日 英 特 許 データベースから のシソーラスの 自 動 構 築 PROFILE PROFILE 広 島 市 立 大 学 大 学 院 情 報 科 学 研 究 科 准 教 授 難 波 英 嗣 1996 年 東 京 理 科 大 学 理 工 学 部 電 気 工 学 科 卒 業 2001 年 北 陸 先 端 科 学 技 術 大 学 院 大 学 情 報 科 学 研 究 科 博 士 後 期 課 程 修 了 同 年 日 本 学 術 振 興 会 特 別 研 究 員 2002 年 東 京 工 業 大 学 精 密 工 学 研 究 所 助 手 同 年 広 島 市 立 大 学 情 報 科 学 部 講 師 2010 年 4 月 広 島 市 立 大 学 大 学 院 情 報 科 学 研 究 科 准 教 授 現 在 に 至 る 博 士 ( 情 報 科 学 ) 言 語 処 理 学 会 情 報 処 理 学 会 人 工 知 能 学 会 ACL ACM 各 会 員 広 島 市 立 大 学 大 学 院 情 報 科 学 研 究 科 教 授 竹 澤 寿 幸 1984 年 早 稲 田 大 学 理 工 学 部 電 気 工 学 科 卒 業 1989 年 早 稲 田 大 学 大 学 院 博 士 後 期 課 程 修 了 同 年 ( 株 ) 国 際 電 気 通 信 基 礎 技 術 研 究 所 入 社 2007 年 広 島 市 立 大 学 大 学 院 情 報 科 学 研 究 科 教 授 現 在 に 至 る 工 学 博 士 音 声 対 話 翻 訳 の 研 究 開 発 に 従 事 平 成 18 年 度 電 子 情 報 通 信 学 会 ISS 論 文 賞 受 賞 電 子 情 報 通 信 学 会 人 工 知 能 学 会 日 本 音 響 学 会 言 語 処 理 学 会 各 会 員 PROFILE 2011 年 広 島 市 立 大 学 情 報 科 学 部 知 能 工 学 科 卒 業 広 島 市 立 大 学 情 報 科 学 部 間 弓 沙 織 082-830-1584 1 はじめに 本 研 究 では 日 英 特 許 データベースからシソーラスを 自 動 的 に 構 築 する 手 法 を 提 案 する シソーラスは 文 献 の 検 索 や 専 門 文 書 の 執 筆 の 際 の 情 報 源 として また 計 算 機 で 言 語 処 理 を 行 う 際 の 知 識 源 としてもしばしば 利 用 されている しかし シソーラスを 人 手 で 構 築 し 更 新 することは 非 常 にコストがかかるため テキストデータ ベースから シソーラスを 自 動 的 に 構 築 するという 研 究 が 近 年 活 発 に 行 われている また 専 門 用 語 の 翻 訳 の 際 には 正 確 な 対 訳 辞 書 が 必 要 不 可 欠 であるが 既 存 の 辞 書 に 登 録 されていない 用 語 が 増 加 し 続 けており 対 訳 辞 書 を 人 手 で 継 続 管 理 するには 非 常 にコストがかかる そのため 専 門 用 語 を 特 許 文 書 から 抽 出 し 正 しい 訳 語 を 自 動 推 定 して 翻 訳 辞 書 作 成 を 支 援 するシステムが 求 められている テキストデータベースからシソーラスを 構 築 する 代 表 的 な 手 法 は A や B などの C や A such as B, C などの 定 型 表 現 に 着 目 して 用 語 の 上 位 下 位 概 念 を 自 動 的 に 抽 出 するものである [Hearst 1992 安 藤 2003 相 澤 2006] また この 他 にも HTML の 構 造 を 利 用 した 抽 出 方 法 [ 新 里 2005] や 用 語 の 定 義 文 を 利 用 した 方 法 [ 大 石 2006] なども 提 案 されている また 専 門 用 語 の 訳 語 推 定 法 については 統 計 的 機 械 翻 訳 モデルを 用 いて 訳 語 推 定 を 行 う 手 法 及 び 既 存 の 対 訳 辞 書 を 利 用 した 要 素 合 成 法 を 併 用 して 専 門 用 語 の 訳 語 を 推 定 する 手 法 が 提 案 されている [ 森 下 2010] 本 研 究 では 定 型 表 現 に 基 づいて 上 位 下 位 概 念 を 