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もの( 交 通 事 故 事 件 に 係 るものを 除 く ) 3 重 大 な 交 通 事 故 事 件 とは 次 に 掲 げる 交 通 事 故 事 件 をいう (1) 死 亡 ひき 逃 げ 事 件 車 両 等 の 交 通 により 人 が 死 亡 した 場 合 において 道 路 交 通 法 ( 昭 和

性 行 為 とは 性 交 及 び 性 交 類 似 行 為 と 同 義 であり( 昭 和 40 年 7 月 12 日 新 潟 家 裁 長 岡 支 部 決 定 ) わいせつな 行 為 とは いたずらに 性 欲 を 刺 激 興 奮 せしめたり その 露 骨 な 表 現 によって 健 全 な 常 識 のある

5 長 野 地 裁 H 強 盗 殺 人, 死 体 遺 棄 H H ( 東 京 高 裁 ) H 横 浜 地 裁 H 殺 人 H H 静 岡 地 裁 H 殺 人, 死 体 遺 棄, 強

(2) 勤 続 5 年 を 超 え 10 年 までの 期 間 については 勤 続 期 間 1 年 につき 本 俸 月 額 の100 分 の140 (3) 勤 続 10 年 を 超 え 20 年 までの 期 間 については 勤 続 期 間 1 年 につき 本 俸 月 額 の100 分 の180 (4)

Taro-29職員退職手当支給規程

為 が 行 われるおそれがある 場 合 に 都 道 府 県 公 安 委 員 会 がその 指 定 暴 力 団 等 を 特 定 抗 争 指 定 暴 力 団 等 として 指 定 し その 所 属 する 指 定 暴 力 団 員 が 警 戒 区 域 内 において 暴 力 団 の 事 務 所 を 新 たに 設

(4) 運 転 する 学 校 職 員 が 交 通 事 故 を 起 こし 若 しくは 交 通 法 規 に 違 反 したことにより 刑 法 ( 明 治 40 年 法 律 第 45 号 ) 若 しくは 道 路 交 通 法 に 基 づく 刑 罰 を 科 せられてから1 年 を 経 過 していない 場 合 同

第 9 条 の 前 の 見 出 しを 削 り 同 条 に 見 出 しとして ( 部 分 休 業 の 承 認 ) を 付 し 同 条 中 1 日 を 通 じて2 時 間 ( 規 則 で 定 める 育 児 休 暇 を 承 認 されている 職 員 については 2 時 間 から 当 該 育 児 休 暇 の

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要 な 指 示 をさせることができる ( 検 査 ) 第 8 条 甲 は 乙 の 業 務 にかかる 契 約 履 行 状 況 について 作 業 完 了 後 10 日 以 内 に 検 査 を 行 うものとする ( 発 生 した 著 作 権 等 の 帰 属 ) 第 9 条 業 務 によって 甲 が 乙 に

根 本 確 根 本 確 民 主 率 運 民 主 率 運 確 施 保 障 確 施 保 障 自 治 本 旨 現 資 自 治 本 旨 現 資 挙 管 挙 管 代 表 監 査 教 育 代 表 監 査 教 育 警 視 総 監 道 府 県 警 察 本 部 市 町 村 警 視 総 監 道 府 県 警 察 本 部

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役員退職手当規程

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答申書

当 が 支 払 われない 場 合 において 前 項 第 2 号 に 該 当 するときは 機 構 は 当 該 遺 族 に 対 し 第 2 項 に 規 定 する 事 情 を 勘 案 して 当 該 退 職 手 当 の 全 部 又 は 一 部 を 支 給 しないこととする 措 置 を 行 うことができる 5

(3) 勤 続 期 間 が 10 年 以 上 であって 定 年 により 退 職 したとき (4) 勤 続 期 間 が 15 年 以 上 であって 職 務 上 特 に 功 労 があった 者 が 退 職 したとき (5) 前 各 号 に 準 ずる 理 由 により 増 額 する 必 要 があると 理 事

