平 成 19 年 那 審 第 10 号 貨 物 船 りゅうなん 機 関 損 傷 事 件 言 渡 年 月 日 平 成 19 年 7 月 20 日 審 判 庁 門 司 地 方 海 難 審 判 庁 那 覇 支 部 ( 西 林 眞, 岩 渕 三 穂, 黒 田 敏 幸 ) 理 事 官 上 原 直 受 審 人 A 職 名 りゅうなん 機 関 長 海 技 免 許 四 級 海 技 士 ( 機 関 )( 機 関 限 定 ) 損 害 主 機 5 シリンダ 排 気 弁 棒 に 曲 損,ピストン,シリンダライナに 排 気 弁 による 打 痕 傷 等 原 因 C 重 油 常 用 タンクのドレン 排 出 不 十 分, 復 旧 措 置 不 適 切 主 文 本 件 機 関 損 傷 は,C 重 油 常 用 タンクのドレン 排 出 が 不 十 分 で, 主 機 燃 料 油 系 統 が 閉 塞 して 同 油 の 供 給 が 阻 害 されたばかりか, 主 機 の 運 転 再 開 に 向 けての 復 旧 措 置 が 不 適 切 で, 過 回 転 を 生 じたことによって 発 生 したものである 受 審 人 Aを 戒 告 する 理 由 ( 海 難 の 事 実 ) 1 事 件 発 生 の 年 月 日 時 刻 及 び 場 所 平 成 18 年 12 月 28 日 23 時 40 分 鹿 児 島 県 与 論 島 北 方 沖 合 ( 北 緯 27 度 06.0 分 東 経 128 度 41.7 分 ) 2 船 舶 の 要 目 等 (1) 要 目 船 種 船 名 貨 物 船 りゅうなん 総 ト ン 数 749 トン 全 長 98.40 メートル 機 関 の 種 類 過 給 機 付 4 サイクル 8 シリンダ ディーゼル 機 関 出 力 2,942 キロワット 回 転 数 毎 分 525 (2) 設 備 及 び 性 能 等 ア りゅうなん りゅうなんは, 平 成 16 年 4 月 に 進 水 した 船 尾 船 橋 型 の 鋼 製 貨 物 船 で,B 社 が 用 船 した うえ, 専 ら 沖 縄 県 那 覇 港 と 福 岡 県 博 多 港 間 のコンテナ 及 び 雑 貨 輸 送 に 従 事 しており, 機 関 室 には, 下 段 中 央 に 主 機 を, 中 段 の 主 機 後 方 に 発 電 機 駆 動 用 ディーゼル 機 関 3 機 ( 以 下 補 機 という )を, 中 段 最 後 部 に 熱 媒 油 ボイラ( 以 下 ボイラ という )をそれ ぞれ 備 え, 燃 料 油 として, 主 機 が 出 入 港 時 はA 重 油 を, 航 海 中 はC 重 油 をそれぞれ 使 用 し, 補 機 及 びボイラが 常 時 A 重 油 を 使 用 していた イ 主 機 - 661 -
主 機 は,C 社 が 製 造 した 8DKM-36 型 と 称 する, 油 圧 クラッチ 内 蔵 の 逆 転 減 速 機 ( 以 下 クラッチ という )を 連 結 したディーゼル 機 関 で, 各 シリンダに 船 首 側 から 順 番 号 が 付 され,シリンダブロックの 左 舷 前 部 に 設 けた 機 側 操 縦 台 に 機 側 操 作 レバーと 油 圧 式 調 速 機 を 設 置 し, 同 ブロック 左 舷 側 に 各 シリンダ 毎 の 燃 料 噴 射 ポンプを 取 り 付 け, 調 速 機 の 出 力 レバーから,リンク 機 構 を 介 して 燃 料 加 減 軸 を 回 転 させ, 同 ポンプの ラック( 以 下 燃 料 ラック という )を 動 かし, 回 転 数 制 御 を 行 うようになっており, 年 間 運 転 時 間 が 約 7,000 時 間 であった ウ 燃 料 油 系 統 機 関 室 には, 中 段 左 舷 側 に, 容 量 3 キロリットル(kL)のC 重 油 澄 タンク, 容 量 5.2kL のC 重 油 常 用 タンク 及 びいずれも 容 量 3kL のA 重 油 常 用 タンク 2 個 をそれぞれ 設 置 し, 各 タンクの 底 部 にばね 式 の 自 動 閉 鎖 排 油 弁 ( 以 下 ドレン 