Contents 第 章 信 託 の 基 礎 信 託 の 歴 史 と 信 託 制 度 信 託 の 歴 史 ()/わが 国 における 信 託 制 度 の 基 礎 知 識 (5) 信 託 の 当 事 者 5 信 託 の 設 定 (5)/ 委 託 者 (8)/3 受 託 者 (0)/4 受 益 者 信 託 管 理 人 (30) 信 託 財 産 信 託 の 変 更 終 了 等 36 信 託 財 産 (36)/ 信 託 の 変 更 併 合 および 分 割 (4)/3 信 託 の 終 了 (4) 信 託 税 制 44 第 章 定 型 的 な 金 銭 の 信 託 金 銭 の 信 託 50 合 同 運 用 指 定 金 銭 信 託 53 合 同 運 用 指 定 金 銭 信 託 とは(53)/ 合 同 運 用 指 定 金 銭 信 託 ( 一 般 口 ) (54)/3 合 同 運 用 指 定 金 銭 信 託 (か 月 据 置 型 ヒット)(57)/4 合 同 運 用 指 定 金 銭 信 託 ( 新 年 据 置 型 スーパーヒット)(59)/5 合 同 運 用 指 定 金 銭 信 託 (ユニット 型 )(60)/6 合 同 運 用 指 定 金 銭 信 託 の 税 制 (6) 単 独 運 用 指 定 金 銭 信 託 6 貸 付 信 託 64 貸 付 信 託 とは(64)/ 貸 付 信 託 の 商 品 分 類 (65)/3 貸 付 信 託 の 受 益 証 券 (69)/4 貸 付 信 託 の 税 制 (7) 信 託 総 合 口 座 74 特 定 金 銭 信 託 78 目 次 ()
第 3 章 従 業 員 福 祉 に 関 する 信 託 企 業 年 金 信 託 8 企 業 年 金 信 託 の 概 要 (8)/ 厚 生 年 金 基 金 信 託 (86)/3 確 定 給 付 企 業 年 金 信 託 (9)/4 確 定 拠 出 年 金 信 託 (96)/5 非 適 格 退 職 年 金 信 託 (03)/ 6 国 民 年 金 基 金 信 託 (05)/7 企 業 年 金 信 託 の 実 務 上 のポイント(07)/ 8 企 業 年 金 の 会 計 と 税 務 (3) 財 産 形 成 信 託 0 財 産 形 成 貯 蓄 制 度 の 概 要 (0)/ 財 産 形 成 信 託 とは(4)/3 財 産 形 成 信 託 ( 一 般 財 形 )(5)/4 財 産 形 成 年 金 信 託 ( 財 形 年 金 )(7)/5 財 産 形 成 住 宅 信 託 ( 財 形 住 宅 )(3)/6 財 形 給 付 金 信 託 (39)/7 財 形 基 金 信 託 (4) 第 4 章 証 券 に 関 する 信 託 有 価 証 券 の 信 託 44 有 価 証 券 の 信 託 の 概 要 (44)/ 有 価 証 券 の 信 託 のしくみ(46)/3 有 価 証 券 の 信 託 の 実 務 上 のポイント(55)/4 有 価 証 券 の 信 託 の 会 計 税 務 (59) 証 券 運 用 の 金 銭 の 信 託 6 証 券 運 用 の 金 銭 の 信 託 とは(6)/ 証 券 運 用 の 金 銭 の 信 託 のしくみ (65)/3 証 券 運 用 の 金 銭 の 信 託 の 実 務 上 のポイント(69)/4 証 券 運 用 の 金 銭 の 信 託 の 会 計 税 務 (7) 投 資 信 託 78 投 資 信 託 の 概 要 (78)/ 主 な 投 資 信 託 のしくみ(8)/3 投 資 信 託 の 実 務 上 のポイント(86)/4 投 資 信 託 の 会 計 税 務 (89) 証 券 投 資 信 託 9 証 券 投 資 信 託 の 概 要 (9)/ 証 券 投 資 信 託 のしくみ(94)/3 証 券 投 資 信 託 の 実 務 上 のポイント(00)/4 証 券 投 資 信 託 の 会 計 税 務 (03) 第 5 章 資 産 の 流 動 化 に 関 する 信 託 資 産 流 動 化 の 概 要 と 信 託 0 資 産 流 動 化 の 概 要 (0)/ 資 産 流 動 化 に 関 する 信 託 (6)/3 流 動 化 対 象 資 産 と 信 託 受 益 権 の 種 類 (7) () 目 次
