2009.10.19 第 9 回 GCOE 合 同 ゼミ 於 語 学 研 究 所 (419) 初 心 者 のための 太 陽 コーパス 概 説 ( 入 門 編 ) 東 京 外 国 語 大 学 大 学 院 博 士 後 期 課 程 佐 藤 佑 (you@satoyou.net) 1. 太 陽 コーパス って 何? 博 文 館 より 1895( 明 治 28) 年 ~1928( 昭 和 3) 年 まで 発 行 された 総 合 雑 誌 太 陽 をデ ータベース 化 したコーパス 計 5 年 (1895 1901 1909 1917 1925 1 ) 60 冊 分 ( 増 刊 号 を 除 く 各 年 12 冊 分 )がデータ 化 されている 収 録 データは 記 事 総 数 3408 述 べ 14451642 文 字 分 に 上 る データは 構 造 化 テキスト(XML 形 式 )で 収 録 されている 形 態 素 解 析 品 詞 などによる タグ 付 けは 行 われていないが 年 次 号 数 をはじめ 執 筆 者 名 ジャンルなどの 項 目 が 設 定 されているため それらを 元 に 検 索 結 果 から 原 文 を 参 照 したり それらの 情 報 によって 検 索 結 果 をソートしたりといった 使 い 方 が 可 能 である 2. 何 に 役 立 つの? 太 陽 は 多 様 な 執 筆 者 による 様 々なジャンルの 記 事 が 収 録 されている 総 合 雑 誌 であ り 当 時 の 日 本 語 を 代 表 する 資 料 として 非 常 に 有 用 である 太 陽 コーパス を 用 いることで 明 治 中 期 から 昭 和 初 期 にかけての 言 語 使 用 言 語 変 化 の 実 態 について 簡 単 に 大 量 のデータを 得 て 分 析 することができる ただし 数 年 ずつの 区 切 りで 年 単 位 のデータ 化 がされている(つまり 空 白 の 期 間 の 方 が 長 い)ため 真 に 漸 次 的 な 変 化 を 捉 える 上 で 万 全 とは 言 いがたい 部 分 もあるかもしれない なお 言 うまでもないがすべて 戦 前 のデータであり また 文 語 の 記 事 も 少 なからず 含 まれ るため 利 用 に 際 しては 旧 仮 名 遣 いや 旧 字 体 文 語 の 用 語 法 といった 問 題 を 常 に 念 頭 に 置 く 必 要 がある なお 本 稿 で 紹 介 するツールのうち 2 種 について 不 具 合 の 修 正 が 行 われている 致 命 的 な 問 題 に 直 結 するケースは 多 くないと 思 われるが ひまわり については 太 陽 コーパ ス ホームページ ( 後 述 するインデックスページよりリンクあり)> 太 陽 コーパス 付 属 ソフトウェアの 不 具 合 修 正 について にアクセスの 上 適 用 することを 推 奨 する 2 3. どうやって 使 うの?( 検 索 編 : ひまわり たんぽぽ の 使 い 方 ) XML 検 索 ツール(CD-ROM に 収 録 )を 用 いる 以 下 ツール 2 種 について 概 説 する 1 創 刊 年 および 1901 年 を 始 点 に 8 年 間 隔 の 計 4 年 分 である 2 プリズム も 修 正 ファイルが 配 布 されているが 発 表 者 の 環 境 で 適 用 したところエラーが 出 るように なった 必 ずしもプログラムに 問 題 があるとは 限 らないが 修 正 箇 所 は 本 稿 の 範 囲 で 問 題 にならない 部 分 であり 当 面 は 必 要 ないものと 判 断 した 1
