製 品 安 全 センター プラスチック 製 品 の 事 故 原 因 解 析 手 法 と 実 際 の 解 析 事 例 について 平 成 25 年 11 月 独 立 行 政 法 人 製 品 評 価 技 術 基 盤 機 構 製 品 安 全 センター 製 品 安 全 技 術 課 片 岡 孝 浩 1
0. 背 景 と 狙 い 発 表 の 概 要 1. プラスチックの 基 礎 と 劣 化 について (1) プラスチックの 基 礎 (2) プラスチックの 劣 化 2. NITEにおけるプラスチックの 事 故 原 因 解 析 手 法 について (1) 事 故 原 因 解 析 の 基 本 (2) 観 察 (3) 化 学 分 析 (4) 熱 分 析 (5) 力 学 評 価 3. プラスチックの 事 故 原 因 解 析 事 例 について (1) チップスメーカー( 電 子 レンジ 用 )の 発 火 事 例 (2) スチームクリーナーのノズル 破 損 事 例 2
0. 背 景 と 狙 い (1). 背 景 過 去 5 年 間 にNITEデータベースに 登 録 された 事 故 情 報 ( 約 21000 件 )のうち プラスチック 製 品 が 関 係 した 事 故 は 約 3600 件 あり そのうち 約 500 件 が 破 損 事 故 であった さらに 170 件 はプラスチックの 経 年 劣 化 が 原 因 と 推 定 された プラスチック 3600 件 (17 17%) プラスチックによる 事 故 が 多 く 発 生 している 破 損 500 件 (14%) 劣 化 170 件 (34%) 全 体 :21000 件 全 体 :3600 件 全 体 :500 件 (2). 狙 い ア. プラスチックの 基 礎 と 劣 化 について 理 解 を 深 める イ. プラスチックの 事 故 原 因 解 析 手 法 について 理 解 を 深 める ウ. プラスチックの 事 故 原 因 解 析 事 例 から 教 訓 を 学 ぶ 3
1. プラスチックの 基 礎 と 劣 化 について 4
1.(1)プラスチックの 基 礎 ア.プラスチックとは 必 須 の 構 成 成 分 として 高 重 合 体 を 含 みかつ 完 成 製 品 への 加 工 のある 段 階 で 流 れによって 形 を 与 え 得 る 材 料 (JIS K 6900-1994) 主 成 分 は 炭 素 (C)などの 原 子 がたくさん 繋 がっていて 金 型 に 流 し 込 めば 色 々な 形 状 に 加 工 できる 材 料 高 分 子 5
1.(1)プラスチックの 基 礎 イ. 高 分 子 とは 低 分 子 水 素 酸 素 H 2 O ( 原 子 3 個 ) 水 素 酸 素 酸 素 O 2 ( 原 子 2 個 ) 高 分 子 原 子 が 何 千 何 万 個 も 繋 がった 巨 大 分 子 である 水 素 水 素 水 素 水 素 水 素 水 素 炭 素 炭 素 炭 素 炭 素 炭 素 炭 素 水 素 水 素 水 素 水 素 水 素 水 素 ポリエチレン( 原 子 数 万 個 ) 6
1.(1)プラスチックの 基 礎 ウ. プラスチックとエラストマー( 例 えばゴム)の 関 係 について 1ガラス 転 移 点 ( 温 度 )が 使 用 温 度 より 高 いか 低 いか 結 晶 性 の 低 い 高 分 子 の 状 態 低 温 プラスチック 分 子 があまり 運 動 していない 状 態 (ガラス) 使 用 温 度 2 結 晶 性 ( 結 晶 化 度 )が 高 いか 低 いか ガラス 転 移 点 ( 材 料 によって 異 なる ) 温 度 エラストマー 分 子 が 大 きく 運 動 している 状 態 (アモルファス) 使 用 温 度 材 料 の 結 晶 性 が 高 いと その 材 料 はプラスチックとして 振 舞 う 結 晶 部 分 は 分 子 の 拘 束 により 運 動 性 が 著 しく 低 くなるため 高 温 使 用 温 度 がガラス 転 移 点 よりも 低 いと その 材 料 はプラスチックとして 振 舞 う 7
