児 童 虐 待 は 心 の 問 題 か? 徳 島 大 学 総 合 科 学 部 上 野 加 代 子 ueno@ias.tokushima-u.ac.jp u.ac.jp
1. 日 本 での 児 童 虐 待 問 題 の イメージ
児 童 虐 待 は 増 加 深 刻 化 している 子 育 てのできない 母 親 が 増 えている 現 代 家 族 の 孤 立 化 や 機 能 不 全 にその 原 因 がある 現 代 社 会 においては どの 家 族 で 起 こっても 不 思 議 はない
幼 いときに 虐 待 された 経 験 と 自 分 の 子 どもを 虐 待 することは 関 連 してい る( 世 代 間 で 受 け 継 がれていく) 早 期 に 発 見 して カウンセリング カウンセリングな どをすれば 解 決 しうる 専 門 諸 機 関 や 民 間 の 人 たちとの 連 携 によって 予 防 し 早 期 発 見 していか なければならない
考 えてみよう わたしたちが 抱 くようになった 児 童 虐 待 についてのこのようなイメージ イメージは いったいどこから 来 たのか
自 分 がどうしてそれを 知 っている と 思 うのかを 自 分 で 問 うてみる どういう 根 拠 があって 私 たちはそ れを 正 しいと 考 えるのかを 問 う そういう 態 度 を 身 につける 認 識 の 前 提 を 疑 うことで 別 の 認 識 の 可 能 性 がひろがる
2.1990 年 代 の 児 童 虐 待 の 問 題 化 無 関 心 から 国 家 的 関 心 へ
2 1.80 年 代 の 関 心 の 空 隙 育 児 不 安 家 庭 内 暴 力
文 化 人 類 学 心 理 学 者 我 妻 洋 日 本 では 米 国 や 西 欧 で 理 解 さ れるような 児 童 虐 待 とネグレク トは 深 刻 な 社 会 問 題 を 構 成 して いない 深 い 社 会 的 関 心 が 芽 生 える 徴 候 も この 主 題 に 関 する 日 本 の 文 献 もほとんどない
理 由 : 文 化 装 置 としての 母 性 学 校 で の 身 体 検 査 中 絶 (Wagatsuma Wagatsuma, H. 1981. Child Abandonment and Infanticide: a Japanese Case, in J. Korbin(ed. ed.), Child Abuse and Neglect: Cross-cultural Perspectives.. University. University of California Press. pp. 120-138.) 138.)
2 2.マスメディア 報 道
1980 年 代 まだ まだ あちらの 話
1990 年 代 児 童 虐 待 特 集 記 事 なぜ 子 どもを 救 えなかったのか
2000 年 2001 年 マスメディア 報 道 のピーク
2 3. 家 族 をみるまなざしの 変 化
凍 りついた 瞳
複 雑 性 PTSD 間 の 連 鎖 ) (トラウマ トラウマ 世 代 アディクション アダルトチルドレン
3. 児 童 虐 待 の 増 加 深 刻 化
3 1. 活 動 記 録 としての 統 計
どういうカウント 方 法 をして いるのか?
嬰 児 殺 は 大 幅 に 減 少
3 2.あることが あることが 問 題 とし て 人 びとに 見 えてくる 条 件
どの 時 代 や 文 化 でも 親 が 子 どもを 愛 せないと 悩 んでいた (いる いる)のだろうか のだろうか? 親 から 愛 されないことが その 後 の 人 生 の 生 きにくさにつながる と 考 えてられていた(いる いる) のだろうか
児 童 虐 待 が 社 会 問 題 として 成 立 しているのは 地 球 のどの 地 域 か?
児 童 虐 待 の 診 断 判 定 なら びに 概 念 の 刷 新 を 担 ってきた 国 はどこか?
アメリカ - セラピー 社 会 心 理 化 された 社 会 日 本 でも
セラピー 的 解 決 の 特 徴 ( 小 沢 牧 子 こころの 専 門 家 はいら ない より より) 親 を 許 すことができません 1 日 常 場 面 での 人 々の 応 答 どうしたのですか どうしたのですか? 何 があったのですか? これこれ これこれしかじかのことがあって 許 せない 2セラピスト セラピストの 応 答 親 にたいして 怒 っているのですね ええ ええキレ キレそうになります そうになります 親 の 声 をきくだけでいらい らします
1は 親 との 関 係 や 出 来 事 が 視 野 にはいっている 2は 本 人 の 内 面 に 目 を 向 けさせる 焦 点 を 一 人 のひとに 絞 られている 焦 点 を 狭 く 絞 ることによって セラピスト セラピストは 洞 察 を 増 すというふうに 考 えられている しかし しかし 本 人 によって 最 初 に 問 題 提 起 されたものに 目 を 向 けさせない 問 題 のすりかえが 生 じる
4. 日 本 にどうして 児 童 虐 待 問 題 が 必 要 だったのか? - 少 子 化 時 代 のサバイバ ル 児 童 福 祉 の 予 算 問 題 児 童 養 護 施 設 の 事 情 大 学 の 事 情 - 18 歳 人 口 の 減 少
