被 災 地 を 訪 問 して 感 じたこと ボディサイコセラピー( 身 体 心 理 療 法 )の 視 点 から BIPS ディレクター リズムセラピー 研 究 所 所 長 贄 川 治 樹 まえがき 東 日 本 大 震 災 後 5ヶ 月 経 ってはじめて 被 災 地 を 訪 れました 訪 れた8 月 1 日 からの4 日 間 のうち2 日 間 は 友 人 が 代 表 理 事 を 務 める NPO 法 人 の 支 援 活 動 にボランティアとして 参 加 し 残 りの2 日 間 は 宮 城 県 で 勤 務 するカウ ンセラー 達 とともに 宮 城 県 で 津 波 の 被 害 がひどかった 地 域 をまわり 10 名 ほどの 産 業 カウンセラーとスクール カウンセラーとお 会 いして 被 災 地 で 何 が 起 きているのか 話 を 伺 いました 今 回 このレポートを 書 くにあたり NPO 法 人 名 カウンセラー 名 は 匿 名 で 記 載 します 彼 らの 協 力 がなければ 被 災 地 を 訪 れて 多 くの 方 とお 会 いすることができなかったことを 考 えると 感 謝 とともに 名 称 や 名 前 を 明 記 したい 気 持 ちはあります しかし このレポートは 単 なる 活 動 報 告 ではなく 被 災 者 やカウンセラーの 方 々との 関 わりで 感 じたことを 不 特 定 多 数 の 方 にお 伝 えしたいために 名 称 や 名 前 を 明 記 することによって 地 域 や 個 人 を 特 定 してし まうリスクがあることから 匿 名 とさせて 頂 きます 私 を 信 頼 して 話 してくださった 方 々の 尊 厳 と 個 人 情 報 を 遵 守 するためですので ご 了 承 ください このレポートは 統 計 的 な 客 観 的 データに 基 づいたものではなく あくまでも 個 人 の 主 観 的 な 体 験 の 記 録 であるた め 偏 ったとらえ 方 になると 思 います そのようなものであっても 今 後 の 支 援 を 考 えるために 個 人 の 体 験 談 と して 参 考 にして 頂 ければ 幸 いです まず NPO 法 人 の 支 援 活 動 についてご 説 明 します この NPO 法 人 は 大 震 災 前 から タッチケアの 必 要 性 を 感 じ る 施 設 にケアチームを 送 り 込 む 活 動 を 行 い 必 要 とあらば 海 外 までケアチームを 派 遣 す る 素 晴 らしい 団 体 です 大 震 災 後 は 何 度 も 被 災 地 を 訪 れ 支 援 物 資 の 供 給 や 被 災 者 のからだのケアをボランティアで 行 ってい ます そのような 支 援 活 動 を 行 うなかで 6 月 にボランティアが 殆 ど 入 っていない 地 域 に 巡 り 会 いました 支 援 が 少 ないという 理 由 からでしょうか NPO 法 人 スタッフが 地 元 の 方 々のからだのケアをしていて こ の 地 域 の 人 は ほかの 地 域 に 比 べてからだ が 固 い ことを 実 感 したことが 再 び 訪 れ ようと 思 った 理 由 とのことでした そして 今 回 その 地 域 への2 度 目 の 訪 問 となり タッチケアで 入 った 保 育 園 タッチケアの 後 お 礼 として 踊 ってくれた 私 もチームに 参 加 させて 頂 きました 今 回 1
訪 れたのは 内 科 医 鍼 灸 師 運 動 療 法 士 アロマテラピスト タイ 式 マッサージ 施 術 者 ポラリティーセラピスト クラニ オセイクラルセラピスト イトオテルミー 療 術 師 マクロビ オティック 講 師 栄 養 士 などの 資 格 をもつメンバーで 組 織 さ れた 私 を 含 めて12 名 チームでした 普 段 各 々が 独 立 し て 仕 事 をしている 専 門 性 の 高 いメンバーであるため いい 連 携 が 取 れ 3 箇 所 にある 仮 設 住 宅 の 談 話 室 での 施 術 宿 泊 施 設 での 夜 の 施 術 保 育 園 でのタッチケア 中 学 校 での 先 生 達 への 施 術 を 行 い 3 日 間 で100 名 以 上 の 被 災 者 のケアを 行 いました カウンセラー 達 と 廻 った 地 域 は 気 仙 沼 市 南 三 陸 町 女 川 町 石 巻 市 東 松 山 市 名 取 市 です その 時 に 撮 影 した 画 像 を 文 中 に 掲 載 していきます すでに 震 災 から5ヶ 月 が 経 ってい ますので 瓦 礫 撤 去 作 業 が 大 分 進 んでいる 状 況 で 魚 の 腐 っ た 悪 臭 やハエなどは 殆 ど 気 になりませんでした それでも 多 くの 方 に 津 波 の 被 害 のすさまじさを 知 って 頂 きたく 画 像 を 掲 載 します 今 回 廻 ってみて 思 ったのは 津 波 の 被 害 に 遭 っ 気 仙 沼 市 魚 町 にある 酒 屋 1 階 部 分 が 損 壊 して 潰 れてし た 地 域 と そうでない 地 域 は 全 く 異 なった 世 界 だったとい まっている うことです 津 波 に 遭 っていない 地 域 の 町 並 みは 外 から 見 る 限 りではすでに 日 常 を 取 り 戻 している 印 象 を 持 ちました 反 対 に 津 波 に 遭 った 地 域 は 町 の 形 相 をしていません でした ですから 今 回 は 津 波 の 被 害 に 遭 った 地 域 の 画 像 を 掲 載 します なお 画 像 は 挿 入 されている 文 面 の 内 容 とは 関 係 ありません コミュニティ 再 生 の 必 要 NPO 法 人 メンバーが ボランティアが 殆 ど 入 らない 地 域 に 到 着 してすぐに NPO の 代 表 にある 相 談 をされました 精 神 的 に 不 安 定 な 人 が 仮 設 住 宅 に 居 るので そこに 行 っ て 欲 しい とのことでした メンバーは3 人 組 みのチームになり それぞれが 担 当 す る 仮 設 住 宅 に 向 かい 談 話 室 でマッサージ などのケアをすることを 住 民 に 告 知 しまし た 告 知 後 すぐに 数 名 の 希 望 者 が 来 室 され 休 む 間 もなくケアに 入 りました 2 名 の 施 術 をした 後 に 先 ほど 相 談 された 方 の 仮 設 住 宅 に 僕 を 連 れて 行 くために 病 院 搬 送 のボランティアをしている 男 性 が 迎 えに 来 ました 車 に 乗 り 走 り 出 してすぐに 気 仙 沼 市 南 町 海 岸 の 駐 車 場 に 乗 り 上 げた 漁 船 その 脇 を 何 事 もないように 車 が 行 き 交 う 2
