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Ⅰ 生 活 文 化 としての 入 浴 入 浴 介 護 入 浴 は わ た し た ち 人 類 が 持 つ 生 活 の 営 み の 中 で 不 思 議 な 魅 力 を 有 す る 部 分 で あ る 食 事 や 排 泄 睡 眠 性 行 動 攻 撃 逃 避 な ど の よ う に 固 体 や 種 族 の 維 持 の た め に 絶 対 に 必 要 な も の で は な く 何 か の 理 由 で そ れ が 制 約 さ れ た と き に は 風 呂 に 入 ら な く て も 死 ぬ こ と は な い な ど と い わ れ る こ と も あ る し か し 高 温 多 湿 の 日 本 の 風 土 に あ っ て は 入 浴 と い う 習 慣 は 毎 日 の 生 活 の な か で 欠 か す こ と の で き な い も の と し て 定 着 し て 来 た 1) 歴 史 か ら み た 現 代 人 の 入 浴 現 代 日 本 人 の 入 浴 を 歴 史 的 な 観 点 か ら 見 る と 2 つ の 点 で 特 徴 的 な 生 活 行 為 と な っ て い る こ と が わ か る そ の 第 1 は 入 浴 の 方 法 で あ る 現 代 人 は 入 浴 と い え ば 浴 槽 の 湯 に 浸 か る こ と や 洗 い 湯 を す る こ と を 入 浴 と し て 理 解 し て い る の が 一 般 的 だ ろ う し か し 古 来 風 呂 と い え ば 蒸 し 風 呂 の こ と で あ り 庶 民 の 間 で は 石 風 呂 ( 自 然 の 岩 窟 を 利 用 し た 蒸 気 風 呂 ) を 意 味 し て い た こ と は あ ま り 知 ら れ て い な い 江 戸 時 代 の 出 版 物 で あ る 風 呂 の 七 徳 で は こ の 蒸 し 風 呂 の 利 徳 と し て 垢 を さ り み め を よ く し は を つ よ く な し 目 を あ き ら か に な し 口 中 に う る お い あ り 気 を は ら し 風 を の ぞ く 也 と 説 い て い る 第 2 は 現 代 に お い て は 入 浴 の 目 的 が 心 身 の 清 浄 爽 快 感 美 容 等 の 洗 身 保 健 衛 生 と い っ た 観 点 で 強 調 さ れ て い る こ と で あ る し か し 現 代 人 に と っ て は 一 般 的 な 生 活 行 為 と な っ て い る 湯 ( 洗 湯 ) と し て の 入 浴 だ が 最 初 か ら そ う だ っ た わ け で は な く 歴 史 を 遡 る と 仏 教 伝 来 ( 538 年 ) に よ る 寺 院 の 浴 室 に 端 を 発 し そ の 目 的 は 修 行 僧 の 心 身 を 洗 浄 し て 宗 教 的 な 精 神 を 養 う こ と で あ っ た と さ れ て い る ま た こ れ ら の 寺 院 に は 医 術 を 心 得 る 僧 す な わ ち 僧 医 が い て 衆 生 済 度 の ひ と つ と し て 病 人 を 治 療 し て い た こ と か ら や が て 境 内 に 大 き な 浴 場 が 建 設 さ れ る よ う に な っ た の が 銭 湯 の 起 源 で あ る と い わ れ て い る 入 浴 に 湯 ( 洗 湯 ) と 風 呂 の ふ た つ が あ り そ れ ぞ れ に 異 な っ た 意 味 が あ っ た こ と は 今 か ら 約 1000 年 前 の 仏 教 の 経 典 で あ る 釈 民 要 覧 で も 確 認 す る こ と が で き る そ れ に よ る と 洗 浄 と は 一 ニ ハ 身 ヲ 洗 フ 二 ニ ハ 語 ヲ 洗 ウ 三 ニ ハ 心 ヲ 洗 フ こ と と さ れ て お り 宗 教 的 な 徳 を 高 め る 目 的 が あ っ た っ こ と が わ か る ま た 浴 に は 5 つ の 功 徳 が あ っ て 一 ニ ハ 垢 ヲ 除 ク 二 ニ ハ 皮 膚 ヲ 治 メ 一 色 ナ ラ 令 ム 三 ニ ハ 悪 寒 ヲ 破 ス 四 ニ ハ 風 気 ヲ 下 ス 五 ニ ハ 病 痛 ヲ 少 ナ ク ス と 保 健 衛 生 的 な 効 能 が 説 か れ て い る 2) 銭 湯 の 発 展 と 内 風 呂 の 誕 生 さ ら に こ の 銭 湯 は 江 戸 期 の 上 水 路 と 明 治 期 以 降 の 水 道 設 備 が 整 備 さ れ た こ - 1 -

と で 発 展 し 庶 民 の 娯 楽 施 設 と な っ て い っ た 江 戸 時 代 の 銭 湯 は ひ と つ の 社 交 場 の 役 目 を 果 た し て お り 裸 一 貫 上 下 貴 賤 の 差 別 も な い 庶 民 の 憩 い の 場 で あ っ た ま た そ こ は 老 若 男 女 の 集 ま る 話 題 の 場 で 社 会 の 世 相 を 知 る 近 道 と も さ れ た 昭 和 の 戦 後 に な る と ガ ス 設 備 の 整 備 と 給 湯 器 の 普 及 に よ っ て 家 庭 風 呂 を 設 け る こ と を 前 提 と し た 住 宅 建 設 が 進 め ら れ 内 風 呂 が 一 般 の 家 庭 に 浸 透 し て い っ た そ の 一 方 で 江 戸 期 か ら 繁 栄 し て き た 銭 湯 は 衰 退 し 娯 楽 や 社 交 の 場 と し て の 入 浴 文 化 も 後 退 し て い っ た こ れ ら の こ と か ら 入 浴 は 1 宗 教 的 な 精 神 の 涵 養 2 傷 病 治 療 3 保 健 衛 生 4 社 交 世 代 間 交 流 5 娯 楽 と い っ た 多 面 的 な 生 活 行 為 と し て わ た し た ち の 生 活 に 浸 透 し て き た こ と が わ か る Ⅱ 入 浴 の 目 的 こ こ ま で み て き た よ う に 現 代 の 入 浴 は 保 健 衛 生 的 な 観 点 が 強 調 さ れ て お り 介 護 技 術 の 教 科 書 で も 下 記 の よ う に 標 準 化 さ れ る 傾 向 が あ る 1 清 潔 の 維 持 清 潔 で あ り た い と い う 欲 求 に は 見 た 目 の き れ い さ と 同 時 に 皮 膚 の 感 覚 に よ る も の す な わ ち 皮 膚 の 代 謝 に よ る ベ ト ベ ト や カ サ カ サ を 解 消 し た い と い う 欲 求 に よ る も の と が あ る 身 体 の 清 潔 を 保 つ た め る に は 身 体 を 覆 っ て い る 全 て 皮 膚 毛 髪 爪 な ど 空 気 に 触 れ る あ ら ゆ る 部 分 の 汚 れ を 取 り 除 か な け れ ば な ら な い 2 皮 膚 の 新 陳 代 謝 を よ く す る 皮 膚 は 4 つ の 層 か ら 成 り 立 ち ひ と つ の 細 胞 は 1 ~ 2 週 間 の 寿 命 で 角 化 し な が ら 表 面 に 達 し 角 質 に な る こ れ を 皮 膚 の 新 陳 代 謝 と い う 新 陳 代 謝 で 皮 膚 か ら 離 れ る ア カ の 量 は 1 日 6 ~ 14 グ ラ ム ア カ は 角 質 汗 ゴ ミ ホ コ リ か ら な り 保 温 の 役 目 も し て い る の で と り 過 ぎ る と 返 っ て 風 邪 や 感 染 を 起 こ し や す く す る こ と も あ る 3 血 液 の 循 環 をよ くする 身 体 を 温 め る こ と に よ り 血 管 が 拡 張 し 身 体 各 部 の 活 