恋 愛 小 説 において 物 語 を 特 徴 づける 表 現 タイトルと 帯 に 見 られる 表 現 分 析 の 試 み 加 藤 祥, 浅 原 正 幸 読 み 手 に 類 似 していると 判 断 される 物 語 群 であっても, 語 彙 が 等 しいのではない.また,ある 物 語 に 特 徴 的 な 表 現 の 抽 出 は 困 難 である.しかし, 物 語 を 特 徴 づける 重 要 な 情 報 は 読 み 手 の 欲 しい 情 報 でもあり, 販 売 を 意 図 する 商 業 目 的 としても,タイトルとともに 読 み 手 の 目 につく 帯 に 掲 載 されている 可 能 性 がある. 本 稿 では,ストー リーが 固 定 的 な 恋 愛 小 説 のタイトルとその 帯 情 報 を 収 集 し, 帯 に 記 載 されたごく 短 い 文 に,その 物 語 に 関 する 情 報 がどのように 表 現 されるのか 調 査 し, 物 語 の 特 徴 づけに 肝 要 と 考 えられる 要 素 の 抽 出 を 目 指 した. 結 果, 登 場 人 物 属 性 に 関 する 情 報 が, 主 に 帯 において 一 二 人 称 や 役 割 語 ( 助 動 詞 終 助 詞 ) 職 業 名 等 のような 特 徴 語 を 含 む 発 話 形 式 で, 凝 縮 して 現 れる 傾 向 が 明 らかになった.また, 帯 に 現 れる 特 徴 語 は 本 文 の 出 現 頻 度 が 高 いの ではないが, 文 書 間 類 似 度 が 高 い 本 文 の 帯 では, 同 種 の 特 徴 語 が 見 られる 傾 向 があった. 1
中 国 人 日 本 語 学 習 者 の ケド 言 いさし 文 の 運 用 に 関 する 調 査 ポライトネスの 視 点 から 燕 興, 伝 康 晴 日 本 語 母 語 話 者 は, 日 常 会 話 においてしばしば 接 続 助 詞 ケド で 言 い 終 わる 文 を 使 うことがある. 例 えば, 会 議 がもう 始 まるそうですけど などである.このような 文 は 一 見 不 完 全 なのに, 情 報 を 伝 達 する 上 では 完 全 文 と 同 じ 機 能 を 果 たしている. 普 段, 日 本 語 母 語 話 者 は 察 し を 当 たり 前 のこととして 受 け 入 れているため, 相 手 の 言 語 化 されていない 意 図 を 読 み 取 ることができる.しかし, 母 語 話 者 に 相 当 する 言 語 背 景 を 備 えていない 外 国 人 日 本 語 学 習 者 にとって, ケド 言 いさし 文 を 適 切 に 使 用 するのは 困 難 である. 本 調 査 では,ポライトネスの 視 点 から, ケド 言 いさし 文 が 有 する 社 会 言 語 学 的 な 効 果 について, 日 中 間 の 認 識 差 異 を 検 討 した.その 結 果, 中 国 人 日 本 語 学 習 者 は ケド 言 いさし 文 と 終 助 詞 で 終 わる 文 との 使 い 分 けが 問 題 であり,それにはポライトネス 理 論 でいう 話 し 手 と 聞 き 手 との 社 会 的 距 離 と 聞 き 手 と 話 し 手 の 相 対 的 権 力 が 関 わっていた. 2
依 頼 表 現 における 呼 びかけ 語 の 分 析 東 出 朋 本 稿 は 依 頼 表 現 において, 不 特 定 多 数 の 中 からある 特 定 の 人 に 対 して 呼 びかける 呼 びかけ 語 を 中 心 に,その 統 語 的, 意 味 的 条 件 を 解 明 することを 目 的 とする. 