誘 引 性 改 良 アブトラップの 作 製 と 捕 獲 試 験 東 青 地 域 県 民 局 地 域 農 林 水 産 部 青 森 家 畜 保 健 衛 生 所 菅 原 健 齋 藤 豪 相 馬 亜 耶 水 島 亮 林 敏 展 太 田 智 恵 子 中 村 成 宗 中 島 聡 盛 田 淳 三 概 要 を 選 択 し 作 製 及 び 試 験 の 対 象 とした 牛 白 血 病 ウイルスを 機 械 的 に 伝 播 するアブ を 捕 獲 し 低 減 させるため 一 般 的 にボックス 型 トラップが 利 用 されていると 考 えられる しかし 牛 体 の 背 部 に 飛 来 する 大 型 アブは 捕 獲 され 難 く その 作 製 にも 手 間 と 時 間 を 要 する そこで 今 回 大 型 アブを 捕 獲 でき 簡 単 に 作 製 できるトラップによる 捕 獲 試 験 を 実 施 した 3 試 験 トラップの 概 要 () 変 法 マニトバトラップ 変 法 マニトバトラップは 酪 農 学 園 大 学 にお いて 考 案 されたものである 既 存 のマニトバ トラップ ) を 基 に 設 計 されており 外 観 は 図 に 示 すとおりである 青 と 黒 の 色 の 布 を 組 み 合 わせた 円 筒 形 の 構 造 体 下 部 からアブは 侵 入 捕 獲 される 設 置 時 の 高 さは 約 8cm 幅 も 約 8cm である 設 置 にあたっては 3 本 の トラップの 条 件 支 柱 で 自 立 させるものである はじめに アブ 低 減 対 策 に 活 用 するトラッ 8cm プの 理 想 とする 条 件 を 次 のとおり 考 慮 した 多 数 のアブを 捕 獲 できること 大 型 アブ も 捕 獲 可 能 であること 3 作 製 材 料 の 入 手 が 容 易 であること 4その 材 料 費 は 比 較 的 安 価 であること トラップの 作 製 のための 特 殊 な 器 具 は 不 要 であること 簡 単 に 短 時 間 で 作 製 可 能 であることである これらの 条 件 を 満 たすものとして 変 法 マニトバトラップ NZI トラップ 誘 引 性 改 良 NZI トラップ の 3 種 類 のトラップ 図 変 法 マニトバトラップ
()NZI トラップ cm NZI トラップは 国 際 昆 虫 生 理 生 態 学 センタ ーにより 考 案 されたもの ) である 変 法 マニ トバトラップと 同 様 色 の 布 を 用 いている 外 観 は 図 に 示 すとおりで 布 を 平 面 的 に 展 開 した 構 造 に 設 置 した 侵 入 口 から 入 ったアブ はトラップ 後 方 のアミで 作 られた 空 間 を 上 り 捕 獲 される 設 置 時 の 高 さは 約 cm 幅 は 約 cm である 設 置 には 支 柱 3 本 を 用 いて 形 態 を 保 持 するが 今 回 は さらに 支 柱 を 安 定 さ せるため ひもとペグで 固 定 している cm 図 3 誘 引 性 改 良 NZIトラップ 4 試 験 の 概 要 捕 獲 試 験 を 次 に 示 す 条 件 の 下 で 行 った () 設 置 場 所 青 森 市 内 の 放 牧 地 とし 図 4 に 示 す A B C と 称 する 設 置 場 所 3 か 所 を 設 定 した 設 置 場 所 A B は 同 一 牧 区 内 に 設 定 し 約 m 離 れ 図 NZIトラップ た 別 の 牧 区 に C を 設 定 した また 設 置 場 所 の 標 高 及 び 気 温 は 図 に 示 すとおりで 設 置 期 間 中 の 月 間 平 均 気 温 は 過 去 年 間 の 同 月 の 平 均 気 温 の 範 囲 内 であった 放 