店 舗 配 置 からみた 預 金 金 融 機 関 の 競 合 : 大 阪 府 の 分 析 を 中 心 に 伊 藤 隆 康 発 表 者 コメント 本 稿 の 目 的 は 大 阪 府 における 店 舗 配 置 からみた 預 金 金 融 機 関 の 競 合 を 分 析 し 先 行 研 究 の 結 果 と 比 較 することにある 店 舗 配 置 からみた 郵 便 局 と 民 間 金 融 機 関 の 競 合 に 関 しては 郵 便 局 と 民 間 金 融 機 関 全 体 では 競 合 関 係 になかった この 点 はすべての 先 行 研 究 の 結 果 と 平 仄 を 合 わせた また 郵 便 局 と 民 間 金 融 機 関 の 各 業 態 との 競 合 に 関 して 郵 便 局 と 民 間 A( 都 市 銀 行 地 方 銀 行 第 二 地 方 銀 行 長 期 信 用 銀 行 信 託 銀 行 )と 民 間 C( 農 協 )の 間 では 店 舗 配 置 からみた 競 合 は 観 測 されなかった 一 方 郵 便 局 と 民 間 B( 信 用 金 庫 信 用 組 合 労 働 金 庫 )との 間 で 店 舗 配 置 からみた 競 合 が 確 認 できた 民 間 Bと 郵 便 局 が 競 合 関 係 にあると 認 められたのは 本 稿 が 分 析 対 象 と した 大 阪 府 と 北 海 道 鳥 取 県 だけである 比 較 がしやすい 大 阪 府 と 北 海 道 をみてみる と 民 間 Bは 大 阪 府 では 狭 い 地 域 で 店 舗 配 置 しているのに 対 して 北 海 道 では 広 域 で 店 舗 を 展 開 している このため 大 阪 府 と 北 海 道 では 店 舗 展 開 からみた 郵 便 局 と 民 間 Bとの 競 合 の 質 には 相 違 がある 可 能 性 が 高 い キーワード(keywords): 預 金 金 融 機 関 の 競 合 (Compettons of Depost Fnancal Insttutons) 地 域 金 融 (Regonal Fnance) 57
1 はじめに 預 金 金 融 機 関 と 言 っても 今 はゆうちょ 銀 行 となったかつての 郵 便 局 株 式 会 社 組 織 である 都 市 銀 行 や 地 方 銀 行 第 二 地 方 銀 行 協 同 組 織 である 信 用 金 庫 や 信 用 組 合 農 業 協 同 組 合 など 多 くの 業 態 がしのぎを 削 っている 1 大 阪 府 では 1990 年 代 の 半 ば 以 降 において 福 徳 銀 行 やなにわ 銀 行 幸 福 銀 行 といった 第 二 地 方 銀 行 や 木 津 信 用 組 合 や 大 阪 信 用 組 合 三 福 信 用 組 合 などの 信 用 組 合 が 破 たんし バブル 経 済 崩 壊 の 後 遺 症 と 地 域 金 融 機 関 の 競 争 の 激 しさが 浮 き 彫 りになった 2 小 倉 (2007)にある 都 道 府 県 別 金 融 機 関 店 舗 ハーフィンダール 指 数 によれば 東 京 都 愛 知 県 に 次 いで 大 阪 府 は 金 融 機 関 の 店 舗 競 争 度 が 高 い また 大 阪 府 は 東 京 都 に 次 ぐ 大 都 市 圏 であるにも 関 わらず 民 間 金 融 機 関 の 総 店 舗 数 に 占 める 地 銀 第 二 地 銀 の 割 合 が 27.6%と 東 京 都 における 13.5%に 比 べるとかなり 大 きい このような 特 徴 が 大 阪 府 の 地 域 金 融 には 見 出 されるため 大 阪 府 における 店 舗 展 開 からみた 預 金 金 融 機 関 の 競 合 を 分 析 することには 意 義 があると 考 えられる 3 店 舗 展 開 からみた 預 金 金 融 機 関 の 競 合 を 分 析 した 先 行 研 究 には 家 森 近 藤 (2001) 近 藤 (2003) 伊 藤 (2004a) 伊 藤 (2004b) 伊 藤 (2006) 永 田 石 塚 (2007) 伊 藤 (2008) 伊 藤 (2009)などがあげられる 本 稿 のような 方 法 で 店 舗 展 開 からみた 預 金 金 融 機 関 の 競 合 を 分 析 した 最 初 の 先 行 研 究 は 家 森 近 藤 (2001)である 彼 らは 都 道 府 県 データ を 用 いて 民 間 金 融 機 関 と 郵 便 局 の 店 舗 政 策 の 相 違 について 