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退職手当とは

発 覚 理 由 違 反 態 様 在 日 期 間 違 反 期 間 婚 姻 期 間 夫 婦 間 の 子 刑 事 処 分 等 1 出 頭 申 告 不 法 残 留 約 13 年 9 月 約 9 年 11 月 約 1 年 10 月 2 出 頭 申 告 不 法 入 国 約 4 年 2 月 約 4 年 2 月 約

2 前 項 に 定 める 日 に 支 給 する 給 与 は 総 額 給 与 を12 分 割 した 額 ( 以 下 給 与 月 額 という ) 扶 養 手 当 住 居 手 当 通 勤 手 当 単 身 赴 任 手 当 寒 冷 地 手 当 及 び 業 績 手 当 並 びに 前 月 分 の 超 過 勤 務

2 役 員 の 報 酬 等 の 支 給 状 況 平 成 27 年 度 年 間 報 酬 等 の 総 額 就 任 退 任 の 状 況 役 名 報 酬 ( 給 与 ) 賞 与 その 他 ( 内 容 ) 就 任 退 任 2,142 ( 地 域 手 当 ) 17,205 11,580 3,311 4 月 1

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中 間 利 払 日 とし 預 入 日 または 前 回 の 中 間 利 払 日 からその 中 間 利 払 日 の 前 日 までの 日 数 および 通 帳 または 証 書 記 載 の 中 間 利 払 利 率 によって 計 算 した 中 間 利 払 額 ( 以 下 中 間 払 利 息 といいます )を 利

議案第   号

平成16年年金制度改正 ~年金の昔・今・未来を考える~

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上 に 表 示 された 金 額 および 預 入 期 間 に 応 じた 利 率 を 適 用 します この 利 率 を 以 下 約 定 利 率 と いいます 専 用 定 期 預 金 の 利 息 は あらかじめ 指 定 された 単 利 または 複 利 のいずれかの 方 法 ( 以 下 単 利 型 または

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の 親 族 については 職 員 との 親 等 の 近 い 者 を 先 順 位 とする 3 退 職 手 当 の 支 給 を 受 けるべき 遺 族 のうち 同 順 位 の 者 が2 人 以 上 ある 場 合 には そ の 人 数 によって 等 分 して 支 給 する 4 次 に 掲 げる 者 は 退 職

職 員 退 職 手 当 支 給 規 程 平 成 15 年 10 月 1 日 規 程 第 号 改 正 平 成 17 年 1 月 31 日 規 程 第 17-1 号 改 正 平 成 20 年 12 月 22 日 規 程 第 号 改 正 平 成 22 年 3 月 18 日 規 程

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する 婦 人 相 談 所 その 他 適 切 な 施 設 による 支 援 の 明 記 禁 止 命 令 等 をすることが できる 公 安 委 員 会 等 の 拡 大 等 の 措 置 が 講 じられたものである 第 2 改 正 法 の 概 要 1 電 子 メールを 送 信 する 行 為 の 規 制 ( 法

いう )は 警 告 をしたときは 速 やかに その 内 容 及 び 日 時 を 当 該 警 告 を 求 める 旨 の 申 出 をした 者 に 通 知 しなければならないこととされ また 警 告 をし なかったときは 速 やかに その 旨 及 び 理 由 を 当 該 警 告 を 求 める 旨 の 申

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- 1 - 総 控 負 傷 疾 病 療 養 産 産 女 性 責 帰 べ 由 試 ~ 8 契 約 契 約 完 了 ほ 契 約 超 締 結 専 門 的 知 識 技 術 験 専 門 的 知 識 高 大 臣 専 門 的 知 識 高 専 門 的 知 識 締 結 契 約 満 歳 締 結 契 約 契 約 係 始

