所 得 からみる 経 済 的 な 格 差 の 実 態 斉 木 真 沙 江 はじめに 経 済 的 な 格 差 の 広 がりが ここ 数 年 言 われている 経 済 的 な 不 平 等 はいつの 時 代 にもあ ることで いまさらとりたてて 格 差 の 広 がりがいわれるのは 何 故 なのだろう 格 差 のある ことを 好 ましいことだとは 思 わない しかし 以 前 1 億 総 中 流 の 時 代 といわれたときと 同 じような 違 和 感 を 感 じる 言 葉 が 1 人 歩 きをしているのではないだろうか 実 態 はどう なっているのだろうか 2006 年 には 格 差 が 流 行 語 大 賞 にノミネートされた 格 差 は いまや 経 済 面 だけではなく 文 化 教 育 などの 社 会 的 な 方 面 にもひろがっているといわれ ている いまや 常 識 のようにつかわれている 経 済 的 な 格 差 の 推 移 と 現 状 をあきらかにした いと 思 っている 経 済 的 な 格 差 を 論 ずるに 際 して 主 な 基 礎 資 料 として 使 われているものがいくつかある 厚 生 労 働 省 が 行 っている 国 民 生 活 基 礎 調 査 所 得 再 分 配 調 査 賃 金 構 造 基 本 統 計 調 査 ( 賃 金 センサス) 総 務 省 の 行 っている 国 勢 調 査 家 計 調 査 全 国 消 費 実 態 調 査 な どであり それぞれ 調 査 の 目 的 や 対 象 調 査 事 項 周 期 などに 違 いや 重 複 がある 経 済 的 な 格 差 は 資 産 と 所 得 の 両 面 からみるべきだが 上 記 資 料 では 資 産 についての 調 査 内 容 は 少 ない 国 勢 調 査 全 国 消 費 実 態 調 査 では 持 ち 家 率 や 貯 蓄 高 負 債 高 を 調 査 し ているが その 資 産 価 値 まではわっかていない また 国 民 生 活 基 礎 調 査 所 得 再 分 配 調 査 では 資 産 から 得 られる 収 入 は 所 得 に 算 入 されるが 資 産 そのものは 考 慮 されていない よってここでは 所 得 面 からのみ 論 じることにする 1 所 得 について 所 得 の 推 移 を 見 てみる 表 1 各 種 世 帯 の 所 得 状 況 その 1 年 度 全 世 帯 ( 万 円 ) 勤 労 者 世 帯 ( 万 円 ) それ 以 外 の 世 帯 ( 万 円 ) 2006 552 633 461 2007 551 637 457 2008 545 638 439 2009 532 624 436 2010 519 617 420 出 所 ) 総 務 省 家 計 調 査 より 作 成 http://www.e-stat.go.jp/sg1/estat/list.do?lid=000000330512 =000001027764 =000001054435 =000001063812 =000001074017 1
注 ) 勤 労 者 世 帯 は 世 帯 主 が 会 社 などに 勤 めており それ 以 外 の 世 帯 は 世 帯 主 が 個 人 営 業 自 由 業 無 職 会 社 団 体 の 役 員 法 人 経 営 者 などである 表 2 各 種 世 帯 の 所 得 状 況 その 2 年 度 全 世 帯 ( 万 円 ) 高 齢 者 世 帯 ( 万 円 ) 児 童 のいる 世 帯 ( 万 円 ) 1995 660 317 737 1996 661 316 782 1997 658 323 767 1998 655 336 747 1999 626 329 721 2000 617 320 726 2001 602 304 727 2002 589 305 703 2003 580 291 703 2004 580 296 715 2005 564 302 718 2006 567 306 701 2007 556 299 691 2008 548 297 689 2009 550 308 697 出 所 ) 厚 生 労 働 省 平 成 17 年 国 民 生 活 基 礎 調 査 http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa05/2-1.html 厚 生 労 働 省 平 成 22 年 国 民 生 活 基 礎 調 査 http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa10/2-1.html 注 ) 児 童 のいる 世 帯 は 18 歳 未 満 の 未 婚 者 のいる 世 