先 行 研 究 では, 呼 びかけ 語,ハ, 無 助 詞 のいずれも 何 らかの 近 接 性 を 持 っており, 呼 びかけ 語 の 定 義 の 困 難 さを 示 している.1 話 し 手 がハを 用 いずに 呼 びかけ 語 として 曖 昧 に 提 示 しておくことは, 聞 き 手 に 後 続 発 話 を 主 体 的 に 解 釈 する 余 地 を 与 え, 話 し 手 にとって 都 合 が 良 い.2 呼 び かけ 語 である 場 合 後 置 が 比 較 的 容 易 であるが,ハで 題 目 提 示 した 場 合 は 後 置 が 困 難 である.3 統 語 的 特 徴 と して, 呼 びかけ 語 とそれが 動 作 主 体 となる 命 題 部 分 が 隣 り 合 っていない 場 合 はハを 入 れることができない.4 発 話 の 意 図 として, まさに+Xに 呼 びかけている ことを 話 し 手 が 重 視 している 場 合 は 呼 びかけ 語 として 発 話 され るのに 対 し,+Xを 純 粋 に 命 題 の 主 題 として 提 示 したいと 話 し 手 が 考 える 場 合 ( 特 に 行 政 の 書 類 等 )はハを 用 い る. 3
多 言 語 活 動 実 践 世 界 へのまど 小 学 生 への 多 言 語 多 文 化 への 気 づきを 促 す 試 み 豊 田 美 穂, 林 友 希, 木 原 香 菜 恵 本 研 究 の 目 的 は, 多 言 語 空 間 や 研 究 授 業 を 通 して, 公 立 小 学 校 に 通 う 児 童 の 多 言 語 多 文 化 への 気 づきを 促 すことである. 世 界 には 数 多 くの 言 語 や 文 化 が 互 いに 関 わり 合 って 存 在 していることを 学 んでもらうために, 神 奈 川 県 内 の 公 立 小 学 校 で, 約 2 年 間 をかけて 取 り 組 んで 来 た. 小 学 校 の 廊 下 の 一 角 に 設 置 した 多 言 語 空 間 は, 児 童 が 気 軽 に 多 言 語 多 文 化 に 触 れることができる 空 間 とな り, 児 童 の 多 言 語 多 文 化 への 気 づきを 促 すと 同 時 に, 既 に 知 っていることと 知 らないことを 区 別 したり, 推 測 能 力 を 育 むことができた. 研 究 授 業 では,41もの 言 語 による 挨 拶 に 触 れられるゲームを 通 して, 言 語, 文 化 の 多 様 性 を 知 るなどの 効 果 が 得 られた.このような 取 り 組 みを 広 めることで, 多 くの 人 が 広 い 視 野 を 持 ち, 多 様 な 言 語 文 化 を 認 めあう 社 会 を 実 現 したい. 4
アメリカ 英 語 を 起 源 とする 英 語 イディオムの 生 い 立 ち そのニュアンスと 使 い 方 小 山 内 大 アメリカを 起 源 とする 英 語 イディオムは 概 ね18 世 紀 の 西 部 開 拓 時 代 から 英 語 圏 に 広 まり 始 めたが, 第 1 次 大 戦 以 来, 国 際 社 会 での 米 国 の 政 治 的 な 優 位 性 と 共 に,アメリカ 製 の 大 衆 文 化 の 世 界 的 な 広 がりが 米 国 を 起 源 とす る 英 語 イディオムの 汎 用 と 密 接 に 繋 がっている. 20 世 紀 初 頭 までは, 米 国 は 文 化 的 な 後 進 国 と 見 なされていたが,50 年 代 以 降 の 大 量 消 費 社 会 とテレビ 時 代 の 到 来 と 共 に,ハリウッド 映 画 ジャズやポップなど 米 国 発 の 大 衆 文 化 は 世 界 的 なサブカルチャーに 多 大 な 影 響 を 及 ぼして 来 た.さらにパソコン 等 の 米 国 主 導 の 技 術 革 新 によって,アメリカ 発 の 英 語 は, 既 存 のイギリス 英 語 に 取 って 代 わるスタンダードとしての 役 割 を 果 たして 来 た. 本 ポスター 発 表 では 米 国 を 起 源 として 英 語 圏 で 大 衆 化 したイディオムを 取 り 上 げ,それぞれの 成 り 立 ちを 歴 史 的 社 会 的 な 背 景 と 共 に 説 明,さらに 細 かなニュアンス 等 を 含 め, 実 際 のネイティブの 使 い 方 を 会 話 文 の 中 で 紹 介 する. 5