エ. プラスチックの 結 晶 と 非 晶 ( 非 結 晶 )について 高 分 子 をスパゲッティに 例 えてみましょう ゆでる 前 の 状 態 整 列 している 1.(1)プラスチックの 基 礎 結 晶 状 態 ( 硬 い) 無 理 に 変 形 させると 破 壊 する 大 きく 変 形 できない ポリエチレン 樹 脂 ナイロン 樹 脂 ゆでた 後 の 状 態 整 列 していない アモルファス 状 態 ( 軟 らかい) スパゲッティを 自 由 に 動 かせる 容 易 に 大 きく 変 形 できる エラストマー 温 度 が 下 がる 冷 凍 庫 で 凍 った 状 態 整 列 していない ガラス 状 態 ( 硬 い) 無 理 に 変 形 させると 破 壊 する 大 きく 変 形 できない ABS 樹 脂 ポリカーボネート 樹 脂 非 晶 8
1.(1)プラスチックの 基 礎 オ. プラスチックの 種 類 について( 代 表 例 ) 結 晶 性 プラスチック ポリオレフィン ポリエチレン(PE) ポリプロピレン(PP) ポリアミド(PA) ナイロン アラミド ポリアセタール ポリオキシメチレン(POM) ポリエステル ポリエチレンテレフタレート(PET) ポリブチレンテレフタレート(PBT) 非 晶 性 プラスチック ポリ 塩 化 ビニル(PVC) ポリアクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS) アクリル 樹 脂 ポリメタクリル 酸 メチル(PMMA) ポリカーボネート(PC) 9
1.(2)プラスチックの 劣 化 ア. プラスチックの 劣 化 因 子 について プラスチックの 劣 化 プラスチックの 加 工 貯 蔵 および 使 用 期 間 中 において 本 来 発 揮 すべき 品 質 や 性 能 が 低 下 すること 熱 光 放 射 線 電 気 的 作 用 機 械 的 作 用 高 温 ( 酸 化 分 解 ) 低 温 ( 脆 化 ) 可 視 光 線 紫 外 線 γ 線 放 電 せん 断 応 力 ( 加 工 時 ) X 線 過 電 圧 外 部 応 力 電 子 線 過 電 流 内 部 応 力 プラスチック 細 菌 カビ 洗 剤 溶 剤 塩 素 NOx 酸 素 オゾン SOx 塩 水 水 道 雨 劣 化 微 生 物 薬 品 酸 化 性 物 質 水 分 プラスチックは 様 々な 環 境 因 子 によって 劣 化 します ( 用 途 に 対 して 向 き 不 向 きがある ) 10
1.(2)プラスチックの 劣 化 イ. 化 学 的 な 劣 化 について (ア) 熱 酸 化 空 気 中 の 酸 素 によってラジカルが 発 生 し それが 酸 素 と 反 応 して 自 動 酸 化 が 進 行 する ( 自 動 酸 化 は 温 度 が 高 いほど 加 速 される ) (イ) 光 酸 化 紫 外 線 でラジカルが 発 生 し それが 酸 素 と 反 応 して 自 動 酸 化 が 進 行 する (ウ) 加 水 分 解 水 (H 2 O)や 酸 (H + ) アルカリ(OH - )によってウレタン 結 合 や エステル 結 合 が 破 壊 される ウ. 物 理 的 な 劣 化 について (ア)ソルベントクラック( 環 境 応 力 亀 裂 ESC) 薬 剤 によって 高 分 子 の 絡 み 合 いが 解 されることで 強 度 が 低 下 する 非 晶 性 プラスチックで 顕 著 に 起 こる (イ)クリープ 静 荷 重 が 長 時 間 加 わることで 時 間 とともに 大 きく 変 形 する (ウ) 疲 労 応 力 ひずみが 繰 り 返 し 加 わることで 時 間 とともに 強 度 が 低 下 する 高 分 子 の 化 学 変 化 によって 強 度 が 低 下 し 破 壊 に 至 る 11
プラスチックの 基 礎 と 劣 化 について まとめ プラスチックの 基 礎 高 分 子 でできている 温 度 によって 状 態 が 変 化 する (ガラス 転 移 ) 結 晶 性 のものと 非 晶 性 のものがある プラスチックの 劣 化 様 々な 要 因 で 劣 化 することは 避 けられない 化 学 的 劣 化 は 熱 酸 化 光 酸 化 加 水 分 解 である 物 理 的 な 劣 化 は ソルベントクラック クリープ 疲 労 である プラスチックの 劣 化 による 事 故 を 防 止 するためには 製 品 の 用 途 と 使 用 環 境 に 適 したものを 選 定 することが 大 切 である 12
