2019年3月決算発表 豊田社長挨拶

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ANNUAL REPORT

社会的責任に関する円卓会議の役割と協働プロジェクト 1. 役割 本円卓会議の役割は 安全 安心で持続可能な経済社会を実現するために 多様な担い手が様々な課題を 協働の力 で解決するための協働戦略を策定し その実現に向けて行動することにあります この役割を果たすために 現在 以下の担い手の代表等が参加

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会社案内 2015

いわての 仕事を 大解剖 未 来 を つ くる 岩 手 県 の 仕 事 を 理 解 し よ う 岩手県の仕事といっても 漠 然としてイメージがわきにくい という人も多いはず そこで皆さんの素 朴な疑 問を通して 県がどんな仕事をしているのか ちょっとのぞいてみましょう 県は岩手県全体の未来のため 幅

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未来に引き寄せる 1998年秋 大田区のアパートの一室から インフォテリアの冒険は始まった そこで2つの机を並べた二人は 現CEO平野洋一郎 そして現CTO 研究開発本部長 北原淑行だった ソフトウェアを自由にするために ソフトウェアで世界を目指すために 二人の両翼でいまのインフォテリアを築き上げた

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人材育成 に関するご意見 1) 独立行政法人情報通信研究機構富永構成員 1 ページ 2) KDDI 株式会社嶋谷構成員 8 ページ 資料 7-2-1

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. 次世代決済プラットフォームの構築 ネット決済 No. の GMO ペイメントゲートウェイ株式会社と 三井住友カード株式会社を中心としてリアル決済 No. のSMBCグループが 次世代決済プラットフォームの構築に向けた協議を開始 SMBCグループとしては新たな領域への参入となり 事業者にトータルな

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「dカーシェア」、“カーシェア時代におけるクルマの使い方”意識調査を実施


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挨拶 本協会会長 稲野和利

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茨城県におけるアグリビジネスの可能性の考察と提言


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社是 経営理念 長期ビジョン Ⅱ. 新中期経営計画 innovate on 2019 just move on! の概要 社是 人の和と創意で社会に貢献 経営理念 1. 最高の品質創りを重点に社業の発展を図り社会に奉仕する 2. 全員の創意を発揮し顧客のニーズに対応した特色ある技術を開発する 3.

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~この方法で政策形成能力のレベルアップが図れます~

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夢と希望に満ちた 輝かしい明日の イノベーション実現へ Innovation for 明日 with 夢と希望 YK Inoas Co.Ltd. 株式会社YKイノアスは 総合化学メーカーである電気化学工業株式会 社 東証第一部上場 グループの中核商社として 2016年 平成28年 に は創業100年

5. 政治経済学部 ( 政治行政学科 経済経営学科 ) (1) 学部学科の特色政治経済学部は 政治 経済の各分野を広く俯瞰し 各分野における豊かな専門的知識 理論に裏打ちされた実学的 実践的視点を育成する ことを教育の目標としており 政治 経済の各分野を広く見渡す視点 そして 実践につながる知識理論

市報むさしの平成25年1月1日号

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BULL20

News Release

個人投資家向け会社説明会_リコー_190309

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5. 単元指導目標単元の目標 ( 子どもに事前に知らせる ) 三角形を辺や角に目をつけて分類整理して それぞれの性質を見つけよう 二等辺三角形や正三角形のかき方やつくり方を知ろう 二等辺三角形や正三角形の角を比べよう 子どもに事前に知らせる どうまとめるのか 何を ( どこを ) どうするのか (

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2019年トレンド予測 自動車領域

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1. 狙い グローバルな産業構造や競争環境 競争ルールが大きく変化している中で グローバルに産業形成を主導していく事業戦略が求められており そのために知的財産や標準化の新たな戦略的活用が求められています 本研修プログラムでは それらの事業や知的財産における新しい潮流を様々な視点 ケースを通じて学びな