性 化 を 促 す 入 浴 に よ る 発 汗 や 筋 肉 の 緊 張 を や わ ら げ る こ と に よ り 痛 み が 軽 減 さ れ る ま た 水 中 で は 拘 縮 部 分 を や わ ら げ 関 節 可 動 域 も 拡 が る 水 中 で の 運 動 は 訓 練 効 果 を 上 げ る こ と に も な る 4 精 神 面 の 効 果 大 気 中 で は 身 体 の 各 部 位 に よ っ て 温 度 差 が あ り 自 由 に 身 体 を 運 動 さ せ る こ と が 困 難 に 高 齢 者 に と っ て は そ れ が 不 快 や 苦 痛 の 原 因 と な る 入 浴 時 は 着 衣 の 時 と 違 っ て ぬ く も り が 全 身 に 行 き 渡 る ま た 浮 力 に よ る 軽 快 感 も 加 わ - 2 -

っ て 解 放 感 に 浸 り 神 経 を リ ラ ッ ク ス さ せ る こ と が で き る ゆ っ た り と し た 気 分 は ま た コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン を 深 め 満 足 感 安 心 感 へ と つ な げ る こ と に な る そ し て こ れ ら の 相 乗 作 用 と し て 食 欲 の 増 進 や 安 眠 の 確 保 も 生 み 出 す 5 全 身 の 観 察 介 護 者 か ら 見 る と 入 浴 は 全 身 状 況 を 観 察 す る よ い 機 会 で も あ る 湿 疹 や 褥 瘡 と い っ た 外 傷 を 発 見 で き る 他 や せ た 太 っ た む く み や 色 の 変 化 な ど の 全 身 状 況 を 観 察 す る 介 護 上 の 大 切 な 時 間 で も あ る 6 その 他 褥 瘡 や 感 染 の 予 防 適 度 な 疲 労 が 食 欲 を 増 進 さ せ 便 通 を 整 え た り 安 眠 を も た ら す 入 浴 で の 脳 へ の 刺 激 に よ り 痴 呆 症 状 や 失 わ れ た 尿 意 便 意 に 対 し て よ い 影 響 が あ る と の 報 告 も あ る Ⅲ 入 浴 の 注 意 点 入 浴 は さ ま ざ ま な 効 果 を 生 み 出 す 一 方 体 力 を 消 耗 し 時 に は 感 染 の 場 と も な る 介 護 者 は 常 に 危 険 性 を 充 分 に 意 識 し な が ら 入 浴 の 効 果 を よ り 高 め る よ う に 介 護 し て い く 必 要 が あ る 1 入 浴 前 の 一 般 状 態 の 観 察 1 湿 疹 褥 瘡 傷 内 出 血 の 有 無 な ど 皮 膚 の 観 察 2 体 温 脈 拍 血 圧 の 測 定 2 入 浴 前 に 排 泄 を 済 ま せ て お く 3 空 腹 時 食 事 直 後 飲 酒 後 の 入 浴 は 避 け る 4 体 力 の 消 耗 身 体 を 温 め 血 行 を よ く す る こ と は 反 面 心 臓 へ の 負 担 体 力 の 消 耗 に つ な が る 呼 吸 循 環 機 能 に あ ま り 影 響 の な い 不 感 温 度 は 32 ~ 38 な の で 高 齢 者 の 入 浴 湯 温 は 標 準 的 に は 37 ~ 39 で 長 湯 を し 過 ぎ な い よ う に 3 ~ 5 分 程 度 の 入 浴 が 適 切 で あ る 5 室 温 調 節 浴 室 脱 衣 室 の 温 度 を 2 2 ~ 2 4 に 季 節 も 考 慮 し て 調 節 す る 特 に 冬 季 は 浴 室 - 脱 衣 室 - 廊 下 で 急 激 な 温 度 差 が な い よ う に 配 慮 す る 急 激 な 温 度 差 は - 3 -