人 に 使 用 される 者 としての 勤 続 期 間 を 当 該 職 員 となつた 者 の 職 員 としての 勤 続 期 間 に 通 算 することと 定 められている 法 人 に 限 る )をいう 3 第 一 項 の 退 職 手 当 通 算 予 定 職 員 とは 任 命 権 者 又 はその 委 任

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っては 出 産 予 定 日 から 出 生 した 日 から 起 算 して8 週 間 を 経 過 する 日 の 翌 日 までとする ) の 期 間 内 に 当 該 子 に 係 る 最 初 の 育 児 休 業 を 開 始 し かつ 終 了 した 場 合 であって 当 該 子 に 係 る 再 度 の 育 児

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国 税 通 則 法 の 見 直 しについて(23 年 度 改 正 ) 税 務 調 査 手 続 の 明 確 化 更 正 の 請 求 期 間 の 延 長 処 分 の 理 由 附 記 等 国 税 通 則 法 の 大 幅 な 見 直 しを 実 施 主 な 改 正 事 項 1. 税 務 調 査 手 続 ( 平

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平成16年度

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となるため 退 職 をし かつ 引 き 続 き 国 家 公 務 員 等 として 在 職 (その 者 が 更 に 引 き 続 き 当 該 国 家 公 務 員 以 外 の 他 の 国 等 の 機 関 に 係 る 国 家 公 務 員 等 として 在 職 した 場 合 を 含 む )した 後 引 き 続 い

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失 によって 告 知 事 項 について 事 実 を 告 げずまたは 不 実 のことを 告 げたときは 共 済 契 約 者 に 対 する 書 面 による 通 知 をもって 共 済 契 約 を 解 除 することができます た だし 当 組 合 がその 事 実 を 知 りまたは 過 失 によってこれを 知

(1) 社 会 保 険 等 未 加 入 建 設 業 者 の 確 認 方 法 等 受 注 者 から 提 出 される 施 工 体 制 台 帳 及 び 添 付 書 類 により 確 認 を 行 います (2) 違 反 した 受 注 者 へのペナルティー 違 反 した 受 注 者 に 対 しては 下 記 のペ

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Q IFRSの特徴について教えてください

ハ 1 週 間 の 所 定 労 働 日 数 が2 日 以 下 の 職 員 ( 育 児 休 業 の 申 出 等 ) 第 4 条 育 児 休 業 を 取 得 しようとする 職 員 は 育 児 休 業 を 開 始 しようとする 期 間 の 初 日 ( 以 下 育 児 休 業 開 始 予 定 日 という )

取 り 消 された 後 当 該 産 前 の 休 業 又 は 出 産 に 係 る 子 若 しくは 同 号 に 規 定 する 承 認 に 係 る 子 が 死 亡 し 又 は 養 子 縁 組 等 により 職 員 と 別 居 することとなったこと (2) 育 児 休 業 をしている 職 員 が 休 職 又

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行 政 解 釈 上 特 定 商 取 引 法 の 通 信 販 売 における 事 業 者 について 経 産 省 は 販 売 業 者 または 役 務 提 供 事 業 者 とは 販 売 または 役 務 の 提 供 を 業 として 営 む 者 の 意 味 で あり 業 として 営 む とは 営 利 の 意 思

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2. ど の 様 な 経 緯 で 発 覚 し た の か ま た 遡 っ た の を 昨 年 4 月 ま で と し た の は 何 故 か 明 ら か に す る こ と 回 答 3 月 17 日 に 実 施 し た ダ イ ヤ 改 正 で 静 岡 車 両 区 の 構 内 運 転 が 静 岡 運

第 8 条 乙 は 甲 に 対 し 仕 様 書 に 定 める 期 日 までに 所 定 の 成 果 物 を 検 収 依 頼 書 と 共 に 納 入 する 2 甲 は 前 項 に 定 める 納 入 後 10 日 以 内 に 検 査 を 行 うものとする 3 検 査 不 合 格 となった 場 合 甲 は