獲 得 する 手 法 に 着 目 し 日 英 特 許 データベースからそれ ぞれ 上 位 下 位 概 念 を 獲 得 する 次 に 統 計 的 機 械 翻 訳 モデルを 用 いた 訳 語 推 定 法 に 着 目 し 引 用 分 析 手 法 [Kessler 1963 Small 1973] と 合 わせて 日 本 語 と 英 語 の 用 語 間 の 対 応 付 けを 行 うことにより 日 英 特 許 シソーラスを 自 動 的 に 構 築 する これにより 得 られたシ ソーラスを 用 いることで 文 献 の 検 索 や 専 門 文 書 の 執 筆 訳 語 推 定 など 幅 広 く 活 用 することが 可 能 になると 考 え られる 248 YEAR BOOK 2011
本 論 文 の 構 成 は 以 下 のとおりである 2 節 では 特 許 デー タベースからの 上 位 下 位 概 念 の 抽 出 法 を 述 べ 3 節 では 日 英 の 用 語 間 の 対 応 付 け 方 法 について 説 明 する 4 節 では 本 研 究 で 行 った 実 験 について 述 べ 5 節 で 実 験 結 果 からの 考 察 を 述 べる 最 後 に 6 節 で 本 稿 をまとめる 2 上 位 下 位 概 念 の 抽 出 日 本 文 では A や B などの C A や B 等 の C 英 文 では A, such as B and C といった 定 型 表 現 に 着 目 する 例 えば 染 料 や 顔 料 などの 着 色 剤 という 文 では 着 色 剤 という 上 位 概 念 に 対 して 染 料 顔 料 が 下 位 概 念 であることが 分 かる また pets, such as cats and dogs という 文 では pets という 位 概 念 に 対 して cats dogs が 下 位 概 念 であること が 分 かる 本 研 究 では このような 定 型 表 現 に 着 目 し 図 1 のような 日 本 文 特 許 データベースと 図 2 のよう な 英 文 特 許 データベースから 上 位 下 位 概 念 を 獲 得 する 1993-000024: 構 成 天 然 繊 維 紙 パルプな どの 天 然 素 材 の 繊 維 の 集 合 体 で 加 工 された 開 口 率 5 ~60%の 網 状 で 厚 み5~40mm の 芝 養 生 マット 図 1 日 本 文 特 許 データベースの 例 ルである GIZA++ を 使 用 し 翻 訳 モデル 用 に 日 英 特 許 から 抽 出 された 3,185,254 文 対 を 用 い 言 語 モデル 用 に 3,186,284 文 の 日 本 語 特 許 文 を 用 いて フレー ズテーブルの 作 成 を 行 った 以 下 に 作 成 したフレーズテーブルを 用 いた 用 語 の 対 応 付 け 方 法 について 説 明 する 図 3 はその 流 れを 示 したものである (1) 翻 訳 テキストデータベースから 獲 得 された 日 本 語 の 上 位 概 念 下 位 概 念 を 作 成 したフレーズテーブルを 用 い てそれぞれ 単 独 で 翻 訳 する (2) 上 位 下 位 の 候 補 を 作 成 得 られた 訳 語 から 全 ての 組 み 合 わせで 上 位 下 位 の 候 補 を 作 成 する (3) 対 応 付 け 得 られた 候 補 の 中 から テキストデータベースから 獲 得 された 英 語 の 上 位 下 位 概 念 に 当 てはまるものが あれば 日 英 の 用 語 を 対 応 付 けする 上 記 の (1) ~ (3) のように 日 英 の 用 語 間 の 対 応 付 けを 行 った 結 果 2,635 対 の 日 英 用 語 対 が 得 られた 図 3 フレーズテーブルを 用 いた 対 応 付 け 寄 稿 集 4 機 械 翻 訳 技 術 の 向 上 The grinding wheel 2 comprises a generally hourglass shape along its width and is made of a suitable abrasive material such as aluminum oxide or cubic boron nitride (CBN). 