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一般社団法人日本ロボット学会第 72 回ロボット工学セミナーレポート アドバンストな環境認識センサとその処理方法 日時 :2012 年 09 月 25 日 ( 火 )09:30~17:25 会場 : 東京大学本郷キャンパス工学部 2 号館 233 号室参加者数 :50 名オーガナイザ : 大槻真嗣 ( 宇宙航空研究開発機構宇宙科学研究所 ) < 概要 > ロボットの行動を決定するためには, 周囲環境を定量的に認識することが重要です. 近年, 赤外光を利用した二次元測域センサやマルチレンズのカメラシステムなど, 機械特有の優れた機能を利用したアドバンストな環境認識センサの開発が進められています. これらのセンサは, ロボットによる環境認識の確度を高めるだけでなく, 人には感じることのできない情報を定量化することで様々な応用先を提供してくれます. 本セミナでは, 赤外線による環境認識, 画像による力や加速度の計測, コンピューテショナルフォトグラフィ, レーザによる環境認識等の最新の話題を7 名の講師の先生方から詳しく解説していただきました. 講演会場の風景

第 1 話サーモグラフィカメラによる赤外線センサ計測とその応用 日本アビオニクス株式会村上正肥様 赤外センサを利用したサーモグラフィカメラの動作原理と応用について詳しく解説していただきました. また, 精度よく温度計測を行うための手法と注意点を教示していただき, さらに, 赤外線センサを利用した最新技術動向や赤外線センサ計測の応用例である赤外機器システム事例について紹介していただきました. 第 2 話対象物の温度を知るための遠赤外線センサのハードウェア 東京大学高畑智之先生 遠赤外線を計測する各種センサデバイスとして, 焦電センサ, マイクロボロメータ, サーモパイル等の原理を紹介していただいた. 物体はその温度に応じたスペクトルの電磁波を放射しており, 例えば, 常温に近い物質であれば波長 10μm 付近の遠赤外線を計測することで, 対象物の温度を知ることができることを解説していただいた. さらに, 近年の研究, 特に遠赤外線センサを小型 軽量化する研究について解説していただいた.

第 3 話モアレ縞を用いた微小変位可視化メカニズムと画像処理を用いた計測システム 広島大学高木健先生 力, 圧力, 加速度などの物理量は微小な変位より計測されることが多いため, この変位を直接人間が目視できれば様々な分野に応用できる, そのような発想の源について説明いただいた. 具体的に, モアレ縞を応用し変位を視覚的に拡大表示することで, 電気的な要素を用いることなく, 縞模様や文字にて変位を提示できるメカニズムについて解説いただいた. 応用例として, ロボットグリッパや手術器具の把持力の提示, 橋や建物などの構造物の健全性の検査を目的とした振動加速度の可視化, また構造物のひずみを検査するための高精度な計測例等を解説していただいた. 第 4 話コンピュテーショナルフォトグラフィ技術に基づく距離計測法の新展開 広島市立大学日浦慎作先生 最近話題を集めているコンピュテーショナルフォトグラフィについて解説していただいた. これは光学系と処理方法の工夫によりカメラに新たな機能や性能を付与するための技術であり, その用途の1つとして画像からのぼけの除去を挙げていただいた. またその反対に, 主要被写体の前後の物体の像をぼかす, ぼけ生成も可能であるが, これらの過程でシーンの奥行き情報が必要であり, 距離推定に関する新たな取り組みがなされる素地となっている旨もご紹介いただいた. コンピュテーショナルフォトグラフィ技術とそれによる距離計測を, ステレオ画像認識など従来の距離計測法と対比しながら解説していただいた. LYTRO 社製のライトフィールドカメラを用いたぼけ除去についても例証いただいた.

第 5 話ロバストな環境認識を実現する測域センサの機能 北陽電機株式会社森利宏様 測域センサを我々が暮らす実空間で使用したときの問題点とその対策方法について説明していただいた. また, 屋外での使用を想定した IP67 の構造とマルチエコー機能がある測域センサや最新の IP69 の Tough URG などをご紹介いただいた. また, 屋外でロボットを安定して稼動させるための測域センサに求められる機能性能, 例えば太陽光より強い光, 霧, 雨等の存在する自然環境下での距離認識において, 高いロバスト性を有することを詳説いただいた. さらに, 測域センサの実機を用いたデモを通して, マルチエコー機能の有効性を実証していただいた. 第 6 話レーザスキャナを利用した移動ロボットのための三次元環境計測 千葉工業大学吉田智章先生 測域センサを用いた三次元計測について, その方式およびデータ処理方法について解説していただいた. 整った環境では水平に設置したレーザスキャナだけで十分な情報が得られるが, 屋外など雑然とした環境では不十分なことが多い旨実例を通して説明していただいた. また, その解決策として, 測域センサを様々な方向へ回転させることで, 垂直方向にも広がりのある視野を持たせる方法について詳説いただいた. さらに, 実例として講演者らの開発したロボット,Quince および Papyrus での三次元環境計測について紹介していただいた.