帯 で 高 齢 者 世 帯 は 65 歳 以 上 の 者 のみ 又 はこれに 18 歳 未 満 の 未 婚 の 者 がいる 世 帯 をいう 表 1 は 総 務 省 の 家 計 調 査 から 表 2 は 厚 労 省 の 国 民 生 活 基 礎 調 査 からみた 世 帯 当 たりの 年 間 所 得 である 多 少 の 誤 差 はあるものの 所 得 は 年 々 減 少 している 傾 向 が 見 てとれる 1990 年 代 前 半 から 現 在 まで 日 本 のGDPの 成 長 率 は 平 均 して 年 1% 程 度 である 特 に 1998 年 は 前 年 の 消 費 税 増 税 がきっかけと 言 われ GDPは 前 年 比 マイナス 2% 国 民 所 得 は 前 年 比 マイナス 3.5%と 大 きく 落 ち 込 んだ 同 年 完 全 失 業 率 もはじめて 4% 台 を 記 録 している 以 降 失 業 率 は 増 加 傾 向 にある 給 与 の 伸 び 率 がマイナスに 転 じた 年 で もある 2
やや 持 ちなおした 年 もあるとはいうものの このころから 所 得 の 減 少 というトレンド ができたようである 一 方 では 消 費 者 物 価 指 数 も 減 少 傾 向 にある 表 3 長 期 経 済 統 計 名 目 GDP 名 目 国 民 所 得 名 目 雇 用 者 完 全 失 業 率 消 費 者 物 価 年 度 前 年 比 (%) 前 年 比 報 酬 前 年 比 (%) 指 数 前 年 比 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2.4 0.6 1.0 1.4 2.0 2.1-2.1-1.4 1.1-1.0-1.3-0.2 1.6 0.7 1.1 1.6-2.0-6.1 0.8 0.2 0.1 0.4 2.2 2.2-3.5-1.1-0.6-2.2-0.8-0.5 1.0 2.2 0.6 2.2-3.8 3.3 2.2 2.0 1.8 1.4 2.3-1.3-2.0 0.5-0.7-2.4-1.5-0.9 0.8 2.0-0.6 0.7-4.0 2.2 2.5 2.9 3.2 3.4 3.4 4.1 4.7 4.7 5.0 5.4 5.3 4.7 4.4 4.1 3.9 4.0 5.1 注 ) 暦 年 を 使 用 出 所 ) 内 閣 府 [ 平 成 22 年 度 年 次 経 済 財 政 報 告 ] http://www5.cao.go.jp/j-j/wp/wp-je10/pdf/10p08011.pdf 1.6 1.3 0.7-0.1 0.1 1.8 0.6 0.3-0.7-0.7-0.9-0.3 0.0-0.3 0.3 0.0 1.4-1.4 総 所 得 についてみてきたが その 所 得 の 内 容 はどうなっているのだろうか 所 得 の 種 類 についていえば 雇 用 者 ならば 賃 金 であり 自 営 業 者 ならば 事 業 所 得 退 職 者 ならば 年 金 資 産 のある 人 は 利 子 や 配 当 地 代 家 賃 である また 生 活 困 窮 者 であれ ば 生 活 保 護 費 など 社 会 保 障 給 付 金 がある 所 得 の 内 容 がそれらによってどのような 割 合 で 構 成 されているかを 見 たのが 以 下 の 表 である 2004 年 と 5 年 後 の 2009 年 とを 比 較 してみた 3
表 4 各 種 世 帯 の 所 得 構 成 全 世 帯 高 齢 者 帯 児 童 のいる 世 帯 2004 年 2009 年 2004 年 2009 年 2004 年 2009 年 総 所 得 580 万 円 550 万 円 296 万 円 308 万 円 715 万 円 697 万 円 (100%) (100%) (100%) (100%) (100%) (100%) 稼 働 所 得 456 408 60 53 657 626 (79%) (74%) (20%) (17%) (92%) (90%) 公 的 年 金 恩 給 96 102 206 216 41 32 (17%) (19%) (70%) (70%) (6%) (5%) 財 産 所 得 13 17 13 18 7 14 (2%) (3%) (5%) (6%) (2%) 社 会 保 障 給 付 5 6 4 3 5 11 (2%) 個 人 企 業 年 金 11 16 12 18 5 14 ほか (2%) (3%) (4%) (6%) (2%) 出 所 ) 厚 生 労 働 省 平 成 17 年 国 民 生 活 基 礎 調 査 