諮 問 庁 : 国 税 庁 長 官 諮 問 日 : 平 成 26 年 10 月 24 日 及 び 平 成 27 年 1 月 26 日 ( 平 成 26 年 ( 行 情 ) 諮 問 第 576 号 及 び 平 成 27 年 ( 行 情 ) 諮 問 第 28 号 ) 答 申 日 : 平 成 27 年 5 月 15 日 ( 平 成 27 年 度 ( 行 情 ) 答 申 第 45 号 及 び 同 第 46 号 ) 事 件 名 : 特 定 税 務 署 が 保 有 する 特 定 日 付 け 決 裁 文 書 により 保 存 期 間 を 延 長 した 申 告 書 等 の 不 開 示 決 定 に 関 する 件 特 定 税 務 署 が 保 有 する 特 定 日 付 け 決 裁 文 書 により 保 存 期 間 を 延 長 した 申 告 書 等 の 不 開 示 決 定 に 関 する 件 答 申 書 第 1 審 査 会 の 結 論 次 に 掲 げる 同 一 の 文 書 ( 以 下 本 件 対 象 文 書 という )につき,その 全 部 を 不 開 示 とした 各 決 定 については, 審 査 請 求 人 が 開 示 すべきとする 部 分 を 不 開 示 としたことは, 妥 当 である (1) 特 定 税 務 署 Aが 保 有 する 平 成 25 年 8 月 30 日 付 け 決 裁 文 書 ( 行 政 文 書 ファイル 等 の 保 存 期 間 の 延 長 について)により 保 存 期 間 を 延 長 した 申 告 書 決 議 書 等 関 係 書 類 全 部 ( 平 成 26 年 ( 行 情 ) 諮 問 第 576 号 ) (2) 特 定 税 務 署 Aが 国 税 庁 ( 行 政 ) 文 書 管 理 規 則 細 則 6(3)の 規 定 によ り 延 長 した 行 政 文 書 のうち, 現 在 も 引 き 続 き 保 有 しているもの ( 平 成 2 7 年 ( 行 情 ) 諮 問 第 28 号 ) 第 2 審 査 請 求 人 の 主 張 の 要 旨 1 審 査 請 求 の 趣 旨 行 政 機 関 の 保 有 する 情 報 の 公 開 に 関 する 法 律 ( 以 下 法 という )3 条 の 規 定 に 基 づく 各 開 示 請 求 に 対 し, 平 成 26 年 7 月 23 日 付 け 東 総 第 24 2 号 及 び 同 年 9 月 10 日 付 け 東 総 第 337 号 により, 特 定 税 務 署 Aの 税 務 署 長 ( 以 下 処 分 庁 という )が 行 った 本 件 対 象 文 書 の 全 部 を 不 開 示 とす る 各 決 定 ( 以 下, 東 総 第 242 号 に 係 る 決 定 を 原 処 分 1, 東 総 第 337 号 に 係 る 決 定 を 原 処 分 2 といい, 併 せて 原 処 分 という )に つ い て, 法 人 の 名 称 以 外 ( 平 成 26 年 ( 行 情 ) 諮 問 第 576 号 においては, 法 人 名, 住 所, 所 得, 税 額 等 異 議 決 定 開 示 訴 訟 判 決 で 非 開 示 相 当 とされた 部 分 以 外 ) の 開 示 を 求 めるというものである 2 審 査 請 求 の 理 由 の 要 旨 審 査 請 求 の 理 由 は, 審 査 請 求 書 及 び 意 見 書 の 記 載 によれば,おおむね 次 のとおりである (1) 審 査 請 求 書 1( 平 成 26 年 ( 行 情 ) 諮 問 第 576 号 ) - 1 -
審 査 請 求 人 は, 情 報 公 開 個 人 情 報 保 護 審 査 会 に 付 された 平 成 26 年 ( 行 情 ) 諮 問 第 357 号 に 係 る 事 件 の 証 拠 を 収 集 する 目 的 で 本 件 文 書 を 請 求 した 当 該 事 件 については, 審 査 会 の 結 論 よりも 特 定 税 務 署 Aが 保 存 期 間 を 偽 ったカドで 慰 謝 料 請 求 をすることが 本 筋 と 考 え,その 過 程 で 本 件 もそ 上 に 乗 るものと 考 える 審 査 請 求 人 が 今 回 記 載 する 理 由 は, 判 決 や 答 申 に 掲 載 されることはな い 審 査 請 求 人 は, 冒 頭 の 事 件 に 係 る 全 貌 を 世 間 に 公 表 する 必 要 があると 考 えているので, 今 回 詳 しい 理 由 を 記 載 しようとは 思 わない 転 勤 前 の 特 定 税 務 署 B 法 人 課 税 第 一 部 門 連 絡 調 整 官 aの 答 弁 を 引 用 略 記 すれば, 保 存 期 間 を 延 長 した 申 告 書 決 議 書 等 関 係 書 類 は 異 議 不 服 申 立 関 係 書 類 に 統 合 され 両 立 しないからである ただ, 審 査 請 求 人 は, 該 当 文 書 がそもそも 存 在 しないと 考 えている そう 考 える 理 由 は, 審 査 請 求 人 の 特 定 税 務 署 B 広 島 国 税 局 とのやり 取 りや, 税 務 訴 訟 学 会 メーリングリストでの 国 税 OBとのやり 取 りからで あるが, 今 回 は 詳 しい 内 容 を 記 さず,できるだけ 早 く 審 査 請 求 をすること を 優 先 する 処 分 庁 は, 本 件 文 書 を 出 せないこと( 出 せば 公 文 書 偽 造 となる)から 全 体 を 不 開 示 としたと 考 える あらかじめ 審 査 請 求 人 は, 特 定 税 務 署 A や 大 阪 国 税 局 に 対 して, 特 定 税 務 署 Aが 物 理 的 不 存 在 であれば, 大 阪 国 税 局 管 轄 の 全 ての 税 務 署 に 開 示 請 求 を 提 出 すると 予 告 しておいた さす がにそれだけの 開 示 請 求 全 てが 物 理 的 不 存 在 で 通 すことは 無 理 と 考 えた のであろう 審 査 請 求 人 が 聞 き 及 んだ 範 囲 では, 見 出 しや 罫 線 さえ 開 示 しない 決 定 は, 防 衛 省 警 察 絡 みで 聞 いているが, 外 務 省 の 交 際 費 では, 少 なくと も 罫 線 は 開 示 されたと 聞 いている 審 査 請 求 人 が 過 去 に 開 示 請 求 した 特 定 税 務 署 Bが 保 有 する 年 の 異 議 決 定 書 及 び 移 転 価 格 課 税 に 係 る 相 互 協 議 の 結 果 を 示 す 文 書 にお いても, 見 出 しなどは 開 示 された この 程 度 の 開 示 請 求 に 対 しては, 法 5 条 2 号 イ 該 当 法 人 情 報 は, 法 6 条 ( 部 分 開 示 )によって 対 処 すれば 足 りる 最 後 に, 審 査 請 求 人 は, 本 件 不 開 示 決 定 をも 慰 謝 料 請 求 の 対 象 として 金 額 を 加 算 するつもりである (2) 審 査 請 求 書 2( 平 成 27 年 ( 行 情 ) 諮 問 第 28 号 ) 処 分 庁 は, 当 該 文 書 が 存 在 するとしながら, 文 書 名 見 出 し 日 付 が 確 認 できる 文 書 さえ 開 示 しない 全 面 不 開 示 である これは, 審 査 請 求 人 が 特 定 税 務 署 Bに 開 示 請 求 した 異 議 決 定 書 で - 2 -