平成 23 年度パソコン研修会アンケート 1. 年齢 A.10 代 ( 0 ) B.20 代 ( 6 ) C.30 代 ( 11 ) D.40 代 ( 13 ) E.50 代 ( 13 ) F.60 代 ( 1 ) E.50 代 30% D.40 代 29% F.60 代 2% B.20 代 14%

により 都市の魅力や付加価値の向上を図り もって持続可能なグローバル都 市形成に寄与することを目的とする活動を 総合的 戦略的に展開すること とする (2) シティマネジメントの目標とする姿中野駅周辺や西武新宿線沿線のまちづくりという将来に向けた大規模プロジェクトの推進 並びに産業振興 都市観光 地

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2013年3月○○日

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TO STOCKHOLDERS VALUE CREATION ~ 新たな価値創造 ~ 代表取締役社長 おおつきむねのり大朏宗徳 株主の皆様におかれましては ますますご清栄のこととお慶び申し上げます 平素は格別のご高配を賜り 厚く御礼申し上げます 29 年度は 年度後半にやや景気回復の兆しは見られまし

職業人のエッセンス 24S 良い仕事をするためのチェックポイント プログラム 指導案 指導用教材 テキスト 配布資料

経営理念 宇宙と空を活かし 安全で豊かな社会を実現します 私たちは 先導的な技術開発を行い 幅広い英知と共に生み出した成果を 人類社会に展開します 宇宙航空研究開発を通して社会への新たな価値提供のために JAXAは 2003年10月の発足以来 宇宙航空分野の基礎研究から開発 利用に至るまで一貫して行

お台場オープニング(HP版)

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最初に あなたの働く目的は何ですか? という質問をしたところ 20~50 代のすべての年代において 生活 家族のため と答えた人が最も多かった その割合は 20 代が 63.6% 30 代が 74.0% 40 代が 83.8% 50 代が 82.5% だった また 全年代共通で 第 2 位が 自由に

第174期 中間株主通信

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JICA 事業評価ガイドライン ( 第 2 版 ) 独立行政法人国際協力機構 評価部 2014 年 5 月 1

企業ネットワークによる地球温暖化に関する政策提言についてのアンケート

TOP MESSAGE VALUE CREATION 株主の皆様には 平素より多大なるご支援を賜わり 厚く お礼を申し上げます 当社は 1946 年に創業し おかげさまで今年 70 周年を 迎えました 音楽を愛する創業者の想いを引き継ぎ VALUE CREATION を経営理念に掲げ いい音 で音楽

中小企業支援ツール 中小企業支援ツール は 金融機関における中小企業支援の一助となることを目的に 自社製品開発などにより下請脱却に取り組んだものづくり中小企業の知財活用を調査 分析し 経営 事業上の課題を事業ライフステージごとに整理するとともに その課題解決に向け 知財活用の観点から考えられるアクシ

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しかし 2017 年には GE トヨタ等の製造会社 金融機関 エクソンを除く石 油会社は世界のトップ企業から消え 代わりに IT 関連企業である アップル アル ファベット マイクロソフト フェイスブック テンセント アリババといった IT 企業が世界のトップ企業に躍進しています (2) 変化の原因

受益者の皆様へ 平成 28 年 2 月 15 日 弊社投資信託の基準価額の下落について 平素より弊社投資信託をご愛顧賜り 厚くお礼申しあげます さて 先週末 2 月 12 日 ( 金 ) 以下のファンドの基準価額が 前営業日の基準価額に対して 5% 以上下落しており その要因につきましてご報告いたし

わたしたち は です ごあいさつ 静清信用金庫の概要 平成28年3月31日現在 所在地 会 長 加藤 誠 理事長 佐藤 徳則 平素は私ども静清信用金庫をご愛顧いただき 厚く御礼申し上げます 本 年も せいしん の経 営 方 針 や 活 動 内 容を取り纏めた せいしん DISCLOSURE2016

