10−w›‚12„”“ƒ.ren

Similar documents
i


Wide Scanner TWAIN Source ユーザーズガイド

2. 栄養管理計画のすすめ方 給食施設における栄養管理計画は, 提供する食事を中心とした計画と, 対象者を中心とした計画があります 計画を進める際は, それぞれの施設の種類や目的に応じて,PDCA サイクルに基づき行うことが重要です 1. 食事を提供する対象者の特性の把握 ( 個人のアセスメントと栄

活用ガイド (ソフトウェア編)

o 2o 3o 3 1. I o 3. 1o 2o 31. I 3o PDF Adobe Reader 4o 2 1o I 2o 3o 4o 5o 6o 7o 2197/ o 1o 1 1o




...J QX

生活設計レジメ

44 4 I (1) ( ) (10 15 ) ( 17 ) ( 3 1 ) (2)

I II III 28 29


178 5 I 1 ( ) ( ) ( ) ( ) (1) ( 2 )


小学生のカルシウム摂取量に寄与する食品の検討 小学生のカルシウム摂取量に寄与する食品の検討 小川瑞己 1 佐藤文佳 1 村山伸子 1 * 目的 小学生のカルシウム摂取の実態を把握し 平日と休日のカルシウム摂取量に寄与する食品を検討する 方法 2013 年に新潟県内 3 小学校の小学 5 年生全数 3

ロペラミド塩酸塩カプセル 1mg TCK の生物学的同等性試験 バイオアベイラビリティの比較 辰巳化学株式会社 はじめにロペラミド塩酸塩は 腸管に選択的に作用して 腸管蠕動運動を抑制し また腸管内の水分 電解質の分泌を抑制して吸収を促進することにより下痢症に効果を示す止瀉剤である ロペミン カプセル


ii

<4D F736F F D CB48D655F94928D95445F90488E9690DB8EE68AEE8F802E646F63>

untitled

i

AccessflÌfl—−ÇŠš1

2

旗影会H29年度研究報告概要集.indb

日本スポーツ栄養研究誌 vol 目次 総説 原著 11 短報 19 実践報告 資料 45 抄録



Microsoft Word 栄マネ加算.doc

■リアルタイムPCR実践編

86 7 I ( 13 ) II ( )

2) エネルギー 栄養素の各食事からの摂取割合 (%) 学年 性別ごとに 平日 休日の各食事からのエネルギー 栄養素の摂取割合を記述した 休日は 平日よりも昼食からのエネルギー摂取割合が下がり (28~31% 程度 ) 朝食 夕食 間食からのエネルギー摂取割合が上昇した 特に間食からのエネルギー摂取


4 身体活動量カロリズム内に記憶されているデータを表計算ソフトに入力し, 身体活動量の分析を行った 身体活動量の測定結果から, 連続した 7 日間の平均, 学校に通っている平日平均, 学校が休みである土日平均について, 総エネルギー消費量, 活動エネルギー量, 歩数, エクササイズ量から分析を行った

untitled

入門ガイド

<4D F736F F F696E74202D C835B B E B8CDD8AB B83685D>

(3) 摂取する上での注意事項 ( 該当するものがあれば記載 ) 機能性関与成分と医薬品との相互作用に関する情報を国立健康 栄養研究所 健康食品 有効性 安全性データベース 城西大学食品 医薬品相互作用データベース CiNii Articles で検索しました その結果 検索した範囲内では 相互作用

SC-85X2取説


jphc_outcome_d_014.indd

食リ_表紙-表4.ai

2016.