これから 向 かう 精 神 的 に 不 安 定 な 人 について 話 し 始 めました 私 が 病 院 搬 送 をしている 鈴 木 さん( 仮 名 59 歳 男 性 )という 方 ですが 彼 はいろいろな ところで 喧 嘩 をして 暴 力 沙 汰 に 起 こしていま す 病 院 で 貰 った 薬 が 効 かないと 思 うと 病 院 のスタッフと 喧 嘩 をし 相 談 に 行 った 災 害 対 策 本 部 の 対 応 が 悪 いと 思 うと 本 部 に 乗 り 込 ん で 喧 嘩 をしたりと いろいろなところで 喧 嘩 をする 困 った 方 です 今 回 暴 力 がひどかっ たので 駐 在 所 では もう 暴 力 はしないという 誓 約 書 を 書 いて 貰 ったようですが その 対 応 にも 不 服 のようです 鈴 木 さんのストレスが 気 仙 沼 市 鹿 折 地 区 にある 歩 道 橋 津 波 と 火 災 によって 鉄 製 の 手 すりが 歪 ん 少 しでも 下 がって 楽 になって 貰 うよう 会 っ でしまっている て 貰 いたいのです 鈴 木 さんには 高 血 圧 と 不 眠 の 症 状 があり 病 院 で 薬 を 処 方 して 貰 っていますが もしかしたら 睡 眠 薬 を 多 く 飲 んで 意 識 状 態 に 影 響 が 出 てい るかもしれません 薬 や 高 血 圧 のこともあるので NPO メンバーの 内 科 医 とともに 仮 設 住 宅 の 鈴 木 さんの 部 屋 に 向 かうことにしま した 幸 いなことにその 内 科 医 は 仮 設 住 宅 の 談 話 室 ですでに 鈴 木 さんにマッサージをしていたので 状 況 が 少 し 分 かりました マッサージを 受 けている 時 もよく 喋 り 話 題 が 災 害 対 策 本 部 の 対 応 の 話 になると 感 情 が 激 高 して いき 同 じ 談 話 室 でマッサージを 受 けている 他 の 住 民 は 退 いていくとのことでした 2 日 間 という 短 い 時 間 しか 関 わることができませんし 本 人 が 心 理 療 法 を 希 望 されている 訳 でもないので 何 ができるか 答 えの 出 ないまま と りあえず 会 ってみることにしました 鈴 木 さんの 部 屋 に 入 っていくと そこには 小 柄 ではありましたが 筋 肉 質 で 日 焼 けした 男 性 が 居 ました 病 院 搬 送 をしている 方 とはある 程 度 良 い 関 係 が 築 け ているようで 鈴 木 さんは 上 機 嫌 でした そ の 時 に 少 しずつ 会 話 に 入 っていくようにし て 様 子 をうかがいました 内 科 医 が 処 方 さ れた 薬 を 確 認 したところ 強 い 薬 は 処 方 され ていないということで 鈴 木 さんの 高 血 圧 は 気 持 ちの 高 揚 からきているとのことでした 鈴 木 さんが 激 高 する 災 害 対 策 本 部 でのこと は 病 院 搬 送 のボランティアをしている 男 性 からの 話 では 鈴 木 さんのとらえ 方 は かな り 歪 んでおり 被 害 妄 想 が 強 いこともわかり ました 具 体 的 に 事 実 と 照 らし 合 わす 時 間 的 余 裕 がなかったため 人 格 障 害 レベルなのか どうかは 判 断 できませんでした 気 仙 沼 市 鹿 折 に 置 き 去 りにされた かなりの 台 数 の 焼 けた 車 3
ただし 激 高 はするけれど 話 を 聴 いていて 鈴 木 さんに 共 感 する 部 分 も 多 く 感 じられた ので より 彼 に 関 わりたい 気 持 ちが 自 分 の なかに 生 まれていきました 鈴 木 さんは 中 国 地 方 で 長 い 間 便 利 屋 の 仕 事 をしていましたが その 事 業 がうまく 行 かなくなり 事 業 者 の 親 戚 を 頼 って 今 の 地 域 に 移 り 住 み 80 歳 の 旦 那 さんと65 歳 の 奥 さんのもとで 養 殖 の 仕 事 をしていた とのことでした 残 念 なことに その 養 殖 を 営 んでいたご 夫 婦 は 津 波 によって 鈴 木 さんの 目 の 前 で 流 されてしまったそうです 気 仙 沼 市 鹿 折 津 波 と 火 災 によって 損 壊 した 倉 庫 か 工 場 また 徐 々に 心 を 開 いて 話 してくれたこと には 大 震 災 が 起 きる 前 までは 挨 拶 もろくにできず 殆 ど 話 すことができなかったそうです 俺 は 女 性 と 付 き 合 ったこともねぇんだ という 言 葉 も 印 象 的 でした 情 緒 的 にはひきこもり 状 態 だったのでしょう 養 殖 を 営 んでいたご 夫 妻 が 鈴 木 さんにとって 唯 一 の 社 会 との 接 点 でした そのご 夫 妻 が 目 の 前 で 亡 くなったこと は どれほど 鈴 木 さんの 心 を 痛 めつけたことでしょう この 地 域 での 絆 を 失 い 外 界 との 接 点 が 無 くなったことで 生 きている 地 域 に 安 心 感 を 感 じることができず まわりを 敵 視 してしまう 妄 想 が 働 くのも 理 解 できるような 気 持 ち になりました 幸 いなことに 避 難 所 では 45 歳 の 漁 師 さんと 仲 良 くなったそうです その 方 は 漁 師 なので 早 口 で 口 が 悪 