金 銭 債 権 信 託 0 金 銭 債 権 信 託 の 概 要 (0)/ 貸 付 債 権 信 託 ()/3 売 掛 債 権 信 託 手 形 債 権 信 託 (7) 流 動 化 を 目 的 とした 不 動 産 信 託 等 3 流 動 化 を 目 的 とした 不 動 産 信 託 の 概 要 (3)/ 資 産 の 流 動 化 で 活 用 され る 信 託 形 態 (34) 第 6 章 動 産 不 動 産 に 関 する 信 託 動 産 信 託 38 動 産 信 託 の 概 要 (38)/ 動 産 設 備 信 託 のしくみ(4)/3 動 産 設 備 信 託 の 税 務 会 計 (44) 不 動 産 信 託 46 不 動 産 信 託 の 概 要 (46)/ 土 地 信 託 のしくみ(48)/3 土 地 信 託 の 実 務 上 のポイント(5)/4 土 地 信 託 の 会 計 税 務 (54) 第 7 章 その 他 の 信 託 公 益 信 託 58 公 益 信 託 の 概 要 (58)/ 公 益 信 託 のしくみ(60)/3 公 益 信 託 の 実 務 上 のポイント(63)/4 公 益 信 託 の 税 務 会 計 (64) 特 定 贈 与 信 託 67 特 定 贈 与 信 託 の 概 要 (67)/ 特 定 贈 与 信 託 のしくみ(69)/3 特 定 贈 与 信 託 の 実 務 上 のポイント(70)/4 特 定 贈 与 信 託 の 会 計 税 務 (7) 社 内 預 金 引 当 信 託 73 社 内 預 金 引 当 信 託 の 概 要 (73)/ 社 内 預 金 引 当 信 託 のしくみ(74)/ 3 社 内 預 金 引 当 信 託 の 実 務 上 のポイント(76) 従 業 員 持 株 信 託 78 従 業 員 持 株 信 託 の 概 要 (78)/ 従 業 員 持 株 信 託 のしくみ(79) 遺 言 信 託 8 遺 言 信 託 の 概 要 (8)/ 遺 言 信 託 のながれ(8)/3 遺 言 信 託 の 実 務 上 のポイント(84) 目 次 (3)
第 8 章 併 営 業 務 等 併 営 業 務 の 概 要 88 不 動 産 業 務 90 証 券 代 行 業 務 97 証 券 代 行 業 務 の 概 要 (97)/ 実 務 上 のポイント(98) 遺 言 遺 産 関 連 業 務 30 遺 言 遺 産 関 連 業 務 の 概 要 (30)/ 実 務 上 のポイント 遺 言 執 行 業 務 の ながれ(30) 担 保 付 社 債 信 託 304 (4) 目 次
第 章 信 託 の 基 礎 Introduction この 章 では 信 託 の 歴 史 からわが 国 における 信 託 制 度 全 般 にわたって 説 明 します 委 託 者 受 託 者 受 益 者 といった 信 託 当 事 者 の 権 利 や 義 務 信 託 財 産 の 範 囲 や 法 的 特 性 さらに 信 託 税 制 の 原 則 と 例 外 など わが 国 の 信 託 制 度 の 基 礎 となる 法 的 構 成 から 税 制 に 至 るまでを 俯 瞰 できるように 解 説 し ています 各 信 託 商 品 ごとの 詳 細 については 次 章 以 降 において 解 説 することと しています ここでは 信 託 の 基 本 となる 共 通 事 項 を 中 心 に 説 明 します ので 信 託 の 基 本 的 な 要 素 をしっかり 学 習 してください
信 託 の 歴 史 と 信 託 制 度 信 託 の 歴 史 海 外 における 信 託 の 歴 史 まず はじめに 信 託 の 歴 史 を 振 り 返 ってみましょう 信 託 の 考 え 方 自 体 は 人 が 自 分 の 財 産 をもつようになった 頃 からすでに あったといわれており 古 くは 古 代 エジプト 人 の 遺 書 のなかにもそのよう な 考 え 方 がみられます 信 託 制 度 の 起 源 はUse 現 在 の 信 託 制 度 は イギリスで 発 展 したもので イギリスにおける 起 源 をたどれば 中 世 の ユース (use)の 習 慣 であるといわれています ユースは 世 紀 ごろから 十 字 軍 兵 士 の 出 征 中 における 土 地 等 の 管 理 の ために 用 いられ 3 世 紀 には 国 王 からの 土 地 没 収 負 担 回 避 のために 教 会 に 土 地 等 を 寄 進 する 形 で 利 用 されるようになりました イギリスでは 普 通 法 (コモンロー)と 衡 平 法 (エクイティ)のつの 法 制 度 が 並 存 していましたが 普 通 法 裁 判 所 ではユースは 認 められなかっ たものの 衡 平 法 裁 判 所 ではこれを 有 効 と 判 定 して 保 護 し 判 例 を 積 み 重 ねていきました この 判 例 の 集 積 によって やがて トラスト (trust)という 近 代 信 託 信 託 の 歴 史 と 信 託 制 度