第121回関東連合産科婦人科学会総会・学術集会 プログラム・抄録

表 5-1 機器 設備 説明変数のカテゴリースコア, 偏相関係数, 判別的中率 属性 カテゴリー カテゴリースコア レンジ 偏相関係数 性別 女性 男性 ~20 歳台 歳台 年齢 40 歳台


<82D282A982C1746F95F18D908F57967B95B E696E6464>

秋植え花壇の楽しみ方


untitled

第1部 一般的コメント

(1) (2) (3) (4) (5) 2.1 ( ) 2


untitled

表1票4.qx4

福祉行財政と福祉計画[第3版]

第1章 国民年金における無年金

10.Z I.v PDF.p

橡ミュラー列伝Ⅰ.PDF

PR映画-1

- 2 -


II III I ~ 2 ~

中堅中小企業向け秘密保持マニュアル



1 (1) (2)

Microsoft Word - 概要3.doc

研究目的 1. 電波ばく露による免疫細胞への影響に関する研究 我々の体には 恒常性を保つために 生体内に侵入した異物を生体外に排除する 免疫と呼ばれる防御システムが存在する 免疫力の低下は感染を引き起こしやすくなり 健康を損ないやすくなる そこで 2 10W/kgのSARで電波ばく露を行い 免疫細胞

DNA 抽出条件かき取った花粉 1~3 粒程度を 3 μl の抽出液 (10 mm Tris/HCl [ph8.0] 10 mm EDTA 0.01% SDS 0.2 mg/ml Proteinase K) に懸濁し 37 C 60 min そして 95 C 10 min の処理を行うことで DNA

リファレンス

II

これわかWord2010_第1部_ indd

パワポカバー入稿用.indd

これでわかるAccess2010

07.報文_及川ら-二校目.indd

松竹映画ファンド重要事項説明書

4.2 リスクリテラシーの修得 と受容との関 ( ) リスクリテラシーと 当該の科学技術に対する基礎知識と共に 科学技術のリスクやベネフィット あるいは受容の判断を適切に行う上で基本的に必要な思考方法を獲得している程度のこと GMOのリスクリテラシーは GMOの技術に関する基礎知識およびGMOのリス


平成18年版 男女共同参画白書

ÿþ

provider_020524_2.PDF

「産業上利用することができる発明」の審査の運用指針(案)

Microsoft Word - H30eqa麻疹風疹実施手順書(案)v13日付記載.docx

解析法

Microsoft Word _nakata_prev_med.doc

3. 安全性本治験において治験薬が投与された 48 例中 1 例 (14 件 ) に有害事象が認められた いずれの有害事象も治験薬との関連性は あり と判定されたが いずれも軽度 で処置の必要はなく 追跡検査で回復を確認した また 死亡 その他の重篤な有害事象が認められなか ったことから 安全性に問

シプロフロキサシン錠 100mg TCK の生物学的同等性試験 バイオアベイラビリティの比較 辰巳化学株式会社 はじめにシプロフロキサシン塩酸塩は グラム陽性菌 ( ブドウ球菌 レンサ球菌など ) や緑膿菌を含むグラム陰性菌 ( 大腸菌 肺炎球菌など ) に強い抗菌力を示すように広い抗菌スペクトルを

症例報告書の記入における注意点 1 必須ではない項目 データ 斜線を引くこと 未取得 / 未測定の項目 2 血圧平均値 小数点以下は切り捨てとする 3 治験薬服薬状況 前回来院 今回来院までの服薬状況を記載する服薬無しの場合は 1 日投与量を 0 錠 とし 0 錠となった日付を特定すること < 演習

10.Z I.v PDF.p

Microsoft Word - FMB_Text(PCR) _ver3.doc

PowerPoint プレゼンテーション


エクセルカバー入稿用.indd

博士論文 考え続ける義務感と反復思考の役割に注目した 診断横断的なメタ認知モデルの構築 ( 要約 ) 平成 30 年 3 月 広島大学大学院総合科学研究科 向井秀文

別紙様式 (Ⅴ)-1-3で補足説明している 掲載雑誌は 著者等との間に利益相反による問題が否定できる 最終製品に関する研究レビュー 機能性関与成分に関する研究レビュー ( サプリメント形状の加工食品の場合 ) 摂取量を踏まえた臨床試験で肯定的な結果が得られている ( その他加工食品及び生鮮食品の場合

計画研究 年度 定量的一塩基多型解析技術の開発と医療への応用 田平 知子 1) 久木田 洋児 2) 堀内 孝彦 3) 1) 九州大学生体防御医学研究所 林 健志 1) 2) 大阪府立成人病センター研究所 研究の目的と進め方 3) 九州大学病院 研究期間の成果 ポストシークエンシン