2. NITEにおけるプラスチックの 事 故 原 因 解 析 手 法 について 13
2.NITEにおけるプラスチックの 事 故 原 因 解 析 手 法 について (1) 事 故 原 因 解 析 の 基 本 現 場 : 事 故 現 場 の 状 況 を 正 確 に 把 握 する どの 様 な 状 態 で 事 故 品 が 使 用 されていたのか 例 ) 関 係 機 関 ( 消 費 者 センター 消 防 警 察 など)と 連 携 し できるだけ 多 くの 客 観 的 情 報 を 入 手 する 現 物 : 事 故 品 を 確 保 し 直 接 観 察 する 事 故 品 のどこにどの 様 な 不 具 合 が 生 じたのか 例 ) 破 断 の 起 点 を 特 定 する 破 壊 モード( 脆 性 延 性 疲 労 )を 特 定 する 現 実 : 事 故 品 に 起 こった 化 学 的 物 理 的 変 化 を 把 握 する 事 故 品 にどの 様 な 変 化 が 生 じているのか 例 ) 分 子 の 構 造 変 化 を 特 定 する 分 子 のモルフォロジー 変 化 を 特 定 する 事 故 原 因 解 析 の 基 本 は 三 現 主 義 である ( 現 場 現 物 現 実 ) 14
2.NITEにおけるプラスチックの 事 故 原 因 解 析 手 法 について (2) 観 察 ア. 種 類 光 学 顕 微 鏡 (マイクロスコープ) 観 察 電 子 顕 微 鏡 (SEM) 観 察 X 線 CT イ. 分 かること 破 壊 モード( 脆 性 延 性 疲 労 ) 異 物 の 有 無 成 形 品 内 部 の 状 態 マイクロスコープ SEM X 線 CT 15
2.NITEにおけるプラスチックの 事 故 原 因 解 析 手 法 について (3) 化 学 分 析 ア. 種 類 赤 外 線 吸 収 スペクトル 分 析 (FT-IR) 蛍 光 X 線 分 析 (XRF SEM-EDX) ガスクロマトグラフー 質 量 分 析 (GC-MS) 液 体 クロマトグラフー 質 量 分 析 (LC-MS) イ. 分 かること 化 学 構 造 含 有 元 素 や 含 有 物 質 FT-IR XRF GC-MS LC-MS 16
2.NITEにおけるプラスチックの 事 故 原 因 解 析 手 法 について (4) 熱 分 析 ア. 種 類 示 差 走 査 熱 量 測 定 (DSC) 吸 発 熱 量 を 測 定 熱 重 量 測 定 (TGA) 重 量 変 化 を 測 定 熱 機 械 測 定 (TMA) 寸 法 変 化 を 測 定 イ. 分 かること DSC: 融 解 結 晶 化 ガラス 転 移 点 などの 相 転 移 や 酸 化 分 解 などの 化 学 変 化 など TGA: 組 成 や 分 解 温 度 など TMA: 膨 張 率 や 軟 化 点 など DSC TGA TMA 17
2.NITEにおけるプラスチックの 事 故 原 因 解 析 手 法 について (5) 力 学 評 価 ア. 種 類 引 張 圧 縮 試 験 機 (オートグラフ) イ. 分 かること 応 力 ーひずみ 特 性 降 伏 点 ( 強 度 ) 破 断 ひずみ 弾 性 率 オートグラフ 応 力 (MPa) 降 伏 点 破 断 ひずみ(%) 18
NITEにおけるプラスチックの 事 故 原 因 解 析 手 法 まとめ 事 故 原 因 解 析 の 基 本 は 三 現 主 義 ( 現 地 現 物 現 実 )である 観 察 により 破 断 の 起 点 及 び 破 壊 モード( 脆 性 延 性 疲 労 )を 特 定 する 化 学 分 析 熱 分 析 及 び 力 学 評 価 により 事 故 品 で 起 こった 化 学 的 物 理 的 変 化 を 特 定 する 得 られた 情 報 とデータから 総 合 的 に 判 断 し 事 故 原 因 を 特 定 する 19
