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原 判 決 の 判 示 するその 余 の 量 刑 事 情 にも 照 らすと 本 件 量 刑 はなお 不 当 とはいえず 本 件 については いまだ 刑 訴 法 411 条 を 適 用 すべきものとは 認 められない 試 験 における 論 述 例 後 行 行 為 者 ( 甲 )が 自 己 の 加 担 前 の 共 犯 者 ( 乙 )の 傷 害 行 為 について 責 任 を 負 うか 承 継 的 共 同 正 犯 の 成 否 が 問 題 となる 例 1 そもそも 承 継 的 共 同 正 犯 の 成 否 は 一 罪 の 途 中 から 関 与 した 者 に 自 己 の 関 与 前 の 行 為 についても 責 任 を 負 わせられるかの 問 題 である 本 件 で 傷 害 罪 は 1 個 の 傷 害 結 果 につき1 個 の 傷 害 罪 が 成 立 するのであり 甲 乙 の 共 同 による 傷 害 と 先 行 者 乙 の 傷 害 行 為 は 別 個 独 立 の 罪 であるから 乙 の 単 独 行 為 による 傷 害 結 果 に 甲 が 因 果 を 及 ぼすことなどおよそありえず 承 継 的 共 同 正 犯 は 成 立 しない よって 甲 は 先 行 者 の 行 為 につき 責 任 を 負 わない 例 2 この 点 後 行 者 の 行 為 が 先 行 者 の 行 為 に 因 果 を 及 ぼすことはないから 原 則 と して 承 継 的 共 同 正 犯 は 成 立 しない もっとも 後 行 者 が 先 行 者 の 行 為 を 自 己 の 犯 罪 遂 行 の 手 段 として 積 極 的 に 利 用 する 意 図 のもとにこれを 利 用 した 場 合 には 相 互 利 用 補 充 関 係 が 認 められ 承 継 的 共 同 正 犯 が 成 立 すると 解 する 本 件 では たしかに 甲 は 逃 亡 や 抵 抗 が 困 難 になっている 状 態 を 利 用 して 更 に 暴 行 に 及 んだともいいうる しかし それは 甲 が 共 謀 加 担 後 に 更 に 暴 行 を 行 った 動 機 ないし 契 機 にすぎず 共 謀 加 担 前 の 乙 の 傷 害 行 為 ないし 結 果 を 積 極 的 に 利 用 したとは 評 価 できない よって 甲 に 承 継 的 共 同 正 犯 は 成 立 しない 例 2で 論 じる 場 合 には 先 行 者 乙 の 暴 行 行 為 が 後 行 者 との 共 同 行 為 まで 一 連 一 体 のものと 評 価 される 必 要 があるであろう もっとも 一 連 一 体 と 評 価 するため には 乙 の 暴 行 では 傷 害 結 果 が 発 生 していなかったか いずれの 行 為 から 傷 害 結 果 が 発 生 したのか 不 明 であることが 条 件 となろう 3

2 PTSDと 傷 害 最 決 平 成 24 年 7 月 24 日 事 案 の 概 要 と 争 点 被 害 者 を 監 禁 し,その 結 果 として 被 害 者 に 外 傷 後 ストレス 障 害 (PTSD)を 発 症 さ せた 場 合 について, 監 禁 致 傷 罪 の 成 否 決 定 要 旨 原 判 決 及 びその 是 認 する 第 1 審 判 決 の 認 定 によれば 被 告 人 は 本 件 各 被 害 者 を 不 法 に 監 禁 し その 結 果 各 被 害 者 について 監 禁 行 為 やその 手 段 等 として 加 えられた 暴 行 脅 迫 により 一 時 的 な 精 神 的 苦 痛 やストレスを 感 じたという 程 度 にとどまらず いわゆる 再 体 験 症 状 回 避 精 神 麻 痺 症 状 及 び 過 覚 醒 症 状 といった 医 学 的 な 診 断 基 準 において 求 められ ている 特 徴 的 な 精 神 症 状 が 継 続 して 発 現 していることなどから 精 神 疾 患 の 一 種 である 外 傷 後 ストレス 障 害 ( 以 下 PTSD という )の 発 症 が 認 められたというのである 所 論 は PTSDのような 精 神 的 障 害 は 刑 法 上 の 傷 害 の 概 念 に 含 まれず したがって 原 判 決 が 各 被 害 者 についてPTSDの 傷 害 を 負 わせたとして 監 禁 致 傷 罪 の 成 立 を 認 めた 第 1 審 判 決 を 是 認 した 点 は 誤 っている 旨 主 