さえ 行 わなかった 暴 挙 である 実 際 には, 当 該 文 書 は 文 書 規 定 に 照 らし 存 在 しないはずのもので, 審 査 請 求 人 が 企 図 する 損 害 賠 償 訴 訟 の 証 拠 を 出 さない 目 的 の 恣 意 にすぎな い ここで 何 と 理 由 を 説 明 しようとも, 国 税 庁 自 ら 原 処 分 を 覆 し, 一 部 開 示 を 下 すとは 考 えられず, 情 報 公 開 個 人 情 報 保 護 審 査 会 に 諮 問 される のは 確 実 と 思 われる ここで 詳 しい 説 明 をしても 意 味 がない よって,これ 以 上 の 理 由 説 明 は 別 途 行 う (3) 意 見 書 1( 平 成 26 年 ( 行 情 ) 諮 問 第 576 号 ) 本 件 対 象 文 書 の 開 示 請 求 は,それに 先 立 ち, 審 査 請 求 人 が 特 定 税 務 署 Aに 対 して 平 成 26 年 5 月 8 日 に 開 示 請 求 し, 同 年 6 月 6 日 に 開 示 決 定 された 文 書 ( 資 料 添 付 以 下, 審 査 請 求 人 添 付 に 係 る 資 料 は 省 略 する ) の 決 裁 文 書 で, 特 定 の 決 裁 日 を 基 になされたものである 本 件 対 象 文 書 の 保 存 期 間 が 開 示 請 求 書 到 達 日 に 満 了 となっていないこ とは 当 該 決 裁 文 書 から 明 らかである 本 件 対 象 文 書 については, 作 成 さ れ 開 示 請 求 まで 保 存 されたはずである つまり, 本 件 対 象 文 書 については, 不 存 在 でも 保 存 期 間 満 了 でもない そして, 行 政 文 書 ファイル 名 は 当 該 決 裁 文 書 の 行 政 文 書 ファイル 等 の 保 存 期 間 の 延 長 状 況 の 記 載 から 申 告 書 決 議 書 等 関 係 書 類 である ことが 明 らかである 大 阪 国 税 局 の 意 を 受 けた 特 定 税 務 署 Aは, 既 報 のとおり, 特 定 法 人 C の 移 転 価 格 税 制 に 係 る 更 正 処 分 関 係 書 類 は, 申 告 書 決 議 書 等 関 係 書 類 を 一 年 延 長 し,その 期 間 を 満 了 しているから 保 存 していない と 主 張 し 続 けていた 最 近 は,これに 反 するかに 見 えるかく 乱 情 報 も 流 している が 今 回 は 触 れない 当 初 からの 主 張 は, 審 査 請 求 人 が 紹 介 した 広 島 国 税 局 の 納 税 者 が 国 税 庁 又 はその 傘 下 機 関 の 課 税 処 分 に 対 して, 異 議 申 立 て 不 服 申 立 てがなされた 場 合, 申 告 書 決 議 書 等 関 係 書 類 は, 不 服 申 立 関 係 書 類 に 統 合 され, 申 告 書 決 議 書 等 関 係 書 類 として 保 存 されることはない というものである 本 件 対 象 文 書 にどのような 内 容 の 文 書 が 含 まれているか 分 かれば, 特 定 税 務 署 Aの 主 張 更 正 通 知 書 は 申 告 書 決 議 書 等 関 係 書 類 に 属 す る が 正 しいか, 広 島 国 税 局 の 見 解 が 正 しいかはっきりするわけだが, そのような 結 果 になることを 恐 れ 全 面 非 開 示 にしたものである しかし, 上 記 の 特 定 税 務 署 A 等 の 主 張 には, 理 由 がないことがはっき りした 3つの 理 由 を 挙 げる 1 既 報 のとおり, 延 長 規 定 は 手 続 上 の 文 書 にすぎず, 中 身 のある 文 書 - 3 -
は 除 外 すると 考 えられること 2 審 査 請 求 人 は, 特 定 税 務 署 Bから 平 成 26 年 9 月 25 日 付 けで 二 つ の 行 政 文 書 開 示 を 受 けている 行 政 文 書 の 名 称 は, 不 服 審 査 関 係 書 類 ( 法 人 税 の 課 税 に 係 るもので, 異 議 申 立 段 階 で 税 額 等 が 確 定 した 最 も 古 いもの) と 不 服 審 査 関 係 書 類 ( 法 人 税 の 課 税 に 係 るもので, 不 服 審 査 段 階 で 税 額 等 が 確 定 した 最 も 古 いもの) である そのうち, 前 者 の 開 示 文 書 には, 特 定 税 務 署 Bの 法 人 課 税 第 3 部 門 の 調 査 に 基 づく 法 人 税 決 議 書, 更 正 修 正 等 の 内 訳 書, 法 人 税 額 等 の 決 定 通 知 書 及 び 加 算 税 の 賦 課 決 定 通 知 書 などが 含 まれている また, 後 者 の 開 示 文 書 には, 法 人 税 決 議 書, 更 正 修 正 等 の 内 訳 書, 更 正 の 理 由 などが 含 まれている 法 人 税 等 の 決 議 書 については, 審 査 請 求 人 が 約 10 年 前 に 大 阪 国 税 局 に 開 示 請 求 した 法 人 課 税 事 務 提 要 の490 頁 の1 法 人 税 等 の 決 議 書 の 分 類 の1に 更 正 決 定 又 は 加 算 税 の 取 消 に 係 る 決 議 書 と 記 載 されたものに 該 当 する 当 該 分 類 の2,3,4に 該 当 しないこ とは 説 明 不 要 と 考 える 両 文 書 には 法 人 税 決 議 書 が 含 まれている 法 人 税 決 議 書 は 複 数 部 作 成 され, 納 税 者 に 通 知 される 文 書 は 更 正 通 知 書 と 呼 ばれる 以 上 の 証 拠 書 類 から, 少 なくとも 広 島 国 税 局 傘 下 の 特 定 税 務 署 Bは 不 服 審 査 関 係 ファイル に 更 正 通 知 書 を 含 めて 文 書 管 理 を 行 ってい ることが 明 らかである 広 島 国 税 局 の 不 服 審 査 関 係 ファイル の 管 理 について, 言 動 が 一 致 していたことがわかる 3 審 査 請 求 人 は, 特 定 税 務 署 Aに 対 して 平 成 26 年 8 月 11 日 付 けで ( 不 服 申 立 関 係 書 類 に 係 る 別 件 ) 開 示 請 求 を 行 い, 同 年 10 月 10 日 に 特 定 税 務 署 Aは( 当 該 請 求 に 係 る) 開 示 決 定 を 行 った 開 示 文 書 の 中 の 不 服 申 立 関 係 書 