coefficient vs.. Coyright 01 Hosei University 法 政 大 学 情 報 メディア 教 育 研 究 センター 研 究 報 告 Vol.6
11 Fig. 11 Isothermal comressibility vs.. 本 研 究 は 情 報 メディア 教 育 研 究 センターの 研 究 プロジェクトとして 行 われた 参 考 文 献 [1] P. Atkins and J. de Paula, 千 原 秀 明 中 村 亘 男 訳, 物 理 化 学, 東 京 化 学 同 人, 009 [] Yosuke Kataoka and Yuri Yamada, J. Comut. Chem. Jn., Vol. 10, No.,. 98 104 (011) [] 岡 崎 進, コンピュータシミュレーションの 基 礎, 化 学 同 人, 000 [4] 片 岡 洋 右 山 田 祐 理 物 理 化 学 演 習 三 共 出 版, 011 [5] 相 平 衡 点.xlsx [6] 交 点 の 求 めかた.df [7] v1.xlsm [8] ゴールシーク 法.xlsm [9] (V,)=0.xlsm [10] (V,)=0.df [11] 佐 藤 寿 邦 佐 藤 洋 子 Excel VBA による 化 学 プログラミング, 培 風 館 00 [1] 寺 坂 宏 一 Excel/VBA 入 門 コロナ 社, 009 Coyright 01 Hosei University 法 政 大 学 情 報 メディア 教 育 研 究 センター 研 究 報 告 Vol.6
1 Coyright 01 Hosei University 法 政 大 学 情 報 メディア 教 育 研 究 センター 研 究 報 告 Vol.6