かったそ うで 自 分 もその 喋 り 方 の 影 響 を 受 けたと 嬉 しそうに 話 してくれました 話 し 方 の 影 響 を 受 けながら 話 せるよう になったのは それだけその 方 との 関 わりがよかったからでしょう しかし 避 難 所 生 活 が 終 わると その 漁 師 さんは 別 に 地 域 に 移 り 住 んでしまったそうです 鈴 木 さんのパターンを 観 ていくと 親 しく なっていくと 喧 嘩 をするように 思 えました それは 親 密 な 関 係 は 続 かず その 後 には 別 離 が 来 て 傷 く ことを 繰 り 返 したことで 別 離 に 対 する 怒 りが 親 しくなり 心 が 開 か れることで 浮 上 し 喧 嘩 を 起 こしているよ うに 思 えました 実 際 彼 の 激 高 を 感 じて いくと 自 分 自 身 が 尊 重 されていないこと への 苛 立 ちと 悲 しみが 伝 わってきました 今 回 の 大 震 災 によって 彼 の 心 の 深 いとこ ろで 絆 が 切 られる 痛 みを 感 じているよう でした 気 仙 沼 市 鹿 折 海 岸 から 数 百 メートルも 運 ばれた 大 きな 船 手 前 にある 家 は 3 階 の 屋 根 まで 津 波 の 被 害 を 受 けていた 4
逆 に それだけ 鈴 木 さんは 親 密 さを 求 めてい るのも 伝 わってきました 鈴 木 さんは 本 来 とても 優 しい 心 の 持 ち 主 であることも 分 かっ てきました 翌 日 は 談 話 室 にマッサージを 受 けに 来 ることを 約 束 してその 日 は 戻 りまし た 病 院 搬 送 ボランティアの 男 性 は 鈴 木 さんは 何 をするかわからないので 彼 の 部 屋 でマッ サージをすることを 勧 めてくれましたが 内 科 医 と 相 談 して 仮 設 住 宅 に 住 むほかの 人 た ちと 繋 がりを 作 る 機 会 を 提 供 したい という 思 いと 談 話 室 には3 人 の 施 術 者 が 居 るので 3 人 から 鈴 木 さんに 多 くのストロークを 与 え 気 仙 沼 市 鹿 折 5ヶ 月 経 っても 海 水 が 退 かないし 瓦 礫 は 大 分 撤 去 された たいという 思 いから 彼 の 部 屋 ではなく 談 話 とはいえ まだまだ 復 興 にはほど 遠 い 室 でマッサージをすることを 提 案 したのでした 翌 日 鈴 木 さんは 談 話 室 に 現 れ マッサージを 受 けてくれました その 時 久 しぶりにからだを 動 かしたから いい 感 じだよ 仮 設 住 宅 の 敷 地 に 生 えている 雑 草 を 抜 いたんだよ でもな 余 計 なことはするなって 怒 られてしまっ たんだ とまんざらでもなさそうな 顔 で 話 をしてくれました 自 分 がコミュニティの 一 員 で 自 分 にもできるこ とがある 他 の 人 に 喜 んで 貰 えることができる そのことで 自 分 を 受 け 入 れて 貰 えることも 実 感 できる そんなこ とを 感 じているようでした マッサージが 終 わり 鈴 木 さんは 家 に 戻 りましたが 数 十 分 してから 鈴 木 さんの 姿 が 見 えました アイスコーヒー をはじめて 作 ったから 味 見 してよ と 言 いながら 大 きなボトルを 持 ってきたのです でもそれは 彼 がそこで 施 術 をしていたメンバーのためにコーヒーを 持 ってきてくれたこと そして 話 をしたがっていることがよく 分 かり ました とても 美 味 しいですよ と 皆 々が 伝 えると 嬉 しそうな 笑 顔 をかえしてくれました その 後 外 に 出 ると 鈴 木 さんは 談 話 室 の 壁 沿 いにあるプランターを 固 定 するために 足 で 砂 利 を 寄 せていました それを 褒 めると 鈴 木 さんは 俺 は 器 用 だからな 何 でも 雑 用 は できるんだ と 答 えてくれました 昨 日 便 利 屋 の 仕 事 をしていたという 話 を 聴 いて 鈴 木 さんに 器 用 ですね と 伝 えたことが 彼 のなかに 残 っていたようなのです それだけ 鈴 木 さんは 分 かりやすく 純 粋 な 人 であることがわかりました そのような 陽 気 な 鈴 木 さんに 対 しては 仮 設 住 宅 に 住 む 他 の 人 も 声 がかけやすくなり 良 気 仙 沼 市 浜 町 建 物 は 損 壊 し 見 る 影 もなく 至 る 所 に 乗 り 上 げた 船 がある 5
い 循 環 で 関 係 性 を 取 り 戻 して 行 けそうな 感 じ がしました もちろん 被 害 妄 想 や 認 知 の 歪 みがあり 激 高 しやすさには 意 識 を 向 ける 必 要 はあります が コミュニティに 彼 を 受 け 入 れる 成 熟 さが あれば 大 震 災 まで 喧 嘩 をすることなく 養 殖 を 手 伝 って 生 活 を 送 っていたように 彼 は 落 ち 着 いて 生 活 を 送 ることができると 感 じたの です 夕 食 後 同 じ 仮 設 住 宅 の 施 術 に 入 ったメン バーからショッキングな 報 告 を 受 けました 仮 設 住 宅 の 鈴 木 さんの 部 屋 の 近 くにパトカー 南 気 仙 沼 駅 駅 構 内 の 建 物 の 上 に 乗 っている 家 は どこからか 流 れ 着 いた が 来 て 彼 を 見 張 っていたというのです もう ものらしい その 時 の 鈴 木 さんは 先 ほどまでの 彼 とは 全 く 違 い 不 安 と 怒 りを 覚 えた 形 相 になっていたとのことでした 血 圧 を 測 ると 先 ほどよりかなり 高 くなっていたとの ことです ことの 発 端 は 鈴 木 さんが 病 院 搬 送 ボランティアの 男 性 に 災 害 対 策 本 部 長 宛 に 手 紙 を 清 書 して 欲 しいと 頼 んだこ とでした その 内 容 には 許 せない 殺 してやる という 言 葉 があったことから ボランティアの 男 性 が 