弁 という )を 設 け,A 重 油 常 用 タンクのうち 1 個 を 予 備 タンクとしており,A 重 油 が, 船 体 付 タンクから 移 送 ポン プによりA 重 油 常 用 タンクに 自 動 移 送 され, 一 方,C 重 油 が 船 体 付 タンクから 移 送 ポン プによりC 重 油 澄 タンクに 自 動 移 送 されたのち, 遠 心 分 離 式 清 浄 機 ( 以 下 清 浄 機 と いう )を 通 してC 重 油 常 用 タンクに 送 られるようになっていた 主 機 の 燃 料 油 系 統 は,A 重 油 中 間 弁 とC 重 油 常 用 タンク 取 出 し 弁 とによって 使 用 燃 料 油 の 切 換 えが 行 われたのち, 呼 び 径 40Aで 連 絡 した, 流 量 計, 電 動 燃 料 供 給 ポンプ, 燃 料 油 加 熱 器,ろ 過 能 力 10 ミクロンの 多 筒 型 エレメントを 内 蔵 した 精 密 こし 器 及 び 350 メ ッシュの 2 次 複 式 こし 器 を 経 て 入 口 主 管 に 至 り, 各 シリンダの 燃 料 噴 射 ポンプに 供 給 さ れるようになっており, 主 機 の 入 口 付 近 には 加 熱 用 の 熱 媒 油 を 燃 料 油 管 の 外 側 に 通 す 二 重 管 が 設 けられていた また, 同 ポンプからの 余 剰 油 が 出 口 主 管 からC 重 油 常 用 タンク の 船 尾 側 に 設 置 されたエアセパレータ 上 部 に 送 られ, 下 部 から 供 給 ポンプ 入 口 に 戻 るよ うになっており, 入 口 主 管 と 出 口 主 管 との 間 には 弁 付 きの 連 絡 管 が 設 けられていた ところで,C 重 油 常 用 タンクは, 清 浄 機 によって 油 中 に 含 まれた 炭 素 系 固 形 物 や 水 分 などの 不 純 物 を 除 去 したものが 送 油 されるようになっているものの, 同 機 で 完 全 に 除 去 されなかったアスファルテン 成 分 や 分 離 不 良 によって 混 入 した 不 純 物 などがスラッジを 形 成 して 底 部 に 沈 殿 するため,タンク 内 部 の 状 態 を 確 認 することを 兼 ね, 定 期 的 にドレ ン 弁 を 開 けてスラッジ 等 を 排 出 する 必 要 があった 3 事 実 の 経 過 (1) 主 機 停 止 に 至 る 経 過 A 受 審 人 は, 航 海 中 の 機 関 当 直 を 他 の 機 関 士 2 人 と 3 直 輪 番 で 行 い, 燃 料 油 系 統 の 管 理 にあたっては, 主 機 の 精 密 こし 器 が 4 時 間 毎 に 自 動 逆 洗 するよう 設 定 するとともに,2 週 間 毎 にこし 器 類 の 開 放 掃 除 を 行 うようにし,A 重 油 が 主 機, 補 機 及 びボイラの 3 系 統 に 供 給 されることもあって,A 重 油 常 用 タンクのドレン 排 出 を 各 航 海 当 直 で 行 うようにしてい たが,C 重 油 系 統 は 清 浄 機 を 使 用 しているので 問 題 ないと 考 え, 乗 船 以 来 自 らC 重 油 常 用 タンクのドレン 排 出 を 十 分 に 行 うことも, 他 の 機 関 士 に 指 示 することもなかったので, 同 タンク 底 部 に 多 量 のスラッジ 等 が 堆 積 する 状 態 になっていることに 気 付 かないまま, 主 機 の 運 転 を 続 けていた こうして,りゅうなんは,A 受 審 人 ほか 6 人 が 乗 り 組 み, 空 コンテナ 120 個 を 積 み, 船 首 2.5 メートル 船 尾 3.5 メートルの 喫 水 をもって, 平 成 18 年 12 月 28 日 10 時 30 分 那 覇 港 を 発 し,10 時 35 分 主 機 の 使 用 燃 料 油 をA 重 油 からC 重 油 に 切 り 換 えたのち, 主 機 回 転 数 を 毎 分 400 に 増 速 して 16 ノットの 速 力 で 博 多 港 に 向 かった - 662 -