第 7 話移動ロボットによる三次元計測と特徴量を用いた空間の分類 東北大学大野和則先生 測域センサを用いた空間の三次元点群の計測とつなぎ合わせて地図を構築する方法, 計測した三次元点群を対象ごとに分類する方法について基礎的な部分から応用まで説明していただいた. また, 測域センサを搭載した不整地走行ロボットを用いた地下鉄や倒壊した建物の三次元計測, 得られた三次元点群の特徴量を用いて瓦礫や細い構造物などに点群を分類する研究等についても合わせて紹介していただいた. さらに, メッシュ状の物体や霧の認識についても実験結果等と合わせて詳説していただいた. 上記のように本セミナでは, 周囲環境を定量的に認識するセンサシステムからハードウェア, ソフトウェア, 様々な側面から講師の方々にご解説いただいた. いずれも人間の感覚を超えた, 機械特有の優れた機能を利用したアドバンストな環境認識センサであり, これらを利用したロボットシステムの開発が今後期待される. 特に火山地帯や他の惑星など, 人間が行くことのできない自然環境において, 人間の感覚以上の機能 性能を持った環境認識センサを有するロボットが人間の役割を果たすことを期待している. 2012 年 10 月 2 日 文責大槻真嗣 ( 宇宙航空研究開発機構宇宙科学研究所 )