「いい夫婦の日」アンケート結果 2014

小次郎講師のトレーダーズバイブル第33回.pages

しかし児童生徒の多くは 税は 自分たちの生活に必要なもの とは思っていません まずはその否定的なイメージを払拭して 税は 自分たちのためにあり 自分たちで支えていくもの ということを理解してもらいましょう 税金の身近な使途 税金の使い道を 身近なところから知ってもらいましょう このほか 国際協力 や

資料4-4 新しい時代の教育や地方創生の実現に向けた学校と地域の連携・協働の在り方と今後の推進方策について 審議のまとめ(参考資料)

年 3 月期計数目標 売上高 7,500 億円営業利益 750 億円営業利益率 10% 以上 ROE10% 以上 4 資本政策 ( 株主還元策 ) 安定的な配当額として DOE2% をベースに 総還元性向 50% 以上を目標に株主還元を実施する 当社は 株主の皆様への利益還元を経営の重

新入社員フォローアップ研修|基本プログラム|ANAビジネスソリューション

B I損保の火災保険について 従来のパッケージ型の火災保険 必要のない 補償も含まれ ている 火災 落雷 破裂 爆発 補償は 手厚いけど 保険料が 盗難 風災 雹 災 雪災 水濡れ等 費用保険金 風災 雹 災 雪災 盗難 水災 3 水濡れ等 たとえば スリムプラン 商品の構成 B I 損保の火災保険

(Microsoft PowerPoint - \201y\222\371\220\ \201z\220A\227\3215\222e\203\214\203|\201[\203g.ppt)

ロジックモデル作成ガイド

包括的アライアンスに係る基本合意書の締結について

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Transcription:

2019 年 5 月 8 日 トヨタ自動車株式会社 2019 年 3 月決算発表豊田社長挨拶 お待たせいたしました 豊田でございます 本日はお忙しい中 ご足労いただき 誠にありがとうございます まず 本年も 私どものクルマをご愛顧いただきました世界中のお客様 そして 一人ひとりのお客様へ笑顔をお届けするためにご尽力いただきました 販売店 仕入先の皆様に 深く感謝申し上げます また 日頃よりトヨタを支えていただいております 株主の皆様やビジネスパートナーの皆様をはじめとする 全てのステークホルダーの皆様に 厚く御礼申し上げます 平成が終わり 令和の時代が始まりました 私が社長に就任したのが平成 21 年 6 月ですので 平成の最後の 10 年間を 社長として トヨタの経営の舵取りをさせていただいたことになります 最初の 3 年間は リーマン ショック後の赤字転落 米国に端を発した大規模リコール問題 東日本大震災 タイの大洪水など危機対応に明け暮れた期間だったと思います 大変辛い時期ではありましたが 多くの危機に直面して 会社としての一体感 求心力が高まった時期でもあったと思います 私自身で言えば 急成長しても急降下すれば 多くのステークホルダーの方々にご迷惑をおかけする ということを痛感いたしました 1

どんなに経営環境が悪化したとしても むしろ 悪化した時ほど 年輪を刻むように着実に 成長し続ける会社 にならなければならない そのためには とにかく競争力をつけなければならない 持続的成長 と 競争力強化 この2つを心に誓い 脳裏に刻み込んだのが この時期でした 次の 3 年間は 意志ある踊り場 と表現した期間です 一旦立ち止まってでも トヨタ生産方式 TPSに根付いた競争力のある生産現場を実現する TNGAをベースに競争力のある もっといいクルマづくり を実現する 未来に飛躍するために トヨタがもともと持っていた強み トヨタらしさ に磨きをかける期間にしたかったのですが 充分にはできなかったというのが 私の自己評価です この 3 年間で痛感したことは 平時における改革 の難しさです 直近の 4 年間は トヨタらしさ を取り戻すことと未来に向けてトヨタをモデルチェンジすることの両方に同時に取り組んだ期間と言えると思います トヨタの真骨頂である TPS と 原価の作り込み の再強化を掲げ 生産現場のみならず 事務職場や技術職場でも ムダ ムラ ムリ の徹底的な排除に取り組んでおります いつも申し上げていることですが 100 年に一度 と言われる大変革の時代 変化することが求められる時代だからこそ ブレない軸 変えてはいけないことを明確にしておくことが必要だと思っております そして そのブレない軸こそが TPS と 原価を作り込む力 だと思うのです 2