(5) 事 業 者 等 自 転 車 及 び 自 動 車 の 製 造 輸 入 販 売 又 は 修 理 を 業 として 行 っている 者 及 びそ れらの 者 の 団 体 並 びにその 他 の 事 業 者 をいう (6) 所 有 者 等 自 動 車 の 所 有 権 占 有 権 若 しくは 使 用 権 を

を 行 わなければならない 適 正 な 運 用 方 針 を 厳 格 に 運 用 することによっては じめて 人 がみだりにその 容 ぼう 等 を 撮 影 されない 自 由 や 権 利 の 保 護 と 犯 罪 発 生 の 抑 止 という 防 犯 カメラの 設 置 目 的 との 調 和 が 実 現 され

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福 岡 厚 生 年 金 事 案 4486 第 1 委 員 会 の 結 論 申 立 人 の 申 立 期 間 については その 主 張 する 標 準 報 酬 月 額 に 基 づく 厚 生 年 金 保 険 料 を 事 業 主 により 給 与 から 控 除 されていたことが 認 められることから 申 立 期

ー ただお 課 長 を 表 示 するものとする ( 第 三 者 に 対 する 許 諾 ) 第 4 条 甲 は 第 三 者 に 対 して 本 契 約 において 乙 に 与 えた 許 諾 と 同 一 又 は 類 似 の 許 諾 を することができる この 場 合 において 乙 は 甲 に 対 して 当

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刑 法 各 論 の 基 礎 25 個 人 的 法 益 に 対 する 罪 人 の 自 由 に 対 する 罪 (1) 07 行 動 の 自 由 意 思 決 定 の 自 由 法 益 主 体 = 個 人 人 の 生 命 身 体 に 対 する 罪 人 の 自 由 に 対 する 罪 生 活 の 平 穏 に 対 する 罪 (プライバシーに 対 する 罪 ) 名 誉 信 用 に 対 する 罪 財 産 に 対 する 罪 到 達 目 標 逮 捕 監 禁 罪 の 保 護 法 益 は 何 か どういう 事 例 において 保 護 法 益 が 問 題 となるのか 逮 捕 監 禁 罪 は 状 態 犯 か それとも 継 続 犯 か また 逮 捕 行 為 と 監 禁 行 為 は どのような 関 係 に 立 つのか 被 害 者 に 行 動 能 力 意 思 能 力 は 必 要 か 被 害 者 に 身 体 活 動 を 拘 束 されていることについての 認 識 が 必 要 か 逮 捕 監 禁 罪 における 被 害 者 の 承 諾 は 犯 罪 の 成 立 にどのような 影 響 を 与 えるのか 脅 迫 罪 強 要 罪 の 保 護 法 益 は 何 か 脅 迫 の 対 象 は 自 己 または 親 族 に 限 定 されるのか 法 人 に 対 して 脅 迫 罪 の 成 立 が 認 められるか 略 取 誘 拐 罪 の 保 護 法 益 は 何 だと 考 えられるのか 略 取 行 為 の 意 義 誘 拐 行 為 の 意 義 を 整 理 しなさい 1. 自 由 に 対 する 罪 の 類 型 自 由 : 人 間 としての 自 然 的 社 会 的 生 活 にとって 不 可 欠 な 要 素 1 移 動 の 自 由 : 逮 捕 監 禁 罪 ( 刑 法 220 条 -221 条 ) 2 意 思 の 自 由 : 脅 迫 罪 ( 刑 法 222 条 ) 強 要 罪 ( 刑 法 223 条 ) 3 行 動 の 自 由 : 略 取 誘 拐 及 び 人 身 売 買 の 罪 ( 第 33 章 : 刑 法 224 条 -229 条 ) 4 性 的 自 由 : 強 制 わいせつ 罪 ( 刑 法 176 条 ) 強 姦 罪 ( 刑 法 177 条 )ほか 5 社 会 活 動 の 自 由 : 信 用 毀 損 業 務 妨 害 罪 ( 刑 法 233 条 234 条 の 2) 2. 逮 捕 監 禁 罪 ( 刑 法 220 条 -221 条 ) 設 例 Xは 13 歳 の 少 女 Aを 姦 淫 しようと 考 え 入 院 中 であるAの 母 親 Bのところへ 連 れて 行 って やると 騙 してAを 自 動 車 に 乗 せた 途 中 で 病 院 とは 別 の 方 向 へ 進 んでいることに 気 付 いた Aが 車 を 止 めて 降 ろしてくれと 再 三 にわたりXに 頼 んだが Xはその 要 求 を 無 視 して 自 動 車 を 疾 走 させた しばらくして 目 撃 者 の 通 報 により 行 われていた 検 問 でXの 運 転 する 自 動 車 は 停 車 させられ Aは 救 助 された Xの 行 為 について 何 罪 が 成 立 すると 考 えられるか(なお 特 別 法 違 反 の 関 係 を 除 く ) 2.1. 保 護 法 益 ( 自 由 の 意 義 ) 人 の 身 体 活 動 の 自 由 人 の 身 体 的 移 動 行 動 の 自 由 を 保 護 (a) 現 実 的 自 由 説 : (b) 可 能 的 自 由 説 ( 判 例 通 説 ): 2.2. 法 的 性 質 継 続 犯 逮 捕 監 禁 行 為 が 確 実 に 人 の 身 体 の 自 由 を 拘 束 したと 認 められる 程 度 の 時 間 の 継 続 を 必 要 とする( 大 判 昭 和 7 年 2 月 29 日 刑 集 11 巻 141 頁 )