http://www.mhlw/go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa05/2-4.html 厚 生 労 働 省 平 成 22 年 国 民 生 活 基 礎 調 査 http://www.mhlw/go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa10/2-4.html 全 世 帯 でみると 総 所 得 と 稼 働 所 得 の 減 少 が 顕 著 である 一 方 公 的 年 金 恩 給 財 産 所 得 社 会 保 障 給 付 個 人 企 業 年 金 が 増 加 している 高 齢 者 世 帯 でみると 総 所 得 は 増 加 しているが 稼 働 所 得 は 減 少 し 公 的 年 金 恩 給 財 産 所 得 個 人 企 業 年 金 は 増 加 している また 所 得 に 占 める 公 的 年 金 恩 給 の 割 合 は 70%となっている 児 童 のいる 世 帯 でみると 総 所 得 と 稼 働 所 得 が 減 少 している また 所 得 に 占 める 稼 働 所 得 の 割 合 は 90% 以 上 である 高 齢 者 世 帯 を 除 けば 総 所 得 および 稼 働 所 得 も 減 少 している 一 方 で 公 的 年 金 恩 給 財 産 所 得 個 人 企 業 年 金 が 増 加 しているというのが 表 3 から 見 えてくることである 2 経 済 的 な 格 差 をどうみるか~その 1 経 済 的 な 不 平 等 をどう 測 るか 指 標 はいくつかあるが 一 般 的 に 使 われていてわかり やすいものにジニ 係 数 がある ジニ 係 数 は 1936 年 イタリアの 統 計 学 者 コンラッド ジニがローレンツ 曲 線 をもとに 考 案 したもので 完 全 に 平 等 の 時 はゼロ 完 全 に 不 平 等 の 時 ( 独 り 占 め 状 態 の 時 )は 1 になる 所 得 の 不 平 等 がどう 変 化 してきているのかをジニ 係 数 でみてみる 4
表 5 所 得 再 分 配 によるジニ 計 数 の 変 化 その 1 改 善 度 社 会 保 障 による 税 による 改 善 度 年 度 当 初 所 得 再 分 配 所 得 (%) 改 善 度 (%) (%) 1972 0.354 0.314 11.4 5.7 4.4 1975 0.375 0.346 7.8 4.5 2.9 1978 0.365 0.338 7.4 1.2 3.7 1981 0.349 0.314 10.0 5.0 5.4 1984 0.398 0.343 13.8 9.8 3.8 1987 0.405 0.338 16.5 12.0 4.2 1990 0.433 0.364 15.9 12.5 2.9 1993 0.439 0.365 17.0 13.2 3.2 1996 0.441 0.361 18.3 15.8 3.6 1999 0.472 0.381 19.2 16.8 2.9 2002 0.498 0.381 23.5 20.8 3.4 2005 0.526 0.387 26.4 24.0 3.2 2008 0.532 0.376 29.3 26.6 3.7 出 所 ) 1996 年 ~2008 年 は 厚 生 労 働 省 所 得 再 分 配 調 査 報 告 書 平 成 20 年 www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000000nmn-att/2r9852000000nmvb.pdf 1993 年 以 前 については 橘 木 敏 詔 格 差 社 会 岩 波 書 店 8 頁 より 引 用 注 ) * 当 初 所 得 = 稼 働 所 得 + 財 産 所 得 + 個 人 企 業 年 金 ほか * 再 分 配 所 得 = 当 初 所 得 + 公 的 年 金 恩 給 + 社 会 保 障 給 付 ( 現 物 含 む)- 税 金 - 社 会 保 険 料 * 改 善 度 =( 当 初 所 得 ジニ 係 数 - 再 分 配 所 得 ジニ 係 数 )/ 当 初 所 得 ジニ 係 数 100 * 社 会 保 障 による 改 善 度 ={1-2/1 4/3} 100 * 税 による 改 善 度 ={1-3/2} 100 1 : 当 初 所 得 でのジニ 係 数 2 : 当 初 所 得 + 社 会 保 障 給 付 - 社 会 保 険 料 でのジニ 係 数 3 :2- 税 金 でのジニ 係 数 4 :3+ 現 物 給 付 でのジニ 係 数 当 初 所 得 でのジニ 係 数 は 35 年 の 間 に 0.354 から 0.532 へ 約 1.5 倍 増 加 している 35 年 前 にくらべて 格 差 は 1.5 倍 広 がったということになる 再 分 配 所 得 についていえば 0.314 から 0.376 へ 1.2 倍 の 増 加 である 格 差 の 広 がりは 1.2 倍 ということになる 当 初 所 得 の 格 差 は 年 々 広 がる 傾 向 にある おおよそ 1970 年 代 は 0.354 から 0.365 へ 1.03 倍 1980 年 代 は 0.349 から 0.433 へ 1.24 倍 1990 年 代 は 0.433 から 0.472 へ 1.09 5