指 示 語 とジェスチャーが 指 し 示 すモノ 指 示 語 とそれに 同 期 する しないジェスチャーの 関 係 川 上 ゆか 話 し 手 は 主 題 となるものを 特 定 するため 或 いは 場 所 や 方 向 を 示 すために これ や あそこ などの 指 示 語 と 同 期 して 直 示 的 ジェスチャーをすることが 多 い.これは 何 について 話 しているのかを 明 確 にするためになされるが, こんな や こう などの 指 示 語 と 同 期 するのは 映 像 的 ジェスチャーが 大 半 である.これは 指 示 語 の 次 に 来 る 発 話 されるはずのモノの 形 や 動 きを 表 すためになされるが,その 発 話 がなされずにジェスチャーだけで 情 報 伝 達 が 行 われることもある. 本 発 表 では 会 話 分 析 の 手 法 を 用 い, 指 示 語 とそれに 同 期 するジェスチャーの 関 係 とその 相 互 行 為 における 働 き,また 指 示 語 とは 同 期 しない 直 示 的 ジェスチャーの 機 能 に 焦 点 を 置 き, 日 本 人 の1) 複 数 の 友 人 同 士 の 会 話, 2) 初 対 面 の 対 話,3) 学 会 発 表 のデータの 観 察 分 析 を 行 うことで, 指 示 語 とそれに 同 期 する/しないジェスチャー の 指 向 性 について,またジェスチャーの 発 話 促 進 効 果 について 明 らかにする. 6
言 われのない 非 難 場 面 における 謝 罪 の 意 識 と 言 語 行 動 ビジネス 場 面 における 日 本 人 社 会 人 日 本 人 学 生 の 比 較 から 末 田 美 香 子 本 研 究 では, 相 手 の 誤 解 や 交 通 機 関 の 遅 れ 等 の 外 的 要 因 に 基 づく 言 われのない 非 難 に 対 しても 従 来 の 先 行 研 究 の 指 摘 のような 日 本 人 は 謝 罪 や 配 慮 が 多 く, 婉 曲 な 言 い 方 が 好 まれる という 傾 向 が 当 てはまるのかと いう 疑 問 のもとに,ビジネス 場 面 における 言 われのない 非 難 に 対 する 言 語 行 動 について, 日 本 人 社 会 人, 及 び 日 本 人 学 生 を 対 象 に 談 話 完 成 テストによる 意 識 調 査 を 行 った. その 結 果, 謝 罪 表 現 は 社 会 人, 学 生 ともに 少 ないとは 言 えず, 日 本 人 は 謝 罪 を 多 く 行 うという 従 来 の 先 行 研 究 の 指 摘 が 当 てはまった.また, 社 会 人 と 学 生 の 対 処 法 も 異 なり, 社 会 人 は 今 後 の 問 題 の 解 決 策 に 重 点 を 置 く 方 向 で 対 処 するが, 学 生 はお 客 のポジティブフェイスを 最 大 限 に 保 つ 方 向 で 対 処 する 傾 向 が 見 られた. 7
英 語 と 米 語 の 会 話 パターンの 対 照 分 析 アメリカ 人 の 埋 め 草 表 現 の 多 用 塚 本 亜 美 過 去 に 収 録 した 談 話 を 分 析 して, 他 の 国 籍 の 英 語 話 者 と 比 べると,アメリカ 人 の 方 が 頻 繁 にlikeという 埋 め 草 表 現 を 使 っていることに 気 付 いた.そこで, 筆 者 は 集 積 した 談 話 データの 中 からアメリカ 人 とイギリス 人 の 発 言 を 抽 出 して, 両 者 の 会 話 パターンの 特 徴 を 比 較 してみることにした.likeは 話 者 が 発 言 内 容 の 考 えをまとめるため の 言 葉 である. 原 稿 に 起 こした 談 話 を 読 んで, 英 語 話 者 たちがlikeをどれだけ 使 用 していたかを 調 べた. 結 果 を 見 ると, 総 体 的 にはアメリカ 人 話 者 の 方 がイギリス 人 話 者 よりも, 多 くlikeを 使 用 しているが, 西 海 岸 出 身 の 女 性 話 者 の 使 用 頻 度 だけが 突 出 している.2013 年 のワシントンポストの 記 事 によると,likeの 多 用 は ヴァリーガー ル と 呼 ばれる 若 い 女 性 に 特 有 のしゃべり 方 であると 指 摘 がある.したがって 米 語 の 埋 め 草 表 現 の 使 用 には, 性 別 や 年 代 もからんでくることが 推 察 される. 8