制 度 が 形 づくられていきました 信 託 制 度 は 英 米 で 発 展 ヨーロッパ 大 陸 諸 国 は 制 定 法 を 中 心 とした 法 制 度 を 基 礎 としており 判 例 法 中 心 のイギリスで 発 展 した 信 託 制 度 は 受 け 継 がれませんでした 一 方 アメリカは イギリスの 植 民 地 から 発 展 した 国 であったことから その 法 制 度 はイギリス 法 を 母 法 とする 判 例 法 を 中 心 とした 体 系 であり 信 託 制 度 も 受 け 継 がれました ただし アメリカにおける 信 託 制 度 は 独 自 の 発 展 を 遂 げることとなります 3 英 国 は 民 事 信 託 米 国 は 営 業 信 託 を 中 心 に 発 展 アメリカは 新 興 国 であったことから 地 縁 や 血 縁 のない 人 々が 集 まって おり 受 託 者 の 適 任 者 があまり 見 つかりませんでした そこで 受 託 者 を 会 社 組 織 ( 信 託 会 社 )とする 営 業 信 託 が 行 われるよう になり とくに 南 北 戦 争 以 降 は 鉄 道 建 設 などの 新 しい 事 業 の 資 金 調 達 の ために 信 託 のしくみが 広 く 利 用 されるようになりました 民 事 信 託 を 中 心 とするイギリスに 対 して アメリカでは 有 償 かつ 法 人 を 受 託 者 とする 営 業 信 託 を 中 心 として 信 託 制 度 が 発 展 していきます 信 託 の 基 礎 わが 国 における 信 託 の 発 展 わが 国 でも 行 われていた 信 託 的 行 為 わが 国 においても 信 託 に 似 た 考 え 方 は 古 くからありました たとえば 次 のような 具 体 的 なできごとが 実 際 にあったといわれています ただし これらは 信 託 的 行 為 ではあるものの 信 託 制 度 としての 事 実 関 係 は 必 ずしも 明 確 ではありませんでした 御 所 の 修 理 資 金 を 京 都 の 商 人 に 運 用 させた 織 田 信 長 の 事 例 佐 竹 藩 篤 志 家 の 出 捐 金 による 知 行 地 の 買 取 りの 事 例 3 貢 米 で 救 済 活 動 を 行 った 秋 田 感 恩 講 の 事 例 第 章 信 託 の 基 礎 3
制 度 としての 信 託 は 米 国 から 導 入 現 在 のわが 国 における 近 代 信 託 制 度 は 明 治 時 代 の 後 半 にアメリカから 導 入 されたといわれています わが 国 の 法 体 系 は ドイツやフランス 等 の 大 陸 法 を 参 考 として 整 備 が 行 われましたが 信 託 制 度 は ドイツ 等 ではあ まり 利 用 されておらず 民 法 典 等 のなかにも 信 託 に 関 する 規 定 は 盛 り 込 ま れていませんでした 3 法 律 上 は 日 本 興 業 銀 行 法 がはじめて わが 国 の 法 律 においてはじめて 信 託 の 言 葉 が 使 われたのは 900 ( 明 治 33) 年 制 定 の 日 本 興 業 銀 行 法 であるといわれています また 日 清 戦 争 や 日 露 戦 争 を 契 機 とした 重 工 業 の 資 金 確 保 にあたり 債 券 発 行 における 担 保 管 理 の 手 段 として 信 託 を 活 用 するため 905( 明 治 38) 年 に 担 保 付 社 債 信 託 法 が 制 定 されました その 後 信 託 の 曖 昧 な 定 義 のもとで 個 人 の 財 産 管 理 運 用 にも 利 用 されはじめ 信 託 業 の 看 板 で 不 動 産 仲 介 貸 金 株 式 売 買 などの 業 務 が 行 われていました 4 信 託 法 信 託 業 法 の 制 定 94( 大 正 3) 年 に 第 一 次 大 戦 が 始 まると わが 国 の 産 業 は 活 況 を 帯 び 好 景 気 を 反 映 して9( 大 正 0) 年 末 には 信 託 会 社 は488 社 に 及 ぶまでに 増 大 しました しかし 当 時 は 信 託 の 法 整 備 もなされておらず 資 力 や 信 用 力 の 乏 しい 信 託 会 社 も 少 なくありませんでした そこで 信 託 制 度 の 健 全 な 普 及 を 図 ることを 目 的 として 9( 大 正 ) 年 に 信 託 法 信 託 業 法 が 制 定 されました これらの 法 整 備 を 受 けて 信 託 会 社 は94( 大 正 3) 年 末 に7 社 に 整 理 統 合 され その 後 これらの 信 託 会 社 は 金 銭 の 信 託 を 中 心 として 発 展 していくこととなります 5 モデルはインド 信 託 法 とカリフォルニア 州 法 わが 国 の 信 託 関 連 法 体 系 のモデルは インド 信 託 法 とカリフォルニア 州 4 信 託 の 歴 史 と 信 託 制 度