この 10 年間 トヨタの経営の舵取りをしていく中で また 大変革期に突入したとの認識を持つ中で トヨタを モビリティカンパニー にフルモデルチェンジすることこそが 私の使命であるとの想いに至りました モビリティカンパニー とは モノづくりを中心に モビリティに関わるあらゆるサービスを提供する会社です これまでの自動車産業は 確立されたビジネスモデルの中で 成長を続けてまいりました たくさんの自動車会社がありますが 各ブランドは差別化されていて それぞれのお客様がいらっしゃる 魅力的な新型車を出せば お客様が買い替えてくださる 買い替えられたクルマは中古車となり そこでも市場が存在する クルマを買っていただいた後も 保険やメンテナンスなどのバリューチェーンが確立している 非常に良くできたビジネスモデルだと思います しかし 今 CASE と呼ばれる技術革新によって クルマの概念そのものが変わろうとしております これからのクルマは 情報によって 町とつながり 人々の暮らしを支えるあらゆるサービスと繋がることによって 社会システムの一部になります それは これまでのビジネスモデルそのものが壊れる可能性があるということを意味しているのです CASE によって クルマの概念が変われば 3

私たちのビジネスモデルも変えていかなければなりません しかし 変えてはいけないもの むしろ磨き続けていくべきものもあると思います まずは 磨き続けていくものについて申し上げます 私は これから先 どんなにクルマが進化したとしても決して変わらないものがあると思っております それは クルマは リアルの世界 で使われるということです 私たちは 1 台のコンセプトカーをつくってきたのではありません 100 万台規模で量産し 一度 世に送り出した製品は 10 年後も 20 年後も 安全で 安心して使い続けていただける リアルの世界 を作ってまいりました これは 決して 簡単なことではありません この リアルの世界 で培ってきた私たちの競争力は 大きくまとめると3つあると考えております 一つ目は TPS に基づくモノづくりの力 です 先ほども申し上げましたとおり これこそが トヨタグループのすべての競争力のベースであり 今後も磨き続けていくべき ブレない軸といえます TPSには 改善後は改善前 という言葉があります 常に 今よりも もっと良いやり方がある と考え どんどんやり方を変えていく 当然 失敗することもたくさんありますが 失敗の中から学び さらに良いやり方につなげていく 4

私は イノベーションはどこからか突然訪れるものではなく インプルーブメントが呼び込むものだと考えております この改善の力こそが これまでも そして これからも私たちの持続的成長を支える競争力の源泉だと思うのです そして この モノづくりの力 を グループの視点で強化していく取り組みが ホーム & アウェイ という戦略になります TPS という共通言語をもつグループ企業だからこそ実現できる モノづくりの力 があると思っております 二つ目は 世界中に張り巡らされた ネットワークの力 です トヨタ車およびレクサス車の販売拠点数は レンタリース店もあわせると日本国内に 6000 拠点 全世界では約 1 万 6000 拠点にのぼります また 私たちには グループ会社や仕入先などの巨大なサプライチェーンもあります これらのネットワークが 自動車の製造 販売だけでなく 新たなサービスにも活用していくことができれば 私たちの未来は大きく広がります これからは お客様との接点となる ラストワンマイル が勝負を分ける時代です クルマだけでなく 住宅やコネクティッド事業を自前で持っていることも私たちの大きなアドバンテージになると思っております 三つ目が 保有の力 です トヨタ車とレクサス車の全世界の年間販売台数は 950 万台ですが 5

