1989 年 8 月 24 日休 ) 発表 TEJTechnicaReportVo.13,o,39 PP.31 36,R M 89 12( 直 ug.1989) 波長多重によるハイビジョン 2 チャンネル光伝送 HDTV 2 Channe Optica Transmission wit.h Waveength MutiPex High 選抜高校野球生中継 Live broadcast of 層 Schoo Ba seba Championship 小山田公之前田幹夫山本真遠藤洋介 Ki 置 iyuki OY ム岡 ADA,Mikjo MAEDA, 匪 akoto YA 闘 AMeTO, Yosuke E 配 DO NHK 放送技術研究所 NHK Scienee and Technica Research Laboratories 1. はじめに ハ イビジ at ン は 次世代のテレ ビ として期待さ れており, その技術はすで に実用化の 段階に到 達してい る. NHK は, 昨年の ソ ウル オ リン ピ ックの中継な ど, 放送衛星 BS 2b を用い た 実穀放送を頻繁に行っ て きた 本年 6 月からは, 毎日 1 時間ずつ 定期的に 実験放送を行っ てい る. ス ポーッやコ ン サートなど各種イベ ン トをハ イビジョ ンで 生中継するために は, 中継現場に 可搬地球局を設置するか, あるいは中継現場か ら放送局までハ イ ビジョ ン信号を伝送しなけれ ばならない. 中継現場に可搬地球局を設置する に は, 様々な制約があるため, 起動性のある小 型の地球局の 開発も行われてい るが t 設置不可 能な場合もあ り, 放送局まで長距離伝送をしな ければならない こ とも多い, ハ イ ビジョ ン信号の畏距離伝送に は, マ イク ロ波を用いた FPU による伝送 [1 ] や, 通信 衛星による伝送, 光ファイバによる伝送が考え られる. FPU による伝送には, 現在は 42G Hz 帯を使用している ζ の周波数は, 降雨による減衰が大きく, 降雨時を考慮すると 10 数 km 以上の伝送には適さない 通信衛星によ る 伝送は, 海外からの伝送のように他の伝送手段が使用できない場合に用いられることが多い [ 2 ], 光ファイバによる伝送は, 数十 km 程度の伝送には最適であるが, その都度光ファイバを敷設することは経済性などから困難な点が多く漑設の光ファイバが使用できることが, 望ま しい. 本報告では, 本年 3, 4 月に行われた選抜高 校野球の生申継において行われたハイビジ n ン 信号の光ファイバ伝送について報告する 2. 実験放送の概要 第 61 回センバツ高校野球大会は 3 月 26 目から 4 月 5 日にわたり甲子園球場で開催された. 大会期間中は毎日 14 時から 1 時間 ( 最終日は 12 時 15 分から 3 時間半 ), 放送衛星 BS 2b を用いて実験放送を行った, この実験放送を行うにあたって, 各種の制約 から, 甲子園球場に可搬地球局を設置すること ができなかった, そのため, 甲子園球場で撮影 された映像及び音声は, 大阪市内にある NHK 大阪放送局 ( 以下 BK ) に伝送し, MUSE 信 号に変換した後, BK 内に設置した可搬地球局 により放送衛星 BS 2b を経由して全国に放 送した. この放送は, 全国 60 ヶ所の会場で受 信し展示を行っ た. さらに衛星放送の直接受信 以外に, 大阪市内の 4 ヶ所で展示を行うため, BK から各展示会場にハイビジョン信号を, 光 ファイバ FPU 同軸ケーブルなどを用いて 伝送した. また, 甲子園球場内に 2 ヶ所 その 周辺に 1 ヶ所の展示会場を設け, 同軸ケーブル と, 光ファイバにより信号を分配した, これら伝送系の概要を図 1 に示す. 31