8 号 館 7F 872 教 室 パブリック スピーチにおけるエピソードの 構 築 方 法 の 日 英 語 比 較 研 究 文 化 によって 異 なる 好 まれる 話 し 方 櫻 田 怜 佳 本 研 究 発 表 は,TED Talksというスピーチイベントの 映 像 をデータとして, 日 本 語 母 語 話 者 と 英 語 母 語 話 者 (ア メリカ 人 )の 行 うパブリック スピーチにおけるエピソードの 構 築 方 法 を 比 較 し,スピーチにおいて 重 視 される 特 徴 やその 背 景 にある 文 化 的 概 念 を 考 察 することを 目 的 とする.アメリカ 人 のスピーチは 序 論 本 論 結 び の 三 部 で 構 成 され, 論 旨 は 序 論 で 提 示 される. 一 方, 日 本 人 のスピーチは 序 破 急 で 構 成 され, 論 旨 は 後 半 に 提 示 さ れる. 日 本 式 の 序 破 急 の 構 成 は, 論 旨 をはじめに 提 示 する 構 成 を 好 むアメリカ 人 から 遠 回 りで 曖 昧 である と 評 価 されることが 多 くある. 日 本 人 は 何 故, 序 破 急 の 構 成 を 好 んで 用 いるのだろうか. 本 研 究 発 表 では, 日 本 人 が 重 視 する 序 破 急 成 就 の 概 念 に 触 れながら, 日 英 語 のエピソードの 積 み 重 ね 方 の 相 違 の 根 底 にある 文 化 的 概 念 を 論 じた 上 で, 今 後 日 本 人 が 行 うべきパブリック スピーチでの 話 し 方 を 検 討 したい. 9
8 号 館 7F 872 教 室 英 語 小 説 に 見 られる 自 由 間 接 話 法 のコンテクストに 関 する 一 試 論 溝 上 瑛 梨 自 由 間 接 話 法 とは, 主 に 小 説 で 使 用 される 作 中 人 物 の 発 話 思 考 を 表 象 する 手 法 である. 先 行 研 究 は 視 点 の 所 在, 機 能, 文 法 的 特 徴 に 注 目 したものがほとんどで, 周 辺 コンテクストはあまり 議 論 されてこなかった.そこで 本 研 究 は, 英 語 小 説 中 の 自 由 間 接 話 法 の 周 辺 コンテクスト, 主 に 当 該 自 由 間 接 話 法 の 前 の 文 脈 の 分 類 を 試 み た. 英 語 で 書 かれた 小 説 から 自 由 間 接 話 法 部 分 とその 周 辺 部 を 抽 出 し,(a) 状 況 説 明,(b) 思 考 心 情,(c) 知 覚, (d) 会 話 の4つに 分 類 した.この 結 果 を 考 察 すると,(a) 以 外 は 発 話 思 考 が 表 出 される 作 中 人 物 の 認 知 活 動 が 関 わっていると 言 える. 認 知 活 動 が 描 かれるということは,その 人 物 の 視 点 に 入 り,その 人 物 の 思 考 を 通 して 描 写 するということである.つまり, 語 り 手 から 作 中 人 物 への 視 点 の 移 動 は 自 由 間 接 話 法 部 より 前 から 始 まっている のだ.よって, 自 由 間 接 話 法 の 視 点 の 決 定 は, 周 辺 コンテクストまで 含 めて 検 討 する 必 要 があると 指 摘 できるだ ろう. 10