牧 期 間 は 設 置 場 所 A と B の 牧 区 に 日 間 C の 牧 区 に 3 日 間 であった (3) 誘 引 性 改 良 NZI トラップ NZI トラップに 球 形 の 誘 引 体 を 付 加 し アブ : 牧 区 境 界 : 設 置 場 所 の 誘 引 機 能 を 強 化 したものである 図 3 に 示 すとおり アブの 侵 入 口 に 誘 引 体 を 設 置 した また 設 置 時 の 寸 法 は NZI トラップと 同 様 で ある C B A 場 所 Cに 設 置 した3 種 類 のトラップ m 図 4 試 験 設 置 場 所
標 高 A B C m m 8m 気 温 設 置 期 間 の 平 均 気 温 ( ) 月 8 月 9 月 設 置 期 間 3. 3. 9. 過 去 年 間 の 範 囲.8~3.8.9~. 8.4~3. 放 牧 設 置 期 間 の 放 牧 日 数 A B C 日 日 3 日 図 設 置 場 所 の 概 要 の 合 計 ( 匹 )とした (4) 捕 獲 種 捕 獲 数 に 占 める 大 型 アブの 割 合 (%)とし た なお 今 回 大 型 アブと 定 義 した 種 類 は 牛 体 背 部 に 飛 来 するアカウシアブなどとした これ 以 外 のニッポンシロフアブなどを 小 型 ア ブと 定 義 した () 設 置 台 数 設 置 場 所 か 所 あたり 3 種 のトラップを 台 ずつ 設 置 した (3) 設 置 期 間 平 成 年 月 9 日 から 9 月 3 日 までの 84 日 間 設 置 した (4) 回 収 頻 度 日 間 に 回 捕 獲 されたアブを 回 収 した 検 討 項 目 トラップの 作 製 作 業 やアブの 捕 獲 状 況 を 比 較 して 評 価 するため 次 のとおり 項 目 と 内 容 を 設 定 した () 材 料 費 トラップ 台 を 作 製 するために 要 した 材 料 の 購 入 費 ( 円 )とした () 作 製 時 間 台 当 たりの 作 製 時 間 ( 分 )とした () 費 用 効 率 材 料 費, 円 当 たりの 捕 獲 数 を 示 す 数 値 ( 匹 /, 円 )とした 評 価 方 法 検 討 項 目 について 各 トラップの 成 績 を 比 較 して 点 数 を 与 え 各 項 目 を 合 計 した 点 数 が 最 も 高 いものを 今 回 最 も 優 れたトラップと 判 定 した なお 各 検 討 項 目 の 判 定 基 準 と 点 数 は 表 に 示 すとおり 設 定 した 表 検 討 項 目 の 評 価 基 準 項 目 点 数 と 判 定 基 準 3 材 料 費 安 い 中 間 高 い 作 製 時 間 短 い 中 間 長 い 捕 獲 数 多 い 中 間 少 ない 捕 獲 種 大 型 が 高 率 中 間 大 型 が 低 率 費 用 効 率 数 値 が 高 い 中 間 数 値 が 低 い 合 計 トラップごとに 各 項 目 を 合 計 した 点 数 (3) 捕 獲 数 設 置 した 各 種 トラップ 3 台 の 捕 獲 したアブ
材 料 と 作 製 作 業 () 材 料 捕 獲 試 験 に 用 いた 3 種 のトラップの 材 料 は 次 のとおりである ア 変 法 マニトバトラップ 図 に 示 すとおり 園 芸 用 支 柱 木 綿 布 ( 黒 青 ) 網 戸 用 アミ 傘 漏 斗 針 金 種 籾 消 毒 袋 ボール フェルト( 黒 )を 用 い た 3 4 園 芸 用 支 柱 木 綿 布 ( 黒 ) 3 木 綿 布 ( 青 ) 4 網 戸 用 アミ 傘 漏 斗 針 金 8 種 籾 消 毒 袋 9ボール 8 フェルト 図 変 法 マニトバトラップの 材 料 イ NZI トラップ 図 に 示 