分 析 し 店 舗 立 地 に 関 し ては 民 間 金 融 機 関 と 公 的 金 融 機 関 との 間 に 競 合 関 係 が 観 察 されない との 結 果 を 得 て いる 家 森 近 藤 (2001)を 発 展 させる 形 で 近 藤 (2003) 伊 藤 (2004a) 伊 藤 (2004b) 伊 藤 (2006) 永 田 石 塚 (2007) 伊 藤 (2008) 伊 藤 (2009)は 市 町 村 レベルというより 細 かい 単 位 での 実 証 分 析 をそれぞれ 行 っている 各 県 において 郵 便 局 と 民 間 金 融 機 関 全 体 の 競 合 を 店 舗 展 開 からみた 場 合 郵 便 局 と 民 間 金 融 機 関 は 競 合 関 係 にはないと すべて の 先 行 研 究 が 結 論 付 けている 一 方 民 間 金 融 機 関 ( 都 市 銀 行 地 方 銀 行 第 二 地 方 銀 行 長 期 信 用 銀 行 信 託 銀 行 信 用 金 庫 信 用 組 合 労 働 金 庫 農 協 (JA))を 都 市 銀 行 地 方 銀 行 第 二 地 方 銀 行 長 期 信 用 銀 行 信 託 銀 行 を 民 間 A 信 用 金 庫 信 用 組 合 労 働 金 庫 を 民 間 B 農 協 を 民 間 Cとして 全 体 を3グループに 分 けた 分 析 も 1 郵 便 貯 金 法 の 第 1 条 は この 法 律 は 郵 便 貯 金 を 簡 易 で 確 実 な 貯 蓄 の 手 段 としてあまねく 公 平 に 利 用 させることによって 国 民 の 経 済 生 活 の 安 定 を 図 り その 福 祉 を 増 進 することを 目 的 とす る と 規 定 している 既 存 の 貯 金 について 通 常 郵 便 貯 金 はゆうちょ 銀 行 に 契 約 が 引 き 継 がれ ゆうちょ 銀 行 郵 便 局 の 貯 金 窓 口 で 取 り 扱 われる 定 期 性 の 郵 便 貯 金 については 独 立 行 政 法 人 郵 便 貯 金 簡 易 保 険 管 理 機 構 に 引 き 継 がれ 満 期 まで 政 府 による 支 払 保 証 が 継 続 する 払 戻 し 手 続 等 は 同 機 構 から 委 託 を 受 けたゆうちょ 銀 行 及 び 同 行 から 委 託 を 受 けた 郵 便 局 の 貯 金 窓 口 で 取 り 扱 われる (ゆうちょ 銀 行 ホームページhttp://www.jp-bank.japanpost.jp/ndex.htmlを 参 照 ) 2 和 歌 山 県 の 阪 和 銀 行 や 兵 庫 県 の 兵 庫 銀 行 なども 経 営 破 たんをしており 関 西 圏 全 体 で 第 二 地 銀 行 の 経 営 環 境 が 特 に 厳 しかったと 考 えられる 3 大 阪 府 における 預 金 金 融 機 関 の 店 舗 配 置 については 伊 藤 (2009)を 参 照 58
試 みられた 店 舗 展 開 からみた 競 合 関 係 について 郵 便 局 と 民 間 Aの 間 では 北 海 道 と 新 潟 県 で 郵 便 局 と 民 間 Bの 間 では 鳥 取 県 北 海 道 でそれぞれ 観 測 された 表 4が 先 行 研 究 における 店 舗 配 置 からみた 競 合 関 係 について 記 載 している また すべての 先 行 研 究 において 郵 便 局 と 民 間 Cとの 間 では 店 舗 展 開 からみた 競 合 は 観 測 されなかった 本 稿 の 構 成 は 以 下 のとおりである 第 2 節 では 分 析 の 枠 組 みを 説 明 する 第 3 節 で はデータに 関 して 述 べ 第 4 節 では 店 舗 展 開 からみた 競 合 分 析 の 結 果 を 報 告 する 第 5 節 では 結 果 をまとめて 他 の 都 道 府 県 を 分 析 した 先 行 研 究 との 比 較 を 試 みる 2 分 析 の 枠 組 み 2.1 郵 便 局 と 民 間 金 融 機 関 の 競 合 郵 便 局 と 民 間 の 金 融 機 関 が 同 じ 市 場 で 競 合 しているならば 民 間 金 融 機 関 の 店 舗 数 に 対 応 する 形 で 郵 便 局 が 配 置 されていることになる パイが 一 定 の 場 合 に 郵 便 局 と 民 間 金 融 機 関 が 競 合 していれば 郵 便 局 の 店 舗 数 と 民 間 金 融 機 関 の 店 舗 数 が 負 の 