第 72 回ロボット工学セミナー アドバンストな環境認識センサとその処理方法 日時 :2012 年 09 月 25 日 ( 火 )09:30~17:25 会場 : 東京大学本郷キャンパス工学部 2 号館 233 号室 ( 東京都文京区本郷 7-3-1) アクセス : http://www.u-tokyo.ac.jp/campusmap/cam01_04_03_j.html http://www.u-tokyo.ac.jp/campusmap/map01_02_j.html 東大前駅 ( 南北線 ) 徒歩 5 分, 本郷三丁目駅 ( 丸ノ内線, 大江戸線 ) 徒歩 10 分, 根津駅 ( 千代田線 ) 徒歩 10 分定員 :70 名 ( 定員になり次第締め切ります ) 参加費 : 当学会及び協賛学会の正会員 /8,400 円, 会員外 /12,600 円, 学生 ( 会員, 非会員を問わず )/4,200 円, 当学会賛助会員招待券ご利用 / 無料, 優待券ご利用 /4,200 円, 左記サービス券なし /12,600 円 賛助会員の皆様へ : 上記の招待券 (2 枚 / 口 ) 及び優待券 (10 枚 / 口 ) は, 年頭に各賛助会員学会窓口様宛に配布させて頂いておりますので有効にご活用ください. 課税について : 当学会及び協賛学会の正会員, 学生 ( 会員, 非会員を問わず ) の場合の参加費は不課税, それ以外の場合の参加費は税込となりますのでご承知おき下さい. 口上 : ロボットの行動を決定するためには, 周囲環境を定量的に認識することが重要です. 近年, 赤外光を利用した二次元測域センサやマルチレンズのカメラシステムなど, 機械特有の優れた機能を利用したアドバンストな環境認識センサの開発が進められています. これらのセンサは, ロボットによる環境認識の確度を高めるだけでなく, 人には感じることのできない情報を定量化することで様々な応用先を提供してくれます. 本セミナでは, 最新の環境認識センサのハードウェアとデータの処理方法について講師の先生方から解説していただきます. オーガナイザー : 大槻真嗣 ( 宇宙航空研究開発機構 ) WEB サイト :http://www.rsj.or.jp/seminar よりご確認下さい. 講演内容 : 09:30-09:35 < 開会挨拶 講師紹介 > 09:35-10:25 第 1 話サーモグラフィカメラによる赤外線センサ計測とその応用日本アビオニクス株式会社村上正肥赤外センサを利用したサーモグラフィカメラの動作原理と応用について解説し, また, 精度よく温度計測を行うための手法と注意点を示す. さらに, 赤外線センサを利用した最新技術動向や赤外線センサ計測の応用例である赤外機器システム事例について紹介する. 10:25-11:15 第 2 話対象物の温度を知るための遠赤外線センサのハードウェア東京大学高畑智之物体はその温度に応じたスペクトルの電磁波を放射しており, 常温に近い物質であれば波長 10 m 付近の遠赤外線を計測することで, 対象物の温度を知ることができる. ロボットが周囲の温度をもとに人や温度の高い物を認識することで, ロボットの機能をより高めることが期待できる. しかしながら, そのためにはロボットに搭載可能なセンサが必要となる. 本講演では, 遠赤外線を計測する各種方法を概観し, さらに近年の研究, 特に遠赤外線センサを小型 軽量化する研究について解説する. 11:15-12:15 第 3 話モアレ縞を用いた微小変位可視化メカニズムと画像処理を用いた計測システム広島大学高木健力, 圧力, 加速度などの物理量は微小な変位より計測されることが多い. この変位を直接人間が目視できれば様々な分野に応用できると考え, モアレ縞を応用し変位を視覚的に拡大表示することで, 電気的な要素を用いることなく, 縞模様や文字にて変位を提示できるメカニズムを開発した. 応用例としてロボットグリッパや手術器具の把持力を提示できることを紹介する. また, このメカニズムを撮影し画像処理すれば詳細な値を遠隔かつ無線にて取得できることも紹介する. 応用例として, 建造物の健全性の検査を目的とし, 振動の加速度を可視化するものと, ひずみを検査するための高精度なものを紹介する. 12:15-13:30 < 休憩 ( 昼食 )> 13:30-14:30 第 4 話コンピュテーショナルフォトグラフィ技術に基づく距離計測法の新展開広島市立大学日浦慎作コンピュテーショナルフォトグラフィは, 光学系の工夫によりカメラに新たな機能や性能を付与するための技術であり, その用途の 1 つとして画像からのぼけの除去が挙げられる. またその反対に, 主要被写体の前後の物体の像をぼかす, ぼけ生成も可能であるが, これらの過程でシーンの奥行き情報が必要であり, 距離推定に関する新たな取り組みがなされる素地となっている. また, ぼけ除去技術は画像計測における被写界深度の問題を解決しうることから, ステレオ法などの従来の距離計測法との融合的な研究も行われている. 本講演ではコンピュテーショナルフォトグラフィ技術とそれによる距離計測を, 従来の距離計測法と対比しながら解説する. 14:30-15:20 第 5 話ロバストな環境認識を実現する測域センサの機能北陽電機株式会社森利宏測域センサを我々が暮らす実空間で使用したときの問題点とその対策方法について説明する. 昨年発売した Ether-Top は屋外での使用を想定した IP67 の構造とマルチエコー機能がある. しかし, その機能がロバストな環境認識を保障したわけでなく, 測域センサからのデータの処理がロボットの環境認識能力に求められる. 屋外でロボットを安定して稼動させるための測域センサに求められる機能性能について説明する. 15:20-15:40 < 休憩 > 15:40-16:30 第 6 話レーザスキャナを利用した移動ロボットのための三次元環境計測千葉工業大学吉田智章整った環境では水平に設置したレーザスキャナだけで十分な情報が得られるが, 屋外など雑然とした環境では不十分なことが多い. そのため垂直方向にも広がりのある視野を持つ, 三次元計測が必要となる. 本講演ではレーザスキャナを用いた三次元計測について, その方式およびデータ処理方法について解説する. また, 実例として講演者らの開発したロボット,Quince および Papyrus での三次元環境計測について紹介する. 16:30-17:20 第 7 話移動ロボットによる三次元計測と特徴量を用いた空間の分類東北大学大野和則従来から不整地を走行するクローラロボットを用いて地下鉄や倒壊した建物の三次元計測や得られた三次元点群の特徴量を用いて瓦礫や細い構造物などに点群を分類する研究が行われている. 本講演では, レーザ距離計を用いた空間の三次元点群の計測とつなぎ合わせて地図を構築する方法, 計測した三次元点群を対象ごとに分類する方法について基礎的な部分から応用まで説明する. また, 小型レーザ距離計が切り開く新たな応用について概要を説明する. 17:20-17:25 < 閉会挨拶 >