神 経 系 とニューロン 神 経 伝 導 検 査 の 基 本 - 上 肢 を 中 心 に- 仙 台 医 療 センター 臨 床 検 査 科 鎌 田 真 知 中 枢 神 経 脳, 脊 髄 末 梢 神 経 ( 機 能 的 分 類 ) 体 性 神 経 系 運 動 神 経 感 覚 神 経 律 神 経 系 交 感 神 経 副 交 感 神 経 標 準 組 織 学 総 論 第 4 版 ( 医 学 書 院 )より 上 肢 の 神 経 神 経 幹 及 びニューロンの 構 造 腕 神 経 叢 C5 上 神 経 幹 外 側 神 経 束 筋 皮 神 経 C6 正 中 神 経 C7 中 神 経 幹 後 神 経 束 橈 骨 神 経 C8 腋 窩 神 経 T1 下 神 経 幹 内 側 神 経 束 尺 骨 神 経 神 経 線 維 の 分 類 分 類 髄 鞘 直 径 (µm) 伝 導 速 度 (m/sec) Aα 有 12-21 70-100 主 な 役 割 骨 格 筋 の 運 動 感 覚 Aβ 有 6-12 40-70 皮 膚 の 触 圧 覚 Aγ 有 4-8 15-40 筋 紡 錘 の 筋 運 動 Aδ 有 1-6 5-15 皮 膚 の 温 痛 覚 B 有 1-3 3-14 交 感 神 経 前 線 維 C 無 0.2-1 0.2-2 交 感 神 経 後 線 維 感 覚 神 経 の 分 類 分 類 髄 鞘 直 径 (µm) 伝 導 速 度 (m/sec) Ⅰa 有 12-21 70-100 筋 紡 錘 Ⅰb 有 12-21 70-100 臓 器 官 Ⅱ 有 6-12 40-70 領 域 筋 紡 錘 皮 膚 触 圧 覚 Ⅲ 有 1-6 5-15 皮 膚 の 温 痛 覚 Ⅳ 無 0.2-1 0.2-2 鈍 痛 内 臓 覚 神 経 伝 導 の3 原 則 1. 絶 縁 伝 導 ある 線 維 が 興 奮 してもその 興 奮 は 他 の 線 維 に 決 して 伝 わらない 2. 不 減 衰 伝 導 線 維 ( 軸 索 )の 直 径 が 定 ならば 伝 導 速 度 は 伝 導 中 に 変 化 しない 3. 両 側 性 伝 導 神 経 線 維 の 点 を するとその 興 奮 は 両 向 に 伝 導 する 但 し 体 内 では 不 応 期 があるので 両 向 性 には 伝 導 せず 1
全 か 無 かの 法 則 無 髄 線 維 と 有 髄 線 維 における 活 動 電 位 の 伝 導 加 えられた が 限 界 値 ( 閾 値 )より 弱 い 場 合 は 全 く 反 応 しない 閾 値 に 達 すると 反 応 するが,その きさは 最 限 度 である 三 上 章 允 脳 の 世 界 より 無 髄 線 維 では 隣 り 合 った 膜 の 部 分 に 順 々に 電 位 変 化 が 伝 わるの で 伝 導 に 時 間 がかかる 有 髄 線 維 ではランビエの 絞 輪 部 分 での み 膜 電 位 変 化 が 起 こればよいのでスピードが 速 くなる 崎 信 博 脳 科 学 辞 典 より 極 性 興 奮 の 法 則 電 極 下 では 静 止 膜 電 位 の 状 態 脱 分 極 により 活 動 電 位 が 発 生 隣 へ 伝 わって く 両 側 性 に 伝 導 陰 極 側 へ 伝 わる ブロック guyton & hall medical physiology より 神 経 伝 導 検 査 と 筋 電 図 を 学 ぶ 人 のために( 医 学 書 院 )より 神 経 伝 導 検 査 (NCS)で 何 が 分 かるか? 神 経 の 本 数 が 減 少 していないか 信 号 の 伝 わる 速 さはどうか 異 常 所 の 分 布 何 を するのか? 複 合 筋 活 動 電 位 (compound muscle action potential ; CMAP) : M 波,F 波 筋 上 から 感 覚 神 経 活 動 電 位 (sensory nerve action potential ; SNAP) 神 経 上 から 2