相 関 を 持 つ 一 方 両 者 の 間 に 有 意 な 負 の 関 係 が 見 出 されなければ 店 舗 展 開 からみて 郵 便 局 と 民 間 金 融 機 関 は 競 合 していないし かつ 郵 便 局 は 民 間 金 融 機 関 の 業 務 を 圧 迫 し ていないことになる 4 両 者 の 関 係 を 調 べるために(1) 式 を 推 計 する ここで B は 市 町 村 の 金 融 機 関 の 店 舗 数 AR EA は面 積 ( 平 方 キロメートル) POP は 人 口 OLD は 全 人 口 に 占 める 65 歳 以 上 人 口 の 比 率 ( 以 下 高 齢 者 比 率 ) OFFICE は 事 業 所 数 をそ れぞれ 表 している YB c1 + c2 AREA + c3pop + c4old + c5office + c6 = Branch (1) YB は 郵 便 局 の 店 舗 数 Branch は 民 間 金 融 機 関 の 店 舗 数 をそれぞれあらわす Branch が 有 意 なマイナスの 値 をとれば 郵 便 局 は 民 間 金 融 機 関 と 競 合 していること になる なお (1) 式 から Branch を 除 いた 形 で 家 森 近 藤 (2001) 近 藤 (2003) 家 森 (2003) 伊 藤 (2004a) 伊 藤 (2004b) 伊 藤 (2006) 永 田 石 塚 (2007) 伊 藤 (2008) 伊 藤 (2009)などが 預 金 金 融 機 関 の 店 舗 配 置 を 分 析 している 次 に(1) 式 を 拡 張 して 民 間 A( 都 市 銀 行 地 方 銀 行 第 二 地 方 銀 行 長 期 信 用 銀 行 信 託 銀 行 ) 民 間 B( 信 用 金 庫 信 用 組 合 労 働 金 庫 ) 民 間 C( 農 協 )の 各 グループ と 郵 便 局 の 競 合 関 係 を 調 べるため(2) 式 を 推 計 する 5 4 本 稿 のような 解 釈 が 一 般 的 には 可 能 である しかし 厳 密 には 店 舗 間 の 内 生 関 係 を 考 慮 した 推 計 を 行 う 必 要 があることも 否 定 できず モデルの 設 定 によっては 競 合 関 係 が 係 数 としてマイナス にならない 場 合 もありうる 5 (1) 式 から Branch を 除 いた 形 は Avery et al (1999)の 方 法 を 応 用 したものである Avery et al (1999)は 米 国 における 銀 行 の 店 舗 の 需 要 に 関 する 研 究 を 経 済 と 人 口 関 連 の2つの 要 因 から 行 って いる 経 済 要 因 には 家 計 の 平 均 所 得 や 持 ち 家 の 価 値 持 ち 家 比 率 自 動 車 保 有 台 数 大 卒 比 率 を 用 いており 一 方 デモグラフィック 要 因 には 人 口 高 齢 者 人 口 比 家 族 構 成 人 種 を 利 用 している 59
YB = c 1 + c AREA + c POP + c OLD + c OFFICE + c Branch民 間 A + c Branch民 間 B + c Branch民 間 C 7 2 3 8 4 YB は 郵 便 局 の 店 舗 数 Branch 民 間 A は 民 間 A の 店 舗 数 Branch 民 間 B は 民 間 B の 店 舗 数 Branch 民 間 C は 農 協 の 店 舗 数 をそれぞれあらわす Branch民 間 A Branch民 間 B Branch民 間 C に 関 して 有 意 なマイナスの 符 号 をとれば 郵 便 局 が 当 該 の 業 態 と 競 合 関 係 にあると 判 断 される 5 6 (2) 3 データ 3.1 金 融 機 関 の 店 舗 金 融 機 関 の 業 態 として 郵 便 局 都 市 銀 行 地 方 銀 行 第 二 地 方 銀 行 長 期 信 用 銀 行 信 託 銀 行 信 用 金 庫 信 用 組 合 労 働 金 庫 農 協 (JA)の10 業 態 を 対 象 にした 分 析 の 都 合 上 都 市 銀 行 地 方 銀 行 第 二 地 方 銀 行 長 期 信 用 銀 行 信 託 銀 行 を 民 間 A 信 用 金 庫 信 用 組 合 労 働 金 庫 を 民 間 B 農 協 を 民 間 Cとして 全 体 を3グルー プに 分 けた また 協 同 