類 の 送 付 書 には, 原 処 分 通 知 書 ほか が 送 付 する 書 類 として 記 載 されている しかし, 原 処 分 通 知 書 は 開 示 されず 隠 蔽 された 隠 蔽 の 事 実 さえ 隠 している 審 査 請 求 人 は, 当 該 開 示 決 定 に 対 して 同 年 11 月 19 日 に 審 査 請 求 を 行 った 請 求 要 点 は, 不 服 申 立 関 係 書 類 は 行 政 文 書 ファイル 管 理 簿 上, 国 税 庁 標 準 文 書 保 存 期 間 基 準 の 索 引 番 号 54 課 税 ( 不 服 申 立 訴 訟 ) 中 分 類 403 不 服 審 査 関 係 書 類 の 名 称 異 議 不 服 申 立 関 係 書 類 フ ァイルに 該 当 し, 原 処 分 通 知 書 は 当 該 ファイルに 所 属 し, 保 存 期 間 は10 年 であるにもかかわらず, 原 処 分 通 知 書 全 体 を 開 示 文 書 から 除 外 したのは 違 法 だということである - 4 -
国 税 庁 及 びその 傘 下 組 織 は 総 じて 情 報 公 開 に 後 ろ 向 きであるが, 自 ら 存 在 すると 認 めながら 全 面 黒 塗 りの 紙 1 枚 すら 開 示 しないのは, 国 税 庁 傘 下 組 織 としても 異 常 な 措 置 である 当 該 文 書 に 属 する 下 位 層 文 書 の 見 出 しすら 開 示 しないことを 前 提 とする 諮 問 庁 の 理 由 書 は, 荒 唐 無 稽 な 理 屈 で 論 ずるに 足 らない 不 開 示 理 由 に 該 当 しないことは 明 白 である (4) 意 見 書 2( 平 成 27 年 ( 行 情 ) 諮 問 第 28 号 の 第 一 意 見 書 ) ア 文 書 全 体 の 全 面 不 開 示 であれば, 文 書 の 種 類 が 特 定 機 密 にでも 該 当 するなどの 論 拠 が 必 要 と 思 われるが,そのような 論 拠 は 示 されていな い これまで 審 査 請 求 人 が 財 務 省 及 びその 傘 下 組 織 に 情 報 公 開 請 求 し た 事 案 で, 文 書 不 存 在 を 理 由 として 不 開 示 になった 事 例 は 存 在 するが, 文 書 の 存 在 を 明 示 し,なおかつ, 全 面 不 開 示 とした 初 めての 事 案 であ る 文 書 が 存 在 するのであれば, 保 管 部 署 が 作 成 した 見 出 し, 定 型 的 な 既 存 の 印 刷 部 分 で, 納 税 者 若 しくは 財 務 省 傘 下 組 織 が 作 成 した 個 別 具 体 的 な 情 報 の 一 部 とは 認 め 難 い 情 報 まで 不 開 示 情 報 該 当 性 を 主 張 す るのはあまりにも 没 論 理 的 であろう 審 査 請 求 人 の 情 報 公 開 請 求 事 案 で 情 報 公 開 個 人 情 報 保 護 審 査 会 において, 原 処 分 を 肯 定 したが, 最 終 的 に 訴 訟 にて 大 幅 な 開 示 が 認 められた 異 議 決 定 書 開 示 請 求 にお いても, 当 初 の 一 部 開 示 決 定 でその 程 度 は 開 示 されていたのである どの 箇 所 に 法 人 情 報 が 記 載 され, 不 開 示 要 件 の 具 体 的 おそれとはど のようなものであるのか,それすら 記 載 がない 強 権 的 な 決 定 といわ ざるを 得 ない イ 文 書 開 示 までの 経 緯 と 争 点 既 に 他 の 係 争 事 案 に 記 載 しているが, 処 分 庁 は, 特 定 の 異 議 決 定 書 を 既 に 保 存 期 間 を 満 了 していることを 理 由 に 文 書 不 存 在 とし,その 根 拠 として, 国 税 庁 文 書 管 理 規 則 細 則 6(3) を 持 ち 出 した しかし,その 規 定 によっても 情 報 公 開 請 求 時 に 保 存 期 間 は 満 了 して おらず, 保 存 されているはずである さらに, 審 査 請 求 人 が 広 島 国 税 局 に 問 い 合 わせたところ, 納 税 者 から 課 税 処 分 に 対 して 異 議 がなされ れば, 申 告 書 決 議 書 等 関 係 書 類 は, 不 服 審 査 関 係 書 類 に 移 行 するとの 説 明 を 受 けた 特 定 法 人 Cの 不 服 審 査 関 係 書 類 保 存 期 間 満 了 まで 現 在 でも 長 期 間 余 していることはいうまでもない 審 査 請 求 人 は, 当 初 から 国 税 庁 文 書 管 理 規 則 細 則 6(3) の 不 服 申 立 における 手 続 上 の 行 為 をするために 必 要 とされるもの とは, 実 態 的 内 容 を 伴 う 文 書 ではなく, 連 絡 通 知 事 項 等 を 記 載 したものに すぎないのではないかとの 疑 念 を 持 っている そこで, 本 件 対 象 文 書 の 請 求 に 至 った 延 長 規 定 のある 文 書 が 開 示 - 5 -
されれば,その 文 書 の 種 類 性 質 性 格 が 明 らかになり, 特 定 税 務 署 Aの 説 明 が 正 しいかの 有 力 な 判 断 材 料 となり 得 るからである 処 分 庁 の 不 開 示 情 報 該 当 性 主 張 は 中 身 のない 空 文 で, 実 際 には,こ れまでの 嘘 が 明 るみに 出 るのを 恐 れた 不 開 示 処 分 の 正 統 性 (ここでは 官 庁 都 合 という 意 味 であり, 系 譜 的 正 統 性 ですらなく,ましてや 正 当 性 ではない)を 主 張 しているだけではないのか ウ 原 処 分 の 行 政 文 書 不 開 示 決 定 通 知 書 の 記 載 と 審 査 請 求 人 の 行 政 文 書 開 示 請 求 書 を 比 較 して 最 低 限 明 確 となった 事 実 を 列 挙 し,そ の 意 味 を 記 載 する (ア) 審 査 請 求 人 の 本 件 対 象 文 書 となり 得 る 文 書 は, 対 象 文 書 を 法 人 税 関 係 に 限 定 せず, 特 定 の 一 件 に 絞 ったものでもなかった 一 方, 原 処 分 の 行 政 文 書 不 開 示 決 定 通 知 書 には, 開 示 請 求 に 係 る 行 政 文 書 の 保 存 状 況 を 確 認 したところ, 当 該 文 書 の 保 存 は, 平 成 25 年 8 月 30 日 付 け 決 裁 文 書 により 保 存 期 間 を 延 長 した 申 告 書 決 議 書 等 関 係 書 類 を 法 人 課 税 部 門 において 保 存 していることを 確 認 しま した との 記 載 がある このことからすれば, 該 当 文 書 は 法 人 関 係 に 係 るもの 一 件 と 語 っていると 考 えられる また,それは 不 服 審 査 