3.プラスチックの 事 故 原 因 解 析 事 例 について 20
(1)チップスメーカー( 電 子 レンジ 用 )の 発 火 事 例 事 故 の 概 要 チップスメーカーを 使 用 していたところ 電 子 レンジ 内 で 発 火 した チップスメーカー スライスしたジャガイモを 載 せて 電 子 レンジで 加 熱 するとポテトチップスができる 電 子 レンジ 中 で 発 火 ( 再 現 試 験 ) 発 火 源 骨 組 みとなるプラスチック 製 リングが 発 火 した 発 火 の 原 因 を 究 明 する 21
再 現 試 験 結 果 チップスメーカーを 電 子 レンジで 加 熱 (600W10 分 ) 後 にプラスチック 製 リングを 取 り 外 して 観 察 した プラスチック 製 リングを 電 子 レンジで 加 熱 すると 軟 化 溶 融 した プラスチック 製 リングは 二 社 から 仕 入 れられており 不 具 合 が 起 こるのは 一 方 に 偏 っていた 本 体 内 側 リング プラスチック 製 のリング 本 体 (シリコーンゴム) 電 子 レンジ 中 で 軟 化 溶 融 22
二 社 のプラスチック 製 リングの 比 較 FT-IRによる 分 析 結 果 A 社 ( 不 具 合 なし) B 社 ( 不 具 合 あり) 4000 3500 3000 2500 2000 波 数 (cm-1) 1500 1000 500 両 者 ともプラスチックはポリプロピレン(PP)である 23
二 社 のプラスチック 製 リングの 比 較 マイクロスコープによる 観 察 結 果 内 容 A 社 ( 不 具 合 なし) B 社 ( 不 具 合 あり) 断 面 全 体 断 面 の 写 真 黒 色 の 粒 子 異 物 ガラス 繊 維 黒 色 の 粒 子 灰 化 物 (600 で 加 熱 ) ガラス 繊 維 粉 体 A 社 とB 社 で 組 成 が 異 なっている 24
熱 重 量 測 定 (TGA)による 組 成 分 析 TG(%) 120 100 80 60 40 20 二 社 のプラスチック 製 リングの 比 較 窒 素 空 気 0 0 0 20 40 60 80 100 120 140 時 間 ( 秒 ) 120 100 80 800 A 社 試 料 A 社 B 社 B 社 窒 素 空 気 600 400 200 800 600 温 度 ( ) ポリマー 有 機 低 分 子 92.1 98.2 無 機 物 7.9 0.5 カーボンブラック 0 1.3 カーボンブラックの 減 少 単 位 :% TG(%) 60 40 20 0 400 200 0 0 20 40 60 80 100 120 140 時 間 ( 秒 ) 温 度 ( ) 80 100 120 A 社 とB 社 で 組 成 が 異 なっている 25
二 社 のプラスチック 製 リングの 比 較 蛍 光 X 線 (XRF)による 断 面 の 分 析 結 果 内 容 A 社 ( 不 具 合 なし) B 社 ( 不 具 合 あり) 元 素 の 比 率 (Na 以 上 の 元 素 ) 断 面 全 体 ケイ 素 :51% 硫 黄 :4% カルシウム:37% チタン:3% 鉄 :5% ケイ 素 :8% 硫 黄 :9% カルシウム:3% チタン:80% 異 物 ケイ 素 :86% カルシウム:14% ケイ 素 : 9% 硫 黄 :47% カルシウム:12% チタン:32% A 社 は ケイ 素 とカルシウムが 多 い ガラス 繊 維 が 多 く 含 まれている B 社 は チタンが 多 い チタンを 配 合 する 目 的 は 不 明 B 社 の 異 物 は 硫 黄 が 多 く 含 まれている 26
二 社 のプラスチック 製 リングの 比 較 電 子 顕 微 鏡 による 断 面 の 分 析 結 果 (SEM-EDX) 内 容 A 社 ( 不 具 合 なし) B 社 ( 不 具 合 あり) SEM チタンの 分 布 EDX ケイ 素 の 分 布 A 社 のSi(ガラス 繊 維 の 主 成 分 )は 全 体 に 分 布 している B 社 のTiは 局 所 的 に 凝 集 している PP 重 合 時 の 触 媒 残 渣 ではないと 推 定 する 27