脳 貧 血 や 湯 冷 め の 原 因 に な る 1 脳 貧 血 血 管 の 拡 張 は 血 圧 降 下 を 促 す 特 に 低 血 圧 の 入 浴 者 に 対 し て は 顔 色 に 注 意 し 脳 貧 血 を 起 こ さ な い よ う に 注 意 す る ま た 逆 に 寒 気 に 当 た る こ と に よ り 血 管 が 収 縮 す る こ と も あ り 血 圧 が 高 い 場 合 に も 注 意 が 必 要 で あ る 2 湯 冷 め 入 浴 に よ る 体 を 温 め る 効 果 も 入 浴 後 に 水 滴 の 除 去 が 充 分 で な い と 体 の 表 面 か ら 水 分 が 蒸 発 し て 返 っ て 体 が 冷 え て し ま う 温 ま っ た 体 に は 冷 た い 空 気 は 爽 や か で あ る が ほ て り が 鎮 ま れ ば 保 温 に も 注 意 が 必 要 で あ る 特 に 頭 部 は 大 気 に さ ら さ れ て い る 部 分 な の で 充 分 な 乾 燥 が 必 要 で あ る 6 事 故 防 止 1 浴 室 や 脱 衣 室 で の 転 倒 2 浴 槽 で の 浮 力 に よ る 頭 部 沈 下 3 湯 温 調 節 の 不 備 に よ る 火 傷 4 洗 剤 や 消 毒 液 の 誤 飲 7 入 浴 後 の 水 分 補 給 8 プ ラ イ バ シ ー の 保 護 ホ ー ム で の 入 浴 者 は 他 人 の 目 に 身 体 を さ ら す と い う 羞 恥 に 耐 え て 入 浴 し て い る 介 護 者 は そ の 気 持 を 理 解 し て プ ラ イ バ シ ー の 保 護 と 工 夫 を 怠 ら な い よ う に 注 意 す る - 4 -

Ⅳ 入 浴 の 形 態 と 方 法 1 浴 槽 に 入 る 入 浴 形 態 入 浴 に は 一 般 の 浴 槽 に 入 る 一 般 浴 ( 普 通 浴 ) 同 じ 一 般 浴 槽 に 入 る が 介 護 者 が 付 き 添 う 介 助 浴 立 位 は 不 安 定 だ が 座 位 を 保 持 で き る リ フ ト 浴 そ し て 座 位 も 不 安 定 な 対 象 者 の た め の 機 械 浴 ( 特 殊 浴 ) に 分 け ら れ る 方 法 1 身 体 状 況 の 確 認 体 温 脈 拍 血 圧 呼 吸 数 顔 色 口 唇 の 色 視 力 意 識 状 態 に 留 意 し 空 腹 時 ま た は 満 腹 時 は 避 け る さ ら に 狭 心 症 状 ( 発 作 息 切 れ め ま い 心 臓 部 疼 痛 極 度 の 倦 怠 感 ) が 現 れ た ら 中 止 す る そ の 他 呼 吸 困 難 不 快 感 足 の も つ れ な ど に も 充 分 注 意 し 麻 痺 立 位 座 位 の 安 定 な ど の A D L の 変 化 に も 注 意 を 怠 ら な い よ う に す る 2 環 境 を 整 え る 入 浴 者 の ハ ン デ ィ キ ャ ッ プ に 対 応 し て 使 い や す い 浴 槽 浴 室 脱 衣 室 を 考 慮 し 温 度 調 節 や 換 気 の 設 備 も 完 備 す る 3 入 浴 の 準 備 湯 温 の 確 認 既 述 し た よ う に 高 齢 者 の 標 準 的 に 適 温 は 37 ~ 39 ( 健 康 な 成 人 で は 40 ~ 42 ) 室 温 の 確 認 浴 室 脱 衣 室 は 22 ~ 30 が 適 温 温 度 差 が 大 き い と 風 邪 の 原 因 に な る 浴 室 内 の 換 気 の 確 認 密 閉 に よ る 室 温 湿 度 の 上 昇 ま た 逆 に 透 間 風 に よ る 寒 風 を 遮 る 工 夫 が 必 要 で あ る 腰 を 下 ろ す 場 所 の 確 認 立 位 不 安 定 な 入 浴 者 が す み や か に 腰 を 下 ろ す た め の 椅 子 マ ッ ト の 用 意 着 替 え 保 温 剤 タ オ ル 石 鹸 シ ャ ン プ ー リ ン