シトリン欠損症説明簡単患者用


Transcription:

学苑 生活科学紀要 No.842 36~4(2 2) 研究ノート 味盲と味覚受容体発現との関連 岡田友佳 高尾哲也 TheConnectionbetweenTasteBlindnessandExpressionofTasteReceptors YukaOKADA andtetsuyatakao Theauthorsexamined theassociation oftheexpression oftastereceptorsand taste blindness.subjectswere2femaleuniversity studentsaged 9 2.They weretested for whethertheycouldtastephenylthiocarbamide(ptc).fourstudents,or9% ofthesubjects, turnedouttohavetasteblindnesswhereptcisconcerned.thecelsintheirfoliatepapilae werescrapedbetweenmealsandweremeasuredbyrt-pcr(screpmethod).thepatternsof expressionshtas2rsandtr3whicharecorrelatedwithtasteblindnesswereexamined.on average,the4studentsexpressed 3.25varietiesoftastereceptors.Specificaly,3 students expressedhtas2r3 whichisanorphanreceptor.buttheydidnotexpresshtas2r38which isaptcreceptor.drawingonthesefactstheauthorssuggestthathtas2r3mightberelated tobittersubstanceswhichhtas2r38isalsorelatedto,andthatspecificalyhtas2r3might playanimportantroleforptcnon-tastersinrecognizingtoxicsubstanceswhicharebitter. Keywords:tasteblindness( 味盲 ),tastereceptors( 味覚受容体 ),RT-PCRmethod(RT-PCR 法 ), phenylthiocarbamide( フェニル チオ カルバミド ) I. はじめに 味盲 とは苦味を引き起こすフェニル チオ カルバミド ( 以下 PTC とする ) や 6-n- プロピルチオウラシル ( 以下 PROPとする ) などの苦味物質に対する低感受性のヒト集団のことである 味盲の性質を持つヒトを ( 低感受性の物質 ) ノンテイスター という たとえば,PTC の低感受性のものは PTC ノンテイスターといわれる PTC や PROPなどの味盲は,N-C=Sの構造を認識して苦味を認知する受容体である htas2r38 の SNPs により生じている ) htas2r38 は 4つの SNPs が報告されている htas2r38 を構成する 333 個のアミノ酸のうち 49 番目がプロリン (P) かアラニン (A),262 番目がアラニンかバリン (V), 296 番目がバリンかイソロイシン (I) であるかで, PTC の感受性が決定される 2) 49 262 296 番目が P,A,V の遺伝子を持つ場合,A,V,I の遺伝子に比べ PTC への感受性が高い P,A,V と P,A,V の遺伝子を持つ被験者は,PTC の感受性は高く, P,A,V と A,V,I の遺伝子を持つ被験者は PTC の感受性は中程度であり,A,V,I と A,V,I の遺伝子を持つ被験者は PTC の感受性は低い 3) と報告されている このように,hTAS2R38 に起因する味盲の遺伝子はメンデルの法則に従って遺伝される劣性遺伝子の つである また, 白色人種の約 3%, 日本人をはじめとする黄色人種の約 8~5% が PTC などの苦味に感受性が弱い 味盲 であるとされる 4) そこで,PTC テイスターの一部の種類の SNPs を元として設計された htas2r38 を 36