色 々な 人 に 相 談 をした 結 果 とにかく 警 察 に 伝 えておかなければならないと 判 断 したのです それは 社 会 的 には 当 然 の 判 断 でしょう もし 伝 えずに 実 際 に 鈴 木 さんが 殺 人 事 件 を 起 こ してしまったなら 人 の 命 が 奪 われてしまいますし その 男 性 もその 死 を 背 負 わなければならなくなりますから 事 件 が 起 きるまで 何 もできない というスタンスの 警 察 が 住 民 を 守 るためにそのような 行 動 に 移 したことは 評 価 できます しかし 私 が 感 じるところでは わざわざ 親 しくなったボラ ンティアの 男 性 にそのような 手 紙 の 清 書 を 頼 むというのは 本 当 に 殺 したいわけではなく 自 分 の 気 持 ちを 彼 に 分 かって 欲 しいということでした このときに 思 ったのは 確 かに 100% 行 動 化 をしないとは 言 えませんから 警 察 が 彼 を 見 張 ることは 適 切 でしょう ただ し 警 察 には せめて 鈴 木 さんに 分 からないように 見 張 って 欲 しかったのです 私 が 滞 在 しているうちに 決 まったことは 警 察 が 見 張 り 彼 を 心 理 検 査 のために 精 神 病 院 に 連 れて 行 き 少 しの 間 地 域 と 距 離 を 取 って 様 子 を 観 る ということでした 確 かに 心 理 気 仙 沼 市 波 路 上 牧 ここでも 家 が 基 礎 から 剥 がされ 流 されていた 検 査 は 必 要 です 鈴 木 さんが 人 格 障 害 精 神 病 神 経 症 6
PTSD のどのレベルなのかによって 治 療 方 針 は 変 わってきますから 検 査 を 受 けるの はいいと 思 いました ただ 気 になることは お 世 話 になってい た 養 殖 のご 夫 婦 を 目 の 前 で 失 い 仕 事 を 失 い 希 望 を 失 い 地 域 での 関 わりを 失 った 鈴 木 さんにとって 必 要 なのは 権 力 による 圧 力 や 強 制 的 な 検 査 入 院 ではなく 愛 情 だっ たのではないでしょうか 彼 は 暴 力 を 振 る うとはいえ 大 震 災 の 被 害 者 なのですから 今 回 のことで 痛 感 したのは ボランティア で 一 時 的 に 関 わる 者 には 本 当 に 少 しのこ 気 仙 沼 向 洋 高 校 後 ろの 校 舎 は 新 しく 建 てたばかりだったらしい 校 舎 の としかできない ということでした でも 左 側 には 流 れ 着 いた 家 が 見 える ほんの 少 しだけでも 役 に 立 てるのであれば 意 味 のあることだと 思 いますし 被 災 地 に 行 ってできることは コミュニティが 少 しでも 機 能 できるよう 力 を 注 ぐことではないでしょうか 鈴 木 さんにとって 私 たちが 一 時 期 関 わり すぐに 離 れたことが 別 離 に 伴 う 痛 みを 強 化 してしまったのではない かと 内 省 しています 私 たちが 共 感 とともに 関 わったことが 鈴 木 さんの 心 のなかで 人 を 信 頼 する 種 となっ ていることを 願 ってやみません 喪 失 を 乗 り 越 える 時 の 怒 りを 理 解 する 前 述 の 鈴 木 さんの 暴 力 性 は 彼 の 性 格 の 歪 みに 起 因 する 部 分 は 大 きいと 思 いますが 大 震 災 が 起 きるまでは 彼 が 暴 力 沙 汰 の 喧 嘩 を 起 こしたことがないことは 注 目 に 値 します で すから 鈴 木 さんにとっての 暴 力 性 には 喪 失 ( 別 離 )の 反 応 としての 怒 りが 含 まれていると 思 いました 今 回 訪 れた 保 育 園 でのことです 20 名 ほどの 児 童 を 抱 っ こしたり 肩 車 をしたり 飛 行 機 にして 振 り 回 したりしてきま したが そのなかで 気 になった 子 どもが 何 人 かいました そ のうちの 一 人 のことをお 話 しします その 子 は 3 歳 くらい の 男 の 子 で 私 が 他 の 子 どもを 抱 っこしている 時 に 私 のか らだを 殴 ってきたのです 何 度 も 繰 り 出 されるパンチを 上 手 く 受 け 止 めながら 関 わっていると そのうち 殴 ることをや めて 抱 きついてきました 彼 が 自 分 から 離 れるまでしっか りと 抱 きしめると その 後 は 殴 ることはやめて 一 緒 に 遊 ぶ ようになりました 気 仙 沼 向 洋 高 校 津 波 が4 階 まで 達 したのがわかる 7
その 男 の 子 の 家 庭 環 境 大 災 害 での 被 災 状 況 などを 保 母 さんに 聴 く 時 間 はありません でしたが 彼 は 殴 ることで 何 かを 訴 えてい たのでしょう もし 殴 ることをすぐに 制 止 していたなら 彼 は 抱 きついては 来 なかっ たかもしれません 石 巻 市 のスクールカウンセラーから 聴 いた 話 です 自 衛 隊 や トモダチ 作 戦 を 行 った アメリカ 軍 に 対 して 市 民 は 良 い 印 象 を 持 っ ていて 感 謝 の 気 持 ちを 持 っていますが 自 治 体 に 対 しては 対 応 が 遅 い などと 怒 り を 感 じているとのことでした 自 治 体 で 市 民 の 対 応 をしている 人 が 怒 りの 矛 先 になっ 気 仙 沼 向 洋 高 校 前 の 道 路 以 前 は 両 側 に 建 物 が 建 ち 並 んでいたのだろうが ているケースは 多 いようで なかには 受 付 今 は 地 平 線 が 見 えてしまう の 職 員 自 身 が 被 災 し 子 どもを3 人 亡 くし ているにもかかわらず 仕 事 を 土 日 も 休 むことができず 市 民 からの 怒 りを 受 け 取 ることばかりをしていて 相 当 疲 弊 している という 悲 惨 なケースもありました それに 保 険 会 社 の 外 交 