3.1. ひまわり 特 徴 複 雑 な 正 規 表 現 の 類 を 用 いない 基 本 的 な 検 索 に 向 く 太 陽 コーパス の XML に 合 わ せて 設 計 されており 動 作 も 比 較 的 軽 快 通 常 は 全 文 (60 冊 分 すべて)が 対 象 になってい るが フィルタ 機 能 により 一 部 のみ 検 索 を 行 うことも 可 能 である( 後 述 ) 起 動 の 仕 方 CD-ROMをドライブに 挿 入 すると 自 動 的 にブラウザが 立 ち 上 がり 太 陽 コーパス のイ ンデックスページが 表 示 される 同 ページの CD-ROMの 内 容 > Himawari/ をクリ ックして Himawari フォルダの 中 身 を 表 示 し himawari.exe をダブルクリックして 起 動 する 3 利 用 方 法 本 文 ルビ(rt) 完 全 一 致 ルビ(rt) 部 分 一 致 4 のいずれかを 選 び 検 索 条 件 を 入 力 して 検 索 ボタンをクリックする ルビ は 完 全 一 致 で あそ とすると 遊 (ば/び/ぶ ) などしかヒットしな いが 部 分 一 致 にすると 遊 (あそば)した 彼 所 (あそこ) などもヒットする と いった 使 い 方 が 可 能 である ルビ 機 能 を 活 用 すると たとえば ひとり( 一 人 / 独 り) の 用 例 を 集 める 際 單 獨 = ひとり のような 当 て 字 熟 字 訓 の 例 も 漏 らさず 採 ることが 可 能 になる ただし 音 が 一 字 ずつに 分 割 できるような 場 合 二 字 以 上 の 熟 語 はルビで 検 索 たんどく できない(たとえば たんどく でルビ 検 索 をしても 單 獨 の 例 は 單 獨 が 各 々 別 個 にタグ 付 けされているため 採 れない) このような 例 を 漏 れのないように 集 めるには 後 述 (3.2.)する たんぽぽ を 使 う 必 要 がある 本 文 は 実 際 の 表 記 5で 検 索 する 場 合 に 選 択 する 表 記 当 て 字 の 問 題 が 気 になる 場 合 はまず ルビ で 検 索 し 当 時 の 表 記 として 考 えられるものをリストアップした 上 で 本 文 を 検 索 する という 流 れが 比 較 的 確 実 である 前 文 脈 後 文 脈 は 通 常 では 10 文 字 ずつしか 取 られず 文 の 流 れを 追 うのには 不 十 分 なこ とが 多 いので 検 索 オプション タブ 前 後 文 脈 長 で 適 宜 調 節 する 必 要 がある 1 年 分 ずつ 検 索 するなど 対 象 とする 範 囲 を 何 らかの 形 で 限 定 したい 場 合 は フィルタ タブをクリックして 各 項 目 を 設 定 する 雑 誌 名 6 年 号 題 名 著 者 位 置 7 欄 名 ジャンル 文 体 話 者 種 別 8 原 文 9 の 各 項 目 で 絞 り 込 みが 可 能 である 3 以 下 ファイルの 拡 張 子 は 表 示 する 設 定 になっているものとする( 設 定 方 法 は 中 山 編 2009:80 など 参 照 ) 4 ただし ルビ については 初 期 の 記 事 を 中 心 に 付 けられていないものが 少 なくないので 注 意 が 必 要 であ る 傾 向 として 1910 年 代 までは 小 説 が 総 ルビ 一 部 ジャンルの 記 事 がパラルビ( 一 部 のみにルビ 付 加 ) であるが それ 以 降 は 一 部 の 例 外 を 除 いてほぼ 総 ルビである( 国 立 国 語 研 究 所 編 2005:7) 5 ただし 本 文 データにおいて 誤 字 脱 字 などは 修 正 されている 詳 しくは 4.3.で 扱 う 6 太 陽 コーパス のみを 用 いる 限 りは 問 題 にならない 7 XMLファイル 全 体 の 中 でどのファイルのどの 位 置 であるかを 示 す 値 で 後 述 する プリズム における 行 番 号 と 同 義 である 8 引 用 や 小 説 の 会 話 文 など 本 文 の 筆 者 とは 異 なる 人 の 発 言 談 話 などの 場 合 話 者 ( 誰 によるものか) 2