関 係 書 類 ではなく, 申 告 書 決 議 書 等 関 係 書 類 と 特 定 してい る (イ) 行 政 文 書 ファイルの 起 算 日 は 暦 年 年 度 事 務 年 度 及 び 個 別 案 件 の 記 載 日 のどれかである したがって,(ア)に 記 載 した 通 知 書 の 内 容 から 対 象 文 書 は 少 なくとも 平 成 25 年 のある 時 期 が 延 長 の 開 始 日 であり, 平 成 26 年 のある 時 期 まで 延 長 されたことが 分 かる エ 審 査 請 求 人 は, 平 成 26 年 5 月 8 目, 直 接, 特 定 税 務 署 Aに 赴 き, 当 該 税 務 署 に 備 付 けの 行 政 文 書 ファイル 管 理 簿 ( 以 下 管 理 簿 と いう )の 写 しを 請 求 し, 入 手 した 当 該 管 理 簿 は, 翌 年 6 月 頃 まで 更 新 されないとのことであり, 当 然 本 件 対 象 文 書 が 存 在 しているのであ れば,どこかに 記 載 されていなければならない (ア) 管 理 簿 ( 公 文 書 管 理 法 施 行 前 )の49 頁 下 から5~3 行 目 にかけ て, 個 人 課 税 関 係 の 申 告 書 決 議 書 等 関 係 書 類 で 延 長 期 間 1 年 の 公 文 書 が3 件 記 載 されている これについて, 特 定 税 務 署 Aは, 国 税 庁 文 書 管 理 規 則 細 則 6(3) に 関 係 するものではなく, 平 成 26 年 中 越 地 震 による 特 定 税 務 署 A 管 内 移 住 者 の 申 告 などを 踏 まえ た 延 長 であると 回 答 した また,それら3 件 のうち1 件 は 本 来 の 保 存 期 間 に 延 長 された1 年 を 加 えた 年 数 が 保 存 期 間 欄 に 記 載 されている 他 の2 件 について, 保 存 期 間 欄 は# 記 号 が 連 続 しており, 字 数 制 限 を 超 えた 記 載 があっ - 6 -
たか, 保 存 年 限 を 決 定 できない 事 案 と 考 えるのが 合 理 的 であろう 90 頁 から91 頁 の 法 人 関 係 申 告 書 決 議 書 等 関 係 書 類 と1 00 頁 から102 頁 にかけての 法 人 関 係 中 分 類 不 服 申 立 訴 訟 関 係 は, 全 て 当 初 の 保 存 期 間 が 記 載 されており,1 年 の 延 長 事 実 が 本 来 記 載 されるべき 備 考 欄 に 記 載 されたものは 存 在 しない (イ) 次 に, 管 理 簿 ( 公 文 書 管 理 法 施 行 後 )を 検 証 する 平 成 23 年 4 月 1 日 が 公 文 書 管 理 法 施 行 日 であることに 対 応 して,そこに 記 載 さ れた 起 算 日 は, 同 年 7 月 1 日 が 最 も 古 い それ 以 前 は,1の 管 理 簿 ( 公 文 書 管 理 法 施 行 前 )に 記 載 されるはずのものである そうすると, 申 告 書 決 議 書 等 関 係 書 類 の 最 短 期 間 が7 年, 不 服 申 立 関 係 書 類 が 特 定 日 から10 年 であることから, 該 当 文 書 が 存 在 すると 仮 定 するならば 当 初 の 起 算 日 ではなく, 延 長 した 年 月 が 起 算 日 でなければならない そして, 保 存 期 間 は1 年 となるはずであ る 以 上 の 前 提 で 該 当 する 法 人 に 係 る 申 告 書 決 議 書 等 関 係 書 類 及 び 不 服 申 立 関 係 書 類 で 該 当 しそうな 類 型 を 探 したが 可 能 性 が あるものでさえ, 見 付 けることができなかった (ウ)(ア) 及 び(イ)からそもそも 本 件 対 象 文 書 は 本 来 存 在 しないと 考 えられる もっとも 施 行 前 施 行 後 とも 多 数 存 在 する 保 存 期 間 1 年 の 軽 易 な 事 項 に 係 る 意 思 決 定 又 は 確 認 を 行 うための 書 類 類 型 に 国 税 庁 文 書 管 理 規 則 細 則 6(3) が 該 当 する 可 能 性 は 高 い 処 分 庁 は, 通 知 書 に 存 在 するという 文 書 をねつ 造 し, 開 示 すれば 公 文 書 偽 造 となり, 罪 に 問 われる 可 能 性 が 高 いから 文 書 の 外 枠 部 分 すら 開 示 しないのではないか オ 追 記 審 査 請 求 人 と 特 定 税 務 署 Aの 情 報 公 開 担 当 者 は, 本 件 対 象 文 書 の 開 示 請 求 について, 昨 年 5 月 8 日 以 降 何 度 か 電 話 連 絡 を 取 った 担 当 者 はあらかじめ 文 書 不 存 在 だったらどうされるのですか など 余 計 な 打 診 をしてきた そこで, 審 査 請 求 人 も それなら(いくら 手 数 料 がかかろうが) 大 阪 国 税 局 管 内 の 全 ての 税 務 署 に 開 示 請 求 をすることになる 10 年 ほ ど 前, 広 島 国 税 不 服 審 判 所 に1 事 務 年 度 分 の( 徴 収 関 係 を 除 く) 裁 決 書 を 請 求 したら60 余 件 あった 大 阪 国 税 不 服 審 判 所 の 件 数 はそれよ り 多 いはずで,それでも 全 部 の 管 轄 税 務 署 が 文 書 不 存 在 ということに なれば, 特 定 税 務 署 Aと 大 阪 国 税 局 の 延 長 規 定 が 異 議 決 定 書 と 裁 決 書 にも 及 ぶという 解 釈 は 嘘 と 証 明 されたことになる と 余 分 なことま で 言 及 した 経 緯 がある (5) 意 見 書 3( 平 成 27 年 ( 行 情 ) 諮 問 第 28 号 の 第 二 意 見 書 ) - 7 -