すとおり 園 芸 用 支 柱 木 綿 布 ( 黒 青 ) 網 戸 用 アミ 種 籾 消 毒 袋 ペッ トボトル(L) ポリエチレンひも ペグを 用 いた 9 ウ 誘 引 性 改 良 NZI トラップ 図 に 示 すとおり 園 芸 用 支 柱 木 綿 布 ( 黒 青 ) 網 戸 用 アミ 種 籾 消 毒 袋 ペッ トボトル(L) ポリエチレンひも ペグ ボール フェルト( 黒 )を 用 い NZI トラップ の 誘 引 機 能 を 強 化 するための 誘 引 体 の 材 料 を 追 加 している 3 図 園 芸 用 支 柱 木 綿 布 ( 黒 ) 3 木 綿 布 ( 青 ) () 作 製 作 業 4 網 戸 用 アミ 種 籾 消 毒 袋 ペットボトル 4 ポリエチレンひも 8ペグ 9ボール フェルト( 黒 ) 誘 引 性 改 良 NZIトラップの 材 料 図 8 及 び 図 9 に 材 料 の 加 工 作 業 を 示 した いずれのトラップの 材 料 も 図 8 に 示 すとおり ハサミ ニッパーを 利 用 して 切 断 することが 可 能 であり 容 易 な 作 業 で 実 施 できるもので あった また 図 9 のとおり 布 等 の 材 料 の 接 合 に 文 具 等 を 活 用 することで 容 易 な 作 業 で 作 製 可 能 であった 8 9 4 8 3 園 芸 用 支 柱 木 綿 布 ( 黒 ) 3 木 綿 布 ( 青 ) 4 網 戸 用 アミ 種 籾 消 毒 袋 ペットボトル ポリエチレンひも 8ペグ 図 NZIトラップの 材 料
イヨシロオビアブ シロフアブ キスジアブ ウシアブ キバラアブ ヤマトアブ ニッポンシロフアブ キノシタシロフアブ アカウシアブ ホルバートアブ アカアブ 9 3 4 4 大 型 アブ 89 3 小 型 アブ 大 型 アブ ( 例 )アカウシアブ 小 型 アブ ( 例 )ニッポンシロフアブ 木 綿 布 の 切 断 針 金 の 切 断 4 8 捕 獲 数 図 8 材 料 の 切 断 図 捕 獲 したアブの 種 類 と 数 () 牧 区 ごとの 結 果 各 牧 区 に 設 置 した 3 種 のトラップの 捕 獲 数 の 合 計 は 図 に 示 すとおり 放 牧 期 間 が 文 具 による 接 合 日 であった 設 置 場 所 A で 9 匹 B で 4 匹 3 日 であった 設 置 場 所 C で 4 匹 であった 接 着 剤 による 接 合 図 9 材 料 の 接 合 ( 匹 ) 変 法 マニトバトラップ NZIトラップ 誘 引 性 改 良 NZIトラップ 4 匹 8 結 果 ()アブの 捕 獲 結 果 設 置 期 間 中 に 全 てのトラップが 捕 獲 したア ブの 種 類 と 数 は 図 に 示 すとおりである そ の 合 計 は 種 匹 であった このうち 大 型 アブは 3 種 3 匹 で 全 体 に 占 める 捕 獲 数 の 割 合 は.%であった また 小 型 アブは 8 種 3 匹 捕 獲 され 全 体 の 88.%を 占 めていた 9 匹 4 匹 A B C 設 置 場 所 図 設 置 場 所 ごとの 捕 獲 数 (3) 検 討 内 容 ごとの 結 果 ア 材 料 費 図 のとおり 変 法 マニトバトラップ( 以 下 変 法 マニトバ)が 3, 円 NZI トラップ ( 以 下 NZI)が, 円 誘 引 性 改 良 NZI ト ラップ( 以 下 改 良 NZI)が,8 円 であった
