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2012.10.18. 沿 岸 域 総 合 管 理 のモデル 教 育 カリキュラム 海 洋 基 礎 生 態 学 特 論 海 洋 の 基 礎 生 産 と 生 態 系 ~ 富 栄 養 化 と 肥 沃 化 はなにが 違 うのか?~ 高 知 大 学 教 育 担 当 理 事 副 学 長 深 見 公 雄

自 己 紹 介 名 前 : 深 見 公 雄 (ふかみきみお) 所 属 : 高 知 大 学 理 事 ( 教 育 担 当 ) 副 学 長 TEL & FAX (088) 844-8721 E-Mail fukami@kochi-u.ac.jp 出 身 地 : 京 都 市 専 門 : 海 洋 微 生 物 生 態 学 海 洋 環 境 保 全 学 趣 味 : うまいものを 食 べながら 酒 ( 麦 芽 100% ビール 純 米 酒 )を 飲 むこと 浅 酌 (せんしゃく) 音 楽 (バッハ ブラームス 中 島 みゆき ZARD 等 ) 聞 きながら 長 距 離 ドライブをすること 地 図 を 見 ながらあちこち 旅 すること 登 山 軟 式 野 球 写 真 アユ 釣 り その 他

富 栄 養 化 と 肥 沃 化 の 違 いの 話 をする 前 に まずは 海 の 生 態 系 と 基 礎 生 産 の 話 から なぜならすべての 海 の 問 題 は 基 礎 生 産 とそこから 始 まる 食 物 連 鎖 生 態 系 が 基 になるから

無 機 栄 養 塩 (チッソ リン 等 ) 植 物 プランクトン ( 生 産 者 ) 付 着 性 細 菌 ( 分 解 者 ) 動 物 プランクトン ( 消 費 者 ) 大 中 小 型 の 魚 類 等 ( 消 費 者 )

無 機 栄 養 塩 チッソ NO 3 ( 硝 酸 塩 ) NO 2 ( 亜 硝 酸 塩 ) NH 4 (アンモニウム 塩 ) リン PO 4 (リン 酸 塩 ) 珪 素 SiO 4 (ケイ 酸 塩 ) ---------------------------------------------- Fe( 微 量 金 属 類 ) ビタミン 類

ギムノディニウム 円 石 藻 (Parsons et al., 1977 )

カレニア ミキモトイ (Karenia mikimotoi)

Umbilicosphaera sibogae ver. foliosa Emiliania huxleyi

ディノフィシス 珪 藻 類 (Parsons et al., 1977 )

ディノフィシス 属 (Dinophysis sp.)

放 散 虫 有 孔 虫 繊 毛 虫 (Parsons et al., 1977 )

櫛 クラゲ 翼 足 類 端 脚 類 矢 虫 類 オキアミ 類 かいあし 類 (Parsons et al., 1977)

クリオネ

ナンキョクオキアミ (Euphausia superba)

無 機 栄 養 塩 (チッソ リン 等 ) 植 物 プランクトン 一 次 生 産 ( 基 礎 生 産 ) 付 着 性 細 菌 動 物 プランクトン 食 物 連 鎖 魚 等 高 次 消 費 者 ( 魚 類 生 産 )

無 機 栄 養 塩 (チッソ リン 等 ) 植 物 プランクトン ( 生 産 者 ) 体 外 排 出 有 機 物 (EOM) 付 着 性 細 菌 ( 分 解 者 ) 動 物 プランクトン ( 消 費 者 ) 魚 等 高 次 消 費 者 ( 消 費 者 ) 捕 食 食 物 連 鎖

植 物 プランクトンの 体 外 排 出 有 機 物 (EOM) 光 合 成 有 機 物 の10 60%! 溶 存 態 ゆえ 高 等 生 物 にとって 利 用 不 可 能 捕 食 食 物 連 鎖 の 系 外 への 物 質 の 消 失