3. 甲子園球場から BK への伝送甲子園球場から BK までの伝送には, 42G Hz 帯 FPU と光ファイバによる伝送の 2 種類 が候補として検討された. BK から展示会場に 信号を分配するために, できるだけ高品質な信 号が伝送できること, FPU を用いた場合には 降雨時を考慮すると 2 段中継しなければならな いことなどを考慮して, 最終的に光ファ イバ に よ る伝送を採用した. ハイビジョン信号を 光フ ァ イバ で伝送する場 合, 信号形式と しては, コ ン ポーネン ト信号, TC 信号, MUSE 信号が考えられるが, 甲子園球場から BK への伝送に用いる映像信号形 式としては, これらのうちで最も高画質の得ら れるコンポーネント信号 (Y /Pb /Pr ) を採用 した. コンポーネント信号を伝送する方法とし ては, ディジタル時分割多重 [8 ], アナログ周波数多重 [4 ], パルス変調 [5 ] による多重などがあるが, 今回は周波数多重を採用した, 音声信号については, 今回は 3 1 方式によ る 4 チャンネルステレオで中継を行ったため ( ただし, 衛星放送は 2 チャンネルステレオ ), 4 チャンネルの音声信号を伝送する必要があっ た. TC [ 信号を用いている現在の FPU では 4 チャンネル音声を伝送することはできない. 4. 光伝送装置の概要伝送に使用した光伝送装置は, FM 周波数多 重による光伝送装置である. この装置は, 昨年 のソウルオリンピックの生中継 [6 ] [7 ] や, 遠隔講義実験 [8 ] などで使用した実績がある. 以下に, その概要を示す. この光伝送装置は, 当初は放送局内用の伝送装置として開発されたものであり, ハイビジ n ンコンポーネント信号を 2 チャンネル伝送できる. 光ファイバは損失が小さく畏距離伝送しても伝送帯域が十分広いため, 長距離伝送にも使用可能である. 今回の実験ではこの装置を改修して使用した. 主な変更点は, 1 チャンネル伝 送にしたこと, および音声の FSK 搬送波を 2 波にして 4 チャンネルの音声伝送を可能にしたことである. 1 チャンネル伝送にすることにより光に対する変調度を増加させることができるためさらに長距離の伝送が可能になる, この装置の構成を図 2 に示す. 入力された 3 つ の コ ン ポーネン F 信号は, それぞれ異なる搬 送波周波数を用いて FM 変調する. また, 4 つ の音声信号は PCM 変換した後 2 テヤ ン ネルず つまとめて 並列 列変換しそれぞれ FSK 変 直 調する. これらの諸元を, 表 1, 2 に示す. こ れらの変調信号を図 8 のように周波数多重した 甲子園球場 光送信器 光ファイバ 光受信器 撃塾 スイッ チングセンタ MUSE ヱンコーダ ivhk 大阪放送局グ 展示会場 展示会場 展示会場 i i 大阪市内 4 ヶ所 Bs 直接受信 全国 6 ケ 所 図 1 ハイビジョン中縦と展示 32 一 N-Eectronic Library
のち, 半導体レーザを強度変調する. 表 1 映像信号の諸元 周波数多重した信号を伝送する場合に は, 伝 送系の非線形性による相互歪妨害が問題になる. 光飯送の場合には, E / 0 変換素子 ( 半導体レーザや発光ダイオード ) の直縁性が最も影響が 大きい. この装置では, 2 次の相互変調成分が 信号の帯域の隙間に落込み, 妨害とならないよ うに映像信号の搬送波周波数を設計した, 半導体レーザの出力光は, シングルモード光 ファイバを用いて伝送する, 半導体レーザの出 射端 t は光アイソ レータを挿入し, 戻り光によ る擾乱を防いでいる. 光受信器では, 受信した 光信号を電気信号に戻した後, 復調することに より映像信号と音声信号を得る この装置を用いて伝送した後の無評価 S / N の測定結果を図 4 に示す. 