国 税 庁 のホームページに 掲 げられた 課 税 処 分 等 に 係 る 各 事 務 年 度 の 異 議 申 立 て 及 び 審 査 請 求 の 状 況 を 検 証 すると, 異 議 申 立 ての 処 理 件 数 は 各 年 度 おおむね4 千 件 程 度, 審 査 請 求 は3 千 件 程 度 である 納 税 者 からの 異 議 申 立 てと 審 査 請 求 は 同 一 案 件 が 連 続 重 複 してなされる 場 合 もある が,それらを 除 去 しても 異 議 申 立 て 審 査 請 求 に 係 る 事 案 は 各 年 度 5 千 件 程 度 あると 見 積 もられる 一 方, 全 国 の 税 務 署 総 数 は,524 署 存 在 する そうすると,1 税 務 署 平 均 で10 件 程 度 の 異 議 申 立 て 等 の 事 案 を 抱 えている 計 算 になる 国 税 庁 の 特 定 年 度 の 申 告 法 人 数 統 計 によれば 全 国 で270 万 程 度, 特 定 税 務 署 A 管 内 で14,000 程 度 であり, 異 議 申 立 て 等 の 事 案 が 申 告 法 人 数 に 比 例 するとすれば, 特 定 税 務 署 Aには25 件 程 度 の 異 議 申 立 て 等 が あっておかしくない 新 聞 紙 上 で 度 々 大 手 企 業 の 課 税 処 分 の 取 消 しが 報 道 される 大 阪 国 税 局 管 内 ( 日 本 の 中 核 的 な 東 京 国 税 局 と 比 較 して 格 段 に 多 い)の 中 心 的 な 税 務 署 である 特 定 税 務 署 Aの 管 轄 する 異 議 申 立 て 等 が 税 務 署 平 均 の1/10に 満 たないということは, 常 識 的 にも 確 率 計 算 上 もあり 得 ないことである しかるに, 特 定 税 務 署 Aは, 開 示 請 求 した 文 書 がわずか1 件 しか 存 在 しないとして 不 開 示 処 分 を 行 った 審 査 請 求 人 は 全 件 数 を 請 求 したにも かかわらず, 特 定 税 務 署 Aは 開 示 手 数 料 を1 件 分 しか 請 求 しなかったの でそう 解 するほかない 本 件 対 象 文 書 が, 処 分 庁 が 主 張 するように,( 広 島 国 税 局 の 見 解 との 相 違 は 既 に 指 摘 している) 異 議 申 立 て 等 がなされても, 異 議 決 定 書 が 申 告 書 決 議 書 関 係 書 類 に 含 まれ, 国 税 庁 標 準 文 書 保 存 期 間 基 準 の 索 引 番 号 54 課 税, 中 分 類 403の 異 議 不 服 申 立 ( 関 係 ) 書 類 に 含 まれないとしても 相 当 件 数 の 文 書 を 保 存 していなければならない それがわずか1 件 ということであれば, 広 島 国 税 局 特 定 税 務 署 Bの 納 税 者 から 異 議 等 がなされれば, 申 告 書 決 議 書 関 係 書 類 は 異 議 不 服 申 立 ( 関 係 ) 書 類 に 統 合 される, 細 則 の 規 定 は 事 実 上 機 能 してい ない,との 説 明 の 信 憑 性 が 高 くなる 第 1の 可 能 性 として,1 件 の 該 当 文 書 が 存 在 するのではなくて, 不 存 在 だから 出 せない 可 能 性 が 高 い 仮 に, 該 当 文 書 に 異 議 決 定 書 が 含 まれない 手 続 上 の 文 書 が 存 在 する 第 2の 可 能 性 の 場 合,その 文 書 を 開 示 すれば,これまでの 大 阪 国 税 局 及 び 特 定 税 務 署 Aの 嘘 が 明 白 となる 第 3 諮 問 庁 の 説 明 の 要 旨 1 平 成 26 年 ( 行 情 ) 諮 問 第 576 号 (1) 本 件 開 示 請 求 について - 8 -
本 件 開 示 請 求 は, 特 定 税 務 署 Aの 税 務 署 長 ( 処 分 庁 )に 対 して, 特 定 税 務 署 Aが 保 有 する 特 定 日 付 けの 決 裁 文 書 ( 行 政 文 書 ファイル 等 の 保 存 期 間 の 延 長 について)により 保 存 期 間 を 延 長 した 申 告 書 決 議 書 等 関 係 書 類 全 部 ( 本 件 対 象 文 書 ) の 開 示 を 求 めるものである (2) 原 処 分 について 処 分 庁 は, 平 成 26 年 7 月 23 日 付 け 東 総 第 242 号 により, 以 下 の 理 由 でその 全 部 を 不 開 示 とする 決 定 ( 原 処 分 1)を 行 った ア 当 該 行 政 文 書 には, 特 定 の 法 人 の 名 称, 申 告 内 容, 取 引 内 容 など 特 定 の 法 人 の 経 営 状 況 等 が 推 測 できる 情 報 が 記 載 されており,これらの 情 報 は 特 定 の 法 人 に 関 する 情 報 であって,これらの 情 報 を 公 にするこ とにより, 当 該 法 人 の 権 利, 競 争 上 の 地 位 その 他 正 当 な 利 益 を 害 する おそれがあるため, 法 5 条 2 号 イの 不 開 示 情 報 に 該 当 すること イ 本 件 対 象 文 書 に 記 載 されているこれらの 情 報 が 開 示 されることによ り 税 務 行 政 に 対 する 信 頼 が 損 なわれ, 税 務 行 政 の 適 正 な 遂 行 に 支 障 を 及 ぼすおそれがあると 認 められるため, 法 5 条 6 号 本 文 の 不 開 示 情 報 に 該 当 すること これに 対 し 審 査 請 求 人 は, 法 人 氏 名, 住 所, 所 得, 税 額 等 異 議 決 定 開 示 訴 訟 判 決 で, 非 開 示 相 当 とされた 部 分 以 外 の 開 示 を 求 め, 平 成 26 年 8 月 1 日 に 審 査 請 求 を 行 ったことから, 以 下, 本 件 対 象 文 書 の 不 開 示 情 報 該 当 性 について 検 討 する (3) 不 開 示 情 報 該 当 性 について ア 法 5 条 2 号 イ 該 当 性 本 件 対 象 文 書 には, 特 定 の 法 人 の 名 称, 申 告 内 容, 取 引 内 容 など 特 定 の 法 人 の 経 営 状 況 等 が 推 測 できる 情 報 が 記 載 されており,これらの 情 報 は 特 定 の 法 人 に 関 する 情 報 であって,これらの 情 報 を 公 にするこ とにより, 当 該 法 人 の 権 利, 競 争 上 の 地 位 その 他 正 当 な 利 益 を 害 する おそれがあると 認 められる したがって, 本 件 対 象 文 書 は, 法 5 条 2 号 イの 不 開 示 情 報 に 該 当 す ると 認 められる これに 対 し, 審 査 請 求 人 は 法 5 条 2 号 イ 該 当 法 人 情 報 は 法 6 条 ( 部 分 開 示 )によって 対 処 すれば 足 りる と 主 張 している しかしながら, 法 6 条 を 適 用 し, 特 定 の 法 人 の 名 称 等 を 不 開 示 にし たとしても, 他 の 情 報 と 照 合 することにより 法 人 が 特 定 された 場 合 に は, 当 該 法 人 の 権 利, 競 争 上 の 地 位 その 他 正 当 な 利 益 を 害 するおそれ があると 認 められる したがって, 法 6 条 を 適 用 することはできないと 認 められる イ 法 5 条 6 号 柱 書 き 該 当 性 - 9 -