組 織 金 融 機 関 を2つのグループに 分 けた 6 各 業 態 の 店 舗 数 は 2002 年 3 月 末 の 数 字 である 近 藤 (2003)などの 方 法 を 用 いて 店 舗 展 開 からみた 預 金 金 融 機 関 の 競 合 分 析 をした 先 行 研 究 のほとんどが 2000 年 から 2004 年 の 間 のある 時 点 のデータを 用 いている 本 稿 では 大 阪 府 の 分 析 結 果 と 他 の 先 行 研 究 との 比 較 も 目 的 の 一 つとしているため 比 較 に 適 した 2002 年 3 月 末 の 数 字 を 用 いる 都 市 銀 行 地 方 銀 行 第 二 地 方 銀 行 長 期 信 用 銀 行 信 託 銀 行 信 用 金 庫 信 用 組 合 労 働 金 庫 の 店 舗 数 については 日 本 金 融 名 鑑 2003 年 版 ( 日 本 金 融 通 信 社 )から 引 用 した 農 協 の 店 舗 については 全 国 都 道 府 県 農 業 協 同 組 合 名 鑑 平 成 15 年 度 版 ( 日 本 農 業 新 聞 ) 郵 便 局 の 店 舗 については 2002 年 10 月 に 利 用 可 能 な タウンページ (NTT 西 日 本 )の 最 新 版 を 利 用 して 集 計 した 7 金 融 機 関 店 舗 数 の 比 率 に 関 して 全 国 大 阪 府 東 京 都 を 図 1にそれぞれ 示 した 郵 便 局 に 関 しては 大 阪 府 は 36.0%と 東 京 都 の 33.5%よりも 大 きく 全 国 平 均 の 37.3% に 近 い 数 字 となっている 民 間 Aについては 34.3%と 東 京 都 の 34.4%とほぼ 等 しく 全 国 平 均 の 23.2%に 比 べると 11% 程 度 高 いシェアを 占 めている 民 間 Bは 19.3%と 全 国 平 均 の 17.6%に 近 く 東 京 都 の 27.4%より 8% 程 度 シェアが 低 い 民 間 Cは 10.4% と 東 京 都 の 4.7%よりも 6% 程 度 大 きいが 全 国 平 均 の 21.9%よりも 11% 程 度 低 いシェ アとなっている 6 信 用 金 庫 や 信 用 組 合 労 働 金 庫 農 協 漁 協 などの 協 同 組 織 金 融 機 関 は 株 式 会 社 のように 利 潤 を 追 求 することを 主 たる 目 的 とせず 会 員 や 組 合 員 の 利 益 を 優 先 させている しかし 堀 江 (2008)が 指 摘 するように 協 同 組 織 金 融 機 関 も 利 益 の 確 保 が 難 しい 事 態 が 長 く 続 く 場 合 には 当 該 組 織 の 存 続 が 難 しくなり 清 算 ないし 吸 収 合 併 となることは 株 式 会 社 形 式 の 金 融 機 関 と 大 きな 相 違 はない 7 農 協 に 関 しては 金 融 業 務 を 行 っている 支 店 だけを 対 象 にした また 大 阪 府 における 漁 協 で 対 象 となる 支 店 は 存 在 しない このため 大 阪 府 の 分 析 では 漁 協 は 含 めない 60
大 阪 府 の 民 間 Aの 内 訳 について 東 京 都 と 比 較 すると( 図 2) 都 市 銀 行 のシェアは 43.6%と 東 京 都 の 63.3%と 20% 程 度 小 さく 地 方 銀 行 のシェアが 35.8%と 東 京 都 の 12.6%と 比 べると 23% 程 度 大 きい また 第 二 地 方 銀 行 のシェアは 15.7%と 東 京 都 の 13.5%よりも 2% 程 度 大 きい 図 1 金 融 機 関 の 店 舗 比 率 図 1 金 融 機 関 の 店 舗 比 率 全 国 大 阪 府 東 京 都 民 間 C 民 間 C 10.4% 21.9% 郵 便 局 郵 便 局 民 間 B 37.3% 36.0% 19.3% 民 間 C 4.7% 民 間 B 27.4% 郵 便 局 33.5% 民 間 B 17.6% 民 間 A 23.2% 民 間 A 34.3% 民 間 A 34.4% ( 注 1) 民 間 Aは 都 銀 地 銀 第 二 地 銀 長 信 銀 信 託 銀 行 を 示 す ( 注 2) 民 間 Bは 信 用 金 庫 信 用 組 合 労 働 金 庫 を 示 す ( 注 3) 民 間 Cは 農 協 漁 協 を 示 す ( 注 4) データは 平 成 14 年 3 月 末 現 在 のものである 図 2 民 間 Aの 店 舗 比 率 長 信 銀 0.7% 第 二 地 銀 15.7% 地 銀 35.8% 図 2 民 間 Aの 店 舗 比 率 大 阪 府 東 京 都 信 託 4.2% 都 銀 43.6% 長 信 銀 1.5% 第 二 地 銀 13.5% 地 銀 12.6% 信 託 9.1% 都 銀 63.3% ( 注 ) データは 平 成 14 年 3 月 末 現 在 のものである 61