倍 2000 年 代 は 0.498 から 0.532 へ 1.07 倍 となっている また 再 分 配 所 得 は 1970 年 代 0.314 から 0.338 へ 1.07 倍 1980 年 代 は 0.314 から 0.364 へ 1.16 倍 1990 年 代 は 0.364 から 0.381 へ 1.05 倍 2000 年 代 は 0.381 から 0.376 へ 0.99 倍 となっている 当 初 所 得 の 不 平 等 を 再 分 配 によって 是 正 しようとしているのがうかがえる 改 善 度 は 年 々 上 昇 している ということは 所 得 格 差 は 広 がっているが 政 策 によって 格 差 は 緩 和 されているといえるのだろう ただその 改 善 度 の 内 訳 をみると 社 会 保 障 によるものが ほとんどである 税 による 改 善 度 はほとんど 変 化 していない 相 対 的 に 見 れば 改 善 度 に しめる 税 の 割 合 は 非 常 に 小 さくなっている これは 税 による 再 分 配 の 力 が 落 ちているこ とをしめしている 税 制 についてはふれないが 橘 木 俊 詔 氏 は 著 書 格 差 社 会 の 中 で 近 年 所 得 税 や 相 続 税 の 累 進 度 ( 高 い 所 得 の 人 から 高 い 税 を 徴 収 し 低 い 所 得 の 人 から 低 い 税 を 徴 収 する)が 低 下 してきていることを 指 摘 している 1 ) 今 回 増 税 が 検 討 されてい る 消 費 税 も 逆 進 性 の 高 い 税 金 である 当 初 所 得 による 不 平 等 がこのまま 拡 大 する 方 向 に 進 んでいくとすると 税 による 改 善 度 を 高 める 必 要 は 大 いにあると 思 われる 以 上 世 帯 全 体 での 年 度 別 のジニ 係 数 の 推 移 をみてきた ところで 世 帯 にはいろいろな 形 態 がある 我 が 家 は 夫 婦 とこども2 人 の 世 帯 私 の 親 は 80 歳 と 90 歳 の2 人 の 世 帯 である お 隣 はお 年 寄 りの1 人 暮 らしだ それぞれの 世 帯 の 形 態 をいくつかのくくりによって 見 てみると さらに 詳 しい 状 況 がみえてくる 表 6 は 世 帯 のありようを 世 帯 主 の 年 齢 別 世 帯 の 類 型 別 世 帯 の 構 造 別 世 帯 の 人 員 数 別 にまとめて それぞれのくくりの 中 でのジニ 係 数 をあらわしている 表 7 は 同 様 のくくりの 中 で 実 際 の 所 得 金 額 をあらわしたものである 2004 年 と 2007 年 をとりあげたのは 残 念 ながら 現 時 点 で 入 手 できる 最 新 の 資 料 がここま でという 理 由 だけである 表 6 所 得 再 分 配 によるジニ 計 数 の 変 化 その 2 当 初 所 得 再 分 配 所 得 改 善 度 (%) 2004 年 2007 年 2004 年 2007 年 2004 年 2007 年 総 数 0.526 0.532 0.387 0.376 26.4 29.3 < 年 齢 別 > ~29 歳 0.373 0.373 0.366 0.344 1.8 7.7 30~34 0.315 0.280 0.301 0.274 4.5 2.2 35~39 0.297 0.278 0.292 0.254 1.6 8.5 40~44 0.306 0.345 0.300 0.323 2.2 6.3 45~49 0.328 0.335 0.320 0.318 2.4 5.1 50~54 0.354 0.349 0.341 0.323 3.6 7.3 6