ス な ど の 用 意 4 浴 室 へ の 移 動 (1) 転 倒 に よ る 打 撲 捻 挫 骨 折 (2)ト ラ ン ス フ ァ ー の 不 良 に よ る 脱 き ゅ う 骨 折 褥 瘡 部 位 圧 迫 (3) 起 立 性 低 血 圧 に よ る 脳 貧 血 転 倒 循 環 器 機 能 不 全 に 注 意 し 移 動 時 の 不 安 感 や 恐 怖 感 を 極 力 低 減 す る 5 脱 衣 脱 衣 に 当 た っ て は プ ラ イ バ シ ー を 充 分 に 配 慮 し 介 助 者 の 手 が 入 浴 者 の - 5 -

肌 に 冷 た く な い よ う に 事 前 に 温 め て お く 配 慮 も 必 要 で あ る ま た 入 浴 者 が 自 力 で 脱 衣 で き る よ う に 見 守 る 姿 勢 も 大 切 で あ る そ し て 片 麻 痺 者 の 脱 衣 は 健 側 か ら 介 助 す る こ と 入 浴 前 の 排 泄 を 確 認 す る こ と も 大 切 で あ る 介 助 者 の 最 も 大 切 な 役 割 の ひ と つ は 全 身 状 態 の 観 察 で あ る 異 常 を 発 見 し た 場 合 に は 入 浴 の 可 否 注 意 事 項 に つ い て 看 護 婦 と の 連 携 が 大 切 で あ る 6 下 洗 い 浴 室 に 入 り 座 位 を 安 定 さ せ た ら 介 助 者 は 自 分 の 手 に 湯 を か け 温 度 を 確 認 し て か ら 入 浴 者 に 声 を か け 足 先 か ら 順 に 湯 を か け て い く 麻 痺 の あ る 場 合 は 健 側 か ら 湯 を か け 健 側 で 温 め て か ら 麻 痺 側 に 移 る 日 頃 目 の と ど か な い 陰 部 は 汚 れ て い る 場 合 も あ る の で 充 分 に 下 洗 い す る 下 洗 い の 後 浴 槽 で 温 ま る こ と が で き れ ば よ い が 困 難 な 場 合 は 足 浴 の 状 態 に し て 体 が 冷 え る の を 防 ぐ 7 顔 を 洗 う 清 拭 の 要 領 で 目 頭 か ら 目 尻 額 鼻 頬 鼻 の 下 口 の 下 あ ご の 順 に 洗 う タ オ ル を 絞 っ て 石 鹸 水 が 鼻 口 な ど に 入 ら な い よ う に 注 意 す る 洗 い 終 え た ら 石 鹸 水 を 充 分 に 拭 き 取 る 8 体 を 洗 う 洗 顔 の 次 は 頸 部 上 肢 へ と 上 半 身 か ら 下 半 身 へ と 洗 い 最 後 に 陰 部 を 洗 う 首 筋 や 胸 部 や 腹 部 股 関 節 な ど の し わ に な っ て い る 部 分 普 段 見 え に く い 部 分 に も 注 意 す る 可 能 な 限 り 自 力 で 洗 え る よ う に 促 し 背 中 や 足 先 な ど の 手 の と ど か な い 部 分 は 介 助 す る ま た 麻 痺 の あ る 場 合 は 健 側 を 洗 う の は 困 難 な の で 介 助 が 必 要 で あ る 9 髪 を 洗 う 介 助 が 必 要 な 入 浴 者 は 座 位 で 洗 髪 す る こ と に な る が 耳 を 覆 っ た り 目 や 口 を 閉 じ た り す る こ と が で き な い 場 合 は シ ャ ン プ ー ハ ッ ト を 使 用 す る な ど の 工 夫 を す る ま た 普 段 見 え に く い 頭 皮 の 湿 疹 な ど を 観 察 す る 10 浴 槽 へ の 援 助 全 身 を 洗 っ た ら 充 分 に 石 鹸 を 洗 い 落 と し 浴 槽 へ と 援 助 す る こ の と き シ ャ ワ ー や か け 湯 で 冷 え か け た 体 を 少 し で も 温 め 浴 槽 に 入 っ た 時 の 刺 激 を 少 な く す る 入 浴 者 に 声 を か け な が ら ゆ っ く り と 援 助 す る 肩 な ど 充 分 に 浸 っ て い な い 部 分 に は そ っ と か け 湯 を し た り 少 し 抑 え る よ う に し て 温 め る - 6 -