全世界の保有台数は 1 億台以上にのぼります そこには トヨタという企業に対する信頼があると思います 豊田喜一郎による創業から 80 年以上 お客様に向き合い続け お客様と築き上げてきた信頼関係があるからこそ 実現できる世界があると思っております これから新しいモビリティやサービスを提供していく上で トヨタを信頼してくださるお客様が世界中にいらっしゃることこそが 何にも替えがたい私たちの財産です こうした3つの力は モノづくりの世界で闘ってきた私たちが持つ 一朝一夕ではつくれない リアルの力 です この リアルの力 を磨き続けることが トヨタオリジナルの競争力を高めることにもなると考えております 次に CASE の時代にあわせて変えていくべきものについて 特に CASE の中の E 電動化 を例に ビジネスモデルの転換について 説明させていただきます これまでの私たちは 燃料電池自動車 (FCV) でも 電気自動車 (EV) でも ガソリン車と同じように完成車として販売店に卸し 販売店を通じて 個人のお客様にお届けするという形にとらわれていたように思います 確かに ハイブリッドカーまでは このビジネスモデルは有効だったと思いますが 新たなインフラを必要とする FCV や EV では通用しないかもしれません FCV や EV の導入を進めるにあたり 改めて 私たちがやらなければならないことは何なのか 6

ということを自問自答いたしました そして 原点に立ち戻って 出した答えが 普及 です 環境技術は普及しなければ地球環境改善に役立つことはできません そう考えた時に これまでとは違う発想が必要になります 乗用車や個人向けにこだわらず 商用車や官公庁 法人から広げていく 単独開発にこだわらず 仲間と共同で開発する 特許を囲い込むのではなく 開放して仲間を増やす クルマだけではなく 使い方とセットでシステムを売る つまり これまでの発想を転換し より幅広く よりオープンに より良い社会への貢献を追求することが 新しいビジネスモデルにつながるのではないかと考えているのです これから先は 人々の暮らしを支える全てのモノ サービスが情報でつながっていく時代に入ってまいります 私たちのビジネスを考える上でも クルマ単体ではなく クルマを含めた町全体 社会全体という大きな視野で考えること すなわち コネクティッド シティ という発想が必要となります コネクティッド シティ においては 競争と協調 特に 協調 の精神が重要になってくると思います 7

世の中に目を向けますと 保護主義的な考え方が広がっております 資源のない日本が単独では生きていくことができないように 私たち企業も単独では生きていくことはできません そのことを身にしみて理解しているのは 日本という国であり 日本で生まれ育ったグローバル企業なのかもしれません これからは 仲間づくり がキーワードになります 従来のような資本の論理で傘下におさめるという考え方では本当の意味での仲間はつくれないと思います どんな未来を創りたいのか という目的を共有し お互いの強みを認め合い お互いの競争力を高め合いながら 協調していくことが求められると思っております 私たちトヨタで言えば 地球環境に優しく 交通事故のない社会 全ての人が自由に楽しく移動できる Fun to Drive な社会の実現を目指してまいります 私たちが求める未来は トヨタだけでは創ることができません だからこそ 志を同じくする仲間を広く求めていくのです グループ会社はもちろん 他の自動車メーカーとの連携 コネクティッド シティ を支えるあらゆるモノ サービスを提供する仲間との連携を強化していきたいと思います こうした取り組みを進める中で 私たちが目指す モビリティカンパニー としてのビジネスモデル 8

モビリティサービス プラットフォーマー への道が拓けてくると考えております これまで いろいろと申し上げてまいりましたが 大変革の時代は 何が正解かわからない時代でもあります とにかく良いと思ったことはやってみる 間違っているとわかれば 引き返して 別の道をさがす やってみながら考える ということが重要だと思っております 成功体験をもった大企業をフルモデルチェンジするということは 本当に時間のかかることだと思いますが 過去の成功モデルに頼っていては 未来はありません めまぐるしく変わる環境に対応しながらも 中長期的な視野にたって ブレない軸をもって 変革への取り組みを進めてまいります 私たちの未来にご期待いただくとともに 引き続き 皆様方のご支援をよろしくお願い申し上げます ありがとうございました 以 上 9