55~59 0.391 0.374 0.368 0.339 5.8 9.2 60~64 0.519 0.520 0.390 0.393 24.7 26.0 65~69 0.641 0.634 0.396 0.356 38.2 43.9 70~74 0.739 0.703 0.394 0.372 46.6 47.0 75~ 0.780 0.817 0.447 0.415 42.7 49.2 < 世 帯 類 型 別 > 一 般 世 帯 0.425 0.420 0.362 0.349 14.9 16.9 高 齢 者 世 帯 0.822 0.807 0.413 0.404 49.8 50.0 母 子 世 帯 0.458 0.392 0.372 0.281 18.7 28.3 < 世 帯 構 造 別 > 単 独 世 帯 0.690 0.654 0.401 0.379 41.8 42.7 夫 婦 のみ 世 帯 0.641 0.615 0.342 0.328 46.6 46.7 夫 婦 と 未 婚 の 子 0.344 0.350 0.287 0.276 16.4 21.2 一 人 親 と 未 婚 の 子 0.466 0.470 0.382 0.395 18.1 16.1 三 世 代 0.335 0.350 0.297 0.290 11.5 17.0 その 他 0.483 0.555 0.374 0.409 22.5 26.3 < 世 帯 人 員 別 > 1 人 世 帯 0.690 0.654 0.401 0.379 41.8 42.0 2 人 0.617 0.597 0.356 0.343 42.4 42.5 3 人 0.425 0.433 0.326 0.323 23.4 25.5 4 人 0.323 0.332 0.294 0.281 9.0 15.4 5 人 0.301 0.294 0.286 0.276 5.1 6.2 6 人 以 上 0.314 0.338 0.283 0.292 9.9 出 所 ) 厚 生 労 働 省 [ 所 得 再 分 配 調 査 平 成 17 年 ] www.mhlw.go.jp/houdou/2007/08/h0824-6.html [ 所 得 再 分 配 調 査 平 成 20 年 ] www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000000nmn-att/2r9852000000nmvb.pdf 表 7 所 得 再 分 配 による 所 得 の 変 化 当 初 所 得 ( 万 円 ) 再 分 配 所 得 ( 万 円 ) 再 分 配 係 数 (%) 2004 年 2007 年 2004 年 2007 年 2004 年 2,007 年 総 数 465 445 550 518 18.0 16.4 < 年 齢 別 > ~29 歳 275 306 259 279-5.7 -.8.8 30~34 506 471 464 429-8.4-8.9 7
35~39 560 545 516 475-7.8-12.8 40~44 677 667 610 579-9.9-13.3 45~49 732 715 672 634-8.2-11.4 50~54 739 703 704 634-4.7-9.8 55~59 730 705 673 653-7.8-7.4 60~64 434 531 528 569 21.6 7.1 65~69 306 252 518 451 69.5 78.9 70~74 184 204 445 439 142.3 114.9 75~ 198 147 499 472 151.7 221.4 < 世 帯 類 型 別 > 一 般 世 帯 578 569 606 572 4.8 337.3 高 齢 者 世 帯 85 90 371 375 337.3 316.3 母 子 世 帯 191 208 249 235 30.5 13.2 < 世 帯 構 造 別 > 単 独 世 帯 160 196 255 266 58.7 35.7 夫 婦 のみ 世 帯 340 343 510 509 50.1 48.2 夫 婦 と 未 婚 の 子 695 694 654 638-5.9-8.0 一 人 親 と 未 婚 の 子 298 315 393 412 31.9 30.6 三 世 代 754 726 898 854 19.1 17.6 その 他 509 460 679 655 33.4 42.2 < 世 帯 人 員 別 > 1 人 世 帯 160 196 255 266 58.7 35.7 2 人 330 331 489 487 47.9 49.6 3 人 569 589 624 627 9.6 6.5 4 人 728 705 703 662-3.4-0.6 5 人 778 795 810 785 4.1-1.3 6 人 以 上 810 809 939 929 16.0 14.8 出 所 ) 厚 生 労 働 省 [ 所 得 再 分 配 調 査 