[ 研 究 論 文 ] ルーセル 考 : 自 由 芸 術 の 発 明 高 橋 士 郎 Raymond Roussel and Cyber-art Shiro Takahashi レイモン ルーセルの 奇 想 天 外 な 小 説 アフリカの 印 象 1910 年 は アフリカの 自 然 芸 術 とヨーロッパの 科 学 芸 術 が アフリカのポニュケレ 国 タルー 七 世 の 聖 別 式 祝 祭 において 競 演 する 物 語 である 小 説 ロクスソルス 1914 年 は 科 学 者 カ ントレルがパリ 郊 外 の 丘 陵 に 建 設 した 芸 術 の 殿 堂 で 彼 の 研 究 成 果 を 披 露 する 物 語 である それらの 作 品 には 空 気 水 大 地 火 の 四 元 素 と 生 死 などの 主 題 が 取 り 上 げられる ジュールベルヌの 科 学 小 説 驚 異 の 旅 シリーズ が 生 活 の 実 用 品 の 夢 を 提 示 し 100 年 後 の 現 代 に 実 現 されていくのと は 対 照 的 に ルーセルの 小 説 は 高 次 に 知 的 総 合 された 想 念 世 界 を 提 示 し 100 年 後 の 現 代 のサイバー 世 界 を 類 推 させる 1)はじめに: 近 代 芸 術 の 終 焉 ジュール ベルヌは 小 説 の 草 稿 20 世 紀 のパリ 1863 年 において 100 年 後 の 1963 年 には 芸 術 が 金 融 経 済 と 科 学 技 術 に 駆 逐 され 人 生 は 歯 車 や 伝 達 装 置 の 仕 組 みで 説 明 されるよ うになると 予 想 した 小 説 の 中 で 詩 人 志 望 の 主 人 公 ミシェルは 芸 術 は 何 か 離 れ 業 でもしない 限 り もはや 生 き 残 れない 今 の 世 の 中 はもはや 市 場 に 過 ぎない だから 大 道 芸 人 がやるよ うな 茶 番 劇 で 世 の 中 を 楽 しませてやらなきゃならない と 嘆 く ミシェルの 叔 父 さんは 実 利 的 な 実 業 家 で 絵 画 は 着 色 図 面 デッ サンは 製 図 彫 刻 は 石 膏 型 音 楽 は 汽 笛 文 学 は 株 式 明 細 書 だ けで 芸 術 を 理 解 しているという 有 様 である ミシェルはさらに 1963 年 の 今 日 では 詩 の 領 域 にも 科 学 と 機 械 が 侵 入 し 書 店 にある 現 代 詩 集 は 詩 的 平 行 四 辺 形 空 気 観 想 電 気 諧 調 と 云 う 有 様 だと 嘆 く ちなみに 現 実 の 1960 年 代 に 筆 者 が 創 作 発 表 したキネチックアート 作 品 立 体 機 構 シリーズ 空 気 膜 造 形 シリーズ 電 脳 制 御 シリーズ は このジュール ベルヌの 予 想 と 全 く 一 致 している ジュール ベルヌが 出 版 社 に 持 ち 込 んだ この 悲 観 的 な 小 説 20 世 紀 のパリ は 採 用 されずに 未 刊 となり 破 棄 される 一 方 気 球 に 乗 って 五 週 間 - 三 人 のイギリス 人 によるアフリカ 探 検 が 空 前 の 成 功 をおさめて ジュール ベルヌは 人 気 作 家 として デビューする ジュール ベルヌの 小 説 月 世 界 旅 行 1865 年 では フロリダのタンパから 人 の 乗 った 大 砲 弾 を 月 に 向 かっ て 打 ち 上 げ 月 を 周 回 して 帰 還 し 北 太 平 洋 に 着 水 するのだが このアイデアは 100 年 後 の 1968 年 にフロリダのケープカ ナベラルから 打 ち 上 げられたアポロ 8 号 が 月 を 一 周 し 北 太 平 洋 に 着 水 して 実 現 された しかしながら 編 集 者 ジュール エッツエルが 1886 年 に 没 し 契 約 による 空 想 科 学 小 説 驚 異 の 旅 シリーズ の 執 筆 が 一 段 落 すると ジュール ベルヌは 再 び 科 学 技 術 に 批 判 的 な 人 間 性 を 描 くようになる 小 説 カルパチアの 城 1892 年 は 音 楽 狂 のゴルツ 男 爵 が カルパチア 山 脈 の 古 城 で 仮 想 現 実 の 歌 姫 ラ スティラとの 美 的 隠 遁 生 活 を 維 持 するために 蓄 音 機 幻 灯 機 電 話 機 の 近 代 機 械 を 駆 使 して 村 人 を 疎 外 し トランシ ルバニア 地 方 にオカルト 伝 説 が 継 承 される 物 語 である 巨 匠 ジュール ベルヌのような 人 気 小 説 家 をめざしたレイモ ン ルーセルの 奇 想 天 外 な 小 説 アフリカの 印 象 1910 年 は 当 時 の 文 壇 や 大 衆 の 支 持 を 得 ることが 出 来 なかったが 第 一 次 世 界 大 戦 直 前 の 若 い 前 衛 芸 術 家 達 に 大 きなインスピレーション をあたえた 80 才 を 迎 えた 美 術 家 マルセル デュシャンは 美 術 評 論 家 ピエール カバンヌとの 対 話 1966 年 の 中 で 24 才 の 青 春 期 にアントワーヌ 劇 場 で 観 た 演 劇 アフリカの 印 象 1913 年 の
体 験 を 語 っている あれはすばらしかった 舞 台 の 上 にはマ ネキン 人 形 と 一 匹 の 蛇 がいて その 蛇 がほんの 少 しずつ 動 くの です まったく 気 狂 い 沙 汰 でした テクストのことはあまりよ く 憶 えていません そんなに 聞 いていませんでしたからね あ れはほんとに 打 たれました その 後 ルーセルの 小 説 ロクス ソルス 1914 年 を 読 んだデュシャンは この 小 説 に 登 場 する 気 球 式 自 動 作 画 機 の 詳 細 なデッサンを 描 いている 本 稿 は 主 に ルーセルの 小 説 に 登 場 する 仮 想 機 械 について 考 察 する また デュシャンは 自 作 の 大 ガラス 花 嫁 は 彼 女 の 独 身 者 たちによって 裸 にされて さえも 1915-1923 年 の 創 作 法 と ルーセルの 創 作 法 に 共 通 する 言 葉 遊 び 掛 け 詞 についても 述 べている ルーセルの 影 響 は 確 かにあります 全 体 として はほとんどルーセルのものに 似 ていないとしても こうした 考 え つまり 私 自 身 もこのセンス あるいはむしろこのアンチセ ンスの 方 向 で 何 かを 試 みることができる という 考 えを 私 は 彼 から 吹 き 込 まれたのです ルーセルとデュシャンの 創 作 に 共 通 する 掛 け 詞 については 哲 学 者 ミシェル フーコ-の 著 書 レイモン ルーセル 1963 年 に 続 く 多 くのフランス 文 学 者 が 論 ずる 所 なので 著 者 の 出 番 はない 当 時 17 才 の 詩 人 アンドレ ブルトンは 26 才 の 時 に 執 筆 した シュルレアリスム 宣 言 : 溶 ける 魚 1924 年 の 中 で ルー セルは 挿 話 においてシュールレアリストである とのべている ルーセルの 小 説 は 多 くの 挿 話 で 組 み 立 てられていて そのフラ ンスの 教 養 をネット 検 索 で 逍 遥 することは ルーセルを 読 む 楽 しみの 一 つであるが 極 東 島 国 育 ちの 著 者 には 浅 はかな 試 みで