法 であるといわれています 信 託 の 基 礎 わが 国 における 信 託 制 度 の 基 礎 知 識 わが 国 における 信 託 法 の 構 成 わが 国 の 信 託 法 制 わが 国 における 信 託 法 制 は 信 託 の 基 本 的 な 法 律 関 係 について 定 める 基 本 法 としての 信 託 法 と 業 者 規 制 を 目 的 とした 信 託 業 法 の 二 本 柱 を 中 心 に 構 成 されています さらに 銀 行 が 信 託 業 務 を 兼 営 することを 認 める 政 策 が 採 られたことを 受 けて 943( 昭 和 8) 年 に 金 融 機 関 による 信 託 業 務 の 兼 営 を 認 める 法 律 (いわゆる 兼 営 法 )が 制 定 されました 信 託 関 連 法 規 わが 国 の 信 託 に 関 する 主 な 法 律 をあげると 次 のようなものがあります ここであげたもののほか 信 託 の 利 用 に 関 する 法 令 や 信 託 業 務 を 行 う 際 の 実 務 上 の 手 続 きを 規 定 した 法 令 などが 多 数 存 在 し これらの 法 制 度 によっ て 信 託 の 発 展 と 健 全 な 運 営 が 支 えられてきました 信 託 法 信 託 業 法 3 金 融 機 関 の 信 託 業 務 の 兼 営 等 に 関 する 法 律 ( 兼 営 法 ) 4 その 他 の 特 別 法 個 別 信 託 法 担 保 付 社 債 信 託 法 担 保 付 社 債 信 託 貸 付 信 託 法 貸 付 信 託 投 資 信 託 及 び 投 資 法 人 に 関 する 法 律 投 資 信 託 資 産 の 流 動 化 に 関 する 法 律 特 定 目 的 信 託 公 益 信 託 ニ 関 スル 法 律 公 益 信 託 第 章 信 託 の 基 礎 5
受 託 者 にかかる 法 律 著 作 権 等 管 理 事 業 法 著 作 権 等 管 理 信 託 保 険 業 法 保 険 金 信 託 農 業 協 同 組 合 法 組 合 員 の 委 託 にもとづく 不 動 産 の 貸 付 運 用 または 売 渡 しを 目 的 とする 信 託 森 林 組 合 法 組 合 員 の 所 有 する 森 林 の 経 営 を 目 的 とする 信 託 3 信 託 法 は 信 託 に 関 する 基 本 法 信 託 法 は 民 法 および 商 法 に 対 しては 特 別 法 の 位 置 づけとなりますが 一 方 で 営 業 信 託 と 非 営 業 信 託 のいずれにも 適 用 される 信 託 に 関 する 基 本 法 です 006( 平 成 8) 年 には 制 定 後 実 に80 年 以 上 もの 時 を 経 て 信 託 法 が 抜 本 改 正 され 多 様 化 する 信 託 の 利 用 形 態 を 踏 まえた 信 託 制 度 の 現 代 化 が 図 ら れました また 004( 平 成 6) 年 には 信 託 業 法 が 改 正 され 銀 行 業 務 を 営 まな い 信 託 会 社 等 が 免 許 を 受 けまたは 登 録 届 出 を 行 うことで 信 託 業 を 営 む ことができるようになりました なお この 章 以 下 では それぞれの 法 律 の 改 正 前 の 法 律 に 言 及 する 場 合 には 旧 信 託 法 または 旧 信 託 業 法 と 表 記 することとします 信 託 とは 定 義 さて わが 国 における 信 託 とは どのようなしくみなのでしょうか 信 託 法 条 項 では 次 のように 規 定 しています この 法 律 において 信 託 とは 次 条 各 号 に 掲 げる 方 法 のいずれかによ り 特 定 の 者 が 一 定 の 目 的 ( 専 らその 者 の 利 益 を 図 る 目 的 を 除 く )に 従 い 財 産 の 管 理 又 は 処 分 及 びその 他 の 当 該 目 的 の 達 成 のために 必 要 な 行 為 をす べきものとすることをいう 6 信 託 の 歴 史 と 信 託 制 度