刑 法 各 論 の 基 礎 26 2.3. 客 体 人 = 行 為 者 以 外 の 自 然 人 (1) 行 動 能 力 ( 行 為 能 力 の 要 否 ) 設 例 Xは 生 後 2 か 月 の 乳 児 Aが 寝 ている 部 屋 をそっと 施 錠 して Aを 閉 じ 込 めてしまった X の 行 為 は 逮 捕 監 禁 罪 を 構 成 するか 行 動 能 力 ( 行 為 能 力 )= 単 純 に 行 為 する 能 力 民 法 上 の 行 為 能 力 事 実 上 の 行 動 能 力 があれば 本 罪 の 客 体 となる (2) 意 思 能 力 の 要 否 設 例 Yは 熟 睡 しているBが 寝 ている 部 屋 を 外 から 施 錠 して 出 られなくしてしまった しばらく してBが 目 を 覚 まし 部 屋 から 出 られなくなっているのを 知 って 出 してくれ と 大 声 で 叫 んでドアを 叩 いた Yの 行 為 は どの 時 点 から 逮 捕 監 禁 罪 を 構 成 するか (a) 意 思 能 力 不 要 説 ( 判 例 通 説 : 曽 根 威 彦 ): 被 害 者 に 意 思 能 力 は 不 要 ( 京 都 地 判 昭 和 45 年 10 月 12 日 刑 月 2 巻 10 号 1104 頁 ) (b) 意 思 能 力 必 要 説 ( 有 力 説 : 川 端 博 前 田 雅 英 ): 被 害 者 には 意 思 能 力 が 必 要 (3) 身 体 活 動 を 拘 束 されていることについての 認 識 の 要 否 設 例 行 為 者 Xは 13 歳 になるAを 母 親 Bのところへ 連 れて 行 ってやると 騙 して 車 に 乗 せ 途 中 で 様 子 が 変 なことに 気 づいたAが 停 止 を 要 求 したにも 関 らず これを 無 視 して 疾 走 した Xの 罪 責 はどうか ( 最 二 小 決 昭 和 33 年 3 月 19 日 刑 集 12 巻 4 号 636 頁 参 照 ) (a) 認 識 不 要 説 ( 判 例 通 説 ): 最 二 小 決 昭 和 33 年 3 月 19 日 刑 集 12 巻 4 号 636 頁 (b) 認 識 必 要 説 ( 有 力 説 : 西 田 典 之 前 田 雅 英 ): 2.4. 逮 捕 監 禁 罪 ( 刑 法 220 条 ) (1) 逮 捕 監 禁 の 意 義 逮 捕 : 人 の 身 体 を 直 接 に 拘 束 して 自 由 を 奪 うことをいい その 方 法 の 如 何 を 問 わない 自 由 の 束 縛 は 多 少 の 時 間 継 続 することが 必 要 である 1 有 形 的 方 法 : 2 無 形 的 方 法 : 監 禁 : 人 の 身 体 を 間 接 的 に 拘 束 してその 身 体 活 動 を 奪 うことで あり 人 が 一 定 の 区 画 された 場 所 から 脱 出 することを 不 能 または 著 しく 困 難 にすることをいう 1 有 形 的 方 法 : 2 無 形 的 方 法 :