あり 本 稿 においては その 挿 話 の 主 題 を 羅 列 するにとどめる 肥 大 化 した 大 脳 皮 質 をもてあます 人 類 の 狂 気 は 宗 教 芸 術 文 芸 などの あの 世 の 想 念 世 界 に 向 けて 創 作 エネルギーを 発 散 してきたが 行 き 場 のなくなった 創 作 エネルギーが 一 旦 物 質 文 明 の 方 向 に 向 かうと 粗 野 な 工 業 生 産 物 を 大 量 に 生 産 し 地 球 環 境 をも 破 壊 しはじめる この 世 の 現 実 において 芸 術 価 値 を 担 保 してきた 宗 教 権 威 宮 廷 権 威 などの 装 置 が 19 世 紀 に 無 能 化 し 金 融 権 威 科 学 権 威 民 族 権 威 に 取 って 代 わる 20 世 紀 の 現 代 芸 術 は 放 浪 をはじめる 2) 野 生 芸 術 と 科 学 芸 術 の 競 演 ルーセルの 小 説 アフリカの 印 象 は アフリカ 沖 で 漂 流 座 礁 したブエノスアイレス 行 きの 快 速 船 リュンケル 号 の 乗 員 40 名 が タルー 七 世 の 聖 別 式 の 祝 祭 に 特 別 参 加 して 次 から 次 へ と 近 代 科 学 によるヨーロッパの 人 工 芸 術 を 披 露 し アフリ カの 自 然 芸 術 と 競 演 する 物 語 である リュンケル 号 の 乗 員 達 が 遭 難 という 乱 暴 な 方 法 で 異 次 元 にトリップしたのとは 別 の 方 法 で この 世 のヨーロッパと あ の 世 のアフリカとを 往 来 する3 種 類 の 人 物 も 登 場 する 1) 聡 明 な 女 流 探 検 家 のルイーズは 未 知 への 探 求 者 で アフ リカでの 研 究 を 支 援 する 黒 人 王 ヤウルと 人 種 を 超 えた 共 感 を もっている 2) 第 五 アルジェリア 歩 兵 隊 の 脱 走 兵 ヴェルバルは 人 も 寄 り 付 かないアフリカの 魔 の 森 に 潜 む 孤 独 な 逃 避 者 で 誘 拐 されて 魔 の 森 に 捨 てられたタルー 七 世 の 赤 子 を 救 い 養 育 する 3) 運 命 の 巡 り 合 わせによってヨーロッパで 生 活 した 黒 人 少 年 セイルコルは 青 春 に 挫 折 してアフリカに 帰 還 し ヨーロッパ との 通 訳 者 となる 図 版 1: 自 動 作 画 機 地 叩 号 著 者 の 想 像 図 とデュシャンの 想 像 図 欧 州 初 の 飛 行 機 とんぼ 号 サントス デュモン 1909 年 小 説 アフリカの 印 象 の 構 成 は 前 半 と 後 半 にわかれている 読 者 は 小 説 の 前 半 で ポニュケレ 国 の 首 都 エジェルの 中 心 広 場 における 超 現 実 的 で 意 味 不 明 な 光 景 に 遭 遇 し 小 説 の 後 半 で 今 度 は 同 じ 物 語 を 合 理 的 な 記 述 で 読 み 返 えすことにより あの 世 の 想 念 世 界 と この 世 の 現 実 世 界 とが 連 続 し 納 得 するという 仕 掛 けである 第 1 章 と 第 2 章 戦 利 品 広 場 には 肺 臓 製 のレールの 上 を 鯨 の 髭 を 編 んで 造 った 奴 隷 像 が 移 動 していくという 摩 訶 不 思 議 な 造 形 作 品 が 登 場 し 第 21 章 にその 意 味 が 記 述 される す なわち 隣 国 の 宿 敵 ヤルー 王 が 庇 護 していたルイーズの 釈 放 条 件 として タルー 七 世 が 示 した 実 行 不 可 能 な 最 後 通 牒 は 座 礁
船 の 料 理 長 が 夕 食 に 調 理 した 美 味 でぶょぶょの 食 材 で 船 荷 の 中 にあった 蒸 気 機 関 車 がその 上 を 走 るようなレールを 製 作 し そのレールの 上 を 走 る 等 身 大 の 彫 刻 像 を 造 れ という 命 令 で あった 命 令 に 対 するルイーズの 解 答 が 船 荷 の 中 でみつけた 服 飾 用 のペチコート 素 材 で 超 軽 量 な 彫 刻 像 を 製 作 し 肺 臓 の 傾 斜 路 を 滑 らせるというアイデアであった またタルー 七 世 の 頭 や 手 足 を 動 かすことのできる 三 つの 彫 刻 像 を 製 作 せよという 難 問 にたいしては 頭 脳 が 点 灯 する 哲 学 者 イマニエル カントの 胸 像 ライトアート 老 練 な 執 政 が 幼 いルイ 15 世 の 前 で 平 伏 し 屈 伸 運 動 を 繰 り 返 す 彫 像 の キネ チックアート 群 像 彫 刻 が 演 技 する ロボテックアート を 完 成 させる 研 究 熱 心 なルイーズは 化 学 実 験 の 障 害 で 肺 を 傷 めていて 人 工 排 気 弁 を 装 着 しているのだが その 装 置 は 男 装 した 軍 服 の 飾 紐 でカモフラージュされていて ルイーズの 感 情 が 高 揚 すると 自 律 神 経 に 同 期 して 排 気 音 が 高 鳴 る 科 学 技 術 を 用 いて 人 間 の 身 体 機 能 を 向 上 させるトランスヒューマニズムの 思 想 が 現 れる のは 生 物 学 者 J.B.S. ホールデンの 著 書 ダイダロス あるい は 科 学 と 未 来 1923 年 のことであり 1928 年 に 実 用 化 した 鉄 の 肺 は 患 者 の 首 から 下 を 気 密 タンクに 入 れて 間 歇 的 に 減 圧 するという 大 げさなものであった <モンテレスコ 姉 弟 の 彫 像 作 品 > 挿 話 1. 殺 害 される 無 能 な 奴 隷 サリダキス 挿 話 2. 執 政 ボウイングと 少 年 王 ルイ 15 世 挿 話 3. 尼 僧 ペルペュアの 嘘 と 方 便 第 3 章 は 重 力 磁 力 熱 力 などの 物 理 力 学 を 題 材 とする 曲 芸 団 と 創 作 機 械 の 出 演 である サーカス 団 のブシャレサス 兄 弟 が 演 ずる 軽 業 芸 a. 右 利 きのヘクターと 左 利 きのトミーによ る 左 右 対 称 の 二 重 ジャグリング b. マリウス 10 才 の 猫 取 り 競 争 ゲーム c. ボブ 5 才 による 声 帯 模 写 d. 娘 ステラ 14 才 によ る 車 輪 乗 りの 四 つは ロジェ カイヨワが 著 書 遊 びと 人 間 1958 年 で 分 類 した 四 種 類 の 遊 び a. 偶 然 の 遊 び アゴーン b. 競 争 の 遊 び アレア c. 模 倣 の 遊 び ミミクリ d. 