児 童 虐 待 という 問 題 を 当 該 社 会 に 訴 える 社 会 運 動 は トラウマ 因 果 論 の 思 考 様 式 を 根 づかせ 子 ども 観 家 族 観 そして 人 びとと 国 家 との 関 係 性 について 変 更 を 迫 っている トラウマ 因 果 論 は 子 ども 時 代 に 親 からうけたトラウマ トラウマという 観 点 から 過 去 の 自 分 の 親 子 関 係 や 自 分 自 身 を 振 り 返 ることを ことを 人 びとに 要 請 し 他 方 犯 罪 をはじめとする 他 の 社 会 的 問 題 や 社 会 的 な 弊 害 の 根 源 も 過 去 に 受 けた 児 童 虐 待 だとみなす
トラウマという 解 釈 資 源 が 広 範 に 利 用 可 能 になることで 児 童 虐 待 は 第 一 義 的 には 社 会 の 問 題 ではなく 社 会 の 予 防 的 まなざしを 必 要 とする 家 族 や 個 人 の 病 として 人 びとに 了 解 されることになる
5. 経 済 問 題 と 児 童 虐 待 1996 年 全 国 児 童 相 談 所 における 家 庭 内 虐 待 調 査 虐 待 につながると 思 われる 家 庭 の 状 況 として として 経 済 的 困 難 が44.6% で 最 も 多 い( 全 国 児 童 相 談 所 長 会 一 九 九 七 年 全 国 児 童 相 談 所 にお ける 家 庭 内 虐 待 調 査 結 果 報 告 書 全 児 相 通 巻 六 二 号 別 冊 )
児 童 虐 待 の 実 態 東 京 の 児 童 相 談 所 の 事 例 にみる ( 東 京 都 福 祉 局 ホームペイジ) 東 京 都 福 祉 局 は 平 成 12 年 度 都 内 11 箇 所 の 児 童 相 談 所 があつかった 全 事 例 1,940 件 を 児 童 票 等 から 分 析 するなかで 実 父 に 定 職 にある 者 が 6 割 弱 にとどまり 虐 待 につながる 家 庭 の 状 況 として 経 済 的 な 困 難 が 最 も 多 いと 報 告
厚 生 労 働 科 学 研 究 費 補 助 金 ( 子 ども 家 庭 総 合 研 究 事 業 ) 報 告 書 3 都 道 府 県 の17 17の 児 童 相 談 所 におい て 平 成 14 年 に 一 時 保 護 が 実 施 された 子 どもの 家 族 について その 被 虐 待 児 と 家 族 背 景 の 状 況 と 援 助 内 容 の 関 連 について 現 状 と 諸 課 題 を 明 らか に する 調 査 を 実 施 している そこ では 生 活 保 護 世 帯 が20 20パーセント 弱 で 所 得 税 課 税 世 帯 は 約 24パーセ ントに 留 まっていた
神 奈 川 県 内 の 乳 児 院 および 児 童 養 護 施 設 入 所 児 童 の 扶 養 義 務 者 の 所 得 状 況 につい ての 年 次 別 調 査 虐 待 を 主 訴 とした 子 どもの 入 所 割 合 が 急 激 に 増 えてきたこと 他 方 で 乳 児 院 及 び 児 童 養 護 施 設 に 措 置 された 養 育 者 の 経 済 状 態 は 変 化 せず 市 町 村 民 税 非 課 税 世 帯 の 割 合 に 関 しては むしろ 増 えている 虐 待 が 経 済 階 層 と 関 係 が ないのなら 入 所 児 童 の 保 護 者 の 経 済 状 況 は 高 所 得 者 層 にシフト シフトするはずであるが するはずであるが そう なっていない 2003 年 度 時 点 では 所 得 税 課 税 世 帯 は12.3% 12.3%にすぎない にすぎない( 山 野 2006 年 )
問 1: 日 本 で 児 童 虐 待 がマス コミで 大 きく 報 道 され 始 めた 時 期 はいつか? 11940 年 代 21950 年 代 31980 年 代 41990 年 代
問 2: 正 しいものを 選 びなさい 1 親 に 殺 される 子 供 が 近 年 増 え ている 2 児 童 虐 待 の 通 報 処 理 件 数 は1990 年 以 後 激 増 している 3 児 童 虐 待 は 世 界 中 のほとんどの 国 で 大 きな 問 題 になっている
問 3:セラピー 的 解 決 の 問 題 点 を 下 からひとつ 選 びなさない 1 全 員 の 心 に 寄 り 添 うことができ ない 2セラピー セラピーに 費 用 がかかる 3 社 会 の 問 題 を 個 人 の 問 題 として 取 り 扱 う 4 解 決 に 時 間 がかかる
問 4: 講 師 が 説 明 した 児 童 虐 待 問 題 が 台 頭 した 理 由 のなかで 該 当 するもの を 下 からひとつ 選 びなさい 1 子 育 てできない 親 が 増 えたから 2 家 族 が 地 域 社 会 から 孤 立 したから 3 児 童 福 祉 の 予 算 獲 得 が 難 しくなった から 4PTSD PTSDの 母 親 が 増 えたから
問 5: 児 童 虐 待 の 発 生 について 正 し いものを 選 びなさい 1 児 童 虐 待 はどの 社 会 階 層 の 家 庭 に も 同 じように 起 こっている 2 児 童 虐 待 は 低 階 層 の 家 庭 に 多 い
問 6(ここから ここからアンケート アンケート) アンケート 今 日 の 授 業 は 常 識 を 考 え 直 すきっかけになったか? 1 大 いになった 2 少 しなった 3あまりならなかった 4ほとんどならなかった
問 7 社 会 問 題 が 構 築 されると いうことを 理 解 できたか? 1よく 理 解 できた 2まあまあ 理 解 できた 3どちらかというと 理 解 できなかっ た 4 全 く 理 解 できなかった
問 8 今 日 の 授 業 は 刺 激 的 だった か? 1 非 常 に 刺 激 的 だった 2まあまあ 刺 激 的 だった 3どちらかというと 刺 激 的 でなか った 4 全 く 刺 激 的 でなかった