3.2 説 明 変 数 市 町 村 の 面 積 人 口 高 齢 者 比 率 事 業 所 数 は 以 下 の 資 料 を 参 考 にした 平 成 12 年 10 月 1 日 現 在 の 面 積 人 口 高 齢 者 比 率 については 総 務 省 統 計 局 編 平 成 12 年 度 国 勢 調 査 を 利 用 した 平 成 13 年 10 月 1 日 現 在 の 事 業 所 に 関 しては 総 務 省 統 計 局 編 平 成 13 年 事 業 所 企 業 統 計 調 査 を 用 いた 大 阪 府 における 面 積 人 口 高 齢 者 比 率 事 業 所 数 に 関 する 記 述 統 計 量 に 関 して 表 1に 示 した 東 京 都 の 特 別 区 について は 23 区 をそれぞれ 個 別 の 市 町 村 と 扱 ったように 大 阪 市 については 24 区 を 個 別 の 市 町 村 として 扱 った 大 阪 府 全 体 の 67 市 町 村 の 中 で 市 ( 大 阪 市 を 除 く)の 数 は 32 町 村 の 数 は 11 である 8 表 1 面 積 人 口 高 齢 者 比 事 業 所 数 に 関 する 記 述 統 計 量 大 阪 府 の 市 町 村 (67) 最 大 値 最 小 値 平 均 標 準 偏 差 面 積 (km2) 136.79 3.86 28.25 28.9 人 口 792,018 6785 131,419 130,243.1 高 齢 者 比 率 (%) 23.2 11.6 15.5 2.6 事 業 所 数 37,633 262 7,223 7,517.4 出 所 : 総 務 省 統 計 局 4 分 析 結 果 まず (1) 式 の 左 辺 に 大 阪 府 の 郵 便 局 の 店 舗 数 右 辺 に 民 間 金 融 機 関 の 合 計 数 をとっ て 推 計 した 9 結 果 は 表 2に 示 した 民 間 金 融 機 関 の 係 数 はマイナスの 符 号 をとったが p 値 が 0.454 という 有 意 性 が 低 い 値 を 示 した このため 大 阪 府 において 郵 便 局 と 民 間 金 融 機 関 は 店 舗 展 開 からみて 競 合 関 係 にはなく 郵 便 貯 金 事 業 が 民 業 を 圧 迫 していると はいえない 8 大 阪 府 にある 郡 は 三 島 郡 豊 能 郡 泉 北 郡 泉 南 郡 南 河 内 郡 の5つである 9 本 稿 のような 解 釈 が 一 般 的 には 可 能 である しかし 厳 密 には 店 舗 間 の 内 生 関 係 を 考 慮 した 推 計 を 行 う 必 要 があることも 否 定 できず モデルの 設 定 によっては 競 合 関 係 が 係 数 としてマイナス にならない 場 合 もありうる 62
表 2 大 阪 府 における 郵 便 局 と 民 間 金 融 機 関 の 競 合 変 数 係 数 t 値 p 値 C -4.941-2.210** 0.031 面 積 (AREA) 0.101 3.374*** 0.001 人 口 (POP) 0.617 16.910*** 0.000 高 齢 者 比 率 (OLD) 0.050 5.480*** 0.000 事 業 所 数 (OFFICE) 0.485 5.479*** 0.000 民 間 -0.065-0.753 0.454 自 由 度 修 正 済 み 決 定 係 数 0.969 サンプル 数 67 ( 注 )***,**,*はそれぞれ 1% 5% 10% 水 準 で 有 意 であることを 示 す 次 に (2) 式 の 左 辺 に 大 阪 府 の 郵 便 局 の 店 舗 数 右 辺 に 民 間 Aの 店 舗 数 民 間 Bの 店 舗 数 民 間 Cの 店 舗 数 をとって 推 計 した 結 果 は 表 3に 示 した 民 間 Bだけが 有 意 な マイナスの 符 号 をとった 残 りの 変 数 に 関 しては すべてマイナスの 符 号 