含む苦味の受容に関与する数種類の味覚受容体 (htas2rs) および TR3のプライマーを用いて, PTC ノンテイスターの被験者に対してその発現を測定する 加えて, 体格調査を行う これにより, PTC ノンテイスターの味覚受容体 htas2rsおよび TR3の発現性を明らかにすること, および PTC ノンテイスターであることによって身体的に特徴が現れるか否かを明らかにすることを目的とした II. 研究方法. 被験者本研究に同意を得た, 自覚的味覚異常の無い関東在住女子大学生 (9~2 歳 ) から被験者を募集し, 味盲検査で PTC ノンテイスターと判定された者を被験者とした 2. 実験方法 ) 味盲検査味盲検査薬として.3%PTC 水溶液 5) を使用した 検査は, 単一味覚での全口腔法を用いた 6) 対象者に無味 無臭であるミリ Q 水で口を十分にすすがせた後,.3%PTC 水溶液を口に含ませ, 溶液の味を被験者が確認した後に吐き出させた その後, 対象者に対して 溶液の味の有無 および 溶液の味の強さ を質問し, 口頭で回答を得た 回答で 無味 ならびに 苦味 味が弱い と回答した者を味盲と判断した 本研究で行った単一味覚のみの全口腔法による味覚検査は 5 味識別を行う全口腔法の味覚検査の精度と比べて劣ると考えられる しかし, 対象者が自覚的味覚異常の無い者であることと PTC 感受性の有無のみのスクリーニングの為に行う味覚検査であったことから, 単一味覚のみの全 口腔法による味覚検査を採用した 2)SCREP 法による味覚受容体発現の測定プラスチック製器具を用いて被験者のヒト舌上皮表層組織の葉状乳頭部を 3 回擦過し, 舌表層部組織を取得した 取得した組織は保存液を添加し-8 で保存した その後,totalRNA を取得し, 逆転写により cdna を調製した 7) この cdna をテンプレートとし, 苦味の味覚受容体である htas2r, 3,4,5,7,8,9,,3,4,6,38,39,4,42,43,44,45, 47,48,49,TR3の 3 および 5 端の約 2bp の配列, 加えてハウスキーピング遺伝子であるβ-actin をプライマーとしてサイクル数 35 回で PCR を行った 8) PCR 産物の測定はマイクロキャピラリー電気泳動法により行った また本研究を行うに当たり, 昭和女子大学の倫理委員会に研究実施要項を提出し許可を得た 3) 体格調査方法被験者の自己申告により身長および体重を得た この情報から肥満, やせの指標として肥満度 Body MassIndex(BMI, 体重 (Kg)/ 身長 (m) 2 ) を算出した III. 結果本実験の被験者の募集に応じたのは 2 名であった 味盲検査の結果,3 名が 無味 と回答し, 名が 苦味 味が弱い と回答した これにより, この 4 名を PTC ノンテイスターであると判断した この 4 名の PTC ノンテイスターを本研究の被験者とした 味盲検査の結果から, 対象者のうち 9% が PTC ノンテイスターであることが明らかになった 本研究の結果は先行研究で報告されている黄色人種の味盲の割合 8~5% 4) よりも若干, 多い割合の結果となった 表 : 味覚受容体発現結果 (4 人 ) htas2r htas2r3 3 htas2r4 htas2r5 htas2r7 htas2r8 htas2r9 htas2r htas2r3 htas2r4 htas2r6 2 htas2r38 htas2r39 htas2r4 htas2r42 htas2r43 htas2r44 htas2r45 htas2r47 htas2r48 htas2r49 TR3 2 β-actin 4 37