一 般 的 な 海 洋 細 菌 海 洋 では 大 部 分 は 浮 遊 性 付 着 細 菌 は 1% 以 下 浮 遊 細 菌 はEOMを 好 んで 食 べることで 増 殖 溶 存 有 機 物 を 粒 子 へ 変 換 細 菌 捕 食 性 鞭 毛 虫 の 餌 として 食 べられる

無 機 栄 養 塩 (チッソ リン 等 ) 付 着 性 細 菌 ( 分 解 者 ) 植 物 プランクトン ( 生 産 者 ) 動 物 プランクトン ( 消 費 者 ) 体 外 排 出 有 機 物 (EOM) 浮 遊 性 細 菌 魚 等 高 次 消 費 者 ( 消 費 者 ) 捕 食 食 物 連 鎖

細 菌 捕 食 性 ( 従 属 栄 養 性 ) 鞭 毛 虫

繊 毛 虫 (Corliss, 1979より)

無 機 栄 養 塩 (チッソ リン 等 ) 植 物 プランクトン 体 外 排 出 有 機 物 (EOM) 付 着 性 細 菌 動 物 プランクトン 浮 遊 性 細 菌 鞭 毛 虫 魚 等 高 次 消 費 者 繊 毛 虫 捕 食 食 物 連 鎖 微 生 物 食 物 連 鎖

海 域 が 豊 か とは? 魚 介 類 が 豊 富 で 漁 獲 高 が 大 きいこと 生 き 物 ( 餌 )の 量 が 多 いこと そのためには 基 礎 生 産 が 大 きくないとダメ そのためには 栄 養 塩 類 が 豊 富 である 必 要 あり

せいぜい 水 深 200m くらいまで しか 光 は 届 かない ( 角 皆,1985)より 改 編

例 大 和 堆 武 蔵 堆 ( 日 本 海 ) ドッガーバンク( 北 海 ) ジョージアバンク(カナダ 沖 ) 例 房 総 沖 ~ 三 陸 沖 例 ペルー 沖

人 工 湧 昇 の 計 画 富 栄 養 な 真 光 層 以 深 の 海 水 をくみ 上 げ て 光 のある 表 層 付 近 にまく 基 礎 生 産 を 高 め 食 物 連 鎖 により 漁 場 形 成 海 洋 深 層 水 の 取 水 はもともとこの 目 的 始 まった!( 例 : 富 山 湾 相 模 湾 )

( 高 知 県 パンフレットより)

ここで 栄 養 の 乏 しい 海 域 の 話 黒 潮 とは 何 か? 黒 潮 の 海 は 豊 かな 海 なのか?

日 本 周 辺 の 海 流 リマン 海 流 津 軽 暖 流 親 潮 対 馬 暖 流 黒 潮 1000km ( 東 大 大 気 海 洋 研 道 田 豊 氏 提 供 を 改 編 )

黒 潮 はどこを 流 れているか 1000km ( 東 大 大 気 海 洋 研 道 田 豊 氏 提 供 )

黒 潮 (Kuroshio)とは 世 界 最 大 の 海 流 の 一 つ フィリピン 東 方 海 上 に 端 を 発 し 台 湾 の 東 側 日 本 の 南 西 諸 島 に 沿 って 北 上 し トカラ 海 峡 を 通 って 九 州 東 方 へ 出 て 日 本 列 島 の 南 を 東 進 し 房 総 沖 から 日 本 の 遙 か 東 方 に 離 れていく 最 大 流 速 は4~5ノット(2.0-2.5m/ 秒 ) 流 れの 幅 は 約 100km 水 深 は 数 百 m 海 水 量 は 毎 秒 数 千 万 トン

黒 潮 は 恵 み をもたらすのか? 黒 潮 は 本 当 に 豊 かな 海 か?! そうではなくむしろ 不 毛 の 海 であり 海 の 砂 漠 と 呼 ばれている! なぜ 不 毛 の 海 なのか? なぜ 黒 潮 の 恵 み と 呼 ばれるのか?