刑 法 各 論 の 基 礎 27 逮 捕 と 監 禁 の 関 係 : 逮 捕 行 為 後 の 監 禁 行 為 は 包 括 一 罪 同 一 構 成 要 件 内 の 行 為 態 様 の 違 い (2) 逮 捕 監 禁 行 為 の 違 法 性 ( 不 法 に の 意 義 ) (a) 違 法 要 素 説 ( 通 説 ): 違 法 性 の 一 般 原 則 を 注 意 的 に 規 定 したもの (b) 構 成 要 件 要 素 説 ( 藤 木 英 雄 ): 適 法 行 為 による 場 合 には 不 法 ではないので 構 成 要 件 該 当 性 が 否 定 される (3) 逮 捕 監 禁 の 承 諾 設 例 接 客 婦 として 雇 い 入 れた 被 害 者 Aが 逃 げ 出 したので 行 為 者 Xは これを 連 れ 戻 そうと 考 え て 入 院 中 である 被 害 者 の 母 親 Bのもとに 行 くのだと 騙 して あらかじめ 自 宅 まで 直 行 する よう 言 い 含 めて 雇 ったタクシーに 乗 り 込 ませ 自 分 もこれに 乗 り 込 んで 自 動 車 を 疾 走 させ た Xの 罪 責 はどうか ( 最 二 小 決 昭 和 33 年 3 月 19 日 刑 集 12 巻 4 号 636 頁 参 照 ) 逮 捕 監 禁 行 為 に 対 する 被 害 者 の 承 諾 に 瑕 疵 がある 場 合 行 為 の 適 法 性 を 基 礎 づける 事 実 を 誤 信 した 場 合 には 正 当 化 事 由 の 錯 誤 の 問 題 (a) 本 質 的 錯 誤 説 ( 判 例 通 説 ): (b) 法 益 関 係 的 錯 誤 説 : (4) 罪 数 人 を 逮 捕 し 引 き 続 いて 監 禁 した 場 合 には 単 純 一 罪 が 成 立 する 複 数 人 を 逮 捕 監 禁 すれば 被 害 者 各 人 について 犯 罪 が 成 立 し 観 念 的 競 合 の 関 係 2.5. 逮 捕 監 禁 致 死 傷 罪 ( 刑 法 221 条 ) 設 例 行 為 者 Xは 海 を 見 に 行 こうと 騙 して 被 害 者 Aをオートバイの 後 に 乗 せて 疾 走 していたが 途 中 で 様 子 が 変 なことに 気 づいたAが 停 止 を 要 求 して 暴 れたため オートバイから 転 落 し 頭 部 を 強 打 して 死 亡 した Xの 罪 責 はどうか 逮 捕 監 禁 罪 の 結 果 的 加 重 犯 である 死 傷 結 果 が 逮 捕 監 禁 行 為 自 体 から または 逮 捕 監 禁 の 手 段 としての 行 為 から 発 生 したこと が 必 要 である( 手 段 性 説 ) 機 会 説? 3. 脅 迫 罪 ( 刑 法 222 条 ) 強 要 罪 ( 刑 法 223 条 ) 3.1. 保 護 法 益 (1) 脅 迫 罪 の 保 護 法 益 (a) 意 思 決 定 の 自 由 に 対 する 危 険 犯 ( 判 例 通 説 ): 害 悪 が 相 手 方 に 知 らされれば 既 遂 に 達 する 脅 迫 罪 の 成 立 には 現 実 に 恐 怖 心 が 生 じたことまでは 必 要 ない (b) 個 人 の 私 生 活 の 平 穏 または 法 的 安 全 感 ( 有 力 説 ): (2) 強 要 罪 の 保 護 法 益 意 思 決 定 の 自 由 または 意 思 実 現 の 自 由

