参 考 資 料 1:オーストラリア アメリカ ニュ ージーランドの 経 験 ここでは 巨 大 災 害 時 における 非 生 命 保 険 サービスの 推 計 方 法 の 見 直 しに 関 して それぞれ 特 徴 的 な 対 応 を 採 ったオーストラリア アメリカ ニュージーランドの 経 験 を 各 国 の 統 計 作 成 部 局 の 公 表 資 料 から 掻 い 摘 んで 紹 介 する (1)オーストラリア < 先 行 導 入 全 面 移 行 した 事 例 > 本 論 でも 整 理 したとおり 国 民 経 済 計 算 および 国 際 収 支 統 計 が 巨 大 災 害 の 発 生 時 も 安 定 的 に 非 生 命 保 険 サービ スを 計 測 できるように 見 直 されたのは 2008SNA および BPM6 からであるが オーストラリア 統 計 局 (Australian Bureau of Statistics <ABS>)は それに 先 立 つ 1993SNA および BPM5 の 時 代 からそうした 計 測 方 法 を 研 究 採 用 してきた これは 保 険 料 にはサービスの 対 価 と 保 険 金 が 含 まれている 保 険 金 は 通 常 事 故 等 が 発 生 した 際 にまとめて 支 払 われるが その 支 払 が 実 行 されたとし てもサービスの 価 値 が 変 わるものではない (Australian Bureau of Statistics[1999])との 考 え 方 に 基 づくものであ る この 考 え 方 は 後 述 のアメリカの 手 法 とともに 2008SNA および BPM6 の 取 りまとめ 作 業 に 大 きく 影 響 を 与 えたものとみられ 実 際 2008SNA および BPM6 は 基 本 的 にこの 考 え 方 を 引 き 継 いでいる 非 生 命 保 険 サービスの 生 産 = 受 取 保 険 料 ( 当 期 分 )+ 追 加 保 険 料 - 支 払 保 険 金 ( 当 期 分 )- 支 払 備 金 純 増 額 ただし 支 払 保 険 金 には 現 実 の 保 険 金 ではなく 期 待 保 険 金 を 利 用 期 待 保 険 金 は 通 常 の 保 険 金 については 5 年 中 心 移 動 平 均 を 用 いて また 大 災 害 時 における 巨 額 の 保 険 金 については 19 年 中 心 移 動 平 均 を 用 いて 算 出 同 様 な 手 法 を 国 際 収 支 統 計 ( 当 時 は BPM5 ベース) にも 適 用 㹢 㹢 上 記 を 通 じて 安 定 的 な 非 生 命 保 険 サービスの 生 産 輸 出 入 の 記 録 に 成 功 (マイナスのサービス 生 産 輸 出 入 の 問 題 を 解 決 ) さらにその 後 ABS は 2009 年 末 世 界 に 先 駆 けて 2008SNA および BPM6 へ 全 面 的 に 移 行 した また その 機 会 を 捉 えて 保 険 サービスについても 基 礎 資 料 の 更 新 やモデルの 見 直 し 等 の 改 善 を 図 っている(Australian Bureau of Statistics[2009], Australian Government, Department of Foreign Affairs and Trade[2011]) 特 に 輸 出 入 額 に 関 しては 大 幅 な 改 定 となっており Australian Bureau of Statistics [2009] では 一 章 ( 第 11 章 )を 設 けて 詳 細 に 説 明 している 具 体 的 な 改 定 額 は 参 考 資 料 1 図 表 1のとおりである 全 般 的 に 大 きく 下 方 へと 修 正 されているが これは 主 とし て それまで 過 大 推 計 されていた 再 保 険 の 輸 出 輸 入 が それぞれ 大 幅 に 下 方 修 正 されたことに 拠 るものであ る 22 23 このようにオーストラリアは 非 生 命 保 険 サービスの 推 計 に 関 して( 当 時 はまだ 取 りまとめられていなかった) 2008SNA および BPM6 の 考 え 方 を 先 行 導 入 した 後 他 の 部 分 も 含 めて 2008SNA および BPM6 への 全 面 的 な 移 行 を 果 たした 国 である 22 ABS はこの 背 景 を 次 のとおり 指 摘 している 輸 出 :オーストラリアの 損 害 保 険 会 社 が 国 内 回 帰 を 進 め クロスボーダー 取 引 を 縮 小 させた 輸 入 : 海 外 への 再 保 険 契 約 を 在 豪 本 部 ではなく 海 外 支 店 において 契 約 するケースが 増 えた この 結 果 実 質 的 には 再 保 険 金 の 支 払 いを 受 けたものであっても クロスボーダー 取 引 としては 本 支 店 間 の 送 金 ( 経 常 移 転 収 支 )として 計 上 される 23 このほか Australian Bureau of Statistics [2009] は 保 険 サービスの 国 内 生 産 に 関 して 2006 年 度 に 12,500 百 万 豪 ドル(GDP<1,091,327 百 万 豪 ドル > の 1.1%) 2007 年 度 に 15,000 百 万 豪 ドル( 同 <1,181,750 百 万 ドル > の 1.3%)の 上 方 改 定 となった と 説 明 している(た だしこの 保 険 サービスは 非 生 命 保 険 以 外 の 保 険 も 含 まれる) - 93 -