光送信器の出力を一 3dBm シ, ステムマージンを 2dB とする と, 無評価 S / N50dB 以上にするためには, コンポーネント Y PbPr 搬送波周波数 (MHz ) 40422699 周波数偏移 (MHz ) P P 48 1414 映像帯域 (MHz ) 24 8 8 FM 信号帯域. (MHz ) 96 3080 表 2 音声信号の諸元 音声信号帯域 30Hz 20kHz 最大入力レベル + 18dBm サンプリング周波数 48kHz 符号化 16 ビット直線 FSK 搬送波周波数 20, 40MHz ( 暫定値 ) 冖 α ] 軾 Z の 06 05 音声 Rw 膿 PR 映像信号 PB Y 40 一 20 10 受信光電力 [ dbm ] 0 88 ー 廿 20 4e 99 226 404 周玻数 [MHz1. 図 4 光伝送装置の無評価 SN 比 図 3 映像信号と音声信号の周波数配列 光送信器 一一 T u 一一一一一一一一一一 T 一一 nrrttn7tr 一一一一一一一一 em 一一 ] i 1 像音信声号信 号 1234 PCM PCM 一 {, 謳 変換器 変換器 亜亟ト璽墨一 器 { 唾 FSK FSK 変調器 変調器 E / 0 変 換 器 i 1 光フアイバ 蛭 甎 1 囓! 匡 1 翫 1 霍 一 Q / E 変 換 器 FM 復調器 謳 壷 i] 一が 唾司一 光受信器 一一一一一一冖 一一一一一一一一一一一一一 { ntt. 一一一一一 ml 一一一 Y FSK 復調器 PCM 変換器 L FSK 復調器 PCM 変換器 映 像 信 号 旨旨 : } 音 1 声 1 信 1 号 t 1 2 3i 4 [ L L. 一. 一一一 一._.t 一一一一 図 2 ハイビジョン光伝送装置の構成 33
伝送路損失は, 12. 5dB 以下でなければな らない, この様な条件の下で, 無評価 S / N50dB 以上の伝送が可能かどうか検討した. まず, 使 用する波長を 1. 3 μ m と仮定する. この波長 5. 光伝送系の回線設計と伝送実験 前章で述べた光伝送装置を用いて, 光伝送系の回線設計を行った. 伝送後の無評価 S / N5 0dB 以上を目標とし た. 甲子園球場から BK へ の伝送に使用した光フ ァイバは, シングルモー一ド光フ r イバであり, 甲子園球場 梅田駅閲は阪神電鉄沿いに敷設さ れたもの (16. 8km ), 梅田駅 BK 間は大メデ晦ィアポート (OMP ) によって敷設されたもの (7. Okm ) を使用した. 全長は 2 3. 8km である, での光ファイバの損失を 0. 5dB / km とす ると, 全長 28. 8km では損失が 11, 9d B であり, 合波器及び分波器の損失と合わせる と 16. 9dB となり, 前章で示したように無 評価 S / N50dB 以上の伝送はできない. そ こで, 光中継器を使用することとした, 光中継 器は, 受信した光信号を電気信号に戻して増幅 し, 再度光信号に変換する, 光中継器では, ベースパンド信号にまでは復調せず, FM 変調波 のまま増幅している. 光中継器は送受信点の中 間地点に設置するのが伝送特性上最適であるが, また, 生放送で あるため, 不測の事故に備え 今回の伝送では中間地点が阪神電鉄の光ファイ て独立に 2 系統の伝送を行う必要があったが, 光ファイバは 1 本しか使用できなかったため, 光伝送装置は 2 系統準備し, 1. 8 μ m および 1. 55 μ m の光を用いた波長多重伝送を行っ た. 波長多重を行うためには, 2 波長の光を合 成 分離するために合分波器が必要である. 今 回使用した合分波器の挿入損はそれぞれ 2. 