員 ハローワークの 職 員 にも 同 じような ことが 起 きている という 情 報 も 入 りました 8 月 1 日 の 河 北 新 報 の 新 聞 の1 面 には 自 治 体 職 員 の 病 気 休 暇 増 加 の 見 出 しで 記 事 が 掲 載 されていました そ のうち 石 巻 市 では 心 身 に 負 担 と 感 じて 病 欠 をした 職 員 は 昨 年 と 比 べて4 割 増 とのことでした 自 治 体 の 多 くでは 震 災 による 心 的 外 傷 後 ストレス 障 害 (PTSD)や 業 務 の 負 担 増 による 過 労 が 理 由 に 挙 げられています また 別 のカウンセラーから 家 が 一 軒 だけ 残 され あとの 家 は 津 波 で 押 し 流 された 集 落 の 話 を 聴 きました その 一 軒 残 った 家 の 人 は 私 の 家 も 津 波 で 流 されてしまえばよかった と 言 っていたそうです なぜなら 流 された 家 の 人 たちから 嫉 妬 からの 嫌 がらせなどの 攻 撃 を 受 けて 精 神 的 な 苦 痛 を 感 じているとのことでした 実 際 の 政 府 の 対 応 などに 対 する 思 いとは 別 に 心 理 的 なレベルにおいて 家 や 家 族 を 失 った 被 災 者 は その 怒 りの 矛 先 を 政 府 や 自 治 体 他 者 に 向 けるという 力 動 が 働 い ているのを 感 じます この 場 合 外 界 に 対 する 非 難 をやめてみて 何 かを 喪 失 した 場 合 悲 しみと 怒 りのプロセスを 通 過 するこ とが 大 事 であり 怒 りを 感 じることは 喪 失 体 験 を 乗 り 越 えるためには 健 全 なことで ある という 認 識 を 持 ち 自 分 は 本 当 は 何 に 怒 っているのだろう と 自 分 自 身 に 問 いかけてみることが 大 事 です その 攻 撃 性 が 内 側 に 向 かえば 何 もできな 気 仙 沼 市 陸 前 小 泉 駅 近 くの 鉄 橋 鉄 橋 の 上 に 家 や 屋 根 が 乗 っている 8
かった と 自 分 を 責 めたり 罪 悪 感 を 持 った りします 8 月 6 日 の 新 聞 記 事 に 震 災 後 に 被 災 地 で 自 殺 者 が 増 えていることが 掲 載 され ていました 生 活 苦 将 来 への 不 安 などが 直 接 の 原 因 だと 思 いますが 自 分 を 責 める 気 持 ちも 影 響 している 可 能 性 もあると 思 います 被 災 者 自 身 が 怒 りを 自 覚 して それは 健 全 な ことであるという 認 識 を 持 ち カウンセラー は 怒 りなど 激 しい 情 動 を 扱 うトレーニングを 受 け 被 災 者 と 向 き 合 い 被 災 者 の 怒 りを 適 切 な 形 で 表 現 するように 促 すことが 必 要 で す 何 に 対 しての 怒 りなのかに 気 づき その 怒 りを 安 全 な 場 で 表 現 することができれば 気 仙 沼 市 陸 前 小 泉 駅 近 くの 鉄 橋 途 中 で 橋 が 流 されている 頑 張 りを 手 放 して 副 交 感 神 経 系 に 入 り 深 い 悲 しみを 感 じることができます そうなれば 少 しずつ 喪 失 体 験 から 浮 上 し 始 めることができるのです ですからカ ウンセラーに 対 する 情 動 を 扱 うトレーニングが 急 務 とだと 感 じました 海 の 男 の 男 気 夜 宿 泊 施 設 の 部 屋 に 被 災 者 にお 越 し 頂 いて 施 術 をしていた 時 のことです 二 人 の 日 焼 けした60 代 の 男 性 が 現 れ 私 が 一 人 鍼 灸 師 の 男 性 メンバーがもう 一 人 に 施 術 をしました 私 が 受 け 持 った 方 は 38 年 間 寿 司 屋 を 漁 港 で 行 ってきた 店 主 でした 今 の 時 期 は ホタテが 旬 なんだよ 美 味 しいよ この 辺 りでは ウニ アワビ 牡 蠣 が 本 当 に 美 味 しいんだ しゃりがまずくても 問 題 ない 何 と 言 って もネタが 美 味 しいからね でもな 津 波 で 店 は 流 されてしまったし 69 歳 の 俺 にとっては 今 から 投 資 しても 生 き てる 間 に 回 収 できないから もう 店 はやらな いよ あと10 歳 若 かったら 挑 戦 するんだけ れど それでも 今 は 天 国 だ 震 災 当 時 は 水 も 電 気 も 食 べ 物 もなかったから 地 獄 だった これは 体 験 しないとわからないけどな 本 当 は 俺 は 顔 も 手 も 白 いんだよ 今 は 瓦 礫 撤 去 作 業 で 真 っ 黒 だけどな こんな 真 っ 黒 な 手 で 寿 司 をお 客 さんに 出 したら 驚 かれてしまう な からだを 解 しながら そのような 話 を 聴 いて いました 次 の 瞬 間 突 然 こう 言 われたの です お 隣 さん ついこの 間 だよ 仮 設 住 宅 に 入 ってから 奥 さん 亡 くなったんだ 誰 も 何 も 言 わねぇけど 一 人 一 人 にドラマがある 南 三 陸 町 歌 津 ここは 長 い 区 間 に 渡 り 橋 が 流 されている 9