黒 潮 の 海 水 は 1. 熱 帯 の 暖 かくて 貧 栄 養 な 表 層 海 水 2. 生 産 性 が 低 く 生 物 量 が 極 端 に 少 ない ため 透 明 度 がきわめて 高 い 3. 周 囲 の 海 域 と 比 較 して 水 の 色 が 濃 い 藍 色 4.このため 黒 潮 と 呼 ばれる 5. 黒 潮 自 体 に 魚 が 多 いわけではない

ではなぜ 黒 潮 の 恵 み といわれるのか 1.カツオやマグロのような 大 型 の 回 遊 魚 を 日 本 近 海 へ 運 んでくる 2. 黒 潮 の 膨 大 なエネルギーが 大 陸 棚 に 湧 昇 を もたらし 栄 養 塩 を 湧 き 上 がらせる 3. 周 辺 海 域 は 明 瞭 なフロントが 形 成 され 有 機 物 や 動 物 プランクトンが 集 積 される 3. 大 陸 棚 やフロント 付 近 で 近 海 物 の 魚 が 獲 れ るため 4. 温 暖 な 気 候 降 雤 を 陸 地 にもたらす

( 深 見, 未 発 表 )

いよいよ 本 題 富 栄 養 化 と 肥 沃 化 の 違 いは?

無 機 栄 養 塩 (チッソ リン 等 ) 植 物 プランクトン 体 外 排 出 有 機 物 (EOM) 付 着 性 細 菌 動 物 プランクトン 浮 遊 性 細 菌 鞭 毛 虫 魚 等 高 次 消 費 者 繊 毛 虫 捕 食 食 物 連 鎖 微 生 物 食 物 連 鎖

同 じ 富 栄 養 化 なのにどこが 違 う? 東 京 湾 大 阪 湾 高 知 県 浦 ノ 内 湾 野 見 湾 な どは 富 栄 養 化 による 環 境 悪 化 が 問 題 富 山 湾 や 相 模 湾 では 海 洋 深 層 水 のくみ 上 げによる 富 栄 養 化 を 目 指 している( 海 域 の 肥 沃 化 ) 同 じ 富 栄 養 化 なのに 前 者 は 問 題 視 され 後 者 は 促 進 されようとしている なぜ?!

栄 養 塩 量 により 基 礎 生 産 量 は 決 定 される 基 礎 生 産 の 高 い 海 域 はよい 漁 場 富 栄 養 化 自 体 が 問 題 ではない 生 態 系 のバランスがくずれることが 問 題! 赤 潮 の 発 生

高 知 県 と 黒 潮 の 関 係 貧 栄 養 な 黒 潮 と 富 栄 養 な 沿 岸 海 水 が 微 妙 なバランスで 混 じり 合 っている 温 暖 な 気 候 による 降 雤 が 豊 かな 栄 養 塩 を 山 地 から 供 給 している 黒 潮 は 高 知 県 の 森 川 海 に 様 々な 恵 み をもたらしている

Aug.F Aug.S Sep.F Sep.S Oct.F Oct.S Nov.F Nov.S Dec.F Dec.S Jan. Feb. Mar. Apr.F Apr.S May.F May.S Jun. Jul.F Jul.S Aug.F Aug.S Sep.F Sep.S Oct.F Oct.S Nov.F Nov.S Dec.F Dec.S Jan. Feb. Mar. Apr. May. Jun. DIN 濃 度 (μm) 140 降 水 湧 水 河 川 水 120 100 *: データなし F: 上 旬, S: 下 旬. 80 60 40 20 0 * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * 2006 2007 2008 サンプリング 日 ( 深 見 ら;2007)を 改 編

Aug.F Aug.S Sep.F Sep.S Oct.F Oct.S Nov.F Nov.S Dec.F Dec.S Jan. Feb. Mar. Apr.F Apr.S May.F May.S Jun. Jul.F Jul.S Aug.F Aug.S Sep.F Sep.S Oct.F Oct.S Nov.F Nov.S Dec.F Dec.S Jan. Feb. Mar. Apr. May. Jun. DIP 濃 度 (μm) 降 水 湧 水 河 川 水 1.5 1.2 2.87 *: データなし F: 上 旬, S: 下 旬. 0.9 0.6 0.3 0 * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * 2006 2007 2008 サンプリング 日 ( 深 見 ら;2007)を 改 編