眩 暈 の 遊 び イリンクス に 相 当 する 技 術 者 メゾニヤルが 発 明 した フェンシング 機 械 は 高 速 で 回 る 弾 み 車 に 外 力 が 加 わると 意 外 な 運 動 をする 角 運 動 量 保 存 則 を 応 用 した 剣 術 ロボットで 歯 車 式 のプログラムを 切 替 える と フェイントをかけながら 剣 先 はずし まわし 突 き 切 り 上 げを 仕 掛 け チャンピオンの 人 間 剣 士 を 打 ち 負 かす 科 学 者 ベ クスが 発 明 した 感 熱 金 属 ベクシウム を 応 用 した 自 動 演 奏 機 械 は 寒 暖 2 本 のガスボンベの 弁 を 開 閉 調 整 すると 様 々 に 変 化 する 曲 を 演 奏 する ベクシウム の 作 用 は 温 度 差 を 感 じて 電 圧 を 直 接 起 電 するゼーベック 効 果 (1821 年 ) ペルティ エ 効 果 (1834 年 ) トムスン 効 果 (1854 年 ) に 相 当 する おなじく 科 学 者 ベクスのパフォーマンス 巨 大 なボタン 磨 き 板 宝 石 と 金 属 を 吸 い 寄 せる 物 質 マグネティン とその 吸 引 力 を 遮 蔽 する 防 御 板 インペルビウム による 実 験 は クーロ ンの 法 則 と 荷 電 粒 子 の 軌 道 運 動 のスケールで 計 算 すると 静 電 気 の 電 磁 気 実 験 とは 考 えにくい なにかスケーリング 問 題 を 超 える 超 強 力 磁 場 のようである 文 芸 や 絵 画 の 想 念 空 間 では 現 実 の 物 理 科 学 を 無 視 する 不 合 理 な 表 現 がまかり 通 る アリスやガリバーが 縮 小 拡 大 しても 地 球 上 の 万 有 引 力 空 気 の 固 有 共 振 数 生 物 細 胞 の 寸 法 などは 縮 小 拡 大 せずに 一 定 なのだから アリスやガリバーの 動 作 や 音 声 はおかしなことになるはずなのだが 表 現 者 と 鑑 賞 者 は 地 球 上 の 常 識 という 暗 黙 の 了 解 の 上 で 成 立 することなので 当 然 な がら 読 者 の 感 性 は 物 理 方 程 式 に 無 頓 着 である リュンケル 号 の 乗 員 達 の 出 し 物 に 続 いて ポニュケレ 国 のタ ルー 七 世 のやんちゃな 息 子 レジェド 12 才 は 巨 鳥 にぶら 下 がっ て 空 中 飛 行 を 披 露 する 第 4 章 と 第 5 章 は 音 声 言 語 の 挫 折 がテーマである 高 名 な 歴 史 学 者 と 生 物 学 者 による 知 的 語 り 芸 ともいうべき 学 術 講 演 に 続 いて サーカス 団 員 が 登 場 し 四 つの 音 曲 芸 でオーラル 言 語 を 揶 揄 する a. 両 手 両 足 のない 不 具 者 のタンクレードは 全 版 2: 技 術 者 メゾニアルの 剣 術 機 械 と 科 学 者 ベクスの 温 感 オーケストラ 巨 大 ボタン 磨 板
身 の 筋 肉 運 動 を 駆 使 して 四 種 類 の 楽 器 を 巧 みに 演 奏 してみせ る b. 歌 手 リュドビックは 唇 の 両 端 を 別 々に 動 かして 同 時 に2 音 を 発 声 し 一 人 でカノン 形 式 の 曲 を 輪 唱 する c. 小 人 のフィリッポは 自 分 の 小 さな 胴 体 を 皿 の 下 に 隠 して 首 だ けを 皿 の 上 に 現 すというトリックで あたかも 生 首 が 皿 の 上 で お 喋 するかのような 芸 を 演 じる d. 片 足 のサーカス 団 長 レル ガルシュは 切 断 された 自 分 の 大 腿 骨 で 造 った 骨 笛 を 使 って 悲 しい 曲 を 吹 奏 する e. 曲 馬 師 ユルバンが 調 教 する 特 殊 な 舌 を もつ 馬 は 意 味 を 解 さない 言 語 を 雄 弁 に 模 倣 発 声 する 大 歌 手 キュイジベルは 秘 蔵 するブリキの 拡 声 笛 を 使 用 して 朗 々と 独 唱 し 名 女 優 アデイノルファは 切 々とタッソーの 悲 嘆 詩 を 朗 読 する ポニュケレ 国 のタルー 七 世 も 衣 々の 歌 を 美 しい 裏 声 で 独 唱 するが プロンプター 役 のカルミカエルと 息 が 合 わない 言 語 の 構 造 的 あるいはメタ 的 な 解 明 が 始 まるのは フェルディナン ド ソシュールの 論 文 インド ヨーロッパ 語 の 覚 書 1878 年 からのことである オペレッタ 一 座 が 演 ずる 六 つの 活 人 画 は 物 語 のクライマッ クスに 絵 画 的 な 構 図 で 舞 台 を 静 止 し 観 客 の 視 覚 に 訴 える 黙 示 劇 である 歌 舞 伎 の だんまり も 言 語 説 明 を 超 えた 視 覚 的 な 美 感 表 現 に 専 念 する 初 期 のダゲレオタイプでは 芸 術 指 向 の 活 人 画 が 盛 んに 作 画 された ダゲレオタイプが 音 声 を 録 音 するわ けではないが 長 い 露 光 時 間 の 間 被 写 体 は 不 動 のポーズを 維 持 して 沈 黙 をまもる 必 要 がある < 活 人 画 のテーマ> 挿 話 4. オリュンポスの 神 々の 祝 宴 の 場 面 挿 話 5. 大 農 場 主 の 遺 児 ウエスラが オンタリオ 湖 の 魔 法 で 時 間 の 循 環 に 陥 った 悪 党 達 を 救 う 場 面 挿 話 6. 年 老 いた 盲 目 の 名 作 曲 家 ヘンデルが 七 本 の 柊 と 自 宅 の 階 段 を 利 用 して 聖 譚 曲 を 機 械 的 に 作 曲 する 場 面 挿 話 7. ロシア 皇 帝 が 言 語 の 策 略 を 使 って 大 衆 の 深 層 心 理 に 働 きかけ 暗 殺 者 を 発 見 する 場 面 挿 話 8. ギリシャの 自 由 の 戦 士 カナリス 将 軍 を 讃 えるために 森 の 精 が 視 覚 聴 覚 のみならず 嗅 覚 の 受 容 神 経 に 訴 える 場 面 挿 話 9. イタリアの 大 金 持 サヴァリニ 公 が 場 末 の 雑 踏 の 中 で 貧 乏 人 の 財 布 を 盗 む 場 面 第 6 章 は 草 原 とテーズ 河 における 空 気 水 火 による 非 線 形 科 学 の 造 形 である ポニュケレ 国 のアルコットと 6 人 の 息 子 達 は それぞれが 幾 何 級 数 的 に 正 確 な 方 向 と 距 離 をとって 直 立 配 列 すると 互 いの 胸 窟 で 声 音 を 共 鳴 させて 音 響 コーラ スを 披 露 する 河 の 中 に 設 置 した 発 明 家 ブデユの 織 機 は 水 流 に 飛 び 跳 ねる 多 数 の 水 車 につないだ 糸 の 動 きが コンピュータ を 連 想 させるブラックボックスに 入 力 されると 出 力 側 の 糸 が 創 世 記 のタペストリを 織 り 出 す 彫 刻 家 フィユクシェが 披 露 す る 五 つの 青 いボンボン は 水 中 に 投 げ 込 まれると 振 動 して 水 面 に 波 紋 画 像 を 生 成 する 水 の 表 面 波 の 理 論 が レイリー 男 爵 によって 明 らかにされたのは 1885 年 のことである 花 火 師 リュクソは 花 火 で 夜 空 に 絵 画 を 描 く ローベルト ブンゼンが ブンゼン 燈 の 焔 と 分 光 器 で 炎 色 反 応 を 解 明 したのは 1860 年 の ことである < 青 いボンボン: 波 紋 絵 画 のテーマ> 挿 話 10. 打 ち 取 ったメヅーサの 首 を 掲 げるペルセウス 挿 話 11. 拍 手 喝 采 をあびて 食 卓 の 上 で 踊 る 踊 り 子 達 挿 話 12. 創 作 詩 を 盗 み 読 みされる 詩 人 ジアパリュ 挿 話 13. 周 期 的 に 季 節 風 が 吹 くコカーニュの 国 の 風 時 計 挿 話 14. 半 裸 のコンティ 公 と 飼 い 馴 らしたカケス 第 7 章 はメタ 認 識 と 自 己 形 成 の 物 語 である 催 眠 術 師 のダ リアンは 事 故 で 記 憶 を 喪 失 したセイルコアを 歯 車 がコトコ トと 鳴 る 映 写 機 の 映 像 刺 激 を 使 って 治 療 する タルー 七 世 の 虚 弱 な 息 子 カジル 8 才 と 献 身 的 な 養 女 メイス デル 7 才 が 演 ずるシェイクスピア 劇 発 見 されたロメオとジュ リエットのエピローグ は 悲 劇 のヒーローとヒロインが 引 き 起 こす 偏 見 先 入 観 誤 りの 原 因 を 明 らかにする 一 幕 で 幼 年 期 のロメオとジュリエントが 自 己 形 成 期 に 影 響 を 受 けた 家 庭 教 師 の 教 訓 話 と 乳 母 の 話 からなる 六 つの 幻 影 で 構 成 される 彫 刻 図 版 3: 彫 刻 家 フィユクシェの 波 紋 絵 画 煙 彫 刻 バイオアート