んだ その 言 葉 が 発 せられても 隣 りで 施 術 を 受 けていた 男 性 は 一 言 も 発 せず その 部 屋 に 静 けさが 続 きました 岩 手 の 漁 港 で 生 まれ 育 った60 代 のカウン セラーは 子 どもの 時 から 男 は 喋 るんじゃ ないと 怒 られたものです と 言 っていまし た 確 かに 今 回 いろいろな 方 とお 会 いして 感 じたのは 感 情 を 表 現 しないことでした もっと 自 分 の 気 持 ちを 表 現 できるなら 楽 になるだろう という 思 いとともに 今 回 発 見 したことがあります 南 三 陸 町 歌 津 同 じく 橋 を 観 たところ 後 ろは 津 波 の 被 災 地 でよく 観 られる 瓦 礫 の 山 である ボディサイコセラピーをしていると 未 完 了 の 体 験 に 対 して 適 切 な 形 で 情 動 や 感 情 を 味 わい 非 言 語 レベルと 言 語 レベルで 表 現 をすることが 重 要 であると 認 識 しています 前 述 の 喪 失 にともなう 怒 り を 適 切 に 表 現 することは 喪 失 体 験 を 乗 り 越 えるために 本 当 に 必 要 なことです しかし 同 時 に 今 回 感 じたのは 表 現 しないことのポジティブな 側 面 でした それは 表 現 しないこと で 内 に 秘 められたものが 力 となっていることでした 芯 の 強 さと 言 っても 良 いでしょう 今 回 の 震 災 で ご 主 人 の 株 が 上 がったとよく 聴 きます 震 災 時 奥 さんはパニックを 起 こして 動 けなくなっていた のに 旦 那 さんが 冷 静 に 行 動 して 津 波 が 来 ない 場 所 まで 導 いた というような 男 性 が 人 を 助 けた 美 談 がたくさ んあります そのような 瞬 発 力 は 内 に 秘 めた 力 があるからこそ 生 まれるように 思 いました ねぶた 祭 りなどで 一 年 に 一 回 内 に 秘 めた 力 が 爆 発 することからも 想 像 できます 芯 の 強 さ 男 気 そんな 言 葉 が 浮 かびます 今 回 訪 れた 地 域 の 災 害 対 策 本 部 の 青 年 団 の 方 々とお 酒 を 飲 む 機 会 がありました 彼 ら の 話 を 聴 いていて 男 気 を 感 じました 俺 たちは 若 い 頃 はヤンキーだったけど このような 災 害 があると 自 然 と 集 まって 俺 たちが 音 頭 を 取 り 初 日 から 行 方 不 明 者 の 捜 索 を 始 めたんだ でも 3 日 目 くらい から 悲 しいことに 捜 索 をしている 人 のな かには 物 拾 いを 始 める 人 が 出 てきた それ は 悲 しかったな だからさすがに 言 ったよ 俺 は 今 はそんなことをしている 場 合 じゃ ねぇ! とさ でも 俺 たちも 流 れ 着 いた 缶 ビールを 拾 って 重 油 を 拭 って 回 し 飲 みを 南 三 陸 町 歌 津 歌 津 のメインストリート 津 波 の 前 とは 全 く 違 う 光 景 だろう 10
した 時 は 情 けなかったな 恥 ずかしいよ 遠 洋 漁 業 の 船 に 乗 っている 連 中 も 仕 事 を 放 り 投 げて 戻 ってきて 行 方 不 明 者 の 捜 索 や 瓦 礫 の 撤 去 をしだしたんだ 彼 らにとっては 仕 事 の 途 中 で 帰 るということは もうその 仕 事 にありつけない ことを 意 味 するのに そいつらに 言 ったんだ 仕 事 がなく なってもいいのか って そうしたらそいつらは そんな ことを 考 えてねぇよ 居 ても 立 っても 居 られなくて 戻 ってき たんだ! と 言 ってくれたのが 嬉 しかったな 彼 らのからだに 施 術 をさせて 貰 いましたが からだは 疲 れ 果 ててボロボロでした それでも 明 るく 冗 談 を 言 いながら 頑 張 っている 真 っ 黒 な 姿 には 本 当 男 気 を 感 じました 海 と 陸 の 感 覚 の 違 い 登 米 市 のスクールカウンセラーの 話 です 被 災 後 津 波 の 被 害 から 逃 れてきた 人 たちが 登 米 市 にやってきました その 南 三 陸 町 公 立 志 津 川 病 院 ここも 被 害 が 大 きな 町 である 方 々と 話 をして 気 づいたことがありました 陸 の 人 たちは 何 々のせいで という 話 をよくしていますが 海 の 人 たちからはそのような 話 は 出 てこないのです あきらめが いいというか それはなぜでしょうね その 話 に 宮 城 の 漁 港 で 生 まれ 育 った69 歳 の 男 性 カウンセラーが 答 えた 言 葉 が 印 象 的 でした 海 の 男 は 海 の 悪 口 は 言 わないんです 普 段 は 海 の 恩 恵 を 受 けていますから 海 の 悪 口 を 言 うというのは 母 親 の 悪 口 を 他 人 に 言 うようなものなのです だから 絶 対 に 言 わない それに 私 たちにとって 海 と 津 波 はセットなのです だからあき らめが 早 い 津 波 だけではなく 私 たちにとって 海 に 出 るというのはある 意 味 命 がけなんですね 小 さい 頃 から 死 は 身 近 にありました だから 何 処 かで このような 災 害 を 受 容 していると 思 うんです そういうところが 陸 の 人 と 違 うところです その 男 性 カウンセラーが 今 回 の 震 災 で 日 本 人 の 良 さが 現 れた まだまだ 日 本 は 捨 てた もんじゃないですよ という 表 現 をしてい たので 日 本 人 の 良 さって 何 でしょうと 問 い かけてみました その 答 えは みんな 一 緒 と いう 感 覚 ですよ 困 っている 人 が 居 れば 自 分 のものを 分 け 与 えたり 自 分 より 先 に 譲 っ てあげる 気 持 ちですね そのことは 海 も 陸 も 関 係 なく 地 元 のカウ ンセラーから 聴 く 話 には そのような 思 いや りの 心 が 溢 れていました 女 川 町 寿 町 鉄 筋 コンクリートの 建 物 が 基 礎 ごと 倒 壊 していた 11