我 が 国 においては, 申 告 納 税 制 度 が 採 用 されているところ, 国 税 庁 は 納 税 者 の 自 発 的 な 納 税 義 務 の 履 行 を 適 正 かつ 円 滑 に 実 現 することを その 使 命 としている そのため, 善 良 な 納 税 者 が 課 税 の 不 公 平 感 を 持 つことがないよう, 納 税 義 務 が 適 正 に 果 たされていないと 認 められる 納 税 者 に 対 しては, 的 確 な 指 導 や 調 査 を 実 施 することによって 誤 りを 確 実 に 是 正 することとしている このような 国 税 庁 の 使 命 に 鑑 みると, 法 人 から 提 出 される 法 人 税 確 定 申 告 書 は, 国 税 当 局 において, 当 該 法 人 の 納 税 義 務 が 適 正 に 果 たさ れているかどうかを 確 認 するための 重 要 な 手 掛 かりとなるものであ ると 認 められる また, 法 人 税 決 議 書 は,1 課 税 標 準 等 又 は 税 額 等 について 更 正, 決 定 若 しくは 再 更 正 の 処 分 又 は 過 少 申 告 加 算 税 等 の 加 算 税 額 の 賦 課 決 定 の 処 分 を 行 う 場 合,2 納 付 すべき 税 額 又 は 還 付 金 の 額 に 相 当 する 税 額 がないものについて,いわゆる 無 所 得 決 定 の 処 理 を 行 う 場 合,3 実 地 調 査 の 結 果, 課 税 標 準 等 及 び 税 額 等 について 申 告 是 認 の 処 理 を 行 う 場 合 に 使 用 するものである 本 件 対 象 文 書 を 公 にした 場 合, 上 記 アのとおり, 当 該 法 人 の 正 当 な 利 益 を 害 するおそれがあるため,じ 後, 書 類 の 提 出 をちゅうちょする など, 適 正 な 申 告 が 行 われなくなるおそれ 及 び 調 査 協 力 が 得 られなく なるおそれがある そして,このような 事 態 が 生 ずれば, 国 税 当 局 が 行 う 調 査 事 務 等 に おいて, 法 人 の 内 部 関 係 や 財 務 状 況 を 把 握 することが 困 難 となり,ひ いては, 正 確 な 税 額 の 計 算 が 困 難 になるなど, 税 務 行 政 の 適 正 な 遂 行 に 支 障 を 及 ぼすおそれがある したがって, 本 件 対 象 文 書 は, 法 5 条 6 号 柱 書 きの 不 開 示 情 報 に 該 当 すると 認 められる (4) 結 論 以 上 のことから, 本 件 対 象 文 書 に 記 載 された 情 報 は, 法 5 条 2 号 イ 及 び6 号 柱 書 きに 該 当 すると 認 められるので,その 全 部 を 不 開 示 とした 原 処 分 は 妥 当 であると 判 断 する 2 平 成 27 年 ( 行 情 ) 諮 問 第 28 号 (1) 本 件 開 示 請 求 本 件 開 示 請 求 は, 特 定 税 務 署 Aの 税 務 署 長 ( 処 分 庁 )に 対 して, 特 定 税 務 署 Aが 国 税 庁 文 書 管 理 規 則 細 則 6(3)の 規 定 により 延 長 した 行 政 文 書 のうち, 現 在 も 引 き 続 き 保 有 しているもの ( 本 件 対 象 文 書 )の 開 示 を 求 めるものである (2) 原 処 分 について - 10 -
処 分 庁 において, 本 件 対 象 文 書 を 確 認 したところ, 特 定 日 付 け 決 裁 文 書 により 保 存 期 間 を 延 長 した 申 告 書 決 議 書 等 関 係 書 類 を 法 人 課 税 部 門 において 保 存 していることが 確 認 されたが, 平 成 26 年 9 月 10 日 付 け 東 総 第 337 号 により, 以 下 の 理 由 でその 全 部 を 不 開 示 とする 決 定 ( 原 処 分 2)を 行 った ア 当 該 行 政 文 書 には, 特 定 の 法 人 の 名 称, 申 告 内 容, 取 引 内 容 など 特 定 の 法 人 の 経 営 状 況 等 が 推 測 できる 情 報 が 記 載 されており,これらの 情 報 は 特 定 の 法 人 に 関 する 情 報 であって,これらの 情 報 を 公 にするこ とにより, 当 該 法 人 の 権 利, 競 争 上 の 地 位 その 他 正 当 な 利 益 を 害 する おそれがあるため, 法 5 条 2 号 イの 不 開 示 情 報 に 該 当 すること イ 本 件 対 象 文 書 に 記 載 されている 情 報 が 開 示 されることにより, 税 務 行 政 に 対 する 信 頼 が 損 なわれ, 税 務 行 政 の 適 正 な 遂 行 に 支 障 を 及 ぼす おそれがあると 認 められるため, 法 5 条 6 号 本 文 の 不 開 示 情 報 に 該 当 すること これに 対 し 審 査 請 求 人 は, 法 人 の 名 称 以 外 の 全 ての 開 示 を 求 めてい ることから, 以 下, 本 件 対 象 文 書 の 不 開 示 情 報 該 当 性 について 検 討 す る (3) 不 開 示 情 報 該 当 性 について ア 法 5 条 2 号 イ 該 当 性 本 件 対 象 文 書 には, 特 定 の 法 人 の 名 称, 申 告 内 容, 取 引 内 容 など 特 定 の 法 人 の 経 営 状 況 等 が 推 測 できる 情 報 が 記 載 されており,これらの 情 報 は 特 定 の 法 人 に 関 する 情 報 であって,これらの 情 報 を 公 にするこ とにより, 当 該 法 人 の 権 利, 競 争 上 の 地 位 その 他 正 当 な 利 益 を 害 する おそれがあると 認 められる これに 対 し, 審 査 請 求 人 は, 法 人 の 名 称 以 外 を 開 示 するよう 主 張 し ている しかしながら, 法 人 の 名 称 以 外 を 開 示 した 場 合, 他 の 情 報 と 照 合 す ることにより, 法 人 が 特 定 され, 当 該 法 人 の 権 利, 競 争 上 の 地 位 その 他 正 当 な 利 益 を 害 するおそれがあると 認 められる したがって, 本 件 対 象 文 書 は, 法 5 条 2 号 イの 不 開 示 情 報 に 該 当 す ると 認 められる イ 法 5 条 6 号 柱 書 き 該 当 性 我 が 国 においては, 申 告 納 税 制 度 が 採 用 されているところ, 国 税 庁 は 納 税 者 の 自 発 的 な 納 税 義 務 の 履 行 を 適 正 かつ 円 滑 に 実 現 することを その 使 命 としている そのため, 善 良 な 納 税 者 が 課 税 の 不 公 平 感 を 持 つことがないよう, 納 税 義 務 が 適 正 に 果 たされていないと 認 められる 納 税 者 に 対 しては, 的 確 な 指 導 や 調 査 を 実 施 することによって 誤 りを - 11 -