Aug.F Aug.S Sep.F Sep.S Oct.F Oct.S Nov.F Nov.S Dec.F Dec.S Jan. Feb. Mar. Apr.F Apr.S May.F May.S Jun. Jul.F Jul.S Aug.F Aug.S Sep.F Sep.S Oct.F Oct.S Nov.F Nov.S Dec.F Dec.S Jan. Feb. Mar. Apr. May. Jun. SiO 2 -Si 濃 度 (μm) 250 降 水 湧 水 河 川 水 *: データなし 200 F: 上 旬, S: 下 旬. 150 100 50 0 * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * 2006 2007 2008 サンプリング 日 ( 深 見 ら;2007)を 改 編

降 水, 湧 水 および 河 川 水 における 溶 存 態 無 機 栄 養 塩 の 平 均 濃 度 (±SD) 降 水 湧 水 河 川 水 μm DIN 8.23(±6.10) 37.4(±24.7) 27.2(±5.86) DIP 0.07(±0.10) 0.62(±0.44) 0.28(±0.24) SiO 2 -Si 0.54(±0.74) 188(±29.3) 128(±23.4) N:P:Si=97:1:457

高 知 県 にもたらされる 黒 潮 の 恵 み とは? 自 然 の 幸 山 森 ( 森 林 資 源 ) 川 里 ( 淡 水 生 物 農 作 物 ) 沿 岸 沖 合 ( 魚 介 類 海 水 )

流 域 圏 総 合 科 学 の 考 え 方 沿 岸 部 から 河 川 の 流 域 をさかのぼって 山 間 部 に 至 るまでを 大 気 を 含 めて 一 つのシステ ムとしてとらえる その 間 の 生 物 再 生 産 機 構 や 人 間 の 環 境 へ 与 える 影 響 について 明 らかにする 自 然 科 学 と 社 会 科 学 を 融 合 させて 研 究 する

流 域 圏 総 合 科 学 の 考 え 方 温 暖 な 気 候 豊 富 な 降 雤 量 黒 潮 森 林 の 発 達 栄 養 塩 の 供 給 河 川 水 豊 穣 な 農 作 物 人 間 へ の 恩 恵 豊 かな 汽 水 域 海 洋 生 物 の 再 生 産 貧 栄 養 な 海 水

自 然 の 幸 の 持 続 性 とは? 生 物 資 源 は 再 生 産 される 再 生 産 の 範 囲 で 消 費 する 限 り 資 源 は 減 らない! 生 産 と 消 費 のバランス cf.) 非 生 物 資 源 ( 物 質 資 源 ) 増 えない 資 源 は 減 る 一 方 廃 棄 物 がでる 利 息 の 範 囲 でしかお 金 を 使 わない 貯 蓄 のよう なもの

再 生 産 力 の 評 価 でも どれくらい 再 生 産 する 力 があるの? その 力 はどれくらい 変 動 するの? どれくらい 採 っても( 消 費 しても) 大 丈 夫 なの? これらを 正 確 に 知 ることはかなり 難 しい!!

最 後 の 一 つ 前 に 云 いたいこと 生 態 系 のバランスさえ 保 たれていれば 基 礎 生 産 の 大 きいほど 豊 饒 の 海 となる. バランスが 壊 れると, 病 んだ 海 になってし まう. 自 然 のバランスは 簡 単 に 崩 れてしまう. 海 の 恵 み を 持 続 的 に 享 受 するために 人 は 自 然 に 対 し 常 に 謙 虚 でなくてはいけない

最 後 の 最 後 に 云 いたいこと 海 洋 の 中 には 思 いもかけない 事 実 ( 非 常 識 )が 多 く 潜 んでいる. 特 に, ちっぽけな 微 生 物 が 大 きな 働 きをし ている!! だから 海 (とりわけ 海 洋 微 生 物 ) はおもしろい!!