図 2 英 文 特 許 データベースの 例 3 日 英 の 用 語 間 の 対 応 付 け 3.1 フレーズテーブルを 用 いた 対 応 付 け 日 英 の 用 語 対 候 補 の 作 成 には 統 計 的 機 械 翻 訳 技 術 を 用 いる 統 計 的 機 械 翻 訳 では 対 象 とする 言 語 に 関 する 文 法 的 知 識 を 必 要 としないため 容 易 に 翻 訳 システムを 構 築 することができる 本 研 究 では 統 計 的 機 械 翻 訳 ツー 3.2 日 英 用 語 対 の 抽 出 3.1 節 のフレーズテーブルを 用 いた 対 応 付 けで 得 られ た 日 英 の 用 語 対 2,635 対 から 用 語 対 候 補 を 絞 り 込 む 用 いた 素 性 は 以 下 の 5 種 類 である YEAR BOOK 2O11 249
1 翻 訳 確 率 2 日 本 語 英 語 の 上 位 語 の 上 位 語 の 一 致 数 3 日 本 語 英 語 の 上 位 語 の 下 位 語 の 一 致 数 4 日 本 語 英 語 の 下 位 語 の 上 位 語 の 一 致 数 5 日 本 語 英 語 の 下 位 語 の 下 位 語 の 一 致 数 2~5については それぞれの 最 大 一 致 数 で 個 々の 一 致 数 を 割 った 値 を 素 性 値 とする また 日 英 の 用 語 が 一 致 しているかどうかの 判 断 は 3.1 節 で 述 べたフレーズテー ブルを 用 いて 日 本 語 の 用 語 を 翻 訳 し 英 語 の 用 語 と 比 較 す ることで 行 う 翻 訳 の 際 フレーズテーブルに 登 録 されて いる 訳 語 の 中 で 最 も 翻 訳 確 率 ( 日 英 の 翻 訳 確 率 と 英 日 の 翻 訳 確 率 の 積 )の 高 い 訳 語 のみを 使 用 する 2~5を 素 性 として 用 いたアイディアは 引 用 分 析 いて 実 線 で 結 ばれたものは 上 位 下 位 関 係 を 表 し 点 線 で 結 ばれたものは 日 英 対 応 関 係 を 表 す このような 関 係 が 成 り 立 っているとき 半 導 体 素 子 > トランジス タ と semiconductor device > transistor は 共 通 の 上 位 語 あるいは 下 位 語 を 持 ち 対 応 関 係 にあると 考 えられる 本 研 究 では 素 性 1と 2~5の 素 性 のいずれかを 用 いた 2 種 類 の 素 性 により 4 通 りの 組 み 合 わせを 使 用 する 以 下 1 2の 組 み 合 わせを (a) 1 3の 組 み 合 わせを (b) 1 4の 組 み 合 わせを (c) 1 5の 組 み 合 わせを (d) とする 用 語 対 の 抽 出 方 法 について 以 下 に (a) を 例 として 説 明 する 研 究 における 書 誌 結 合 [Kessler 1963] と 共 引 用 分 析 [Small 1973] に 基 づいたものである 引 用 分 析 とは 論 文 間 の 引 用 被 引 用 関 係 を 用 いて 論 文 間 の 関 係 を 分 析 する 方 法 である 書 誌 結 合 は 論 文 間 の 関 連 度 を 測 る 時 に 2 論 文 間 でどれだけ 同 じ 論 文 を 引 用 しているか という 基 準 に 基 づいている 一 方 共 引 用 分 析 は 2 論 文 がどれだけ 他 の 論 文 で 共 に 引 用 されているか という 基 準 に 基 づいた 手 法 である ここでは 用 語 間 の 上 位 下 位 関 係 を 論 文 間 の 引 用 関 係 と 見 なし 引 用 分 析 手 法 を 用 いて 日 英 対 応 関 係 を 抽 出 する 図 4 は 半 導 体 素 子 > トランジスタ という 日 本 語 の 上 位 下 位 概 念 と semiconductor device > transistor という 英 語 の 上 位 下 位 概 念 を 中 心 に これらと 上 位 下 位 関 係 にある 用 語 の 一 部 を 示 したものである 図 4 にお (1) 素 性 の 和 を 