検 索 結 果 は デフォルトでは 年 次 > 号 > 位 置 の 順 でソートされているが( 画 像 1) 項 目 名 をクリックすることでソートし 直 すことが 可 能 である( 画 像 2) 検 索 結 果 画 面 で 前 文 脈 ~ 題 名 および 位 置 欄 名 文 体 の 該 当 箇 所 をダブルクリックするとウェブ ブラウザで 本 文 データが 表 示 され 用 例 の 掲 出 のされ 方 を 個 別 に 確 認 することができる また 著 者 ジャンル の 該 当 箇 所 をダブルクリックすると それぞれの 概 略 がポップ アップで 表 示 される( 著 者 であれば 生 没 年 など) 検 索 終 了 後 テキストファイルとして 名 前 を 付 けて 保 存 できる ファイル 内 では 前 文 脈 キー 後 文 脈 雑 誌 名 年 次 号 記 事 タイトル 著 者 名 位 置 欄 名 ジャン ルの 順 でタブ 区 切 りがされている このテキストファイルを 開 き 全 選 択 コピーして Excel に 貼 り 付 けるとデータの 整 理 がしやすい 備 考 検 索 には [] ( 半 角 大 括 弧 )の 文 字 セット 指 定 のみ 正 規 表 現 が 利 用 可 能 で 文 字 範 囲 指 定 は 不 可 である 具 体 的 には 動 詞 學 ぶ の 用 例 を 検 索 したい 場 合 學 [ばびぶべん] であれば 問 題 ないが 學 [ば-べん] とすると 正 常 に 機 能 しない したがって たとえば 何 でもいいから 平 仮 名 一 文 字 何 でもいいから 漢 字 一 文 字 といった 検 索 には 用 いにくい(そ うした 検 索 を 行 う 必 要 がある 場 合 後 述 する たんぽぽ を 利 用 する 方 が 現 実 的 である) なお ^ による 除 外 も 無 効 である 新 字 体 で 入 力 した 漢 字 は 字 体 変 換 ボタンをクリックすることで 旧 字 体 に 一 括 変 換 で きる( 例 : 学 學 ) 10 さらに 本 文 に 用 いられうる 異 体 字 が 複 数 存 在 する 場 合 は [] で 括 ってすべてを 対 象 に 含 めるように 変 換 してくれるが 検 索 条 件 にも [] を 用 いている 場 合 は [] が 重 複 しないように 注 意 する 必 要 がある 検 索 キー 以 外 に 前 文 脈 の 末 尾 および 後 文 脈 の 冒 頭 の 文 字 列 を 指 定 できる たとえば 名 詞 の 用 例 を 取 る 場 合 で 前 文 脈 に の と 入 れれば ノ 格 名 詞 の 修 飾 を 受 ける 例 (た だし 直 前 に 現 れるものに 限 る 11 )を 絞 り 込 むことができる なお 全 データを 一 括 して 検 索 できることが ひまわり の 利 点 であるが あまりにヒ ット 数 が 多 い(メモリに 結 果 を 格 納 しきれなくなる)とエラーになる 可 能 性 がある した がって あまり 文 字 数 の 少 ない 一 度 に 膨 大 にヒットすることが 予 測 されるような 条 件 指 定 は 極 力 避 けた 方 が 無 難 である 種 別 ( 引 用 か 会 話 文 かなど)が 示 される 9 検 索 キー 内 に 誤 字 脱 字 等 のエラーがある 場 合 のみ 原 文 ママの 表 記 が 付 記 される 外 字 が 含 まれる 場 合 については 特 に 注 記 はされない 10 太 陽 コーパス には 専 用 の 字 体 変 換 辞 書 が 収 録 されている JISX0208 1997 に 異 体 字 が 存 在 すると されるもののうち 太 陽 コーパス の 範 囲 内 で 等 価 な 字 体 と 認 められるもの( 等 価 字 体 )とそうでないも の( 参 考 字 体 )の 2 種 が 指 定 可 能 である デフォルトの 設 定 であれば 前 者 のみ 使 用 するようになっており 通 常 これを 変 更 する 必 要 はない 11 たとえばキーを 友 情 前 文 脈 を の とした 場 合 篤 き 男 の 友 情 はヒットするが 男 の 篤 き 友 情 はヒットしない このように 語 と 語 の 共 起 関 係 をくまなく 見 るような 目 的 には 向 かないことが 多 い 3