2 参 考 資 料 1 図 表 1 オーストラリアの 保 険 サービス 輸 出 入 額 の 推 移 輸 出 mil. mil. AUD AUD 1,200 1,200 1,000 1,000 800 800 600 600 400 400 200 200 0 2000 2000 01 01 02 02 03 03 04 04 05 05 06 06 07 07 08 08 09 09 10 mil. mil. AUD AUD 1,200 1,200 輸 入 1,000 1,000 800 800 600 600 400 400 200 200 0 2000 2000 01 01 02 02 03 03 04 04 05 05 06 06 07 07 08 08 09 09 10 "Balance of of Payments Statistics Yearbook IMF " "Balance of of Payments and International ( 資 料 ) Balance of Payments Statistics Yearbook(IMF) Balance of Payments and International Investment Position (オーストラリア Investment 統 計 Position 局 ) ( )" (2)アメリカ < 段 階 的 に 部 分 導 入 した 事 例 > 非 生 命 保 険 サービスの 生 産 = 現 行 のアメリカの ABS国 民 経 済 計 算 および 国 際 収 支 統 計 は 受 取 保 険 料 ( 当 期 分 )+ 追 加 保 険 料 基 本 的 に は 1993SNA お よ び BPM5 に 準 拠 し て お り - 支 払 保 険 金 ( 当 期 分 ) 2008SNA および BPM6 への 全 面 移 行 に 関 しては 現 在 そ ただし 支 払 保 険 金 には 現 実 の 保 険 金 ではなく 期 の 作 業 が 進 められている Australian 段 階 にある しかしながら ア Bureau of of Statistics [2009] 待 保 険 金 を 利 用 メリカ 同 時 多 発 テロ(2001 年 9 月 )の 発 生 を 受 けて 期 待 保 険 金 は 受 取 保 険 料 と 過 年 度 の 損 害 アメリカ 商 務 省 経 済 分 析 局 (Bureau of Economic Analysis 率 の 加 重 幾 何 平 均 の 積 として 算 出 <BEA>)は 2003 年 に 実 施 した 基 準 改 訂 (Comprehensive 追 加 保 険 料 を 認 識 30 NIPA Revision 原 則 として 5 年 毎 に 実 施 )において 非 㹢 㹢 上 記 を 通 じて 安 定 的 な 非 生 命 保 険 サービスの 生 産 生 命 保 険 サービスの 推 計 方 法 を 見 直 すとともに 過 去 の 輸 出 入 の 記 録 に 成 功 (マイナスのサービス 生 産 輸 出 入 の 問 題 を 解 決 ) 公 表 値 についても 遡 及 改 定 を 実 施 している(Bureau of Economic Analysis[2003a 2003b]) 見 直 しの 基 本 的 な 考 え 方 は 支 払 保 険 金 ( 非 生 命 保 険 会 社 から 見 た 場 合 以 下 同 様 )を 実 現 値 から 期 待 値 に 置 き 換 えるというもので ある 具 体 的 には 次 のとおりであるが この 手 法 は オ ーストラリアの 考 え 方 とも 基 本 的 な 理 念 を 共 有 している BEA はこの 2003 年 基 準 改 訂 により 生 産 面 の 問 題 を 克 服 した - 94 -