家 フィユクシェが 発 明 した 熱 すると 煙 の 彫 刻 を 生 成 する 赤 いボンボン が 炉 に 焼 べられると 次 から々へとその 幻 想 が 出 現 する ロメオとジュリエットが 見 る 幻 想 は フランシス ベー コンが 説 いた 真 理 を 歪 曲 する 4 つの 偶 像 a. 感 覚 錯 覚 によ る 偶 像 b. 教 育 習 慣 による 偶 像 c. 言 語 偏 見 による 偶 像 d. 思 想 学 説 による 偶 像 と 一 致 する 18 世 紀 以 来 つづけられてい るシェイクスピア 別 人 説 には ベーコンがシェイクスピアであ るという 説 もある < 赤 いボンボン:ロメオの 見 る 幻 影 > 挿 話 15. イブの 誘 惑 挿 話 16. 放 蕩 児 ティシアスの 乱 痴 気 騒 ぎ 挿 話 17. 魂 が 肉 体 から 離 れていく 聖 イグニシアスの 殉 教 挿 話 18. 娼 婦 にひざまずく 苦 行 者 フェイオル <ジュリエットの 見 る 幻 影 > 挿 話 19. 群 衆 に 石 もておわれるエレミアの 殉 教 挿 話 20. 女 食 人 鬼 ペルゴヴェデュール 挿 話 21. 父 キャピュレットの 幻 とイエズの 幻 は 舞 台 大 道 具 の 簾 を 使 った 透 過 光 の 照 明 効 果 で 演 出 される 挿 話 22. 金 貨 を 振 り 撒 く 妖 精 ユルジュールは 船 荷 の 中 にあっ た 美 容 室 のマネキン 人 形 が 代 用 される また 彫 刻 家 フィユクシェは 葡 萄 の 種 子 を 任 意 の 形 に 成 長 させる バイオアート を 発 明 して 葡 萄 粒 の 中 に8つの 場 面 を 制 作 する < 葡 萄 のバイオアート> 挿 話 23. ケルトの 戦 士 達 がいるゴールの 光 景 挿 話 24. 宿 敵 ウードの 体 を 鋸 で 引 く 悪 魔 の 幻 夢 挿 話 25. ローマ 円 形 闘 技 場 の 剣 闘 士 達 挿 話 26. スペイン 民 衆 に 呪 われるナポレオン 挿 話 27. 籠 網 作 りの 少 年 とその 姉 妹 を 救 済 するイエズ 挿 話 28. 黒 い 森 の 伝 説 の 樵 ハンス 挿 話 29. ひなげし 色 のドレスを 着 て 戸 の 前 に 立 つ 女 性 挿 話 30. 天 使 の 剣 で 傷 をおう 悪 魔 第 8 章 ポニュケレ 国 の 自 然 芸 術 とヨーロッパの 人 工 芸 術 の 競 演 は 大 自 然 の 驚 異 的 な 造 形 でフィナーレを 迎 える タ ルー 七 世 の 風 変 わりな 長 男 フィガロ 15 才 は 超 人 的 な 海 底 遊 歩 術 の 途 中 で 発 見 した 六 つの 海 中 生 物 a. 三 角 旗 状 の 生 物 b, 石 鹸 泡 状 の 生 物 c. 心 臓 が 透 けて 見 えるスポンジ 状 の 生 物 b. 亜 鉛 円 盤 状 の 生 物 e. ゼラチン 質 の 生 物 f. 縁 飾 紐 状 の 生 物 を 展 示 して パフォーマンスアート を 演 じる 19 世 紀 末 の アー ル ヌーヴォー に 大 きな 影 響 をあたえた 生 物 学 者 エルンス ト ヘッケルの 画 帳 自 然 の 芸 術 造 形 の 完 成 版 が 発 行 された のは 1904 年 のことである 長 男 フィガロは さらに 海 辺 で 発 見 した 録 画 機 能 をもつ 植 物 のパフォーミングを 展 開 する この 録 画 する 植 物 の 成 長 期 に ヨーロッパの 豪 華 本 に 印 刷 されていた 挿 絵 を 順 繰 りに 記 憶 させ ると 成 長 した 葉 脈 はその 画 像 を 順 繰 りに 再 生 上 映 する < 録 画 植 物 の 再 生 画 像 > 挿 話 31. 詩 人 とモール 人 の 女 再 生 する 画 像 は 中 東 の 庭 園 黄 金 色 の 砂 漠 中 国 人 の 実 験 室 商 人 の 宴 会 場 楽 園 街 道 筋 岩 の 絶 壁 と 深 淵 第 9 章 祝 祭 の 翌 朝 ルイーズは 長 年 打 ち 込 んできた 光 起 電 効 果 による 感 光 盤 と 自 動 描 画 アーム 機 構 を 完 成 させて ア フリカの 日 の 出 の 風 景 をキャンバスに 描 く このデジタル 色 彩 絵 画 のラスタースキャニング 方 式 は 現 在 の TV やパソコンモ ニタが 採 用 している 横 方 向 スキャニングではなく 重 力 に 素 直 な 縦 方 向 スキャニングである 白 黒 デッサンの 場 合 には 巧 み なランダムスキャニング 方 式 に 切 り 替 わる 無 数 の 電 線 と 受 光 素 子 を 束 ねたルイーズの 感 光 盤 イメージセンサは, 光 学 レンズ を 持 たない 肖 像 画 家 であったルイ ジャック マンデ ダゲールは ブ ルジョア 階 級 の 増 加 にともなう 肖 像 画 の 消 費 需 要 に 対 応 するた めに 銀 塩 感 光 法 による 自 動 描 画 技 術 ダゲレオタイプを 発 明 し た フォトグラフの 出 現 は 19 世 紀 末 のパリの 画 家 達 の 思 索 を 刺 激 し 様 々な 主 義 主 張 の 絵 画 を 産 む 契 機 となる デュシャン 図 版 4: タルー 七 世 の 長 男 フィガロの 海 中 生 物 コレクション
は デッサンという 観 点 からすれば 写 真 はきわめて 正 確 な 形 を 与 えます それで それとは 別 のことをしたいと 思 っている 芸 術 家 は 自 分 にこう 言 い 聞 かせます とっても 簡 単 だ できる かぎりデフォルメしよう そうすれば 写 真 のあらゆる 表 現 か ら 完 全 に 離 れていられるだろう と 述 べている そういうデュ シャンの 二 人 の 兄 は 立 体 派 の 画 家 と 未 来 派 の 彫 刻 家 であった ので 三 男 のデュシャン 自 身 はやることがなく ダダとならざ るをえない 現 代 のコンピュータグラフィックスとルネッサン ス 絵 画 とに 共 通 する 絵 画 アルゴリズムについては 著 者 の 論 文 絵 画 の 方 程 式 研 究 紀 要 7 号 1992 年 に 掲 載 してある 小 説 の 後 半 第 10 章 から 第 25 章 は 前 半 の 出 来 事 を 合 理 的 な 記 述 で 繰 り 返 し 最 後 の 第 26 章 で ヨーロッパから 充 分 な 身 代 金 が 到 着 したリュンケル 号 の 乗 員 達 は 