3.2. たんぽぽ 特 徴 正 規 表 現 を 駆 使 して 柔 軟 な 検 索 条 件 指 定 が 行 えるが Grep 方 式 で 検 索 に 時 間 がかかる 特 に 全 データを 一 括 して 検 索 しようとするとフリーズする 可 能 性 が 大 なので 数 号 分 ずつ 分 けて 行 うことを 推 奨 する 起 動 の 仕 方 太 陽 コーパス のインデックスページから XML ファイルを 直 接 利 用 するためのア プリケーション > XML/Tanpopo.hta をクリックして 起 動 する 利 用 方 法 メイン 画 面 ( 画 像 3)で 検 索 条 件 を 入 力 し 検 索 対 象 とする 号 のチェックボックスにチェ ックを 入 れて 12 検 索 ボタンをクリックする 検 索 対 象 を ルビなしテキスト ルビを 開 いたテキスト ルビ 入 りテキスト から 選 択 できる 文 字 列 のみで 検 索 する 場 合 は ルビなしテキスト ルビを 対 象 に 検 索 したい 場 合 は ルビを 開 いたテキスト を 選 択 する 13 後 者 を 活 用 すれば たとえば たんどく で たんどく 検 索 することで 3.1.で 問 題 となった 單 獨 の 例 も 漏 らさず 採 ることができる ひまわり の 場 合 たとえば まま のような 同 じ 字 の 繰 り 返 される 語 形 を 検 索 する 場 合 踊 り 字 (ゝ ヽ )を 考 慮 に 入 れないと 大 量 の 取 りこぼしが 出 ることになるが た んぽぽ では 画 面 右 下 の 踊 り 字 を 開 く ボックスにチェックを 入 れることで まま で 検 索 すれば まま まゝ まヽ の 例 を 一 括 して 収 集 することが 可 能 になる 14 検 索 結 果 画 面 ( 画 像 4)の 右 上 にある 結 果 をコピー ボタンをクリックすると 情 報 ( 本 文 収 録 号 位 置 欄 名 記 事 タイトル 著 者 名 文 語 / 口 語 ジャンルおよび 小 説 の 会 話 文 や 引 用 の 箇 所 は 引 用 種 別 : 話 者 )がタブ 区 切 りされた 状 態 で 検 索 結 果 がクリップボ ードに 保 存 される Excel を 開 いて 貼 り 付 け を 行 うと 簡 単 にデータを 保 存 できる 備 考 ほとんどの 正 規 表 現 が 利 用 可 能 である(ただし 半 角 の 丸 括 弧 () は 不 可 ) メイン 画 面 にある 正 規 表 現 について ボタンをクリックすると 詳 しい 説 明 が 読 める Grepにおける 正 規 表 現 については 中 山 編 (2009) 第 8 章 なども 参 照 のこと なお 太 陽 コーパス で 使 われている 漢 字 は [ 一 - 龠 15] で 網 羅 できる 検 索 条 件 の 漢 字 表 記 については ひまわり と 同 様 ワンクリックで 字 体 変 換 が 可 12 右 にある 全 号 ボタンをクリックすると その 年 の 12 号 分 に 一 括 してチェックを 入 れることができ るが 動 作 の 安 定 上 推 奨 できない 13 ルビ 入 りテキスト を 指 定 すると たとえば 一 寸 通 りますよ のような 例 にルビが 振 られていた 場 合 一 寸 [ちよつと] 通 [とお]りますよ のように 本 文 中 にルビを 挿 入 したテキストが 検 索 対 象 となる すなわち 本 文 がルビの 振 られる 語 ごとに 分 割 された 形 になってしまい たとえば 一 寸 通 という 文 字 列 で 検 索 しても 上 記 の 例 はヒットしないことになる 14 なお くの 字 点 については 公 式 に 説 明 がなされていないが 太 陽 コーパス では たまたま であれ ば たま~~ というように ~~ で 代 用 されているようである はるばる など 連 濁 する 場 合 は ~ 15 音 は ヤク Shif-JIS(16 進 )でEA9E 4