平 成 17 年 平 成 20 年 ] 注 ) 再 分 配 係 数 =( 再 分 配 所 得 - 当 初 所 得 )/ 当 初 所 得 100 まず 2004 年 と 2008 年 のジニ 計 数 をくらべてみると 当 初 所 得 では 0.526 から 0.532 へ 0.006 上 昇 しているものの 再 分 配 所 得 では 0.387 から 0.376 へ 0.011 減 少 している 改 善 度 も 26.4%から 29.3%に 上 がっている 再 分 配 によって 不 平 等 が 改 善 されてきたと いえる 金 額 では 当 初 所 得 465 万 円 から 445 万 円 へ 20 万 円 の 減 少 再 分 配 所 得 では 550 万 円 から 518 万 円 へ 32 万 円 の 減 少 幅 になっている 8
( 1 ) 年 齢 別 若 い 世 代 では 29 歳 以 下 の 層 が 当 初 所 得 再 分 配 所 得 ともにジニ 計 数 は 大 きい 30 歳 代 になるとジニ 計 数 は 小 さい 経 済 的 な 不 平 等 の 度 合 いが 小 さい 世 代 といえる 40 歳 代 か ら 徐 々にジニ 計 数 は 大 きくなっていく 当 初 所 得 についていえば 徐 々に 不 平 等 は 広 がって いき 定 年 退 職 をむかえたあたりから 完 全 な 不 平 等 をあらわす 1 に 近 づいていく 当 初 所 得 には 公 的 年 金 が 含 まれていないので やむを 得 ない 数 字 である 退 職 後 あるいは 高 齢 者 になっても 稼 働 所 得 財 産 所 得 個 人 年 金 企 業 年 金 がある 人 と 公 的 年 金 だけが 収 入 で ある 人 との 差 ということになろう 60 歳 以 上 とくに 65 歳 以 上 では 公 的 年 金 での 再 分 配 が 格 差 の 是 正 に 非 常 に 大 きな 効 果 をもたらしている 金 額 でみると 2004 年 から 2008 年 で 所 得 がふえているのは 29 歳 以 下 と 60~64 歳 の 層 のみである 30 歳 以 降 の 所 得 の 減 少 は 稼 働 所 得 の 減 少 が 大 きな 要 因 と 思 われる 60 歳 からは 税 や 社 会 保 険 料 の 拠 出 が 減 少 し 年 金 の 受 給 が 増 加 し 始 める 29 歳 以 下 について いえば 増 えているというものの 所 得 は 300 万 円 以 下 と 低 水 準 にある ( 2 ) 世 帯 類 型 別 ここでは 高 齢 者 世 帯 と 母 子 世 帯 に 注 目 している 高 齢 者 世 帯 とは 65 歳 以 上 の 者 のみ またはこれに 18 歳 未 満 の 未 婚 の 子 のいる 世 帯 をさす 母 子 世 帯 は 65 歳 未 満 の 配 偶 者 の いない 女 と 20 歳 未 満 の 子 のいる 世 帯 をさす 高 齢 者 世 帯 のジニ 計 数 は< 年 齢 別 >でみた 場 合 の 特 徴 と 同 様 である つまり 当 初 所 得 の 不 平 等 が 大 きく 再 分 配 による 改 善 度 が 高 いということだ 母 子 世 帯 はジニ 計 数 は 一 般 世 帯 とあまりかわらない むしろ 母 子 世 帯 間 では 不 平 等 の 度 合 いは 小 さいといえる しかし 金 額 でみると 2008 年 当 初 所 得 208 万 円 再 分 配 所 得 で 235 万 円 と 非 常 に 低 所 得 である ジニ 計 数 だけではわからない 格 差 である ( 3 ) 世 帯 構 造 別 単 独 世 帯 夫 婦 のみ 世 帯 についていえば 改 善 度 からみて 高 齢 者 世 帯 の 特 徴 がうかがえ る 若 い 人 の 一 人 暮 らし 若 い 夫 婦 の 世 帯 というより 高 齢 者 の 独 り 暮 らし 高 齢 者 夫 婦 の 世 帯 が 多 いのだろうと 想 像 する ジニ 計 数 は 単 独 世 帯 夫 婦 のみ 一 人 親 と 未 婚 の 子 その 他 の 世 帯 構 造 で 大 きい どの 世 帯 も 拠 出 額 よりも 受 給 額 のほうが 多 くなっている 年 金 や 医 療 介 護 の 現 物 給 付 が 多 く 再 分 配 計 数 も 大 きい 高 齢 者 や 病 人 を 含 む 家 庭 であろうと 考 えられる 三 世 代 は 2008 年 の 場 合 世 帯 人 員 5.14 人 有 業 者 数 2.62 人 当 初 所 得 726 万 円 再 分 配 所 得 854 万 円 拠 出 金 ( 税 社 会 保 険 料 )154 万 円 受 給 金 ( 年 金 社 会 保 障 給 付 )282 万 円 となってい る 所 得 も 高 く いろいろな 世 代 の 人 間 がいることで 家 庭 の 中 で 経 済 的 な 不 平 等 を 相 殺 9