ただしこの 時 点 では (この 後 に 取 りまとめられた 2008SNA とは 異 なり)[ 支 払 保 険 金 実 現 値 - 支 払 保 険 金 期 待 値 ]を 非 生 命 保 険 金 支 払 に 代 えて その 他 の 経 常 移 転 支 払 に 記 録 することとしていた 加 え て アメリカ 独 自 の 取 扱 いとして 巨 大 災 害 による 固 定 資 本 の 毀 損 を 固 定 資 本 減 耗 として 扱 うこととしてい た 24 こうしたことから 巨 大 災 害 発 生 時 には 所 得 面 にお いて 様 々な 歪 みが 発 生 していた その 後 ハリケーン カトリーナ(2005 年 8 月 )が アメリカ 本 土 を 直 撃 し 過 去 最 大 の 被 害 をもたらすこと となった こうした 事 態 を 踏 まえ BEA は 2009 年 基 準 改 訂 において 巨 大 災 害 に 関 する 取 扱 いを 2008SNA およ び BPM6 の 考 え 方 に 完 全 に 準 拠 した 形 へと 見 直 すとと もに 過 去 の 公 表 値 について 遡 及 改 定 を 実 施 した(Bureau of Economic Analysis[2009]) 具 体 的 な 見 直 し 内 容 は 次 の とおりである 非 生 命 保 険 サービスの 生 産 = 受 取 保 険 料 ( 当 期 分 ) + 追 加 保 険 料 - 支 払 保 険 金 ( 当 期 分 ) ただし 巨 大 災 害 に 係 る 支 払 保 険 金 は 支 払 保 険 金 から 全 額 控 除 上 記 の 控 除 金 額 は( 経 常 移 転 ( 支 払 )ではなく) 資 本 移 転 ( 支 払 )として 記 録 固 定 資 本 の 毀 損 を 固 定 資 本 減 耗 ではなく その 他 の 資 産 量 変 動 に 記 録 㹢 㹢 上 記 を 通 じて 巨 大 災 害 発 生 時 における 所 得 の 歪 み を 是 正 BEA はこの 2009 年 基 準 改 訂 により 生 産 面 の 問 題 に 加 えて 所 得 面 の 問 題 をも 克 服 した また BEA は 2005 年 第 3 四 半 期 (ハリケーン カトリーナの 発 生 時 )について 推 計 方 法 見 直 しによる 影 響 額 を 参 考 資 料 1 図 表 2のとお り 試 算 している 25 参 考 資 料 1 図 表 2 アメリカの 2005 年 第 3 四 半 期 に おける 推 計 方 法 変 更 の 影 響 : 制 度 部 門 別 所 得 支 出 勘 定 民 間 金 融 機 関 ( 支 払 保 険 金 の 変 更 に 係 る 部 分 のみ 抜 粋 ) 1 単 位 :10 億 ドル 季 節 調 整 済 年 率 換 算 非 生 命 保 険 金 ( 支 払 ) -210.5 家 計 -40.1 自 営 業 者 -26.7 家 計 の 賃 貸 収 入 -114.4 非 金 融 法 人 等 -29.3 営 業 余 剰 85.2 非 生 命 保 険 金 ( 受 取 ) -125.3 2 一 般 政 府 等 -63.8 3 海 外 -61.5 1: アメリカの 国 民 経 済 計 算 NIPA は 制 度 部 門 などの 分 類 や 表 章 項 目 が 独 特 であるため Bureau of Economic Analysis[2009]を 基 に 筆 者 が 編 集 [ 旧 推 計 - 変 更 後 推 計 ]で 計 算 される 変 化 額 2: 公 社 (government enterprises)を 含 む 一 般 政 府 等 に 対 する 保 険 金 の 支 払 と 再 保 険 による 保 険 金 の 受 取 をネットアウトした 金 額 3: 海 外 への 支 払 と 海 外 からの 受 取 をネットアウトした 金 額 大 部 分 は 再 保 険 の 受 取 このようにアメリカは 非 生 命 保 険 サービスの 推 計 に 関 して 段 階 的 に 見 直 しを 実 施 してきた また 体 系 全 体 と しては 1993SNA および BPM5 に 準 拠 しつつも 非 生 命 保 険 サービスに 限 定 する 形 で 2008SNA および BPM6 を 採 用 しており いわば 部 分 的 に 2008SNA および BPM6 を 導 入 した 国 である 24 SNA は 巨 大 災 害 による 固 定 資 本 の 毀 損 (Catastrophic losses)をその 他 の 資 産 量 変 動 として 記 録 するよう 勧 告 している( 詳 細 については 1993SNA(12.35-12.37)や 2008SNA(12.46-12.47)を 参 照 ) これを 固 定 資 本 減 耗 として 記 録 する(2009 年 基 準 改 訂 以 前 の)アメ リカの 手 法 は 同 国 固 有 のものである 25 BEA では 2009 年 基 準 改 訂 に 際 して 巨 大 災 害 と 認 定 する 閾 値 を 2003 年 基 準 改 訂 時 の 関 連 の 資 産 損 害 額 ないし 保 険 金 支 払 額 が GDP の 0.1% (2008 年 時 点 で 143 億 ドル)から 損 害 額 が 民 間 固 定 資 本 減 耗 の 0.25% ( 同 38 億 ドル)へと 下 方 に 修 正 した 仮 に こ の 比 率 を 日 本 (2009 年 度 )に 当 てはめるとそれぞれ 5 千 億 円 弱 2 千 億 円 強 となる いずれも 本 論 4.で 提 案 した 基 準 (およそ 8 千 億 円 )よりも 低 い 水 準 であり アメリカが 相 対 的 には 小 さなものも 含 めて 調 整 を 行 っている 姿 が 見 てとれる - 95 -