刑 法 各 論 の 基 礎 28 3.2. 脅 迫 罪 ( 刑 法 222 条 ) (1) 脅 迫 の 意 義 脅 迫 : 一 般 通 常 人 を 畏 怖 させる 程 度 の 害 悪 を 告 知 する 行 為 1 脅 迫 の 対 象 : 自 己 (1 項 )または 親 族 (2 項 )の 生 命 身 体 自 由 名 誉 財 産 ( 限 定 列 挙 ) (a) 限 定 説 ( 判 例 通 説 ): 自 己 ( 被 害 者 本 人 )と 親 族 に 限 定 される (b) 拡 張 説 : 内 縁 関 係 にある 者 や 法 律 上 の 手 続 を 完 了 していない 養 親 子 関 係 にある 者 も 親 族 に 含 まれる 2 害 悪 の 内 容 : 客 観 的 に 人 を 畏 怖 させるに 足 りる 程 度 のもの 現 に 恐 怖 心 を 生 ずることまでは 不 要 ( 危 険 犯 ) 害 悪 の 発 生 が 何 らかの 形 で 行 為 者 によって 可 能 なものとされうること( 告 知 者 の 左 右 し 得 る 害 悪 ) 3 告 知 の 方 法 : 言 語 によるほか 動 作 で 脅 すことも 含 まれる (2) 脅 迫 の 客 体 自 然 人 法 人 については 意 思 決 定 の 自 由 または 意 思 実 現 の 自 由 を 認 めることができない( 大 阪 高 判 昭 和 61 年 12 月 16 日 高 刑 集 39 巻 4 号 592 頁 ) 3.3. 強 要 罪 ( 刑 法 223 条 ) 脅 迫 または 暴 行 を 用 いて 他 人 に 義 務 のないことを 行 なわせ または 権 利 の 行 使 を 妨 害 する 行 為 を 内 容 とする 犯 罪 である( 刑 法 223 条 1 項 2 項 ) (1) 法 的 性 質 結 果 犯 ( 危 険 犯 : 脅 迫 罪 ) 未 遂 罪 を 処 罰 ( 刑 法 223 条 3 項 ) (2) 強 要 行 為 1 脅 迫 暴 行 : 脅 迫 または 暴 行 を 手 段 とする 脅 迫 行 為 による 場 合 が 典 型 暴 行 行 為 も 含 む( 広 義 の 暴 行 ) 2 義 務 なきこと と 行 なうべき 権 利 : 法 的 義 務 があって も 脅 迫 暴 行 をもってその 履 行 を 強 制 することは 許 されない (3) 未 遂 罪 1 暴 行 脅 迫 が 未 遂 の 場 合 を 含 む( 判 例 通 説 ) 2 脅 迫 罪 との 区 別 故 意 が 強 要 罪 であれば 強 要 罪 3 脅 迫 を 加 えたところ 被 害 者 が 哀 れに 思 って 義 務 なき 事 を 行 な った 場 合 (4) 罪 数 関 係 逮 捕 や 監 禁 強 制 わいせつ 強 姦 恐 喝 強 盗 などの 犯 罪 が 成 立 する 場 合 に その 過 程 で 強 要 行 為 が 行 なわれても 強 要 罪 は 独 立 に 成 立 しない( 法 条 競 合 )