能 である ただし [] で 複 数 の 字 体 が 指 定 された 場 合 は やはり 他 の 正 規 表 現 に 干 渉 し ないよう 工 夫 する 必 要 がある 柔 軟 で 有 用 な 機 能 が 多 い 反 面 外 字 の 扱 いに 関 しては 少 々 弱 いという 欠 点 がある 具 体 的 には ひまわり のように 外 字 を 別 字 体 に 変 換 してくれないため 利 用 方 法 の 項 で 述 べた 方 法 だと 検 索 結 果 に 含 まれる 外 字 はすべて で 表 示 されてしまう 対 処 法 と して 結 果 の 画 面 をドラッグして 選 択 してコピーし Excel などに 貼 り 付 けるとルビや 外 字 ( 画 像 ファイル)を 保 ったまま 保 存 することが 可 能 であるが 必 要 に 応 じて 出 典 情 報 その 他 をセル 分 けする 等 の 編 集 を 強 いられ 少 なからず 負 担 になる 以 上 で 紹 介 したように これら 2 種 のツールはそれぞれに 一 長 一 短 であり 必 要 に 応 じ て 使 い 分 ける また 2 種 をうまく 連 携 させて 用 いることが 肝 要 になる 4. どうやって 使 うの?( 発 展 編 : プリズム の 便 利 な 機 能 ) 上 述 の 2 ツールどちらを 利 用 しても 得 られた 用 例 は 掲 載 号 記 事 名 などの 情 報 と 併 せ て 保 存 することができる したがって 必 要 に 応 じて 本 文 を 参 照 することが 容 易 になる 本 節 では 閲 覧 変 換 ツール プリズム を 使 った 本 文 データの 参 照 方 法 およびその 応 用 について 概 説 する 4.1. 本 文 を 直 接 閲 覧 するには? 本 文 を 参 照 する 場 合 有 用 なのが 閲 覧 ツール プリズム である たんぽぽ と 同 じく XML ファイルを 直 接 利 用 するためのアプリケーション 下 部 の XML/Prism.hta をク リックして 起 動 し 使 用 する 本 文 を 直 接 開 きたい 場 合 DHTML または シンプルなHTML のいずれかを 選 択 す る 前 者 のほうが 利 便 性 その 他 において 優 れているため 今 回 は 前 者 に 絞 って 解 説 する 16 表 示 したい 号 数 をクリックした 後 位 置 情 報 ( 行 番 号 )の 要 否 に 応 じて DHTML( 行 番 号 ) DHTML のいずれかを 選 択 し 変 換 (ブラウザで 表 示 ) のボタンをクリックす ると ブラウザが 立 ち 上 がり まずは 目 次 が 表 示 される( 画 像 6) 記 事 タイトルの 上 にあ る 開 く ボタンをクリックすると 記 事 毎 に 閲 覧 することができる( 画 像 7) 4.2. JIS 外 字 を 確 認 するには? 太 陽 コーパス の XML ファイルでは 原 典 に JIS( 第 一 第 二 水 準 ) 外 の 字 が 含 まれ ていた 場 合 同 範 囲 内 の 他 の 字 で 補 える 場 合 はそれに 置 き 換 えられている(A)が それで も 間 に 合 わない 場 合 は 特 殊 なタグ 付 けがなされる(B) 検 索 範 囲 に(A)(B)のパターン の 文 字 が 含 まれていた 場 合 各 ツールの 検 索 結 果 画 面 では 画 像 ファイルで 補 われるが テ 16 後 者 については 本 文 中 に 外 字 が 表 示 されない(したがって 4.2.で 述 べる 外 字 一 覧 を 別 途 表 示 するな どの 手 間 がかかることがある)など 不 便 な 点 が 多 い 5
キストファイルなどにペーストすると(A)は 置 換 可 能 な 字 に (B)は に それぞれ 置 換 されてしまう( ひまわり 利 用 時 たんぽぽ の 場 合 はどちらも に 置 換 ) これらが 元 々どういう 字 であったのかを 個 別 に 確 認 したい 場 合 は プリズム で 外 字 一 覧 HTML を 表 示 すると 便 利 である コード 順 出 現 順 が 選 択 できるが 通 常 であれば 後 者 の 方 が 便 利 であろう(なお 表 示 までの 流 れは DHTML の 場 合 と 同 様 なので 割 愛 する) 4.3. 原 典 のエラーを 追 うには? 