(3)ニュージーランド < 個 別 に 適 用 した 事 例 > ニュージーランドのカンタベリー 地 方 は 2010 年 9 月 2011 年 2 月 の 2 度 に 亘 って 大 規 模 な 地 震 に 見 舞 われた (カンタベリー 地 震 わが 国 では 邦 人 留 学 生 からも 犠 牲 者 が 出 た 2 度 目 の 地 震 が 特 に 知 られている) 現 行 のニ ュージーランドの 国 民 経 済 計 算 および 国 際 収 支 統 計 はそ れぞれ 1993SNA および BPM5 に 準 拠 している このた め 最 初 の 地 震 が 発 生 した 後 の 2010 年 12 月 時 点 では ニュージーランド 統 計 局 (Statistics New Zealand)も そ の 基 準 に 則 った 形 で 記 録 することとしていた(Statistics New Zealand[2010]) しかしながら その 後 2 度 目 の 地 震 においてクライストチャーチを 中 心 に 甚 大 な 被 害 が 発 生 するに 至 った ニュージーランド 統 計 局 では これ を 踏 まえて 改 めて 検 討 を 重 ねた 結 果 2008SNA および BPM6 に 準 拠 した 対 応 つまりカンタベリー 地 震 に 係 る 支 払 保 険 金 を 国 民 経 済 計 算 においては 所 得 支 出 勘 定 で はなく 資 本 調 達 勘 定 に 国 際 収 支 統 計 においては 経 常 移 転 ではなく 資 本 移 転 に それぞれ 記 録 することとした (Statistics New Zealand[2011a 2011c]) 26 この 対 応 はカ ンタベリー 地 震 に 限 定 したものであり それ 以 外 の 非 生 命 保 険 サービスについては 従 前 と 同 様 に 1993SNA およ び BPM5 に 準 拠 することとしている なお ( 相 対 的 な 影 響 が 大 きいとみられる) 国 際 収 支 統 計 に 関 しては 再 保 険 に 係 る 受 取 保 険 金 などの 推 計 値 が 参 考 資 料 1 図 表 3 のとおり 公 表 されている このようにニュージーランドは 2008SNA および BPM6 に 移 行 していない 現 段 階 においては 非 生 命 保 険 サービスの 推 計 方 法 を 全 面 的 に 見 直 すことは 避 けつつ 巨 大 災 害 に 関 してのみその 影 響 を 勘 案 しながら 個 別 的 な 対 応 を 採 るとの 立 場 である 本 論 で 検 討 したわが 国 の 対 応 は このニュージーランドの 考 え 方 に 近 いものと 言 え る 参 考 資 料 1 図 表 3 ニュージーランド カンタベリー 地 震 の 再 保 険 に 係 る 国 際 収 支 統 計 および 対 外 資 産 負 債 残 高 ( 推 計 値 ) 単 位 :10 億 ニュージーランドドル その 他 資 本 収 支 投 資 収 支 ( 資 産 ) 対 外 資 産 残 高 資 本 移 転 ( 受 取 ) 貿 易 信 用 貿 易 信 用 2010 年 9 月 第 1 回 目 の 地 震 発 生 3.6 3.6 3.6 2010 年 12 月 - 3.6 2011 年 3 月 第 2 回 目 の 地 震 発 生 7.6 7.5 1 11.1 1: 2 月 に 発 生 した 第 2 回 目 の 地 震 に 係 る 再 保 険 金 のうち 1 億 ドル 弱 は 3 月 末 までに 支 払 われた 資 料 :Statistics New Zealand[2011a] 26 推 計 に 関 する 技 術 的 な 点 であるが 生 産 の 推 計 方 法 に 関 する 対 応 については わが 国 とニュージーランドとでは 事 情 が 異 なっている いずれの 場 合 も 生 産 の 推 計 から 巨 大 災 害 の 影 響 を 控 除 しようとしている 点 (2008SNA および BPM6 の 考 え 方 )は 共 通 である ただし わが 国 の 場 合 非 生 命 保 険 サービスの 生 産 を[ 受 取 保 険 料 - 支 払 保 険 金 ]をベースとして 推 計 しているため 支 払 保 険 金 から 東 日 本 大 震 災 の 影 響 を 控 除 する 必 要 がある これに 対 してニュージーランドの 場 合 受 取 保 険 料 のみを 利 用 して(その 一 定 割 合 として) 生 産 額 を 推 計 していることから 生 産 に 関 する 限 り 特 別 な 対 応 は 必 要 としなかった(Statistics New Zealand [2008 2011b]) - 96 -