釈 放 されて 母 国 に 無 事 帰 国 し この 世 のアイデンティティを 回 復 する ポニュ ケレ 国 にも 金 融 経 済 が 通 用 したことは 幸 運 なことであった リュンケル 号 の 乗 員 達 が ポニュケレ 国 の 首 都 エジェルに 到 着 した 時 に 先 ず 最 初 にしたことは 劇 場 の 建 設 と 株 取 引 所 の 建 設 であった 祝 賀 祭 の 参 加 芸 術 作 品 に 賭 けた 掛 金 の 総 額 一 万 フ ランは ポニュケレ 国 住 民 の 拍 手 が 一 番 多 かった 芸 マリウス 10 才 の 猫 取 り 競 争 ゲーム に 賭 けた 株 主 達 に 配 分 された 金 融 経 済 こそが 想 念 世 界 と 現 実 世 界 を 連 続 させる 最 大 の 成 功 例 なのかもしれない 生 涯 に1 枚 の 絵 しか 売 れなかったフィンセント ファン ゴッ ホが 貧 困 の 内 に 生 涯 を 閉 じた 1890 年 に 描 かれた 油 画 医 師 ガ シュの 肖 像 を 1990 年 のクリスティーズ オークションに おいて 日 本 人 が 82,500,000 ドルで 落 札 したことは 金 融 経 済 と 芸 術 の 終 末 を 象 徴 する 3) 自 由 芸 術 の 発 明 ルーセルの 小 説 ロクス ソルス は 科 学 者 カントレルが パリ 郊 外 に 自 由 芸 術 の 殿 堂 を 建 設 して 自 分 の 発 明 品 を 展 示 し それらの 発 明 の 証 人 として 観 客 を 招 待 する 物 語 である 美 術 館 や 画 廊 などの 芸 術 を 担 保 する 既 存 の 枠 組 みを 外 れて 個 人 のパ ビリオンで 自 由 意 志 による 個 展 が 開 催 される 展 示 作 品 の 主 題 は 土 風 水 火 の 四 元 素 と 生 と 死 のテーマ 作 品 を 経 て 自 由 創 作 に 至 る 第 1 章 は カントレルの 展 示 館 が 散 在 する 丘 陵 への 坂 道 に 設 置 された 石 祠 の 由 来 話 からはじまる 石 祠 に 収 められた 土 偶 はサハラ 砂 漠 の 秘 境 都 市 トンブクトの 王 女 セルールにまつわる 薬 用 植 物 の 物 語 石 祠 の 外 側 に 彫 られた 浮 彫 りはブルターニュ の 王 女 エロにまつわる 王 冠 金 属 の 物 語 であり アフリカの 伝 説 とヨーロッパの 伝 説 とが 土 と 石 の 固 相 に 合 体 されている < 石 祠 のテーマ> 挿 話 32. トンブクトの 王 女 セルールのヒステリー 治 療 挿 話 33. ボルド 国 王 の 遺 児 王 女 エロの 王 位 継 承 物 語 第 2 章 は 風 の 気 相 開 放 系 のカオスに 関 する 物 語 である カ ントレルは 気 象 の 変 化 を 計 算 する 方 法 を 編 み 出 し 自 然 の 風 に 制 御 されてモザイク 画 を 制 作 する 気 球 式 自 動 作 画 機 を 実 験 す る <モザイク 画 のテーマ> 挿 話 34. 北 欧 伝 説 リッテルの 中 の 水 球 物 語 王 女 ウルフラの 王 位 継 続 の 古 書 を 読 んで 改 心 する 悪 党 アグー 気 球 式 自 動 作 画 機 は 太 陽 の 位 置 計 測 地 磁 気 の 方 向 検 出 太 陽 熱 線 による 水 素 発 生 と 浮 力 調 整 による 姿 勢 制 御 と 石 灰 質 吸 着 ハンドを 備 えた 精 巧 な 制 御 システムである 現 代 の 位 置 計 測 の 場 合 には 複 数 の 人 工 衛 星 を 利 用 した 全 地 球 測 位 システム GPS が 日 常 的 に 使 用 されている GPS はア ルベルト アインシュタインの 特 殊 相 対 性 理 論 ( 光 速 度 不 変 の 原 理 )1903 年 と 一 般 相 対 性 理 論 ( 時 空 連 続 体 の 歪 み)1917 年 による 地 上 の 時 計 の 宇 宙 的 な 遅 れを 補 正 するなどの 方 法 で 高 い 精 度 を 実 現 している 1849 年 にはロンドンの 新 聞 社 が 当 時 最 新 の 電 信 技 術 1837 年 を 利 用 して 各 地 の 気 象 情 報 を 集 め 天 図 版 5: 第 1 章 固 相 の 石 祠 第 2 章 気 相 のモザイク 画 第 3 章 液 相 のアクアミカ
気 図 を 作 成 し 発 行 した 現 代 の 気 象 予 想 は スーパーコンピュー タを 利 用 して 地 球 規 模 の 気 象 水 象 地 象 などの 数 値 解 析 シミュ レーションをおこなう 積 分 法 によっては 得 られない 複 雑 な 物 理 現 象 を 概 念 化 して カオス と 命 名 したのは 1975 年 のこと である それにしても 混 沌 のカオスから 整 然 としたモザイク 画 を 生 成 するというルーセルの 発 想 は 尋 常 ではない しかしながら 混 沌 からの 天 地 創 造 は 神 話 世 界 での 常 套 手 段 であり 河 の 流 れから 創 世 記 のタペストリを 生 成 する 発 明 家 ブデユの 織 物 機 械 や 彫 刻 家 フィユクシェの 波 紋 絵 画 を 将 来 の 超 高 速 コンピュー タが 実 現 しないとは 限 らない ダヴィンチが 繰 り 返 し 描 いた 水 流 のカルマン 渦 や 北 斎 が 描 いた 波 形 の CG シミュレーション 画 像 を 現 代 のスーパーコンピュータはすでに 実 現 している 第 3 章 は 液 相 と 電 離 イオンの 物 語 である カントレルが 発 明 した 光 る 酸 化 励 起 水 アクアミカ を 満 たした 巨 大 な 透 明 水 槽 の 中 で 様 々な 電 磁 波 実 験 が 繰 り 広 げられる アクアミカ の 中 を 遊 泳 する 踊 子 フォスティーヌの 長 髪 は 帯 電 による 電 磁 誘 導 で 振 動 し 音 楽 を 奏 でる 電 素 錠 エリトリトール を 内 服 し て 生 体 電 池 と 化 した 賢 いシャム 猫 が 水 中 を 泳 ぎ 回 ってフォス ティーヌの 助 手 を 勤 める 浮 力 制 御 された 七 つの 潜 水 式 風 船 人 形 が 昇 降 して 水 中 人 形 劇 を 演 じる < 潜 水 式 風 船 人 形 劇 のテーマ> 挿 話 35. アレキサンダ 大 王 を 暗 殺 装 置 から 救 う 力 士 挿 話 36. 光 責 めの 頭 痛 に 苦 しむユダヤの 悪 総 督 ピラトス 挿 話 37. アラビアの 古 代 楽 器 を 発 掘 する 詩 人 ジルベール 挿 話 38. 血 の 発 汗 で 豊 作 を 予 言 する 小 人 の 詐 欺 挿 話 39. 疲 労 して 地 球 を 放 り 出 す 巨 神 アトラス 挿 話 40. 信 仰 心 と 懐 疑 心 に 悩 む 哲 学 者 ボルテール 挿 話 41. 占 い 師 の 予 言 を 聞 く 天 才 ワグナーの 母 挿 話 42. 断 頭 台 ですり 替 えられた 革 命 家 ダントンの 首 カントレルが 発 明 した 三 つの 物 質 a. 頭 蓋 の 中 に 注 入 して 脳 を 凝 固 し 蘇 生 させる 注 射 液 レジュレクティーヌ b. 