太 陽 の 特 に 初 期 の 号 には 濁 点 の 脱 落 誤 字 などの 問 題 が 少 なくないが( 田 中 小 木 曽 2000) 検 索 時 にはそれらが 修 正 された 状 態 のデータが 対 象 になる そうしたエラー 箇 所 が 原 文 でどのようになっていたかはタグに 明 記 されており DHTML 上 でも 確 認 できる( 該 当 箇 所 が 青 字 で 表 示 されており カーソルを 合 わせると 画 像 8 のようにポップアップで 表 示 される)が やはり 検 索 結 果 を 保 存 したテキスト エクセルのファイル 上 では 視 認 でき なくなってしまう 17 こうしたエラー 箇 所 だけを 一 覧 したい 場 合 は 注 情 報 HTML を 表 示 することで 可 能 になる 4.4. その 他 の 情 報 を 一 覧 するには? 引 用 や 会 話 文 など 本 文 (ないし 地 の 文 ) 以 外 の 発 言 発 話 の 箇 所 は ひまわり た んぽぽ いずれのツールを 用 いても 検 索 結 果 のデータに 明 示 される これらの 情 報 のみを 抽 出 する 必 要 はあまりないかもしれないが 他 の 情 報 と 同 様 に プリズム を 使 って 一 覧 することも 可 能 である( 引 用 情 報 HTML) また 各 号 に 収 録 された 記 事 の 内 訳 については 基 本 的 に DHTML 上 の 目 次 で 事 足 りる が これらのみを 抽 出 したければ 記 事 情 報 HTML を 表 示 することもできる 4.5. プリズム は 毎 回 起 動 しないといけないの? 以 上 で 述 べた 閲 覧 の 用 途 以 外 に 指 定 した 号 の 本 文 や 各 種 情 報 (4.2.-4.4.で 紹 介 したも の)をテキストファイルなどに 変 換 して 保 存 することも 可 能 である また 逐 一 プリズ ム を 起 動 して DHTML を 表 示 させるのを 手 間 に 思 う 場 合 DHTML ファイルを 保 存 して おいて 必 要 なときに 開 くという 使 い 方 もできる 方 法 としては 号 数 ファイル 形 式 を 選 んだ 後 変 換 (ブラウザで 表 示 ) ボタンの 代 わりに 変 換 (ファイルへ 出 力 ) ボタンをクリックするだけである この 場 合 Ctrl キー を 押 しながら 号 数 をクリックしていくと 複 数 の 号 を 同 時 に 選 択 することも 可 能 である な お 各 種 情 報 をファイル 出 力 する 場 合 は いずれも HTML より CSV の 方 が Excel への 展 開 が 容 易 であり 利 便 性 が 高 い 変 換 (ファイルへ 出 力 ) を 選 択 した 場 合 デフォルトであればファイルはデスクトッ 17 ただし ひまわり 使 用 時 は 検 索 キーの 範 囲 にこうしたエラーがあった 場 合 に 限 り 原 文 の 項 目 に 原 文 ママの 表 記 が 示 される 6
プに 一 括 して 保 存 される 必 要 に 応 じて 画 面 右 下 の ファイル 出 力 オプション で 保 存 先 などが 変 更 可 能 である 5. 結 び 実 践 編 に 向 けて 以 上 太 陽 コーパス の 基 本 的 な 利 用 法 について 概 説 した 実 際 には 各 ツールには 上 述 した 以 外 にも 様 々な 機 能 設 定 項 目 があるが 今 回 は 時 間 の 関 係 もあり 省 略 する 同 コーパスおよび 付 属 のツールをどういった 研 究 に 利 用 しうるかについて 具 体 的 なと ころは 次 回 ( 実 践 編 )に 譲 るが 一 つの 指 標 として 表 現 の 歴 史 的 推 移 を 見 る とい うような 文 法 形 式 一 般 をくまなく 観 察 するような 用 途 には 往 々にして 向 かないというこ とが 言 える たとえば 受 身 文 の 用 例 を GREP で 採 集 する 場 合 現 代 語 を 対 象 とするのであれば [か がさたなばまらわ]れ で 絞 り 込 めば ( 無 論 多 少 とも 関 係 ない 例 が 混 ざるので 取 捨 選 択 す る 必 要 はあるが) 用 例 を 集 めるのは 比 較 的 容 易 である 一 方 太 陽 コーパス に 関 しては この 条 件 だけでは 限 られた 範 囲 すなわち 口 語 の 例 のうち 現 代 語 と 仮 