観光学研究 第 7 号 2008年 3 月 58 ②論文とりまとめの指導方法 一連の論文のとりまとめ作業を その内容のまとまりに留意しながら 表 1 に示したとおり 本 調査研究の意義や目的の理解 舎の色彩のバリエーションの検討 舎の色彩を評価する形容詞 対の検討 順位法及び SD 法によるアンケート調査票の様式の検討 刺激となる 舎の複数の色彩写 真の作成 学生等を被験者としたアンケート調査の実施 アンケート調査結果の集計 アンケート 調査結果の に 析や 察 一連の作業過程や結果の論文形式でのとりまとめといった複数の作業工程 割し 各作業工程ごとに 教員による学生に対する説明指導及び学生による研究調査作業の実 際的試行を順次実施する指導方法をとった また 最終工程終了後は 一連の論文とりまとめ作業 を体験した感想について 自由記述方式のアンケートにより調査した 表1 演習に係る研究調査の作業工程 ①本調査研究の意義や目的の理解 ② 舎の色彩のバリエーションの検討 ③ 舎の色彩を評価する形容詞対の検討 ④順位法及び SD 法によるアンケート調査票の様式の検 討 ⑤刺激となる 舎の複数の色彩写真の作成 ⑥学生等を被験者としたアンケート調査の実施 ⑦アンケート調査結果の集計 ⑧アンケート調査結果の 析や 察 ⑨調査結果等の論文形式でのとりまとめ ⑵ 図1 用した刺激写真 左図の現況写真をもとに 舎の色彩を 6 色に 変 したものを刺激写真として 用 現況写真 を含めて計 7 種類 演習題材とした研究調査の実施方法 板倉 舎の外壁を 異なる色彩に塗り替えた写真を用意し これを刺激として順位法及び SD 法に よるアンケート調査を実施した 詳細は次のとおりである ①刺激写真 門付近からの から 刺激写真に 舎正面の眺めが板倉 舎の景観イメージを主に規定していると 用する景観としては 門付近に視点を置いた 距離は100ⅿであり 対角線画角は63度である この ジュ プログラムを に塗り替えた板倉 えられたこと 舎正面の全景を選択した 視 舎正面の全景写真をもとに フォトモンター って レンガ色 黄色 ベージュ ピンク 紺色 水色の 6 点の異なる色彩 舎の写真を用意した また 現況色彩に対する評価との比較対照を行うことが できるように 現況写真も刺激写真として加えた計 7 点を刺激写真として 用した 図 1 参照 な お これらの色彩のバリエーションの選択に当たっては 事前に 学生 9 人によって 市街地にお ける既存 築物の色彩に関する現地調査等を行い 板倉 る色彩に関するブレーンストーミングを実施した 舎の外壁の色彩として好ましいと思われ
東海林 板倉 舎の色彩評価に関する研究 の演習について 59 ②評価軸 選択した 6 点の異なる色彩を有する市街地の 色彩評価を実施し この結果をもとに 板倉 果 築物を対象にして 学生 9 人による自由記述での 舎の色彩に関する評価軸の抽出を検討した この結 合評価軸としては どの色の大学に通いたいか 個別評価軸としては 好きー嫌い おしゃ れであるーおしゃれでない 周りの景観に 似合っているー似合っていない 落ち着いているー 落ち着きがない の 4 軸の計 5 軸が主要な評価軸として抽出された 図 2 参照 心理実験に係るア ンケート調査の手法としては 合評価軸については各刺激写真に順位をつけてもらう順位法 個 別評価軸については 好き 嫌い 等の程度を 5 段階の尺度に けた SD 法により調査を実施するこ ととした ③調査日時等及び被験者 ア 調査日時及び場所 3 人又は 2 人 1 組からなる調査班を組織し 板倉キャンパス内の食堂 図書館 食堂前広場の 3 箇 所において 平成19 年 7 月 3 日の午後に同時に実施した 図 2 参照 イ 被験者 本研究の目的にかんがみ 学生を対象した 被験者数は計63人 男34人 女29 人 である ウ 刺激写真の提示方法 調査作業の簡 性を 慮し 台紙に L 版の大きさの 7 点の刺激写真を貼ったものを被験者に提示 しながら心理実験に係るアンケート調査を行った 表2 用した評価軸の種類 ① 合評価軸 どの色の大学に通いたいか ②個別評価軸 好き 嫌い おしゃれである おしゃれでない 周りの景観に 似合っている 似合っていない 落ち着いている 落ち着きがない 図 2 調査の実施状況 3 結果及び 察 ⑴ 演習題材とした研究調査の実施結果 ① 合評価軸 合評価軸として設定した通いたいと思う 感覚的に評価の高低が 舎の色彩に関する調査結果は図 3 のとおりである かりやすいように すべての人に 1 位として選択された場合は 7 点 また すべての人に最下位の 7 位として選択された場合は 0 点となるように評価値を変換して図化してい
観光学研究 第 7 号 2008年 3 月 60 る 現況のグレーの色彩の評価が平 5.0点と高く この現況の色彩より評価が高かった色彩はレンガ色 の 1 色だけであり 残りの 5 種類の色彩については いずれも現況より評価が低かった また この 5 色 のうちでも ベージュは4.6点と現況に近い値を示し ている一方 黄色が2.5点 ピンクが2.6点と相対的に 低い値を示していた これらの結果から 通いたい と思う大学の 舎の色彩 としては レンガ色 グ レー 現況 ベージュの順に選択される傾向がある 図3 合評価軸の調査結果 通いたいと思う 舎の色 ことが把握できた ②個別評価軸 個別評価軸として設定した 好きー嫌い おしゃれであるーおしゃれでない 周りの景観に 似合っているー似合っていない 落ち着いているー落ち着きがない の 4 軸の調査結果は 図 4 の とおりである いずれについてもレンガ色の色彩の評価が最も高く また 次いで現況の色彩のグ レーの評価が準じる傾向が見られており それぞれに 好き嫌い では4.3と3.6 おしゃれ では 落ち着き では4.1と4.0の値を示していた この両者の色彩に対 4.0と3.1 似合い では4.3と3.8 する評価値の差であるが 好き嫌い では0.7 おしゃれ では0.9 似合い では0.5と差の値が 図4 各個別評価軸の調査結果