美 談 とともに 美 談 だけではなく 残 念 な 話 も 多 くありまし た 前 述 の 寿 司 屋 の 店 主 は このように 言 っ ていました 今 回 人 間 のいろんな 部 分 を 見 せられまし たよ 良 い 面 も 見 えましたが この 人 がこ んなことをするのか という 悪 い 面 も 見 えま した 残 念 ながら 悪 い 面 の 方 が 多 かったです ね もうそのような 人 とは 付 き 合 えなくなり ました あるカウンセラーは こう 話 してくれました 女 川 町 鷲 神 浜 女 川 町 の 中 心 部 から 女 川 バイパスを 望 む 道 の 両 側 は 津 波 により 全 壊 している 津 波 によって 家 を 失 った 人 たちが 避 難 所 で 過 ごし 始 めた 時 避 難 所 には 食 べ 物 がなかったので 津 波 の 被 害 に 遭 わずに 助 かった 家 の 人 が 避 難 所 にお 米 や 食 べ 物 などを 惜 しげもなく 差 し 入 れたのです 自 分 のところには 家 があるから 何 とかなるから という 気 持 ちで 分 け 与 えました 徐 々に 避 難 所 に 物 資 が 供 給 され 始 めた 頃 分 け 与 えていた 家 には 食 糧 がなくなりました 食 糧 が ないために 避 難 所 に 貰 いに 行 ったところ 食 べ 物 を 分 け 与 えていた 人 から お 前 のところには 家 があるだろ と 言 われて 追 い 返 されたそうです 人 間 は 極 限 状 態 で 本 性 を 見 せるのかもしれません 今 後 の 課 題 被 災 地 の 方 やカウンセラー 達 から 聴 いた 話 で 今 後 意 識 をしていかなければならない 課 題 があります 1. 仮 設 住 宅 では 仕 事 もなければ 何 もする ことがない そのために 仮 設 住 宅 の 談 話 室 を 用 いて 何 かをしていく 必 要 があります 今 回 の 談 話 室 で 行 ったからだのケアは とても 良 い 企 画 だと 思 いました からだを 動 かすエア ロビックス ボクササイズ ヨガなどは 仮 設 住 宅 に 住 む 人 にとってはとても 相 応 しいも のですが 談 話 室 は 空 間 が 狭 く 支 援 物 資 も 置 かれているため からだを 動 かすことは 残 念 ながらできないと 思 います 石 巻 市 大 谷 川 浜 牡 鹿 半 島 にある 町 ここも 全 壊 していた 12
2. 石 巻 市 のスクールカウンセラーが 高 校 でアンケートを 採 ったところ 将 来 に 対 す る 夢 がとても 低 かったそうです 前 年 度 は その 項 目 はなく 震 災 後 ということで 新 し く 項 目 に 追 加 したそうですが 他 の 項 目 に 比 べても 低 く 気 になったそうです 実 際 工 場 やお 店 などが 倒 壊 したたため 地 元 で 就 職 することが 難 しくなっているとのこと です 原 発 の 放 射 能 のこともありますから 長 期 的 な 視 点 に 立 ち 何 が 人 生 にとって 大 事 か ということまで 立 ち 返 って 人 生 設 計 をすることへの 支 援 が 必 要 となります そ れは 高 校 生 に 限 らず 大 人 高 齢 者 にとっ ても 如 何 に 生 き 甲 斐 を 見 出 すか QOL を 石 巻 市 小 網 倉 浜 この 町 も 全 壊 していた 牡 鹿 半 島 は 小 さな 入 り 江 に 小 高 めていく 支 援 は 心 身 へのケアとともに さな 漁 港 がある 感 じだが 殆 どの 村 が 全 壊 していた 必 要 となっていくことでしょう 現 実 問 題 として 仮 設 住 宅 では 食 費 や 水 道 光 熱 費 はかかりますから 仕 事 が 必 要 となります 3. 津 波 に 遭 った 人 たちはもちろんのこと 津 波 に 遭 っていない 人 たちへの 支 援 も 必 要 です あるカウンセラーが 言 っていたことです 津 波 に 遭 っていないから 私 は 被 災 していない と 思 っている 人 が 多 いんです その 人 達 も 地 震 の 揺 れを 感 じましたし 水 くみをしたり 食 糧 やガソリンを 手 に 入 れるために 行 列 に 長 時 間 並 んだりしている わけです でも あまりに 津 波 での 被 害 が 大 きいために 被 災 したという 認 識 がありません そのような 人 たちに 自 分 たちの 心 身 にも 無 理 がかかっていないか と 自 問 自 答 して 貰 い 無 理 がかかっているようであれば ケア の 必 要 性 を 感 じて 貰 うことが 大 切 です 4. 瓦 礫 撤 去 作 業 員 のケア 瓦 礫 撤 去 作 業 員 のなかで 遺 体 を 見 つけた 人 は 多 くいらっしゃると 思 われます その ような 方 の 心 理 的 なケアが 必 要 となってくるでしょう 5. 最 初 の 項 目 とも 重 複 しますが 新 しい コミュニティづくりは 重 要 なテーマだと 思 います 今 回 の 震 災 に 限 らず 近 年 は 弱 者 にとって 生 きにくい 世 の 中 になっていま す 競 争 社 会 ではなく 違 いを 尊 重 し それ ぞれが 自 分 の 得 意 分 野 を 活 かすことで 社 会 を 豊 かにするようなことを 各 自 が 考 えて 提 起 していくことが 大 事 だと 思 っています 今 回 の 津 波 では ひきこもりや 不 登 校 の 子 どもが 犠 牲 者 になっているという 話 を 聴 き ました 学 校 に 居 る 子 ども 達 は 先 生 の 誘 導 により 石 巻 市 の 大 川 小 学 校 以 外 は 殆 ど 助 かったそうです でも 学 校 に 登 校 する ことのできなかった 不 登 校 やひきこもりの 石 巻 市 門 脇 町 ここは 何 軒 か 家 が 残 っているが それ 以 外 は 全 壊 状 態 13