麻 痺 が あ る 場 合 ま た は 体 重 が 軽 い 入 浴 者 で は 浮 力 で 体 の バ ラ ン ス を 保 つ こ と が で き ず 浮 き 上 が っ て し ま う 危 険 性 が あ る の で 介 助 者 は と っ さ に 入 浴 者 を 支 え る こ と が で き る 場 所 を 離 れ な い よ う に 留 意 す る ま た リ フ ト 浴 や 機 械 浴 で は 介 助 者 が 操 作 す る た め 入 浴 者 が 自 分 の 意 志 で 入 り 温 ま る と い う 面 が 奪 わ れ が ち に な る 充 分 に 声 を か け 入 浴 者 の 意 志 を 確 認 す る 11 体 を 拭 く 入 浴 後 は タ オ ル で 素 早 く 水 分 を 拭 き 取 り 頸 部 や 指 の 間 な ど 皮 膚 の 接 触 し て い る 部 分 は 入 念 に 拭 く 身 体 を 拭 き 終 わ る と パ ウ ダ ー を つ け る こ と も あ る が パ ウ ダ ー は 早 く 乾 燥 で き る 反 面 油 分 も 除 去 し て し ま う の で 皮 膚 の 乾 燥 や 老 人 性 掻 痒 感 の あ る 場 合 は オ リ ー ブ 油 を す り こ む と よ い 12 着 衣 入 浴 で さ っ ぱ り し た 体 に は 清 潔 な 衣 類 を 着 用 す る 体 が 温 ま っ て い る う ち は 1 枚 く ら い 少 な め に 着 せ 汗 の 納 ま っ た 頃 に 上 着 を 羽 織 る よ う に す る 脱 衣 の 時 と は 逆 に 麻 痺 の あ る 場 合 は 患 側 か ら 介 助 す る 13 湯 上 が り 入 浴 後 は ゆ っ た り と 過 ご せ る よ う に 配 慮 す る 体 力 の 消 耗 が あ る の で 充 分 休 養 し 水 分 補 給 を 行 う 入 浴 後 は 爪 が 柔 ら か く な っ て い る の で 爪 き り の よ い 機 会 で あ る ま た ド ラ イ ヤ ー を 当 て 整 髪 し 耳 掃 除 を し た り 女 性 で は お 化 粧 を す る な ど の 心 く ば り も 大 切 で あ る 単 に 清 潔 を 保 つ だ け て な く 社 会 人 と し て の 整 容 の 援 助 を す る 心 遣 い が 利 用 者 と の 信 頼 関 係 を 積 み 重 ね て い く 基 盤 と し て 大 切 で あ る 14 浴 室 の 後 片 付 け 入 浴 後 の 浴 室 は 石 鹸 垢 な ど の 他 目 に 見 え な い 菌 や 排 泄 物 の 残 り な ど も あ り 浴 槽 洗 面 器 シ ャ ワ ー チ ェ ア ー な ど は す み や か に 清 掃 消 毒 す る 必 要 が あ る 浴 用 洗 剤 で 石 鹸 垢 を 落 と し た 後 熱 湯 薬 剤 な ど で 消 毒 し 水 分 を 拭 き 取 り 乾 燥 さ せ る か 移 動 可 能 な も の は 日 光 消 毒 を す る 2 浴 槽 に 入 れない 場 合 シ ャ ワ ー 浴 外 傷 が あ る 場 合 傷 口 の 感 染 を 防 ぐ た め 湿 疹 な ど が あ る 場 合 温 め る こ と で そ れ を 拡 げ て し ま わ な い た め 浴 槽 湯 水 か ら 周 囲 へ の 感 染 を 防 ぐ た め 退 院 直 後 な ど 体 調 が 不 安 定 な 場 合 に 体 力 の 消 耗 を 防 ぐ た め - 7 -