軸 索 変 性 と 節 性 脱 髄 軸 索 変 性 軸 索 変 性 末 梢 神 経 における 神 経 線 維 数 の 減 少 振 幅 の 低 下 節 性 脱 髄 髄 鞘 障 害 伝 導 遅 延, 伝 導 ブロック 神 経 伝 導 検 査 と 筋 電 図 を 学 ぶ 人 のために( 医 学 書 院 )より 節 性 脱 髄 軸 索 変 性 と 節 性 脱 髄 におけるNCSの 異 常 所 NCS 所 軸 索 変 性 節 性 脱 髄 MCV SCVの 低 下 - ± + 遠 位 潜 時 の 延 - ± + CMAP 振 幅 の 低 下 + + CMAP 持 続 の 延 - + CMAP 波 形 の 多 相 化 - + 神 経 伝 導 検 査 と 筋 電 図 を 学 ぶ 人 のために( 医 学 書 院 )より SNAP 振 幅 の 低 下 + + SNAPの 消 失 + + 末 梢 神 経 損 傷 の 程 度 (Seddonの 分 類 ) 主 な 評 価 項 目 と 特 徴 Neurapraxia( 一 過 性 神 経 伝 導 障 害 ) : 脱 髄 部 の 伝 導 ブロック 例 ) 痺 れ Axonotmesis( 軸 索 断 裂 ) : 軸 索 の 断 裂 末 梢 のWaller 変 性 例 ) 根 管 症 候 群, 肘 部 管 症 候 群 その 他 の 絞 扼 性 神 経 障 害 など Neurotmesis( 神 経 断 裂 ): 外 傷 による 神 経 断 裂 潜 時 と 速 度 CMAP SNAPより 潜 時 が い SNAP 1 点 でも 速 度 計 算 可 能 振 幅 CMAP 筋 繊 維 の 密 度 を 反 映 SNAP 太 い 神 経 線 維 の 密 度 を 反 映 波 形 両 極 で される 波 形 どうしの 引 き 算 3
運 動 神 経 伝 導 検 査 (MCS)の 原 理 MCSでの 予 備 知 識 伝 導 速 度 皮 膚 温 の 影 響 を 受 ける MCV=D/T2-T1 遠 位 潜 時 糖 尿 病 では 延 し 易 い CMAPの 振 幅 脛 骨 神 経 では 近 位 で 振 幅 低 下 CMAPの 構 成 尺 骨 神 経 基 準 電 極 ( 陽 極 )の 電 位 は0ではない! CMAP 波 形 = 陰 極 波 形 - 陽 極 波 形 小 指 外 転 筋 から 正 中 神 経 脛 骨 神 経 支 配 筋 が 多 い 短 指 外 転 筋 から a:cmap b: 活 性 電 極 波 形 c: 基 準 電 極 波 形 趾 外 転 筋 から 陽 性 から 始 まる 波 感 覚 神 経 伝 導 検 査 (SCS)の 原 理 電 極 の 位 置 がずれている 正 しい 位 置 に 付 け 直 す 目 的 筋 の 委 縮 が 強 い( 他 の 筋 の 収 縮 ) 陽 性 波 の 開 始 時 を 測 定 する SCV=D1/T1 or =D2/T2-T1 4
SCSでの 予 備 知 識 SNAPの 伝 導 速 度 皮 膚 温 の 影 響 を 受 ける SNAP 波 形 時 間 的 分 散 がある SNAPの 振 幅 軸 索 変 性 の 指 標 として 評 価 する 逆 法 で 実 施 を 正 しくとり, 電 極 の 抵 抗 を 十 分 下 げる 電 極 間 は3cm 離 す 最 上 で 実 施 なぜ 最 上? 目 的 : 対 象 とする 神 経 線 維 の 全 ての 成 分 を 興 奮 さ せるため 理 由 :1 同 じ 条 件 では 太 い 線 維 が 最 初 に 興 奮 する 2 軸 索 興 奮 の 順 序 は 電 極 と 神 経 線 維 と の 距 離 にも 影 響 される 3 強 度 を 増 すと, 電 極 の 陰 性 直 下 より 遠 位 での 神 経 線 維 の 興 奮 が 始 まる F:foot の F F 波 とは 複 合 筋 活 動 電 位 (CMAP) 運 動 神 経 線 維 による 逆 性 インパルスで 1 10%の 確 率 で 脊 髄 前 角 細 胞 が 興 奮 するこ とで 発 生 神 経 幹 全 体 の 伝 導 状 況 がわかる M F 波 の 伝 導 速 度 (FVC) F NCSが 利 される 主 な 上 肢 神 経 FVC=D/(F-M-1)/2 =D 2(mm)/F-M-1(ms) D: 部 から 脊 髄 までの 距 離 F :F 波 潜 時 M:M 波 潜 時 正 中 神 経 (median nerve) 尺 骨 神 経 (ulnar nerve) MCS,SCS,(F 波 ) 橈 骨 神 経 (radial nerve) 正 中 神 経 5