電 子 レンジ 対 応 として 販 売 されている 成 形 品 の 確 認 電 子 レンジ 対 応 の 弁 当 箱 にガラス 繊 維 が 含 まれているか 確 認 した 試 料 1 2 3 4 灰 化 前 灰 化 後 試 料 5 6 7 灰 化 前 灰 化 後 いずれもガラス 繊 維 を 含 んでいない ガラス 繊 維 の 含 有 と 発 火 に 関 連 はない 28
A 社 とB 社 の 配 合 について 考 察 (1) A 社 は ガラス 繊 維 を 配 合 している ガラス 繊 維 は 骨 格 の 役 目 を 果 たすため 加 熱 時 にPPの 熱 変 形 を 抑 える 効 果 があるものと 考 える (2) B 社 は チタンと 黒 色 の 粒 子 を 配 合 している プラスチックへ 配 合 するチタンは 白 色 顔 料 の 酸 化 チタン(TiO 2 )が 一 般 的 だが 当 該 品 のPP 製 リングは 黒 色 なので 白 色 顔 料 を 入 れる 意 味 がない 調 査 の 結 果 下 記 の 知 見 が 得 られた 1チタン 系 の 黒 色 顔 料 が 存 在 する ( 化 学 構 造 は TiO 2 TiNやTiO 2-n などの 化 学 構 造 である ) 2チタンを 含 有 する 材 料 にマイクロ 波 を 照 射 すると 発 熱 しやすくなる ( 伊 浜 啓 一 稲 垣 順 一. 三 重 県 工 業 研 究 所 研 究 報 告 35:86-91(2011)) 3 石 炭 や 木 炭 を 粉 砕 した 粉 炭 と 呼 ばれる 添 加 剤 が 存 在 する ( 石 炭 や 木 炭 は 硫 黄 を 多 く 含 有 している ) 推 定 事 故 原 因 PPリング 中 のチタンがマイクロ 波 により 発 熱 急 激 な 温 度 上 昇 により 異 物 が 発 火 PPに 着 火 29
PPへチタン 顔 料 を 添 加 した 際 の 電 子 レンジ 耐 性 狙 い: プラスチックにチタンを 含 有 すると 電 子 レンジ 耐 性 がどの 程 度 変 化 するかを 確 認 する 試 料 1:PPのみ ( 住 友 化 学 ノーブレン Y501N) 2:1にチタン 系 白 色 顔 料 (ルチル 型 の 酸 化 チタン)を5% 添 加 3:1にチタン 系 黒 色 顔 料 (チタンブラック)を5% 添 加 4:1にチタン 系 黒 色 顔 料 (ティラックD)を5% 添 加 1 2 3 4 実 験 試 料 1から4を 電 子 レンジで 処 理 (700W)し 発 煙 が 始 まるまでの 時 間 を 比 較 した 結 果 試 料 1 2 3 4 発 煙 までの 時 間 ( 分 ) 12 9 6 5 チタンを 含 有 すると 発 煙 までの 時 間 が 短 くなる 30
チップスメーカー( 電 子 レンジ 用 )の 発 火 事 例 今 回 の 解 析 から 得 られた 注 意 点 1プラスチックにチタンが 入 っていると 電 子 レンジで 加 熱 した 際 に より 短 時 間 で 発 煙 発 火 に 至 る 電 子 レンジ 用 途 でチタン 入 りのプラスチックを 使 用 する 際 は 注 意 が 必 要 である 2 部 品 は 仕 入 れ 先 によって 配 合 が 異 なる 部 品 の 承 認 時 は 十 分 な 安 全 性 の 確 認 とともに 製 造 元 の 性 能 確 認 書 やサイレントチェンジ( 黙 って 変 更 )を 防 止 する 為 の 契 約 書 も 必 要 である 31
(2)スチームクリーナーの 破 損 事 例 事 故 の 概 要 スチームクリーナーを 使 用 していたところホース 接 続 部 のノズルが 折 れ 噴 出 した 蒸 気 で 火 傷 を 負 った 折 損 不 具 合 部 位 本 体 とホースを 接 続 するノズル 折 損 の 原 因 を 究 明 する 32