をとったが 有 意 性 を 示 したのは 民 間 Bだけであった 店 舗 展 開 からみて 大 阪 府 において 郵 便 局 は 民 間 Bと 競 合 関 係 にあるが 民 間 Aと 民 間 Cとの 関 係 では 競 合 関 係 にない 店 舗 展 開 からみて 郵 便 局 は 民 間 Bと 競 合 関 係 にあるとする 結 果 は 北 海 道 と 鳥 取 県 の 分 析 結 果 と 等 しいものとなった 表 3 大 阪 府 における 郵 便 局 と 民 間 金 融 機 関 の 競 合 変 数 係 数 t 値 p 値 C -5.685-2.631** 0.011 面 積 (AREA) 0.093 2.672** 0.010 人 口 (POP) 0.738 16.600*** 0.000 高 齢 者 比 率 (OLD) 0.060 2.609** 0.012 事 業 所 数 (OFFICE) 0.663 6.167*** 0.000 民 間 A( 都 銀 地 銀 第 二 地 銀 長 信 銀 信 託 銀 行 ) -0.067-1.110 0.272 民 間 B( 信 用 金 庫 信 用 組 合 労 働 金 庫 ) -0.254-3.142*** 0.003 民 間 C( 農 協 ) -0.063-1.662 0.102 自 由 度 修 正 済 み 決 定 係 数 0.975 サンプル 数 67 ( 注 )***,**,*はそれぞれ 1% 5% 10% 水 準 で 有 意 であることを 示 す 63
5 まとめ 本 稿 の 目 的 は 大 阪 府 における 店 舗 配 置 からみた 預 金 金 融 機 関 の 競 合 を 分 析 し 先 行 研 究 の 結 果 と 比 較 することにあった 店 舗 配 置 からみた 郵 便 局 と 民 間 金 融 機 関 の 競 合 に 関 しては 郵 便 局 と 民 間 金 融 機 関 全 体 では 競 合 関 係 になかった この 点 はすべて の 先 行 研 究 と 平 仄 を 合 わせた 格 好 となった 郵 便 局 と 民 間 金 融 機 関 の 各 業 態 との 競 合 に 関 しては 郵 便 局 と 民 間 Bとの 間 で 店 舗 配 置 からみた 競 合 が 観 測 された この 点 が 大 阪 府 における 店 舗 展 開 からみた 競 合 を 分 析 した 結 果 の 特 徴 である 先 行 研 究 では 民 間 Bと 郵 便 局 が 競 合 関 係 にあると 認 めら れたのは 北 海 道 と 鳥 取 県 だけである 県 庁 所 在 地 が 政 令 指 定 都 市 等 のため 区 割 りにな っていることから 比 較 しやすい 北 海 道 の 分 析 結 果 との 比 較 を 試 みる このために 大 阪 府 と 北 海 道 につき 店 舗 配 置 の 分 析 結 果 と 店 舗 比 率 をそれぞれ 表 5と 表 6に 記 した 伊 藤 (2006)と 伊 藤 (2009)によれば 店 舗 配 置 の 特 徴 は 以 下 のとおりである 大 阪 府 の 分 析 では 民 間 Bの 店 舗 配 置 において 面 積 が 有 意 なマイナスを 示 している 点 である このことは 大 阪 府 において 民 間 Bは 地 方 銀 行 や 第 二 地 方 銀 行 に 比 べて 店 舗 配 置 に おいて 効 率 的 な 経 営 をしていることを 示 唆 する 同 時 に 会 員 や 組 合 員 が 他 の 地 域 に 比 べて 狭 い 範 囲 に 存 在 する 可 能 性 も 否 定 できない 一 方 北 海 道 における 民 間 Bの 店 舗 配 置 分 析 では 面 積 人 口 高 齢 者 比 率 事 業 所 数 という4つの 変 数 が 有 意 ( 面 積 人 口 事 業 所 は 1% 水 準 高 齢 者 比 率 は 5% 水 準 )なプラスの 値 を 示 した このことは 北 海 道 において 民 間 Bは 会 員 や 組 合 員 である 事 業 所 に 配 慮 しつつ 面 積 や 人 口 高 齢 者 比 率 を 考 慮 に 入 れるという 店 舗 を 配 置 しているとみられる 大 阪 府 における 民 間 全 体 に 占 める 信 用 金 庫 と 信 用 組 合 の 店 舗 比 率 は 28.8%と 北 海 道 の 41.4%に 比 べると 小 さい こうしたことから 大 阪 府 において 民 間 B 特 に 信 用 金 庫 や 信 用 組 合 