この 信 託 法 の 定 義 によれば 信 託 とは 信 託 契 約 遺 言 3 公 正 証 書 等 によってする 意 思 表 示 の 方 法 ( 信 託 行 為 ) のいずれかにより 特 定 の 者 ( 受 託 者 ) が 一 定 の 目 的 ( 信 託 目 的 ) に 従 い 財 産 ( 信 託 財 信 託 の 基 礎 産 )を 管 理 処 分 する 制 度 ということになります 信 託 の 定 義 にもとづいて 信 託 のしくみを 図 に 示 すと 図 表 信 託 のしくみ のようになります 図 表 信 託 のしくみ 次 に 信 託 法 条 において 信 託 に 関 する 用 語 の 定 義 が 規 定 されていま すので 理 解 を 深 めるために ここで 解 説 しておきましょう 信 託 行 為 : 信 託 契 約 遺 言 3 公 正 証 書 等 によってする 意 思 表 示 の 方 法 ( 項 ) 信 託 財 産 : 受 託 者 に 属 する 財 産 であって 信 託 により 管 理 または 処 分 をすべき 一 切 の 財 産 (3 項 ) 委 託 者 : 信 託 行 為 により 信 託 をする 者 (4 項 ) 受 託 者 : 信 託 行 為 の 定 めに 従 い 信 託 財 産 の 管 理 または 処 分 その 他 の 必 要 な 行 為 をすべき 義 務 を 負 う 者 (5 項 ) 受 益 者 : 受 益 権 を 有 する 者 (6 項 ) 受 益 権 : 受 益 者 が 受 託 者 に 対 して 信 託 財 産 の 引 渡 し その 他 の 信 託 財 産 に 係 る 給 付 を 請 求 する 権 利 ( 受 益 債 権 ) およびこれを 確 保 するために 受 託 者 その 他 の 者 に 対 して 一 定 の 行 為 を 求 める 権 利 (7 項 ) 第 章 信 託 の 基 礎 7
委 託 者 と 受 託 者 の 強 い 信 頼 関 係 のうえに 成 立 他 人 による 財 産 管 理 制 度 としては 後 述 するように 委 任 などの 制 度 もあ りますが 所 有 権 が 受 託 者 に 完 全 に 移 転 するなど 信 託 は 委 託 者 と 受 託 者 との 強 い 信 頼 関 係 があってはじめて 成 り 立 つ 制 度 といえます このような 信 頼 関 係 が 損 なわれないように 信 託 法 では 委 託 者 や 受 益 者 の 権 利 受 託 者 の 義 務 などの 規 定 がおかれています 3 財 産 管 理 制 度 としての 信 託 民 法 上 の 委 任 による 代 理 との 相 違 点 信 託 は 受 託 者 が 受 益 者 のために 財 産 を 管 理 するものであり 他 人 によ る 財 産 管 理 制 度 のつの 形 態 です 財 産 管 理 制 度 には 民 法 上 の 委 任 による 代 理 や 寄 託 といった 制 度 もあり これらとの 類 似 性 を 有 している 一 方 で これらと 異 なる 側 面 もあります 財 産 の 名 義 代 理 の 場 合 代 理 人 に 代 理 権 を 与 えても 財 産 の 名 義 人 は 本 人 ( 委 任 者 ) のままであるのに 対 して 信 託 では 信 託 の 設 定 によって 財 産 は 受 託 者 に 移 転 して 受 託 者 名 義 になります 管 理 処 分 権 の 帰 属 代 理 の 場 合 本 人 と 代 理 人 それぞれが 管 理 処 分 権 を 行 使 できるのに 対 して 信 託 では 管 理 処 分 権 は 財 産 の 名 義 人 である 受 託 者 のみに 帰 属 して います 3 行 為 の 効 果 の 帰 属 代 理 の 場 合 代 理 人 の 行 為 は 直 接 本 人 に 効 果 が 帰 属 するのに 対 して 信 託 では 受 託 者 の 行 為 は 信 託 財 産 を 拘 束 することとなりますが 委 託 者 や 受 益 者 には 直 接 その 効 果 は 及 びません 8 信 託 の 歴 史 と 信 託 制 度