参 考 資 料 2:BPM6 における 非 生 命 保 険 サービ スの 見 直 しとわが 国 の 対 応 本 論 第 2 節 では BPM6 における 非 生 命 保 険 サービス の 見 直 しの 中 でも 今 回 の 地 震 保 険 サービスの 見 直 しに 係 りの 深 い 部 分 のみ 取 り 上 げた そこでここでは その 他 の 部 分 も 含 めて BPM6 における 非 生 命 保 険 サービス の 見 直 しに 関 して 包 括 的 に 解 説 する また これを 踏 ま えたわが 国 の 対 応 についても 簡 単 に 紹 介 する 27 BPM5 における 保 険 サービスの 推 計 方 法 は 理 念 的 に は 1993SNA の 国 内 勘 定 と 同 様 なものとなっている し かしながら BPM5 では クロスボーダーの 保 険 契 約 に 係 るサービスの 推 計 には 実 務 上 多 くの 困 難 が 伴 うことか ら 1 追 加 保 険 料 を 勘 案 しない 2 保 険 料 総 額 に 推 計 し た 保 険 サービス 比 率 を 乗 じて 推 計 することを 認 める 等 例 外 的 な 取 扱 いを 容 認 していた 28 また 保 険 サービス 算 出 の 基 礎 となる 保 険 料 と 保 険 金 についても 発 生 主 義 での 計 上 を 求 めておらず これも 1993SNA との 乖 離 を 生 む 一 因 となっていた この 点 BPM6 では 基 本 的 に 2008SNA との 整 合 性 を 確 保 するように 見 直 され ている BPM6 における 具 体 的 な 計 測 方 法 は 以 下 のとお りである (ⅰ) 発 生 主 義 による 計 上 の 明 記 保 険 料 : 保 険 会 社 に 支 払 われた 保 険 料 のうち 当 期 に 被 るリスクをカバーする 部 分 を 計 上 する 保 険 金 : 当 期 に 発 生 した 保 険 事 故 に 対 する 保 険 金 を 計 上 する 前 受 保 険 料 および 未 払 保 険 金 を 保 険 会 社 の 保 険 契 約 者 に 対 する 負 債 保 険 準 備 金 ( 金 融 勘 定 )に 記 録 する (ⅱ) 追 加 保 険 料 の 認 識 の 徹 底 追 加 保 険 料 : 保 険 会 社 の 責 任 準 備 金 を 元 に 投 資 され た 資 産 から 得 られた 投 資 所 得 で 保 険 契 約 者 に 帰 属 するもの これは 一 旦 保 険 契 約 者 に 所 得 として 支 払 われた 後 に 改 めて 保 険 契 約 者 から 保 険 会 社 に 追 加 保 険 料 として 支 払 われたものとして 記 録 する (ⅲ) 保 険 金 変 動 の 調 整 を 行 うことによる 期 待 保 険 金 の 算 出 保 険 金 変 動 の 調 整 は ある 期 の 現 実 の 保 険 金 と 通 常 期 待 される 水 準 の 保 険 金 の 差 額 これは 保 険 金 が 変 動 しやすい 保 険 契 約 は 単 期 中 に 発 生 した 保 険 金 のみ 勘 案 した 場 合 結 果 として 得 られる 保 険 サービスの 価 額 は 不 安 定 になりかねず さらに 大 災 害 が 起 きた 期 には 負 の 値 にもなりかね ないため 通 常 期 待 される 水 準 の 保 険 金 ( 期 待 保 険 金 )は 期 待 値 アプローチ 会 計 アプローチ 費 用 プラス 正 常 利 益 アプローチ により 求 められるとして いる BPM6 では 非 生 命 保 険 サービスの 輸 出 は 非 居 住 者 から 受 取 った 保 険 料 総 額 に ( 非 生 命 ) 保 険 サービス 比 率 ( 本 邦 損 害 保 険 会 社 の 保 険 料 収 入 に 対 する 事 業 費 比 率 ) を 乗 じることにより 推 計 できると 整 理 している また 非 生 命 保 険 サービスの 輸 入 についても 非 居 住 者 からの 受 取 った 保 険 金 に ( 非 生 命 ) 保 険 サービス 比 率 を 乗 じることにより 推 計 できると 整 理 しているが 入 手 でき る 情 報 が 限 られるという 実 務 上 の 制 約 に 鑑 み その 比 率 は 1 大 手 の 国 際 的 に 活 動 する 保 険 会 社 が 公 表 した 会 計 情 報 を 基 に 計 算 した 比 率 2 居 住 者 である 本 邦 損 害 保 険 会 社 の 会 計 情 報 を 基 に 計 算 した 比 率 ( 輸 出 で 用 いるもの と 同 一 のもの) 3 外 国 に 支 払 う 保 険 料 と 外 国 から 受 取 る 保 険 金 に 関 して 中 長 期 に 亘 る 計 数 を 基 に 計 算 した 比 率 のうち 最 適 なものを 使 うことを 認 めている わが 国 の 国 際 収 支 統 計 では 2014 年 に 予 定 する BPM6 への 移 行 にあわせて 保 険 サービスの 推 計 方 法 について 見 直 しを 実 施 する 予 定 である 具 体 的 には 1 保 険 料 を 発 生 主 義 で 認 識 するほか 2これに 保 険 サービス 比 率 を 乗 じることにより 保 険 サービスを 算 出 する