計 算 素 性 1 の 値 が a 素 性 2 の 値 が b で あ る と き a β + α b を 計 算 す る こ こ で β は 1/5 1/10 1/15 1/20 の 4 通 りで 計 算 する また α は 0.1 0.2 0.9 とする (2) 訓 練 (1) で 求 めた 和 が ある 閾 値 x 以 上 のときに 正 解 x 未 満 のときに 不 正 解 とし F 値 を 算 出 する このとき 訓 練 用 データを 用 いて x の 値 を 0 ~ 2 の 間 で 0.01 ず つ 変 化 させ F 値 が 最 大 となる x を 求 める (3) 評 価 (2) で 得 られた x を 用 い テスト 用 データで 評 価 を 行 う (b) (c) (d) についても 同 様 の 処 理 を 行 う 4 実 験 3 節 で 述 べた 手 法 の 有 効 性 を 調 べるため 実 験 を 行 った 4.1 実 験 方 法 実 験 に 用 いるデータ フレーズテーブルを 用 いた 対 応 付 けにより 得 られた 日 英 の 用 語 対 2,635 対 の 正 解 判 定 を 人 手 で 行 った 結 果 を 図 4 上 位 下 位 関 係 を 用 いた 対 応 関 係 の 検 出 使 用 する 人 手 による 判 定 結 果 を 表 1 に 示 す 250 YEAR BOOK 2011
比 較 実 験 表 1: 人 手 による 判 定 結 果 正 解 不 正 解 合 計 982 1,653 2,635 本 研 究 では 用 語 間 の 上 位 下 位 関 係 を 用 いた 引 用 分 析 手 法 の 有 効 性 を 確 認 するため 比 較 手 法 として 引 用 分 析 手 法 を 用 いた 素 性 を 与 えずに 実 験 を 行 う 比 較 手 法 で 用 いる 素 性 と 提 案 手 法 で 用 いる 素 性 を 表 2 にま とめる 提 案 手 法 (a) 表 2: 実 験 に 用 いる 素 性 素 性 1 素 性 2 素 性 3 素 性 4 素 性 5 提 案 手 法 (b) 提 案 手 法 (c) 提 案 手 法 (d) 比 較 手 法 評 価 尺 度 上 記 の 実 験 に 用 いるデータを 4 分 割 し そのうち 3 つを 訓 練 用 1 つを 評 価 用 として 4 分 割 交 差 検 定 を 行 うことで 評 価 を 行 う 人 手 判 定 によって 正 解 とした 用 語 対 数 を P m システ ム 判 定 によって 正 解 とされた 用 語 対 数 を P s とし さら に 人 手 判 定 とシステム 判 定 の 結 果 が 正 解 で 一 致 する 用 語 対 数 を P m-s とする 評 価 には 表 3 に 示 す 精 度 再 現 率 F 値 を 用 いた 表 3: 評 価 尺 度 精 度 再 現 率 F 値 P m-s Ps 4.2 実 験 結 果 P m-s Ps 2 再 現 率 精 度 再 現 率 + 精 度 提 案 手 法 (a) ~ (d) と 比 較 手 法 によって 得 られた 精 度 再 現 率 F 値 を 表 4 に 示 す 比 較 手 法 は (e) と する 表 に 示 した 値 は それぞれの 実 験 において F 値 が 最 大 のときの 結 果 である 表 4 実 験 結 果 α β 精 度 (%) 再 現 率 (%) F 値 (%) (a) 0.1 1/10 76.4 78.1 77.1 (b) 0.1 1/20 76.3 79.5 77.4 (c) 0.1 1/15 75.8 78.4 76.9 (d) 0.1 1/15 77.5 79.4 78.3 (e) 0 1/15 78.5 77.8 78.0 表 4 より 提 案 手 法 (d) において 比 較 手 法 より 高 い 再 現 率 F 値 が 得 られ 提 案 手 法 の 有 効 性 が 確 認 さ れた 5 考 察 5.1 日 英 用 語 対 の 抽 出 5.1.1 システムが 誤 って 正 解 と 判 定 したもの 以 下 に 人 手 では 不 正 解 と 判 定 したが システムでは 正 解 と 判 定 された 226 件 の 検 出 誤 りを 種 類 ごとに 