名 遣 いが 共 通 のも のしかヒットしないことになってしまう 旧 仮 名 遣 いでは 言 う ではなく 言 ふ であり その 受 身 形 は 口 語 であれば 言 はれ る であるが 文 語 の 場 合 は 言 はる である こうした 例 は 上 述 の 現 代 語 の 受 身 文 を 採 る 場 合 と 同 じ 検 索 条 件 ではヒットしない 加 えて 受 身 文 全 体 を 扱 うのであれば 打 た る 放 たる などの 例 も 当 然 採 ることになるが それらを 意 図 して たる たれ を 条 件 に 含 めることは とりもなおさず 堂 々たり などのタリ 活 用 形 容 詞 (および 助 動 詞 た り )の 連 体 形 や 命 令 形 といった 無 関 係 な 例 が 大 量 にヒットすることを 意 味 し 途 方 もない ゴミ 捨 ての 作 業 を 強 いられることになる さらに 言 えば ルビ 検 索 で うた を 見 ると うた 当 時 は 打 る のような 表 記 がされている 場 合 もあるが このようなことをも 一 々の 語 に ついて 意 識 しつつ 検 索 するのは 現 実 的 ではない 使 役 文 などについても 同 様 の 問 題 が 指 摘 できよう 文 語 と 口 語 の 入 り 交 じる 資 料 について 一 般 論 的 なことを 扱 おうとした 場 合 上 述 の 受 身 の 場 合 のように 非 現 実 的 とは 言 わないまでも 極 めて 高 度 な 条 件 指 定 が 必 要 になることが 少 なくない(たとえば 小 木 曽 2002:130 では 単 純 語 に 対 応 する 可 能 動 詞 の 実 例 を 極 力 漏 れのないよう 採 る 目 的 で 1143 字 に 上 る 正 規 表 現 を 用 いている) 国 立 国 語 研 究 所 編 (2005) に 収 録 されている 論 文 が 多 くそうであるように 対 象 となるデータの 膨 大 さを 考 えれば 語 レベル 18 あるいは 範 囲 の 決 定 しやすい 語 彙 レベル 19 での 分 析 が 基 本 線 ということになろ う また そうした 場 合 でも 先 述 (3.1.)の ルビ 検 索 の 活 用 あるいは 岩 波 国 語 辞 典 第 五 版 を 用 いて 異 表 記 の 可 能 性 を 逐 一 考 慮 した 小 木 曽 (2002:126)のような 努 力 は 不 18 掠 奪 と 奪 掠 現 出 と 出 現 のペアに 関 する 研 究 や 副 詞 とても や 接 続 詞 そして に 関 する 研 究 など なお そして の 例 として ソシテ が 3 例 ソして も 1 例 のみであるが 現 れてい るという 事 実 から ひらがなとカタカナが 混 在 する 可 能 性 を 常 に 考 慮 する 必 要 がある 19 たとえば 外 国 地 名 の 表 記 ( 漢 字 /カタカナ)に 関 する 研 究 など 7
可 欠 になる 何 であれ まず 大 切 なのは( 当 然 ではあるが) 研 究 をしたいという 熱 意 である 太 陽 コ ーパス を 用 いて 行 いたい 研 究 について 様 々なご 意 見 を 頂 き 次 回 の 有 益 な 議 論 に 繋 げる ことができれば 幸 いである [ 参 考 文 献 ] 小 木 曽 智 信 2002 近 代 語 テキストからの 可 能 動 詞 の 抽 出 太 陽 コーパス を 例 に 明 海 日 本 語 第 7 号 国 立 国 語 研 究 所 ( 編 )2005 雑 誌 太 陽 による 確 立 期 現 代 語 の 研 究 太 陽 コーパス 研 究 論 文 集 博 文 館 新 社 田 中 牧 郎 小 木 曽 智 信 2000 総 合 雑 誌 太 陽 の 本 文 の 様 態 と 電 子 化 テキスト 日 本 語 科 学 8 田 中 牧 郎 2001 XML を 利 用 したコーパスの 構 築 太 陽 コーパス を 中 心 に 日 本 語 学 20-13 中 山 健 一 ( 編 )2009 外 大 生 のための 日 本 語 研 究 ガイドブック 東 京 外 国 語 大 学 大 学 院 地 域 文 化 研 究 科 8