正 中 神 経 ( 主 要 枝 ) 支 配 筋 : 短 指 外 転 筋, 指 対 筋, 短 指 屈 筋 浅 頭 第 1 虫 様 筋, 第 2 虫 様 筋 手 関 節 での 障 害 : 手 根 管 症 候 群 (carpal tunnel syndrome) 肘 部 での 障 害 : 円 回 内 筋 症 候 群, 前 骨 間 神 経 症 候 群 など 正 中 神 経 のMCS S1: 掌 筋 と 橈 側 根 屈 筋 の 間 S2: 上 腕 動 脈 内 側 Ra: 短 指 外 転 筋 の 筋 腹 Rr: Raの 筋 腱 上 電 圧 は 徐 々に 上 げていく 尺 骨 神 経 の 短 潜 時 容 積 伝 導 反 応 を 避 ける 正 中 神 経 のSCS 正 中 神 経 の 掌 S: 掌 筋 と 橈 側 根 屈 筋 の 間 Ra: 第 2 指 近 位 指 節 間 関 節 Rr: Raより3cm 遠 位 S1: 掌 筋 と 橈 側 根 屈 筋 の 間 S2:S2と 指 のRaを 結 んだ 直 線 と 指 と 指 の 中 指 節 関 節 を 結 んだ 直 線 との 交 点 CMAPとの 区 別 閾 値 が さい 低 振 幅 持 続 時 間 が 短 い SCS: 陽 極 はS2より2cm 近 位 に MCS: 陽 極 はS2より2cm 遠 位 に 虫 様 筋 / 骨 間 筋 法 尺 骨 神 経 S1: 正 中 神 経 S2: 尺 骨 神 経 Ra: 第 2 中 手 骨 と 第 3 中 手 骨 の 間 Rr: 第 2 指 近 位 指 節 間 関 節 手 根 管 症 候 群 で, 第 2 虫 様 筋 は 短 指 外 転 筋 より 障 害 を 受 け 難 い 潜 時 差 が0.5msec 以 上 で 陽 性 支 配 筋 : 短 指 屈 筋 ( 深 頭 ), 指 内 転 筋, 小 指 外 転 筋 短 小 指 屈 筋, 指 対 筋, 短 掌 筋, 深 指 屈 筋 ( 第 4,5), 虫 様 筋 ( 第 3,4), 尺 側 手 根 屈 筋, 背 側 骨 間 筋, 掌 側 骨 間 筋 手 関 節 :Guyon 管 症 候 群 肘 関 節 : 肘 部 管 症 候 群, 遅 発 性 尺 骨 神 経 麻 痺 2L: 第 2 虫 様 筋 2I: 第 2 骨 間 筋 6
尺 骨 神 経 のMCS 尺 骨 神 経 のSCS S1: 尺 側 手 根 屈 筋 健 の 外 側 S2: 肘 部 ( 尺 骨 神 経 溝 の 僅 か 近 位 ) S3: 肘 下 部 ( 尺 骨 神 経 溝 より 約 3cm 遠 位 ) S4: 肘 上 部 (S3より 少 なくとも10cm 近 位 ) S5: 腋 窩 部 (S4より 少 なくとも10cm 近 位 ) Ra: 小 指 外 転 筋 の 筋 腹 Rr: Raの 遠 位 中 手 指 節 関 節 外 側 肘 を90 度 に 曲 げ 固 定 した 状 態 で 実 施 S: 尺 側 手 根 屈 筋 健 の 外 側 Ra: 小 指 近 位 指 節 間 関 節 Rr: Raより3cm 遠 位 CMAPとの 区 別 閾 値 が さい 低 振 幅 持 続 時 間 が 短 い 肘 部 での 尺 骨 神 経 の 橈 骨 神 経 絞 扼 好 発 部 位 1: 尺 骨 神 経 叢 2: 肘 部 管 ( 狭 義 ) 3: 尺 骨 手 根 屈 筋 縁 支 配 筋 : 上 腕 三 頭 筋, 短 橈 側 手 根 伸 筋, 尺 側 手 根 伸 筋, 指 伸 筋, 小 指 伸 筋, 肘 筋, 腕 橈 骨 筋 回 外 筋, 示 指 伸 筋, 指 外 転 筋, 短 指 伸 筋, 指 伸 筋 神 経 が 圧 迫 され 易 い: 橈 骨 神 経 痺 橈 骨 神 経 のMCS 橈 骨 神 経 のSCS S1: 電 極 より 数 cm 近 位 S2: 外 側 上 顆 よし6 10cm 近 位 Ra: 固 有 示 指 伸 筋 上 Rr: Raの3cm 遠 位 Gd: 電 極 と 電 極 の 間 S: 橈 骨 茎 状 突 起 の 約 7cm 近 位 Ra: 指 伸 筋 健 の 上 関 節 遠 位 Rr: Raより3cm 遠 位 部 位 が 異 なっても 同 じ 波 形 であ ること 正 中 神 経 の 賦 活 を 避 けるため, 弱 い で 実 施 する 7