4 財 産 の 独 立 性 代 理 の 場 合 には 当 事 者 の 死 亡 により 終 了 する 属 人 的 な 関 係 であるのに 対 して 信 託 では 受 益 者 または 受 託 者 が 死 亡 しても 信 託 は 終 了 すること はありません 受 益 者 が 死 亡 した 場 合 には 受 益 権 が 相 続 人 に 承 継 され 受 託 者 が 死 亡 した 場 合 には 新 受 託 者 が 選 任 されてそのまま 存 続 します 5 第 三 者 との 関 係 財 産 の 瑕 疵 により 第 三 者 に 損 害 を 与 えた 場 合 代 理 では 本 人 が 責 任 を 負 うのに 対 して 信 託 では 財 産 の 名 義 人 である 受 託 者 が 第 三 者 に 対 して 損 害 賠 償 責 任 を 負 うことになります また 権 限 を 越 えて 第 三 者 に 財 産 を 処 分 した 場 合 代 理 では 本 人 が 無 権 代 理 を 主 張 できる 場 合 を 除 いて 代 理 人 に 対 する 損 害 賠 償 請 求 に 留 まるのに 対 して 信 託 では 受 益 者 が 第 三 者 に 対 して 信 託 義 務 に 違 反 した 処 分 を 主 張 して 当 該 財 産 につき 取 戻 権 を 行 使 でき また 受 託 者 に 対 して 財 産 の 復 旧 損 失 のてん 補 を 求 めることができます 信 託 の 基 礎 寄 託 法 人 等 の 相 違 点 このほかにも 寄 託 や 法 人 など 信 託 と 類 似 した 制 度 が 存 在 します それ ぞれの 制 度 と 信 託 と 主 な 相 違 点 は 次 のとおりです 寄 託 寄 託 の 場 合 消 費 寄 託 を 除 き 所 有 権 は 移 転 しません また 受 寄 者 には 財 産 の 運 用 や 処 分 の 義 務 もありません これに 対 して 信 託 では 前 述 の とおり 財 産 権 の 名 義 は 受 託 者 に 移 転 し 信 託 目 的 に 従 って 信 託 財 産 の 管 理 処 分 が 行 われます 金 銭 の 消 費 寄 託 の 場 合 は より 信 託 に 類 似 しますが 目 的 物 である 金 銭 は 受 寄 者 自 身 のために 受 寄 者 の 計 算 において 運 用 され 運 用 収 益 は 受 寄 者 に 帰 属 するのに 対 して 信 託 では 受 託 者 は 受 益 者 のために 信 託 目 的 に 従 い 運 用 を 行 う 義 務 を 負 い 運 用 収 益 も 信 託 財 産 に 帰 属 するという 点 で 異 な ります 第 章 信 託 の 基 礎 9
法 人 法 人 は 法 主 体 性 を 有 して 事 業 を 営 みますが 信 託 は 制 度 としては 法 主 体 性 を 有 していません 3 譲 渡 担 保 譲 渡 担 保 では 債 権 者 に 目 的 物 が 移 転 するという 点 で より 信 託 に 類 似 し ますが 譲 渡 担 保 では 債 権 者 は 自 己 の 債 権 保 全 のため 担 保 権 を 行 使 する ことができるのに 対 して 信 託 では 受 託 者 は 受 益 者 のためにのみ 権 限 を 行 使 することができるという 点 で 異 なります 4 信 託 の 分 類 信 託 は その 目 的 や 引 受 けの 形 態 あるいは 引 き 受 ける 信 託 財 産 の 種 類 などによって さまざまに 分 類 または 区 分 することができます 主 な 分 類 方 法 は 次 のとおりです 公 益 性 による 分 類 ( 私 益 信 託 公 益 信 託 ) 公 益 信 託 とは 学 術 技 芸 慈 善 祭 祀 宗 教 など 公 益 を 目 的 とするもの で 私 益 信 託 とは 公 益 信 託 以 外 の 信 託 をいいます 受 益 者 による 分 類 ( 自 益 信 託 他 益 信 託 受 益 者 の 定 めのない 信 託 ) 委 託 者 と 受 益 者 が 同 一 である 信 託 を 自 益 信 託 といい 委 託 者 以 外 の 者 が 受 益 者 となる 信 託 を 他 益 信 託 といいます ただし 信 託 受 益 権 の 譲 渡 にと もない 委 託 者 以 外 の 者 が 受 益 者 となる 場 合 は 他 益 信 託 とはいいません また 信 託 法 では 受 益 者 の 定 めのない 信 託 も 認 められています( 信 託 法 58 条 以 下 ) 英 米 法 では 目 的 信 託 とよばれているもので 旧 信 託 法 では 公 益 信 託 以 外 には 認 められていなかったものです 3 受 託 者 による 分 類 ( 営 業 信 託 非 営 業 信 託 ) 受 託 者 が 営 業 として 引 き 受 ける 場 合 を 営 業 信 託 (または 商 事 信 託 とよば れます 厳 密 には 用 語 の 定 義 が 異 なる 場 合 があります)といい それ 以 外 のものを 非 営 業 信 託 (または 民 事 信 託 とよばれます)といいます 信 託 銀 0 信 託 の 歴 史 と 信 託 制 度