服 用 す ると 血 管 が 拡 張 して 体 内 に 広 がり タンパク 質 繊 維 を 起 電 させ て 動 物 を 電 池 に 変 える 赤 い 錠 剤 エリトリトール c. 脳 内 で エ リトリトール と レジュレクティーヌ を 化 学 反 応 させて 強 力 な 電 気 を 脳 に 浸 透 させる 褐 色 の 金 属 触 媒 ヴィタリウム の 作 用 で 革 命 家 ジョルジュ ダントンの 首 は 蘇 生 し 唇 は 無 音 の 弁 論 を 力 強 く 再 演 する 第 4 章 は 死 者 の 生 前 の 行 為 を 再 現 して 遺 族 の 悲 しみを 癒 す 物 語 である 遺 族 が 持 ち 込 む 最 愛 の 八 体 の 遺 体 は それぞれ の 人 生 のクライマックスに 脳 細 胞 シナプスの 結 合 ネットの 形 で 物 質 化 された 記 憶 データが 蘇 生 液 と 金 属 触 媒 の 電 気 作 用 で 活 性 化 されて 死 者 の 筋 肉 運 動 を 再 演 する この 死 体 ロボット 達 は その 出 力 機 構 が 働 くだけで フィードバックに 必 要 な 入 力 センサーと 論 理 回 路 が 機 能 しないために カントレルの 助 手 達 は 死 体 ロボットの 外 部 環 境 を 調 整 するために 舞 台 裏 で 大 活 躍 す る 鉄 腕 アトムのような 自 律 ロボット 開 発 をめざしながら フ レーム 問 題 を 克 服 できなかった 現 代 のロボット 開 発 に 似 てい る メアリー シェリーの 小 説 フランケンシュタイン:すなわ ち 現 代 のプロメシュース 1918 年 に 登 場 する 名 前 さえも 付 けて 貰 えなかった 創 造 体 クリーチャの 場 合 は 死 体 の 部 品 を 寄 せ 集 めて 構 成 された 人 体 が 誕 生 後 の 自 発 的 な 学 習 によって 人 間 らしい 思 想 を 獲 得 していき 創 造 者 である 医 学 生 ヴィクター フランケンシュタインを 伴 って 自 滅 していく 物 語 である ルー セルの 小 説 には このような 一 神 教 徒 に 特 有 なフランケンシュ タイン コンプレックスはない <ガラスの 檻 : 死 体 劇 場 のテーマ> 挿 話 43. 盗 賊 に 監 禁 された 詩 人 ジレットが 獄 中 の 塵 埃 を 再 利 用 して 息 子 の 命 を 救 い 執 筆 創 作 を 続 ける 場 面 挿 話 44. ブルターニュに 伝 わる 聖 なる 万 力 の 小 道 具 を 使 用 し て 行 われる マオ 夫 婦 の 幸 福 な 金 婚 式 の 場 面 挿 話 45. 地 球 磁 力 の 影 響 で 頭 痛 を 起 こす 貴 族 ロランの 財 産 詐 欺 図 版 6: 死 者 の 劇 場 自 然 光 を 利 用 した 初 期 のガラス 張 り 撮 影 スタジオ
受 難 劇 を 俳 優 のロレスが 演 ずる 場 面 挿 話 46. 幼 児 セロスが 覚 えたての 詩 を 暗 唱 する 場 面 挿 話 47. 彫 刻 家 ジェルジュクが 発 明 した 独 創 的 なポジ ネガ 造 形 法 で 得 意 げに 作 品 を 制 作 する 場 面 挿 話 48. 作 家 ルカルヴェが 鉄 檻 の 中 で 放 射 線 照 射 法 による 胃 癌 治 療 を 受 けている 場 面 挿 話 49. トラウマをかかえた 上 院 議 員 夫 人 が 赤 色 の 反 射 光 に 脅 える 場 面 挿 話 50. 文 筆 家 ジュールが 引 き 起 こした 冤 罪 事 件 が 原 因 で 自 殺 したコルティエ 青 年 の 最 後 の 場 面 の 謎 解 き この 死 者 の 劇 場 ともいうべき ガラスの 檻 は 自 然 の 採 光 を 利 用 した 初 期 のガラス 張 りの 映 画 撮 影 スタジオを 思 わせ る 屍 骸 の 腐 敗 を 防 止 するための 強 力 な 冷 房 装 置 のアイデアは 1906 年 にウィリス キャリアによって 発 明 され ニューヨー クで 普 及 した 冷 房 空 調 装 置 がヒントとなったのであろう 対 照 的 にエジソンの 覗 穴 式 映 画 キネマトグラフの 制 作 スタジオ ブラックマリア: 囚 人 護 送 馬 車 1893 年 は コールタール で 覆 われた 巨 大 な 暗 箱 であった ダゲールと 同 様 に 肖 像 画 家 であったアントワーヌ リュミ エールの 二 人 の 息 子 によって 興 行 されたシネマトグラフ リュ ミエール 1894 年 の 成 功 は 映 画 産 業 を 興 し パウル ヴェゲ ナ 監 督 の ゴーレム 1920 年 ローベルト ヴィーネ 監 督 の カ リガリ 博 士 1920 年 フリッツ ラング 監 督 の 疲 れた 死 神 1921 年 F W ムルナウ 監 督 の ノスフェラトゥ 1922 年 などの 心 理 的 なドイツ 映 画 に 発 達 した 初 期 の 映 画 シナリオは 小 説 のシークエンスや 舞 台 の 戯 曲 そのままの 順 序 で 撮 影 して いたのだが すぐに 映 画 媒 体 の 特 性 をいかしたモンタージュ クローズアップ アイリスアウト パン クロスカッティング フラッシュバック ストップモーション オーバーラップなど の 撮 影 編 集 技 術 が 考 案 されるようになる 詩 人 ステファヌ マラルメは シネマトグラフは 映 像 のシー クエンスを 使 うことで 文 章 と 絵 から 成 る 何 巻 もの 書 物 に 効 果 的 に 取 って 代 わるはずである と 予 測 し 文 字 を 書 く 創 作 行 為 を 様 々な 媒 体 に 拡 大 していった さらに 映 画 技 術 が 実 現 した 動 的 なイメージや 流 れる 観 点 の 表 現 は ジェイムズ ジョイス の 小 説 ユリシーズ 1922 年 など その 後 の 文 芸 表 現 をも 変 質 させていくことになる 第 5 章 は 火 が 主 題 である カントレルの 治 療 を 受 けている 万 能 科 学 の 天 才 狂 人 エグロウザードは イギリス 旅 行 中 に 盗 賊 集 団 に 遭 い 無 惨 な 方 法 で 殺 害 された 幼 児 ジレットを 追 憶 して 愛 児 の 声 を 再 現 する 熱 励 起 による 音 声 合 成 法 愛 児 を 殺 害 した 盗 賊 達 の 踊 りを 再 現 する 熱 風 気 流 による 風 船 人 形 劇 愛 児 の 肌 着 を 仕 付 ける 花 火 ロケット 式 の 自 動 縫 製 針 を 発 明 する エグロウザードが 発 明 した 音 声 合 成 の 方 法 は 弾 性 収 縮 する 脂 身 製 の 物 差 しを 使 って 蝋 板 に 緻 密 な 点 の 列 を 刻 み その 点 線 をルビーの 励 起 光 で 溝 状 の 音 声 波 形 に 追 加 工 するという 技 術 である 書 籍 出 版 の 経 営 者 エドアード レオン スコットが 製 作 し た 音 声 波 形 を 見 る 機 械 フォノトグラフ 1957 年 や 聾 唖 学 校 の 経 営 者 アレキサンダ グラハム ベルが 聾 唖 の 美 少 女 の ために 死 んだ 男 性 の 耳 で 実 験 した 蘇 言 機 人 工 咽 と 人 工 耳 の 発 明 