というもの である 保 険 料 は 翌 期 以 降 のリスクに 対 応 する 部 分 も 含 めて 前 払 いされることから 当 期 のリスクに 対 応 する 部 分 のみ 保 険 料 として 計 上 し 保 険 期 間 が 到 来 していない 前 受 け 部 分 は 保 険 準 備 金 ( 保 険 会 社 の 負 債 )として 記 録 する また 輸 出 輸 入 とも 本 邦 損 害 保 険 会 社 の 保 険 料 収 入 に 対 する 事 業 費 比 率 ( 居 住 者 である 保 険 会 社 の 会 計 情 報 を 基 に 計 算 した 比 率 ) を 保 険 サービス 比 率 とし 27 以 下 説 明 するわが 国 の 対 応 案 については 現 時 点 でのものであり 今 後 変 更 の 可 能 性 がある 28 BPM5 では 保 険 料 保 険 金 を 発 生 主 義 で 記 録 することについて 特 に 明 記 していないほか 保 険 サービスについても 保 険 料 総 額 に 含 まれるサービス 料 の 金 額 をもって 行 うべきである とのみ 記 述 している また 追 加 保 険 料 についても 推 計 が 困 難 であることから 技 術 的 準 備 金 の 運 用 収 入 に 伴 う 居 住 者 非 居 住 者 間 のフローは 無 視 して 良 い と 明 示 的 には 計 上 しない 扱 いとしており 1993SNA 対 比 簡 易 的 な 計 上 を 認 めていた - 97 -
億 円 500 億 円 500 400 400 300 参 考 資 料 2 図 表 1 保 険 サービス 輸 出 入 額 推 計 値 の 推 移 保 険 料 ( 見 直 し 後 ) 輸 出 保 険 金 非 生 命 保 険 サービス( 見 直 し 後 ) 現 行 非 生 命 保 険 サービス 保 険 料 ( 見 直 し 後 ) 保 険 金 現 行 保 険 料 非 生 命 保 険 サービス( 見 直 し 後 ) 現 行 非 生 命 保 険 サービス 現 行 保 険 料 300 200 200 100 1000 1000 100 200 200 300 300 400 400 500 500 輸 出 がマイナスを 記 録 輸 出 がマイナスを 記 録 0 6 0 7 0 8 0 9 1 0 1 1 0 6 0 7 0 8 0 9 1 0 1 1 年 現 行 保 険 サービス( 輸 出 )= 現 行 保 険 料 ( 受 取 )- 保 険 金 ( 支 払 ) 保 険 サービス( 輸 出 ) 新 計 上 方 法 = 保 険 料 ( 受 取 ) 保 険 サービス 比 率 年 億 円 1,000 億 円 1,000 800 輸 入 800 600 600 400 400 200 2000 2000 200 400 400 600 600 800 1,000 800 1,000 保 険 料 ( 見 直 し 後 ) 保 険 金 非 生 命 保 険 サービス( 見 直 し 後 ) 現 行 非 生 命 保 険 サービス 保 険 料 ( 見 直 し 後 ) 保 険 金 現 行 保 険 料 非 生 命 保 険 サービス( 見 直 し 後 ) 現 行 非 生 命 保 険 サービス 現 行 保 険 料 0 6 0 7 0 8 0 9 1 0 1 1 現 行 保 険 サービス( 輸 入 )= 現 行 保 険 料 ( 支 払 )- 保 険 金 ( 受 取 ) 0 6 0 7 0 8 0 9 1 0 1 1 保 険 サービス( 輸 入 ) 新 計 上 方 法 = 保 険 料 ( 支 払 ) 保 険 サービス 比 率 * 保 険 サービス 比 率 は 輸 出 輸 入 とも 同 一 年 年 て 用 いる 方 向 で 検 討 を 進 めている 具 体 的 には 本 邦 損 害 保 険 会 社 の 決 算 資 料 を 基 に 算 出 した 事 業 費 比 率 ( 正 味 保 険 料 収 入 に 対 する 事 業 費 比 率 29 )を 用 いて 算 出 する 予 定 であり 過 去 7 年 間 をみると 40% 前 後 で 安 定 的 に 推 移 している ただし 3 保 険 金 については 現 金 主 義 で 認 識 する すなわち 統 計 上 は 保 険 金 支 払 事 由 の 発 生 時 点 ではなく 保 険 金 が 保 険 契 約 者 に( 外 国 損 害 保 険 会 社 から 居 住 者 に 対 して あるいは 本 邦 損 害 保 険 会 社 か ら 非 居 住 者 に 対 して) 支 払 われる 時 点 において 保 険 金 の 受 払 が 計 上 されることとなる これは わが 国 の 国 際 収 支 統 計 は 外 国 為 替 及 び 外 国 貿 易 法 に 基 づく 報 告 書 ( 支 払 又 は 支 払 の 受 領 に 関 する 報 告 書 ) 30 を 基 に 作 成 され ているが その 報 告 自 体 は 決 済 が 行 われた 時 点 となるた めである また 4 今 回 の 大 震 災 の 様 な 大 規 模 災 害 が 発 生 した 場 合 には その 内 容 を 確 認 し ( 経 常 移 転 ではなく) 資 本 移 転 に 計 上 すべきか 否 かを 個 別 に 判 断 する 扱 いとす 29 ここでは 事 業 費 を 損 害 調 査 費 諸 手 数 料 及 び 集 金 費 営 業 費 及 び 一 般 管 理 費 の 合 計 として 定 義 30 3000 万 円 を 超 えるクロスボーダーの 取 引 が 報 告 の 対 象 であり 現 金 主 義 ( 決 済 主 義 )での 報 告 となる - 98 -