しているのではないかと 考 える 経 済 的 な 面 からだけ 見 れば 三 世 代 世 帯 が 望 ましい 形 な のかもしれない ( 4 ) 世 帯 人 員 別 1 人 世 帯 2 人 世 帯 3 人 世 帯 でジニ 計 数 は 大 きい 高 齢 者 を 含 む 世 帯 でも 家 族 が 多 い ほど 不 平 等 は 改 善 されるようである 3 経 済 的 な 格 差 をどうみるか~その 2 経 済 的 な 格 差 が 大 きくなった 場 合 問 題 は 高 所 得 者 層 にではなく 低 所 得 者 層 に 生 じて くる 図 1 所 得 の 分 布 状 況 出 所 ) 厚 生 労 働 省 [ 国 民 生 活 基 礎 調 査 ]より 作 成 http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa01/index.html 02/index,03/index,04/index,05/index,06/index,07/index,08/index,09/2-2,10 図 1 は 所 得 を 100 万 円 未 満 100~300 万 円 300~500 万 円 500~700 万 円 700~ 900 万 円 900~1000 万 円 1100 万 円 ~2000 万 円 2000 万 円 以 上 の 8 階 級 に 分 類 し 全 体 を 100%とした 場 合 の 割 合 の 変 化 をあらわしたものである 図 1 からわかる 通 り 100~300 万 円 の 増 加 が 顕 著 である 2000 年 21.9%から 2009 年 では 26.1%に 上 昇 している 300~500 万 円 も 22.5%から 24.2%に 上 昇 している 減 少 しているのは 700~900 万 円 (12.6%から 11.2%へ) 900~1100 万 円 (8.1%から 6.6% へ) 1100~2000 万 円 (10.5%から 7.9%へ)の 階 級 である 変 化 が 少 ないのは 500~700 10
万 円 と 2000 万 円 以 上 の 階 級 である おそらく 従 来 500~700 万 円 の 階 級 にいた 世 帯 が 300~500 万 円 の 階 級 に 移 り 700 万 円 以 上 の 階 級 の 世 帯 も 少 しづつ 下 ぶれていったのではないかと 想 像 する 所 得 300 万 円 以 下 の 世 帯 が 2009 年 は 全 体 の 32%(2000 年 27.4%)をしめている 2000 万 円 以 上 の 世 帯 は 全 体 の 1.2%(2000 年 1.8%)である 格 差 は 広 がっているといえるのだろうか し かし 低 所 得 層 がふえているのは 明 らかである ちなみに 2004 年 は 新 潟 福 島 福 井 の 豪 雨 台 風 23 号 上 陸 中 越 地 震 など 自 然 災 害 が 多 発 した 年 である 格 差 が 広 がるということは 所 得 の 低 い 人 は 一 層 低 い 所 得 しか 得 られなくなり 所 得 の 高 い 人 は 一 層 高 い 所 得 を 得 ると 考 えられる だが 図 1 からわかるのは 全 体 的 な 所 得 の 低 下 があり 特 に 低 所 得 の 世 帯 が 急 増 しているということだ 2010 年 国 民 生 活 基 礎 調 査 によると 所 得 50 万 円 未 満 の 世 帯 は 全 世 帯 の 1.1% 50~100 万 円 は 4.8%である 2010 年 の 世 帯 数 は 5184 万 世 帯 ( 国 勢 調 査 )であるから 50 万 円 未 満 は 約 57 万 世 帯 50~100 万 円 は 約 289 万 世 帯 ということになる この 調 査 の 所 得 には 生 活 保 護 費 なども 含 まれていることを 考 えると 暗 澹 とした 気 持 ちになる 42000 円 / 月 ~ 83000 円 / 月 で 生 活 していくことが 可 能 なのだろうか さらに 低 所 得 層 を 世 帯 類 型 別 にみると 高 齢 者 世 帯 は 100 万 円 未 満 が 13.1% 300 万 円 未 満 は 60%に 上 る 母 子 世 帯 は 100 万 円 未 満 が 8.7% 300 万 円 未 満 