こ れ ら の 場 合 入 浴 を 中 止 し て し ま わ な い で シ ャ ワ ー 浴 で 対 応 す る こ と に よ り 体 調 を 悪 化 さ せ ず 短 時 間 で 清 潔 に す る よ う 配 慮 す る 清 拭 医 師 か ら 入 浴 を 止 め ら れ て い る 場 合 水 に つ け て は い け な い 部 分 が あ る 場 合 浴 室 へ の 移 動 が 困 難 な 場 合 こ の よ う な 時 は 清 潔 維 持 と 全 身 観 察 を 兼 ね ベ ッ ト 上 で の 清 拭 対 応 と す る 熱 め の 湯 ( 50 )で か た く 絞 っ た タ オ ル を 用 い 顔 耳 首 上 肢 胸 下 肢 背 中 腰 陰 部 の 順 に 拭 い て い く 足 浴 足 は 拭 く だ け の 対 応 よ り も 湯 の 中 に 入 れ る こ と が で き れ ば 少 し で も 入 浴 気 分 を 味 わ う こ と が で き 汚 れ も 落 ち や す い 座 位 を 安 定 さ せ 深 め の 容 器 に は じ め は ぬ る め の 湯 を 入 れ 足 を 浸 す し ば ら く す る と 湯 温 が 下 が る の で 少 し 熱 め の 湯 を さ し 湯 す る と 温 ま る 充 分 温 め た 後 石 鹸 で 洗 う 洗 い 終 わ っ た 後 は 指 の 間 な ど 水 分 が 残 り や す い 部 分 に 注 意 し て 乾 い た タ オ ル で 水 分 を 拭 き 取 る 手 浴 手 は い ろ い ろ な 物 に 触 れ る こ と が 多 く 外 気 に も 触 れ て い る こ と も あ り 充 分 に 温 め 石 鹸 を 使 っ て 洗 う と 思 い の 外 汚 れ て い る こ と が あ る 座 位 が 可 能 で あ れ ば 洗 面 器 で 臥 位 の ま ま 実 施 す る 場 合 は ベ ッ ト 脇 に 椅 子 な ど を 置 い て 少 し 低 め の 位 置 に 洗 面 器 を 置 く よ う に す る と 浸 し や す い 洗 髪 ケ リ ー パ ッ ト を 用 い れ ば ベ ッ ト 上 で 臥 位 の ま ま 洗 髪 を す る こ と が で き る ま た ド ラ イ シ ャ ン プ ー を 使 用 す れ ば 湯 水 を 流 さ ず に 拭 き 取 る だ け で 洗 髪 が で き る 毛 髪 の 汚 れ を と る と 同 時 に 地 肌 の 発 赤 や 外 傷 が な い か 留 意 す る 陰 部 洗 浄 陰 部 が た だ れ て い る よ う な 場 合 に は ポ ー タ ブ ル に 座 ら せ 湯 水 を 注 ぐ よ う に し て 洗 浄 を 行 え ば 清 拭 で は こ す っ て も 除 け な い よ う な 汚 れ も 落 と す こ と が で き る - 8 -

Ⅴ 入 浴 拒 否 者 への 対 応 入 浴 に は 保 清 を は じ め と す る さ ま ざ ま な 目 的 が あ り 嫌 い だ か ら と い っ て 無 関 心 で い る こ と は で き な い 入 浴 嫌 い な 利 用 者 へ の 関 わ り も 大 切 な 援 助 の ひ と つ で あ る 入 浴 拒 否 の 理 由 は 1 気 分 が 悪 い 2 面 倒 だ か ら 3 他 の こ と が し た い 4 怖 い 5 ゆ っ く り 入 れ な い 6 そ の 他 が あ げ ら れ る い ず れ の 場 合 も 基 本 的 に は 入 浴 拒 否 の 原 因 を 取 り 除 い て い く こ と で 入 浴 が 楽 し み に な る よ う な 条 件 を 整 え て い き た い ま ず 1 気 分 が 悪 い で は 入 浴 の 声 か け を す