が 過 当 競 争 が 原 因 で 狭 い 地 域 での 営 業 を 余 儀 なくされている 可 能 性 は 低 いと 考 えられる 10 一 方 で 北 海 道 においては 信 用 金 庫 や 信 用 組 合 は 過 当 競 争 が 原 因 で 広 い 地 域 に 店 舗 を 配 置 している 可 能 性 がある こうしたことから 大 阪 府 と 北 海 道 のそれぞれにおいて 店 舗 展 開 からみて 郵 便 局 が 民 間 Bと 競 合 関 係 にあると 言 っても 競 合 の 質 は 異 なる 可 能 性 が 高 い そのために は 大 阪 府 と 北 海 道 における 郵 便 局 と 個 別 の 信 用 金 庫 や 信 用 組 合 の 店 舗 展 開 を 詳 しく 分 析 する 必 要 がある この 点 は 今 後 の 課 題 としたい 参 考 文 献 伊 藤 隆 康 (2004a) 東 京 都 における 預 金 金 融 機 関 の 店 舗 配 置 と 競 合 生 活 経 済 学 研 究 10 表 6にあるように 民 間 Bに 占 める 信 用 金 庫 と 信 用 組 合 の 店 舗 割 合 は 大 阪 府 と 北 海 道 のそれぞれ において 95%を 超 えている 64
第 20 巻,pp.113-126. 伊 藤 隆 康 (2004b) 鳥 取 県 における 預 金 金 融 期 間 の 店 舗 展 開 の 分 析 - 郵 便 局 と 民 間 金 融 機 関 の 比 較 を 中 心 に 新 潟 大 学 経 済 論 集 第 77 号,pp.1-16. 伊 藤 隆 康 (2006) 北 海 道 における 地 域 金 融 の 特 徴 - 預 金 金 融 機 関 の 店 舗 配 置 を 分 析 し て- 新 潟 大 学 経 済 論 集 第 80 号,pp.1-12. 伊 藤 隆 康 (2008) 信 越 地 域 における 預 金 金 融 機 関 の 店 舗 配 置 : 新 潟 県 と 長 野 県 を 比 較 分 析 して 生 活 経 済 学 研 究 第 27 巻, pp.1-15 伊 藤 隆 康 (2009) 大 阪 府 における 地 域 金 融 : 預 金 金 融 機 関 の 店 舗 配 置 分 析 生 活 経 済 学 研 究 第 29 巻,pp.75-85. 小 倉 義 明 (2007) 地 域 金 融 市 場 の 競 争 度 と 新 規 参 入 企 業 の 融 資 利 用 可 能 性 筒 井 義 郎 植 村 修 一 編 リレーションシップバンキングと 地 域 金 融 日 本 経 済 新 聞 社, pp.81-100. 近 藤 万 峰 (2003) 愛 知 県 における 金 融 機 関 の 店 舗 行 動 の 分 析 金 融 経 済 研 究 第 19 号,pp.15-27. 永 田 邦 和 石 塚 孔 信 (2007) 地 方 都 市 における 郵 便 局 と 民 間 金 融 機 関 の 店 舗 配 置 : 鹿 児 島 県 のデータによる 分 析 日 本 金 融 学 会 2007 年 度 秋 季 大 会 報 告 論 文. 堀 江 康 煕 (2008) 地 域 金 融 機 関 の 経 営 行 動 勁 草 書 房. 家 森 信 善 近 藤 万 峰 (2001) 公 的 金 融 機 関 と 民 間 金 融 機 関 の 立 地 行 動 生 活 経 済 学 研 究 第 16 巻,pp.173-185. 家 森 信 善 (2003) 地 域 金 融 における 公 的 金 融 機 関 と 民 間 金 融 機 関 の 店 舗 配 置 林 敏 彦 松 浦 克 己 米 澤 康 博 編 日 本 の 金 融 問 題 日 本 評 論 社,pp.231-245. Avery,R.B.,R.W.Bostc,P.S.Calem, and G.B.Canner (1999) Consoldaton and Bank Branchng Patterns, Journal of Bankng and Fnance,Vol.23,pp.497-532. 65