被験者の味覚受容体発現結果を表 に示した 最も味覚受容体発現総数を発現しているものは 5 種類で, 最も少ないものは 種類であった 平均は 3.25 種類であった ( 表 2) PTC の受容体である htas2r38 の発現を全ての被験者で認めなかった 4 人中 3 人の被験者で htas2r3の発現が認められた htas2r3 発現が認められなかったのは 苦味 味が弱い と回答した味盲者であった 表 2: 受容体発現の平均値および標準偏差値 表 3に被験者の体格を示した 被験者の体格の平均値は身長 6.±.58cm, 体重 47.5±.kg,BMI8.6±.44kg/m 2 であった 平成 8 年国民健康 栄養調査結果 9) の全国平均値は 9 歳で身長 6.3cm, 体重 52.kg である BMIは 5~9 歳で 2.74kg/m 2 を示すことから, 被験者の身長の平均値はほぼ全国平均と同水準であったが, 体重,BMIの平均値は全国平均よりもやや下回る結果となった IV. 考 察 等 ( 個 ) 平均最大最小標準偏差 3.25 5.7 表 3: 被験者の体格 (n=4) 平 均 最 大 最 小 標準偏差 身長 (cm) 6. 6. 59..58 体重 (kg) 47.5 48. 46.. BMI(kg/m 2 ) 8.6 9. 8..44 苦味はヒトが有害物質の摂取を避けるために機能している味特性である PTC ノンテイスターは, PTC ばかりでなく,hTAS2R38 が受容する N-C=S という構造を持たない, スルフォラファンなどのアブラナ科の野菜の苦味に対しても鈍感であるといわれる ) また, 西アフリカ地域でビターキャッサバを常食する人々の苦味受容体 htas2r6 の SNPs が他の地域の人々の苦味受容体 htas2r6 の SNPs と異なっている さらに, 彼らはビターキャッサバの苦味に対して鈍感である ビターキャ ッサバの常食は西アフリカ特有の食文化である その根底としてビターキャッサバに含まれる青酸配糖体をマラリアに対する抵抗性を高めるために積極的に摂取する必要がある そのため, 苦味を感じにくいという生存に不利な遺伝子がこの地域では優位に存在していると考えられている ) キャッサバを常食する人々の htas2r6 遺伝子のように PTC ノンテイスターの htas2r38 遺伝子もある種の苦味に対する感受性を低下させることによって, ヒトの生存にかかわるリスクを未然に回避するために存在しているのではないかと考えられる PTC および PROPの感受性はカフェイン, サッカリン, 塩酸キニーネなどの苦味物質の感受性との関連がある一方で, 同様に苦味を呈する物質である尿素の感受性とは関連していないことが示唆されている 2,3,4) また,PROPテイスターとノンテイスターとの間にカフェインなどを含む食品における嗜好の差はないという報告がある 5) 食品に多く含まれるカフェインや苦味物質として知られているキニーネなどはまだ受容体が明らかにされていない これらのことから,PTC ノンテイスターはヒトとして通常の食物を摂取するうえでは,PTC テイスターと大きな差異があるとは考えられない 本研究では,PTC を 無味 と回答した味盲者の全てで htas2r3が発現していた 先行研究から htas2r3は PTC テイスター, ノンテイスターが混在すると考えられる被験者の集団においても比較的発現率の高い受容体の つであることが推察できる 6,7) しかし,hTAS2R3のリガンドはまだ明らかにされていない PTC ノンテイスターは PTC テイスターよりも, ある種の苦味物質に感受性が低い そのため,PTC ノンテイスターは htas2r38 が関連する苦味物質のうち, 人体にとって利益がない有害物質を苦味として認知し, 摂取を避ける必要があると考えられる これらのことから htas2r3 は htas2r38 が関連する苦味物質の受容に関連があり, 特に PTC ノンテイスターにとって, 有害物質を苦味として認知する働きに重要な役割を果していると考えられる 従って,PTC ノンテイスター 38