りゅうなんは,12 時 30 分 に 備 瀬 埼 を 航 過 後, 針 路 を 048 度 ( 真 方 位, 以 下 同 じ )とし て 航 行 していたところ, 次 第 に 強 まった 北 北 西 風 と 同 方 向 からの 風 浪 を 左 舷 方 から 受 ける ようになって,ローリング 等 が 大 きくなったために,C 重 油 常 用 タンク 底 部 に 堆 積 してい た 多 量 のスラッジ 等 が 浮 遊 して 主 機 燃 料 油 系 統 に 混 入 するようになり,やがて 同 油 系 統 の こし 器 等 が 目 詰 まりし,15 時 20 分 ごろ 精 密 こし 器 の 差 圧 警 報 が 吹 鳴 するとともに 主 機 の 回 転 数 が 徐 々に 低 下 し 始 め, 主 機 の 異 変 を 認 めた 機 関 室 当 直 中 のA 受 審 人 が, 直 ちに 燃 料 油 をA 重 油 に 切 り 換 えたものの,さらに 回 転 数 が 低 下 したことから,15 時 40 分 与 論 島 赤 埼 灯 台 から 358 度 13.8 海 里 の 地 点 で, 同 人 が 船 長 に 報 告 のうえ 主 機 を 停 止 した (2) 機 関 損 傷 に 至 る 経 過 A 受 審 人 は, 主 機 のアイドリング 運 転 は 可 能 なものの,クラッチを 嵌 合 すると 回 転 数 が 低 下 して 自 停 することから, 燃 料 油 系 統 に 問 題 があると 認 め, 機 関 室 に 急 行 した 他 の 機 関 士 2 人 にも 指 示 し, 約 1 時 間 を 要 して 精 密 こし 器 のエレメント 取 替 えや 2 次 こし 器 などの 開 放 掃 除 を 行 い,その 間 に 燃 料 油 入 口 主 管 から 連 絡 管 を 経 てエアセパレータに 至 る 配 管 や 燃 料 噴 射 ポンプから 系 統 内 の 空 気 抜 きを 行 ったうえ, 主 機 を 始 動 したものの, 同 油 供 給 量 の 不 足 からクラッチを 嵌 合 すると 停 止 することが 2 回 続 いた その 間,りゅうなんは, 鹿 児 島 県 与 論 島 と 同 県 沖 永 良 部 島 の 間 の 海 域 を 南 東 方 に 圧 流 さ れながら 漂 流 を 続 けた A 受 審 人 は,こし 器 類 の 開 放 掃 除 や 系 統 内 の 空 気 抜 きを 行 っても 主 機 の 負 荷 運 転 が 困 難 で, 配 管 中 に 残 留 C 重 油 やスラッジ 等 で 閉 塞 気 味 になっている 箇 所 があることは 十 分 に 考 えられたが, 配 管 の 一 部 を 取 り 外 したうえで 閉 塞 物 を 除 去 するなど, 主 機 の 運 転 再 開 に 向 けての 復 旧 措 置 を 適 切 に 行 うことなく,その 後 もこし 器 類 の 掃 除 や 系 統 内 の 空 気 抜 きを 行 って 始 動 することを 3 ないし 4 回 繰 り 返 した そして,A 受 審 人 は,5 ないし 6 回 試 みても 主 機 を 負 荷 運 転 に 移 行 できず, 漂 流 状 態 と なってすでに 8 時 間 近 く 経 過 していたことから, 早 く 航 行 を 再 開 しなければと 気 が 焦 り, 依 然 として 運 転 再 開 に 向 けての 復 旧 措 置 を 適 切 に 行 わないまま,アイドリング 状 態 で 燃 料 ラックを 手 動 で 増 方 向 に 操 作 することで, 燃 料 油 の 流 れをよくしようと 考 え, 機 関 室 に 呼 んだ 甲 板 員 を 含 む 4 人 が 各 々2 シリンダずつ 同 ラックを 操 作 する 配 置 につけ, 何 かあった ら 操 作 を 止 めるよう 注 意 したうえで 主 機 を 始 動 した りゅうなんは,A 受 審 人 が 主 機 の 調 速 機 を 増 速 方 向 に 手 動 操 作 すると 同 時 に, 他 の 3 人 