再 現 試 験 結 果 事 業 者 にて 同 等 品 を 使 用 した 再 現 試 験 を 実 施 項 目 静 的 試 験 動 的 試 験 試 験 条 件 試 料 数 ( 個 ) 平 均 強 度 (N) 1 初 期 品 の 破 壊 試 験 を 実 施 300 442 2 3 蒸 気 を15 分 間 通 気 15 分 間 停 止 を1サイクル として312サイクル 実 施 後 に 破 壊 試 験 を 実 施 (6 回 / 週 1 年 間 の 使 用 を 想 定 ) 常 時 蒸 気 を 通 気 した 状 態 で30Nの 荷 重 を 46800 回 繰 り 返 し 負 荷 後 に 破 壊 試 験 を 実 施 (25 回 / 日 6 回 / 週 6 年 間 の 使 用 を 想 定 ) 10 359 5 233 強 度 の 規 格 値 :200N 以 上 再 現 試 験 の 結 果 実 使 用 上 の 耐 久 性 は 十 分 であった 33
ノズルの 観 察 延 性 破 壊 外 観 に 異 常 なし 根 元 で 折 れている 脆 性 破 壊 周 囲 は 脆 性 破 壊 で 内 部 は 延 性 破 壊 推 定 1 何 らかの 衝 撃 負 荷 により 周 囲 が 損 傷 したが 内 部 は 繋 がっていた 2 継 続 使 用 により 内 部 に 大 きな 静 荷 重 がかかり 破 損 に 至 った 34
X線CTによる事故品ノズル内部の観察 断面 断面 ① ③ ② ① ② ③ 亀裂 ④ ⑤ ④ ⑤ ⑥ ⑥ ⑦ ⑧ ⑨ ⑦ ⑧ ⑨ ノズルの穴に広範囲で亀裂が生じている 内側の穴周囲に空隙が多い 35
X 線 CTによる 同 等 品 ノズル 内 部 の 観 察 断 面 1 断 面 2 3 4 1 2 3 4 5 6 7 5 6 7 8 9 10 8 9 10 11 11 ノズルの 穴 に 亀 裂 は 生 じていない ノズルの 広 範 囲 に 空 隙 が 生 じている 36
事故品と同等品の元素分析 SEM EDX 手法 SEM EDXによる EDXによる元素分布 による元素分布 炭素 ケイ素 事故品 同等品 事故品と同等品にはガラス繊維が入っている 37
事 故 品 と 同 等 品 のFT-IRによる 比 較 NH 同 等 品 事 故 品 C(O)NH 4000 3500 3000 2500 2000 波 数 (cm -1 ) 1500 材 質 は ポリブチレンテレフタレート(PBT)である 事 故 品 は PBTに 加 えてナイロンの 吸 収 も 出 ている 1000 500 38
スチームクリーナーの 破 損 事 例 今 回 の 解 析 から 得 られた 注 意 点 1プラスチック 部 品 は 外 観 に 問 題 がなくても 内 部 に 異 常 が 生 じている 場 合 がある 2 部 品 は 定 期 的 な 抜 き 取 り 確 認 が 必 要 である サイレントチェンジ( 黙 って 変 更 )されると 要 求 特 性 が 満 たされなくなる 39
全 体 のまとめ 1. プラスチックの 基 礎 と 劣 化 について 高 分 子 でできており 温 度 によって 特 性 が 変 化 する 様 々な 要 因 で 劣 化 することは 避 けられない 2. NITEにおけるプラスチックの 事 故 原 因 解 析 手 法 について 事 故 原 因 解 析 の 基 本 は 現 場 現 物 現 実 の 三 現 主 義 である 事 故 原 因 解 析 は 観 察 化 学 分 析 熱 分 析 及 び 力 学 評 価 から 総 合 的 に 行 っている 3. プラスチックの 事 故 原 因 解 析 事 例 について 使 用 環 境 に 適 した 材 料 を 使 用 することで 事 故 のリスクが 下 がる 量 産 移 行 後 も 設 計 どおりの 仕 様 を 維 持 することで 事 故 のリスクが 下 がる 定 期 的 な 抜 き 取 り 検 査 で 確 認 することが 大 切 である 我 々NITEは 製 品 事 故 をなくすために 総 力 を 挙 げて 取 り 組 んでいます 今 後 も 皆 様 の 御 支 援 御 協 力 をいただけますよう よろしくお 願 いいたします 40
御 清 聴 いただき ありがとうございました 製 品 安 全 技 術 課 41