分 析 し 主 要 な 原 因 をいくつか 示 す 226 件 の 検 出 誤 りは 大 きく 次 の 5 種 類 に 分 類 できる 1 類 似 した 用 語 (73.9%) 226 件 の う ち 167 件 (73.9%) が 亜 鉛 と aluminum-zinc のような 類 似 した 用 語 と 対 応 付 けさ れたものだった 類 似 の 用 語 は 上 位 下 位 概 念 に 同 じ 用 語 を 持 つ 可 能 性 が 高 いため 引 用 分 析 手 法 において 一 致 数 が 多 くなってしまったと 考 えられる 2 抽 出 個 所 の 不 十 分 な 用 語 (10.6%) 226 件 のうち 24 件 (10.6%)が 弾 性 体 と elastic のような 抽 出 個 所 の 不 十 分 だと 思 われる 用 語 と 対 応 付 けされたものだった 寄 稿 集 4 機 械 翻 訳 技 術 の 向 上 YEAR BOOK 2O11 251
3 余 分 な 単 語 が 含 まれている 用 語 (4.4%) 226 件 のうち 10 件 (4.4%)が 金 属 と to metal のような 余 分 な 単 語 が 含 まれている 用 語 と 対 応 付 けされたものだった 上 記 の1~3に 共 通 した 原 因 として フレーズテーブ ルを 用 いた 用 語 対 の 作 成 段 階 で 翻 訳 候 補 の 全 ての 組 み 合 わせで 上 位 下 位 概 念 の 候 補 を 作 成 したため 類 似 した 用 語 や 抽 出 個 所 の 不 十 分 な 用 語 余 分 な 単 語 が 含 まれている 用 語 と 対 応 付 けされたものが 多 かった と 考 えられる この 問 題 は 上 位 下 位 概 念 の 候 補 を 作 成 する 際 に 全 ての 組 み 合 わせを 候 補 とするのではなく 翻 訳 確 率 を 考 慮 して 候 補 を 作 成 することで 改 善 できると 思 われる 4 上 位 語 と 下 位 語 が 同 じ 用 語 (4.4%) 226 件 のうち 10 件 (4.4%)が 車 両 > 自 動 車 に 対 して vehicles > vehicle のような 上 位 語 と 下 位 語 が 同 じ 用 語 と 対 応 付 けされたものだった 原 因 とし ては フレーズテーブルを 用 いた 用 語 対 の 作 成 段 階 で 全 ての 組 み 合 わせで 上 位 下 位 の 候 補 を 作 成 したため 英 語 の 上 位 下 位 語 が 同 じになってしまったと 考 えられ る そのため 類 似 した 用 語 と 対 応 付 けされてしまい それぞれの 上 位 下 位 概 念 に 同 じ 用 語 を 持 つ 可 能 性 が 高 いため 引 用 分 析 手 法 において 一 致 数 が 多 くなってし まったと 考 えられる この 問 題 は 上 位 下 位 概 念 の 候 補 を 作 成 する 際 に 候 補 の 中 から 上 位 語 と 下 位 語 が 同 じ ものを 削 除 することで 改 善 できると 思 われる また 上 記 の1~4に 共 通 している 原 因 として 上 位 下 位 概 念 の 獲 得 の 際 の 問 題 が 考 えられる 実 際 に 本 研 究 で 抽 出 されたものには 上 位 下 位 概 念 ではないものや 余 分 な 語 を 含 んでいるものがあった 5.1.2 システムが 正 解 と 判 定 できなかったもの 以 下 に 人 手 では 正 解 と 判 定 したが システムでは 不 正 解 と 判 定 された 201 件 の 再 現 できなかった 用 語 対 を 原 因 の 種 類 ごとに 分 析 し 主 要 な 原 因 をいくつか 示 す 201 件 の 再 現 できなかった 用 語 対 は 大 きく 次 の 3 種 類 に 分 類 できる( 重 複 あり) 1 複 数 形 (33.3%) 201 件 のうち 67 件 (33.3%)が 金 属 と metals のような 複 数 形 の 用 語 と 対 応 付 けされたものだった 2 元 素 記 号 (22.9 %) 201 件 のうち 46 件 (22.9%)が 銅 と