1876 年 それに 続 く 起 業 家 トーマス エジソンの 蝋 管 式 蓄 音 機 フォノグラフ 1877 年 エミール ベルリーナの 円 盤 式 再 生 機 グラモフォン 1887 年 などが 普 及 していくと 言 語 のメタ 認 識 が 大 きく 変 貌 していく 人 間 の 耳 が 見 過 ごして しまうような 意 識 外 の 音 響 をも 正 確 に 録 音 してしまう 蓄 音 機 の 出 現 は 表 現 者 の 魂 を 文 字 言 語 の 約 束 事 から 開 放 し 音 楽 を 楽 譜 音 符 の 制 約 から 開 放 していく ジークムント フロイトの 論 文 夢 判 断 1897 年 と 同 じ 年 に 出 版 されたブラム ストーカの 小 説 ドラキュラ は 新 大 陸 のアメリカで 発 明 された 音 声 蓄 音 機 と 言 語 タイプライタを ヨーロッパのフロイド 学 者 が 活 用 して 奥 深 い 東 方 のルーマニ アからくる 眼 に 見 えないオカルトを 解 明 する 小 説 である 小 説 の 中 のドラキュラは 旧 大 陸 に 伝 わる 十 字 架 と 大 蒜 による 方 法 図 版 7: 巫 女 フェリシテの 占 いに 活 躍 する 生 命 体
ではなくて 南 北 戦 争 で 新 開 発 されたウインチェスタ 14 連 発 銃 とボウイナイフを 使 ってテキサスの 大 金 持 ちが 退 治 する 第 6 章 は 生 命 体 が 主 題 である 巫 女 フェリシテは 肌 に 触 る と 炎 症 をおこす 刺 草 と その 有 毒 成 分 を 解 毒 する 軟 膏 を 使 って 人 肌 に 占 い 文 字 を 浮 かびあがらせる また タロットカードの 中 に スコットランドの 草 に 寄 生 する 羽 の 無 い 発 光 昆 虫 エム ローとスイスの 精 密 機 械 を 組 み 込 んで 銀 鈴 のような 音 色 を 奏 で 緑 色 の 円 光 を 発 するカードを 考 案 して 占 いをおこなう 今 日 では 圧 電 ピエゾ 素 子 のスピーカや 発 光 ダイオードを 仕 込 ん だ IC カード の 使 用 は 日 常 のこととなっている カントレルはキュロス 大 王 の 伝 説 に 従 って 発 掘 した 天 然 の 超 親 水 性 金 属 を ボルネオ 渡 来 の 怪 鳥 イリゾー の 強 力 な 尾 に 固 着 して 水 の 塊 が 重 力 に 打 ち 勝 って 飛 び 回 る 実 験 を 披 露 する 今 日 では 酸 化 チタン 触 媒 の 超 親 水 性 を 応 用 した 製 品 が 開 発 され ている 空 想 上 の 作 り 話 と 思 われていたギリシャ 神 話 の トロ イア が ハインリッヒ シュリーマンの 発 掘 により 現 実 の 事 実 となるのは 1873 年 のことである 司 馬 遷 編 纂 の 史 記 に 伝 説 として 記 述 されていた 始 皇 帝 陵 の 地 下 宮 殿 が 1974 年 に 発 掘 されると 同 書 記 載 の 徐 福 伝 説 古 事 記 の 神 武 天 皇 伝 説 魏 志 倭 人 伝 の 邪 馬 台 国 伝 説 も 現 実 味 をおびてくる カントレルはまた 傷 ついた 生 体 細 胞 が 自 らを 癒 す 物 質 を 合 成 して 分 泌 する 生 体 懇 願 物 質 ワクチンの 作 用 を 応 用 して スーダン 女 性 シレイスの 肌 から 爆 薬 を 採 取 する アルフレッド ノーベルがダイナマイトを 発 明 したのは 1866 年 安 全 なニト ロセルロース 無 煙 火 薬 が 開 発 されたのは 1906 年 天 然 痘 ワク チンの 発 明 は 1796 年 コレラワクチンの 開 発 は 1879 年 のこ とである カントレルは ワクチンの 原 理 は 生 命 細 胞 の 自 由 意 志 を 尊 重 して 生 命 細 胞 に 懇 願 することであり ワクチンの 歴 史 は 神 話 的 時 代 から 形 而 上 学 的 論 理 時 代 のパラケルススを 経 て 実 証 的 科 学 時 代 のパスツールに 到 達 したと 解 説 する 飛 行 の 歴 史 においても 同 様 のプロセスを 見 ることができる 空 中 浮 遊 への 欲 望 は まず 神 話 のメタファーによって 解 消 され 次 にダヴィンチ 等 の 観 念 的 機 械 の 探 求 を 経 て 20 世 紀 の 科 学 実 験 で 実 現 される しかしながら 20 世 紀 の 強 力 なエンジン による 飛 行 は 風 の 谷 のナウシカ の 優 雅 な 飛 行 とは 程 遠 い 第 7 章 最 終 の 章 は モンシャル 伯 爵 による 自 由 創 作 の 物 語 である 高 名 な 巫 女 フェリシテの 滞 在 を 聞 いてロクスソルスを 訪 れた 星 占 師 のノエルは 恩 師 である 放 浪 の 声 楽 家 ヴァスコン テから 相 続 した 形 状 記 憶 合 金 製 の 美 しいレースを おしげもな く 星 占 いの 観 客 に 進 呈 して 助 手 の 鶏 モプサスを 伴 って 去 って いく モプサスは 充 血 した 喉 の 赤 い 血 を 一 滴 づつ 正 確 に 射 出 して 象 牙 板 に 占 い 文 字 を 書 くという インクジェット 式 印 字 の ような 特 技 をもている この 膨 張 する 金 属 レースは かってヴァスコンテが 演 じたオ ペラを 作 曲 したルオルツ モンシャル 伯 爵 が3 点 製 作 して ヴァ スコンテに 与 えた 内 の 最 後 の 1 点 である モンシャル 伯 爵 は 1809-1887 年 に 実 在 した 人 物 であり 食 器 の 銀 メッキの 発 明 者 として 科 学 史 にも 記 録 されている 熱 するとエントロピー 弾 性 により 原 型 を 復 元 する 形 状 記 憶 合 金 は 1951 年 に 発 見 さ れ 現 実 のものとなった ジャン=マリ=マティアス=フィリップ=オーギュスト ド ヴィリエ ド リラダン 伯 爵 の 短 編 小 説 栄 光 製 造 機 1883 年 の 発 明 者 ボットンは 自 分 の 発 明 した 創 作 物 は 単 なる 機 械 で はなくて 物 質 的 手 段 ( 機 械 )と 精 神 的 目 的 ( 栄 光 )とを 結 合 する 媒 概 念 ( 拍 手 する 機 械 )である と 主 張 する 芸 術 家 と 技 術 者 を 合 体 させて 創 作 活 動 をすすめたベル 研 究 所 の 電 気 技 師 ビ リー クルーバの EAT 芸 術 運 動 や 文 芸 詩 論 と 工 学 理 論 とを 合 体 させなかった 科 学 哲 学 者 ガストン バシュラールに 著 者 は 納 得 しない 著 者 が 創 作 した 三 つのキネチックアートのシ リーズはモンシャル 伯 爵 や 技 術 者 ボットンが 主 張 するような 自 由 芸 術 の 創 作 を 目 指 している 研 究 紀 要 第 3 号 1987 年 掲 載 の 立 体 機 構 シリーズ: 詩 的 平 行 四 辺 形 は 四 節 機 構 を a. 平 行 軸 機 構 b, 収 束 軸 機 構 c, 捻 れ 軸 機 構 の 三 種 類 に 分 類 して それぞれの 特 徴 を a. 力 仕 事 図 版 8: 1925 年 ルーセル 自 らが 設 計 し 終 焉 の 地 パレルモに 旅 行 した 白 いタイヤのキャンピングカー