行 や 信 託 会 社 が 引 き 受 ける 信 託 は すべて 営 業 信 託 です 4 信 託 行 為 による 分 類 ( 契 約 信 託 遺 言 信 託 公 正 証 書 等 の 方 法 によ る 信 託 ) 契 約 信 託 とは 委 託 者 の 生 前 に 委 託 者 と 受 託 者 との 間 の 契 約 で 設 定 され る 信 託 をいい 遺 言 信 託 とは 委 託 者 の 遺 言 によって 設 定 される 信 託 をい います また 信 託 法 では ある 人 が 一 定 の 目 的 に 従 い 自 己 の 有 する 財 産 の 管 理 または 処 分 その 他 の 当 該 目 的 に 必 要 な 行 為 を 自 ら 行 う 旨 を 公 正 証 書 等 の 方 法 によって 意 思 表 示 することで 設 定 される 信 託 ( 信 託 法 3 条 項 3 号 い わゆる 自 己 信 託 とよばれます)が 認 められています 英 米 法 ではこの ような 設 定 方 式 を 信 託 宣 言 とよんでいます 5 信 託 の 成 立 原 因 による 分 類 ( 設 定 信 託 法 定 信 託 ) 設 定 信 託 とは 契 約 や 遺 言 といった 法 律 行 為 によって 設 定 された 信 託 を いい 法 定 信 託 とは 法 律 の 規 定 や 解 釈 により 成 立 する 信 託 をいいます 6 管 理 方 法 による 分 類 ( 個 別 信 託 集 団 信 託 ) 個 別 信 託 とは 信 託 契 約 が 個 別 の 委 託 者 ごとに 締 結 され 信 託 財 産 ごと に 分 別 して 管 理 運 用 される 信 託 をいい 集 団 信 託 とは 不 特 定 多 数 の 委 託 者 との 定 型 的 な 約 款 により 締 結 された 信 託 契 約 にもとづき 信 託 財 産 が 合 同 して 管 理 運 用 される 信 託 をいいます 7 受 託 者 の 管 理 義 務 による 分 類 ( 能 働 信 託 受 働 信 託 ) 能 働 ( 動 ) 信 託 とは 受 託 者 が 積 極 的 に 信 託 財 産 を 管 理 処 分 する 信 託 を いい 受 働 ( 動 ) 信 託 とは 受 託 者 が 積 極 的 に 管 理 処 分 すべき 権 利 をもた ない または 義 務 を 負 わない 信 託 をいいます 受 働 信 託 のなかでも 受 益 者 が 管 理 処 分 を 行 い 受 託 者 が 当 該 行 為 を 容 認 する 義 務 を 負 うに 留 まる 信 託 は 名 義 信 託 とよばれ 信 託 法 上 は 無 効 とされます 8 信 託 目 的 による 分 類 ( 管 理 信 託 処 分 信 託 ) 信 託 の 主 たる 目 的 が 信 託 財 産 の 管 理 に 限 定 されている 信 託 を 管 理 信 託 と 信 託 の 基 礎 第 章 信 託 の 基 礎
いい 処 分 信 託 とは その 主 たる 目 的 が 信 託 財 産 の 売 却 等 の 処 分 である 信 託 をいいます 受 益 証 券 の 発 行 による 分 類 ( 受 益 証 券 発 行 信 託 それ 以 外 の 信 託 ) 信 託 法 では 受 益 証 券 を 発 行 しない 信 託 を 原 則 としながら 信 託 行 為 に おいて 受 益 権 を 表 示 する 証 券 (いわゆる 受 益 証 券 )を 発 行 する 旨 を 定 め ることによって 受 益 権 を 有 価 証 券 とすることができます( 信 託 法 85 条 項 ) このように 受 益 権 の 有 価 証 券 化 を 可 能 とする 信 託 を 受 益 証 券 発 行 信 託 といいます( 信 託 法 85 条 5 条 ) 受 託 者 の 責 任 の 範 囲 による 分 類 ( 限 定 責 任 信 託 それ 以 外 の 信 託 ) 信 託 法 では 信 託 に 関 して 負 担 する 債 務 について 受 託 者 が 無 限 責 任 (その 信 託 財 産 のみならず 受 託 者 の 固 有 財 産 をもって 履 行 する 責 任 )を 負 うことを 原 則 としながら 信 託 財 産 のみをもってその 履 行 責 任 を 負 う 信 信 託 の 歴 史 と 信 託 制 度 9 0 図 表 信 託 の 分 類