子 どもたちが 犠 牲 になりました とても 残 念 なことです タッチケアの 有 効 性 今 回 NPO 法 人 のチームに 参 加 してみて あ らためてタッチケアがいかに 有 効 か という ことを 実 感 しました まず 被 災 者 にとって は 私 たちは 見 ず 知 らずの 者 ですから 最 初 は 警 戒 されます その 時 に マッサージやから だが 楽 になることをしますよ と 言 えば 警 戒 心 を 解 き 喜 んで 受 けてくれるのです 石 巻 市 立 門 脇 小 学 校 ここは 校 舎 が 焼 けたのだろう 長 い 間 宮 城 県 でカウンセリングをされてい るカウンセラーが 言 っていたのは 仮 設 住 宅 に 無 料 相 談 のチラシを 貼 ったけれど 一 人 も 来 ないんだよね とい うことでした でも からだが 楽 になるタッチケアは 仮 設 住 宅 に 住 む 方 にとっては 敷 居 が 低 いのです 事 実 今 回 は 回 数 を 重 ねるごとに 希 望 者 がどんどんと 訪 れてきました そして また 是 非 来 て 頂 戴 と 多 くの 人 に 言 わ れました とにかく 皆 さんは 頑 張 っているので 息 抜 きを 求 めています からだもガチガチに 固 まっていますから それを 緩 めてリラックスをして 貰 うには タッチケアはとても 有 効 な 手 段 です からだが 緩 んでくると 自 然 と 心 も 緩 んできます そうすると 施 術 者 が 聴 かなくても いろいろと 自 分 自 身 のこと を 話 してくれるようになります 話 すことを 強 いずに 自 然 と 心 とからだを 開 くことが タッチケアには 可 能 なの です タッチケアによって 不 安 を 静 め 安 心 感 を 与 えることができます これは 不 安 や 恐 怖 が 強 い 子 どもには 特 に 有 効 です 興 味 のある 方 は タッチケアについての 本 や 拙 著 被 災 者 へのケアに 関 する 覚 え 書 き をお 読 みください 心 の 復 興 に 向 けて 実 際 被 災 地 を 訪 れてみて 本 当 に 大 変 なことが 起 きたということを 肌 で 感 じてきました 様 々なレベルでの 支 援 が 長 期 間 必 要 となることでしょう それと 同 時 に すでに 被 災 者 の 心 の 動 きのなかに 復 興 が 起 きていること も 今 回 わかりました 例 えば 保 育 園 児 の 話 を 聴 いた NPO 法 人 メンバーが 話 してくれたことですが 保 育 園 児 は 不 安 になると 津 波 ごっこ をするとのことでした 津 波 ごっこ は 津 波 が 来 る 警 告 をする 町 のアナウンスの 真 似 をするそうです そのアナウンスの 真 似 をし 身 体 を 使 って 逃 げることを 繰 り 返 すことをしているようでした これは 遊 びを 通 し て 子 ども 達 は 無 髄 迷 走 神 経 系 の 固 まっているストレス 反 応 から 戦 うか 逃 げるか の 交 感 神 経 系 のストレス 反 応 に 移 行 させて 不 安 やトラウマを 乗 り 越 えようとしているのです また 津 波 を 遊 びにすることで 津 波 を 自 分 14
たちにも 扱 える 軽 いもの にして 乗 り 越 えようともしています 石 巻 市 のスクールカウンセラーから 聴 いた 話 です そのカウンセラーが 勤 務 する 学 校 の 生 徒 からは 興 味 深 い 夢 が 報 告 されていました ある 生 徒 からの 報 告 では 津 波 の 被 害 で 亡 くなった 祖 母 が 夢 に 出 てきて 光 のなかに 祖 母 が 現 れて 先 に 逝 ってしまって ごめんなさいね と 語 りかけてきて 夢 のなかで 祖 母 と 対 話 をしたそうです そのよ うな 例 はその 学 校 だけでもいくつかあるそうです 夢 を 通 して 心 の 復 興 が 起 きているのです 前 述 の 辛 い 状 況 のなかでの 災 害 対 策 本 部 の 活 動 を 支 えている 男 気 による 連 帯 も 心 の 復 興 の 現 れに 感 じました このように 保 育 園 児 や 高 校 生 を 含 む 被 災 者 は 専 門 的 な 臨 床 心 理 の 知 識 は 全 くないにもかかわらず 自 然 とその 時 々に 必 要 なことを 創 造 しているのです 外 側 から 何 かを 与 えるだけが 支 援 ではなく 現 実 にその 場 で 起 きている 内 的 な 治 癒 力 リソースに 光 を 当 て 誰 のなかにもそのようなことが 起 きる 可 能 性 を 伝 え コミュニティのなかで 皆 さんがリソースを 共 有 できるようサポートすることが 大 事 なのではないでしょうか トラウマティック ストレスの 世 界 的 権 威 であるヴェセル A ヴァン デア コルク 氏 は 東 日 本 大 震 災 後 の 講 演 会 で 地 域 社 会 文 化 のなかにすでにあるもの( 祭 りや 武 術 太 鼓 など)を 用 いていくことが 大 切 だと 述 べていました 7 月 中 旬 に 仙 台 市 で 東 北 6 県 の 夏 祭 りが 集 結 した 東 北 六 魂 祭 が 行 われましたが 超 満 員 だったそうです こ のことは 必 要 なものはその 地 域 にあり そして 必 要 なものをかぎ 分 ける 力 が 誰 のなかにもあるということを 現 しています あとがき まえがきにも 書 きましたが 今 回 の 体 験 は 友 人 の NPO 法 人 と 地 域 のカウンセラーの 皆 さんの 協 力 なしには 実 現 できませんでした あらためて 彼 らに 感 謝 の 気 持 ちを 伝 えたいと 思 います そして このレポートを 読 み この NPO 法 人 とカウンセラーの 皆 さんの 活 動 に 対 して 共 感 をして 頂 き 支 援 したい という 方 がいましたら リズム セラピー 研 究 所 までご 連 絡 ください 個 人 的 に 連 絡 先 をお 知 らせいたします お 読 み 頂 き ありがとうございました リズムセラピー 研 究 所 所 長 贄 川 治 樹 168-0064 東 京 都 杉 並 区 永 福 4-14-19-102 リズムセラピー 研 究 所 E-MAIL:office@rhythmtherapy.jp SITE:http://www.rhythmtherapy.jp タッチケアに 入 った 保 育 園 子 どもの 輝 く 姿 は 素 晴 らしい 宝 物 15