cu のような 元 素 記 号 と 元 素 の 名 称 で 書 かれた 用 語 が 対 応 付 けされたものだった 3 略 語 (21.4%) 201 件 の う ち 43 件 (21.4%) が C D と compact disk のような 略 語 である 用 語 と 対 応 付 け されたものだった 上 記 の1~3の 用 語 は 訳 語 としてはあまり 一 般 的 で はない 1~3に 当 てはまらない 用 語 対 も あまり 一 般 的 ではない 訳 語 と 対 応 付 けされたものが 多 かった よっ て フレーズテーブルにおいて 翻 訳 確 率 が 低 くなり 再 現 できなかったと 考 えられる この 問 題 は フレーズテー ブルを 作 成 する 際 の 学 習 データを 増 やすことで 改 善 でき ると 思 われる また 一 般 的 でない 表 現 は 抽 出 された 上 位 下 位 概 念 も 少 なく 引 用 分 析 手 法 において 一 致 数 が 少 なくなったと 考 えられる 5.2 比 較 実 験 5.2.1 精 度 について 提 案 手 法 を 用 いた 場 合 は 226 件 比 較 手 法 を 用 いた 場 合 は 208 件 の 検 出 誤 りがあった 検 出 誤 りの 中 で 提 案 手 法 では 不 正 解 と 判 定 したが 比 較 手 法 では 正 解 と 判 定 した 用 語 対 は 0 件 であった 逆 に 比 較 手 法 では 不 正 解 と 判 定 したが 提 案 手 法 では 正 解 と 判 定 した 用 語 対 は 18 件 であった 提 案 手 法 において vehicles > vehicle のように 上 位 語 と 下 位 語 が 同 じ 用 語 と 対 応 付 けされたものが 誤 っ て 検 出 された また アルミニウム に 対 して aluminum film のように 類 似 の 用 語 が 対 応 付 けされたものも 誤 っ て 検 出 された これらの 用 語 対 は 上 位 下 位 概 念 に 同 じ 用 語 を 持 つ 可 能 性 が 高 いため 引 用 分 析 手 法 において 一 致 数 が 多 くなってしまい 比 較 手 法 において 誤 って 検 出 してしまったと 考 えられる これらの 問 題 は 上 位 下 位 概 念 の 候 補 を 作 成 する 際 に 候 補 の 中 から 上 位 語 と 下 位 語 同 じものを 削 除 したり 上 位 下 位 概 念 の 候 補 を 作 成 する 際 に 翻 訳 確 率 を 考 慮 して 候 補 を 作 成 したりす 252 YEAR BOOK 2011
ることで ある 程 度 改 善 できると 思 われる よって こ のような 改 善 を 行 うことによって 提 案 手 法 が 正 しく 正 解 を 判 定 することにおいて 有 効 となると 考 えられる 5.2.2 再 現 率 について 提 案 手 法 を 用 いた 場 合 は 201 件 比 較 手 法 を 用 いた 場 合 は 216 件 の 再 現 できなかった 用 語 対 があった 再 現 できなかった 用 語 対 の 中 で 比 較 手 法 では 正 解 と 判 定 したが 提 案 手 法 では 不 正 解 と 判 定 した 用 語 対 は 0 件 であった 逆 に 提 案 手 法 では 正 解 と 判 定 したが 比 較 手 法 では 不 正 解 と 判 定 した 用 語 対 は 15 件 であった 比 較 手 法 において 記 憶 媒 体 に 対 して record medium や 車 両 に 対 して 複 数 形 の vehicles のように 一 般 的 でない 訳 語 と 対 応 付 けされたものが 再 現 できなかった これらの 用 語 対 は フレーズテーブル において 翻 訳 確 率 が 低 くなり 再 現 できなかったと 考 え られる 提 案 手 法 で 再 現 できなかった 用 語 対 も 一 般 的 でない 訳 語 と 対 応 付 けされたものであったが 引 用 分 析 手 法 を 用 いることにより ある 程 度 問 題 が 改 善 されるこ とが 確 認 できた よって 引 用 分 析 手 