刑 法 各 論 の 基 礎 29 4. 略 取 誘 拐 罪 ( 刑 法 224 条 -229 条 ) 略 取 誘 拐 罪 ( 拐 取 罪 )は 暴 行 脅 迫 または 欺 罔 誘 惑 を 手 段 として 人 を 現 在 の 生 活 環 境 から 離 脱 させて 自 己 または 第 三 者 の 実 力 支 配 内 に 移 す 行 為 を 内 容 とする 犯 罪 である 4.1. 保 護 法 益 (a) 被 拐 取 者 の 自 由 ( 木 村 亀 二 佐 伯 千 仭 香 川 達 夫 内 田 文 昭 前 田 雅 英 ): もっぱら 略 取 または 誘 拐 される 者 すなわち 被 拐 取 者 の 自 由 を 侵 害 することである (b) 被 拐 取 者 の 自 由 + 保 護 環 境 における 安 全 ( 井 田 良 ): 被 拐 取 者 の 自 由 に 加 えて 保 護 された 環 境 における 安 全 も 含 まれる (c) 人 的 保 護 関 係 の 侵 害 ( 小 野 清 一 郎 ): 自 由 の 侵 害 を 伴 うが より 基 本 的 なのは 人 的 保 護 関 係 の 侵 害 である (d) 被 拐 取 者 の 自 由 及 び 親 権 者 等 の 保 護 監 督 権 ( 判 例 通 説 : 団 藤 重 光 藤 木 英 雄 平 野 龍 一 川 端 博 ): 被 拐 取 者 の 自 由 が 保 護 法 益 であるが 被 拐 取 者 が 未 成 年 者 精 神 病 者 である 場 合 には 親 権 者 等 の 保 護 監 督 権 ( 監 護 権 )も 法 益 に 含 まれる( 大 判 明 治 43 年 9 月 30 日 刑 録 16 輯 1569 頁 ) 4.2. 略 取 誘 拐 の 意 義 略 取 および 誘 拐 は いずれも 他 人 を 現 在 の 保 護 されている 生 活 環 境 から 不 法 に 離 脱 させて 行 為 者 または 第 三 者 の 実 力 的 支 配 内 におく 行 為 である 略 取 と 誘 拐 は 手 段 を 異 にする 略 取 : 暴 行 脅 迫 を 手 段 とする 誘 拐 : 欺 罔 誘 惑 を 手 段 とする 参 考 文 献 (より 詳 しく 学 びたい 人 の 為 に) 松 原 芳 博 (ロー クラス 刑 法 各 論 の 考 え 方 6) 自 由 に 対 する 罪 (1) 法 学 セミナー 57 巻 4 号 (2012.04)148-154 頁 松 原 芳 博 (ロー クラス 刑 法 各 論 の 考 え 方 7) 自 由 に 対 する 罪 (2) 法 学 セミナー 57 巻 5 号 (2012.05)110-116 頁 佐 伯 仁 志 ( 刑 法 各 論 の 考 え 方 楽 しみ 方 6) 逮 捕 監 禁 罪 法 学 教 室 360 号 (2010.09)100-108 頁 山 口 厚 自 由 に 対 する 罪 ( 犯 罪 各 論 の 基 礎 4) 月 刊 法 学 教 室 203 号 (1997.08)74-81 頁 山 中 敬 一 行 動 ( 精 神 )の 自 由 に 対 する 罪 (リレー 連 載 刑 法 各 論 5) 法 学 セミナー 37 巻 10 号 (1992.10)98-103 頁