とともに 全 シリンダの 燃 料 ラックを 増 方 向 に 操 作 したとき, 燃 料 噴 射 ポンプの 吸 引 作 用 で 配 管 の 閉 塞 状 況 が 緩 和 されて 燃 料 油 が 過 剰 供 給 され,23 時 40 分 与 論 島 赤 埼 灯 台 から 070 度 13.8 海 里 の 地 点 において, 主 機 が 過 回 転 した 当 時, 天 候 は 曇 で 風 力 5 の 北 北 西 風 が 吹 き, 海 上 には 白 波 が 立 っていた A 受 審 人 は, 過 回 転 を 認 めて 直 ちに 主 機 を 停 止 し,ターニングはできたものの,エアラ ンニングを 行 うことができなかったことから, 運 転 は 不 能 と 判 断 し,その 旨 を 船 長 に 報 告 した りゅうなんは, 奄 美 海 上 保 安 部 に 通 報 するとともに, 会 社 に 引 船 の 手 配 を 要 請 し, 翌 29 日 11 時 30 分 来 援 した 引 船 によって 曳 航 が 開 始 されて 沖 縄 県 本 部 港 に 引 きつけられ, 修 理 業 者 の 手 によって 主 機 を 精 査 した 結 果,5 シリンダで 排 気 弁 棒 が 曲 損 したうえ,ピストン とシリンダライナに 排 気 弁 による 打 痕 傷 が 生 じていることなどが 判 明 し, 全 シリンダの 排 気 弁 及 び 吸 気 弁 を 新 替 えするとともに,ピストン 及 びシリンダライナなどが 修 理 された - 663 -
( 本 件 発 生 に 至 る 事 由 ) 1 C 重 油 系 統 は 清 浄 機 を 使 用 しているので 問 題 ないと 考 え,C 重 油 常 用 タンクのドレン 排 出 を 十 分 に 行 っていなかったこと 2 荒 天 航 行 中 にC 重 油 常 用 タンク 底 部 に 堆 積 していた 多 量 のスラッジ 等 が 浮 遊 し, 主 機 燃 料 油 系 統 に 混 入 したこと 3 こし 器 などが 目 詰 まりを 起 こして 主 機 への 燃 料 油 供 給 が 阻 害 されたこと 4 こし 器 類 を 開 放 掃 除 や 系 統 内 の 空 気 抜 きを 行 っても 主 機 の 負 荷 運 転 が 困 難 であった 際, 主 機 の 運 転 再 開 に 向 けての 復 旧 措 置 を 適 切 に 行 わなかったこと 5 こし 器 類 を 開 放 掃 除 しては 主 機 を 始 動 することを 数 回 繰 り 返 すうち 長 時 間 経 過 し, 早 く 航 行 を 再 開 しなければと 気 が 焦 り, 燃 料 ラックを 増 方 向 に 手 動 操 作 したこと 6 全 シリンダの 燃 料 ラックを 増 方 向 に 操 作 したとき, 燃 料 噴 射 ポンプの 吸 引 作 用 で 配 管 の 閉 塞 状 況 が 緩 和 され, 燃 料 油 が 過 剰 供 給 されて 過 回 転 したこと ( 原 因 の 考 察 ) 本 件 は, 主 機 の 燃 料 油 系 統 にスラッジ 等 が 混 入 したため, 主 機 の 運 転 がいったん 不 能 となっ て 約 8 時 間 漂 流 状 態 となり,その 後 主 機 の 運 転 を 再 開 する 過 程 で 過 回 転 が 生 じ, 主 機 が 損 傷 し たものである 主 機 の 運 転 がいったん 不 能 となった 経 過 については,C 重 油 常 用 タンクのドレン 排 出 を 定 期 的 に 行 っていたなら, 同 タンク 底 部 にスラッジ 等 が 多 量 に 堆 積 することはなく, 荒 天 航 行 中 の スラッジ 等 が 浮 遊 して 主 機 燃 料 油 系 統 に 混 入 すること, 及 びこし 器 などが 目 詰 まりを 起 こして 主 機 への 燃 料 油 供 給 が 阻 害 されることは,いずれも 防 止 できたものと 認 められる したがって,A 受 審 人 が,C 重 油 系 統 は 清 浄 機 を 使 用 しているので 問 題 ないと 考 え,C 