のための 産 業 機 械 b. 数 値 制 御 加 工 機 で 製 造 可 能 になった 観 念 機 械 c. 仮 想 空 間 で 実 現 されるであろう 仮 想 機 械 と 定 義 し 機 械 の 美 的 展 開 を 行 った 研 究 紀 要 第 2 号 1985 年 掲 載 の 空 気 膜 造 形 シリーズ: 空 気 観 想 は 風 船 状 ナイロン 薄 膜 の 内 外 に 生 ずる 空 気 差 圧 エントロピーによって 自 己 生 成 する 立 体 造 形 法 を 開 発 し 彫 刻 の 消 去 と 出 現 を 実 現 した 電 脳 制 御 シリーズ: 電 気 諧 調 は デジタル 機 械 語 プログラムを 応 用 して 彫 刻 の 動 き 音 光 形 を 連 続 させた 4) おわりに:メディア 芸 術 の 使 命 以 上 小 説 アフリカの 印 象 における 1) 自 然 物 と 2) 人 工 物 および 小 説 ロクスソルス における 3) 仮 想 物 に ついて 考 察 してきた 人 類 の 仕 業 から 地 球 環 境 を 救 う 方 法 は 1) 人 類 が 野 生 の 猿 に 帰 るか 2) 科 学 技 術 で 地 球 を 改 造 する か 3) 仮 想 世 界 に 引 きこもるかの 三 つの 解 決 策 しかないよう に 思 える ポニュケレ 国 で 競 演 した 自 然 芸 術 と 人 工 芸 術 の 勝 敗 はつかない 勝 利 したのは 自 然 界 と 人 工 界 と 想 念 界 の 三 者 を 三 つ 巴 状 態 に 連 結 するルーセルの 小 説 仮 想 芸 術 なの であろう コペルニクスは 地 球 と 宇 宙 を 連 続 させ デカルトは 人 間 と 機 械 を 連 続 させ ダーウィンは 人 間 と 動 物 を 連 続 させ フロイド は 自 我 と 無 意 識 を 連 続 させ アインシュタインは 原 子 から 宇 宙 までの 物 理 現 象 を 連 続 させた フィッツ = ジェイムズ オブライエンの 短 編 小 説 ダイヤモ ンド 製 のレンズ 1985 年 の 主 人 公 は 高 性 能 の 顕 微 鏡 を 開 発 し 超 微 細 な 世 界 の 女 神 に 出 会 い 恋 をする 1846 年 にカール フ リードリヒ ツァイスが 光 学 機 器 製 造 を 創 業 すると ルイ パ スツールが 自 然 発 生 説 の 検 討 1861 年 ロバート コッホ が 微 生 物 病 原 説 1876 年 などを 発 表 し 生 気 を 失 った 悪 い 空 気 や 水 の 瘴 気 が 実 は 眼 に 見 えない 精 霊 が 原 因 なのではなく 眼 に 見 える 微 生 物 であることを 明 らかにする 現 代 の 情 報 科 学 は 眼 には 見 えない 魂 の 世 界 でさえ DNA や 大 脳 シナプスの 構 造 で 明 らかにしようとする 生 命 ある 者 が 常 に 口 から 出 し 入 れしている 眼 に 見 えない 空 気 を なにか 魂 のようなものと 理 解 していた 人 類 が その 科 学 的 な 組 成 や 質 量 を 理 解 したのは 近 代 になってからのことであ る ガリレオ ガリレイやアイザック ニュートンは オカル ト 教 義 の 眼 には 見 えない 重 力 の 存 在 を 解 明 した ルーセルの 小 説 は カルパチア 山 脈 の 村 人 達 が 陥 る 日 常 的 なオカルト 状 態 を 恐 れるかのように 人 間 的 感 覚 が 成 立 する 根 底 にある 大 気 と 重 力 のリアリティを 繰 り 返 し 表 現 する 古 典 的 絵 画 技 法 においても 額 縁 の 中 での 空 気 感 や 重 力 感 のリアリ ティある 表 現 が 課 題 であった キャンバス 表 層 の 仮 想 空 間 と 同 様 に 現 代 のサイバー 空 間 においても 地 球 上 の 陸 上 生 物 が 5 億 年 を 経 て 育 んできた 大 気 と 重 力 の 存 在 が 欠 如 する 近 代 の 科 学 技 術 は 美 的 感 性 の 対 象 領 域 を 膨 張 させ 芸 術 の 有 様 と 役 割 を 大 きく 変 貌 させた 現 代 のチューリングマシーンは 絵 画 彫 刻 演 劇 演 劇 文 芸 などの 伝 統 的 な 表 現 領 域 に 取 っ て 代 わる 新 たな 表 現 媒 体 をシームレスに 連 結 し ボーダーレス な 仮 想 空 間 を 拡 大 構 築 しつつある 現 代 のメディア 芸 術 は 環 境 的 かつ 観 客 参 加 型 のインタラクティブアートにまで 拡 大 され ている しかしながら 想 念 と 現 実 とは 表 裏 のことであり 豊 かな 現 実 体 験 が 豊 かな 想 念 を 育 む メディア 芸 術 は 大 脳 皮 質 の 仮 想 空 間 を リアリティある 豊 かなものに 育 てる 使 命 を 負 って いる 参 考 資 料 : 1) 著 者 のルーセル 研 究 サイト http://www.tamabi.ac.jp/idd/shiro/index.html 2) Impressions d Afrique オリジナル 本 の 画 像 サイト http://fr.wikisource.org/wiki/livre:roussel_-_impressions_d_ Afrique_(1910).djvu 3) Impressions d Afrique 仏 語 の e-book サイト http://melusine.univ-paris3.fr/impressionspartie1.htm 4 ) I m p r e s s i o n s o f A f r i c a t r a n s l a t e d b y L i n d y Foord and Rayner Heppenstall, John Calger, 2001 5) アフリカの 印 象 岡 谷 公 三 訳 白 水 社 2001 年 6) Locus Solus オリジナル 本 の 画 像 サイト http://melusine.univ-paris3.fr/locus%20solus_txt.pdf 7) Locus Solus 仏 語 の e-book サイト http://www.gutenberg.org/files/19149/19149-h/19149-h. htm 8) Locus Solus translated by Rupert Copeland C u n i n g h a m, O n e w o r l d C l a s s i c s L i m i t e d, 2 0 0 8 9) ロクス ソルス 岡 谷 公 三 訳 平 凡 社 2004 年 10) Petit dictionnaire de Locus Solus Amsterdam-Atlanta, 1993 11) Paris au XXe Siecle Machette, 1994 12) Paris in the Twentieth Century translated by Richard Howard. Bllantine Books. 1995 13) 二 十 世 紀 のパリ 榊 原 晃 三 訳 集 英 社 1995 年