託 が 認 められています( 信 託 法 6 条 項 ) このような 信 託 を 限 定 責 任 信 託 といいます( 信 託 法 6 条 47 条 ) 信 託 財 産 の 種 類 による 分 類 信 託 財 産 の 対 象 は 金 銭 のほか 有 価 証 券 動 産 不 動 産 などの 財 産 価 値 のあるものは 何 でもよいことになっています 信 託 の 種 類 は 信 託 の 引 受 けの 時 における 財 産 の 種 類 によって 区 分 され ますが 金 銭 であれば 金 銭 の 信 託 といい 金 銭 以 外 であれば 金 銭 以 外 の 信 託 ( 物 の 信 託 という 場 合 もある)とよばれます さらに 金 銭 の 信 託 は 信 託 の 終 了 時 において 受 益 者 に 交 付 される 信 託 財 産 の 種 類 によって 区 分 され 信 託 財 産 を 換 金 のうえ 金 銭 で 交 付 する 場 合 は 金 銭 信 託 といい 信 託 財 産 を 現 状 のまま 交 付 する 場 合 は 金 銭 信 託 以 外 の 金 銭 の 信 託 といいます( 金 外 信 託 とよぶこともある 金 銭 の 信 託 と 金 銭 信 託 は の という 文 字 の 有 無 によって 意 味 が 異 なる 用 語 であることから 留 意 が 必 要 ) また 運 用 方 法 によって 次 のように 分 類 されます 信 託 の 基 礎 指 定 運 用 特 定 運 用 3 無 指 定 運 用 ( 運 用 方 法 が 指 定 されていない 信 託 ) 信 託 財 産 の 種 類 による 分 類 を 整 理 すると 図 表 3 信 託 財 産 の 種 類 による 分 類 のとおりです 第 章 信 託 の 基 礎 3
図 表 3 信 託 財 産 の 種 類 による 分 類 4 信 託 の 歴 史 と 信 託 制 度
監 修 執 筆 ( 四 訂 版 執 筆 当 時 ) 信 森 久 典 ( 第 7 章 第 8 章 執 筆 ) 986 年 一 橋 大 学 商 学 部 卒 業 同 年 安 田 信 託 銀 行 入 社 現 在 みずほ 信 託 銀 行 法 務 部 長 後 藤 裕 司 ( 第 章 第 5 章 第 6 章 執 筆 ) 990 年 一 橋 大 学 法 学 部 卒 業 同 年 安 田 信 託 銀 行 入 社 現 在 みずほ 信 託 銀 行 不 動 産 企 画 部 次 長 執 筆 荒 木 保 久 みずほ 信 託 銀 行 個 人 営 業 推 進 部 次 長 ( 第 3 章 財 形 関 係 ) 小 松 原 秀 樹 同 銀 行 信 託 プロダクツ 企 画 部 室 長 ( 第 4 章 ) 田 中 一 平 同 銀 行 年 金 企 画 部 調 査 役 ( 第 3 章 年 金 関 係 ) 中 村 太 樹 同 銀 行 不 動 産 企 画 部 参 事 役 ( 第 章 ) 四 訂 信 託 の 基 礎 005 年 3 月 0 日 初 版 第 刷 発 行 007 年 月 日 改 訂 版 第 刷 発 行 00 年 4 月 5 日 三 訂 版 第 刷 発 行 0 年 3 月 日 四 訂 版 第 刷 発 行 編 者 経 済 法 令 研 究 会 発 行 者 下 平 晋 一 郎 発 行 所 経 済 法 令 研 究 会 6-84 東 京 都 新 宿 区 市 谷 本 村 町 3- 電 話 代 表 03-367-48 制 作 03-367-483 営 業 所 / 東 京 03(367)48 大 阪 06(66)9 名 古 屋 05(33)35 福 岡 09(4)0805 組 版 /DTP 室 制 作 / 小 野 忍 印 刷 / 日 経 印 刷 CKeizai-hourei Kenkyukai 0 ISBN978-4- 7668-74- 8 経 済 法 令 グループメールマガジン 配 信 ご 登 録 のお 勧 め 当 社 グループが 取 り 扱 う 書 籍 通 信 講 座 セミナー 検 定 試 験 情 報 等 皆 様 にお 役 立 てい ただける 情 報 をお 届 け 致 します 下 記 ホームページのトップ 画 面 からご 登 録 いただけます 経 済 法 令 研 究 会 http://www.khk.co.jp/ 定 価 はカバーに 表 示 してあります 無 断 複 製 転 用 等 を 禁 じます 落 丁 乱 丁 本 はお 取 替 えします