る 方 向 である なお 現 在 検 討 が 進 められている 推 計 方 法 を 用 いて 保 険 サービスの 輸 出 輸 入 を 計 測 すると 参 考 資 料 2 図 表 のとおりである 現 行 の 推 計 方 法 に 比 べて 安 定 的 に 保 険 サービスが 記 録 されているほか サービスの 輸 出 が 一 時 的 ながらマイナスに 陥 る 問 題 も 解 決 する 見 込 みである 参 考 文 献 金 融 庁 [2011] 東 日 本 大 震 災 に 係 る 保 険 金 共 済 金 の 支 払 い 見 込 み 額 支 払 い 実 績 2011 年 7 月 19 日 財 務 省 日 本 銀 行 [2011] 国 際 収 支 統 計 における 保 険 金 の 計 上 方 法 の 一 部 見 直 しについて 2011 年 8 月 8 日 損 害 保 険 事 業 総 合 研 究 所 [2000] 再 保 険 その 理 論 と 実 務 (トーア 再 保 険 株 式 会 社 編 ) 2000 年 1 月 内 閣 府 経 済 社 会 総 合 研 究 所 [2006] 四 半 期 別 GDP 速 報 (QE) の 推 計 方 法 ( 第 5 版 ) 2006 年 7 月 12 日 内 閣 府 経 済 社 会 総 合 研 究 所 [2007] SNA 推 計 手 法 解 説 書 ( 平 成 19 年 改 訂 版 ) 2007 年 10 月 11 日 日 本 銀 行 国 際 局 [2011] 国 際 収 支 統 計 の 解 説 2011 年 5 月 日 本 銀 行 調 査 統 計 局 [2011a] 資 金 循 環 統 計 の 解 説 2011 年 3 月 2 日 日 本 銀 行 調 査 統 計 局 [2011b] 資 金 循 環 統 計 の 作 成 方 法 2011 年 3 月 2 日 日 本 損 害 保 険 協 会 [2010] 東 日 本 大 震 災 に 係 る 地 震 保 険 の 支 払 件 数 金 額 について(2011 年 7 月 28 日 ( 木 ) 現 在 ) 2011 年 7 月 29 日 保 険 研 究 所 [2010] インシュアランス 損 害 保 険 統 計 号 2010 年 12 月 29 日 Australian Bureau of Statistics[1999] "The Measurement of Non- Life Insurance Output in the Australian National Accounts" OECD Meeting of National Accounts Experts STD/NA(99)20 August 1999 Australian Bureau of Statistics[2009]"Information Paper: Implementation of new international statistical standards in ABS National and International Accounts" September 2009 Australian Government, Department of Foreign Affairs and Trade[2011] "Change to ABS trade in services statistics in 2009" March 2011 European Commission, International Monetary Fund, Organisation for Economic Co-operation and Development, United Nations and World Bank[1993] "System of National Accounts 1993" July 1993 European Commission, International Monetary Fund, Organisation for Economic Co-operation and Development, United Nations and World Bank[2009] "System of National Accounts 2008" February 2009 Harrison, Anne[2008] "Insurance" SNA/M1.08/07 Meeting of the Advisory Expert Group on National Accounts November 2008 