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卵管の自然免疫による感染防御機能 Toll 様受容体 (TLR) は微生物成分を認識して サイトカインを発現させて自然免疫応答を誘導し また適応免疫応答にも寄与すると考えられています ニワトリでは TLR-1(type1 と 2) -2(type1 と 2) -3~ の 10


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図 B 細胞受容体を介した NF-κB 活性化モデル

図形の表現 5 チャートの作成 1, 作成チャート 右図は 平成 23 年 10 月 8 日付け朝日新聞 3 面より 下図は実際作成した図です 2, 樹状細胞について本年のノーベル医学生理学賞は 樹状細胞 を発見した功績に対して 米ロックフェラー大のラルフ スタインマン教授が選ばれた この樹状細胞は


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PM2.5 PM. PM2.5 PM. PM2.5 PM. PM2.5 PM.

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目次 1. 抗体治療とは? 2. 免疫とは? 3. 免疫の働きとは? 4. 抗体が主役の免疫とは? 5. 抗体とは? 6. 抗体の構造とは? 7. 抗体の種類とは? 8. 抗体の働きとは? 9. 抗体医薬品とは? 10. 抗体医薬品の特徴とは? 10. モノクローナル抗体とは? 11. モノクローナ



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界では年間約 2700 万人が敗血症を発症し その多くを発展途上国の乳幼児が占めています 抗菌薬などの発症早期の治療法の進歩が見られるものの 先進国でも高齢者が発症後数ヶ月の 間に新たな感染症にかかって亡くなる例が多いことが知られています 発症早期には 全身に広がった感染によって炎症反応が過剰になり


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ウシの免疫機能と乳腺免疫 球は.8 ~ 24.3% T 細胞は 33.5 ~ 42.7% B 細胞は 28.5 ~ 36.2% 単球は 6.9 ~ 8.9% で推移し 有意な変動は認められなかった T 細胞サブセットの割合は γδ T 細胞が最も高く 43.4 ~ 48.3% で CD4 + T 細

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て 弥生時代に起こったとされています 結核は通常の肺炎とは異なり 細胞内寄生に基づく免疫反応による慢性肉芽腫性炎症であり 重篤な病変では中が腐って空洞を形成します 結核は はしかや水疱瘡と同様の空気感染をします 肺内に吸いこまれた結核菌は 肺胞マクロファージに貪食され 細胞内で増殖します 貪食された

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接歯や粘膜上皮に付着できない菌も組織定着が可能です ( 図 2) 口腔ケアが低下し異菌種間の凝集を仲介する細菌種の Fusobacterium や Actinomyces などが増えると プラーク量は一気に増加します ( 図 2) 徐々にプラーク内の嫌気度が増し 歯周病原菌 Porphyromona


肝クッパ 細胞を簡便 大量に 回収できる新規培養方法 農研機構動物衛生研究所病態研究領域上席研究員山中典子 2016 National Agriculture and Food Research Organization. 農研機構 は国立研究開発法人農業 食品産業技術総合研究機構のコミュニケーショ

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17. (1) 18. (1) 19. (1) 20. (1) 21. (1) (3) 22. (1) (3) 23. (1) (3) (1) (3) 25. (1) (3) 26. (1) 27. (1) (3) 28. (1) 29. (1) 2


2017 年度茨城キリスト教大学入学試験問題 生物基礎 (A 日程 ) ( 解答は解答用紙に記入すること ) Ⅰ ヒトの肝臓とその働きに関する記述である 以下の設問に答えなさい 肝臓は ( ア ) という構造単位が集まってできている器官である 肝臓に入る血管には, 酸素を 運ぶ肝動脈と栄養素を運ぶ

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Transcription:

80 埼玉医科大学雑誌 第 30 巻 第 1 号 平成 15 年 1 月 シンポジウム 細胞内寄生菌感染症と免疫応答 光山 正雄 京都大学大学院医学研究科 感染 免疫学教授 座長 松下 祥 埼玉医科大学免疫学教授 次のご講演は光山正雄先生です 先生は現在京都大学大学院医 学研究科におられます 昭和 48 年 九州大学医学部をご卒業後 51 年九州大学医学部細菌学講座へ出向 53 年同助手 56 年に米国 NIH 国際奨励研究員として ハーバード大学に留学され 58 年には 九州大学の細菌学助教授 それから 62 年に新潟大学医学部細菌学 教授 そして平成 10 年から京都大学で教授をされています 先生は 日本細菌学会や それから日米医学協力会議の結核部会の部会長と してご活躍です 本日は 細胞内寄生菌感染と免疫応答 のタイトル でお話をお願いします 松下先生 どうもご紹介 をありがとうございました このたびは このシンポジ ウムにお招きいただきまし たことを感謝申し上げます 私も大昔は臨床を少し やっていたのですが もう 25 年ぐらい医者をやって お ら ず い つ の 間 に か 感染生物学のようなこと をやっています 今日の私 のお話は 必ずしも臨床の先生方や看護婦さんのお役 には立たないかもしれませんが しばらく耳をお貸し ください 細胞内寄生菌 もしくは 細胞内寄生性細菌 と いう用語が出てきますが あまりなじみがないのでは ないかと思います これは 細胞がないと生きられな い細菌という意味ではありません この菌についてこ れから生体防御との関連でお話ししようと思います ここには免疫学の大家の松下先生がいらっしゃいま すが 一応 免疫学では進化した免疫機構が大事なの ですが あえて申しますと すべての生命体に普遍的 に必要な生体防御機構の一番の基本は食細胞であると 思います これはマクロファージが 今日の私のお話 の中心でありますリステリアという菌を貪食している 像です 異物を異物として認識し それを細胞の中で 殺すことができるのは食細胞だけです 抗体であれ補 体であれ T 細胞であれ B 細胞であれ NK 細胞で あれ γδt 細胞であれ 菌を直接殺すという機能は なく 食細胞だけが細菌を行うことができます 食細胞 特に好中球といわれるもの およびマクロ ファージには いろいろな細胞内殺菌機構が備わって います ここで赤く示したものが 何らかの細菌なり 異物とお考えください これを異物と認識した食細胞 は細胞の中に取り込みますが それは裸の異物を取り 込むのではなく 細胞膜で取り囲み 内部に取り込み ます これを私たちは食胞 phagosome と呼んでい ます この食胞というのは 単なる袋ではなく 食細 胞の中では その中に取り込んだバクテリアを殺菌し てしまう 殺してしまう そういうるつぼのようなも のであり 非常にたくさんの多様な殺菌因子が ここ で働くようになっています 図 1 食細胞による貧食以後の細胞内殺菌の過程

NADPH Lysosome P-L fusion 2 20 3 50 zoonosis 100 A B C P-L fusion

granuloma 4 pathogenicity island chromosomal DNA A B InlA/B E- superoxide dismutase hly O Listeriolysin O 37 ActA 6 7000 ActA ActA

3 protrusion 2 2 2 hly hly hly 3 10 8 9 virulence gene cluster 10 1 TH1 TH1 GM-CSF TH1 TH1

4 THI IFN- 3 P-L fusion P-L fusion NO high-output nitric oxide synthase inos ONOO P-L fusion T T TH1 passive transfer TH1 TH1 BCG TH1 BCG 1980 20 BCG LancetBad News from India BCG BCG BCG BCG

BCG TH1 hly 2 TH1 TH2 hly LLO DNA in vivo O O TH1 hly LLO 1 10 TH1 hly hly O LLO LLO TH1 O A Streptococcus pyogenes O

4 2 3 O hly LLO Clostridium perfringens O 1998 Cell 4 LLO 1 2 3 1 2 4 LLO LLO 4 C C 4 C 4 4 C 4 4 N 4 4 1 3 2 Listeria welshmeri Listeria innocua hly 80 2

LLO Listeria seeligeri LSO seeligeriolysin 530 LLO C Ala Phe Ala Phe Ala cytolytic activity phe LSO cytolytic activity C N Listeria ivanovii ilo ivanolysin 528 ILO LLO N 1 3 1 3 1 3 1 3 3 cytolytic activity TH1 cytolysis 1 3 20 2 ILO N 12 13 13 13 13 13 13 34 N N PEST sequence PEST sequence N PEST score PEST PEST sequence

PEST PEST score 1 Lys PEST score LLO in vitro NK dendritic cell IL-12 IL-18 IL-12 IL-18 LLO IL-12 IL-18 NK NK DC TH1 innate immunity TLR LLO TLR TLR TLR 2 TLR 4 TLR MyD88 TLR TLR2 TLR4 LPS MyD88 LLO TLR 2 4 HEK cell TLR NF- B TLR 2 4 CD14 MD2 N TLR 2 4 NF- B IL-12 IL-18 TH1 evolve TH1 P

TNF excitation LP3 toxicity 2 1 P LPS TNF IL-18 P P P P LPS 1 P TLR FPS provocation TNF 10 LLO 4 LLO LLO LLO 25 cytoplasmic membrane cytoplasmic membrane 2 1 3

O LLO O 3 JBC O 4 1 3 10 6 20 2003 The Medical Society of Saitama Medical School