る と 今 日 は 気 分 が 悪 い か ら 止 め と く 風 邪 気 味 だ か ら 次 に す る と 口 癖 の よ う に 入 浴 を 拒 否 す る 利 用 者 が い る こ の よ う な 場 合 訴 え を 無 視 せ ず に 体 温 や 血 圧 の 情 報 を 知 ら せ る な ど の 対 応 を し て 安 心 し て 入 浴 し て も ら え る よ う に 努 め る 入 浴 拒 否 の 方 便 と わ か っ て い て も 誠 意 を 持 っ て 対 応 し て い く こ と に よ り 利 用 者 も そ の よ う な 方 便 を 使 わ な い よ う に な る こ と も あ る イ ヤ イ ヤ な が ら も 利 用 者 が 入 浴 に 応 じ た 時 は 恩 着 せ が ま し く く ど く ど と 言 わ な い 配 慮 も 必 要 で あ る 2 面 倒 だ か ら で は 入 浴 に 伴 う 移 動 着 脱 衣 浴 槽 へ の 出 入 り な ど ひ と つ ひ と つ の 動 き に 時 間 が か か る 利 用 者 に と っ て は 億 劫 な こ と と 頷 け る 準 備 に 時 間 が か か る 利 用 者 に は 早 め に 声 を か け せ か さ な い 配 慮 が 大 切 で あ る 3 他 の こ と が し た い で は ホ ー ム の 生 活 は ス ケ ジ ュ ー ル が 組 ま れ て い て 個 人 の 先 に 他 の こ と が し た い と い っ た 希 望 が 満 た さ れ な い 場 合 が あ る 入 浴 に よ っ て そ の 前 後 の 生 活 に し わ 寄 せ が こ な い よ う に ゆ っ た り と し た 時 間 配 分 を 考 え る よ う に も 努 め た い 4 怖 い で は 主 に 機 械 浴 の 利 用 者 が 入 浴 に 際 し て の 移 動 ト ラ ン ス フ ァ ー で 感 じ る 問 題 で あ る 全 身 を 介 助 者 に ゆ だ ね て い る 入 浴 者 の 気 持 を 配 慮 し 安 全 安 楽 を 最 優 先 し た 介 護 を 心 掛 け た い 5 ゆ っ く り 入 れ な い は 入 浴 設 備 時 間 帯 入 浴 者 数 介 助 者 数 に 関 わ る 問 題 で あ り 施 設 全 体 で の 改 善 努 力 が 必 要 で あ る 6 そ の 他 で は 誰 々 さ ん と 入 る の は い や 洗 濯 物 が 戻 っ て 来 な い か ら い や と い っ た 別 の 要 素 で 入 浴 を 拒 否 す る 場 合 で あ る 充 分 に 話 を 聴 い て 安 心 し て 入 浴 が で き る よ う に 配 慮 し た い ま た ド ロ ボ ー が 来 る か ら い や と い う 被 害 妄 想 が あ る 場 合 は 大 切 に し て い る も の を 保 管 し た り 本 人 の 目 の 届 く 所 に 置 い て 入 浴 援 助 す る な ど の 工 夫 が 必 要 と な る - 9 -

Ⅵ 施 設 における 入 浴 介 助 の 課 題 1 機 械 浴 槽 で の 介 助 方 法 1 浴 槽 内 で 姿 勢 が 安 定 し な い 2 受 け 身 的 な 入 浴 3 転 落 の 危 険 性 4 移 乗 介 助 時 の 恐 怖 感 2 大 浴 槽 での 介 助 方 法 1 埋 め 込 み 式 は 出 入 り が 大 変 2 介 助 者 の 介 護 負 担 が 大 き い 3 階 段 や ス ロ ー プ は 危 険 4 広 す ぎ る と 姿 勢 が 安 定 せ ず 危 険 5 湯 の 入 れ 替 え が 困 難 Ⅷ 望 ましい 入 浴 介 助 モデル 和 式 の 半 埋 め 込 み 式 座 位 - 10 -