重 油 常 用 タンクのドレン 排 出 を 十 分 に 行 っていなかったことは, 本 件 発 生 の 原 因 となる 次 に, 主 機 の 運 転 を 再 開 する 過 程 については,こし 器 類 の 開 放 掃 除 や 系 統 内 の 空 気 抜 きを 行 っても 負 荷 運 転 が 困 難 であった 際, 配 管 中 に 残 留 C 重 油 やスラッジ 等 で 閉 塞 気 味 になっている 箇 所 があることは 十 分 に 考 えられることであり, 配 管 の 一 部 を 取 り 外 したうえで 閉 塞 物 を 除 去 するなど, 主 機 の 運 転 再 開 に 向 けての 復 旧 措 置 を 適 切 に 行 っていれば,こし 器 類 を 開 放 掃 除 し ては 主 機 を 始 動 することを 数 回 繰 り 返 すうち 長 時 間 経 過 することは 避 けられ,また, 早 く 航 行 を 再 開 しなければと 気 が 焦 り, 燃 料 ラックを 増 方 向 に 手 動 操 作 することはなく, 主 機 が 過 回 転 することは 防 止 できたものと 認 められる したがって,A 受 審 人 が,こし 器 類 の 開 放 掃 除 や 系 統 内 の 空 気 抜 きを 行 っても 負 荷 運 転 が 困 難 であった 際, 配 管 の 一 部 を 取 り 外 したうえで 閉 塞 物 を 除 去 するなど, 主 機 の 運 転 再 開 に 向 け ての 復 旧 措 置 を 適 切 に 行 わなかったことは, 本 件 発 生 の 原 因 となる ( 海 難 の 原 因 ) 本 件 機 関 損 傷 は,C 重 油 常 用 タンクのドレン 排 出 が 不 十 分 で, 荒 天 航 行 中, 同 タンクの 底 部 に 堆 積 していたスラッジ 等 が 主 機 燃 料 油 系 統 に 混 入 し, 同 油 系 統 のこし 器 などが 閉 塞 して 同 油 の 供 給 が 阻 害 されたばかりか, 主 機 の 運 転 再 開 に 向 けての 復 旧 措 置 が 不 適 切 で, 全 シリンダの 燃 料 ラックを 増 方 向 に 手 動 操 作 したとき, 燃 料 噴 射 ポンプの 吸 引 作 用 で 配 管 の 閉 塞 状 況 が 緩 和 され, 燃 料 油 が 過 剰 供 給 されて 過 回 転 を 生 じたことによって 発 生 したものである ( 受 審 人 の 所 為 ) - 664 -
A 受 審 人 は, 燃 料 油 系 統 にスラッジ 等 が 混 入 し,こし 器 類 の 開 放 掃 除 や 系 統 内 の 空 気 抜 きを 行 っても 主 機 の 負 荷 運 転 が 困 難 であった 場 合, 配 管 中 に 残 留 C 重 油 やスラッジ 等 で 閉 塞 気 味 に なっている 箇 所 があることは 十 分 に 考 えられたから, 配 管 の 一 部 を 取 り 外 したうえで 閉 塞 物 を 除 去 するなど, 主 機 の 運 転 再 開 に 向 けての 復 旧 措 置 を 適 切 に 行 うべき 注 意 義 務 があった とこ ろが, 同 人 は, 主 機 の 運 転 再 開 に 向 けての 復 旧 措 置 を 適 切 に 行 わなかった 職 務 上 の 過 失 によ り, 長 時 間 を 要 しても 負 荷 運 転 に 移 行 できずに, 早 く 航 行 を 再 開 しようと 気 が 焦 り, 燃 料 油 の 流 れをよくしようと 全 シリンダの 燃 料 ラックを 増 方 向 に 操 作 したとき, 燃 料 油 が 過 剰 供 給 され て 過 回 転 を 招 き, 排 気 弁 棒 の 曲 損,ピストン 及 びシリンダライナに 打 痕 傷 を 生 じさせるに 至 っ た 以 上 のA 受 審 人 の 所 為 に 対 しては, 海 難 審 判 法 第 4 条 第 2 項 の 規 定 により, 同 法 第 5 条 第 1 項 第 3 号 を 適 用 して 同 人 を 戒 告 する よって 主 文 のとおり 裁 決 する - 665 -