International Monetary Fund (IMF)[1993] "Fifth Edition of Balance of Payments Manual" 1993 International Monetary Fund (IMF)[2009] "Sixth Edition of the IMF's Balance of Payments and International Investment Position Manual" 2009 Lequiller, François[2004a] "Recommendations on the measurement of the production of non-life insurance" SNA/M1.04/10 Meeting of the Advisory Expert Group on National Accounts February 2004 Lequiller, François[2004b] "Results of the AEG's written consultation on insurance" SNA/M2.04/28 Meeting of the Advisory Expert Group on National Accounts December 2004 Moulton, Brent[2008] "Comments on Non-life Insurance" SNA/ M1.08/07.Add1 Meeting of the Advisory Expert Group on National Accounts November 2008 Statistics New Zealand[2008] "Quarterly Gross Domestic Product: Sources and Methods" June 2008 Statistics New Zealand[2010] "Insurance Impact of the Canterbury Earthquakes on New Zealand's International Accounts" December 2010 Statistics New Zealand[2011a] "Impact of the Canterbury Earthquakes on New Zealand's International Accounts" June 2011 Statistics New Zealand[2011b] "Impact of the Canterbury Earthquakes on New Zealand's Gross Domestic Product" July 2011 Statistics New Zealand[2011c] "Revised Treatment of the Canterbury Earthquakes'Insurance Claims in New Zealand's International and National Accounts" June 2011 U.S. Department of Commerce, Bureau of Economic Analysis[2003a] "Measuring the Services of Property- Casualty Insurance in the NIPAs" Survey of Current Business Vol.83 No.10 October 2003 U.S. Department of Commerce, Bureau of Economic Analysis[2003b] "Preview of the 2003 Comprehensive Revision of the National Income and Product Accounts" Survey of Current Business Vol.83 No.6 June 2003 U.S. Department of Commerce, Bureau of Economic Analysis[2009] "Preview of the 2009 Comprehensive Revision of the NIPAs Changes in Definitions and Presentations" Survey of Current Business Vol.89 No.3 March 2009-99 -
季 刊 国 民 経 済 計 算 146 平 成 23 年 9 月 30 日 発 行 編 発 集 行 内 閣 府 経 済 社 会 総 合 研 究 所 国 民 経 済 計 算 部 100-8970 東 京 都 千 代 田 区 霞 が 関 3-1-1 TEL 03(3581)0631 メディアランド 株 式 会 社 103-0012 東 京 都 中 央 区 日 本 橋 堀 留 町 1-9-2 ICSTビル6F TEL 03(5649)7070 落 丁 乱 丁 本 はおとりかえします