確 実 に 是 正 することとしている このような 国 税 庁 の 使 命 に 鑑 みると, 法 人 から 提 出 される 法 人 税 確 定 申 告 書 は, 国 税 当 局 において, 当 該 法 人 の 納 税 義 務 が 適 正 に 果 たさ れているかどうかを 確 認 するための 重 要 な 手 掛 かりとなるものであ ると 認 められる また, 法 人 税 決 議 書 は,1 課 税 標 準 等 又 は 税 額 等 について 更 正, 決 定 若 しくは 再 更 正 の 処 分 又 は 過 少 申 告 加 算 税 等 の 加 算 税 額 の 賦 課 決 定 の 処 分 を 行 う 場 合,2 納 付 すべき 税 額 又 は 還 付 金 の 額 に 相 当 する 税 額 がないものについて,いわゆる 無 所 得 決 定 の 処 理 を 行 う 場 合,3 実 地 調 査 の 結 果, 課 税 標 準 等 及 び 税 額 等 について 申 告 是 認 の 処 理 を 行 う 場 合 に 使 用 するものである 本 件 対 象 文 書 を 公 にした 場 合, 上 記 アのとおり, 当 該 法 人 の 正 当 な 利 益 を 害 するおそれがあるため,じ 後, 書 類 の 提 出 をちゅうちょする など, 適 正 な 申 告 が 行 われなくなるおそれ 及 び 調 査 協 力 が 得 られなく なるおそれがある そして,このような 事 態 が 生 ずれば, 国 税 当 局 が 行 う 調 査 事 務 等 に おいて, 法 人 の 内 部 関 係 や 財 務 状 況 を 把 握 することが 困 難 となり,ひ いては, 正 確 な 税 額 の 計 算 が 困 難 になるなど, 税 務 行 政 の 適 正 な 遂 行 に 支 障 を 及 ぼすおそれがある したがって, 本 件 対 象 文 書 は, 法 5 条 6 号 柱 書 きの 不 開 示 情 報 に 該 当 すると 認 められる (4) 結 論 以 上 のことから, 本 件 対 象 文 書 に 記 載 された 情 報 は, 法 5 条 2 号 イ 及 び6 号 柱 書 きに 該 当 すると 認 められるので,その 全 部 を 不 開 示 とした 原 処 分 は 妥 当 であると 判 断 する 第 4 調 査 審 議 の 経 過 当 審 議 会 は, 本 件 各 諮 問 事 件 について, 以 下 のとおり, 平 成 26 年 ( 行 情 ) 諮 問 第 576 号 及 び 平 成 27 年 ( 行 情 ) 諮 問 第 28 号 を 併 合 し, 調 査 審 議 を 行 った 1 平 成 26 年 10 月 24 日 諮 問 の 受 理 ( 平 成 26 年 ( 行 情 ) 諮 問 第 576 号 ) 2 同 日 諮 問 庁 から 理 由 説 明 書 を 収 受 ( 同 上 ) 3 同 年 11 月 13 日 審 議 ( 同 上 ) 4 同 月 25 日 審 査 請 求 人 から 意 見 書 1を 収 受 ( 同 上 ) 5 平 成 27 年 1 月 26 日 諮 問 の 受 理 ( 平 成 27 年 ( 行 情 ) 諮 問 第 28 号 ) 6 同 日 諮 問 庁 から 理 由 説 明 書 を 収 受 ( 同 上 ) - 12 -
7 同 年 2 月 20 日 審 議 ( 同 上 ) 8 同 月 23 日 審 査 請 求 人 から 意 見 書 2を 収 受 ( 同 上 ) 9 同 年 3 月 11 日 審 査 請 求 人 から 意 見 書 3を 収 受 ( 同 上 ) 10 同 年 4 月 15 日 平 成 26 年 ( 行 情 ) 諮 問 第 576 号 及 び 平 成 27 年 ( 行 情 ) 諮 問 第 28 号 の 併 合, 本 件 対 象 文 書 の 見 分 並 びに 審 議 11 同 年 5 月 13 日 審 議 第 5 審 査 会 の 判 断 の 理 由 1 本 件 対 象 文 書 について 平 成 26 年 ( 行 情 ) 諮 問 第 576 号 及 び 平 成 27 年 ( 行 情 ) 諮 問 第 28 号 は, 同 一 の 審 査 請 求 人 による 異 なる 開 示 請 求 に 基 づくものではあるが, 特 定 された 対 象 文 書 は 同 一 ( 本 件 対 象 文 書 )である 本 件 対 象 文 書 は,いずれも 特 定 税 務 署 Aが, 国 税 庁 行 政 文 書 管 理 規 則 細 則 6(3)の 規 定 に 基 づき 保 存 期 間 を 延 長 した 申 告 書 決 議 書 等 関 係 書 類 で, 現 在 においても 引 き 続 き 保 有 しているものである なお, 申 告 書 決 議 書 等 関 係 書 類 とは, 行 政 文 書 及 び 行 政 文 書 ファイル の 分 類, 編 さん 区 分 及 び 保 存 期 間 等 を 記 した 国 税 庁 標 準 文 書 保 存 期 間 基 準 によると, 当 該 分 類 における 中 分 類 の 一 つであり, 法 人 税 確 定 申 告 書 など の 申 告 書, 更 正 処 分 の 際 に 作 成 される 法 人 税 決 議 書 などの 決 議 書 及 び 更 正 通 知 書 等 が 該 当 するものと 解 される 処 分 庁 は, 本 件 対 象 文 書 が 法 5 条 2 号 イ 及 び6 号 柱 書 きに 規 定 する 不 開 示 情 報 に 該 当 するとして,その 全 部 を 不 開 示 とする 決 定 ( 原 処 分 )を 行 っ たところ, 審 査 請 求 人 は, 法 人 の 名 称 以 外 ( 平 成 26 年 ( 行 情 ) 諮 問 第 5 76 号 に 係 る 審 査 請 求 においては, 法 人 名, 住 所, 所 得, 税 額 等 異 議 決 定 開 示 訴 訟 判 決 で 非 開 示 相 当 とされた 部 分 以 外 )の 開 示 を 求 めて 審 査 請 求 を 行 った これに 対 して, 諮 問 庁 は, 原 処 分 を 妥 当 としていることから, 以 下, 本 件 対 象 文 書 を 見 分 した 結 果 を 踏 まえ, 審 査 請 求 人 が 開 示 すべきとする 部 分 ( 以 下 本 件 不 開 示 部 分 という )の 不 開 示 情 報 該 当 性 について 検 討 する 2 不 開 示 情 報 該 当 性 について 当 審 査 会 において 本 件 対 象 文 書 を 見 分 したところ, 当 該 文 書 には, 審 査 請 求 人 が 開 示 を 求 めていない 特 定 の 法 人 の 名 称 のほか, 所 得 等 の 金 額, 法 人 税 等 の 額, 取 引 先 の 名 称 及 び 取 引 金 額 等, 当 該 法 人 の 課 税 所 得 計 算 等 に 係 る 詳 細 な 情 報 が 記 載 されていることが 認 められる 当 該 文 書 の 記 載 内 容 は, 一 体 として 課 税 所 得 等 に 係 る 詳 細 な 計 算 過 程 及 びその 根 拠 を 明 らかにするものであり,これらの 情 報 は, 当 該 法 人 の 財 務 状 況, 経 営 状 況 及 び 税 務 に 関 する 方 針 を 具 体 的 かつ 詳 細 に 示 すものである - 13 -