5 db である. バの途中になってしまうため設置することがで きないため, 梅田駅構内に設置することとした, 以上の検討結果から, 甲子園球場から BK ま での光伝送の系統を図 5 のように決定した. こ の図の中の分波器のクロストークが大きいと, 周波数多重した伝送系相互の信号が干渉しビー ト妨害を発生する. そのためクロストークを減 少させるために, 分波器には光ヲィルタを併用 した. 表 3 各区間の光損失 表 4 中継受信点における C / N,S / N 波長甲子園一梅田駅梅田駅 大阪放送局 梅田駅 大阪放送局 1,3 μ m 8.8 4.2 1.55 μ m 7.5 3.4 単位 : 噛 db ( 合分波器の損失を除く ) C / N C /N S / N 1.8 μ m 36 32 50 5 1.55 μ m 38 84 51.2 単位 : db 甲子園球場中継地点 [ 梅田駅 ] 大阪放送局一胛一璽冒罰冒一齒幽一一一一一一一 1 i 臨光送信器光中継器 [ 光受信器匡聖.3 μ m 合分 雇.3 μ m 合分 1.3 μ m 31 波波 波波 光送信器 mi 器器光中継罌器 7.Okm 器光受信器 1.55 μ m ド 騾 L55 μ m 膃 1 鵬 1.55 μ 宣 n 一一 一曽一一一一一 膈 一一昌一藺一一 一 匹 1, 闇層暫一一一一一一卩駻 唱一 L 一 図 5 甲子園から大阪放送局までの光伝送の構成 34 N-Eectronic N E,. n c Library _ 峰 _
事前に行った伝送実験における光損失および FM 変調信号の C / N, 無評価 S / N の測定結果は, 表 3, 4 のとおりであった. 大会期間中, ハ光伝送装置は安定に動作し, d ビジョン実験放送を成功させることに貢献した. 6, おわりに ハイビジョンの放送, 特に生中継にはハイビ [7 ] 内海, 小山田, 前田, ソウルオリンピックハ イビジョン光伝送, NHK 技研 R & D,No.4,pp,25 31,1989 年 2 月. [8 ] 清水, ハイビジョン (HDTV ) によ るキャンパス問を結ぶ還隔講義の実験, 信学春季全大,S 且一 3 1,1989 年 3 月. ジョン信号の長距離伝送が要求される. 放送以 外の用途においても, 今後ハイビジ e ンの長距 離伝送に対する需. 要が増大するで あろう. 今回 の実験で, 光ファイバによる伝送が有用である こ とを実証した. 本年の夏の全国高校野球大会 でも今回の報告と同様な光伝送を行う予定であ る. 謝辞今回の光伝送にあたり, ご協力い ただい た大 阪放送局技術部をはじめ関係各位に深く感謝す る, 参考文献匚 1 ] 高野. 42GHz ハ帯イ ビジョン番組 申継用実験局,NHK 技研月報.VoL2 8,No.12,pp.468 473,1985 年 12 月. [2 コ星野, 松本, 田中, ソウルオリンピッ ク ハイビジョン衛星伝送実験,NHK 技 研 R & D,No.4, pp.17 24,1989 年 2 月. 匚 3 ] 小室, 辻野, 小松, 乙部, L2Gbps 高品位テレビ信号光ファイバ伝送シス テム, テレビ全大,17 7,1987 年 7 月. 匚 4 ] 前田 小山田 内海, 萬, 高品位 TV 局内 FM 多重光伝送, 信学技報,CS 85 124,1985 年 12 月. [5 ] 森倉, 久保, パルス周波数 幅変調による HDTV 信号光伝送方式の提案, 信 学会春全大.B 707.1983 年 3 月, [6 ] 小山田. 大野, 田中, 松本, ハイビジョン : 生中継および放送 展示,TV 学誌,Vo.43,No.2,pp.144 148,1989 年, 35
157 東京都世田谷区砧 1 10 11 NHK 放送技術研究所 (03 )415 5111 36