表 4 店 舗 配 置 競 合 の 分 析 結 果 のまとめ 先 行 研 究 近 藤 (2003) 伊 藤 (2004a) 伊 藤 (2004b) 伊 藤 (2006) 永 田 石 塚 (2007) 伊 藤 (2008) 伊 藤 (2008) 本 稿 都 道 府 県 名 愛 知 県 東 京 都 鳥 取 県 北 海 道 鹿 児 島 県 新 潟 県 長 野 県 大 阪 府 分 析 対 象 時 期 2000 年 2002 年 2002 年 2002 年 2004 年 2002 年 2002 年 2002 年 民 間 全 体 面 積 P P*** P P*** - P*** P** P*** 民 間 A 面 積 N - N N** N N* P N 民 間 B 面 積 N - N** N** N N P N*** 民 間 C 面 積 N - P*** P*** N P*** P*** N ( 注 1) 推 計 された 係 数 の 符 号 に 関 して P はプラス N はマイナス 0 はゼロをそれぞれ 示 す ( 注 2) *** ** *は 1% 5% 10% 水 準 でそれぞれ 有 意 であることを 示 す ( 注 3) -は 分 析 結 果 を 報 告 していないことを 示 す ( 注 4) 民 間 Aは 都 銀 地 銀 第 二 地 銀 長 信 銀 信 託 銀 行 を 示 す ( 注 5) 民 間 Bは 信 用 金 庫 信 用 組 合 労 働 金 庫 を 示 す ( 注 6) 民 間 Cは 農 協 漁 協 を 示 す ( 注 7) 家 森 (2003)の 民 間 Aは 全 国 銀 行 に 信 用 金 庫 信 用 組 合 労 働 金 庫 をたしたものである ( 注 8) 近 藤 (2003)の 民 間 Aは 都 銀 地 銀 第 二 地 銀 のみを 対 象 にする ( 注 9) 近 藤 (2003)の 民 間 Bは 信 用 金 庫 の 分 析 結 果 を 示 す ( 注 10) 永 田 石 塚 (2007)の 民 間 Aは 地 銀 第 二 地 銀 のみを 対 象 にする ( 注 11) は 店 舗 配 置 からみて 当 該 の 業 態 が 郵 便 局 と 競 合 にあることを 示 す 表 5 店 舗 配 置 分 析 の 比 較 先 行 研 究 伊 藤 (2006) 伊 藤 (2009) 都 道 府 県 名 北 海 道 大 阪 府 分 析 対 象 時 期 2002 年 2002 年 郵 便 局 面 積 P*** P*** 人 口 P*** P*** 高 齢 者 比 率 P P** 事 業 所 数 P*** P*** 民 間 A 面 積 N*** P** 人 口 N*** N*** 高 齢 者 比 率 N* N 事 業 所 数 P*** P*** 民 間 B 面 積 P*** N*** 人 口 P*** P*** 高 齢 者 比 率 P** P* 事 業 所 数 P*** P*** 民 間 C 面 積 P*** P*** 人 口 P*** P*** 高 齢 者 比 率 P N** 事 業 所 数 P* P ( 注 1) 推 計 された 係 数 の 符 号 に 関 して P はプラス N はマイナス 0 はゼロをそれぞれ 示 す ( 注 2) *** ** *は 1% 5% 10% 水 準 でそれぞれ 有 意 であることを 示 す ( 注 3) 民 間 Aは 都 銀 地 銀 第 二 地 銀 長 信 銀 信 託 銀 行 を 示 す ( 注 4) 民 間 Bは 信 用 金 庫 信 用 組 合 労 働 金 庫 を 示 す ( 注 5) 民 間 Cは 農 協 漁 協 を 示 す 大 阪 府 の 分 析 においては 農 協 だけを 対 象 にしている 66
表 6 店 舗 比 率 の 比 較 郵 便 局 民 間 A 民 間 B 民 間 C 地 銀 第 二 地 銀 (1) 地 銀 第 二 地 銀 (2) 信 金 信 組 (1) 信 金 信 組 (2) 大 阪 府 36.0% 34.3% 19.3% 10.4% 51.4% 27.6% 95.7% 28.8% 北 海 道 47.9% 14.3% 22.7% 15.1% 94.6% 26.0% 95.2% 41.4% ( 注 1) 出 所 : 本 文 を 参 照 2002 年 における 店 舗 数 に 基 づいている ( 注 2) 郵 便 局 民 間 A 民 間 B 民 間 Cは 全 体 の 中 で 占 める 店 舗 比 率 を 示 す ( 注 3) 地 銀 第 二 地 銀 (1)は 民 間 Aの 中 で 占 める 店 舗 比 率 を 示 す 地 銀 第 二 地 銀 (2)は 民 間 全 体 の 中 で 占 める 店 舗 比 率 を 示 す ( 注 4) 信 金 信 組 (1)は 民 間 Bの 中 で 占 める 店 舗 比 率 を 示 す 信 金 信 組 (2)は 民 間 全 体 の 中 で 占 める 店 舗 比 率 を 示 す 67