での htas2r3 発現率が PTC テイスター, ノンテイスターが混在すると考えられる被験者の集団の発現率よりも高くなるのではないかと考えられた また,PTC ノンテイスターである被験者は BMI の平均値が 8.6kg/m 2 とやや低体重よりではあるが, 標準とされる値であった 先行研究において肥満者 (BMI 平均 24.8kg/m 2 ) も標準体重者 (BMI 平均 2.3kg/m 2 ) も同様の割合で PTC ノンテイスターが存在するということが明らかになっている 8) これらのことから PTC ノンテイスターであることによって体位などの身体的な特徴が現れることがないと推察される 以上を踏まえ, 今後は, さらに多くの PTC ノンテイスターの htas2r3をはじめとする味覚受容体の発現性を検討することにより, PTC ノンテイスターの発現性の特徴が明らかになると考えられる V. 要約本研究の被験者として応募した自覚的味覚異常の無い関東在住女子大学生 2 名 (9~2 歳 ) に対し, PTC 水溶液を使用した味盲検査を行った その結果, 全体の 9% である 4 名が PTC ノンテイスターであると判断した この被験者のヒト舌上皮表層組織を採取し,RT-PCR 法によって発現している味覚受容体 htas2rsの種類および TR3を測定した 4 名の味盲者の味覚受容体発現の種類数の平均は 3.25 種類であり,PTC の受容体である htas2r38 の発現を全ての被験者で認めなかった 被験者のち PTC 感受性が無い 3 名はリガンドが明らかにされていない htas2r3の発現が認められた また被験者の体格はほぼ全国平均値と近しい結果であった 以上のことから,hTAS2R3は htas2r38 が関連する苦味物質の受容に関連があり, 特に PTC ノンテイスターにとって, 有害物質を苦味として認知する働きに重要な役割を果していると考えられた さらに PTC ノンテイスターであることによって体位などの身体的な特徴が現れることがないと推察された VI. 参考文献 ) WoodingS.,KimU.,BamshadM.,etal.:Natural selectionandmolecularevolutioninptc,abitter-tastereceptorgene.am.j.hum.genet.74. pp637 646(24) 2) Bufe B.Breslin, P.A., Kuhn C., etal.: The molecularbasisofindividualdiferenceinphenylthiocarbamide and propylthiouracilbitterness perception.curr.biol.5.pp322 327(25) 3) KimU.K.,JorgensonE.,CoonH.,etal.:Positionalcloningofthehumanquantitativetrait locusunderlyingtastesensitivitytophenylthiocarbamide.science299.pp22 225(23) 4) Kameswaran L., Gopalakrishnan S., et al.: PhenylthiocarbamideandnaringintastethresholdinSouthIndianmedicalstudents.Ind.J. Pharmac.6.pp34 4(974) 5) 日本フードスペシャリスト協会編 :[ 新版 ] 食品の官能評価 鑑別演習. 建帛社 (24) 6) 神田裕子 : 地域高齢者の塩味の味覚閾値と関連要因に関する研究. 杏林医会誌 vol.32no.pp7 83 (2) 7) ChomczynskiP.,and SacchiN.:Single-step methodofrna isolationbyacidguanidinium thiocyanate-phenol-chloroformextraction.anal. Biochem.62pp56 59(987) 8) 高尾恭一, 日臺智明, 小池文彦, 高尾哲也, 須賀比奈子 : 新規な味覚異常検査法. 特願 24 9383 (24) 9) 健康 栄養情報研究会編 : 平成 8 年厚生労働省国民健康 栄養調査報告より, 国民健康 栄養の現状. 第一出版 (29) ) 阿部啓子, 山本隆, ほか : 食と味覚. 建帛社 (28) ) Soranzo N.,Bufe B.,SabetiP.C.: Positive selectiononahigh-sensitivityaleleofthehuman bitter-tastereceptortas2r6.curr.biol.5. pp257 265(25) 2) ReedD.R.,etal.:Localizationofa genefor bitter-tasteperception tohumanchromosome 5p5.Am.J.Hum.Genet.64.pp478 48(999) 3) Bartoshuk LM.:Thebiologicalbasisoffood perceptionandfoodacceptance.foodqualitiy andpreference4.pp2 32(993) 39

4) DrewnowskiA.,Henderson SA.,etal.:Taste responses tonaringin,a flavonoid,and the acceptanceofgrapefruitjuicearerelated to geneticsensitivityto6-n-propylthiouracil.am. J.Clin.Nutr.66.pp39 397(997) 5) LyA.,andDrewnowskiA.:PROP(6-n-propylthiouraciltasting and sensory responses to cafeine,sucrose,neohesperidindihydrochalcone, andchocolate.chem.senses.26.pp4 47(2) 6) 岡田友佳, 青木三恵子, ほか : 食物摂取状況と味覚受容体発現の関連性. 日本味と匂学会誌 vol.6 No.3pp45 48(29) 7) 高尾哲也, 岡田友佳, ほか :htas2rs 発現性に係わる食品摂取因子の解析. 日本味と匂学会誌 vol. 6No.3pp49 422(29) 8) 江上いすず, 長谷川昇, ほか : 肥満傾向の女子学生のライフスタイルについて ( 第 報 ) 食生活の型との関連性. 名古屋文理短期大学紀要 vol.8pp 85 9(993) ( おかだ ゆか 生活機構研究科客員研究員 ) ( たかお てつや 健康デザイン学科 ) 4