8 号 館 7F 872 教 室 駅 員, 車 椅 子 利 用 者, 介 助 者 による 相 互 行 為 における 会 話 進 行 と 参 加 の 組 織 化 柳 町 智 治, 稲 垣 里 嶺, 田 実 潔 本 研 究 では, 脳 性 麻 痺 の 車 椅 子 利 用 者 が 駅 のカウンターで 乗 車 券 を 購 入 している 場 面 を 分 析 する. 分 析 と 考 察 の 焦 点 は 以 下 の2 点 である.(1) 駅 員, 車 椅 子 利 用 者, 介 助 者 の3 者 は, 駅 員 と 車 椅 子 利 用 者 の2 者 によって 乗 車 券 の 販 売 と 購 入 が 達 成 されることに 志 向 している 一 方 で, 駅 員 あるいは 車 椅 子 利 用 者 が 相 手 の 視 線 を 得 ら れないことがあると, 手 を 伸 ばす 介 助 者 に 駅 員 がお 釣 りを 渡 そうとするなど, 会 話 の 進 行 の 滞 りを 最 小 限 にする ことを 優 先 させることがある,(2) 介 助 者 が 言 語, 非 言 語 行 動 を 通 して 駅 員 と 車 椅 子 利 用 者 のやりとりに 冒 頭 から 参 加 することもあり,その 場 合, 駅 員 は 上 体 と 顔 は 車 椅 子 利 用 者 の 方 へ 向 け, 視 線 だけ 介 助 者 に 送 りながら 介 助 者 と 会 話 するなど,3 者 による 相 互 行 為 への 参 加 を 調 整 しつつその 場 の 活 動 を 組 織 しようとする. 本 発 表 では 以 上 の 点 について,ビデオデータの 文 字 化 資 料 と 画 像 をもとに 検 討 を 行 っていく. 11
8 号 館 7F 872 教 室 テレビドラマからみた 感 謝 場 面 における 日 タイ 語 の 言 語 行 動 表 現 の 種 類 を 中 心 に KAWEEJARUMONGKOL SALILRAT, 上 原 聡 本 稿 ではテレビドラマの 資 料 を 用 い, 感 謝 場 面 における 日 タイ 語 の 表 現 の 種 類 の 異 同 を 考 察 した. 研 究 方 法 と しては, 日 タイ 語 の 意 味 公 式 の 分 類 を 行 った 上 で, 上 下 関 係 と 相 手 にとっての 負 担 度 による 両 言 語 の 表 現 の 種 類 への 影 響 を 考 察 した.その 結 果, 感 謝 場 面 において, 日 本 語 では, 上 下 関 係 の 影 響 で, 主 にネガティブ ポラ イトネスが 発 動 され, 相 手 が 親 しい 目 上 の 場 合, すみません の 恐 縮 や 申 し 訳 ない 気 持 ちの 表 明 のようなネ ガティブ ポライトネスの 属 性 を 持 っている 表 現 が 好 まれる 傾 向 にある. 一 方,タイ 語 では, 相 手 にとっての 負 担 の 度 合 の 影 響 で, 主 にポジティブ ポライトネスが 発 動 され, 感 謝 の 気 持 ちの 表 明, 相 手 の 行 為 の 言 及, 相 手 へのプラス 評 価 の 言 及 のようなポジティブ ポライトネスの 属 性 を 持 っている 表 現 の 種 類 が 好 まれる 傾 向 にあ る. 12
8 号 館 7F 872 教 室 相 互 行 為 における 身 体 同 期 協 調 のメカニズム じゃんけん 課 題 における 検 討 児 玉 謙 太 郎, 牧 野 遼 作, 末 崎 裕 康, 阿 部 廣 二 本 発 表 では,マルチモーダルな 相 互 行 為 における 参 与 者 間 の 身 体 同 期 協 調 のメカニズムを 検 討 するために 実 施 した 予 備 実 験 の 結 果 を 報 告 する. 本 研 究 では, 身 体 同 期 協 調 のメカニズムを 巡 る2つのアプローチの 仮 説 を 検 証 するため, 実 験 課 題 として じゃんけん を 用 いる.じゃんけんでは, 参 与 者 の 発 する 音 声 を 聴 く, 身 体 の 動 きを 見 る,といった 視 聴 覚 情 報 を 利 用 し, 行 為 の 最 終 段 階 で 身 体 を 同 期 させることが 前 提 となっている. 