は 70.8%である 2009 年 生 活 保 護 をうけている 世 帯 を 類 型 別 にみると 高 齢 者 世 帯 44.3% 母 子 世 帯 7.8% 傷 病 障 害 者 世 帯 34.3% その 他 の 世 帯 13.5%となっている 4 おわりに 経 済 的 な 格 差 は 広 がっているのか こたえは YES である それも 低 所 得 の 世 帯 が 増 え ていくことによる 格 差 の 広 がりである 日 本 経 済 の 低 迷 が 所 得 の 減 少 をまねいているこ ともある 雇 用 の 格 差 が 若 い 世 代 の 所 得 の 低 下 をまねいていることもある しかし 主 な 理 由 は 高 齢 者 の 増 加 にあると 考 える 若 いうちは 小 さかった 経 済 的 な 不 平 等 が 長 い 間 に 積 み 重 なって 高 齢 になって 資 産 にも 年 金 にも 大 きな 格 差 をつくりあげてしまうのでは ないだろうか 経 済 的 な 理 由 ばかりでなく 健 康 や 家 族 の 状 況 や 価 値 観 などさまざまな 理 由 もある 今 後 高 齢 者 がふえていくのは 確 実 であることを 考 えると この 問 題 はいっ そう 深 刻 になっていくと 思 われる ただ 戦 後 経 済 成 長 をめざしてきた 生 き 方 を 見 直 す 時 が 来 ているとも 思 う 2012.1.18 の 読 売 新 聞 (インターネット)は 次 のように 書 いている 2) 厚 生 労 働 省 は 貧 困 を 測 るあらたな 指 標 づくりをきめた OECD( 経 済 協 力 開 発 機 構 )に 提 出 する 相 対 的 貧 困 率 は 日 本 の 実 態 を 反 映 していないとの 理 由 からである 国 際 的 にも 別 の 指 標 の 導 入 が 考 えられている どんな 指 標 になるかは 来 年 中 に 策 定 する としている ブータンの GDH( 国 民 総 幸 福 量 )の 考 え 方 なども 含 め 経 済 一 辺 倒 ではない 生 き 方 を 考 えるときなの 11
ではないだろうか 注 1) 橘 木 俊 詔 格 差 社 会 岩 波 書 店 56~57 頁 2) 読 売 新 聞 2012.1.18 携 帯 買 える? 貧 困 の 指 標 見 直 しへ: YOMIURI ONLINE www.yomiuri.co.jp/national/news/20120118-oyt1t00003.htm 参 考 文 献 橘 木 俊 詔 日 本 の 経 済 格 差 岩 波 書 店 2010 年 橘 木 俊 詔 格 差 社 会 岩 波 書 店 2010 年 総 務 省 家 計 調 査 平 成 18 年 ~ 平 成 22 年 http://www.e-stat.go.jp/sg1/estat/list.do?lid=000000330512 =000001027764 =000001054435 =000001063812 =000001074017 厚 生 労 働 省 国 民 生 活 基 礎 調 査 平 成 17 年 平 成 22 年 http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa05/2-1.html http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa10/2-1.html 平 成 13 年 ~ 平 成 22 年 http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa01/index.html 02/index.html 03/index.html 04/index.html 05/ndex.html 06/index.html 07/index.html 08/index.html 09/2-2.html 10/dl/gaikyou.pdf 厚 生 労 働 省 所 得 再 分 配 調 査 平 成 17 年 平 成 20 年 http://www.mhlw.go.jp/houdou/2007/08/h0824-6.html http://www.mhlw.go.jp/sft/houdou/2r9852000000nmn-att/2r9852000000nmvb.pdf 内 閣 府 年 次 経 済 財 政 報 告 平 成 22 年 http://www5.cao.go.jp/j-j/wp/wp-je10/pdf/10p08011.pdf 12
総 務 省 国 勢 調 査 厚 生 労 働 省 厚 生 労 働 白 書 13