と 認 められ,これを 公 にした 場 合 には, 特 定 の 法 人 の 経 営 状 況 等 が 明 らか になり, 当 該 法 人 が 同 業 他 社 との 競 争 関 係 において 不 利 となるなど, 当 該 法 人 の 権 利, 競 争 上 の 地 位 その 他 正 当 な 利 益 を 害 するおそれがあると 認 め られる したがって, 本 件 不 開 示 部 分 については, 法 5 条 2 号 イの 不 開 示 情 報 に 該 当 するため, 同 条 6 号 柱 書 きについて 検 討 するまでもなく, 不 開 示 とす ることが 妥 当 である なお, 審 査 請 求 人 は, 法 5 条 2 号 イ 該 当 法 人 情 報 は, 法 6 条 ( 部 分 開 示 ) によって 対 処 すれば 足 りる 旨 など, 法 人 の 名 称 以 外 を 開 示 するよう 主 張 するが, 特 定 の 法 人 の 名 称 を 不 開 示 にして 他 の 部 分 を 開 示 した 場 合, 税 務 署 の 管 轄 により 特 定 の 法 人 の 納 税 地 が 限 定 される 中, 有 価 証 券 報 告 書 など 他 の 公 表 されている 情 報 と 照 合 することにより, 法 人 が 特 定 されるおそれ があり,その 場 合, 当 該 法 人 の 公 表 されていない 経 営 状 況 等 機 微 な 情 報 ま でが 公 となり, 当 該 法 人 の 正 当 な 利 益 を 害 するおそれがあると 認 められる ことから, 審 査 請 求 人 の 主 張 は 採 用 できない 3 審 査 請 求 人 のその 他 の 主 張 について (1) 審 査 請 求 人 は, 本 件 対 象 文 書 の 不 開 示 部 分 の 開 示 を 求 める 一 方 で, 不 服 申 立 てが 行 われた 場 合, 申 告 書 決 議 書 等 関 係 書 類 は, 不 服 申 立 関 係 書 類 に 統 合 される という 広 島 国 税 局 が 説 明 する 取 扱 いが 妥 当 で あって, 申 告 書 決 議 書 等 関 係 書 類 として 保 存 期 間 を1 年 延 長 する という 諮 問 庁 が 説 明 する 取 扱 いは 虚 偽 であり, 本 件 対 象 文 書 は 存 在 しな いはずとも 主 張 しているものと 解 される (2) 審 査 請 求 人 の 上 記 主 張 について, 当 審 査 会 事 務 局 職 員 をして 諮 問 庁 に 確 認 させたところ, 諮 問 庁 は, 次 のとおり 説 明 する ア 本 件 における 特 定 税 務 署 Aの 取 扱 いは, 国 税 庁 標 準 文 書 保 存 期 間 基 準 ( 平 成 26 年 6 月 26 日 付 け 官 総 7-19 標 準 文 書 保 存 期 間 基 準 について( 指 示 ) 以 下 保 存 期 間 基 準 という )に 基 づき, 申 告 書 決 議 書 等 関 係 書 類 に 分 類 された 決 議 書 等 に 関 し, 異 議 申 立 て 後 も,その 分 類 は 変 更 せず,その 保 存 期 間 につき, 国 税 庁 行 政 文 書 管 理 規 則 ( 以 下 管 理 規 則 という ) 及 び 国 税 庁 行 政 文 書 管 理 規 則 細 則 ( 以 下 細 則 という )に 基 づいて, 不 服 申 立 てにおける 手 続 上 の 行 為 をするために 必 要 とされるもので, 当 該 不 服 申 立 てに 対 する 裁 決 又 は 決 定 の 日 の 翌 日 から 起 算 して1 年 を 経 過 していないもの に 該 当 する として, 裁 決 又 は 決 定 の 日 の 翌 日 から 起 算 して1 年 間 延 長 したもの であり( 管 理 規 則 21 条 1 項, 細 則 第 2 章 6(3)), 異 議 申 立 書 や 異 議 決 定 書 原 本 等 の, 異 議 決 定 処 分 に 関 わる 文 書 についてのものではな い - 14 -
イ 他 方, 広 島 国 税 局 の 取 扱 いは, 管 理 規 則 11 条 1 項 2 号 ( 行 政 文 書 を 行 政 文 書 ファイルにまとめること),12 条 ( 行 政 文 書 ファイル 等 は, 部 局 等 の 事 務 及 び 事 業 の 性 質, 内 容 等 に 応 じて 系 統 的 に 分 類 すること) 及 び 保 存 期 間 基 準 に 基 づき, 異 議 申 立 て 後, 決 議 書 等 を, 異 議 申 立 書 や 異 議 決 定 書 原 本 等 の, 異 議 決 定 処 分 に 関 わる 文 書 と 共 に 異 議 不 服 申 立 関 係 書 類 に 分 類 し, 保 存 するというものである ウ いずれも 管 理 規 則 等 に 基 づくものであることから 誤 りではなく,ま た, 特 定 税 務 署 Aの 取 扱 いにおいても, 異 議 申 立 書 や 異 議 決 定 書 原 本 等 の, 異 議 決 定 処 分 に 関 わる 文 書 については, 異 議 不 服 申 立 関 係 書 類 として 保 管 される (3) 諮 問 庁 から 根 拠 となる 規 程 の 提 出 を 受 けて 確 認 したところ,いずれの 取 扱 いによっても 異 議 申 立 書 や 異 議 決 定 書 原 本 等 の, 異 議 決 定 処 分 に 関 わる 文 書 については, 異 議 不 服 申 立 関 係 書 類 として 保 管 されること から, 上 記 (2)の 諮 問 庁 の 説 明 が 不 自 然 不 合 理 とはいえず, 他 に 特 定 税 務 署 Aの 取 扱 いが 誤 りであると 認 めるべき 事 情 も 存 しない そして, 本 件 対 象 文 書 は 存 在 しないとする 審 査 請 求 人 の 主 張 についても, 当 審 査 会 において 見 分 した 結 果,その 存 在 を 確 認 しており,その 主 張 は 採 用 で きない (4) 審 査 請 求 人 は,その 他 種 々 主 張 するが,いずれも 当 審 査 会 の 判 断 を 左 右 するものではない 4 本 件 各 不 開 示 決 定 の 妥 当 性 について 以 上 のことから, 本 件 対 象 文 書 につき,その 全 部 を 法 5 条 2 号 イ 及 び6 号 柱 書 きに 該 当 するとして 不 開 示 とした 各 決 定 については, 審 査 請 求 人 が 開 示 すべきとする 部 分 は, 同 条 2 号 イに 該 当 すると 認 められるので, 同 条 6 号 柱 書 きについて 判 断 するまでもなく, 妥 当 であると 判 断 した ( 第 4 部 会 ) 委 員 鈴 木 健 太, 委 員 常 岡 孝 好, 委 員 中 曽 根 玲 子 - 15 -