張 する しかし 上 記 認 定 のような 精 神 的 機 能 の 障 害 を 惹 起 した 場 合 も 刑 法 にいう 傷 害 に 当 たると 解 するのが 相 当 である したがって 本 件 各 被 害 者 に 対 する 監 禁 致 傷 罪 の 成 立 を 認 めた 原 判 断 は 正 当 である 試 験 における 論 述 例 暴 行 脅 迫 の 結 果 として PTSDを 発 症 させた 場 合 に 傷 害 ( 致 傷 )にあたるか この 点 傷 害 とは 人 の 生 理 的 機 能 を 害 することをいう そして 人 の 生 理 的 機 能 には 身 体 機 能 のみならず 精 神 的 機 能 も 含 まれると 考 えられ るから それを 害 することは 傷 害 にあたると 解 される 本 件 では 一 時 的 な 精 神 的 苦 痛 やストレスを 感 じたという 程 度 にとどまらず いわ ゆる 再 体 験 症 状 回 避 精 神 麻 痺 症 状 及 び 過 覚 醒 症 状 といった 医 学 的 な 診 断 基 準 にお いて 求 められている 特 徴 的 な 精 神 症 状 が 継 続 して 発 現 していることなどから 精 神 疾 患 の 一 種 である 外 傷 後 ストレス 障 害 (PTSD)を 発 症 させており 人 の 精 神 的 機 能 を 害 したといえる よって 傷 害 にあたる 4

3 威 力 業 務 妨 害 罪 の 成 否 と 憲 法 21 条 1 項 最 判 平 成 23 年 7 月 7 日 争 点 卒 業 式 の 開 始 直 前 に 保 護 者 らに 対 して 大 声 で 呼 び 掛 けを 行 い,これを 制 止 した 教 頭 らに 対 して 怒 号 を 発 するなどし, 卒 業 式 の 円 滑 な 遂 行 を 妨 げた 行 為 につき 威 力 業 務 妨 害 罪 に 問 うことの 是 非 ( 憲 法 21 条 1 項 に 反 するか 否 か) 判 旨 被 告 人 が 大 声 や 怒 号 を 発 するなどして 同 校 が 主 催 する 卒 業 式 の 円 滑 な 遂 行 を 妨 げたこ とは 明 らかであるから 被 告 人 の 本 件 行 為 は 威 力 を 用 いて 他 人 の 業 務 を 妨 害 したものと いうべきであり 威 力 業 務 妨 害 罪 の 構 成 要 件 に 該 当 する 所 論 は 被 告 人 の 本 件 行 為 は 憲 法 21 条 1 項 によって 保 障 される 表 現 行 為 であるから これをもって 刑 法 234 条 の 罪 に 問 うことは 憲 法 21 条 1 項 に 違 反 する 旨 主 張 する 被 告 人 がした 行 為 の 具 体 的 態 様 は 上 記 のとおり 卒 業 式 の 開 式 直 前 という 時 期 に 式 典 会 場 である 体 育 館 において 主 催 者 に 無 断 で 着 席 していた 保 護 者 らに 対 して 大 声 で 呼 び 掛 けを 行 い これを 制 止 した 教 頭 に 対 して 怒 号 し 被 告 人 に 退 場 を 求 めた 校 長 に 対 して も 怒 鳴 り 声 を 上 げるなどし 粗 野 な 言 動 でその 場 を 喧 噪 状 態 に 陥 れるなどしたというもの である 表 現 の 自 由 は 民 主 主 義 社 会 において 特 に 重 要 な 権 利 として 尊 重 されなければな らないが 憲 法 21 条 1 項 も 表 現 の 自 由 を 絶 対 無 制 限 に 保 障 したものではなく 公 共 の 福 祉 のため 必 要 かつ 合 理 的 な 制 限 を 是 認 するものであって たとえ 意 見 を 外 部 に 発 表 する ための 手 段 であっても その 手 段 が 他 人 の 権 利 を 不 当 に 害 するようなものは 許 されない 被 告 人 の 本 件 行 為 は その 場 の 状 況 にそぐわない 不 相 当 な 態 様 で 行 われ 静 穏 な 雰 囲 気 の 中 で 執 り 行 われるべき 卒 業 式 の 円 滑 な 遂 行 に 看 過 し 得 ない 支 障 を 生 じさせたものであっ て こうした 行 為 が 社 会 通 念 上 許 されず 違 法 性 を 欠 くものでないことは 明 らかである したがって 被 告 人 の 本 件 行 為 をもって 刑 法 234 条 の 罪 に 問 うことは 憲 法 21 条 1 項 に 違 反 するものではない 5