法 を 用 いた 日 英 用 語 対 の 抽 出 を 行 う 本 研 究 の 提 案 手 法 は より 多 くの 正 解 を 再 現 することにおいて 有 効 であると 考 えられる 6 おわりに 本 研 究 では 日 英 特 許 データベースから 上 位 下 位 概 念 を 獲 得 し 日 英 の 用 語 間 の 対 応 付 けを 行 うことにより シソーラスの 自 動 構 築 を 行 った 上 位 下 位 概 念 の 抽 出 の 際 定 型 表 現 に 着 目 し 日 英 特 許 データベースから 上 位 下 位 の 用 語 対 を 獲 得 した また 日 英 の 用 語 間 の 対 応 付 けにはフレーズテーブルを 用 い その 後 引 用 分 析 手 法 を 用 いて 日 英 用 語 対 の 絞 り 込 みを 行 った 実 験 の 結 果 提 案 手 法 において 精 度 77.5% 再 現 率 79.4% F 値 78.3% という 結 果 が 得 られた また 比 較 手 法 を 用 い 抽 出 した 用 語 対 の 精 度 と 再 現 率 を 比 較 することで 提 案 手 法 が 有 効 なものであることを 示 した 謝 辞 本 研 究 で 用 いた 米 国 特 許 データは 国 立 情 報 学 研 究 所 の 許 可 を 得 て NTCIR テストコレクションを 利 用 させ ていただいた 参 考 文 献 [Hearst 1992] Hearst, M.A., Automatic Acquisition of Hyponyms from Large Text Corpora, Proceedings of the 14th International Conference on Computational Linguistics, pp.539-545, 1992. [Kessler 1963] Kessler, M.M., Bibliographic Coupling between Scientific Papers, American Documentation, Vol.14, No.1, pp.10-25, 1963. [Small 1973] Small, H., Co-citation in the Scientific Literature: A New Measure of the Relationship between Two Documents, Journal of the American Society for Information Science, Vol.24, pp.265-269, 1973. [ 相 澤 2006] 相 澤 彰 子 類 語 関 係 抽 出 タスクにおける コーパス 規 模 拡 大 の 影 響 情 報 処 理 学 会 研 究 報 告 自 然 言 語 処 理 NL-175 pp.91-98 2006 [ 安 藤 2003] 安 藤 まや 関 根 聡 石 崎 俊 定 型 表 現 を 利 用 した 新 聞 記 事 からの 下 位 概 念 単 語 の 自 動 抽 出 情 報 処 理 学 会 研 究 報 告 自 然 言 語 処 理 NL-157 pp.77-82 2003 [ 大 石 2006] 大 石 康 智 伊 藤 克 亘 武 田 一 哉 藤 井 敦 単 語 の 共 起 関 係 と 構 文 情 報 を 利 用 した 単 語 階 層 関 係 の 統 計 的 自 動 識 別 情 報 処 理 学 会 研 究 報 告 SLP-61 pp.25-30 2006 [ 新 里 2005] 新 里 圭 司 鳥 澤 健 太 郎 HTML 文 書 から の 単 語 間 の 上 位 下 位 関 係 の 自 動 獲 得 自 然 言 語 処 理 Vol.12 No.1 pp.125-151 2005 [ 森 下 2010] 森 下 洋 平 梁 冰 宇 津 呂 武 仁 山 本 幹 雄 フレーズテーブル 及 び 既 存 対 訳 辞 書 を 用 いた 専 門 用 語 の 訳 語 推 定 電 子 情 報 通 信 学 会 論 文 誌 D Vol. J93-D No.11 pp.2525-2537 2010 寄 稿 集 4 機 械 翻 訳 技 術 の 向 上 YEAR BOOK 2O11 253