個 人 間 での 身 体 同 期 のメカニズムを 巡 り, 近 年, 心 理 学 認 知 科 学 分 野 では 認 知 的 アプローチと 力 学 系 アプローチによ る 議 論 が 展 開 している. 本 研 究 では, 行 為 の 過 程 における 参 与 者 間 のリアルタイムの 相 互 作 用 の 存 在 に 着 目 し, 実 験 的 統 制, 身 体 動 作 の 時 系 列 解 析 を 用 い, 少 数 データでの 事 例 的 分 析 を 行 った.その 結 果, 参 与 者 間 で 知 覚 情 報 を 介 したリアルタイムでの 相 互 作 用 が 存 在 し, 身 体 の 同 期 協 調 に 影 響 を 及 ぼす 可 能 性 が 示 唆 され た. 13
8 号 館 7F 872 教 室 漫 画 から 見 た 日 本 語 とタイ 語 の 自 称 詞 の 対 照 研 究 役 割 語 における 一 人 称 代 名 詞 を 中 心 に SIRIACHA ROYKAEW, 上 原 聡 本 研 究 は 日 本 語 原 作 の 漫 画 とそのタイ 語 版 を 資 料 とし, 役 割 語 を 中 心 に 日 本 語 の 自 称 詞 がどのように 訳 され るのかを 調 べ, 両 言 語 の 自 称 詞 の 共 通 点 と 相 違 点 を 分 析 した.その 結 果, 自 称 詞 のうち 一 人 称 代 名 詞 について は, 日 本 語 では, 話 し 手 のイメージによって 一 人 称 代 名 詞 が 変 わり, 典 型 的 な 役 割 語 が 多 い.これに 対 し,タイ 語 では 時 代, 性 別 を 区 別 する 一 人 称 代 名 詞 があるが, 日 本 語 ほど 役 割 語 度 が 高 くなく, 典 型 的 な 役 割 語 が 少 ないと 分 かった.また, 両 言 語 とも, 親 族 名 称 を 自 称 詞 として 使 用 できるが, 日 本 語 では 下 位 者 である 聞 き 手 が 成 長 すると, 話 し 手 はそれに 合 わせて 親 族 名 称 の 代 わりに 代 名 詞 に 移 行 する 傾 向 があるが,タイ 語 では 聞 き 手 の 年 齢 を 問 わず, 親 族 名 称 を 自 称 詞 として 使 用 できるため,タイ 語 訳 では 日 本 語 原 作 より 親 族 名 称 が 使 用 され る 傾 向 がある. 14
8 号 館 7F 872 教 室 国 会 における 首 相 発 言 の 形 式 的 特 徴 の 分 析 唐 麟 源 言 語 表 現 の 安 定 性 が 損 害 されている 昨 今, 言 語 コミュニケーションに 関 する 不 安 を 緩 和 するために, 言 葉 はど のようにして 安 定 性 を 維 持 できるかという 問 題 を 検 討 する 必 要 がある.ところで, 安 定 性 を 検 討 する 前 に,その 言 語 表 現 自 体 は 如 何 なるものかを 知 る 必 要 がある.そこで, 制 度 上 に 最 も 安 定 性 の 高 いものであるべき 自 然 言 語 表 現 であり,かつ 大 量 に 利 用 可 能 な 言 語 資 料 である 首 相 による 国 会 発 言 に 注 目 する. 国 会 会 議 録 に 対 し, 形 態 素 解 析 を 行 い, 首 相 それぞれの 発 言 の 基 礎 統 計 量 と 語 彙 の 豊 かさを 計 測 し,それらの 指 標 の 経 時 推 移 を 観 察 する.(1) 発 言 形 式 には 特 徴 が 存 在 するのか,(2) 特 徴 が 存 在 するとしたら,それは 議 会 制 度 がもたらしたものな のか,(3) 特 徴 は 首 相 間 共 通 なのか,それともそれぞれ 個 性 を 出 しているのか,といった 点 を 解 明 することによ り, 首 相 の 言 語 表 現 の 安 定 性 を 検 討 するための 土 台 を 築 く. 15