( 円 ) 4, 3,, 3, 円 変 法 マニトバ: 変 法 マニトバトラップ NZI:NZIトラップ 改 良 NZI: 誘 引 性 改 良 NZIトラップ, 円,8 円 エ 捕 獲 種 図 のとおり 捕 獲 数 に 占 める 大 型 アブの 割 合 は 変 法 マニトバが.% NZI が.% 改 良 NZI が.%であった, 大 型 アブ 小 型 アブ.%.%.% 図 材 料 費 9.8% 93.% 8.% イ 作 製 時 間 図 3 のとおり 変 法 マニトバが 9 分 NZI が 分 改 良 NZI が 9 分 であった ( 分 ) 9 分 9 分 9 分 図 捕 獲 種 オ 費 用 効 率 図 のとおり 材 料 費, 円 あたりの 捕 獲 数 ( 匹 /, 円 )の 数 値 は 変 法 マニトバ が. NZI が 9.9 改 良 NZI が.3 であった 3 図 3 作 製 時 間 ウ 捕 獲 数 図 4 のとおり 変 法 マニトバが 4 匹 NZI が 匹 改 良 NZI が 3 匹 であった ( 匹 /, 円 ).3 9.9. ( 匹 ) 3 匹 図 費 用 効 率 匹 4 匹 図 4 捕 獲 数 (4) 評 価 と 判 定 検 討 した 項 目 を 比 較 し 配 点 した 結 果 を 表 に 示 した 材 料 費 は 変 法 マニトバが 最 も 安 価 で 作 製 時 間 は NZI が 最 も 短 かった 捕 獲 数 及 び 捕 獲 種 は いずれも 誘 引 性 改 良 NZI が 最 も 多 くアブを 捕 獲 しており さらに 捕
獲 数 に 占 める 大 型 アブの 割 合 も 最 も 多 かった また 材 料 費 と 捕 獲 数 から 算 出 した 費 用 効 率 の 数 値 も 改 良 NZI が 最 も 高 い 数 値 であった これらの 結 果 から 各 項 目 に 配 点 して 合 計 したところ 改 良 NZI の 得 点 が 点 と 試 験 ト ラップ 3 種 の 中 で 最 も 高 かった 以 上 から 今 回 試 作 した 3 種 のトラップの うちから 改 良 NZI を 最 も 優 れたトラップと 判 定 した 表 評 価 結 果 どを 用 いた 化 学 的 要 素 によって 誘 引 機 能 を 強 化 することは 有 効 と 考 えられる また 捕 獲 試 験 における 設 置 場 所 によって 捕 獲 数 に 差 があったことは 牛 の 放 牧 と 捕 獲 数 の 関 連 を 示 唆 している このことから 牛 が 放 牧 されている 場 所 への 設 置 を 容 易 にする ための 移 動 性 を 考 慮 した 構 造 のトラップを 考 案 することは アブ 捕 獲 数 を 増 加 することに 対 して 有 効 と 考 えられる これらの 点 を 考 慮 しながら 今 後 アブト ラップを 活 用 した 牛 白 血 病 対 策 を 推 進 してい きたい 材 料 費 3 作 製 時 間 3 捕 獲 数 3 捕 獲 種 3 費 用 効 率 3 参 考 文 献 ) 新 応 用 昆 虫 学 p4(99 朝 倉 出 版 ) ) http://www.nzitrap.com/ 合 計 9 考 察 今 回 アブトラップを 3 種 作 製 し 比 較 検 討 した 結 果 誘 引 体 を 付 加 した 改 良 NZI が 最 も 優 れているものと 判 定 した しかし アブの 捕 獲 数 にはトラップの 設 置 場 所 による 差 があることも 判 明 した 今 後 より 効 果 的 にアブを 捕 獲 するため トラップの 誘 引 性 や 移 動 性 の 改 良 は 有 効 と 考 えられる 最 も 優 れたものと 判 定 した 改 良 NZI は 誘 引 体 のない NZI に 比 べアブ 捕 獲 数 が 増 加 した ことから 誘 引 体 によって 誘 引 に 関 与 する 視 覚 的 な 効 果 が 高 まったと 考 えられる さらに アブ 捕 獲 数 を 増 加 させるために 炭 酸 ガスな